【実施例】
【0025】
本発明に関わる光学式内面測定装置の実施形態について説明する。
図5〜
図16は本発明に係る光学式内面測定装置の実施形態を示している。
【0026】
図5は本発明の第1の実施の形態に係る光学式内面測定装置の構成図である。ベース80にスタンド81が固定され、スライダ用モータ83によりスライダ82がプローブ36と共に上下に移動する。被検査物100はベース80上にセットされており、プローブ36は被検査物100の深穴に出入りする。固定側光ファイバー31に入光した光線はチューブ36内を通過し、さらに測定機本体85の接続部84を通過して、光干渉解析部88に入り、コンピュータ89で解析してモニタ90に画像を表示する。
【0027】
この光学式内面測定装置は、複数の例えば6種類の機能を有しており、それらは、以下のとおりである。
〔1〕被検査物100の内周面の三次元形状の表示を行う機能、及び、バリ、キズ等の外観検査機能
〔2〕内周面に樹脂等の表面皮膜61bが施されている場合は、その皮膜厚さの測定、及びピンホール不良や突起発生不良の検査機能
〔3〕表面粗さ測定機能
〔4〕直径測定機能
〔5〕真円度測定機能
〔6〕真円度測定データを長手方向に連続的にデータ収集し、三次元的に表示して得る円筒度測定機能
【0028】
図6は本発明の実施形態に係る光学式内面測定装置の光プローブ59の構成図である。
光プローブ59の後端側から先端側に光線を導く固定側光ファイバー31は、十分に長いチューブ36の内部に挿通され、光ファイバー固定具34により固定されている。
【0029】
固定側光ファイバー31の先端側には、回転側光ファイバー32が回転自在に設けられている。回転側光ファイバー32の先端側には、略平面状のミラー等からなる第1光路変換手段33a、33bが第1モータ42により回転側光ファイバー32とは独立して回転自在に取り付けられ、回転する事で光線を全周方向に放射するよう構成している。
【0030】
回転側光ファイバー32と固定側光ファイバー31は、5マイクロメートル程度の微小距離を隔てて対向し、回転する遮光板35、光ファイバー固定具34を含めて回転光コネクター52を構成し、回転側光ファイバー32と固定側光ファイバー31の間は高い透過率が維持でき、ほとんど損失なく光学的に接続されている。
【0031】
また、回転側光ファイバー32の先端には固定側光ファイバー31と回転光コネクター52を透過してきた光線を集光して回転しながら先端方向に少々の角度を付けて第1光路変換手段33a、33bに向けて放射する第2光路変換手段50が取り付けられている。
【0032】
第1モータ42は、モータケース38にモータコイル37、第1軸受39b、39aが固定され、ロータ磁石41が取り付けられた第1中空回転軸40が回転する。モータコイル37には電線23から電圧が印加され、第1中空回転軸40には第1光路変換手段33が取り付けられている。
【0033】
第2モータ49は、第1モータ42と同様に、モータケース38に第2軸受48a、48bが取り付けられ第2回転軸43を回転自在に支えている。
【0034】
可振子44の外周には電歪素子または圧電素子45が貼り付けられ、これら素子45には電極46が形成されている。これらそれぞれの電極は電線47により配線されており電圧が印加されている。
【0035】
図6の第1モータ42には
図5の第1モータドライバ回路86から電力が供給されて回転駆動され、第2モータ49は第2モータドライバ回路87から電圧が印加されて回転駆動される。
【0036】
光線が放射される第1光路変換手段33の外周近傍には光線が透過可能な透光部51がチューブ36に取り付けられている。透光部51の内周面または外周の表面には必要に応じて表面反射を減らし、光線の透過率を高めるためのコーティング等がなされている。
【0037】
第1光路変換手段33は、回転可能なミラー又はプリズムで構成されており、反射効率が高く光学的損失を減らして高精度な精度測定が可能である。
【0038】
