特許第6232608号(P6232608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6232608
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】骨盤ベルト付き衣類
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A61F5/01 K
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-108326(P2017-108326)
(22)【出願日】2017年5月31日
【審査請求日】2017年6月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313014893
【氏名又は名称】株式会社アネスネット
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 欣也
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5693758(JP,B1)
【文献】 特開平06−007394(JP,A)
【文献】 特開2006−149517(JP,A)
【文献】 特開2008−184704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01−5/02
A41D 13/05
A41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも臀部を覆う股付きの衣類本体と、
この衣類本体に対して配設され、仙骨を覆う仙骨被覆部と、
この仙骨被覆部から脇を通り腹部まで伸長された腰ベルトと、
腹部から右股関節よりも下側及び右臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から左大腿部の前側まで伸長されるか、又は、股下から右大腿部後側を通り右大腿部脇まで伸長された右臀部固定ベルトと、
腹部から左股関節よりも下側及び左臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から右大腿部の前側まで伸長されるか、又は、股下から左大腿部後側を通り左大腿部脇まで伸長された左臀部固定ベルトと、
前記右臀部固定ベルトと前記左臀部固定ベルトとを肛門に対応する位置において連結する伸縮性を有する材料よりなる連結部材と
を備えたことを特徴とする骨盤ベルト付き衣類。
【請求項2】
前記連結部材の長さは、収縮時が2cm以上4cm以下、伸長時が3cm以上6cm以下であることを特徴とする請求項1記載の骨盤ベルト付き衣類。
【請求項3】
腰から右臀部下部まで伸長され、前記右臀部固定ベルトと連結された右臀部協調ベルトと、
腰から左臀部下部まで伸長され、前記左臀部固定ベルトと連結された左臀部協調ベルトと
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の骨盤ベルト付き衣類。
【請求項4】
前記腰ベルトは、
前記仙骨被覆部から、上前腸骨棘よりも上側の腸骨に対応する位置を通り、腹部まで伸長された第1腰ベルトと、
前記仙骨被覆部から、上前腸骨棘と股関節よりも上側との間に対応する位置を通り、腹部まで伸長された第2腰ベルトと
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の骨盤ベルト付き衣類。
【請求項5】
前記腰ベルトは、前記第1腰ベルトを左右において2本ずつ有することを特徴とする請求項4記載の臀部保護ベルト付き衣類。
【請求項6】
前記仙骨被覆部は、第4腰椎まで覆うように構成され、第4腰椎及び第5腰椎に対応する位置に、人体側に突出するように設けられた弾力性を有する腰椎クッション部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載の骨盤ベルト付き衣類。
【請求項7】
前記衣類本体の両脇には、形状を保持するための棒状の芯材が配設されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の骨盤ベルト付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰臀部痛緩和を図ることができる骨盤ベルト付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛人口2800万人とも言われる中、最近、インナーマッスルの低下に基づく骨盤輪不安定症の患者が増えている。杖や押し車などを利用して移動できるように改善が図られてはいるものの、転倒の危険性が高く、骨盤固定性を強化する骨盤ベルトの開発が望まれている。
【0003】
骨盤周囲の不安定性はリハビリテーション領域では、運動器不安定症の中の一例として捉えられてはいるが、病態生理の解明が完全にはできていない。そのため、従来のコルセットは、一般にサポーターとしての機能のみで、骨盤の不安定性に対しては効果が少ない。また、仙腸関節周囲は、加齢的変化によりクッションとなる筋肉が減るため、一部には人口筋肉を使用したものもあるが、一般的にはクッションを持ち歩くしか方法がなかった。更に、固定性がある程度保たれても、歩行など片側に重心を架けかえていく動きを改善できるものはなかった。加えて、腰部のベルトについては従来より多種あるが(例えば、特許文献1参照)、腰部のみに効果的であり、尾側への矯正が少ないことから臀部痛には効果が少なく、改良が求められていた。解剖学的には、臀部痛は仙腸関節や腸腰靭帯の炎症によるものが多く、従来の腰下肢痛の原因と違うことが改善を求められている理由と考えられる。
