(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算工程は、前記複数の画素の前記発光部におけるそれぞれの位置に対応して前記第2段階において算出された補正係数を表す補正関数を算出して保存する第3段階をさらに含み、
前記取得工程では、前記複数の画素の前記発光部におけるそれぞれの位置と前記第3段階において保存された補正関数とから、前記補正係数が算出されることを特徴とする請求項2に記載のアクティブマトリクス型発光パネルの製造方法。
前記第1段階では、前記特性として、前記複数の画素に流れる電流値がそれぞれ測定されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のアクティブマトリクス型発光パネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な発光パネルの製造方法が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、発光パネルの製造方法の原理を容易に理解させることを目的とするものである。発光パネルの製造方法の原理はこれらに何ら限定されるものではない。
【0011】
<エージング処理に関する課題>
図1は、発光パネル500の概略的な平面図である。
図1を用いて、発光パネル500が説明される。
【0012】
発光パネル500は、映像を表示する略矩形の発光部510と、発光部510の四辺に沿って配置された回路基板520と、発光部510と回路基板520とを電気的に接続するためのフレキシブル基板530と、を備える。回路基板520は、発光部510を駆動するための駆動信号を生成する。駆動信号は、フレキシブル基板530を介して発光部510に入力される。発光部510は、駆動信号に従って発光し、映像を表示する。発光部510は、画素P1,P2,P3を含む。画素P1,P2,P3は後述される。
【0013】
図2は、発光部510の概略的な斜視図である。
図1、
図2を用いて、発光部510が説明される。
【0014】
発光部510には、複数の画素Pがマトリクス状に配置されている。
図2では、発光部510の中心Ocを含む第1領域R1に配置された画素P1と、発光部510の中心Ocから第1領域R1より離れた第2領域R2に配置された画素P2と、第1領域R1と第2領域R2との間の第3領域R3に配置された画素P3とが、特に区別して示されている。画素Pは、電流の流れに応じて発光する有機EL素子を含む。
【0015】
エージング処理時において、発光部510は、回路基板520からの駆動信号により全面点灯される。即ち、画素P1,P2,P3を含む全画素Pが発光する。このとき、発明者らは、画素P1,P2,P3の間で、エージングレベルにばらつきが生じることを見出した。
【0016】
図3は、エージング処理時及びエージング処理終了後の画素P1,P2,P3の劣化曲線を表す例示的な図である。
図3において、劣化曲線A1は画素P1のエージング処理時の劣化の推移を示す。劣化曲線A2は画素P2のエージング処理時の劣化の推移を示す。劣化曲線A3は画素P3のエージング処理時の劣化の推移を示す。劣化曲線B1は画素P1のエージング処理終了後(つまり実際の使用開始後)の劣化の推移を示す。劣化曲線B2は画素P2のエージング処理終了後(つまり実際の使用開始後)の劣化の推移を示す。劣化曲線B3は画素P3のエージング処理終了後(つまり実際の使用開始後)の劣化の推移を示す。
図1乃至
図3を用いて、エージングレベルのばらつきが説明される。
【0017】
図3の劣化曲線A1,A2,A3から分かるように、時刻0にエージング処理が開始された後、画素P1のエージングは比較的緩慢に進行し、画素P2のエージングは比較的急速に進行し、画素P3のエージングの進行速度は、画素P1,P2の中間になる。このため、所定のエージング時間Taが経過してエージング終了時の画素P1,P2,P3の輝度L1,L2,L3を比較すると、L1>L3>L2となり、エージングの進行速度(劣化速度)にばらつきが生じている。
【0018】
その結果、エージング処理を終了した発光部510の実際の使用が時刻0に開始されると、劣化曲線B1,B2,B3から分かるように、画素P1,P2,P3の間で、輝度レベルに差が生じたまま使用されることになる。このため、発光部510において輝度むら、色むらが発生する。発明者らは、以下に説明される知見に基づき、エージングレベルのばらつきを解消するための技術を案出した。
【0019】
<発明者らが見出した知見>
発明者らは、画素に供給される電流のばらつきに起因して、エージングレベルにばらつきが生じることを見出した。
【0020】
図4は、各画素に印加される電圧、各画素に印加される電流、各画素の劣化速度を表す例示的な図である。
図4のセクション(a)は、各画素に印加される電圧を表す。
図4のセクション(b)は、各画素に供給される電流を表す。
図4のセクション(c)は、各画素の劣化速度を表す。
図4では、
図2に示される位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素について示されている。
図1乃至
図4を用いて、画素に供給される電流のばらつきが説明される。
【0021】
上述の如く、エージング処理時において、発光部510は、全面点灯される。このとき、
図4のセクション(a)に示される如く、画素P1,P2,P3を含む位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素に対して、回路基板520から一定の電圧V0が印加される。
【0022】
しかしながら、位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素に供給される電流は、
図4のセクション(b)に示される如く、第2領域R2から第1領域R1に近づくにつれて低下することを、発明者らは見出した。例えば、画素P1に供給される電流はI1であり、画素P2に供給される電流はI2であり、画素P3に供給される電流はI3であり、I1<I3<I2になっている。そして、
図4のセクション(c)に示される如く、この電流ばらつきに対応して、劣化速度(エージングの進行速度)がばらつくことを発明者らは見出した。この原因について、発明者らは以下のように推定した。
【0023】
回路基板520と各画素とを接続する導線は、発光部510の周囲から発光部510の内部の各画素に対してフレキシブル基板530を介して配線される。したがって、画素P1,P2,P3では、例えば
図1に示される如く、発光部510の第1領域R1に配置された画素P1に対する導線W1が最も長く、発光部510の第2領域R2に配置された画素P2に対する導線W2が最も短く、第3領域R3に配置された画素P3に対する導線W3の長さは導線W1,W2の中間の値になる。その結果、画素に供給される電流は、
図4のセクション(b)に示される如く、回路基板520と画素とを接続する導線が長くなるにつれて、つまり第2領域R2から第1領域R1に近づくにつれて低下する。本実施形態において、画素P1は第1画素として例示され、画素P2は第2画素として例示され、導線W1は第1導線として例示され、導線W2は第2導線として例示される。
【0024】
発明者らは、上述の知見を用いて、以下の様々な実施形態を案出した。
【0025】
<第1実施形態>
図5は、発光パネル500の概略的な断面図である。
図2及び
図5を用いて、発光パネル500に対するエージング処理が説明される。
【0026】
発光パネル500に対するエージング処理のために、支持台100が用意される。発光パネル500は、支持台100上でエージング処理を受ける。
【0027】
支持台100は、台座部110と、台座部110から直立した脚部120と、脚部120上で構築された支持枠体130と、を備える。支持枠体130は、発光部510の周縁部を支持する内枠131と、内枠131を取り囲む外枠132と、を含む。回路基板520は、外枠132によって支持される。
【0028】
外枠132は、金属やカーボングラファイトシートといった高熱伝導性材料を用いて形成される。各画素Pの発光を用いて、エージング処理が行われている間、回路基板520は、発熱する。回路基板520からの熱は、外枠132に効率的に伝達される。外枠132は、高い熱伝導率を有するので、回路基板520から伝達された熱は、外枠132に全体的に伝導される。この結果、外枠132は、効率的に放熱することができる。
【0029】
内枠131は、ガラス繊維、セメントやマイカといった断熱性に優れた材料から形成される。したがって、内枠131は、発光部510と外枠132との間での熱の流れの多くを遮断する。したがって、発光部510は、外枠132に伝達された熱に影響されにくくなる。
【0030】
回路基板520から発光部510の各画素Pに印加される電圧を調整するための制御盤430が用意される。制御盤430は、支持台100の台座部110上に設置される。
【0031】
図6は、エージング処理を実行するエージング装置の制御構成を示すブロック図である。
図7Aは、各画素の補正係数、各画素に印加される電圧、各画素の劣化速度を表す例示的な図である。
図7Aのセクション(a)は、各画素の補正係数を表す。
図7Aのセクション(b)は、各画素に印加される電圧を表す。
図7Aのセクション(c)は、各画素の劣化速度を表す。
図7Bは、ルックアップテーブルを表す例示的な図である。
図7Aでは、
図2における位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素について示されている。
図2、
図4、
図6、
図7A、
図7Bを用いて、印加電圧の補正が説明される。
【0032】
図4のセクション(b)を参照して説明された如く、位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素に供給される電流は、第2領域R2から第1領域R1に近づくにつれて低下する。そこで、
図7Aのセクション(a)に示される如く、位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素の補正係数は、第2領域R2から第1領域R1に近づくにつれて増大している。例えば、画素P1の補正係数C1と画素P2の補正係数C2とは、C1>C2に設定されている。補正係数は、例えば、
図4のセクション(a)に示される一定電圧V0を
図4のセクション(b)に示される電流値で除算した商に、適当な係数が乗算されて、算出される。
【0033】
図7Aのセクション(a)に示される補正係数によって、位置Aと位置Bとを結ぶ直線上の画素に印加される電圧は、
図7Aのセクション(b)に示される如く、第2領域R2から第1領域R1に近づくにつれて増大する。例えば、画素P1には電圧V1が印加され、画素P2には電圧V2が印加され、両者の大小関係はV1>V2になっている。このため、
図7Aのセクション(c)に示される如く、各画素の劣化速度(つまり各画素に供給される電流)は同一となる。その結果、各画素に対するエージングレベルのばらつきは解消される。
【0034】
制御盤430は、メモリ430aを備える。メモリ430aは、例えば不揮発性メモリであり、ルックアップテーブル(LUT)431を保存している。LUT431は、各画素Pに対する印加電圧の補正係数を表す。LUT431は、
図7Bに示される如く、各画素Pの発光部510における位置(X,Y)と補正係数とが対応するテーブルである。
