(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232569
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】感圧転写修正テープ
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20171113BHJP
C09J 7/02 20060101ALI20171113BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20171113BHJP
C09J 109/04 20060101ALI20171113BHJP
C09J 109/08 20060101ALI20171113BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B43L19/00 H
C09J7/02 B
C09J133/00
C09J109/04
C09J109/08
C09J109/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-190780(P2012-190780)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46536(P2014-46536A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 登
(72)【発明者】
【氏名】蔡 振隆
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−290604(JP,A)
【文献】
特開2008−163095(JP,A)
【文献】
特開2012−000938(JP,A)
【文献】
特開2003−119443(JP,A)
【文献】
特開昭63−178182(JP,A)
【文献】
特開2007−084638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
C09J 7/00− 7/04
C09J 109/00−109/10
C09J 133/00−133/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に離型層を設けた基材上に、少なくとも隠蔽層、感圧接着剤層が順次設けられた感圧転写修正テープにおいて、該感圧接着剤層がアクリル系粘着剤およびアクリル系粘着剤と非相溶な合成ゴムラテックス(イソプレンゴム系ラテックスを除く)からなり、該感圧接着剤層中の合成ゴムラテックス含有量が25〜65重量%であり、かつ該合成ゴムラテックスのガラス転移温度が−10℃〜−80℃であり、かつ該感圧接着剤層の厚みが2.0〜3.0μmである感圧転写修正テープ。
【請求項2】
前記合成ゴムラテックスが、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、ポリブタジエン系ラテックスから選択される少なくとも1種からなるものである請求項1記載の感圧転写修正テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙面などに誤って記録された文字などを隠蔽修正するために使用される感圧転写修正テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン、万年筆、サインペン、マーカーペン等の筆記具による筆記やレーザープリンタ、インクジェットプリンタ、サーマルプリンタ等による印刷物、PPCコピーによるコピー描線、感圧複写物等々、消しゴムでは消せないものを消去する際には、自動巻き取り機構を持ったカセットタイプの感圧転写修正テープが提供されている。
【0003】
しかしながら、市販されている前記感圧転写修正テープの場合、ロール状に巻回された状態で長期間保存されると、感圧接着剤層中の粘着剤劣化による粘着力低下や隠蔽層中への粘着剤浸透に伴う粘着力低下により、感圧転写修正テープの使用時に修正塗膜の転写不良や定着不良を起こすといった問題があった。又、経時での前記粘着力低下を考慮し感圧接着剤層の粘着力を高くすると、感圧接着剤層の表面と基材背面が接着する、いわゆるブロッキング現象が生じ、感圧転写修正テープの使用時にテープの巻出しが困難となり、走行不良を起こすという問題があった。
【0004】
この感圧接着剤層の経時劣化及びブロッキング現象を防ぐ目的で、例えば、感圧接着剤層と修正隠蔽層との全厚が50μm以下で且つ感圧接着剤層と修正隠蔽層との厚さの比が1:1〜1:4であることを特徴とする感圧転写修正テープであり、感圧接着剤層中に隠蔽性を示す物質を含有する感圧転写修正テープが提案されている。(特許文献1参照)
【0005】
しかし、特許文献1に提案された感圧転写修正テープは、長期間保存した場合に、感圧接着剤層中の粘着剤劣化による粘着力低下や隠蔽層中への粘着剤浸透に伴う粘着力低下に加えて、感圧接着剤層中に接着性を有しない隠蔽性物質を含有しているため、保存後の粘着力低下が著しく、その結果転写不良や定着不良を生じる場合があり、いまだに感圧転写修正テープとして満足行くものとは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−349904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、感圧転写修正テープの再筆記性が良好かつロール状に巻回された状態で長期間保存された場合でも、経時での粘着力低下が少なく、使用時に良好な転写性や定着性を示すと共に、耐ブロッキング性が良好な感圧転写修正テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、両面に離型層を設けた基材上に、少なくとも隠蔽層、感圧接着剤層が順次設けられた感圧転写修正テープにおいて、該感圧接着剤層がアクリル系粘着剤およびアクリル系粘着剤と非相溶な合成ゴムラテックス(イソプレンゴム系ラテックスを除く)からなり、該感圧接着剤層中の合成ゴムラテックス含有量が25〜65重量%であり、かつ該合成ゴムラテックスのガラス転移温度が−10℃〜−80℃であり、かつ該感圧接着剤層の厚みが
