(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
以下では、本開示の一実施の形態による、駆動トランジスタを備える表示装置の製造方法について、EL表示装置を例に図面を用いて説明する。
【0013】
[1.表示装置の概要]
図1は、駆動トランジスタを備える表示装置の一例である、有機EL表示パネルを備えた有機EL表示装置の機能構成を示すブロック図である。
【0014】
同図に示すように、有機EL表示装置210は、有機EL表示パネル200、データ線駆動回路213、走査線駆動回路214、制御部211、メモリ212、を備える。
【0015】
有機EL表示パネル200には、ドライバ装置としてのデータ線駆動回路213、および、走査線駆動回路214が接続され、ドライバ装置から入力された信号(輝度信号、走査信号)に基づいてマトリクス状に配置された微小な発光画素215のそれぞれの発光量を制御して文字や画像(動画含む)を表示させることができる装置である。
【0016】
制御部211は、データ線駆動回路213、走査線駆動回路214、メモリ212、の制御、具体的に例えば、データ線駆動回路213から出力される信号電圧を出力するタイミング、および、走査線駆動回路214から出力される走査信号の出力タイミングの制御、などを行う。
【0017】
また、制御部211は、外部から入力される映像信号を変換して発光画素の発光を決定する信号電圧にする処理を行い、メモリ212に書き込まれた補正データを読み出し、外部から入力された映像信号に基づいた信号電圧を、その補正データに基づいて補正して、走査順にデータ線駆動回路213へと出力する。
【0018】
メモリ212には、各発光画素215の駆動トランジスタ(後述)の特性及び累積ストレスなどの補正データが記憶されている。
【0019】
データ線駆動回路213は、各データ線へ、信号電圧を出力することにより、映像信号に対応した発光画素の発光を実現する回路装置であり、いわゆるドライバ装置の一つである。
【0020】
走査線駆動回路214は、各走査線へ走査信号を出力することにより、発光画素の有する回路素子を所定の駆動タイミングで駆動する回路装置であり、いわゆるドライバ装置の一つである。
【0021】
有機EL表示パネル200の表示領域201は、発光画素215がマトリクス状に配置された領域であり、複数の発光画素215のそれぞれは、データ線駆動回路213からの輝度信号、及び、走査線駆動回路214からの走査信号に応じて発光する。
【0022】
図2は、有機EL素子を有する発光画素の回路構成図の一例を示す図である。
【0023】
同図に記載された発光画素215は、有機EL素子216と、駆動トランジスタ217と、選択トランジスタ218と、コンデンサ219とを備える。マトリクス状に配置された発光画素215の列ごとにデータ線231が配置され、発光画素215の行ごとに走査線241が配置されている。また、全ての発光画素215に共通して正電源線251及び負電源線252が配置されている。選択トランジスタ218のドレイン電極はデータ線231に、選択トランジスタ218のゲート電極は走査線241に、さらに、選択トランジスタ218のソース電極は、コンデンサ219及び駆動トランジスタ217のゲート電極に接続されている。また、駆動トランジスタ217のドレイン電極は正電源線251に接続され、ソース電極は有機EL素子216のアノードに接続されている。
【0024】
図3は、発光画素の構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0025】
同図に記載された発光画素215は、基板202と、駆動回路層301と、発光層302と、透明封止膜310とを備える。
【0026】
基板202は、複数の発光画素215が行列状に配置される板状の部材であり、例えば、ガラス基板である。なお、基板202は、樹脂からなるフレキシブル基板などを用いることも可能である。基板202は、駆動回路層301とともに、薄膜トランジスタ(TFT)も表面に形成される。なお、
図3に示したトップエミッション構造の場合には、基板202は透明である必要はないので、非透明の基板、例えば、シリコン基板を用いることもできる。
【0027】
駆動回路層301は、基板202の上に形成された駆動トランジスタ(
図2での217)と、コンデンサ(
図2での219)と、選択トランジスタ(
図2での218)とを備える。駆動回路層301は、平坦化膜により、その上面の平担性が確保されている。
【0028】
発光層302は、有機EL素子216を構成する層であり、陽極361と、正孔注入層362と、正孔輸送層363と、有機発光層364と、バンク層365と、電子注入層366と、透明陰極367とを備える。
【0029】
図3に示す発光画素215は、トップエミッション構造であり、発光層302に電圧を印加すると、有機発光層364で光が生じ、透明陰極367及び透明封止膜310を通じて光を上方に出射する。また、有機発光層364で生じた光のうち下方に向かった光は、陽極361で反射され、透明陰極367及び透明封止膜310を通じて上方に出射する。
