(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電流が流れることにより発光する発光素子と、容量素子と、前記容量素子に保持された電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスタとを備える表示装置の制御方法であって、
電圧検出線と発光素子の一方の電極とが非導通の状態で、前記電圧検出線に前記発光素子の電圧を測定するための調査電圧を供給する電圧供給ステップと、 前記調査電圧が前記電圧検出線に印加された状態で、前記電圧検出線と前記発光素子の一方の電極との導通及び非導通を切り替えるスイッチ素子を導通状態にして前記スイッチ素子を流れる電流を検出する電流検出ステップと、
前記電流検出ステップで検出された前記電流が流れる方向に基づいて前記調査電圧の電圧値を更新する電圧更新ステップとを含む
表示装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、表示装置及びその制御方法の一実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明における最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
(実施の形態)
[1.表示装置の基本構成]
図1は、一般的なアクティブマトリクス型表示装置の表示部の状態遷移図である。同図には、ある画素列における、画素行(ライン)ごとの書き込み期間及び非書き込み期間が表されている。縦方向は画素行を、また、横軸は経過時間を示す。ここで、書き込み期間とは、各画素へ信号電圧を供給するために、データ線が使用されている期間のことである。この書き込み期間内において、信号電圧の書き込み動作が画素行順に実行される。本表示装置の画素回路では、書き込み期間において容量素子への電圧保持と駆動トランジスタのゲートへの電圧印加とが同時に行われるため、当該書き込み動作の後、続けて発光動作が実行される。
【0015】
従来の表示装置では、経時劣化した有機EL素子の電流−電圧特性を高精度に測定するためには、画素回路の寄生容量が大きいため、電流を流して有機EL素子の電圧を読み取るまでに長い充電時間が必要であった。このため、
図1に記載されたような書き込み期間や発光動作期間に上記電流−電圧特性調査を行うことができず、書き込み期間や発光動作期間とは別に当該電流−電圧特性を調査する期間を設ける必要があった。
【0016】
本実施の形態に係る表示装置及びその制御方法によれば、データ線を使用していない非書き込み期間を利用して有機EL素子の電流−電圧特性調査を実行することができる。その結果、有機EL素子の電流−電圧特性の算出のための期間を、上記非書き込み期間と別に設定する必要はなくなり、経時変化によって劣化する有機EL素子の特性に迅速に対応した映像信号の補正を実現できる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る表示装置が、非書き込み期間内でも、有機EL素子の電流−電圧特性を高速かつ高精度に検出できることを、図を用いて説明する。
【0018】
図2は、実施の形態に係る表示装置の機能を示すブロック構成図である。同図における表示装置1は、表示部10と、走査線駆動回路20と、電圧発生部30と、電流検出部40と、制御部50とを備える。表示部10は、行列状に配置された複数の画素100を備える。また、制御部50は、計測制御部51と、判定部52と、記憶部53とを備える。
【0019】
[2.画素構成]
図3は、実施の形態に係る表示部の有する一画素の回路構成及びその周辺回路との接続を示す図である。同図における画素100は、有機EL素子110と、駆動トランジスタ120と、選択トランジスタ130と、スイッチトランジスタ140と、検査トランジスタ150と、容量素子160とを備える。また、画素100には、正電源線170、負電源線180、データ線31、走査線21、ならびに、制御線22及び23が接続されている。また、画素100は、走査線21、制御線22及び23を介して走査線駆動回路20に接続され、また、データ線31を介して電圧発生部30及び電流検出部40に接続されている。
【0020】
有機EL素子110は、発光素子として機能し、駆動トランジスタ120から与えられた駆動電流に応じた発光動作を行う。有機EL素子110の他方の電極であるカソード電極は、負電源線180に接続されており、通常は接地されている。
【0021】
駆動トランジスタ120は、ゲート電極が選択トランジスタ130を介してデータ線31に接続され、ソース電極が有機EL素子110の一方の電極であるアノード電極に接続され、ドレイン電極がスイッチトランジスタ140のソース電極に接続されている。
