(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
行毎に配置された複数のゲート信号線と、列毎に配置された複数のソース信号線と、前記複数のゲート信号線と前記複数のソース信号線との交差点のそれぞれに配置された複数の表示画素とを有する表示部と、
前記複数のゲート信号線を指定された順序で選択可能なゲートドライバと、
前記複数のソース信号線のそれぞれに電圧信号を出力するソースドライバと、
前記複数の表示画素、前記ゲートドライバおよび前記ソースドライバの制御を行う制御部とを備え、
前記複数の表示画素のそれぞれは、駆動電流に応じて発光する発光素子と、前記電圧信号が書き込まれる書き込み用コンデンサと、前記書き込み用コンデンサの電荷を受け付け可能な表示用コンデンサと、前記表示用コンデンサに保持された電荷の大きさに応じた前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタとを有し、前記書き込み用コンデンサに対する電圧信号の書き込みと、前記表示用コンデンサに保持された電荷に応じた前記発光素子の発光とを独立して実行できるように構成され、
前記制御部は、前記表示部における行単位での書き込みの順序を、前記書き込みの順序が連続する2つの行の間の電圧信号の差が小さくなるように並び替える並び替え処理を実行し、
前記制御部は、前記ゲートドライバに対し、前記制御部による並び替え処理後の前記書き込みの順序で前記複数のゲート信号線の選択を行わせるように、前記書き込みの順序を指定し、
前記制御部は、前記並び替え処理において、
前記複数の表示画素の各行の明るさを示す指標値を算出し、前記指標値を用いて前記書き込みの順序の並び替えを行い、
前記制御部は、前記並び替え処理において、
前記指標値を降順にまたは昇順に並べ替え、並び替えた順序に前記書き込みの順序を設定し、
前記制御部は、前記並び替え処理において、
現在の前記並び替え処理における前記指標値の最小値と最大値とを求め、
前回の前記並び替え処理における前記書き込みの順序が最後の行の指標値である最終指
標値と、前記最小値および前記最大値とを比較し、
前記最終指標値と前記最小値との差が前記最終指標値と前記最大値との差よりも小さい場合は、前記指標値を昇順に並び替え、
前記最終指標値と前記最大値との差が前記最終指標値と前記最小値との差よりも小さい場合は、前記指標値を降順に並び替える、
表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(課題の詳細)
上述したように、有機ELディスプレイでは、40インチ以上など、大画面サイズの表示パネルほど、ソース信号線の負荷容量が大きくなり、発熱量が大きくなる傾向にある。また、有機ELディスプレイでは、4K2Kパネル(画素数が4K×2K以上のパネル)あるいは8K4Kパネル等、高精細の表示パネルほど、1画素行の選択期間が短くなり、ソースドライバICから出力する映像信号の変化速度(周波数)が速くなるため、ソースドライバICの発熱量が大きくなる。ソースドライバICの出力電力は、ソース信号線の容量C、映像振幅電圧の電圧差Vの2乗、および、1画素行の選択時間を換算した周波数Fに比例する。
【0012】
上述した有機ELディスプレイにおけるソース信号線の負荷容量C等と発熱量との関係について、説明する。
【0013】
[比較例における有機ELディスプレイの構成]
先ず、比較例における有機ELディスプレイの構成について、
図1A〜
図3を用いて説明する。
図1Aは、有機ELディスプレイの外観の一例を示す外観図である。
図1Bは、有機ELディスプレイの構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
比較例における画像表示装置では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色からなるEL素子がマトリックス状に形成されている。
【0015】
画素位置に対応して、赤(R)、緑(G)、青(B)からなるカラーフィルターを形成することができる。なお、カラーフィルターは、RGBに限定されものではない、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)色の画素を形成してもよい。また、白(W)の画素を形成してもよい。つまり、表示画面にR、G、B、W画素をマトリックス状に配置する。
【0016】
なお、R、G、Bの画素開口率は、異ならせてもよい。開口率を異ならせることにより、各RGBのEL素子に流れる電流密度を異ならせることができる。電流密度を異ならせることにより、RGBのEL素子の劣化速度を同一にすることができる。劣化速度を同一にすれば、画像表示装置のホワイトバランスずれが発生しない。
【0017】
また、必要に応じて、白(W)の画素を形成する。つまり、画素は、R、G、B、Wから構成される。R、G、B、Wに構成することにより、高輝度化が可能となる。また、R、G、B、Gとする構成も例示される。
【0018】
画像表示装置のカラー化は、マスク蒸着により行うが、実施の態様はこれに限定するものではない。たとえば、青色発光のEL層を形成し、発光する青色光を、R、G、Bの色変換層(CCM:カラーチェンジミディアムズ)でR、G、B光に変換してもよい。
【0019】
なお、画像表示装置の光出射面には、円偏光板(円偏光フィルム)(図示せず)を配置することができる。偏光板と位相フィルムを一体したものは円偏光板(円偏光フィルム)と呼ばれる。
【0020】
図1Bに示すように、有機ELディスプレイ100は、有機ELパネル10、ソースドライバIC20、PCB(Printed Circuit Board、プリント基板)30、ゲートドライバIC40、PCB50、および、TCON(タイミングコントローラ)60を備えている。
【0021】
有機ELパネル10は、行毎に配置された複数のゲート信号線GLと、列毎に配置された複数のソース信号線SLと、ゲート信号線GLとソース信号線SLとの交差点のそれぞれに行列状に配置された複数の表示画素Pを備える表示領域11と、表示領域11とPCB30およびPCB50とを繋ぐ配線(ゲート信号線GLおよびソース信号線SL)が形成されたガラス基板12とを備えている。
【0022】
表示領域11は、映像を表示するための領域であり、複数の表示画素Pは、ユーザーが視認できる位置に配置されている。
【0023】
表示画素Pは、ここでは図示しないが、供給される電流に応じて発光する有機EL素子、電圧信号(ソース信号線SLの電圧)の大きさに応じた駆動電流を有機EL素子に供給する駆動トランジスタ、表示画素Pの選択および非選択を切り替えるスイッチング素子、および、電圧信号が書き込まれるコンデンサ等を備えている。
【0024】
後述する
図5に例示するように、比較例におけるEL表示装置の画素は、トランジスタ、コンデンサ、EL素子などで構成されている。駆動トランジスタT5およびスイッチング素子を含むトランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT)として説明するが、これに限定するものではない。FET、MOS−FET、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタでもよい。これらも基本的に薄膜トランジスタである。その他、バリスタ、サイリスタ、リングダイオード、ホトダオード、ホトトランジスタ、PLZT素子などでもよいことは言うまでもない。
【0025】
また、薄膜素子に限定するものではなく、シリコンウエハに形成したトランジスタでもよい。たとえば、シリコンウエハでトランジスタを構成し、剥がしてガラス基板に転写したものが例示される。また、シリコンウエハでトランジスタチップを形成し、ガラス基板にボンディング実装した表示パネルが例示される。
【0026】
なお、トランジスタは、n型、p型のトランジスタとも、LDD(Lightly Doped Drain)構造を採用することが好ましい。
【0027】
また、トランジスタは、高温ポリシリコン(HTPS:High−temperature polycrystalline silicon)、低温ポリシリコン(LTPS:Low−temperature poly silicon)、連続粒界シリコン(CGS:Continuous grain silicon)、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductors)、アモルファスシリコン(AS:amorphous silicon)、赤外線(RTA:rapid thermal annealing)で形成したもののうち、いずれでもよい。
【0028】
図5では、画素を構成する全てのトランジスタはp型で構成している。しかし、画素のトランジスタをp型で構成することのみに限定するものではない。n型のみで構成してもよい。また、n型とp型の両方を用いて構成してもよい。
【0029】
スイッチング素子T1は、トランジスタに限定するものではなく、たとえば、p型のトランジスタとn型のトランジスタの両方を用いて構成したアナログスイッチであってもよい。
【0030】
トランジスタはトップゲート構造にすることが好ましい。トップゲート構造にすることにより寄生容量が低減し、トップゲートのゲート電極パターンが、遮光層となり、EL素子から出射された光を遮光層で遮断し、トランジスタの誤動作、オフリーク電流を低減できるからである。
【0031】
ゲート信号線またはソース信号線、もしくはゲート信号線とソース信号線の両方の配線材料として、銅配線または銅合金配線を採用できるプロセスを実施することが好ましい。信号線の配線抵抗を低減でき、より大型のEL表示パネルを実現できるからである。