【0030】
陽極361は、駆動回路層301の平坦化膜の表面上に積層され、透明陰極367に対して正の電圧を発光層302に印加する電極である。陽極361を構成する陽極材料としては、例えば、反射率の高い金属であるAl、Ag、またはそれらの合金が好ましい。また、陽極361の厚さは、例えば、100〜300nmである。
【0031】
正孔注入層362は、陽極361の表面上に形成され、正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して、有機発光層364へ正孔を注入する機能を有する。これにより、発光層302の駆動電圧が低電圧化され、正孔注入の安定化により素子が長寿命化される。正孔注入層362の材料としては、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)などを用いることができる。また、正孔注入層362の膜厚は、例えば、10nm〜100nm程度にすることが好ましい。
【0032】
正孔輸送層363は、正孔注入層362の表面上に形成され、正孔注入層362から注入された正孔を有機発光層364内へ効率良く輸送し、有機発光層364と正孔注入層362との界面での励起子の失活防止をし、さらには電子をブロックする機能を有する。正孔輸送層363としては、例えば、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を有する有機高分子材料であり、例えば、トリフェルアミン、ポリアニリンなどが挙げられる。また、正孔輸送層363の厚さは、例えば、5〜50nm程度である。
【0033】
なお、正孔輸送層363は、その隣接層である正孔注入層362や有機発光層364の材料により、省略される場合がある。
【0034】
有機発光層364は、正孔輸送層363の表面上に形成され、正孔と電子が注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層364としては、低分子有機材料だけでなく、インクジェットやスピンコートのような湿式製膜法で製膜できる発光性の高分子有機材料も適用される。高分子有機材料の特徴としては、デバイス構造が簡単であること、膜の信頼性に優れ、低電圧駆動のデバイスであることも挙げることができる。芳香環または縮合環のような共役系を持った高分子あるいはπ共役系高分子は蛍光性を有することから、有機発光層364を構成する高分子有機材料として用いることができる。有機発光層364を構成する高分子発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン(PPV)またはその誘導体(PPV誘導体)、ポリフルオレン(PFO)またはその誘導体(PFO誘導体)、ポリスピロフルオレン誘導体などを挙げることができる。また、ポリチオフェンまたはその誘導体を用いることも可能である。
【0035】
バンク層365は、駆動回路層301または陽極361の表面上に形成され、湿式製膜法を用いて形成される正孔輸送層363及び有機発光層364を所定の領域に形成するバンクとしての機能を有する。バンク層365に用いられる材料は、無機物質および有機物質のいずれであってもよいが、有機物質の方が、一般的に、撥水性が高いので、より好ましく用いることができる。このような材料の例としては、ポリイミド、ポリアクリルなどの樹脂が挙げられる。バンク層365の厚さは、例えば、100〜3000nm程度である。
【0036】
電子注入層366は、有機発光層364の上に形成され、有機発光層364への電子注入の障壁を低減し発光層302の駆動電圧を低電圧化すること、励起子失活を抑制する機能を有する。これにより、電子注入を安定化し素子を長寿命化すること、透明陰極367との密着を強化し発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させることが可能となる。電子注入層366は、特に限定されるものではないが、好ましくはバリウム、アルミニウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、さらに、バリウム−アルミニウム積層体などからなる。電子注入層366の厚さは、例えば、2〜50nm程度である。
【0037】
透明陰極367は、電子注入層366の表面上に積層され、陽極361に対して負の電圧を発光層302に印加し、電子を素子内(特に有機発光層364)に注入する機能を有する。透明陰極367としては、特に限定されるものではないが、透過率の高い物質および構造を用いることが好ましい。これにより、発光効率が高いトップエミッション有機EL素子を実現することができる。透明陰極367の構成としては、特に限定されるものではないが、金属酸化物層が用いられる。この金属酸化物層としては、特に限定されるものではないが、インジウム錫酸化物(以下、ITOと記す)、あるいはインジウム亜鉛酸化物(以下、IZOと記す)からなる層が用いられる。また、透明陰極367の厚さは、例えば、5〜200nm程度である。