図7Bには、位置(X1,Y1)の画素の補正係数K(X1,Y1)が示されている。
【0035】
制御盤430は、画素Pの発光部510における位置(X,Y)に対応する補正係数KをLUT431から抽出し、抽出した補正係数Kを一定電圧V0に乗算した電圧を画素Pに印加する。本実施形態において、LUT431は、テーブルデータとして例示される。
【0036】
図8は、発光パネル500の製造方法の概略的なフローチャートである。
図1乃至
図8を用いて、発光パネル500の製造方法が説明される。
【0037】
(ステップS110)
ステップS110において、
図5を参照して説明された如く、支持台100上に発光パネル500が設置される。発光パネル500が支持台100上に設置された後、ステップS120が実行される。
【0038】
(ステップS120)
ステップS120において、
図6を参照して説明された如く、LUT431から補正係数が取得される。ステップS120に続いて、ステップS130が実行される。本実施形態において、ステップS120は、取得工程として例示される。
【0039】
(ステップS130)
ステップS130において、回路基板520は、駆動信号として、制御盤430により補正された電圧を発光部510に出力する。この結果、発光パネル500の発光部510は、発光する。発光パネル500の発光部510は、全面点灯するので、エージング処理が進行する。ステップS130に続いて、ステップS140が実行される。本実施形態において、ステップS130は、エージング工程として例示される。
【0040】
(ステップS140)
ステップS140において、制御盤430は、エージング処理(ステップS130)の開始から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していないと制御盤430により判定されたならば(ステップS140でNO)、ステップS130が再度実行される。一方、エージング処理の開始から所定時間が経過したと制御盤430により判定されたならば(ステップS140でYES)、ステップS150が実行される。
【0041】
(ステップS150)
ステップS150において、エージング処理が終了されて、
図8に示される動作は終了する。
【0042】
図9は、補正係数を算出する手順の例示的なフローチャートである。
図2、
図4、
図7A、
図7B、
図9を用いて、補正係数の算出手順が説明される。
【0043】
(ステップS210)
ステップS210において、
図5を参照して説明された如く、支持台100上に発光パネル500が設置される。発光パネル500が支持台100上に設置された後、ステップS220が実行される。
【0044】
(ステップS220)
ステップS220において、
図4のセクション(a)を参照して説明された如く、発光部510の各画素Pに対して、回路基板520から一定電圧V0が印加される。ステップS220に続いて、ステップS230が実行される。
【0045】
(ステップS230)
ステップS230において、制御盤430により各画素Pに流れる電流が測定される。例えば画素P1の電流の測定値I1が得られ、画素P2の電流の測定値I2が得られる。ステップS230に続いて、ステップS240が実行される。本実施形態において、ステップS230は、演算工程の第1段階として例示され、一定電圧V0は、基準電圧として例示される。
【0046】
(ステップS240)
ステップS240において、ステップS220で印加された一定電圧V0と、ステップS230で測定された各画素Pの電流とに基づき、制御盤430により補正係数が算出される。例えば、画素P1の補正係数C1が得られ、画素P2の補正係数C2が得られる。ステップS240に続いて、ステップS250が実行される。本実施形態において、ステップS240は、演算工程の第2段階として例示される。
【0047】
(ステップS250)
ステップS250において、ステップS240で算出された補正係数と、各画素の位置とに基づき、制御盤430によりテーブルデータが作成され、メモリ430aにLUT431として保存されて、
図9の動作を終了する。本実施形態において、ステップS250は、演算工程の第3段階として例示される。
【0048】
図9に示される動作は、発光パネル500ごとに実行してもよい。この場合には、
図9の動作に引き続いて、
図8のステップS120から実行すればよい。代替的に、
図9に示される動作は、同一仕様の発光パネル500について1回だけ実行するようにしてもよい。この場合には、各発光パネル500について、メモリ430aにLUT431として保存されている同じ補正係数のテーブルを用いることにより、エージング処理を速やかに実行することができる。
【0049】
上述の如く、本実施形態では、LUT431は、各画素Pに対する印加電圧の補正係数テーブルを有する。代替的に、LUT431は、複数の画素(例えば3×3=9画素)の画素ブロックごとの補正係数テーブルを有してもよい。
【0050】
図10は、補正係数テーブル432の例示的な図である。
図10に示される如く、画素ブロックPB1乃至PB16に対して、それぞれ、補正係数K1乃至K16が設定されている。
図10に示される形態では、ステップS230において、画素ブロックの全画素(例えば3×3=9画素)の電流を測定し、その平均値を画素ブロックの測定値としてもよい。代替的に、画素ブロックの代表画素(例えば3×3の中央の画素)の電流のみを測定し、その測定値を画素ブロックの測定値としてもよい。本実施形態において、補正係数テーブル432は、テーブルデータとして例示される。
【0051】
図10に示される形態では、制御盤430は、画素ブロックごとに印加電圧を補正すればよい。代替的に、制御盤430は、画素ブロックごとの補正係数を補間して、1画素ごとの補正係数を算出し、1画素ごとに印加電圧を補正してもよい。
【0052】
<第2実施形態>
図11は、エージング処理を実行するエージング装置の制御構成を示すブロック図である。
図12は、補正係数を算出する手順の例示的なフローチャートである。
図2、
図11、
図12を用いて、補正係数の算出手順が説明される。
【0053】
制御盤430は、例えば不揮発性メモリからなるメモリ433を備える。メモリ433は、各画素に対する印加電圧の補正係数を表す補正関数F(X,Y)を保存している。補正関数F(X,Y)は、各画素の位置(X,Y)に対する補正係数を表す。例えば画素P2の位置が(X2,Y2)とすると、F(X2,Y2)が画素P2の補正係数を表す。例えば
図7Aのセクション(a)に示される補正関数F1は、位置A,B(
図2)を結ぶ直線上に位置する画素の補正係数を表す。制御盤430は、位置(Xp,Yp)の画素Pに対する補正係数をメモリ433の補正関数F(X,Y)からF(Xp,Yp)として算出する。制御盤430は、算出した補正係数を一定電圧V0に乗算した電圧値を画素Pに印加する。
【0054】
(ステップS310)
ステップS310において、
図5を参照して説明された如く、支持台100上に発光パネル500が設置される。発光パネル500が支持台100上に設置された後、ステップS320が実行される。
【0055】
(ステップS320)
ステップS320において、
図4のセクション(a)を参照して説明された如く、発光部510の各画素Pに対して、回路基板520から一定電圧V0が印加される。ステップS320に続いて、ステップS330が実行される。
【0056】
(ステップS330)
ステップS330において、制御盤430により各画素に流れる電流が測定される。ステップS330に続いて、ステップS340が実行される。本実施形態において、ステップS330は、演算工程の第1段階として例示される。
【0057】
(ステップS340)
ステップS340において、ステップS320で印加された一定電圧と、ステップS330で測定された各画素の電流とに基づき、制御盤430により補正係数が算出される。ステップS340に続いて、ステップS350が実行される。本実施形態において、ステップS340は、演算工程の第2段階として例示される。
【0058】
(ステップS350)
ステップS350において、ステップS340で算出された補正係数と、各画素の位置とに基づき、制御盤430により各画素の補正係数を表す補正関数F(X,Y)が作成され、メモリ433に保存されて、
図12の動作を終了する。補正関数F(X,Y)は、例えば、発光部510の各画素(X,Y)の補正係数を最も良く満たす曲面を表す関数として作成される。本実施形態において、ステップS350は、演算工程の第3段階として例示される。
【0059】
上述の如く、本実施形態では、メモリ433は、各画素Pに対する印加電圧の補正係数を表す補正関数を保存している。代替的に、メモリ433は、画素ブロックごとの補正係数テーブルと、この補正係数テーブルから1画素ごとの補正係数を算出するための補正関数とを保存してもよい。本実施形態及びこの形態では、LUT431に比べて、メモリに必要な容量を低減することができる。
【0060】
<第3実施形態>
図13は、発光パネル500の概略的な断面図である。
図2及び
図13を用いて、発光パネル500に対するエージング処理が説明される。
【0061】
発光パネル500に対するエージング処理のために、支持台100が用意される。発光パネル500は、支持台100上でエージング処理を受ける。支持台100上の発光パネル500の輝度分布を測定するための輝度計200及び輝度計200が取得した輝度データを処理するコンピュータ300が用意される。回路基板520は、発光部510の各画素を発光させるための駆動信号を、フレキシブル基板530を介して、発光部510に出力する。制御盤430は、コンピュータ300に電気的に接続される。コンピュータ300は、輝度計200によって測定された輝度のデータを制御盤430に出力する。
【0062】
回路基板520からの駆動信号の出力の結果、発光パネル500は、全面点灯する。回路基板520が生成した駆動信号により、発光部510の全画素Pに対して一定の電圧V0が印加される。しかし、輝度計200によって測定される実際の輝度は、各画素Pに供給される電流によって変動する。
【0063】
図14は、エージング処理を実行するエージング装置の制御構成を示すブロック図である。
図15は、補正係数を算出する手順の例示的なフローチャートである。
図2、
図14、
図15を用いて、補正係数の算出手順が説明される。
【0064】
制御盤430は、メモリ430bを備える。メモリ430bは、例えば不揮発性メモリであり、LUT434を保存している。LUT434は、画素に供給される電流と輝度との関係である電流効率を表すテーブルである。すなわち、LUT434は、画素Pが発光したときの輝度と、そのときに画素Pに供給されている電流との関係を表す。制御盤430は、コンピュータ300から出力される各画素Pの輝度のデータと、LUT434の電流効率とから、各画素Pに供給されている電流を算出する。制御盤430は、算出した電流と、回路基板520から各画素Pに印加される一定電圧V0とに基づき、補正係数を算出する。
【0065】
(ステップS410)
ステップS410において、
図13を参照して説明された如く、支持台100上に発光パネル500が設置される。発光パネル500が支持台100上に設置された後、ステップS420が実行される。
【0066】
(ステップS420)