【0032】
ゲートドライバIC(回路)が駆動(制御)するゲート信号線は、低インピーダンス化すること好ましい。したがって、前記ゲート信号線の構成あるいは構造に関しても同様である。
【0033】
特に、低温ポリシリコン(LTPS:Low−temperature poly silicon)を採用することが好ましい。低温ポリシリコンは、トランジスタはトップゲート構造であり寄生容量が小さく、n型およびp型のトランジスタを作製でき、また、プロセスに銅配線または銅合金配線プロセスを用いることができる。なお、銅配線は、Ti−Cu−Tiの3層構造を採用することが好ましい。
【0034】
ゲート信号線またはソース信号線などの配線は、トランジスタが透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductors)の場合には、モリブデン(Mo)−Cu−Moの3層構造を採用することが好ましい。
【0035】
なお、コンデンサは、ソース信号線またはゲート信号線の少なくとも一方にオーバーラップするように(重なるように)形成または配置する。この場合、レイアウトの自由度が向上し、素子間のスペースをより広く確保することが可能になり、歩留まりが向上する。
【0036】
ソース信号線、ゲート信号線に絶縁膜あるいはアクリル材料からなる絶縁膜(平坦化膜)を形成して絶縁し、絶縁膜上に画素電極を形成する。
【0037】
表示画素Pは、R(赤)G(緑)B(青)の3原色のいずれか1つに対応している。RGBの3つの表示画素Pのセットで、1つの画素が構成されている。同じ画素を構成する複数の表示画素Pは、それぞれ隣接して配置されている。
【0038】
ソースドライバIC20は、ここでは、フレキシブルケーブルにソース信号線駆動回路21を搭載したCOF(Chip on Film、Chip on Flexible)で構成されている。
【0039】
ソース信号線駆動回路21は、TCON60からの電圧信号に応じた電圧をソース信号線SLに印加する。
【0040】
ゲートドライバIC40は、ここでは、フレキシブルケーブルにゲート信号線駆動回路41を搭載したCOFで構成されている。ゲート信号線駆動回路41は、ゲート信号線GLのそれぞれに対し、TCON60からの走査信号に応じて、接続されたスイッチング素子をON状態またはOFF状態にするための電圧を印加する。
【0041】
[比較例におけるソース信号線の負荷容量と発熱量との関係]
図2は、有機ELパネル10の負荷容量の一例を示す図である。
図3は、比較例における充放電時の電力の一例を示す表である。
【0042】
図3に示すように、充放電能力は、CV
2Fで決まる。Cはソース信号線の負荷容量である。Vは出力電圧の電圧差(電位差)である。画素に印加する印加電圧はEL素子の発光輝度に対応する。したがって、電圧差Vは、前回の書き込み対象の画素への印加電圧と現在の書き込み対象の画素の印加電圧との電圧差に対応する。Fは画素行の選択周波数である。たとえば、フレーム周波数が120Hz、画素行数が2160行であれば、F=120×2160=約260kHzである。上述したように、高精細な表示パネルを用いた有機ELディスプレイほど、ソース信号線の負荷容量Cが大きくなり、且つ、書き込み速度(Fに対応)が高速になる傾向がある。また、充放電能力は、電圧差Vの二乗に比例するため、電圧差Vの影響が大きい。
【0043】
図2および
図3より、一般的なソースドライバIC20に必要とされる出力電力は、2.22Wである。8K4Kパネルでは、4K2Kパネルに比較して、画素行数が2倍となるため、フレームレートが同一であれば、ソースドライバIC20に必要とされる駆動能力は、通常のソースドライバIC20の2倍になるため、約4.5Wになる。ただし、8K4Kパネルでは、ソース信号線数も4K2Kパネルの2倍となり、必要とするソースドライバIC数も2倍となるため、総ソースドライバICの電力は、さらに2倍の4倍となる。
【0044】
図4は、画像の各行の輝度値とソースドライバIC20の出力電圧との関係を示す図である。
図4の左側は、パネルの表示画像を模式的に図示している。
図4では、1画素行に属する全ての画素が白色の白色画素行と1画素行に属する全ての画素が黒色の黒色画素行とが交互に並ぶ白黒横ストライプ画像を示している。
図4の右側は、ソース信号線の出力電圧を示す。Sminは、最小階調電圧(黒)を示し、Smaxは最大階調電圧(白)を示す。
図4の図面右側に示すグラフにおいて、横軸はソースドライバICの出力電圧を示す軸であり、縦軸は時間(下方向が+)を示す。したがって、縦軸は書き込みの順序を示す軸である。表示画像が白黒横ストライプ画像のため、ソースドライバICが出力する電圧は、1画素行毎にSmaxに対応する電圧とSminに対応する電圧との間で変化する。
【0045】
図4に示すように、輝度値が最大となる白色の画素で構成される画素行と、輝度値が最小となる黒色の画素で構成される画素行とが交互に配置されている場合、ソースドライバIC20の出力電圧は、最大となる。
【0046】
図4に図示すように、1画素行毎に最大電圧と最小電圧との間で変化するため、電位差Vは最大となる。したがって、ソースドライバICの1端子あたりの電力は最大となる。
【0047】
ソースドライバIC20の出力電圧が大きくなると、ソースドライバICの発熱量が増大する。発熱量が大きいと、ソースドライバIC20が熱破壊されて、正常な動作が行えなくなる可能性があるため、ソースドライバICを冷却するための放熱機構が必要になる。放熱機構を備えた場合、有機ELディスプレイの放熱の要する部品点数が増大するため、パネルの薄型化が困難になるという問題が発生する。
【0048】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る表示装置は、行毎に配置された複数のゲート信号線と、列毎に配置された複数のソース信号線と、前記複数のゲート信号線と前記複数のソース信号線との交差点のそれぞれに配置された複数の表示画素とを有する表示部と、前記複数のゲート信号線を指定された順序で選択可能なゲートドライバと、前記複数のソース信号線のそれぞれに電圧信号を出力するソースドライバと、前記複数の表示画素、前記ゲートドライバおよび前記ソースドライバの制御を行う制御部とを備え、前記複数の表示画素のそれぞれは、駆動電流に応じて発光する発光素子と、前記電圧信号が書き込まれる書き込み用コンデンサと、前記書き込み用コンデンサの電荷を受け付け可能な表示用コンデンサと、前記表示用コンデンサに保持された電荷の大きさに応じた前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタとを有し、前記書き込み用コンデンサに対する電圧信号の書き込みと、前記表示用コンデンサに保持された電荷に応じた前記発光素子の発光とを独立して実行できるように構成され、前記制御部は、前記表示部における行単位での書き込みの順序を、前記書き込みの順序が連続する2つの行の間の電圧信号の差が小さくなるように並び替える並び替え処理を実行し、前記制御部は、前記ゲートドライバに対し、前記制御部による並び替え処理後の前記書き込みの順序で前記複数のゲート信号線の選択を行わせるように、前記書き込みの順序を指定する。
【0049】
上述したように、充放電能力は、CV
2Fで決まるが、ソース信号線の負荷容量Cおよび周波数Fは、有機ELパネルの仕様である程度決まる。上記構成の表示装置では、表示する行を並べ替えて電圧差(V)を抑えるので、ソースドライバ(なお、適宜「ソースドライバIC」と称する)に要求される充放電能力を小さく抑えることが可能になる。
【0050】
なお、本開示の形態においてソースドライバICとして説明するが、半導体チップからなるソースドライバICに限定するものではない。たとえば、シリコンウエハでトランジスタを構成し、剥がしてガラス基板に転写したものが例示される。また、シリコンウエハでトランジスタチップを形成し、ガラス基板のボンディング実装した表示パネルが例示される。また、低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、TAOS技術などを用い、画素が形成されたガラス基板に直接にソースドライバ回路を形成したものであってもよい。
【0051】
また、上記構成の表示装置では、表示画素が、書き込み用コンデンサと表示用コンデンサとを備え、電圧信号の書き込みと、発光素子の発光とを独立して行えるため、複数の表示画素の発光を同じタイミングで行うことが可能になる。ここで、電圧信号の書き込みと発光素子の発光とを独立して行えない場合は、前回の電圧信号により発光される行と現在の電圧信号により発光される行とが混在表示され、映像品質が低下する可能性がある。これに対し、上記構成の表示装置では、前回の電圧信号により発光される行と現在の電圧信号により発光される行とが混在表示されるのを防止できるので、映像品質の低下を防止することが可能になる。
【0052】