【0022】
選択トランジスタ130は、ゲート電極が走査線21に接続され、ドレイン電極がデータ線31に接続され、ソース電極が容量素子160の一方の電極に接続され、データ線31と容量素子160との導通及び非導通を切り替える。
【0023】
スイッチトランジスタ140は、ゲート電極が制御線22に接続され、ドレイン電極が正電源線170に接続され、駆動トランジスタ120及び有機EL素子110に流れる電流の経路上に配置され、当該電流を流す、及び、流さない、を切り替える。
【0024】
容量素子160は、一方の電極が駆動トランジスタ120のゲートに接続され、他方の電極が駆動トランジスタ120のソース電極に接続されている。容量素子160には、電圧発生部30からデータ線31及び選択トランジスタ130を介して信号電圧が供給され、当該信号電圧に対応した電圧が保持される。
【0025】
検査トランジスタ150は、ゲート電極が制御線23に接続され、ドレイン電極がデータ線31に接続され、ソース電極が有機EL素子110のアノード電極に接続され、データ線31と当該アノード電極との導通及び非導通を切り替えるスイッチ素子である。
【0026】
データ線31は、画素列ごとに配置され、当該画素列に属する画素100に接続されている。データ線31は、書き込み期間において、電圧発生部30から出力された信号電圧を当該画素列の各画素へ伝達する。また、データ線31は、発光期間において、有機EL素子110のアノード電圧を検出するための調査電圧を検査トランジスタ150へ伝達する電圧検出線である。
【0027】
走査線21は、画素行ごとに配置され、当該画素行に属する画素100に接続されている。走査線21は、走査線駆動回路20から出力された走査信号を当該画素行の各画素へ伝達する。
【0028】
制御線22及び23は、画素行ごとに配置され、当該画素行に属する画素100に接続されている。制御線22及び23は、走査線駆動回路20から出力された制御信号を当該画素行の各画素へ伝達する。
【0029】
[3.素子電圧測定構成]
次に、
図2に記載された画素100の周辺回路の構成について説明する。
【0030】
走査線駆動回路20は、走査線21、制御線22及び制御線23に接続されており、走査線21、制御線22及び制御線23の電圧レベルを制御することにより、画素100の選択トランジスタ130、スイッチトランジスタ140及び検査トランジスタ150の導通及び非導通を制御する。
【0031】
電圧発生部30は、データ線31に接続されており、書き込み期間において、外部からの映像信号を反映した信号電圧をデータ線31に供給するデータ線駆動回路としての機能を有する。また、電圧発生部30は、発光期間において、有機EL素子110のアノード電圧を検出するための調査電圧をデータ線31に供給する。
【0032】
ここで、調査電圧とは、有機EL素子110の経時劣化状況を高速かつ高精度に把握するために、発光期間においてデータ線31に印加する電圧のことである。データ線31に印加された調査電圧と有機EL素子110のアノード電圧との電圧値を比較するため、電流検出部40は、データ線31と有機EL素子110とを接続する検査トランジスタ150を流れる電流方向を検出する。制御部50は、上記電流方向に基づいて調査電圧を更新し、当該調査電圧の変化率が所定値以下となった場合、当該調査電圧を有機EL素子110のアノード電圧の測定値とする。これにより、有機EL素子110の経時劣化状況を高速かつ高精度に把握することが可能となる。
【0033】
なお、電圧発生部30は、典型的にはデータドライバICであり、また、調査電圧を出力する構成は、データドライバICとは別に設けられてもよい。
【0034】
電流検出部40は、データ線31に接続されており、発光期間において、電圧発生部30から調査電圧がデータ線31に印加された状態で、検査トランジスタ150を導通状態にしたときの検査トランジスタ150を流れる電流を検出する。
【0035】
なお、電流検出部40は、データ線31の本数と同数の検流計を有し、1つの検流計は、1画素列に属する画素100が有する検査トランジスタ150及びデータ線31に流れる電流を計測する。また、電流検出部40は、データ線31の切り替えを行うマルチプレクサと、データ線31の本数より少ない検流計を有していてもよい。これにより、有機EL素子110のアノード電圧の測定時に必要な検流計の数量が削減されるので、表示部10の周辺領域の省面積化や部品点数の削減を実現することが可能となる。
【0036】
計測制御部51は、