ステップS420において、
図4のセクション(a)を参照して説明された如く、発光部510の各画素Pに対して、回路基板520から一定電圧V0が印加される。ステップS420に続いて、ステップS430が実行される。
【0067】
(ステップS430)
ステップS430において、輝度計200により各画素Pの輝度が測定される。例えば画素P1の輝度の測定値L11が得られ、画素P2の輝度の測定値L12が得られる。ステップS430に続いて、ステップS440が実行される。本実施形態において、ステップS430は、演算工程の第1段階として例示される。
【0068】
(ステップS440)
ステップS440において、ステップS430で測定された各画素Pの輝度と、LUT434に保存されている電流効率とから、各画素Pに対して供給されている電流が取得される。ステップS440に続いて、ステップS450が実行される。
【0069】
(ステップS450)
ステップS450において、ステップS420で印加された一定電圧V0と、ステップS44で取得された各画素Pに供給されている電流とに基づき、制御盤430により補正係数が算出される。例えば画素P1の補正係数C11が得られ、画素P2の補正係数C12が得られる。ステップS450に続いて、ステップS460が実行される。本実施形態において、ステップS440,S450は、演算工程の第2段階として例示される。
【0070】
(ステップS460)
ステップS460において、ステップS450で算出された補正係数と、各画素の位置とに基づき、制御盤430によりテーブルデータが作成され、メモリ430aにLUT431として保存されて、
図15の動作を終了する。本実施形態において、ステップS460は、演算工程の第3段階として例示される。
【0071】
上述の如く、本実施形態では、各画素Pの輝度を測定する。各画素Pの輝度測定は、各画素Pに供給される電流を測定するのに比べて短時間で行える。このため、本実施形態では、各画素Pの補正係数を短時間で算出することができる。
【0072】
図15に示される動作は、発光パネル500ごとに実行してもよい。この場合には、
図15の動作に引き続いて、
図8のステップS120から実行すればよい。代替的に、
図15に示される動作は、同一仕様の発光パネル500について1回だけ実行するようにしてもよい。この場合には、各発光パネル500について、LUT431として保存されている同じ補正係数のテーブルを用いることにより、エージング処理を速やかに実行することができる。
【0073】
上記第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、補正係数のテーブルデータを作成しているが、本開示は、これに限られない。例えば、上記第2実施形態と同様に、補正関数を作成してもよい。
【0074】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、有機EL(Electro Luminescence)素子等の発光素子を用いた表示装置であって、発光素子を発光させてその輝度変化を安定化させる処理であるエージングの技術に関する。まず、エージング技術の課題について説明した後、第4実施形態の構成等について説明する。
【0075】
(エージング技術の課題)
近年、電圧を印加すると発光する発光素子を用いた表示装置が開発されている。そして、発光素子として有機EL素子を用いた、有機EL表示装置が広く活用されている。発光開始直後の時点から累積発光時間の増加に伴い、発光素子の最大輝度は低減する。さらに、当該最大輝度は、発光素子の発光開始直後の時点から、初期の累積発光期間では急峻に低減し、その後の累積発光期間では緩やかに低減するという傾向がある。そのため、発光素子の寿命をその最大輝度が出荷直後の最大輝度から半減した時点と定めた場合、何も対策を採らなければ、表示装置の出荷後短期間で、発光素子の最大輝度が半減してしまい、発光素子の寿命となるおそれがある。
【0076】
これに対し、一般的な表示装置では、その出荷前にエージングが行われている。エージングとは、発光素子を一定時間発光させて、その最大輝度を意図的に低減させ、輝度変化を安定化させる処理である。出荷前の表示装置にエージングを行うと、発光素子の最大輝度が急峻に低減する期間が出荷の時点で終了している。このため、出荷後の全期間で発光素子の最大輝度は緩やかに低減する。これにより、表示装置の出荷後短期間で、発光素子の最大輝度が半減することを抑制できる。
【0077】
ところで、上記第1乃至第3実施形態において説明されたエージングレベルの位置的なばらつきを緩和するという課題以外に、表示装置の製造効率を向上させるために、エージングにかかる時間を短縮したいという要請がある。これに対し、発光素子をエージングするエージングモード、および発光素子を用いて映像を表示する映像表示モードを切り替え、各モードで異なる態様で発光素子を発光させることにより、エージング時間の短縮を図る技術が提案されている。
【0078】
例えば、特開2010−135685号公報には、外部のエージング装置から発光素子に電圧を印加して、1フレームの全期間で発光素子を発光させる技術が開示されている。特開2010−135685号公報に開示された有機EL表示装置は、
図20に示す通りである。有機EL表示装置901は、リセットトランジスタ932と駆動トランジスタ934と点灯トランジスタ935と第1トランジスタ936とキャパシタ938と電源線939と発光素子940とを有する画素部930を、複数備えている。
【0079】
エージングモードにおいて、第1トランジスタ936は、第2トランジスタ952を有する外部端子部950を介して、外部のエージング装置に接続される。また、エージングモードにおいて、第1トランジスタ936は、外部のエージング装置の操作により、電源線939と発光素子940とを接続する機能を有する。
【0080】
ところで、映像表示モードにおいて、1フレームは書き込み期間とその後の発光期間とを有し、1フレーム内で書き込み期間および発光期間が切り替わる。書き込み期間では、全画素においてデータ電圧がキャパシタ938に保持される。発光期間では、全画素において点灯トランジスタ935をオン状態にする電圧が印加されて、発光素子940に電流が流れ、発光素子940が発光して映像が表示される。
【0081】
一方、エージングモードでは1フレームの全期間を発光期間とする。エージングモードでは、電源線939と発光素子940とが第1トランジスタ936を介して接続され、発光素子940に電流が流れ、発光素子940が発光してエージングが行われる。このように、エージングモードでは、映像表示モードでの書き込み期間のように、データ電圧をキャパシタ938に保持する必要が無い。したがって、エージングモードでの発光期間は、映像表示モードでの発光期間よりも長くなる。そのため、この構成によるエージングモードでは、エージングモードで映像表示モードと同じ駆動を行う場合よりも、エージング時間を短縮できる。
【0082】
また、特開2006−195030号公報には、映像表示モードにおいて有機EL表示パネル内から発光素子に連続電圧を印加し、同公報における
図11に示すようにエージングモードにおいて外部のエージング装置から発光素子にパルス電圧を印加する技術が開示されている。同公報には、発光素子にパルス電圧を印加する方が、連続電圧を印加するよりも、発光素子の最大輝度が急峻に低減する傾向があるので、エージング時間を短縮できる旨が記載されている。
【0083】
ところで、上記従来の表示装置のように、外部のエージング装置を用いて出荷前の表示装置にエージングを行う場合、製造工程において、エージング装置がすべて使用中であるとエージング装置が空くまで待ち時間が生じる。また、エージングは、発光素子を一定時間発光させる処理であり、時間がかかる。そのため、外部のエージング装置を用いてエージングを行う場合、単位時間当たり何台の表示装置を製造できるかというスループットが低下し、製造効率が低下するという問題がある。
【0084】
そこで、本実施形態は、エージング時間を短縮しつつ、製造効率の低下を抑制できる表示装置を提供する。
【0085】
(有機EL表示装置の全体構成)
図16は、第4実施形態の有機EL表示装置の概略構成を示す模式的に示すブロック図である。第4実施形態に係る、発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置601の構成について
図16を用いて説明する。
【0086】
図16に示すように、有機EL表示装置601は、有機EL表示パネル605と、回路に電力を供給する電源部610と、回路を制御する制御部620と、駆動回路部622とから構成されている。有機EL表示パネル605は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、画素が、例えば、マトリクス状に配列されている。各画素は、画素回路と発光素子とから構成されている。駆動回路部622は、4つの駆動回路622a,622b,622c,622dから構成されている。
【0087】
なお、本実施の形態に係る有機EL表示装置601において、有機EL表示パネル605に対する駆動回路部622の配置は、これに限らない。
【0088】
図17は、
図16に示す有機EL表示装置601の一画素分の回路図である。
図17に示すように、有機EL表示装置601は、電源部610と、制御部620と、駆動回路部622と、画素回路630と、有機EL素子640とを備える。
図16および
図17に示す駆動回路部622は、選択信号生成回路624とデータ信号生成回路626とDAC628(Digital to Analog Converter)とからなる。画素回路630は、選択線631と、データ線632と、電源線633と、スイッチングトランジスタ634と、駆動トランジスタ635と、保持容量636とからなる。スイッチングトランジスタ634および駆動トランジスタ635は、例えば薄膜トランジスタ素子である。
【0089】
電源部610は、電源線633を介して有機EL素子640に接続され、有機EL素子640に駆動のための電力を供給する。具体的には、電源部610は、有機EL素子640をエージングするエージングモードおよび有機EL素子640を用いて映像を表示する映像表示モードにおいて、同一の電源電圧VDDを電源線633に出力する。
【0090】
制御部620は、エージングモードおよび映像表示モードのいずれかで選択的に動作する。具体的には、制御部620は、操作者の操作に基づく操作信号の入力により、エージングモード及び映像表示モードのどちらのモードで動作するのかを判定する。各モードの判定結果に基づき、制御部620は、選択信号生成回路624に、各モードに応じた選択信号を出力し、データ信号生成回路626に、各モードに応じたデジタル輝度信号を出力し、且つ、DAC628に、各モードに応じた切り替え信号を出力する。
【0091】
より詳しく述べると、選択信号生成回路624はシフトレジスタである。制御部620は、1フレームごとにスタートパルスを選択信号生成回路624に一回出力する。これにより、シフトレジスタにおいて順次スタートパルスがシフトし、有機EL素子640を発光させる行が選択されることとなる。
【0092】