例えば、前記制御部は、前記並び替え処理において、前記複数の表示画素の各行の明るさを示す指標値を算出し、前記指標値を用いて前記書き込みの順序の並び替えを行っても良い。例えば、前記制御部は、前記指標値として、前記複数の表示画素それぞれについて前記電圧信号の2乗を求め、当該電圧信号の2乗を行毎に合計した合計値を求めても良い。例えば、前記制御部は、前記並び替え処理において、前記指標値を降順にまたは昇順に並べ替え、並び替えた順序に前記書き込みの順序を設定しても良い。例えば、前記制御部は、前記並び替え処理において、現在の前記並び替え処理における前記指標値の最小値と最大値とを求め、前回の前記並び替え処理における前記書き込みの順序が最後の行の指標値である最終指標値と、前記最小値および前記最大値とを比較し、前記最終指標値と前記最小値との差が前記最終指標値と前記最大値との差よりも小さい場合は、前記指標値を昇順に並び替え、前記最終指標値と前記最大値との差が前記最終指標値と前記最小値との差よりも小さい場合は、前記指標値を降順に並び替えても良い。例えば、前記制御部は、前記並び替え処理において、前記書き込みの順序が設定されていない行を検索対象行とし、最後に検索された前記指標値との差が閾値以下となる前記指標値を有することを検索条件として、前記検索対象行を一方向に順次検索し、検索された順に前記書き込みの順序を設定する第一検索処理を実行しても良い。例えば、前記制御部は、前記第一検索処理の実行後に、さらに、前記書き込みの順序が設定されていない行を検索対象行とし、最後に検索された前記指標値よりも大きいまたは小さい前記指標値を有する検索対象行を前記一方向に検索し、検索された順に前記書き込みの順序を設定する第二検索処理とを実行しても良い。
【0053】
上記構成は、何れも、並び替えの順序を規定している。何れの並び替え方法であっても、書き込みの順序が連続する2つの行の間において、電圧信号(映像電圧信号)の差を小さくすることができる。これにより、ソースドライバICの出力電力を低減し、ソースドライバICが熱破壊されるのを効果的に防止することが可能になる。また、ソースドライバからの発熱が、表示画面に伝熱されることを抑制でき、表示画面のEL素子の劣化を防止できる。
【0054】
なお、本開示において、ソースドライバから出力する信号は、電圧信号としたが(電圧プログラム方式)、これに限定するものではない。たとえば、電流信号であってもよい(電流プログラム方式)。電流であっても、映像信号の振幅として表現され、電流差を電圧差としてとらえることができる。電流差Iを電圧差Vに変換することにより、CV
2Fを用いて発熱を計算することができる。
【0055】
例えば、前記複数の表示画素のそれぞれは、さらに、前記複数の表示画素それぞれの選択および非選択を切り替える第一スイッチ回路と、前記書き込み用コンデンサと前記表示用コンデンサとの接続および非接続を切り替える第二スイッチ回路と、前記駆動トランジスタと前記発光素子との接続および非接続を切り替える第三スイッチ回路とを備えても良いし、前記ゲートドライバは、前記電圧信号を書き込む書き込み処理時に、前記第二スイッチ回路を非接続にして前記書き込み用コンデンサと前記表示用コンデンサとを独立させ、前記第一スイッチ回路を選択に設定して前記書き込み用コンデンサに前記電圧信号を書き込み、前記第三スイッチ回路を接続に設定して前記発光素子を発光させ、前記電圧信号を前記書き込み用コンデンサから前記表示用コンデンサに複写する複写処理時に、前記第一スイッチ回路を非選択に設定し、前記第三スイッチ回路を非接続に設定して前記発光素子の発光を停止させ、前記第二スイッチ回路を接続に設定して前記書き込み用コンデンサに書き込まれた前記電圧信号を前記表示用コンデンサに書き込むように構成しても良い。
【0056】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る表示方法は、行毎に配置された複数のゲート信号線と、列毎に配置された複数のソース信号線と、前記複数のゲート信号線と前記複数のソース信号線との交差点のそれぞれに配置された複数の表示画素とを有する表示部と、前記複数のゲート信号線を指定された順序で選択可能なゲートドライバと、前記複数のソース信号線のそれぞれに電圧信号を出力するソースドライバと、前記複数の表示画素、前記ゲートドライバおよび前記ソースドライバの制御を行う制御部とを備え、前記複数の表示画素のそれぞれが、駆動電流に応じて発光する発光素子と、前記電圧信号が書き込まれる書き込み用コンデンサと、前記書き込み用コンデンサの電荷を受け付け可能な表示用コンデンサと、前記表示用コンデンサに保持された電荷の大きさに応じた前記駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタとを有し、前記書き込み用コンデンサに対する電圧信号の書き込みと、前記表示用コンデンサに保持された電荷に応じた前記発光素子の発光とを独立して実行できるように構成された表示装置に実行させる表示方法であって、前記制御部は、前記表示部における行単位での書き込みの順序を、前記書き込みの順序が連続する2つの行の間の電圧信号の差が小さくなるように並び替えるステップと、前記ゲートドライバに対し、並び替えた後の前記書き込みの順序で前記複数のゲート信号線の選択を行わせるように、前記書き込みの順序を指定するステップと、前記ゲートドライバによるゲート信号線の選択時に、前記表示用コンデンサと前記書き込み用コンデンサとが電気的に接続されないように前記表示画素を制御するステップと、前記ゲートドライバにより前記複数のゲート信号線が選択されていない時に、前記表示用コンデンサと前記書き込み用コンデンサとが電気的に接続されるように前記表示画素を制御するステップとを実行する。
【0057】
上記構成は、電圧信号の書き込みと発光素子の発光とを独立して行うための具体的な態様を規定している。第二スイッチ回路により、書き込み用コンデンサと表示用コンデンサとを非接続にする場合は、独立して電圧信号の書き込みと発光素子の発光と行える。また、第二スイッチ回路により、書き込み用コンデンサと表示用コンデンサとを接続すれば、書き込み用コンデンサの電圧信号を表示用コンデンサにコピーすることができる。
【0058】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されても良い。
【0059】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0060】
また、各図面は理解を容易にするために、また、作図を容易にするために、省略、拡大あるいは縮小した箇所がある。また、同一番号または、記号等を付した箇所は、同一もしくは類似の形態もしくは材料あるいは機能もしくは動作、あるいは関連する事項、作用などを有している。
【0061】
(実施の形態)
実施の形態の表示装置について、
図5〜
図15Bを基に説明する。
【0062】
本実施の形態の表示装置は、ソースドライバICの出力電力が小さくなるように、ゲート信号線の選択順序を並び替える。さらに、ゲート信号線の選択順序に伴う映像品質の低下を防止するために、表示画素に、書き込み処理と表示処理とを切り離して実行できる構成を採用している。
【0063】
本実施の形態では、表示装置は、有機ELディスプレイである。
【0064】
[1−1.有機ELディスプレイの構成]
本実施の形態における有機ELディスプレイの構成について、
図1B、
図5〜
図6を基に説明する。
【0065】
本実施の形態の有機ELディスプレイは、基本的な構成は、
図1Bに示す有機ELディスプレイ100と同じであり、有機ELパネル10、ソースドライバIC20、PCB30、ゲートドライバIC40、PCB50、および、TCON60を備えている。
【0066】
有機ELパネル10は、行毎に配置された複数のゲート信号線GLと、列毎に配置された複数のソース信号線SLと、ゲート信号線GLとソース信号線SLとの交差点のそれぞれに行列状に配置された複数の表示画素Pを備える表示領域11(表示部に相当)と、表示領域11とPCB30とを繋ぐ配線(ゲート信号線GLおよびソース信号線SL)が形成されたガラス基板12とを備えている。
【0067】
表示領域11は、映像を表示するための領域であり、複数の表示画素Pは、ユーザーが視認できる位置に配置されている。
【0068】
[1−1−1.表示画素の構成]
表示画素Pは、R(赤)G(緑)B(青)の3原色のいずれか1つに対応している。RGBの3つの表示画素Pのセットで、1つの画素が構成されている。同じ画素を構成する複数の表示画素Pは、それぞれ隣接して配置されている。
【0069】
また、本実施の形態の表示画素Pは、電圧信号の書き込みと、有機EL素子の発光とを独立して行うことができる構成となっている。このように構成することにより、1枚のフレームにおいて、ゲート信号線の選択順番がばらばらな状態であっても、表示の切り替えは全ての表示画素Pにおいて同時に行うことが可能になる。このため、本実施の形態の有機ELディスプレイでは、2つのフレームが混在して表示されることがなく、映像品質の低下を防止することが可能になる。
【0070】
図5は、本実施の形態における表示画素P1(P)の構成の一例を示す回路図である。
図5に示すように、表示画素P1は、スイッチング素子T1〜T4、コンデンサCcおよびCs、駆動トランジスタT5および有機EL素子(発光素子)OEL1を備えている。
【0071】
スイッチング素子T1は、表示画素P1の選択および非選択を切り替える第一スイッチ回路の一例であり、Pチャネル型MOSトランジスタで構成されている。スイッチング素子T1は、ゲート信号線GL1に印加される選択信号に応じて、ソース信号線SLとノードN1との間の導通および非導通を切り替える。
【0072】
スイッチング素子T2〜T4は、Pチャネル型MOSトランジスタである。スイッチング素子T2〜T4により、コンデンサCcに対し電圧信号の書き込みを行う書き込み動作、コンデンサCsをリセットするリセット動作、コンデンサCsにコンデンサCcに書き込まれた電圧信号をコピーするコピー動作、および、有機EL素子OEL1の発光を行う発光動作を行わせることができる。詳細については後述する。
【0073】
スイッチング素子T2は、コンデンサCcとコンデンサCsとの接続および非接続を切り替える第二スイッチ回路の一例であり、ゲート信号線GL2に印加される信号に応じて、ノードN1とノードN2との間の導通および非導通を切り替える。
【0074】