図3に示された各トランジスタの導通及び非導通のタイミング、ならびに、電圧発生部30から調査電圧をデータ線31に供給するタイミング、及び、電流検出部40により検査トランジスタ150を流れる電流を検出するタイミングを制御する。
【0037】
判定部52は、電流検出部40で検出された上記電流が流れる方向に基づいて調査電圧の電圧値を更新し、当該更新された調査電圧を電圧発生部30から出力させる。具体的には、判定部52は、電流検出部40で検出された電流の方向がデータ線31から上記アノード電極へ向かう方向である場合、調査電圧を減少させる。一方、判定部52は、電流検出部40で検出された電流の方向が上記アノード電極からデータ線31へ向かう方向である場合、調査電圧を増加させる。つまり、判定部52は、データ線31の電位と有機EL素子110のアノード電位との高低を、検査トランジスタ150を導通させた瞬間の電流を測定することにより、高速に判定する。また、判定部52は、調査電圧の変化率が閾値以下となった場合、当該調査電圧を有機EL素子110のアノード電圧の測定値と判定する。言い換えれば、判定部52は、電圧発生部30が出力する調査電圧を、上記電流の方向に基づいて、有機EL素子110のアノード電圧へと高速に収束させる。
【0038】
制御部50は、判定部52で有機EL素子110のアノード電圧の測定値と判定された調査電圧を、有機EL素子110のアノード電圧として記憶部53に格納する。
【0039】
制御部50は、さらに、記憶部53に格納された上記アノード電圧を読み出し、外部から入力された映像信号データを上記アノード電圧に基づいて補正して、データ線駆動回路としての機能を有する電圧発生部30へと出力する。これにより、各画素100の有する有機EL素子110の発光効率の不均一が補正され、輝度ムラが低減される。
【0040】
従来の表示装置では、データ線にプリチャージを行った上でデータ線の検出電圧を安定させた後に、有機EL素子のアノード電圧を反映した検出電圧が測定される。つまり、データ線の検出電圧が定常状態に収束するのを待って電圧リードされるので、データ線の電圧を定常状態に収束させるための時間を要する。さらに、表示装置の回路規模が大きいほど、つまり、データ線が長くなるほど、また、周辺回路素子の数が多くなるほど、寄生容量に伴う配線時定数が大きくなり、データ線電圧が定常状態に収束する時間が長くなる。
【0041】
これに対して、本実施の形態に係る表示装置1によれば、調査電圧が印加されたデータ線31と有機EL素子110のアノード電圧との大小関係を、データ線31と有機EL素子110との間に接続された検査トランジスタ150を流れる電流の向きにより瞬時に判定する。そして、判定された電流の向きに基づいて上記調査電圧を更新する。よって、データ線31の電圧が収束するのを待たずに調査電圧を更新するので、高速な回路素子の電気的特性の測定が可能となる。
【0042】
また、電圧発生部30から出力される調査電圧を、検査トランジスタ150を流れる電流方向に基づき、変化率が閾値以下となるまで更新するので、高速かつ高精度な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能となる。
【0043】
さらに、データ線31を使用していない非書き込み期間を利用して有機EL素子110の電圧リードを実行することができる。よって、有機EL素子の電圧特性の算出のための期間を別途設ける必要はなく、経時変化によって劣化する有機EL素子110の特性を高速に取得できる。さらに、上記アノード電圧を測定するための電圧検出線を別途設けず、信号電圧を伝達するデータ線31により上記アノード電圧を測定するので、画素回路の省面積化及び発光面積の確保を実現できる。
【0044】
よって、経時変化によって劣化する有機EL素子110の特性に迅速に対応した映像信号の補正を実現でき、表示ムラを抑制することが可能となる。
【0045】
[4.表示装置の制御方法]
次に、実施の形態に係る表示装置1の制御方法について説明をする。本制御方法により、有機EL素子110の特性の検出が可能となる。本実施の形態に係る表示装置の制御方法は、(a)画素回路内のリセット動作、(b)映像信号データを反映した信号電圧の書き込み、(c)信号電圧に対応した発光動作、(d)発光期間における有機EL素子110のアノード電圧の高速測定、(e)黒挿入動作、を実行する。
【0046】
図4は、実施の形態に係る表示装置の動作フローチャートである。また、
図5は、実施の形態に係る画素回路の状態遷移図である。
【0047】
まず、制御部50は、リセット動作を実行する(S10)。具体的には、