第2光路変換手段50は、先端に傾斜する略平面を有するプリズム等で構成しており、光線の集光性が高く、光学的損失を減らして高精度な精度測定が可能である。また第2光路変換手段50のプリズム以外の構成としては、微細な集光レンズとプリズムを組み合わせて光路を形成することも可能である。
【0039】
次に上述した
図6の3次元走査型の光イメージング用プローブを用いた光学式内面測定装置について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0040】
図5および
図6において、測定機本体85内の光源から発光された近赤外またはレーザ等の光線は、チューブ36に内蔵された固定側光ファイバー31の中を通過して進む。
【0041】
図6において電線23から電力が供給され、第1モータ42と第2モータ49が約1800〜2万rpmの範囲の同一回転数で回転すると、導かれた光線は回転光コネクター52と回転側光ファイバー32を通過し、第2光路変換手段50aから放出され、第1光路変換手段33aの略平面部で反射し一定の角度方向(
図6においてはθ1の角度)に方向を変えて回転放射され、この時の放射範囲は
図8の様に角度θ1の傘状の範囲になる。
【0042】
光線はさらに透光部材51を通過し、被検査物100の内周面から反射した光線を上記と同じ光路を逆方向に透光部材51⇒第1光路変換手段33a⇒第2光路変換手段50a⇒回転側光ファイバー32⇒回転光コネクター52⇒固定側光ファイバー31を通過して光干渉解析部88に導いている。
【0043】
次に、第1モータ42と第2モータ49の回転数が、例えば第1モータ42の回転数が3600rpm一定で、一方第2モータ49の回転数は3570rpm一定で回転させ、このように2個のモータ回転数に若干の差を与える回転状態に切り換える。この状態では、
図7に示すように第1光路変換手段33と第2光路変換手段が50bの位置に回転角度位相が徐々に変化していき、180度の位相差ができた時には,光線は回転する第1光路変換手段33bで反射し光線の進路は一定角度変化し
図9に示すようにθ2に変わる。すなわち、この瞬間の光線の放射範囲は
図9に示すような傾斜した範囲に変わっている。
【0044】
この回転位相角度は、第1モータ42が1分間に3600回転する間に第2モータ49の回転数との差分だけ、即ち30回転ずれるので、即ち2秒毎に360度の回転位相差が生じる。
【0045】
引き続き第1光路変換手段33と第2光路変換手段50の回転位相差がゆっくりと2秒に1回転ずつ生じ続ける。この動作により、光線の放射方向が
図10に示すように、θ1〜θ2の範囲で連続的に変化し、光線の放射範囲はθ1+2θの範囲で三次元的に繰り返し照射し、走査範囲内に信号線や電線23,47が存在しないため、欠落のない鮮明な三次元画像データを得ることができる。
【0046】
図10において、第1光路変換手段33と第2光路変換手段50の作用により、チューブ36は長手軸方向にスライドさせなくても光線は全周方向及び長手軸方向に三次元的に放射され、
図5のスライダ用モータ83を止めて機械振動を抑えた状態で三次元の走査が行える。
【0047】
図6において、振れ検出センサ53aが第1光路変換手段33または、第1中空回転軸40の外周振れを検出し、光干渉解析部88で求めた元波形データに補正を加えている。または、第1モータ42の回転軸部の振れ量を測定する他の変位検出手段として、事前にメモリしておいたチューブ36の内周の基準形状データと、第1モータの回転中に得られるチューブ内周面の測定データの差異とを、振れ量として検出して、同様に元波形データに対して補正を加えることによって、正しい数値を得る。
【0048】
既に説明した本発明光学式内面測定装置が有する6種類の測定方法とその動作について以下に順に説明する。
【0049】
〔1〕三次元形状の表示とキズ等の外観検査方法
図11に示す被測定物100の内周面からの反射光を
図5に示す光干渉解析部88に取り込み、コンピュータ89により計算し、内周面形状の画像を表示する。外観検査時には、スライダ用モータ83が必要に応じてプローブ36を軸方向にスライドさせつつ反射光を三次元的に取り組むので、モニタ90に三次元画像を表示することができる。外観検査に必要とされる測定精度は、5マイクロメートル程度であり、他の幾何学精度の測定に0.02マイクロメートルもの高精度が要求されるのに比べて、十分に許容度があるため、スライド部の振動が発生しても無視することができる。