スイッチング素子T3は、ゲート信号線GL3に印加される信号に応じて、ノードN2に電圧Vref1を入力するか否かを切り替える。電圧Vref1は、コンデンサCsを初期化するための電圧である。
【0075】
スイッチング素子T4は、駆動トランジスタT5と有機EL素子OEL1との接続および非接続を切り替える第三スイッチ回路の一例であり、ゲート信号線GL4に印加される信号に応じて、駆動トランジスタT5による有機EL素子OEL1への駆動電流の供給と非供給とを切り替える。
【0076】
駆動トランジスタT5は、Pチャネル型MOSトランジスタであり、コンデンサCsに書き込まれた電圧信号の大きさに応じた駆動電流を有機EL素子OEL1に供給する。駆動トランジスタT5は、ゲート端子がノードN2に、ドレイン端子が有機EL素子OEL1のアノード電極にそれぞれ接続され、ソース端子にアノード電圧VTFTが入力されている。
【0077】
有機EL素子OEL1は、駆動トランジスタT5から供給される駆動電流に応じて発光する素子である。有機EL素子OEL1は、カソード電極にカソード電圧VELが入力され、アノード電極がスイッチング素子T4に接続されている。
【0078】
コンデンサCcは、ソースドライバIC20により電圧信号が書き込まれる書き込み用コンデンサの一例であり、一端がノードN1に接続され、他端にリファレンス電圧Vref1が入力されている。
【0079】
コンデンサCsは、コンデンサCcの電圧信号がコピーされる(コンデンサCcの電荷を受け付ける)表示用コンデンサの一例であり、一端がノードN2に接続され、他端に電圧VTFTが入力されている。
【0080】
表示画素P1は、上述した構成とすることにより、電圧信号の書き込みと、有機EL素子の発光とを独立して行うことができる。詳細な動作については後述する。
【0081】
[1−1−2.ソースドライバICの構成]
ソースドライバIC20は、ここでは、フレキシブルケーブルにソース信号線駆動回路21を搭載したCOFで構成されている。ソース信号線駆動回路21は、TCON60からのデータ信号に基づき、ソース信号線SLのそれぞれに、ソース信号線SLに接続された表示画素P1の画素値に対応する電圧値の電圧信号を印加する。PCB30は、ソースドライバIC20とTCON60とを接続するプリント基板である。
【0082】
[1−1−3.ゲートドライバICの構成]
ゲートドライバIC40は、ここでは、フレキシブルケーブルにゲート信号線駆動回路41を搭載したCOFで構成されている。ゲート信号線駆動回路41は、TCON60により選択されたゲート信号線GLに対し、当該ゲート信号線GLに接続された表示画素P1のスイッチング素子(トランジスタ)をON状態にする電圧値の選択信号を印加する。また、ゲート信号線駆動回路41は、TCON60により選択されなかった(非選択の)ゲート信号線GLのそれぞれに対し、当該ゲート信号線GLに接続された表示画素P1のスイッチング素子をOFF状態にする電圧値の非選択信号を印加する。
【0083】
なお、本実施の形態のゲートドライバIC40は、選択信号を印加するゲート信号線を任意の順番で指定できるように構成されている。
【0084】
図6は、ゲートドライバIC40に搭載されたゲート信号線駆動回路41の構成の一例を示すブロック図である。ゲート信号線駆動回路41は、
図6に示すように、4つのシフトレジスタ221〜224を備えている。シフトレジスタ22i(i=1〜4)には、選択されたゲート信号線GLを示す信号Selj(i=1のときj=A、同様に、i=2〜4のときj=B〜D)、トランジスタをON状態にする電圧Vonj、トランジスタをOFF状態にする電圧Voffj、Vovd、信号の方向を制御するDIR、イネーブル信号ENABLEi、クロック信号CLKiが入力されている。シフトレジスタ22iは、180本のゲート信号線GLのうち、Seljによって指定されたゲート信号線GLに電圧Vonjを印加し、その他のゲート信号線GLに電圧Voffjを印加する。
【0085】
PCB50は、ゲートドライバIC40とTCON60とを接続するプリント基板である。
【0086】
[1−1−4.TCON(タイミングコントローラ)の構成]
TCON60は、表示領域11における映像の表示を制御する制御部の一例である。
【0087】
図25Aは、駆動トランジスタT5のゲート端子に印加するゲート端子印加電圧(=映像信号電圧Vsig)と駆動トランジスタT5に流れる電流Idの関係図である。駆動トランジスタT5のV−Idカーブは、Vtを0点として、略2乗カーブとなる。
【0088】
図25Bは、EL素子に流れる電流IdとEL素子の発光輝度Bの関係を図示したものである。EL素子に流れる電流IeとEL素子の発光輝度Bとは、比例の関係となる。
【0089】
図25Aのゲート端子印加電圧Vは、ソースドライバICの映像信号電圧Vsigであり、トランジスタ電流IdはEL素子に流れる電流Ieとなる。したがって、Vt以上の電圧範囲で、映像信号電圧VsigとEL素子の発光輝度Bとは、略2乗カーブとなる。
【0090】
なお、理解を容易にするために、輝度あるいは電圧差として表現するが、輝度あるいは電圧差は、電圧あるいは電位差に対応する。したがって、輝度は電圧に置き換えることができる。また、輝度あるいは電圧は、電力に変換することができる。
【0091】
ソースドライバから出力される信号は電圧であり、電圧が画素に書き込まれ、駆動トランジスタT5で電流に変換され、この電流が有機EL素子OEL1に流れてEL素子が発光して輝度となる。ソースドライバから出力される電圧は、一定の変換係数あるいは変換式もしくは変換テーブルなどの手段で変換されて輝度となる。また、電位差(電圧差)は一定の変換係数あるいは変換式もしくは変換テーブルなどの手段で変換されて電圧差となる。たとえば、電圧差算出部61は、電圧差の演算手段と置き換えることができる。
【0092】
なお、変換係数等は、R、G、Bのそれぞれの画素のEL素子の効率を考慮して設定してもよいことは言うまでもない。以上の事項は、本明細書の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせることができることも言うまでもない。
【0093】
TCON60は、上述した表示画素P1の各動作の制御、および、1フレームにおける書き込みの順序の決定を行う。
【0094】
図7は、TCON60の機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、
図7では、本実施の形態を説明するのに必要な構成のみを記載し、その他の構成については省略している。TCON60は、
図7に示すように、電圧差算出部61、並び替え部62、ゲート側制御部63、および、ソース側制御部64を備えている。
【0095】
各部の詳細な動作については、後述する。
【0096】
なお、TCON60は、本実施の形態では、専用のLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)により構成されている場合を例に説明するが、これに限るものではない。TCON60は、例えば、マイクロプロセッサ(MPU)、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムで構成されていても構わない。この場合は、マイクロプロセッサが、上述した各動作を実行させるためのコンピュータプログラムに従って動作することにより、上述した各動作を実現できる。
【0097】
[1−2.有機ELディスプレイの動作]
有機ELディスプレイ100の動作について、
図8〜
図15Bを用いて説明する。
【0098】
上述したように、有機ELディスプレイ100では、TCON60により、1フレームにおける書き込みの順序の決定、および、表示画素P1の各動作の制御が行われる。
【0099】
[1−2−1.書き込みの順序の決定]
TCON60の書き込みの順序の決定について、
図8〜
図11を基に説明する。
【0100】
図8は、TCON60の動作を説明するフローチャートである。
図9は、フレームの一例を示す図である。
【0101】
TCON60は、ソースドライバICの出力電力を小さくするため、書き込みの順序が連続する2つの行の間の電圧信号の差(以下、適宜「電圧差」と略称する)が小さくなるように、書き込みの順序を並び替える。上述したように、ソースドライバIC20の出力電力Pは、CV
2Fで規定される。つまり、ソースドライバIC20の出力電力Pは、Vに対応する電圧信号の差の2乗に応じて決まる。電圧信号の差が小さくなるように書き込みの順序を並び替えることで、ソースドライバIC20の出力電力Pを小さくすることができる。
【0102】
具体的には、先ず、本実施の形態では、電圧差算出部61(
図7)は、行単位で書き込みの順序を設定するための指標値を算出する(S11)。指標値は、各行の電圧を示している。ここでは、指標値として、電圧信号の二乗の合計値(=Σ
k=1〜m(Luma(k))
2、kは整数、mは1行に含まれる画素の数、Luma(k)はk列の表示画素P1に対応する電圧信号が示す電圧値)を算出する。これを全ての画素行について求める。
【0103】
図9では、説明のため、11行分の指標値を例示している。ここでは、この11行について並び替えを行う場合を例に説明する。
図9では、指標値は、23、17、1、5、19、2、15、29、7、18、2となっている。書き込み順1は、並び替え前の書き込みの順番であり、1行目から順に順番が割り当てられている。
【0104】
並び替え部62は、本実施の形態では、指標値を昇順に並び替え、並び替えた順に書き込み順序を設定している(S12)。
図9では、書き込み順2は、並び替え後の書き込みの順序を示している。書き込み順2では、3行目、6行目、11行目、4行目、9行目、7行目、2行目、10行目、5行目、1行目、8行目の順になっている。