図5の(a)に示すように、計測制御部51は、選択トランジスタ130及び検査トランジスタ150をオン状態とし、スイッチトランジスタ140をオフ状態とする。また、計測制御部51は、電圧発生部30からリセット電圧Vrをデータ線31へ出力させる。これにより、有機EL素子110のアノード電圧、容量素子160、及びデータ線31など、画素回路素子がリセットされる。
【0048】
次に、制御部50は、書き込み動作を実行する(S30)。具体的には、
図5の(b)に示すように、計測制御部51は、選択トランジスタ130をオン状態とし、スイッチトランジスタ140及び検査トランジスタ150をオフ状態とする。また、計測制御部51は、電圧発生部30から、映像信号データを反映した信号電圧Vdをデータ線31へ出力させる。これにより、容量素子160には、信号電圧Vdに対応した電圧が保持される。つまり、データ電圧Vdが、画素100へ書き込まれる。
【0049】
次に、制御部50は、発光動作を実行する(S50)。具体的には、
図5の(c)に示すように、計測制御部51は、選択トランジスタ130及び検査トランジスタ150をオフ状態とし、スイッチトランジスタ140をオン状態とする。これにより、駆動トランジスタ120は、容量素子160に保持された電圧に対応した駆動電流を有機EL素子110に流す。有機EL素子110は、上記駆動電流に応じた輝度で発光する。
【0050】
次に、制御部50は、発光動作期間において、有機EL素子110のアノード電圧を測定する。以下、
図6及び
図7を用いて、本発明の要部であるアノード電圧の測定ステップを詳細に説明する。
【0051】
図6は、実施の形態に係る有機EL素子のアノード電圧を測定する手順を説明する動作フローチャートである。また、
図7は、実施の形態に係る有機EL素子のアノード電圧を測定する手順を説明するタイミングチャートの一例である。
図6では、上述した発光動作期間における制御部50のアノード電圧測定動作を具体的に示している。また、
図7には、上から順に、制御線22電圧、制御線23電圧、調査電圧Vt、及び検出電流Itが示されている。
【0052】
まず、
図6及び
図7に示すように、時刻t30において、計測制御部51は、制御線22をハイレベルにしてスイッチトランジスタ140をオン状態とし、発光動作を開始させている(S50及びS51)。以降、t30〜t38の発光期間において、計測制御部51は、制御線22をハイレベルに維持してスイッチトランジスタ140のオン状態を維持している。
【0053】
次に、時刻t31において、計測制御部51は、選択トランジスタ130及び検査トランジスタ150をオフ状態に維持したままで、電圧発生部30から調査電圧Vt1をデータ線31に印加させる(S52、
図5の(d)左図)。
【0054】
次に、時刻t32において、計測制御部51は、制御線23をハイレベルにして検査トランジスタ150をオン状態にし、データ線31と有機EL素子110のアノード電極とを導通させる(S53、
図5の(d)右図)。
【0055】
次に、時刻t32と同時またはその直後において、計測制御部51は、電流検出部40に対して、検査トランジスタ150を流れる電流を測定させる。ここで、データ線31の電位がアノード電位よりも高い場合、電流検出部40の検流計は、例えば、正の電流値(電流検出部40からデータ線31へ流れ出す電流)を計測し、データ線31電位がアノード電位よりも低い場合、電流検出部40の検流計は、例えば、負の電流値(データ線31から電流検出部40へ流れ込む電流)を計測する。判定部52は、電流検出部40による電流値の測定データを取得し、当該時刻における電流の向きを検出する(S54)。
【0056】
本実施の形態では、
図7に示すように、時刻t32〜t33において、電流検出部40は、負の電流値を有する検出電流It1を計測する。これを受け、判定部52は、アノード電位の方がデータ線31電位よりも高いと判定する。
【0057】
判定部52が、検出電流It1の向きを判定した結果(S55)、検出電流It1がデータ線31からアノード電極の方向(正方向)へ流れていると判断した場合、計測制御部51は、電圧発生部30に対して調査電圧Vt1の電圧値を減少させた調査電圧Vt2を生成させる(S56及びS58)。一方、検出電流It1がアノード電極からデータ線31の方向(負方向)へ流れていると判断した場合、計測制御部51は、電圧発生部30に対して調査電圧Vt1の電圧値を増加させた調査電圧Vt2を生成させる(S57及びS58)。
【0058】
上述したステップS52からステップS58までの動作を所定の回数nだけ繰り返す。
【0059】
次に、計測制御部51は、(n−1)回更新された調査電圧Vtnを電圧発生部30から取得し、画素100のアノード電圧の測定値として記憶部53へ保存する(S59)。
【0060】