また、データ信号生成回路626に出力するデジタル輝度信号に関し、制御部620は、有機EL素子640の発光階調を制御するためのデジタル輝度信号を、データ信号生成回路626に出力する。制御部620は、輝度信号のレベルを、デジタル信号のビット値で表す。制御部620は、デジタル輝度信号としては、例えば、輝度Y、色差CbおよびCrで表すコンポーネント信号を用いればよい。制御部620から出力されるデジタルコンポーネント信号のビット数は、エージングモードにおいて10bitであり、映像表示モードにおいて8bitである。また、制御部620は、10bitあるいは8bitのいずれのデジタルコンポーネント信号を扱う(使用する)かを示す切り替え信号を、DAC628に出力する。すなわち、制御部620は、エージングモードにおいて、映像表示モードにおいて使用するビット数より大きいビット数を使用する。
【0093】
選択信号生成回路624は、制御部620が出力した選択信号に基づき、選択線631を介して、スイッチングトランジスタ634をオン状態にする電圧を、発光させる有機EL素子640の行のスイッチングトランジスタ634のゲート電極に印加する。一方、選択信号生成回路624は、制御部620が出力した選択信号に基づき、選択線631を介して、スイッチングトランジスタ634をオフ状態にする電圧を、発光させない有機EL素子640の行のスイッチングトランジスタ634のゲート電極に印加する。
【0094】
データ信号生成回路626は、輝度Y、色差CbおよびCrで表すデジタル輝度信号を、赤(R)、緑(G)、青(B)で表すデジタル輝度信号へ変換する。さらに、データ信号生成回路626は、R、G、Bデジタル輝度信号とデジタル電圧信号との交換マップを用いて、R、G、Bデジタル輝度信号をR、G、Bデジタル電圧信号へ変換する。データ信号生成回路626は、変換したR、G、Bデジタル電圧信号を、DAC628に出力する。
【0095】
DAC628は、有機EL表示装置601に設けられている画素列の個数に対応して設けられている。また、DAC628は、制御部620から画素回路630に向けてデジタル輝度信号を伝送する信号伝送路に設けられている。また、DAC628は、データ信号生成回路626から出力されたデジタル電圧信号をアナログデータ電圧に変換する。DAC628は、当該アナログデータ電圧を、データ線632を介して、スイッチングトランジスタ634のソース電極に印加する。
【0096】
さらに、DAC628において、制御部620からの切り替え信号により、エージングモードにおいて使用するデジタル電圧信号のビット数が、映像表示モードにおいて使用するデジタル電圧信号のビット数よりも大きくなるように、各モードにおいて使用するデジタル電圧信号のビット数が切り替わる。このビット数の切り替えは、映像表示モードにおいて、DAC628に設定された使用可能なデジタル電圧信号のビット数と映像表示モードに必要なビット数との差分だけ上位ビットをマスクし、エージングモードにおいて、当該上位ビットのマスクを行わないことによって実現する。
【0097】
例えば、DAC628は、使用可能なデジタル電圧信号のビット数を10bitとして設計する。このとき、DAC628は、エージングモードでは、使用するデジタル電圧信号のビット数を10bitとする。また、DAC628は、映像表示モードでは、上位2bitをマスクして、使用するデジタル信号のビット数を8bitとする。
【0098】
具体的には、DAC628は、データ信号生成回路626と接続されたレジスタ部、レジスタ部の各レジスタからパラレル入力を受け付け、且つデジタル電圧信号をアナログ電圧信号に変換する変換部、およびデジタル電圧信号の上位2ビットをマスクするマスク部を備える。変換部として、例えば、ラダー抵抗型、抵抗ストリング型、パルス幅変調型、およびデルタシグマ型等のDACを用いることができる。
【0099】
以下、DAC628の一例として、レジスタ部がシフトレジスタであり、レジスタ部にデジタル電圧信号がシリアルで入力される場合を説明する。レジスタ部の上位2bitと変換部との間には、マスク部として、2入力1出力のAND回路を各ビットに対応してそれぞれ備えればよい。この場合、各AND回路の一方の入力端子には、レジスタ部に格納されたデジタル電圧信号が入力され、他方の入力端子には、制御部620から出力された切り替え信号が入力される。ここで、制御部620から出力される切り替え信号のビット数は1bitであり、エージングモードでは1に設定され、映像表示モードでは0に設定される。
【0100】
エージングモードでは、データ信号生成回路626から出力された10bitのデジタル電圧信号が、レジスタ部に格納される。次に、10bitのデジタル電圧信号が、レジスタ部から変換部に出力される。レジスタ部の上位2bitから出力されAND回路を通過した後のビット値は、レジスタ部の上位2bitから出力されAND回路を通過する前のビット値と等しい。これは、AND回路に制御部620から入力されている切り替え信号のビット値が1であるため、AND回路にレジスタ部の上位2bitから入力されるビット値が0であっても1であっても、AND回路を通過する前と通過した後とでは、ビット値が変化しないからである。したがって、レジスタ部の10bitがそのまま変換部に出力される。その後、変換部で10bitのデジタル電圧信号がアナログデータ電圧に変換され、当該アナログデータ電圧がデータ線632へ出力される。
【0101】
映像表示モードでは、データ信号生成回路626から出力された8bitのデジタル電圧信号がレジスタ部に格納される。次に、上位2bitが0である10bitのデジタル電圧信号が、レジスタ部から変換部に出力される。これは、AND回路に制御部620から入力されている切り替え信号のビット値が0であるため、AND回路にレジスタ部の上位2bitから入力されるビット値が0であっても1であっても、AND回路を通過した後では、ビット値が0となるからである。したがって、映像表示モードにおいて、変換部に入力される10bitのデジタル電圧信号の上位2bitは常に0となる。その後、変換部でデジタル電圧信号がアナログデータ電圧に変換され、当該アナログデータ電圧がデータ線632へ出力される。
【0102】
一方、選択信号生成回路624が、スイッチングトランジスタ634のゲート電極に、スイッチングトランジスタ634がオン状態になる電圧を印加すると、駆動トランジスタ635のゲート電極にアナログデータ電圧が印加される。この電圧印加により、アナログデータ電圧に応じた大きさのドレイン電流が駆動トランジスタ635に流れ、このドレイン電流が有機EL素子640に流れ込み、有機EL素子640が発光する。
【0103】
(有機EL表示装置の動作)
図18は、
図16に示す有機EL表示装置601の動作を説明する図である。
図18の横軸は駆動トランジスタ635のゲート電極に印加されるアナログデータ電圧Vdataの大きさを示す。
図18の縦軸はアナログデータ電圧Vdataが印加された時の有機EL素子640の発光輝度Lを示す。電圧Vmaxは、映像表示モードにおける最大輝度Lmaxで有機EL素子640を発光させるのに必要な電圧である。電圧VEは、エージングに必要な電圧である。
【0104】
図18に示すように、有機EL素子640に印加されるアナログデータ電圧Vdataが大きいほど、有機EL素子640の発光輝度Lが上昇する傾向がある。本実施形態の有機EL表示装置601では、エージングに必要な電圧VEを、映像表示に必要な電圧と同様に、制御部620から印加している。電圧VEを電圧Vmaxよりも大きく設定することにより、エージング時の有機EL素子640の発光輝度LEが、映像表示モードでの最大輝度Lmaxよりも大きくなり、エージング時間を短縮できる。
【0105】
このように、エージングモードにおいて、有機EL素子640にエージング用の高い電圧VEが印加される。これにより、エージングモードでは、映像表示モードにおける最大輝度Lmaxよりも高い発光輝度LEで、有機EL素子640が発光する。その結果、本実施形態では、エージング時間を短縮させている。
【0106】
そのため、有機EL表示装置601では、電源部610や画素回路630の回路の設計に、映像表示モードで駆動する場合よりも大きい余裕を持たせている。例えば、電源部610は、映像の表示に必要な最大の電源電圧よりも大きい電源電圧に耐えられるように設計されている。また、スイッチングトランジスタ634および駆動トランジスタ635はエージング用の高い電圧VEに対する耐圧特性で設計する必要がある。なお、例えば、電圧VEは電圧Vmaxの1.5倍〜2倍であり、エージングモードでの発光輝度LEは映像表示モードでの最大輝度Lmaxの2倍〜3倍であり、エージング時間は2時間〜3時間となる。
【0107】
図19は、
図16に示す有機EL表示装置601における、エージングモードおよび映像表示モードの動作のフローチャートである。
【0108】
まず、制御部620は、エージングを行うか否かを判定する(ステップS501)。具体的には、操作者がエージングを行うと判断した場合、有機EL表示装置601の外部から、操作者により操作信号が制御部620に入力される。このように、制御部620は、エージングを行うべきという操作信号が入力された場合はエージングを行い、エージングを行うべきという操作信号が入力されていない場合にはエージングを行わない。
【0109】
エージングを行うのであれば(ステップS501においてYES)、制御部620は、DAC628において使用するデジタル信号のビット数を、8bitから10bitへ切り替える(ステップS502)。具体的には、制御部620は、DAC628に備えられたAND回路に、切り替え信号1を出力する。
【0110】
次に、エージングモードの10bitの映像信号を用いて表示を行う(ステップS503)。具体的には、制御部620は、選択信号生成回路624を介して一行目に対応する選択線631に選択電圧を出力する。また、制御部620は、DAC628からエージングでのアナログデータ電圧VEが出力されるような10bitのデジタルコンポーネント信号をデータ信号生成回路626に出力する。
【0111】
次に、データ信号生成回路626は、この10bitのデジタルコンポーネント信号を、10bitのR、G、Bデジタル輝度信号へ変換し、さらに10bitのデジタル電圧信号へ変換する。DAC628は、10bitのデジタル電圧信号を取得し、アナログデータ電圧VEへ変換する。アナログデータ電圧VEは、データ線632およびスイッチングトランジスタ634を介して、駆動トランジスタ635のゲート電極に印加される。すると、アナログデータ電圧VEに応じた電流が、駆動トランジスタ635から有機EL素子640に流れ、有機EL素子640が発光する。この一行ごとの発光動作を有機EL表示パネル605の二行目から最終行まで繰り返すことで、1フレームの表示が完了する。
【0112】
1フレームの表示が完了すると、制御部620は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS504)。所定時間が経過していないと判定すると(ステップS504においてNO)、ステップS503の処理に戻る。所定時間が経過したと判定すると(ステップS504においてYES)、ステップS505の処理に進む。これにより、所定時間、有機EL素子640を高輝度で発光させてエージングを行うことができる。なお、エージング完了の判定基準となる所定時間は、発光輝度の累積発光時間と最大輝度との関係から、目標とするエージング直後の発光素子の最大輝度を用いて予め設定される。
【0113】