【0105】
図10Aは、書き込みの順序の並び替え前における各画素行の指標値を示すグラフである。
【0106】
ただし、
図10Aでは、理解を容易にするため、各画素行の指標値(電圧振幅差に相当する値)を1指標値として縦軸値に表現している。
【0107】
横軸は書き込みの順序を示す軸である。1画面が、2160画素行で構成される場合は、1〜2160となる。
図10Aでは、図示を容易にするため、また、理解を容易にするため、画素行数を11画素行とし、1〜11番目までを表現している。
【0108】
図10Bは、書き込みの順序の並び替え後における各画素行の指標値を示すグラフである。
図10Aおよび
図10Bにおいて、縦軸は指標値を示す軸であり、横軸は書き込みの順序を示す軸である。但し、横軸に付した数値は、棒グラフが何番目の画素行に対応するかを示す値である。
【0109】
図10Bのグラフでは、
図10Aのグラフと比較して、書き込みの順序が連続する2つの画素行間で、指標値の差が小さくなっている。指標値の差が小さいとは、ソースドライバIC20の出力電力が小さくなることを意味する。上述したように、ソースドライバIC20の出力電力は、CV
2Fで規定され、出力電圧の差Vの二乗に比例する。書き込みの順序を並び替えることにより、
図10Bに示すように、出力電圧の差Vを小さくすることができ、ソースドライバIC20の出力電圧を低減することが可能になる。
【0110】
図11は、
図4に示すフレームの書き込みの順序を本実施の形態の方法で並び替えた場合におけるソースドライバIC20の出力電圧を示す図である。
図11の本開示の形態における実施例では、まず、最大電圧Smaxの画素行を順次選択して、各画素行に電圧を印加し、次に、最小電圧Sminの画素行を順次選択して、各画素行に電圧を印加する。したがって、各画素行に印加する順番は、
図11のようになる。表示パネルの表示画面の表示は、
図4となる。
【0111】
図11では、
図4に比べ、出力電圧の電圧差が生じるのは、7番目の画素行と8番目の画素行の間だけであり、ソースドライバIC20に必要とされる駆動能力を飛躍的に下げることができ、発熱量も低減させることができることが分かる。
【0112】
なお、
図10Bでは、書き込みの順序を、指標値を昇順に(小さい方から順に)並び替える場合を例示したが、指標値を降順に(大きい方から順に)並び替えても構わない。
【0113】
図10Cは、書き込みの順序の並び替え後における各画素行の指標値を示すグラフである。
図10Cにおいて、縦軸は指標値を示す軸であり、横軸は書き込みの順序を示す軸である。但し、横軸に付した数値は、棒グラフが何番目の画素行に対応するかを示す値である。
図10Cの場合においても、
図10Bと同様に、出力電圧の差Vを小さくすることができ、ソースドライバIC20の出力電圧を低減することが可能になる。
【0114】
映像信号電圧は、TCONなどに内蔵するフレームメモリにメモリされる。フレームメモリにメモリされたデータを用いて、画素行の電圧値を求める。
【0115】
簡易的には、各画素に印加される映像信号の電圧値を、各画素行で総和し、総和した値で、選択する画素行の選択順番を求める。画素行は、ゲートドライバICで選択する。たとえば、
図9の右端の表において、23、17、1、5、19・・・・・18、2が各画素行の電圧の総和の場合、3、6、11、4、7、・・・・・、1、8画素行目を順次選択し、各画素行の画素にソースドライバから映像信号電圧を印加する。
【0116】
図23に図示するように、各ソース信号線に接続された画素間ごとの電圧差(映像信号電圧差)を求める必要がある。画素間ごとの電圧差を画素行で総和し、求めた総和の大小関係を求め、選択する画素行の順番を求める。なお、第1の画素行と第2の画素行における画素の電圧差は、画素行数がn画素行存在すれば、n−1の組み合わせがある。組み合わせ演算は、メモリに格納されたデータを用いて演算処理すれば求めることができる。
【0117】
ソースドライバの電力を低減させるには、書き込む画素行の順番を入れ替えることで実現できる。各ソース信号線に接続された画素間ごとの電圧差(映像信号電圧差)を求めることが最も高精度の実現手段である。しかし、演算数量が大きい。書き込む画素行を選択するには、各画素行の代表値(たとえば、奇数画素列、偶数列画素列、16の倍数の画素列など)を比較し、画素行の各指標値(演算値)差が最小に画素行の順番を求めることにより演算数量を削減できる。
【0118】
以上の事項は、本明細書の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせることができることも言うまでもない。
【0119】
[1−2−2.表示画素の動作]
表示画素P1の動作について、
図12A〜
図15Bを基に説明する。
【0120】
表示画素P1は、上述した構成とすることにより、映像信号電圧Vsig(電圧信号)の書き込み処理と、有機EL素子の発光処理とを独立して行うことができる。具体的には、本実施の形態の表示画素P1では、書き込み処理、リセット処理、コピー処理(複写処理)、および、発光処理が実行される。
【0121】
図12A〜
図12Dは、表示画素P1の4つの処理を説明する図である。各処理は、TCON60が有機ELディスプレイ100を構成する各回路を制御することにより実行される。
【0122】
図12B、
図12Cは、1フレームのブランキング期間において、表示画面の全画素に対して同時に実施される。
図12Aは、1フレームのブランキング期間以外の時間に、画面の上部から下部に1画素行ずつ順次映像信号電圧がコンデンサCcに印加される。
図12Dは、1フレームのブランキング期間以外の時間に実施される。
【0123】
書き込み処理では、コンデンサCsの現在の電圧信号に応じて有機EL素子OEL1を発光させながら、コンデンサCcに対し電圧信号の書き込みが行われる。
【0124】
図12Aは、書き込み処理におけるスイッチング素子T1〜T4の状態を示す図である。
図12Aに示すように、書き込み処理では、スイッチング素子T1およびT4がON状態、スイッチング素子T2およびT3がOFF状態となっている。このように各トランジスタの状態を設定することで、有機EL素子OEL1を現在の電圧信号に応じて発光させながら、コンデンサCcに次の電圧信号を書き込むことができる。
【0125】
リセット処理では、有機EL素子OEL1の発光を停止した状態で、コンデンサCsのリセットが行われる。
【0126】
図12Bは、リセット処理におけるスイッチング素子T1〜T4の状態を示す図である。
図12Bに示すように、リセット処理では、スイッチング素子T3がON状態、スイッチング素子T1、T2、T4がOFF状態となっている。スイッチング素子T1およびT2がOFF状態となることで、コンデンサCcには、次の電圧信号に応じた電荷が保持される。また、スイッチング素子T3がON状態であるため、駆動トランジスタT5のゲート端子、コンデンサCsの一端に電圧Vref1が入力される。これにより、駆動トランジスタT5は初期化される。リセット処理が実行される期間は、スイッチング素子T4がOFF状態であるため、有機EL素子OEL1は発光しない。
【0127】
なお、電圧Vref1を、駆動トランジスタT5をオフ状態とする電圧(Vt電圧以下)に設定することより、電圧Vref1を駆動トランジスタT5のゲート端子に印加しても、駆動トランジスタT5をカットオフに維持できる。したがって、スイッチング素子T4がオン状態でも、駆動トランジスタT5から有機EL素子OEL1に電流は供給されない。この場合は、スイッチング素子T4をオフにしなくともよい。
【0128】
コピー処理では、有機EL素子OEL1の発光を停止させた状態で、コンデンサCsにコンデンサCcに書き込まれた次の電圧信号がコピーされる。
【0129】
図12Cは、コピー処理におけるスイッチング素子T1〜T4の状態を示す図である。
図12Cに示すように、コピー処理では、スイッチング素子T2がON状態、スイッチング素子T1、T3、T4がOFF状態となっている。スイッチング素子T3がOFF状態となり、スイッチング素子T2がON状態となることで、コンデンサCcの一端とコンデンサCsの一端とが接続され、コンデンサCcに書き込まれた次の電圧信号をコンデンサCsにコピーする(書き込む)ことができる。コピー処理が実行される期間は、スイッチング素子T4がOFF状態であるため、有機EL素子OEL1は発光しない。
【0130】
発光処理では、有機EL素子OEL1の発光が行われる。
図12Dは、発光処理におけるスイッチング素子T1〜T4の状態を示す図である。
図12Dに示すように、発光処理では、スイッチング素子T4がON状態、スイッチング素子T1〜T3がOFF状態となっている。このように各トランジスタの状態を設定することで、有機EL素子OEL1を、次の電圧信号に応じて発光させることができる。
【0131】
図12Aに図示しているように、本開示の形態における画素構成では、有機EL素子OEL1に電流を供給している状態でも、映像信号電圧を画素に書き込むことができる。前フレーム期間に画素に書き込まれた映像信号に対応する電圧が、コンデンサCsで保持されており、駆動トランジスタT5は、コンデンサCsに保持された電圧に基づいて、有機EL素子OEL1に電流を供給する。
【0132】
現フレーム期間では、画素行が、ゲートドライバIC(回路)により、順次選択され、ソースドライバICは、選択された画素に映像信号を印加する。画素では映像信号に対応する電圧がコンデンサCcに保持される。1フレームの各ブランキング期間では、コンデンサCcに保持された電圧が、コンデンサCsにコピーされる。この期間は、表示画面は、非表示状態に維持される。
【0133】