なお、上述した、調査電流Vt印加、検出電流Itの測定、調査電流Vtの更新という一連の動作は、所定の回数nだけ繰り返されてもよいし、更新された調査電圧Vtの変化率が閾値以下となった場合、調査電圧の更新を停止して最後に更新された調査電圧Vtを有機EL素子110のアノード電圧の測定値と判定してもよい。
【0061】
本実施の形態では、
図7に示すように、時刻t32〜t33において、検出電流It1が負方向へ流れていると判定し、調査電圧Vt1に対して調査電圧Vt2を増加させている。時刻t33以降において、調査電圧Vt2を印加(時刻t35まで)→検出電流It2>0→調査電圧Vt3(<Vt2)を印加→検出電流It3<0→調査電圧Vt4(>Vt3)を印加→検出電流It4>0→調査電圧Vt5(<Vt4)を生成(n=5)、となっている。
【0062】
なお、調査電圧Vtk(kは2以上の自然数)に対して、検出電流Itkの向きに基づいて調査電流Vt(k+1)を生成するにあたり、以下の式1で表される二分探索法を用いることが好ましい。
【0063】
Itk<0の場合:Vt(k+1)=Vtk+|Vtk−Vt(k−1)|/2
Itk>0の場合:Vt(k+1)=Vtk−|Vtk−Vt(k−1)|/2
Vt0=Vamax、Vt1=Vamax/2 (式1)
【0064】
上記式1において、Vamaxは、アノード電圧の最大値である。上記二分探査法を用いた調査電圧Vt(k+1)の決定によれば、少ない調査電圧の更新回数により、調査電圧をアノード電圧へと高速に収束させることが可能となる。この場合、調査電圧Vt(k+1)とVtkとの差分が閾値以下となった場合、調査電圧の更新を停止して調査電圧Vt(k+1)を有機EL素子110のアノード電圧の測定値と判定してもよい。
【0065】
また、上記二分探索法を用いた場合、デジタル信号処理により、調査電圧Vtの収束値を算出することが可能となる。例えば、ステップS52からステップS58までの上記動作をn回繰り返す場合には、nビットのデジタル信号処理を行えばよい。
【0066】
次に、時刻t38において、計測制御部51は、制御線22をローレベルにしてスイッチトランジスタ140をオフ状態にし、発光動作を停止する(S60)。
【0067】
図4に戻り、制御部50は、黒挿入動作を実行する(S70)。具体的には、
図5の(e)に示すように、計測制御部51は、選択トランジスタ130、スイッチトランジスタ140及び検査トランジスタ150をオフ状態とする。これにより、有機EL素子110は発光しない。つまり、選択された画素行に属する画素、または、表示部10の全ての画素は黒表示を行う。
【0068】
上記制御方法によれば、上記アノード電圧を、容量が大きいデータ線31の電圧値が正常状態に収束するのを待って測定するのではなく、調査電圧とアノード電圧との大小関係を、データ線31と有機EL素子110との間を流れる電流の向きにより瞬時に判定する。そして、判定された電流の向きに基づいて上記調査電圧を更新する。よって、データ線31の電圧が収束するのを待たずに調査電圧を更新するので、高速な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能となる。
【0069】
また、データ線31に供給する調査電圧を、検査トランジスタ150を流れる電流方向に基づき、(k+1)回目の調査電圧とk回目の調査電圧との電圧差が閾値以下となるまで更新するので、高速かつ高精度な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能となる。
【0070】
よって、経時変化によって劣化する有機EL素子110の特性に迅速に対応した映像信号の補正を実現でき、表示ムラを抑制することが可能となる。
【0071】
[5.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る表示装置の一態様は、電流が流れることにより発光する有機EL素子110と、容量素子160と、容量素子160に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子110に流す駆動トランジスタ120と、電圧検出線と、電圧検出線と有機EL素子110のアノード電極との導通及び非導通を切り替える検査トランジスタ150と、電圧検出線に、有機EL素子110のアノード電圧を測定するための調査電圧を供給する電圧発生部30と、電圧発生部30から調査電圧が電圧検出線に印加された状態で、検査トランジスタ150を導通状態にしたときの検査トランジスタ150を流れる電流を検出する電流検出部40と、電流検出部40で検出された電流が流れる方向に基づいて調査電圧の電圧値を更新し、当該更新された調査電圧を電圧発生部30に出力させる制御部50とを備える。