また、バリ、キズが無い被測定物の基準データを別途事前にメモリしておき、取り込んだ被検査物100の表面状態と比較する事により外観不良品を検出する事が可能である。
【0050】
〔2〕次に、被検査物100の内周面に樹脂等の表面皮膜コーティングが施されている場合は、その表面層の厚さの測定、及びピンホール不良や突起発生不良は、近赤外光またはレーザ光が樹脂を半透過するため、皮膜を含む高分解能な三次元画像を得て、被膜厚さを検査する事ができる。
【0051】
〔3〕表面粗さ測定方法は、サンプリング長さ範囲(例えば100マイクロメートルの範囲について)の被検査物100内周表面の元波形データを収集し、これと同時に第1中空回転軸40の外周振れを振れ検出手段(
図6においてはセンサ22a、22b)が取込んだシャフト振れ波形データを収集し、
図14に示すように、元波形データからシャフト振れデータを差し引きした補正後データ(図中上側の細実線波形)を得ることができる。この補正後データの最大値と最小値の幅が真の最大表面粗さ値になる。このように中空回転軸10の外周振れデータを得て補正する事により、例えば0.01マイクロメートルの高精度に表面粗さの測定が行える。
【0052】
〔4〕直径測定方法は次のとおりである。
図15の外周に破線で示す波形は、第1光路変換手段33から全周に放出された光線の反射光をコンピュータ89で計算して求めた被検査物100の内周面の形状を示す元波形であり、図中の内周の太実線波形に示す振れ検出手段(
図6ではセンサ53a)から得たシャフト振れ変位量データを差し引きし、同図外径側の細実線に示す補正後データを得て、この補正後データから必要な内径寸法を得ることができる。なお、実際の測定に際しては内径精度が保証されているリングゲージを使って本発明の内面測定機の校正をすませておき、この認定されたリングゲージとの比較測定により直径値が求められ表示される。
【0053】
〔5〕真円度測定方法は、
図6に示すように、2つの光路変換手段を回転駆動させる第1モータ42、第2モータ49を有し、被検査物100の内径に光プローブ59の先端部を挿入し、2つの光路変換手段33,50が光ファイバー32から導いた光線を円周方向および軸方向に3次元的に放射する。先に説明した
図15の外径側に示す細実線が補正後データは、
図12において光線が三次元的に放射することにより得られた複数の円形データからコンピュータ89が被測定物100の傾斜角度を計算し、角度を補正した円形データを表示しており、この補正された
図15のデータに対する内接円と外接円を計算で求め、これら2つの円の半径差を真円度と定義できるものであり、この数値がモニター90に表示される。
この構成により、被検査物100の内周面から、光ファイバー32を経て導き入れた反射光をコンピュータ89で計算して得た被検査物の内周面の形状データを、光ファイバーの軸方向の移動を行わずに行い、チューブ36の摺動振動やスライダ用モータ83の振動(これら摺動による振動は検出と補正が困難であるため動作を止めて測定を行う。)を発生させずに測定を行い、さらに被測定物100の傾斜角度と第1および第2モータ42,49の機械振動を検出及び補正することで正しい内周面の真円度の測定がおこなえている。
【0054】
〔6〕円筒度の測定方法は、
図5に示すスライド用モータ83を停止させ、
図13に示すように、モータ振動が出ない状態で図中δZ1の範囲の三次元データを取り込み、
図5のスライダ82と共にプローブ28を図中δZの距離ずつ間欠的に送りを与える。得られたデータをコンピュータ89が繋ぎ合せて円筒全体のデータにし、円筒の三次元画像の内接円筒と、外接円筒の半径差とを円筒度として計算し表示する。この測定においてもスライダ用モータ83の回転を止めた状態でデータを取込むので振動やノイズが発生せず、高精度に測定が行える。
【0055】