次のフレーム期間では、コンデンサCsに保持された電圧に基づいて、駆動トランジスタT5が有機EL素子OEL1に電流を供給する。
【0134】
以上のように、本開示の形態における画素に、映像信号に基づく電圧を保持するコンデンサCs、Ccを具備することを特徴とする。
【0135】
なお、以上の実施例では、映像信号に基づく電圧を保持するコンデンサCs、Ccを具備するとしたが、これに限定するものではない。たとえば、トランジスタなどで2つのメモリ回路を構成し、このメモリ回路に映像信号に基づく電圧を保持させてもよい。また、MOSトランジスタのゲート容量に、映像信号に基づく電圧を保持させてもよい。
【0136】
以上の事項は、本明細書の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせることができることも言うまでもない。
【0137】
書き込み処理、リセット処理、コピー処理および発光処理を繰り返し実行することで、映像(例えば、動画)の表示を行うことができる。なお、発光処理において、全ての表示画素P1について、同時にスイッチング素子T4をOFF状態からON状態にすることで、フレームの表示の切り替えを全ての画素で同時に実行することができる。つまり、2つのフレームが混在表示されないようにすることができる。
【0138】
[1−3.作用効果]
図13は、フレームの一例を示す図である。
【0139】
本実施の形態では、書き込みの順序を、例えば、輝度値の合計を小さい方から順に並び替えるため、
図13に示すフレームでは、最初に比較的暗い領域A2書き込まれ、次に、中間の明るさの領域A3が、最後に、比較的明るい領域A1が書き込まれる。本実施の形態では、書き込みの順序を並び替えるため、映像は、領域A2、A3、A1の順に書き換えられる。
【0140】
なお、「領域A2、A3、A1の順に書き換えられる」とは、理解を容易にするための概念的な表現である。本開示の形態における駆動方法では、画素行または各画素の画素間で、電圧差が小さくなるように、画素行を選択する。したがって、A1、A2、A3の各領域において、画面の上下方向あるいは下上方向に順次に画素行が選択されるものではない(ただし、実現の容易性から、A1、A2、A3の各領域において、画面の上下方向あるいは下上方向に順次に選択される場合も本開示の範疇である)。たとえば、領域A1の一部の画素行を書き込み、次に領域A3の一部の画素行を書き込み、また、領域A1の残りの一部の画素行を書き込むという場合もあることは言うまでもない。
【0141】
ここで、本実施の形態の電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行える表示画素P1ではなく、独立して行えない表示画素を用いた場合、1画面上に2つのフレームが混在して表示される期間が生じる。
【0142】
図14Aおよび
図14Bは、比較例におけるフレームの切り替え時の表示画面の一例を示す図である。
図14Aおよび
図14Bは、実際に画面上に表示される映像の状態を示している。当該比較例は、電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行えず、且つ、各画素行を上から順に(画素行1から順に)下方に向かって選択する場合を例示している。
【0143】
図14Aおよび
図14Bに示すように、比較例では、1画面上に2つのフレームが混在して表示されている。
図14Aに示すように、フレーム1からフレーム2に切り替わるときは、画面上部分に次のフレーム2の映像が、画面下部分に現在のフレーム1の映像が混在して表示される。
図14Bに示すように、フレーム2からフレーム3に切り替わるときは、例えば、画面上部分に次のフレーム3の映像が、画面下部分に現在のフレーム2の映像が混在して表示される。
【0144】
ここで、本実施の形態では、上述したように、
図13では、領域A2、A3、A1の順に電圧信号の書き込みが行われる。そうすると、電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行えない場合は、
図14Aおよび
図14Bに示す映像よりも、2つのフレームがばらばらに混在して表示されることになり、映像品質が低下する可能性がある。
【0145】
また、1つのフレームの場合であっても、以下の場合に表示画像に違和感を発生する。たとえば、A1領域の画像を書き換え、次にA3領域の画像を書き換え、次にA2領域の画像を書き換える場合である。画面の上下方向に順次に画像を書き換えるのと比較して、表示画面の特定領域の表示画像が書き換えられるため、表示画像を書き換えている領域がノイズ表示のように見える。特に、表示画像が動画表示の場合に顕著である。
【0146】
これに対し、本実施の形態では、上述したように、電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行える表示画素P1を用いている。このため、映像の切り替えは、全ての画素行について、発光処理において同時に行われる。
【0147】
電圧信号の書き込みを行っている画像は、表示画像として表示されず、電圧の書込みが完了したコンデンサCsの電圧に基づいて表示画面に表示画像が表示される。したがって、
図13のように、領域A2、A3、A1の順に電圧信号の書き込んでも書き込み時の画像は、表示されないから、従来のような表示画像の違和感が発生しない。
【0148】
図15Aおよび
図15Bは、本実施の形態の表示画素P1を用いた場合におけるフレームの切り替え時の表示画面の一例を示す図である。
図15Aおよび
図15Bは、実際に画面上に表示される映像の状態を示している。
【0149】
本実施の形態では、
図15Aおよび
図15Bに示すように、映像の切り替えは全ての画素行で同じタイミングで行われる。映像の切り替えは、1フレーム期間のブランキング期間に実施することが好ましい。1フレームが複数のサブフィールドで構成される場合は、すべてのサブフィールドのブランキング期間あるいは、任意のサブフィールド期間で映像信号の切り替えを行うことが好ましい。本実施の形態では、1つの画面上で2つのフレームが混在して表示されることはない。上述したように、本実施の形態では、書き込みの順序の並び替えを行うため、電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行えない場合は、1つの画面上に2つのフレームがさらに断片的に混在して表示される状態となる場合がある。これに対し、本実施の形態の表示画素P1を用いれば、電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行えるため、1つの画面上に2つのフレームが混在して表示されることがなく、書き込みの順序の並び替えによる映像品質の低下を防止できる。
【0150】
以上より、本実施の形態の有機ELディスプレイ100では、書き込みの順序の並び替えを行い、且つ、電圧信号の書き込みと映像の表示とを独立して行える。これにより、有機ELディスプレイ100は、映像品質を低下させることなく、ソースドライバICに必要とされる駆動能力を低減し、ソースドライバICの発熱量を押えて、特別な放熱機構を備える必要を無くすことが可能になる。
【0151】
[1−4.変形例1:フレームが複数のサブフィールドで構成される場合1]
変形例1について、
図16〜
図18を基に説明する。
【0152】
本変形例では、フレームが、複数のサブフィールドを重畳したものである場合について説明する。
【0153】
図16は、複数のサブフィールドで構成されるフレームの一例を示す図である。各サブフィールドは、添え字(数字)の値が小さいほど輝度値が高く、添え字の値が大きいほど輝度値が低くなっている。表示画素P1毎に、輝度値に応じて点灯させるサブフィールドを選択することで、所望の輝度を得ることができる。
【0154】
1フレームの映像信号を、複数のサブフィールドに分解する。
図16の実施例では各サブフィールドは、輝度(明るさ)で区分されている。なお、映像データの上位ビット〜下位ビット等でサブフィールドに区分してもよいことは言うまでもない。たとえば、映像信号が8ビットの場合、8つのサブフィールドから1フレームを構成する。ソースドライバICは、各サブフィールドにおいて、ビットに重みづけを行った電圧値をソース信号線に出力する。この場合、各画素行の指標値は、ビット”1”の個数を求めることにより取得することができる。また、他の画素行との指標値は、ビット”1”の位置を比較することにより、指標値を取得することができる。以上の事項は、本明細書の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせることができることも言うまでもない。
【0155】
図17および
図18は、本変形例におけるソースドライバIC20の出力電力の一例を示す図である。
【0156】
図17および
図18では、先ず、サブフィールド内で書き込みの順序の並び替えを行っている。また、
図17および
図18では、説明のため、1つのフレームが4つのサブフィールドで構成されている場合を示している。
【0157】
図17では、フィールドの表示順序は並び替えず、サブフィールド内で書き込みの順序の並び替えを行っている。
図17では、サブフィールド1〜4の何れも、指標値(=電圧信号の二乗の合計値)を降順に並び替え、並び替えた順に書き込み順序を設定している。上述したように、サブフィールド1〜4の順番で指標値が大きい(サブフィールド1の指標値>サブフィールド2の指標値>サブフィールド3の指標値>サブフィールド4の指標値)。このため、フィールド毎に指標値を降順に並び替えた場合、フレーム全体で指標値を降順に並び替えたことになる。これにより、ソースドライバIC20の出力電圧の差をフレーム全体で小さくすることができる。