【0072】
これによれば、調査電圧が印加された電圧検出線と有機EL素子110のアノード電圧との大小関係を、電圧検出線と有機EL素子110との間に接続された検査トランジスタ150を流れる電流の向きにより瞬時に判定する。そして、判定された電流の向きに基づいて上記調査電圧を更新する。よって、電圧検出線の電圧が収束するのを待たずに調査電圧を更新するので、高速な画素回路素子の電気的特性の測定が可能となる。
【0073】
また、制御部50は、検査トランジスタ150の導通及び非導通のタイミングを制御する計測制御部51と、電流検出部40で検出された電流の方向が電圧検出線からアノード電極へ向かう方向である場合、調査電圧を減少させ、電流検出部40で検出された電流の方向がアノード電極から電圧検出線へ向かう方向である場合、調査電圧を増加させる判定部52とを備え、判定部52は、調査電圧の変化率が閾値以下となった場合、当該調査電圧を有機EL素子110のアノード電圧と判定してもよい。
【0074】
これにより、電圧発生部30から出力される調査電圧を、検査トランジスタ150を流れる電流方向に基づき、変化率が閾値以下となるまで更新するので、高速かつ高精度な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能となる。
【0075】
また、さらに、電圧検出線と容量素子160との導通及び非導通を切り替える選択トランジスタ130と、駆動トランジスタ120及び有機EL素子110に流れる電流の経路上に配置され、当該電流を流す、及び、流さない、を切り替えるスイッチトランジスタと140とを備え、電圧検出線は、容量素子160に保持される信号電圧を供給するデータ線31であり、制御部50は、容量素子160に信号電圧を書き込む期間では、選択トランジスタ130を導通状態にして電圧検出線から信号電圧を容量素子160に書き込み、有機EL素子110が発光している期間では、スイッチトランジスタ140を導通状態にし、かつ、検査トランジスタ150を導通状態にして検査トランジスタ150を流れる電流の方向を検出してもよい。
【0076】
従来の表示装置では、経時劣化した有機EL素子の電流−電圧特性を高精度に測定するためには、画素回路の寄生容量が大きいため、電流を流して有機EL素子の電圧を読み取るまでに長い充電時間が必要であった。このため、書き込み期間や発光期間に上記電圧の調査を行うことができず、書き込み期間や発光期間とは別に当該電圧を調査する期間を設ける必要があった。これに対して、本構成によれば、データ線31を使用していない非書き込み期間を利用して有機EL素子110の電圧調査を実行することができる。よって、有機EL素子の電圧特性の算出のための期間を、別途設ける必要はなくなり、経時変化によって劣化する有機EL素子の特性を高速に取得できる。さらに、上記アノード電圧を測定するための電圧検出線を別途設けず、信号電圧を伝達するデータ線31により上記アノード電圧を測定するので、画素回路の省面積化及び発光面積の確保を実現できる。
【0077】
また、有機EL素子110と駆動トランジスタ120と容量素子160とを含む画素100を複数有し、複数の画素100は行列状に配置されており、制御部50は、電圧検出線に出力される画素ごとの信号電圧を、判定部52でアノード電圧と判定された最後の調査電圧に基づいて補正してもよい。
【0078】
これにより、経時変化によって劣化する有機EL素子の特性に迅速に対応した映像信号の補正を実現でき、表示ムラを抑制することが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態に係る表示装置の制御方法の一態様は、電圧検出線と有機EL素子110のアノード電極とが非導通の状態で、電圧検出線に有機EL素子110のアノード電圧を測定するための調査電圧を供給する電圧供給ステップと、調査電圧が電圧検出線に印加された状態で電圧検出線と有機EL素子110アノード電極との導通及び非導通を切り替える検査トランジスタ150を導通状態にして検査トランジスタ150を流れる電流を検出する電流検出ステップと、電流検出ステップで検出された電流が流れる方向に基づいて調査電圧の電圧値を更新する電圧更新ステップとを含む。
【0080】
これによれば、上記アノード電圧を、容量が大きい検出配線を用いて当該検出配線の電圧値が正常状態に収束するのを待って測定するのではなく、調査電圧とアノード電圧との大小関係を、検出配線と有機EL素子110との間を流れる電流の向きにより瞬時に判定する。そして、判定された電流の向きに基づいて上記調査電圧を更新する。よって、検査配線の電圧が収束するのを待たずに調査電圧を更新するので、高速な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能となる。