エージングが完了すると、制御部620は、DAC628において使用するデジタル信号のビット数を、10bitから8bitへ切り替える(ステップS505)。具体的には、制御部620は、DAC628に備えられたAND回路に、切り替え信号0を出力する。
【0114】
エージングを行わないのであれば(ステップS501においてNO)、通常の映像信号を用いて、映像の表示を行う(ステップS506)。具体的には、制御部620は、DAC628から映像表示モードでのアナログデータ電圧Vdataが出力されるような8bitのデジタルコンポーネント信号をデータ信号生成回路626に出力する。
【0115】
データ信号生成回路626は、8bitのデジタルコンポーネント信号を8bitのR、G、Bデジタル輝度信号にそれぞれ変換し、さらに8bitのデジタル電圧信号へ変換する。DAC628は、8bitのデジタル電圧信号を取得し、アナログデータ電圧Vdataへ変換する。
【0116】
その後、DAC628が、データ線632を通じてスイッチングトランジスタ634へアナログデータ電圧Vdataを出力すると、アナログデータ電圧Vdataは、データ線632およびスイッチングトランジスタ634を介して、駆動トランジスタ635のゲート電極に印加される。すると、アナログデータ電圧Vdataに応じた電流が、有機EL素子640に流れ、有機EL素子640が発光する。これを二行目から最終行まで繰り返すことで、1フレームの表示が完了する。
【0117】
(第4実施形態の効果)
この第4実施形態の構成では、エージングモードにおいて、通常の映像表示モードにおける最大輝度Lmaxよりも高い発光輝度LEで、有機EL素子640を発光させる。したがって、通常の映像表示モードにおける発光輝度で発光させる場合よりも、エージング時間を短縮できる。また、エージングモードであっても、外部のエージング装置を用いずにエージングを行うことができるので、スループットが低下することを抑制できる。したがって、第4実施形態の構成では、エージング時間を短縮しつつ、製造効率の低下を抑制できる。
【0118】
ところで、外部のエージング装置を用い、且つ、出荷前の複数の有機EL表示装置に同時にエージングを行うには、エージング装置を当該台数分稼働する必要がある。しかしながら、工場で複数のエージング装置を稼働させると、工場設備が複雑化する。また、外部のエージング装置を用いると、外部から発光素子に電圧を印加するための接続端子を介して静電気が内部に侵入し、回路を破壊してしまうおそれもある。本第4実施形態の構成では、外部のエージング装置を用いずにエージングを行うことができる。したがって、工場設備の複雑化および静電気による回路の破壊も抑制できる。
【0119】
さらに、第4実施形態の構成では、エージングを行うか否かを判定してから、制御部620が、エージングモードおよび映像表示モードに対応して、DAC628において使用するデジタル電圧信号のビット数の切り替えを行う。そのため、映像表示モードにおいて、上位2bitに冷蔵庫などの他の家電製品からのノイズデータが格納されても、上位2bitがマスクされて、ビット値が0となる。これにより、映像表示モードにおいて、有機EL素子640が、エージングモードにおける発光輝度と同等の高い輝度で発光することを抑制できる。
【0120】
(第4実施形態の変形例)
以上の通り、本第4実施形態について説明したが、本第4実施形態は上記の構成及び動作等に限られない。以下に、上記第4実施形態の変形例について説明する。
【0121】
(出荷後のエージング)
上記第4実施形態では、有機EL表示装置の出荷前のエージングについて述べた。しかしながら、これに限らず、出荷後のエージングについても上記の構成及び動作等を採用できる。出荷後のエージングにおいても、エージングモードおよび映像表示モードのいずれかで選択的に動作すると、エージングにかかる手間を低減できる。具体的には、出荷後の有機EL表示装置にトラブルが発生した場合でも、エージングに外部のエージング装置を用いないので、工場に差し戻すことなくオンサイトでエージングを行うことができる。なお、出荷後にエージングを行う場合とは、例えば、有機EL表示装置において、各発光素子の最大輝度にばらつきが生じた場合である。
【0122】
(エージング完了の判定)
上記第4実施形態では、
図19のステップS504に示すように、エージング開始から所定時間が経過したことにより、エージング完了を判定している。しかしながら、これに限らず、センサで発光素子の発光輝度を直接検出して、この輝度検出値が所定の輝度を上回っているか否かによって、エージング完了を判定してもよい。具体的には、制御部620は、例えば輝度検出値が所定の輝度以下になると、エージングが完了したと判定してもよい。
【0123】
(DACの切り替え)
上記第4実施形態では、DAC628において使用されるデジタル信号のビット数の切り替えを、制御部620がDAC628に切り替え信号を送ることで制御している。しかしながら、これに限らず、データ信号生成回路626から出力されるデータに、ビット数の切り替え信号を付加するようにしてもよい。この変形例によれば、制御部620がDAC628に切り替え信号を送らなくても、DAC628におけるビット数の切り替えを制御できる。
【0124】
また、上記第4実施形態では、DAC628が使用するデジタル信号のビット数を8bitと10bitとで切り替えたが、これに限らない。エージングモードにおけるアナログデータ電圧VEを映像表示モードにおける最大輝度に対応する電圧Vmaxと比べて何倍にするかにより、デジタル信号のビット数を設定すればよい。
【0125】
例えば、電圧VEが電圧Vmaxの2倍以下であれば、DAC628が使用するデジタル信号のビット数を8bit(映像表示モード)と9bit(エージングモード)とで切り替えればよい。例えば、電圧VEが電圧Vmaxの2倍より大きく4倍以下であれば、DAC628が使用するデジタル信号のビット数を8bit(映像表示モード)と10bit(エージングモード)とで切り替えればよい。
【0126】
(エージングモードの動作)
上記第4実施形態におけるエージングモードの動作に代えて、上記第1乃至第3実施形態において説明されたエージング処理の動作を実行してもよい。また、上記第4実施形態におけるエージングモードの動作において、上記第1乃至第3実施形態において説明されたエージング処理をさらに考慮した動作を実行してもよい。これによって、エージングレベルの位置的なばらつきが緩和された有機EL表示パネル605を得ることができる。
【0127】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、有機EL素子等の発光素子を用いた表示パネルのエージングの方法に関する。まず、エージングの方法の課題について説明した後、第5実施形態の構成等について説明する。
【0128】
(エージングの方法の課題)
近年、電圧を印加すると発光する発光素子を用いた表示パネルが開発されている。そして、発光素子として有機EL素子を用いた、有機EL表示パネルが広く活用されている。発光開始直後の時点から累積発光時間の増加に伴い、発光素子の最大輝度は低減する。さらに、当該最大輝度には、発光素子の発光開始直後の時点から、当初の累積発光期間である初期劣化期間では急峻に低減し、その後の通常劣化期間では緩やかに低減するという輝度劣化特性がある。そのため、発光素子の寿命を、その最大輝度が出荷直後の最大輝度からある割合だけ低減した時点と定めた場合、何も対策を採らなければ、表示パネルの出荷後短期間で、発光素子の最大輝度がある割合まで低減してしまい、発光素子の寿命となるおそれがある。
【0129】
これに対し、一般的な表示パネルでは、その出荷前にエージングが行われている。エージングとは、発光素子を一定時間発光させて、その最大輝度を意図的に低減させ、輝度変化を安定化させる処理である。具体的には、すべての発光色の発光素子を同時に発光開始し、所定時間経過後、同時に発光停止することにより、表示パネルのエージングが行われる。出荷前の表示パネルにエージングを行うと、発光素子の最大輝度が急峻に低減する期間が出荷の時点で終了している。したがって、出荷後の全期間で発光素子の最大輝度は緩やかに低減する。このようにエージングを行えば、表示パネルの出荷後短期間で、発光素子の最大輝度がある値にまで低減することを抑制できる。
【0130】
ところで、上記第1乃至第3実施形態において説明されたエージングレベルの位置的なばらつきを緩和するという課題以外に、発光素子は発光色ごとに異なる輝度劣化特性を有するため、累積発光期間における最大輝度の低減量が発光色ごとに異なることがあるという問題がある。そのため、すべての発光色の発光素子を同時に発光開始し、所定時間後、同時に発光停止するエージングを行うと、発光色ごとに発光素子のエージングが過剰となったり不足したりし、発光素子の寿命が発光色ごとに異なってしまうおそれがある。
【0131】
これに対し、特開2003−323979号公報には、エージング期間の長さ(以下、「エージング時間」という)が、発光素子の輝度劣化特性に応じて発光色の赤(R),緑(G),青(B)ごとに調整される技術が開示されている。エージングを行う際、まずRの発光素子のエージングを開始し一定時間経過後に終了し、次にGの発光素子のエージングを開始し一定時間経過後に終了し、最後にBの発光素子のエージングを開始し一定時間経過後に終了する技術が開示されている。すなわち、上記公報に記載の技術では発光色ごとに順次エージングを行う。
【0132】
ところで、上記従来の表示パネルのエージング方法では、輝度劣化特性を考慮したエージングを行っているので、発光色ごとに発光素子のエージングが過剰となったり不足したりして発光素子の寿命が発光色ごとに異なってしまうことを抑制できる。しかしながら、発光色ごとに順次エージングを行うため、発光素子すべてのエージングを行うためには、各発光色のエージング時間を足し合わせた時間が必要である。そのため、エージング時間が長くなってしまうという問題がある。エージング時間が長くなると、表示パネルの製造効率の低下につながる。
【0133】
そこで、本第5実施形態では、発光色ごとの異なる輝度劣化特性を考慮したエージングを行いつつ、エージング時間を短縮できる、表示パネルのエージング方法を提供する。
【0134】
(有機EL表示パネルの全体構成)
本第5実施形態に係る、発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示パネルエージングシステムの構成について
図21、
図22を用いて説明する。
【0135】
図21は、有機EL表示パネル701の模式図である。
図22は有機EL表示パネル701の1ピクセルの回路図および有機EL表示パネル701に接続されるエージングシステムのブロック図である。
【0136】
図21に示すように、有機EL表示パネル701は、平面視すると長方形状である。有機EL表示パネル701は、複数のピクセルを有する画素領域702aと、画素領域702aを囲む周辺部702bとからなる。また、有機EL表示パネル701は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルである。有機EL表示パネル701には、ピクセルが、例えば、マトリクス状に配列されている。1ピクセルの映像表示は、異なる発光色、例えば、R,G,Bの3つのサブピクセルの発光により行われる。
【0137】