【0158】
図18では、サブフィールドの表示順序を、サブフィールド4〜1の順に設定している。さらに、
図18では、サブフィールド毎に、指標値を昇順に並び替えている。つまり、
図18では、フレーム全体で指標値を昇順に並び替えている。これにより、ソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0159】
映像信号電圧は、TCON60などに内蔵するフレームメモリにメモリされる。前記フレームメモリは、さらに複数のサブフィールドに区分されている。まず、フレームメモリデータを演算し、画像データを複数のサブフィールドに区分する。メモリされたデータを用いて、各サブフィールドでの画素行の電圧値を求める。
【0160】
簡易的には、各画素に印加される映像信号の電圧値を、各サブフィールドの各画素行で総和し、総和した値で、選択する画素行の選択順番を求める。
【0161】
各ソース信号線に接続された画素間ごとの電圧差(映像信号電圧差)を求める必要がある。画素間ごとの電圧差を画素行で総和し、求めた総和の大小関係を求め、選択する画素行の順番を求める。なお、第1の画素行と第2の画素行における画素の電圧差は、画素行数がn画素行存在すれば、n−1の組み合わせがある。組み合わせ演算は、メモリに格納されたデータを用いて演算処理すれば求めることができる。
【0162】
ソースドライバIC20の電力を低減させるには、書き込む画素行の順番を入れ替えることで実現できる。各ソース信号線に接続された画素間ごとの電圧差(映像信号電圧差)を求めることが最も高精度の実現手段である。しかし、演算数量が大きい。書き込む画素行を選択するには、各画素行の代表値(たとえば、奇数画素列、素数画素列、64の倍数の画素列など)を比較し、画素行の各指標値(演算値)差が最小に画素行の順番を求めることにより演算数量を削減できる。また、各画素行の代表値(たとえば、奇数画素列、素数画素列、64の倍数の画素列など)は、サブフィールドごとに変化させることが好ましい。以上の事項は、本明細書の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせることができることも言うまでもない。
【0163】
[1−5.変形例2:フレームが複数のサブフィールドで構成される場合2]
変形例2について、
図19および
図20を基に説明する。
【0164】
本変形例では、変形例1と同様に、フレームが、複数のサブフィールドを重畳したものである場合について説明する。
【0165】
変形例1では、指標値を昇順または降順に並び替えたが、本変形例では、サブフィールドまたはフレーム毎(画像毎)に、指標値を昇順に並び替えるか降順に並び替えるかを選択している。
【0166】
また、本変形例では、サブフィールドは、上位ビット〜下位ビット等、輝度値の大小以外で規定されている。このため、変形例1と同様に並び替えを行うと、サブフィールド内では指標値の差を小さくできるが、フィールド間では指標値の差を小さくできない場合が考えられる。
【0167】
具体的には、本変形例では、TCON60は、現在の並び替え処理における指標値の最小値と最大値とを求める。TCON60は、前回のサブフィールド(またはフレーム)における書き込みの順序が最後の行の指標値である最終指標値と、現在のサブフィールド(またはフレーム)における指標値の最小値および最大値とを比較する。TCON60は、最終指標値と最小値との差が、最終指標値と最大値との差よりも小さい場合は、指標値を昇順に並び替え、最終指標値と最大値との差が最終指標値と最小値との差よりも小さい場合は、指標値を降順に並び替える。
【0168】
図19および
図20は、本変形例におけるソースドライバIC20の出力電力の一例を示す図である。
【0169】
図19および
図20では、先ず、サブフィールド内で書き込みの順序の並び替えを行っている。また、
図19および
図20では、説明のため、1つのフレームが4つのサブフィールドで構成されている場合を示している。
【0170】
図19から分かるように、最初のサブフィールド1では、指標値が降順に並び替えられている。サブフィールド1の最終指標値は、サブフィールド1の指標値の最小値となっている。サブフィールド1の最終指標値とサブフィールド2の指標値の最大値との差は、サブフィールド1の最終指標値とサブフィールド2の指標値の最小値との差よりも小さい。従って、サブフィールド2では、指標値が降順に並び替えられている。
【0171】
同様に、サブフィールド2の指標値の最小値とサブフィールド3の指標値の最小値との差は、サブフィールド2の指標値の最小値とサブフィールド3の指標値の最大値との差よりも小さい。従って、サブフィールド3では、指標値が昇順に並び替えられている。
【0172】
同様に、サブフィールド3の指標値の最大値とサブフィールド4の指標値の最大値との差は、サブフィールド3の指標値の最大値とサブフィールド4の指標値の最小値との差よりも小さい。従って、サブフィールド4では、指標値が降順に並び替えられている。
【0173】
これにより、フィールド内だけでなく、フィールド間でもソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0174】
図19では、最初のサブフィールド1について指標値が降順に並び替えられていたが、
図20では、最初のサブフィールド1について指標値が昇順に並び替えられている。
【0175】
図20では、奇数番目に表示されるサブフィールド1および3については、指標値が昇順に並び替えられ、偶数番目に表示されるサブフィールド2および4については、指標値が降順に並び替えられている。
【0176】
図20のように書き込みの順序を設定した場合でも、
図19の場合と同様に、フィールド内だけでなく、フィールド間でもソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0177】
本変形例では、サブフィールド毎に指標値を降順に並び替えるか昇順に並び替えるかを選択したが、フレーム毎に選択するように構成しても構わない。
【0178】
本変形例は、サブフィールド毎またはフレーム毎に、指標値を降順に並び替えるか昇順に並び替えるかを選択するので、特に、サブフィールドの構成が、輝度値の順ではない場合に有用である。
【0179】
[1−6.変形例3:書き込みの順序の並び替え方法の他の例1]
変形例3について、
図21を基に説明する。
【0180】
図21は、本変形例における書き込みの順序の並び替え方法の一例を示す図である。
【0181】
本変形例では、TCON60は、以下で説明する第一検索処理および第二検索処理を実行する。
【0182】
第一検索処理では、TCON60は、書き込みの順序が設定されていない行を検索対象行とする。また、検索条件として、(検索条件1)最後に検索された指標値との差が閾値以下となる指標値を有すること、および、(検索条件2)最後に検索された指標値よりも小さいことが設定されている。TCON60は、検索対象行を一方向に、つまり、画素行1〜11の順に順次検索し、検索された順に書き込みの順序を設定する。
【0183】
第二検索処理では、TCON60は、書き込みの順序が設定されていない行を検索対象行とし、検索条件として、(検索条件3)最後に検索された指標値よりも大きい指標値を有することを設定している。TCON60は、検索対象行を一方向に、つまり、画素行1〜11の順に順次検索し、検索された順に書き込みの順序を設定する。
【0184】
具体的には、
図21では、閾値の値が10に設定されている。
【0185】
第一検索処理では、全ての画素行1〜11が検索対象行とされる。先ず、画素行1が検索される。次に、画素行1の指標値23との差が10より小さい画素行2の指標値17が検索される。次に、画素行2の指標値17との差が10より小さい画素行7の指標値15が検索される。画素行3、4、6は、差が10より大きいため、検索対象外である。また、画素行5の指標値19は、画素行2の指標値17よりも大きいため、検索対象外である。同様にして、画素行9の指標値7、画素行11の指標値2が検索される。検索された画素行1、2、7、9、11は、この順に書き込み順が設定される。
【0186】
続いて、第二検索処理が実行される。第二検索処理では、書き込み順が設定されていない画素行3〜6、8、10が検索対象行とされる。先ず、画素行3が検索され、続いて、画素行3の指標値1よりも大きい指標値5を有する画素行4が検索される。同様にして、画素行5の指標値19、画素行8の指標値29が検索される。検索された画素行3、4、5、8は、この順に書き込み順が設定される。
【0187】
最後に、書き込み順が設定されていない画素行6および画素行10が検索され、この順に書き込み順が設定される。
【0188】
まとめると、本変形例では、画素行1、2、7、9、11、3、4、5、8、6、10の順に書き込みの順序が設定される。
【0189】
本変形例においても、ソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0190】
画素行を書き込む順番を入れ替える指針は、各画素行の画素の代表値(最大値から64番目までの画素、最小値から64番目の画素、64画素列に位置する画素など)を設定して比較し、全行の各指標値差が最小になるようにすることによって実現してもよい。
【0191】
また、有機ELパネルでは、赤(R)、緑(G)、青(B)などの発光色によって、発光効率が異なり、また、必要とする電圧振幅も異なる。したがって、指標値は、赤(R)、緑(G)、青(B)で区分して演算して求めることが好ましい。
【0192】