【0081】
また、電圧供給ステップ、電流検出ステップ、及び電圧更新ステップを、この順で複数回繰り返し、k(kは2以上の自然数)回目の電圧供給ステップでは、k回目の調査電圧を電圧検出線に供給し、k回目の電流検出ステップでは、検査トランジスタ150を流れるk回目の電流を検出し、k回目の電圧更新ステップでは、電流が流れる方向に基づいてk回目の調査電圧の電圧値を更新して(k+1)回目の調査電圧を生成するとともに、(k+1)回目の調査電圧とk回目の調査電圧との電圧差が所定値以下となった場合に、(k+1)回目の調査電圧を有機EL素子110のアノード電圧と判定してもよい。
【0082】
これにより、電圧検出線に供給する調査電圧を、検査トランジスタ150を流れる電流方向に基づき、(k+1)回目の調査電圧とk回目の調査電圧との電圧差が閾値以下となるまで更新するので、高速かつ高精度な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能となる。
【0083】
(その他の実施の形態)
以上実施の形態について述べてきたが、本発明の表示装置及びその制御方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、電流検出部40は検流計を備え、当該検流計により検査トランジスタ150を流れる電流を検出するとしたが、電流方向を検出する回路であれば電流の大きさを測定する必要はない。上記実施の形態では、検出電流Itは小さいため、
図8に示されるようなチャージアンプ方式により、検出電流Itの方向を検出することが好ましい。
【0085】
図8は、電流の方向を測定する電流検出部の回路構成を含む表示装置の構成図である。同図に示された表示装置が有する電流検出部41は、反転増幅器42と容量素子43と、スイッチ44とを備える。さらに、データ線31上には、データ線31と電圧発生部30との導通及び非導通を切り替えるスイッチ32が挿入され、電流検出部41の出力端子とデータ線31との導通及び非導通を切り替えるスイッチ33が配置されている。電流検出部41の入力端子はデータ線31に接続され、出力端子は判定部52(図示せず)に接続されている。反転増幅器42の負入力端子は、スイッチ44を介してデータ線31に接続され、かつ、スイッチ33を介して反転増幅器42の出力端子に接続されている。また、反転増幅器42の正入力端子には、電圧発生部30から調査電圧Vtが入力され、出力端子は、判定部52(図示せず)に接続されている。また、容量素子43の両電極は、それぞれ、反転増幅器42の負入力端子と出力端子とに接続されている。
【0086】
上記回路構成において、まず、書き込み時には、スイッチ32をオン状態、スイッチ33及び44をオフ状態にする。これにより、電圧発生部30からデータ線31を介して信号電圧が画素100に書き込まれる。次に、発光期間において、スイッチ32をオフ状態、スイッチ33及び44をオン状態にする。これにより、調査電圧Vtが、電流検出部41を経由してデータ線31に印加される。次に、発光期間において、検査トランジスタ150がオフ状態で、スイッチ32をオフ状態、スイッチ33をオフ状態、及びスイッチ44をオン状態にする。これにより、検査トランジスタ150に流れる電流の向きを検出する準備をする。次に、スイッチ32をオフ状態、スイッチ33をオフ状態、及びスイッチ44をオン状態に維持して、検査トランジスタ150をオン状態にする。このとき、検査トランジスタ150を流れる検出電流Itにより、容量素子43が充放電され、反転増幅器42の負入力端子は、検出電流Itに対応した電圧が印加される。これにより、検出電流Itに対応した電圧と正入力端子に印加された調査電圧Vtとの差分電圧が反転増幅器42の出力端子に出力される。このとき、検出電流Itの流れる方向に応じて反転増幅器42の出力電圧の極性が反転する。つまり、反転増幅器42の出力電圧の極性を検出することにより、検査トランジスタ150を流れる電流の向きを判定することが可能となる。
【0087】
また、上記実施の形態では、有機EL素子110のアノード電圧を測定する電圧検出線としてデータ線31を用いたが、当該電圧検出線はデータ線31ではなく、別途設けられてもよい。これによれば、高速かつ高精度な有機EL素子110の電気的特性の測定が可能であることに加え、上記アノード電圧を測定するための電流検出パスを独立に設けているので、当該電流電圧検出の際に、選択トランジスタ130による電圧降下の影響を受けずに、更に精度の高いアノード電圧計測が可能となる。
【0088】