【0038】
透明封止膜310は、透明陰極367の表面上に形成され、水分から素子を保護する機能を有する。また、透明封止膜310は、透明であることが要求される。透明封止膜310は、例えば、SiN、SiON、または有機膜からなる。また、透明封止膜310の厚さは、例えば、20〜5000nm程度である。
【0039】
以上説明した発光画素215の構造により、有機EL表示装置210は、アクティブマトリクス型の表示装置としての機能を有する。
【0040】
上記構成において、走査線241に走査信号が入力され、選択トランジスタ218をオン状態にすると、データ線231を介して供給された信号電圧に対応した電圧がコンデンサ219に書き込まれる。そして、コンデンサ219に書き込まれた信号電圧に対応した保持電圧は、1フレーム期間を通じて保持され、この保持電圧により、駆動トランジスタ217のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した駆動電流が有機EL素子216のアノードに供給される。さらに、有機EL素子216のアノードに供給された駆動電流は、有機EL素子216のカソードへと流れる。これにより、有機EL素子216が発光し画像として表示される。このとき、有機EL素子216のアノードには、信号電圧に対応した順バイアス電圧が印加されていることになる。
【0041】
なお、上述した発光画素の回路構成は、
図3に記載された回路構成に限定されない。選択トランジスタ218、駆動トランジスタ217は、信号電圧に応じた駆動電流を有機EL素子216に流すために必要な回路構成要素であるが、上述した形態に限定されない。また、上述した回路構成要素に、別の回路構成要素が付加される場合も、本開示に係る有機EL表示装置の発光画素回路に含まれる。
【0042】
〔2.本開示の基礎となる知見〕
以下、本開示の基礎となる知見について説明する。
【0043】
有機EL表示装置の発光画素に含まれる駆動トランジスタの閾値電圧について説明する。TFTからなる駆動トランジスタにおいては、電圧を印加すると閾値電圧が経時的に変化する。すなわち、駆動トランジスタのゲート電極にバイアスが印加されると、ゲート絶縁膜に、正バイアス印加時には電子が注入され、負バイアス印加時にはホールが注入されるため、正又は負の閾値電圧シフトが起こる。
【0044】
図4は、駆動トランジスタのゲート−ソース間に印加されるゲート−ソース間電圧V
gs(映像信号電圧)と、ドレイン−ソース間を流れる電流I
ds(有機ELへの供給電流)との関係(伝達特性)の概要を示すグラフである。
図4において、破線が使用開始時における駆動トランジスタの伝達特性を示し、実線が電圧印加により閾値電圧が変化した後の伝達特性を示す。
図4に示されるように、TFTでは、ゲート−ソース間への電圧印加により、閾値電圧がV
th0からV
thにシフトする。これに伴い、使用開始時に、目標電流を得るために必要とされた印加電圧を、閾値電圧シフト後に印加しても、目標電流を得られず、有機ELに所望の大きさの電流を供給できない。
【0045】
そこで、本開示の基礎となる知見に係る有機EL表示装置においては、閾値電圧シフトによる有機ELの輝度変化の影響を抑制するために、ゲート−ソース間電圧V
gsが、閾値電圧シフト量ΔV
thだけオフセットされる。
【0046】
ここで、ゲート−ソース間電圧V
gsのオフセット量は、ゲート−ソース間電圧V
gsの履歴から計算された駆動トランジスタへの累積ストレス量に基づいて決定される。
【0047】
例えば、駆動トランジスタに所定のストレス(ゲート−ソース間電圧)を印加した場合の、印加時間と閾値電圧シフト量ΔV
thとの関係を、実験等により求めて、累積ストレス量に対する閾値電圧シフト量ΔV
thを予測するモデルを作成する。
【0048】
図5は、ストレス印加の時間と閾値電圧シフト量ΔV
thとのモデル化された関係を示すグラフである。
図5に示されるようなモデルを用いて、累積ストレス量に対応する閾値電圧シフト量ΔV
thを補償するようにゲート−ソース間電圧V
gsのオフセット量が決定される。
【0049】
しかしながら、実際のTFTでは、電圧が印加されない場合に閾値電圧シフトが部分的に回復する。すなわち、TFTのゲートのバイアスが0Vの状態になると、ゲート絶縁膜に注入された電子又はホールが、環境温度の熱エネルギーによりゲート絶縁膜から脱出し、閾値電圧シフトの回復が起こる。そのため、累積ストレス量に基づいて決定されるオフセット量と、閾値電圧シフト量ΔV
thとの間に誤差が生じ、その誤差が時間経過とともに蓄積される。
【0050】