発光素子は、有機EL素子であり、ガラス等からなる基板と、Alのような金属からなるアノード電極と、ホール注入層と、ホール輸送層と、有機材料からなる発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明材料からなるカソード電極と、封止材料とが順に積層されて構成されている。発光素子の発光色がR,G,Bとそれぞれ異なるのは、発光層の材料の違いによる。
【0138】
図22に示すように、有機EL表示パネル701は、サブピクセル710の他に、制御部703、電源部704、選択信号生成回路705、データ信号生成回路707を備える。制御部703は、エージングを行う際、エージング装置709に接続される。Rのサブピクセル710は、選択線711と、データ線712と、電源線713と、スイッチングトランジスタ714と、駆動トランジスタ715と、保持容量716と、発光素子717Rとを含む。
【0139】
G,Bのサブピクセル710の構成は、発光素子717Rに代えてそれぞれ発光素子717G、717Bを備える点以外はRのサブピクセル710と同様である。以下、特に区別の必要が無いときには、発光素子717R,717G,717Bを「発光素子717」と総称する。スイッチングトランジスタ714および駆動トランジスタ715は、例えば薄膜トランジスタ素子である。
【0140】
エージングおよび映像表示のどちらであっても、有機EL表示パネル701の駆動は同じである。まず、制御部703は、電源線713に電源電圧が印加されるように、電源部704を制御する。また、制御部703は、選択信号生成回路705に選択信号を出力し、データ信号生成回路707に、デジタル輝度信号を出力する。
【0141】
より詳しく述べると、選択信号生成回路705はシフトレジスタであり、制御部703は1フレームごとにスタートパルスを選択信号生成回路705に一回出力する。これにより、シフトレジスタにおいて順次スタートパルスがシフトし、発光素子717を発光させる行が選択されることとなる。
【0142】
また、データ信号生成回路707に出力するデジタル輝度信号に関し、制御部703は、発光素子717の発光階調を制御するためのデジタル輝度信号を、データ信号生成回路707に出力する。制御部703は、デジタル輝度信号としては、例えば、輝度Y、色差CbおよびCrで表すコンポーネント信号を用いればよい。
【0143】
選択信号生成回路705は、制御部703が出力した選択信号に基づき、選択線711を介して、スイッチングトランジスタ714をオン状態にする電圧を、発光させる発光素子717の行のスイッチングトランジスタ714のゲート電極に印加する。一方、選択信号生成回路705は、制御部703が出力した選択信号に基づき、選択線711を介して、スイッチングトランジスタ714をオフ状態にする電圧を、発光させない発光素子717の行のスイッチングトランジスタ714のゲート電極に印加する。
【0144】
データ信号生成回路707は、輝度Y、色差CbおよびCrで表すデジタル輝度信号を、R、G、Bで表すデジタル輝度信号へ変換する。さらに、データ信号生成回路707は、R、G、Bデジタル輝度信号とデジタル電圧信号との交換マップを用いて、R、G、Bデジタル輝度信号をR、G、Bデジタル電圧信号へ変換する。データ信号生成回路707は、さらに、R、G、Bデジタル電圧信号をアナログ電圧信号へ変換して、アナログ電圧信号をデータ線712へ出力する。
【0145】
以上により、スイッチングトランジスタ714がオン状態になると、駆動トランジスタ715のゲート電極にアナログ電圧が印加される。これにより、アナログ電圧の大きさに応じたドレイン電流が駆動トランジスタ715に流れ、当該ドレイン電流が発光素子717に流れて、発光素子717が発光する。
【0146】
エージングを行うとき、まず、操作者がR,G,Bごとの発光素子717のエージング時間を、エージング装置709に入力する。次に、エージング時間が、エージング装置709から制御部703に入力されると、制御部703は、映像表示を行うときよりも、高い電源電圧を出力するように、電源部704を制御する。また、制御部703は、データ信号生成回路707に出力するデジタル輝度信号として、R、G、Bデジタル輝度信号が最高階調となるような信号を出力する。
【0147】
(エージング動作)
図23は、
図21、
図22に示す有機EL表示パネル701のエージング実行時のフローチャートである。
【0148】
まず、操作者によりエージング時間tR,tG,tBが入力される(ステップS601)。具体的には、操作者は、予め計算した発光色R,G,Bごとの発光素子のエージング時間を、エージング装置709に入力する。発光色ごとのエージング時間tR,tG,tBは、各発光素子717R,717G,717Bの輝度劣化特性に応じて定められる。本実施の形態では、エージング時間tR,tG,tBは、それぞれ異なっている。
【0149】
エージング装置709は、操作者から入力されたエージング時間tR,tG,tBのなかから最小値t(1)、中間値t(2)、最大値t(3)を求める(ステップS602)。具体的には、エージング装置709がCPUとレジスタとを備える場合、CPUがエージング時間tR,tG,tBを昇順に並べた後、エージング時間tR,tG,tBをレジスタt(N)に格納すればよい。エージング装置709は、エージング時間tR,tG,tBおよび最小値t(1)、中間値t(2)、最大値t(3)を制御部703へ出力する。
【0150】
次に、R,G,Bの発光素子717に同時に電流を供給する(ステップS603)。これにより、R,G,Bの発光素子717が同時に発光し、R,G,Bの発光素子717のエージングが同時に開始される。具体的には、制御部703は、電源部704、選択信号生成回路705、およびデータ信号生成回路707を制御する。その結果、電源部704は、映像表示を行うときよりも高い電源電圧を電源線713に出力する。選択信号生成回路705は、発光素子717を発光させる行を選択する。データ信号生成回路707は、最高階調のR,G,Bデジタル輝度信号に応じたアナログ電圧をデータ線712に出力する。
【0151】
選択信号生成回路705がスイッチングトランジスタ714をオン状態にすると、データ線712のアナログ電圧が、スイッチングトランジスタ714を介して駆動トランジスタ715のゲート電極に印加される。データ線712のアナログ電圧に応じたドレイン電流が、発光素子717に流れ込み、R,G,Bの発光素子717が発光する。すなわち、データ信号生成回路707が、R,G,Bのデータ線712にデジタル輝度信号が最高階調となるようなアナログ電圧を出力することにより、R,G,Bの発光素子717のエージングが行われる。
【0152】
さらに、エージング装置709は、Nに1をセットすると(ステップS604)、所定時間t(N)が経過するまで待機する(ステップS605においてNO)。所定時間t(N)が経過すれば(ステップS605においてYES)、所定時間t(N)に対応する発光色の発光素子717の電流を停止する(ステップS606)。これにより、所定時間t(N)に対応する発光色の発光素子717のエージングは終了する。なお、所定時間t(N)に対応する発光色以外の発光素子717では電流の供給が継続される。
【0153】
具体的には、データ信号生成回路707が、所定時間t(N)に対応する発光色のデータ線712に0Vのアナログ電圧を出力することにより、当該発光素子717の電流が停止する。一方、データ信号生成回路707が、所定時間t(N)に対応する発光色以外のデータ線712にデジタル輝度信号が最高階調となるようなアナログ電圧を出力することにより、当該発光素子717の電流の供給が継続され、エージングも継続される。所定時間t(N)に対応する発光色以外の発光素子717における電流の大きさは、当該発光素子717の電流の停止前後で変わらない。
【0154】
その後、N=3であるか否かが判定される(ステップS607)。N=3でないと判定されると(ステップS607においてNO)、Nに1が加算されて(ステップS608)、ステップS605の処理に戻る。N=3であると判定されると(ステップS607においてYES)、R,G,Bすべての発光素子717のエージング処理が完了する。具体的には、tB<tG<tRの場合には、N=1であるときにステップS607に到達すると、Bの発光素子717Bのエージングが終了する。G,Rの発光素子717G,717Rに流れる電流の大きさは、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了の前後で変わらない。
【0155】
このように、R,G,Bすべての発光素子717のエージングが同時に開始され、入力されたエージング時間tR,tG,tBの経過後、エージングが完了する。
【0156】
(発光色ごとのエージング時間の計算)
ここで、
図23におけるステップS601でエージング装置709に入力するエージング時間tR,tG,tBの決定方法を、
図24A、
図24Bを用いて説明する。
【0157】
図24Aは
図21、
図22に示す有機EL表示パネルの累積発光時間と最大輝度との関係から実施の形態に係るエージング時間を決定するための図である。
図24Bは上記特開2003−323979号公報に記載の技術において、有機EL表示パネルの累積発光時間と最大輝度との関係からエージング時間を決定するための図である。発光素子717の発光開始時点からの当初の間は初期劣化期間であり、最大輝度Lmが急峻に低減する。一方、初期劣化期間の後の通常劣化期間は、最大輝度Lmが緩やかに低減する。
【0158】
本第5実施形態では、エージング時間を決定するために、まず、
図24Aに示すように、発光色ごとに初期劣化後の通常劣化期間に対応する部分に一次近似曲線を引く。この一次曲線の傾きが大きいほど、通常劣化期間における発光素子717の輝度低下率が大きいといえる。通常劣化期間における発光素子717の輝度低下率に対応して、一次曲線の傾きが大きい順に、エージング時間を短くする。ここで、通常劣化期間における一次近似曲線は、1つの発光色における最大輝度から、例えば50%〜40%の間に対応する部分に一次近似曲線を引き、残りの発光色においては同様のtに対応する部分に一次近似曲線を引けばよい。
【0159】
このように、エージング時間tR,tG,tBは、発光素子717の輝度劣化特性に応じて、発光色ごとに異なるように調整されている。
【0160】
特開2003−323979号公報に記載の技術では、エージング時間を決定するために、まず、
図24Bに示すように、発光色ごとに初期劣化期間および初期劣化後の通常劣化期間にそれぞれ一次近似曲線を引き、これら2つの一次近似曲線の交点に対応する時点を求める。さらに、これを発光色ごとの初期劣化期間の終了時点とし、この初期劣化期間の終了時点をエージングの終了時点とする。このように、初期劣化期間の輝度低下率に対応して、エージングの終了時点を設定する。
【0161】
ところで、発光素子717の輝度劣化の原因としては、発光素子717内の界面の劣化および発光素子717の材質自体の劣化が考えられる。発光素子717内の界面の劣化は、初期劣化期間において生じる。発光素子717内の界面の劣化として、例えば、発光層を構成する有機材料が、金属からなるアノード電極に拡散する際に生じる劣化や、発光層に含まれた酸素や水分が、金属からなるアノード電極に拡散する際に生じる劣化が考えられる。これら拡散は、発光素子717の発光の初期段階に終了する。このため、発光素子717内の界面の劣化は、初期劣化期間において生じると考えられる。