また、上記実施の形態では、本発明に係る表示装置が有する画素回路構成の一例を挙げたが、画素100の回路構成は上記回路構成に限定されない。例えば、上記実施の形態では、正電源線170と負電源線180との間に、スイッチトランジスタ140、駆動トランジスタ120及び有機EL素子110が、この順に配置されている構成を例示したが、これらの3素子が異なる順で配置されていてもよい。つまり、本発明の表示装置は、駆動トランジスタがn型であってもp型であっても、駆動トランジスタのドレイン電極及びソース電極、ならびに有機EL素子のアノード電極及びカソード電極が、正電源線170と負電源線180との間の電流径路上に配置されていればよく、駆動トランジスタ及び有機EL素子の配置順には限定されない。この場合、有機EL素子の経時劣化を補償するにあたり、有機EL素子のアノード電圧ではなくカソード電圧を測定する構成をとってもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、表示装置の有する有機EL素子の電圧特性を高速かつ正確に測定する構成および方法を説明してきたが、本発明に係る表示装置の制御方法は、有機EL素子のみならず、表示装置に組み込まれた回路素子の電流−電圧特性を測定する場合に適用されても同様の効果を奏する。つまり、回路素子の所定のノードと電圧検出線とを接続するための検査トランジスタと、調査電圧を上記電圧検出線に印加する電圧発生部と、検査トランジスタを流れる電流方向を検出する電流検出部とを備える表示装置であればよい。この場合、表示装置の回路規模が大きいほど、つまり、上記回路素子の電流−電圧特性を測定するための電圧検出線が長くなるほど、また、周辺回路素子の数が多くなるほど本発明を適用する効果は大きい。
【0090】
また、実施の形態1及び2では、例えば、各トランジスタのゲートの電圧がハイレベルの場合にオン状態になるn型トランジスタとして記述しているが、選択トランジスタ、スイッチトランジスタ、検査トランジスタ、及び駆動トランジスタをp型トランジスタで形成し、走査線及び制御線の極性を反転させた表示装置でも、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0091】
また、上記実施の形態では、駆動トランジスタ、スイッチトランジスタ、検査トランジスタ及び選択トランジスタの各機能を有するトランジスタは、ゲート、ソース及びドレインを有するFET(Field Effect Transistor)であることを前提として説明してきたが、これらのトランジスタには、ベース、コレクタ及びエミッタを有するバイポーラトランジスタが適用されてもよい。この場合にも、本発明の目的が達成され同様の効果を奏する。
【0092】
また、スイッチトランジスタ、検査トランジスタ及び選択トランジスタのチャンネル間は双方向であるため、ソース電極およびドレイン電極の名称は、説明を容易にするためであり、ソース電極とドレイン電極とは入れ替えてもよい。
【0093】
また、本発明の表示装置の動作シーケンスは、
図4及び
図5に示された動作に限られない。例えば、リセット期間と書き込み期間との間に、駆動トランジスタ120の閾値電圧及び移動度を補正する動作などが付加されてもよい。また、黒挿入動作はなくてもよい。
【0094】
また、発光動作では、行順次発光でなく、行順次書き込みの後に一斉発光してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態に係る表示装置に含まれる制御回路及び演算回路は、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。なお、上記表示装置に含まれる制御回路及び演算回路の一部を、表示部10と同一の基板上に集積することも可能である。また、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0096】
また、上記実施の形態に係る表示装置に含まれる走査線駆動回路、データ線駆動回路、制御回路、及び演算回路の機能の一部を、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0097】
また、上記実施の形態に係る表示装置1では、有機EL素子を用いた表示装置である場合を例に述べたが、無機EL素子など、有機EL素子以外の発光素子を用いた表示装置に適用してもよい。
【0098】
また、例えば、本実施の形態に係る表示装置及びその制御方法は、
図9に記載されたような薄型フラットTVに内蔵され、また使用される。本実施の形態に係る表示装置及びその制御方法により、発光素子の輝度ムラが抑制されたディスプレイを備えた薄型フラットTVが実現される。