ここで、上述した閾値電圧シフトの回復に対し、本願発明者らが行った実験結果について説明する。本実験においては、TFTにストレスとして20Vのゲート−ソース間電圧を30分間印加するストレス印加工程と、TFTのゲート−ソース間電圧を0Vとして3時間放置する放置工程とが繰り返された。ストレス印加工程においては、ゲート電位V
gが20V、ソース電位V
s及びドレイン電位V
dが0Vとされ、放置工程においては、ゲート電位V
g、ソース電位V
s及びドレイン電位V
dが0Vとされた。実験には、膜厚220nmのシリコン窒化物膜及び膜厚50nmのシリコン酸化物膜からなるゲート絶縁膜と、膜厚90nmの酸化物半導体からなる半導体層とを備えるTFTが用いられた。また、本実験における環境温度は45℃に維持された。
【0051】
上記実験の結果を
図6〜
図11を用いて説明する。
【0052】
図6は、第1回目のストレス印加工程におけるTFTの伝達特性の経時変化を示す図である。図中の黒矢印は時間の経過を示す(以下の
図7〜
図10についても同様)。
図6から、伝達特性を表す曲線が、経時的に右側にシフトしていること、すなわち、TFTの閾値電圧が正方向にシフトしていることが確認される。
【0053】
図7は、第1回目のストレス印加工程後の第1回目の放置工程におけるTFTの伝達特性の経時変化を示す図である。
図7から、伝達特性を表す曲線が、経時的に左側にシフトしていること、すなわち、TFTの閾値電圧が負方向にシフトしていることが確認される。
【0054】
図8、
図9および
図10は、それぞれ、第2回目のストレス印加工程、第2回目の放置工程及び第3回目のストレス印加工程におけるTFTの伝達特性の経時変化を示す図である。
図8、
図9および
図10から、
図6及び
図7と同様、ストレス印加工程においては、TFTの閾値電圧が正方向にシフトしていること、及び、放置工程においては、閾値電圧が負方向にシフトしていること、すなわち、閾値電圧が回復していることが確認される。
【0055】
図11は、閾値電圧シフトの経時変化を示すグラフである。横軸の0〜0.5の期間は第1回目のストレス印加工程に、0.5〜3.5の期間は第1回目の放置工程に対応する。また、3.5〜4の期間は第2回目のストレス印加工程に、4〜7の期間は第2回目の放置工程に対応する。7〜7.5の期間は第3回目のストレス印加工程に対応する。
図11に示されるように、ストレス印加工程においては、閾値電圧が正方向にシフトし、放置工程においては、閾値電圧シフトが一部回復して負方向にシフトしていることが確認される。
【0056】
また
図12は、上述した特性のTFTを備える有機ELディスプレイの輝度の経時変化を示す図である。これは、輝度測定箇所を60分毎に点灯と黒表示とを2回繰り返した時の輝度推移を確認したものである。
図12に示されるとおり、連続点灯に伴い輝度が徐々に低下してくるが、その後、黒表示(非点灯)とし、都度、輝度測定を行うと、輝度の回復が見られることが判る。なお、
図12における黒表示期間の輝度変化率は、黒表示を点灯状態にした時点の輝度測定を、異なる時点で異なる個所で行った複数の測定結果に基づいている。
【0057】
図13は、
図12における開始50分後から70分後までの輝度推移を拡大したものである。
図13に示されるとおり、輝度回復は、5分程度で飽和するということが判る。
【0058】
すなわち以上より、連続点灯を行い、その後、一旦、非点灯期間を挟み、再度、点灯を行おうとすると、その再点灯のタイミング如何で、非点灯期間での輝度回復状態が異なることから、再点灯開始時の輝度が異なってしまう、ということが判る。そしてその結果、例えば、表示装置を製造する過程で、寿命特性の測定、具体的には輝度の経時変化を測定する工程が組み込まれる場合があるが、この場合、輝度を測定するタイミングにより輝度のデータが影響を受けてしまうこととなるため、取得した輝度のデータの信頼性が低下するという問題となってしまう場合がある。
【0059】
例えば、有機ELディスプレイの寿命特性の確認検査の工程では、ディスプレイを全面点灯させるという状態を一定期間継続させる、或いは、画面を小領域に区分し、この小領域のうちの複数箇所を同時に点灯させるという状態を一定期間継続させる、ということを行い、その後、ある時点における輝度を確認する、ということが行われる。
【0060】
ここで、小領域の複数箇所を点灯させた場合における輝度の確認は、同時点灯させた複数の小領域のうち、輝度測定を行う一つの小領域の箇所のみ点灯させ、その他の同時に点灯させていた小領域の箇所は、黒表示(非点灯)、すなわち、TFTのゲートのバイアスを0Vの状態として行われる。
【0061】
従って、複数箇所全ての小領域の輝度を確認しようとすると、その順番によって、黒表示での放置時間が異なることとなるため、小領域毎に輝度の回復状態が異なってしまい、その結果、得られる輝度のデータの信頼性が低下するという問題となってしまう場合がある。
【0062】