図16は光学式内面測定装置の補正計算フロー図である。いままで説明したように、図中(D)に示す被検査物100の傾斜量データにより(2)補正した真円度を求めることができ、(E)回転振動データを検出することで、さらに精度が高い(3)機械振動補正後の真円度、および表面粗さ、円筒度の測定値を求めることができる。
【0056】
図6では、第1モータの回転軸部の振れ量を測定する変位検出手段は、第1中空回転軸40の外周面に振れ検出センサ53aを対向させているが、この変位検出手段は他にもある。例えば、第1モータ42の回転軸部40の振れ量を測定する他の変位検出手段は、チューブ36の内周の事前にメモリしておいた基準形状データと、第1モータ42の回転中に得られる透光部51又はチューブ36の内周面の測定データの差異を振れ量として検出する事ができる。この場合、
図15において内周の太実線データがチューブ内周面の基準形状データと、第1モータ回転中に得られる測定データの差異から求めた振れ量のデータである。この構成と検出方法によっても、被検査物100の内周面の形状データに与えた画像の歪みや振動を収集した波形データから除去し、正しく精密は内径及び内周面の精度測定が可能である。この場合、透光部51はガラスや透明の樹脂で形成されており、必要に応じて内周面に数ナノメートル厚さの透光性がある金属コーティングを施しておき、内周面からの収集波形の輪郭をより確実に検出することもできる。
【0057】
尚、チューブ36はその直径は約2ミリメートル程度であり、その内部に貫通する固定側光ファイバー31は、屈曲自在なグラスファイバーであり直径は0.1〜0.4ミリメートル程度のものを使っている。
【0058】
図6に示される第1光路変換手段33は、平滑な反射面を有するミラーかプリズムからなり、反射率を高めるため、その表面粗さと平面度は一般の光学部品と同等以上の精度に磨きあげられている。
【0059】
図6に示される第1中空回転軸40は、金属またはセラミックスで形成され、溶融金属のダイによる引き抜き加工か、または焼成前のセラミックスのダイによる押し出し加工で中空に成形されて、硬化処理後に研磨加工法等により仕上げ加工される。
【0060】
図6において、第1中空回転軸40の穴は直径が0.2〜0.5ミリメートルあり、光ファイバー31の直径より十分大きくしているため、固定具34で固定された固定側光ファイバー1が第1中空回転軸40に接触することはなく、仮に軽く接触しても摩耗粉が発生するほどではない。また、回転摩擦トルクが変動する問題もない。
【0061】
この種の三次元走査内面観察および検査装置の要求性能の一つに空間分解能を高める事があるが、空間分解能を達成するための要因には、第1モータ42の回転速度ムラ、第1中空回転軸40の振れ及び非再現振れ精度、第1光路変換素子33の加工精度等がある。
【0062】
この中でモータ42の回転速度ムラに対しては、本発明においては、プローブ59の先端部に第モータ42を内蔵した本方式はチューブ36の内部で固定側光ファイバー31が回転しないので摩擦力が発生して回転速度むらが生じて収集データに歪やノイズを与える心配が無く、高い3次元の空間分解能を安定して得ている。
【0063】
また、第1中空回転軸40の振れ及び非再現振れ精度に対しては、本発明においては振れ検出センサ53aが振れを検出して相殺して正しい内径データを測定している。この場合、
図6に示す第1モータ42、第2モータ49、回転光コネクター52は、チューブ36の必ずしも先端に内蔵する必要はなく、
図11のチューブ36の装置側(図の上方)に構成し、回転側光ファイバー32を十分長く構成しても問題ない。
【0064】
本発明によれば、本発明の光学式内面測定装置は、光プローブ59を長手軸方向にスライドさせず静止した状態で、2つの光路変換手段が光ファイバーから導いた光線を円周方向および軸方向に三次元的に放射することで、被検査物100の傾きを計算し補正して真円度を求めることができる。また、第1モータ42の回転軸部の振れ量を検出する手段を設け、この変位量データで補正することで、被測定物100の内周面形状データに与えるあらゆる測定誤差を解消し高精度な測定をおこなうことが可能である。