【0162】
また、一方、発光素子717の材質自体の劣化、例えば、発光素子717の発光層を構成する材料の劣化は、累積発光期間全体において生じる。これは、発光素子717の材質自体の劣化として、例えば、通電による発光層を構成する有機材料の分解による劣化や、発光層自身が発光することで発生した紫外線による発光層の劣化が考えられる。したがって、エージング中、すなわち初期劣化期間であっても、発光素子717の材料自身の劣化が生じる。
【0163】
図24Bに示すように、特開2003−323979号公報に記載の技術では、発光色ごとの初期劣化期間における輝度劣化特性の違いを考慮し、エージングの終了時点として2つの一次近似曲線の交点に対応する時点を設定している。しかしながら、エージングの終了時点を当該交点とすると、通常劣化期間に対応する部分の一次近似曲線の傾きが大きい場合、エージング中に発光素子の材質自体の劣化がすすんでしまう。その結果、当該傾きの大きい発光色の発光素子の寿命が他の発光素子と比べて、短くなってしまうおそれがある。
【0164】
この場合、エージングを行った後の有機EL表示パネルにおいて、累積発光時間が大きくなり、発光素子の劣化がすすむと、発光色ごとの発光素子の輝度劣化の度合いが、大きく異なるおそれがある。例えば、R,G,Bのすべての画素を用いて発光を行う際に、輝度劣化の度合いが異なると、ホワイトバランスが崩れて、表示映像の画質が劣化してしまう。
【0165】
(第5実施形態の効果)
本実施の形態では、エージング開始時において、R,G,Bの発光素子717R,717G,717Bに同時に電流を供給するため、すべての発光色のエージング期間の開始時点が同じである。そのため、R,G,Bすべてのエージング期間の少なくとも一部が重なっている。したがって、発光色ごとのエージングを順次行う場合よりも、エージング時間を短縮できる。
【0166】
また、本実施の形態では、発光色ごとの輝度劣化特性を考慮したエージング時間でエージングを行っている。そのため、発光色ごとに発光素子717のエージングが過剰となったり不足したりすることにより発光素子717の寿命が発光色ごとに異なってしまい、表示映像の画質が劣化することを抑制できる。
【0167】
(第5実施形態の変形例)
以上の通り、本第5実施形態について説明したが、本第5実施形態は上記の構成及び動作等に限られない。以下に、上記第5実施形態の変形例について説明する。
【0168】
(エージング開始時に同時に電流を供給する発光素子の数)
上記第5実施形態では、エージング開始時に3色の発光素子に同時に電流を供給することにより、すべての発光色のエージング期間の開始時点が同じとなっている。しかしながら、これに限らず、少なくとも2色の発光素子に同時に電流を供給すれば、当該2色のエージング期間の開始時点は同じとなる。その結果、エージングを同時に行うことによるエージング時間短縮の効果を得ることができる。
【0169】
(エージング期間の重ね方)
上記第5実施形態では、3色のエージング期間が重なっている期間がある。しかしながら、これに限らず、ある発光色のエージング期間中に、他の発光色の少なくとも1つのエージング期間を開始させることにより、エージング時間短縮の効果を得ることができる。
【0170】
(エージングの動作)
上記第5実施形態では、エージング開始時において、操作者がエージング装置709に入力したエージング時間tR、tG、tBから、エージング装置709が最小値、中間値、最大値を求める。しかしながら、これに限らず、操作者が、エージング時間tR、tG、tBに加え、エージング時間tR、tG、tBがそれぞれ最小値、中間値、最大値のいずれであるかを示す情報をエージング装置709に入力しても良い。
【0171】
(エージングの際、発光素子に供給する電流の大きさ)
上記第5実施形態では、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了時点において、G,Rの発光素子717G,717Rのエージング期間は残存しており、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了の前後で、G,Rの発光素子717G,717Rに流れる電流の大きさは変わらない。しかしながら、これに限らず、G,Rの発光素子717G,717Rに供給する電流の大きさとして、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了時点よりも前におけるG,Rの発光素子717G,717Rに供給する電流の和よりも大きく、かつ、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了時点よりも前における3つの発光素子717に流れていた電流の和以下の任意の値を選ぶことができる。以下、図面を用いて、当該動作を説明する。
【0172】
図25は、上記変形例に係る有機EL表示パネルのエージング実行時のフローチャートである。
図25では、
図23に示すフローチャートと同じステップについては、
図23と同じ符号で示している。
【0173】
R,G,Bの発光素子に同時に電流を供給した(ステップS603)後、所定時間t(N)に対応する発光色の発光素子の電流を停止する(ステップS606)ことにより、所定時間t(N)に対応する発光色の発光素子のエージングは終了する。N=3でないと判定すると(ステップS607においてNO)、停止させた発光素子以外の発光素子に供給する電流の大きさを増やしてから(ステップS609)、ステップS608に進む。G,Rの発光素子717G,717Rに供給する電流を増やすと、電源電圧の大きさに制限があったとしても、エージング時間を短縮できる。
【0174】
なお、発光素子に供給する電流の大きさは、駆動トランジスタ715のゲート電圧で決まる。駆動トランジスタ715のゲート電圧を変えるには、データ信号生成回路707がデータ線712に出力する電圧を変えればよい。
【0175】
具体的には、データ信号生成回路707が、R、G、Bデジタル輝度信号とデジタル電圧信号との交換マップとして、通常表示用交換マップに加えて、エージング用交換マップを保持すればよい。エージング用交換マップは、同じデジタル輝度信号が入力されると、通常表示用交換マップを用いた場合よりも大きいデジタル電圧信号が出力されるように作成されている。そのため、エージング用交換マップを用いれば、デジタル輝度信号は、通常表示用交換マップを用いた場合よりも大きいデジタル電圧信号に交換される。
【0176】
具体的な動作として、例えば、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了時点において、G,Rの発光素子717G,717Rのエージング期間が残存している場合には、制御部703は、Bの発光素子717Bの電流停止前よりも大きな階調のG,Rデジタル輝度信号に対応する信号をデータ信号生成回路707に出力する。その結果、データ信号生成回路707は、Bの発光素子717Bの電流停止前よりも、高いアナログ電圧をG,Rのデータ線712に出力する。これにより、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了時点において、G,Rの発光素子717G,717Rのエージング期間が残存している場合、Bの発光素子717Bのエージング期間の終了の前から後にかけて、G,Rの発光素子717G,717Rに流れる電流の大きさを増やすことができる。
【0177】
(エージング装置なし)
上記第5実施形態では、有機EL表示パネル701の外部のエージング装置709から電圧を供給してエージングを行ったが、これに限らず、通常の映像表示と同じように有機EL表示パネル701の内部の回路から電圧を供給してエージングを行ってもよい。
【0178】
(エージング動作)
上記第5実施形態におけるエージングの動作に代えて、上記第1乃至第3実施形態において説明されたエージング処理の動作を実行してもよい。また、上記第5実施形態におけるエージングの動作において、上記第1乃至第3実施形態において説明されたエージング処理をさらに考慮した動作を実行してもよい。これによって、エージングレベルのばらつきが緩和された有機EL表示パネル701を得ることができる。
【0179】
上述された実施形態に係る発光パネルの製造方法は、以下の構成を主に備える。
【0180】
上述された実施形態の一の局面に係る製造方法に従って製造される発光パネルは、同一値の電圧印加の下において互いに異なる大きさの電流が流れる複数の画素を含む発光部を有する。製造方法は、前記複数の画素間の電流値の差異が低減されるように前記複数の画素に印加される電圧の大きさをそれぞれ補正するための補正係数を取得する取得工程と、前記補正係数を用いて前記複数の画素に印加される電圧の大きさを補正し、補正された電圧を前記複数の画素に印加することにより、前記複数の画素のエージング処理を実行するエージング工程と、を有する。
【0181】
上記構成によれば、取得工程において、複数の画素間の電流値の差異が低減されるように複数の画素に印加される電圧の大きさをそれぞれ補正するための補正係数が取得される。エージング工程において、補正係数を用いて複数の画素に印加される電圧の大きさが補正される。また、補正された電圧を複数の画素に印加することにより、複数の画素のエージング処理が実行される。補正係数を用いて補正された電圧が複数の画素に印加されているため、複数の画素の間の電流値の差異が低減される。その結果、複数の画素間におけるエージングレベルのばらつきが緩和される。
【0182】
上記構成において、前記取得工程より前に実行される演算工程をさらに有してもよい。前記演算工程は、前記複数の画素にそれぞれ所定の基準電圧を印加し、前記複数の画素に流れる電流を表す特性をそれぞれ測定して測定値を得る第1段階と、前記測定値と前記基準電圧とに基づき前記補正係数を算出する第2段階と、を含んでもよい。前記取得工程では、前記第2段階において算出された補正係数が取得されてもよい。
【0183】
上記構成によれば、演算工程は、取得工程より前に実行される。演算工程の第1段階において、複数の画素にそれぞれ所定の基準電圧が印加される。また、複数の画素に流れる電流を表す特性がそれぞれ測定されて測定値が得られる。演算工程の第2段階において、測定値と基準電圧とに基づき補正係数が算出される。取得工程では、第2段階において算出された補正係数が取得される。このように、基準電圧が印加されたときの複数の画素に流れる電流を表す特性の測定値と、基準電圧とに基づき補正係数が算出されるため、複数の画素間の電流値の差異が低減される補正係数を得ることができる。
【0184】
上記構成において、前記演算工程は、前記複数の画素と前記第2段階において算出された補正係数とを互いに対応させたテーブルデータとして前記補正係数を保存する第3段階をさらに含んでもよい。前記取得工程では、前記第3段階において保存されたテーブルデータから前記補正係数が取得されてもよい。
【0185】
上記構成によれば、演算工程の第3段階において、複数の画素と第2段階において算出された補正係数とを互いに対応させたテーブルデータとして補正係数が保存される。取得工程では、第3段階において保存されたテーブルデータから補正係数が取得される。このため、演算を要することなくテーブルデータを読み取るだけで、補正係数が容易に取得される。
【0186】