2.0〜3.0μmである感圧転写修正テープとする。
【0009】
第2発明は、前記合成ゴムラテックスが、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、ポリブタジエン系ラテックスから選択される少なくとも1種からなるものである第1発明記載の感圧転写修正テープとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感圧転写修正テープの再筆記性が良好かつロール状に巻回された状態で長期間保存された場合でも、経時での粘着力低下が少なく、使用時に良好な転写性を示すと共に、耐ブロッキング性が良好な感圧転写修正テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる基材は、プラスチックフィルム、紙を用いる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。強度面から、ポリエステルフィルムが特に好ましい。プラスチックフィルムの厚さは3〜25μmが好ましい。プラスチックフィルムの厚さが薄すぎると、離型処理などの加工時の生産性が低下する。またプラスチックフィルムの厚さが厚すぎると、長尺化が困難になる。紙としては、グラシン紙等を用いる。長尺化を図るためには、プラスチックフィルムを用いる。
【0012】
基材上の両面に設ける離型層は、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂などからなる離型剤単体、または剥離調整剤、触媒、添加剤、無機/有機微粒子などを離型剤と混合したものを塗布乾燥し設ける。両面に設ける離型層は必要に応じてそれぞれ異なる離型剤を選定することができる。離型層の厚みは、0.05〜3μm、より好ましくは0.1〜1μmの範囲である。
【0013】
隠蔽層は、バインダー、顔料、分散剤、添加剤等からなるものである。
【0014】
隠蔽層に使用するバインダーとしては、ウレタン系、アクリル系、ビニル系、オレフィン系、ゴム系の樹脂などを単体、もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。とくに隠蔽層塗膜の柔軟性、切断性のバランスが良好となることからゴム状の樹脂とガラス状の樹脂を組み合わせたものが好適に使用できる。ゴム状の樹脂としては、可塑剤を少量しか含まなくとも柔軟性を有するものが好ましく、たとえばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、環化ゴムなど通常の合成ゴムないしエラストマーなどが挙げられる。ガラス状の樹脂としては、伸び率が小さく、融点ないし軟化点が100℃以上、かつ高硬度のものが好ましく、たとえば飽和または不飽和の脂環族炭化水素樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ケトン樹脂、ロジン、ロジン誘導体、マレイン酸誘導体、アクリル酸誘導体などのカルボキシル基含有樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0015】
顔料としては、通常修正する対象物は白色の紙であることから、白色顔料を用いる。しかし、対象物が白色以外のときは、隠蔽層を対象物の地色とほぼ同色に着色し、修正部分が他の部分と比べて目立たないようにするのが好ましい。白色顔料としては、酸化チタンを隠蔽性が優れている点から主として用いられる。隠蔽性の点から、白色顔料の粒径は0.1〜2.0μm程度のものが好ましい。
【0016】
白色顔料に加えて色彩を調整するための色彩調整剤を混合してもよい。例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、真鍮粉末、染料などが挙げられる。
【0017】
白色顔料以外の着色顔料としては、チタンイエロー、酸化鉄系、群青、コバルトブルー、酸化クロムグリーン、黄鉛、クロムバーミリオン、カドミウムエロー、カドミウムレッドなどの無機顔料、アゾレーキ系、ハンザ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、ピラゾロン系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、イソインドリノン系などの有機顔料が挙げられる。
【0018】
隠蔽層を白色以外の色に着色する場合、白色顔料以外の前記着色顔料は酸化チタンと併用して、それらの比較的劣る隠蔽力を補うようにするのが好ましい。
【0019】
隠蔽層は良好な切断性をうる点から通常体質顔料を併用する。体質顔料としては、たとえば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、セライト、クレー、タルクなどが挙げられる。体質顔料の粒径は1〜20μmの範囲が好ましい。
【0020】
隠蔽層中の全体の顔料含有量は65〜85重量%の範囲が好ましく、このうち体質顔料は隠蔽層中5〜50重量%の範囲とするのが好ましい。
【0021】
隠蔽層は、バインダー成分の有機溶剤溶液、有機溶剤分散液または水性分散液(エマルジョンを含む)に顔料、必要に応じて分散剤、添加剤などを配合した塗工液を基材上に塗布、乾燥することによって形成できる。隠蔽層の乾燥後の厚さは15〜40μmの範囲が好ましい。
【0022】
添加剤としては、水性インクの浸透性を向上する目的で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムコポリマーおよびポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが選択できる。