また、ディスプレイを全面点灯させた場合であっても、輝度の確認の際、そのタイミング如何により黒表示での放置時間が異なることとなるため、やはり同様の問題が発生してしまう場合がある。
【0063】
これら問題の原因は、上述したように、駆動トランジスタは通電時のゲート−ソース間電圧などの電圧ストレスによりその閾値電圧がシフトしてしまい、その結果、有機ELへの供給電流量が変動してしまうのであるが、このシフト量はゲート−ソース間電圧により、正方向になったり負方向となったりする。このことから、表示装置の輝度測定のタイミング、輝度測定までの履歴、により、輝度の値が異なってしまう、というものである。
【0064】
[3.本開示の表示装置の製造方法]
そこで、本開示の一実施の形態による駆動トランジスタを備える表示装置の製造方法は、
図14にフローチャートで示すような輝度測定工程を、全数、もしくは抜き取りで行うこととする。
【0065】
すなわち、輝度測定箇所が、輝度測定の直前に、一瞬でも点灯状態であれば(点灯ステップ:S1)、一旦、非点灯状態(黒表示ステップ:S2)にする。
【0066】
そして、駆動トランジスタにかかる負荷が最も小さい表示状態(黒表示)で、駆動トランジスタの電流回復挙動(つまり閾値電圧シフトの回復挙動)を飽和させるための所定時間以上、放置(所定時間放置ステップ:S3)した後、輝度測定箇所を点灯(測定箇所点灯ステップ:S4)し、その後、輝度測定を直ちに行う(輝度測定ステップ:S5)。直ちに行うのは、測定箇所点灯ステップS4での点灯の影響を極小とするためである。
【0067】
さらに、続けて輝度測定を行う場合で、点灯ステップS1が有機ELディスプレイの全面点灯の場合、或いは、点灯ステップS1の状態に関わらず、同一箇所測定の場合(ケースC1)には、輝度測定ステップS5の後、黒表示ステップS2に戻り、S2からS5までのステップに従い、輝度測定を行う。また、点灯ステップS1が複数箇所の小領域同時点灯であり、且つ、測定箇所を変更する場合(ケースC2)、輝度測定ステップS5の後、測定箇所点灯ステップS4に戻り、直ちに輝度測定ステップS5での輝度測定を行う。
【0068】
ここで、所定時間放置ステップS3の所定時間は、パネルの構造・材料によって個々の値をとるので、事前に適宜、確認(つまり計測)の上、設定すればよい。
【0069】
例えば、
図12に示す特性の場合、黒表示期間での輝度回復が5分で飽和していることが判るため、所定時間放置ステップ(S3)は5分以上放置と決定すればよい。
【0070】
[4.効果等]
上述のように、輝度測定において、その直前までの点灯状態と輝度を測定するタイミングとに影響を受けないようにすることができ、もって、輝度測定の信頼性を向上することができる。具体的には、所定時間放置ステップ(S3)を導入することで、駆動トランジスタの電流回復挙動(つまり閾値電圧シフトの回復挙動)を飽和させた状態とすることができ、その上で輝度測定を行うので、統一性のとれた輝度測定を行うことが可能となり、もって、高い信頼性の表示装置を製造することが可能となる。
【0071】
このように本開示の一態様における表示装置の製造方法は、発光画素と、前記発光画素を電流により駆動する駆動トランジスタとを備える表示装置の製造方法であって、前記表示装置を点灯させる点灯ステップと、前記点灯ステップの後、前記表示装置を非点灯状態とする非点灯ステップと、前記非点灯状態で前記表示装置を所定時間放置する放置ステップと、前記放置ステップの後、前記表示装置を再度点灯させる再点灯ステップと、前記再点灯ステップの開始時に、前記表示装置の輝度を測定する測定ステップとを有する。
【0072】
この構成によれば、駆動トランジスタの電流回復挙動(つまり閾値電圧シフトの回復挙動)を飽和させた状態とすることができ、その上で輝度測定を行うので、輝度測定の信頼性を高めることができる。
【0073】
ここで、前記所定時間は、前記表示装置が点灯状態から消灯状態に変化したときから、前記駆動トランジスタの閾値電圧シフトの回復挙動が飽和するまでの時間以上であってもよい。
【0074】
ここで、前記所定時間は5分以上であってもよい。
【0075】
ここで、前記表示装置の製造方法は、さらに、前記表示装置が点灯状態から非点灯状態に変化したときから、前記駆動トランジスタの閾値電圧シフトの回復挙動が飽和するまでの時間を計測し、計測した時間よりも長い時間を前記所定時間と決定する決定ステップを有していてもよい。
【0076】
ここで、前記表示装置の製造方法において、1つ以上の表示画素を含む複数の小領域単位で各ステップを実行してもよい。
【0077】
以上、表示装置の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれても良い。
【0078】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0079】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。