上記構成において、前記演算工程は、前記複数の画素の前記発光部におけるそれぞれの位置に対応して前記第2段階において算出された補正係数を表す補正関数を算出して保存する第3段階をさらに含んでもよい。前記取得工程では、前記複数の画素の前記発光部におけるそれぞれの位置と前記第3段階において保存された補正関数とから、前記補正係数が算出されてもよい。
【0187】
上記構成によれば、演算工程の第3段階において、複数の画素の発光部におけるそれぞれの位置に対応して第2段階において算出された補正係数を表す補正関数が算出されて保存される。取得工程では、複数の画素の発光部におけるそれぞれの位置と第3段階において保存された補正関数とから、補正係数が算出される。このように、補正関数が保存されているため、データを記憶するための大きな容量を必要とすることなく、補正係数が取得される。
【0188】
上記構成において、前記第1段階では、前記特性として、前記複数の画素に流れる電流値がそれぞれ測定されてもよい。
【0189】
上記構成によれば、第1段階では、特性として、複数の画素に流れる電流値がそれぞれ測定される。このため、第2段階において、電流値の測定値と基準電圧とに基づき、補正係数が好適に算出される。
【0190】
上記構成において、前記第1段階では、前記特性として、前記複数の画素の輝度がそれぞれ測定されてもよい。前記第2段階では、前記複数の画素の輝度と電流値との関係と、前記測定値とに基づき、前記複数の画素に流れる電流値が求められ、前記求められた電流値と前記基準電圧とに基づき前記補正係数が算出されてもよい。
【0191】
上記構成によれば、第1段階では、複数の画素の輝度がそれぞれ測定される。第2段階では、複数の画素の輝度と電流値との関係と、測定値とに基づき、複数の画素に流れる電流値が求められる。また、求められた電流値と基準電圧とに基づき補正係数が算出される。画素の輝度の測定は、画素に流れる電流の測定に比べて短時間で行えるため、補正係数が短時間で算出される。
【0192】
上記構成において、前記発光部は、前記複数の画素として、互いに異なる位置に配置された第1画素及び第2画素を含んでもよい。前記第1画素は、前記複数の画素に電圧を印加するための回路基板と第1導線を介して接続されてもよい。前記第2画素は、前記回路基板と前記第1導線より短い第2導線を介して接続されてもよい。前記取得工程で取得される補正係数は、前記第2画素に印加される電圧に比べて前記第1画素に印加される電圧の方が高い値になるように定められていてもよい。
【0193】
上記構成によれば、発光部は、互いに異なる位置に配置された第1画素及び第2画素を含む。第1画素は、複数の画素に電圧を印加するための回路基板と第1導線を介して接続される。第2画素は、回路基板と第1導線より短い第2導線を介して接続される。このため、同一値の電圧が第1画素及び第2画素に印加されると、第1画素に流れる電流値は、第2画素に流れる電流値に比べて小さくなる。取得工程で取得される補正係数は、第2画素に印加される電圧に比べて第1画素に印加される電圧の方が高い値になるように定められている。したがって、第1画素に流れる電流値と第2画素に流れる電流値との差異は適切に低減される。
【0194】
上記構成において、前記複数の画素は、それぞれ有機EL素子を含んでもよい。上記構成によれば、複数の画素は、それぞれ有機EL素子を含むため、複数の画素に含まれる有機EL素子に対するエージングレベルのばらつきが緩和された発光パネルが得られる。
【0195】
上述された実施形態に係る表示装置は、以下の構成を主に備える。
【0196】
上述された実施形態の一の局面に係る表示装置は、上記の製造方法により得られた発光パネルを備える表示装置であって、前記発光パネルに設けられた発光素子と、前記発光素子に電力を供給する電源部と、前記発光素子と前記電源部との間の電力供給路に設けられ、輝度信号を受けて該輝度信号のレベルに応じた電流を前記発光素子に流す画素回路と、前記画素回路に向けて前記輝度信号を出力すると共に、前記発光素子をエージングするエージングモード、および前記発光素子を用いて映像を表示する映像表示モードのいずれかで選択的に動作する制御部とを備え、前記電源部は、前記エージングモードおよび前記映像表示モードにおいて同一の電源電圧を出力し、前記制御部は、前記エージングモードにおける前記発光素子の発光輝度が、前記映像表示モードにおける最大発光輝度よりも大きくなるように、前記エージングモードにおいて前記画素回路に向けて出力する前記輝度信号のレベルを設定する。
【0197】
この構成を採れば、エージングモードにおける発光素子の発光輝度を大きくでき、発光素子の最大輝度を急峻に低減できるため、エージング時間を短縮することができる。また、本表示装置において、制御部は、エージングモードでの発光素子の発光輝度が、映像表示モードでの最大発光輝度よりも大きくなるよう制御する。これにより、エージングモードにおける発光素子の発光輝度が映像表示モードの範囲内である場合よりも、発光素子の最大輝度が急峻に低減し、エージング時間を低減できる。また、エージングモードおよび映像表示モードにおいて、制御部が発光素子の発光輝度を制御しており、外部のエージング装置は用いていない。さらに、電源部は、エージングモードおよび映像表示モードにおいて同一の電源電圧を出力するので、エージングモードにおいて外部のエージング装置から電源電圧を与える必要が無い。そのため、本表示装置の製造工程において、外部のエージング装置が空くのを待つ時間が発生しない。したがって、本表示装置では、エージング時間を短縮しつつ、製造効率の低下を抑制できる。
【0198】
また、前記表示装置において、前記制御部は、前記輝度信号のレベルをデジタル信号のビット値で表し、前記エージングモードでは、前記映像表示モードにおいて使用する前記デジタル信号のビット数よりも大きいビット数を使用するとしてもよい。
【0199】
また、前記表示装置において、前記制御部から前記画素回路に向けて前記輝度信号を伝送する信号伝送路に設けられ、前記デジタル信号をアナログ信号に変換する変換器をさらに備え、前記制御部は、前記変換器に対し前記エージングモード及び前記映像表示モードにおいて使用する前記デジタル信号のビット数を切り替えさせてもよい。
【0200】
また、前記表示装置において、前記制御部は、操作者の操作に基づく操作信号により、前記エージングモードおよび前記映像表示モードのいずれかを判定し、この判定結果に基づき、前記変換器に対し前記エージングモード及び前記映像表示モードにおいて使用する前記デジタル信号のビット数を切り替えさせてもよい。
【0201】
上述された実施形態に係る表示パネルのエージング方法は、以下の構成を主に備える。
【0202】
上述された実施形態の一の局面に係る表示パネルのエージング方法は、発光色の異なる複数の発光素子を備えた表示パネルのエージング方法であって、エージング期間の長さを、前記発光素子の輝度劣化特性に応じて前記発光色ごとに調整し、少なくとも2つの前記発光色の前記発光素子の前記エージング期間の少なくとも一部が重なるように、前記各発光色の前記発光素子に電流を供給する。
【0203】
この構成を採れば、発光素子ごとのエージング期間の長さ、つまりエージング時間を、発光素子の輝度劣化特性に応じて発光色ごとに調整する。このため、発光色ごとに発光素子のエージングが過剰となったり不足したりすることにより発光素子の寿命が異なってしまうことを抑制できる。また、少なくとも2つの発光色のエージング期間の少なくとも一部が重なる。このため、発光色ごとに順次エージングを行う場合よりもエージング時間を短縮できる。したがって、本表示パネルのエージング方法では、発光色ごとの異なる輝度劣化特性を考慮したエージングを行いつつ、エージング時間を短縮できる。
【0204】
また、上記表示パネルのエージング方法において、すべての前記発光色の前記エージング期間の開始時点が同じであってもよい。
【0205】
また、上記表示パネルのエージング方法において、前記輝度劣化特性は、前記発光素子の発光層を構成する材料自体の劣化に起因する輝度低下率であり、前記輝度低下率が大きいほど、前記エージング期間の長さを短くしてもよい。
【0206】
また、上記表示パネルのエージング方法において、いずれか1色の前記発光色の前記エージング期間の終了時点において、残りの前記発光色の前記エージング期間が残存しているとき、前記エージング期間が残存している少なくとも1つの前記発光素子に供給する電流を増大することにより、前記いずれか1色の前記発光色の前記エージング期間の終了時点の前よりも、前記エージング期間が残存しているすべての前記発光素子に供給される電流の和を増大してもよい。
【0207】
また、上記表示パネルのエージング方法において、前記発光素子は、有機EL素子であってもよい。
【0208】
さらに、上述された実施形態の一の局面に係る表示パネルの製造方法は、発光色の異なる複数の発光素子を備えた表示パネルの製造方法であって、予め決められた長さのエージング期間に、前記複数の前記発光素子を発光させるエージング工程を含み、前記エージング工程において、少なくとも2つの前記発光色の前記エージング期間の少なくとも一部が重なるように、前記各発光色の前記発光素子に電流を供給し、前記予め決められた前記エージング期間の長さは、前記発光素子の輝度劣化特性に応じて前記発光色ごとに調整されている。
【0209】
以上の変形例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0210】
(付記1)
発光色の異なる複数の発光素子を備えた表示パネルのエージング方法であって、
エージング期間の長さを、前記発光素子の輝度劣化特性に応じて前記発光色ごとに調整し、
少なくとも2つの前記発光色の前記発光素子の前記エージング期間の少なくとも一部が重なるように、前記各発光色の前記発光素子に電流を供給する表示パネルのエージング方法。
【0211】
(付記2)
すべての前記発光色の前記エージング期間の開始時点が同じである付記1記載の表示パネルのエージング方法。
【0212】
(付記3)
前記輝度劣化特性は、前記発光素子の発光層を構成する材料自体の劣化に起因する輝度低下率であり、
前記輝度低下率が大きいほど、前記エージング期間の長さを短くする付記1または2記載の表示パネルのエージング方法。
【0213】
(付記4)
いずれか1色の前記発光色の前記エージング期間の終了時点において、残りの前記発光色の前記エージング期間が残存しているとき、
前記エージング期間が残存している少なくとも1つの前記発光素子に供給する電流を増大することにより、前記いずれか1色の前記発光色の前記エージング期間の終了時点の前よりも、前記エージング期間が残存しているすべての前記発光素子に供給される電流の和を増大する付記1ないし3のいずれかに記載の表示パネルのエージング方法。
【0214】
(付記5)
前記発光素子は、有機EL素子である付記1ないし4のいずれかに記載の表示パネルのエージング方法。
【0215】
(付記6)
発光色の異なる複数の発光素子を備えた表示パネルの製造方法であって、
予め決められた長さのエージング期間に、前記複数の前記発光素子を発光させるエージング工程を含み、
前記エージング工程において、少なくとも2つの前記発光色の前記エージング期間の少なくとも一部が重なるように、前記各発光色の前記発光素子に電流を供給し、
前記予め決められた前記エージング期間の長さは、前記発光素子の輝度劣化特性に応じて前記発光色ごとに調整されている表示パネルの製造方法。