【0023】
感圧接着剤層は、アクリル系粘着剤およびアクリル系粘着剤と非相溶な合成ゴムラテックス(イソプレンゴム系ラテックスを除く)からなるものである。
【0024】
感圧接着剤層に使用するアクリル系粘着剤は、水性分散液(エマルジョンを含む)であれば任意のものが使用できるが、ガラス転移温度(Tg)が−30℃〜−60℃のものが好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が−30℃を超えると、粘着剤のタック性が低下して修正塗膜の転写不良や定着不良を起こす。
【0025】
感圧接着剤層に使用する合成ゴムラテックスとしては、スチレン・ブタジエン系(SBR)ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系(NBR)ラテックス、ポリブタジエン系(BR)ラテックス、ブチルゴム(IIR)系ラテックス、クロロプレンゴム系ラテックスなどが挙げられる。なかでも、スチレン・ブタジエン系(SBR)ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系(NBR)ラテックス、ポリブタジエン系(BR)ラテックスが特に好ましい。又、これらの合成ゴムラテックスを感圧接着剤層に含有することで、感圧転写修正テープが巻回された状態で長期間保存された際、感圧接着剤層中の粘着剤が隠蔽層中へ浸透するのを防ぎ、経時での粘着力低下を抑制する効果をもたらしている。
【0026】
感圧接着剤層中の合成ゴムラテックス含有量は25〜65重量%の範囲が好ましい。前記含有量が25重量%未満であると、感圧接着剤層中の粘着剤が隠蔽層中へ浸透するのを防ぐ効果が乏しくなり、前記含有量が65重量%を超えると、感圧接着剤層のタック性や粘着力が低下したり、再筆記性が低下するようになる。ガラス転移温度(Tg)は−10℃〜−80℃の範囲が好ましく、−15℃〜−80℃の範囲がより好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が−10℃を超えると、感圧接着剤層のタック性や粘着力が低下したり、再筆記性が低下するようになる。
【0027】
感圧接着剤層は、アクリル系粘着剤および合成ゴムラテックスからなる水性分散液(エマルジョンを含む)を隠蔽層上に塗布、乾燥することによって形成できる。
【0028】
感圧接着剤層には必要に応じて、界面活性剤、湿潤剤、接着力調整剤、添加剤、無機/有機微粒子などを混合することもできる。感圧接着剤層の乾燥後の厚さは0.5〜3.0μmの範囲が好ましい。
【0029】
本発明の感圧転写修正テープは、前述の手持ちタイプの転写具で好適に使用できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例1〜17及び比較例1〜24を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
<基材テープの離型処理>
厚さ12μmのPETフィルムの両面に、下記に示すシリコーン樹脂液を乾燥後の膜厚が0.5μmになるように塗工し、乾燥して離型層Iおよび離型層IIを形成した。
シリコーン樹脂液組成
成 分 重量部
シリコーン系樹脂 20.0
白金触媒 0.2
トルエン 80.0
<転写テープの作製>
前記離型層I上に、下記に示す隠蔽層塗工液の材料を分散機で20分間混合して隠蔽層塗工液を調製した。隠蔽層塗工液を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗工し、乾燥して隠蔽層を形成した。
隠蔽層塗工液組成
成 分 重量部
炭化水素系樹脂 5.0
SEBS共重合体 5.0
分散剤 2.0
酸化チタン 25.0
炭酸カルシウム 5.0
トルエン 57.0
さらに、隠蔽層の上に表1、表2に示すアクリル系粘着剤および合成ゴムラテックスなどから構成される処方に適量の水を加えて感圧接着剤層塗工液を作製し、乾燥後の膜厚が2.0μmになるように塗工し、乾燥して実施例1〜17、比較例1〜24の感圧転写修正シートを作成した。
【0032】
得られた感圧転写修正シートを幅5mmにスリットしながら10mの長さに直径13mmの繰出しコアに巻取り、パンケーキ状の感圧転写修正テープを得た。
【0033】
パンケーキ状の感圧転写修正テープを、市販の手持ちタイプの塗膜転写具(フジコピアン株式会社製インスタライトII)に装着し、次の評価を行った。
(1)転写性
PPC用紙に転写荷重300gf、2m/minの速度で、感圧転写修正テープを長さ15cm転写した際、転写した修正塗膜のPPC用紙からの浮き具合を目視観察し、次の基準により評価した。
劣1−2−3−4−5優 4以上が実用領域である。
なお、転写性評価は感圧転写修正テープを未保存のもの(未保存品)と50℃・85%RH×7日の環境下に保存したもの(保存品)の2条件で実施した。
(2)再筆記性
PPC用紙に転写した修正塗膜表面に、500gfの荷重で水性ボールペン三菱鉛筆製uni−ball eyeφ0.5で螺旋筆記を行い、修正塗膜の破れ具合を目視観察し、次の基準により評価した。
劣1−2−3−4−5優 4以上が実用領域である。
(3)耐ブロッキング性
感圧転写修正テープを50℃・85%RH×7日の環境下に保存した後、PPC用紙に転写荷重300gf、6m/minの速度で、感圧転写修正テープを全巻走行した際、ブロッキングによる転写不良および走行不良を目視観察し、次の基準により評価した。
劣1−2−3−4−5優 4以上が実用領域である。
【0034】
感圧転写修正テープの感圧接着剤層処方および評価結果を表1、表2にまとめて示した。又、感圧接着剤層処方の配合比は固形分の重量%で示している。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】