以上の事項は、本明細書の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせることができることも言うまでもない。
【0193】
[1−7.変形例4:書き込みの順序の並び替え方法の他の例2]
変形例4について、
図22を基に説明する。
【0194】
図22は、本変形例における書き込みの順序の並び替え方法の一例を示す図である。
【0195】
本変形例では、TCON60は、変形例3の第一検索処理を実行する。第二検索条件は実行しない。また、本変形例の第一検索処理は、変形例3の第一検索処理から検索条件2を省いた構成となっている。つまり、検索条件として、(検索条件1)最後に検索された指標値との差が閾値以下となる指標値を有することを設定している。本変形例では、第一検索処理を、検索対象行がなくなるまで繰り返し実行している。
【0196】
また、TCON60は、検索対象行を一方向に、つまり、画素行1〜11の順に順次検索し、検索された順に書き込みの順序を設定する。
【0197】
具体的には、
図22では、閾値の値が7に設定されている。
【0198】
1回目の第一検索処理では、画素行1〜11が検索対象行とされる。先ず、画素行1が検索される。次に、画素行1の指標値23との差が7より小さい画素行2の指標値17が検索される。次に、画素行2の指標値17との差が7より小さい画素行5の指標値19が検索される。画素行3、4は、差が7より大きいため、検索対象外である。同様にして、画素行7の指標値15、画素行10の指標値18が検索される。検索された画素行1、2、5、7、10は、この順に書き込み順が設定される。
【0199】
2回目の第一検索処理では、画素行3、4、6、8、9、11が検索対象行とされる。先ず、画素行3が検索される。次に、画素行3の指標値1との差が7より小さい画素行4の指標値5が検索される。同様にして、画素行6の指標値2、画素行9の指標値7、画素行11の指標値2が検索される。検索された画素行3、4、6、9、11は、この順に書き込み順が設定される。
【0200】
3回目の第一検索処理では、画素行8が検索対象行とされる。画素行8に、次の書き込みの順序が割り当てられる。
【0201】
まとめると、本変形例では、画素行1、2、5、7、10、3、4、6、9、11、8の順に書き込みの順序が設定される。
【0202】
本変形例においても、ソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0203】
[1−8.変形例5:指標値の算出の他の例]
変形例5について、
図23を基に説明する。
【0204】
本変形例では、上記実施の形態および変形例1〜4とは、各行の明るさを示す指標値の算出方法が異なる。上記実施の形態および変形例1〜4では、指標値として、電圧信号の二乗の合計値(=Σ
k=1〜m(Luma(k))
2、kは整数、mは1行に含まれる画素の数、Luma(k)はk列の表示画素P1に対応する電圧信号が示す電圧値)を求めた。
【0205】
これに対し、本変形例では、指標値として、電圧信号の2条の差の合計値(=Σ
k=1〜m{(Luma(i)(k))
2−(Luma(j)(k))
2}(i、jは画素行、i=1〜n−1、j=i+1)を求める。これを、例えば、画素行1と画素行2〜mそれぞれとの間、画素行2と画素行3〜mそれぞれとの間、・・・、画素行m−1と画素行mとの間について求める。本変形例の指標値は、2つの行の間の明るさの差、つまり、他の行との対比における相対的な行の明るさを示している。
【0206】
図23は、本変形例における書き込みの順序の並び替え方法の一例を示す図である。
【0207】
1列目は、17
2−1
2=288となる。同様にして、m列目まで求め、これらを合計したものが指標値となる。
【0208】
検索方法は、実施の形態および変形例1〜4に準じて設定すればよい。TCON60は、例えば、最初に画素行1を選択し、次に、画素行1との間の指標値が閾値以下となる画素行(変形例3、4等に対応)、あるいは、画素行1との間の指標値が最も小さい画素行(実施の形態、変形例1、2等に対応)等を検索する。同様にして、最後に検索された画素行との間の指標値が、閾値以下あるいは最も小さい画素行を順次検索する。
【0209】
本変形例においても、ソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0210】
[1−9.変形例6:表示画素の構成の他の例]
変形例6について、
図24を基に説明する。本変形例では、上記実施の形態および変形例1〜4とは、表示画素Pの構成が異なる。
【0211】
図24は、本変形例における表示画素P2(P)の構成の一例を示す回路図である。
【0212】
図24に示すように、表示画素P2は、スイッチング素子T11〜T14、T16、T17、コンデンサCcおよびCs、駆動トランジスタT15および有機EL素子(発光素子)OEL1を備えている。
【0213】
スイッチング素子T11は、表示画素P2の選択および非選択を切り替える第一スイッチ回路の一例であり、Nチャネル型MOSトランジスタで構成されている。スイッチング素子T11は、ゲート信号線GL11に印加される選択信号に応じて、ソース信号線SLとノードN11との間の導通および非導通を切り替える。
【0214】
スイッチング素子T12〜T14、T16、T17は、Nチャネル型MOSトランジスタである。スイッチング素子T12〜T14、T16、T17により、コンデンサCcに対し電圧信号の書き込みを行う書き込み動作、コンデンサCsをリセットするリセット動作、コンデンサCsにコンデンサCcに書き込まれた電圧信号をコピーするコピー動作、および、有機EL素子OEL1の発光を行う発光動作を行わせることができる。
【0215】
スイッチング素子T12は、コンデンサCcとコンデンサCsとの接続および非接続を切り替える第二スイッチ回路の一例であり、ゲート信号線GL12に印加される信号に応じて、ノードN11とノードN12との間の導通および非導通を切り替える。
【0216】
スイッチング素子T13は、ゲート信号線GL13に印加される信号に応じて、ノードN12に電圧Vref2を入力するか否かを切り替える。電圧Vref2は、コンデンサCcを初期化するための電圧である。
【0217】
スイッチング素子T14は、駆動トランジスタT15と有機EL素子OEL1との接続および非接続を切り替える第三スイッチ回路の一例であり、ゲート信号線GL14に印加される信号に応じて、駆動トランジスタT15による有機EL素子OEL1への駆動電流の供給と非供給とを切り替える。
【0218】
スイッチング素子T16は、ゲート信号線GL15に印加される信号に応じて、ノードN12に電圧Vref1を入力するか否かを切り替える。電圧Vref1は、コンデンサCsを初期化するための電圧である。
【0219】
スイッチング素子T17は、ゲート信号線INIに印加される信号に応じて、ノードN13に電圧VINIを印加するか否かを切り替える。なお、電圧VINIは、有機EL素子OEL1の初期化を行うための電圧である。
【0220】
駆動トランジスタT15は、Nチャネル型MOSトランジスタであり、コンデンサCsに書き込まれた電圧信号の大きさに応じた駆動電流を有機EL素子OEL1に供給する。駆動トランジスタT15は、ゲート端子がノードN12に、ドレイン端子が有機EL素子OEL1のアノード電極にそれぞれ接続され、ソース端子にスイッチング素子T14を介して電圧VTFTが入力されている。
【0221】
有機EL素子OEL1は、駆動トランジスタT15から供給される駆動電流に応じて発光する素子である。有機EL素子OEL1は、カソード電極に電圧VELが入力され、アノード電極がスイッチング素子T14に接続されている。
【0222】
コンデンサCcは、ソースドライバIC20により電圧信号が書き込まれるコンデンサであり、一端がノードN11に接続され、他端に電圧Vref1が入力されている。
【0223】
コンデンサCsは、コンデンサCcの電圧信号がコピーされる(コンデンサCcの電荷を受け付ける)コンデンサであり、一端がノードN12に接続され、他端に電圧VTFTが入力されている。
【0224】
表示画素P2は、上述した構成とすることにより、電圧信号の書き込みと、有機EL素子の発光とを独立して行うことができる。
【0225】
本変形例においても、実施の形態および変形例1〜5に記載した方法で、書き込みの順序を並び替えることにより、ソースドライバIC20の出力電圧の差を小さくすることができる。
【0226】
また、本変形例の表示画素P2を用いることにより、映像品質の低下を防止することが可能になる。
【0227】
(他の実施の形態)
以上、有機ELディスプレイ(表示装置)について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれても良い。
【0228】
(1)上記実施の形態および変形例1〜4、6では、複数の表示画素の各行の明るさを示す指標値として、輝度値の2乗の合計値を求め、変形例5では、電圧信号の2条の差の合計値を求めたが、これに限るものではない。指標値は、例えば、1行の画素の平均値、あるいは、2乗の平均値等であっても構わない。
【0229】
(2)上記実施の形態および変形例1では、指標値を降順または昇順に並び替え、変形例2では、指標値を降順または昇順に並び替えるかをフィールドまたはフレーム毎に判定したが、これに限るものではない。
【0230】
フィールドあるいはフレーム毎に、指標値を昇順に並び替えるか降順に並び替えるかを規定したパターンを予め設定しておいても構わない。
【0231】
具体的には、例えば、一般的に、最小値同士、最大値同士は指標値の差が小さくなると考えられることから、フィールドあるいはフレーム毎に、指標値の並び替えを、降順に行うか昇順に行うかを交互に設定しても構わない。