【0004】
そこで、本出願人は、第1ベルト、第2ベルト、及び、第3ベルトとを備え、第1ベルトは、仙骨を覆う仙骨被覆部と、仙骨被覆部の下側から伸長され右大腿の内側に固定される右内腿固定部と、仙骨被覆部の下側から伸長され左大腿の内側に固定される左内腿固定部とを有し、第2ベルトは、一端部が右側臀部の下側から脇を通り腹部に伸長され、他端部が右側臀部から股下を通り左大腿外側まで伸長され、第3ベルトは、一端部が左側臀部の下側から脇を通り腹部に伸長され、他端部が左側臀部から股下を通り右大腿外側まで伸長された臀部保護ベルト付き衣類を開発した(特許文献2参照)。この臀部保護ベルト付き衣類では、右内腿固定部と第2ベルトとをその交差部において連結し、左内腿固定部と第3ベルトとをその交差部において連結することにより、着用者の動きを制限し、骨盤を強固に固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−5929号公報
【特許文献2】特許第5693758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の臀部保護ベルト付き衣類は、着用者の動きを制限し、骨盤を強固に固定するので、痛みが強い時には骨盤を固定することにより痛みが緩和されてよいのであるが、ある程度痛みが弱まり股関節を動かせるようになった場合、又は、骨盤矯正や腰痛を予防した場合には、動きが必要以上に制限されてしまい、仙骨部の固定性を優先させたことで運動性に制限がでる問題があった。骨盤の安定性と運動性とを両立させ、全体的な筋力バランスを向上させることができるものが求められていた。
【0007】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、骨盤の安定性と運動性とを両立させることができる骨盤ベルト付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の臀部保護ベルト付き衣類は、少なくとも臀部を覆う股付きの衣類本体と、この衣類本体に対して配設され、仙骨を覆う仙骨被覆部と、この仙骨被覆部から脇を通り腹部まで伸長された腰ベルトと、腹部から右股関節よりも下側及び右臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から左大腿部の前側まで伸長されるか、又は、股下から右大腿部後側を通り右大腿部脇まで伸長された右臀部固定ベルトと、腹部から左股関節よりも下側及び左臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から右大腿部の前側まで伸長されるか、又は、股下から左大腿部後側を通り左大腿部脇まで伸長された左臀部固定ベルトと、右臀部固定ベルトと左臀部固定ベルトとを肛門に対応する位置において連結する伸縮性を有する材料よりなる連結部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仙骨を覆う仙骨被覆部と、この仙骨被覆部から脇を通り腹部まで伸長された腰ベルトとを備えるようにしたので、仙骨を後面から押して骨盤を安定させることができ、歩行開始時の仙骨固定性を高めることができる。また、腹部から股関節よりも下側及び臀部下部を通り股下から反対側の大腿部付け根の前側まで伸長されるか、又は、股下から同一側の大腿部脇まで伸長された右臀部固定ベルト及び左臀部固定ベルトを備えるようにしたので、歩行時に、対側脚の振り子作用を利用して骨盤を締め付けることができ、自然な骨盤安定に近い状態を得ることができる。
【0010】
更に、右臀部固定ベルトと左臀部固定ベルトとを肛門に対応する位置において連結する伸縮性を有する材料よりなる連結部材を備えるようにしたので、右臀部固定ベルト及び左臀部固定ベルトの力を肛門付近で作用させることができると共に、股関節の動きにある程度の自由度も持たせることができる。よって、人が歩行する時の感覚、すなわち、肛門を締めた状態で肛門を軸として体を左右に振って歩く感覚に近い状態を作ることができ、骨盤を安定化させつつ、歩幅を広くすることができる。従って、骨盤の安定性を向上させることができ、かつ、高い運動性も得ることができる。
【0011】
加えて、連結部材の長さを収縮時が2cm以上4cm以下、伸長時が3cm以上6cm以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0012】
更にまた、腰から右臀部下部まで伸長され、右臀部固定ベルトと連結された右臀部協調ベルトと、腰から左臀部下部まで伸長され、左臀部固定ベルトと連結された左臀部協調ベルトとを備えるようにすれば、右臀部協調ベルトと右臀部固定ベルトとの協調、及び、左臀部協調ベルトと左臀部固定ベルトとの協調により、股関節包を補強し、片側の大臀筋と反対側の広背筋との連携を補強して、上肢−下肢間での荷重連携を補強することができる。よって、仙骨の前傾により多裂筋が消退して骨盤の不安定性が高くなり、股関節包の負荷が大きくなっていても、その負荷を緩和し、上肢−下肢間での荷重連携を改善することができる。
【0013】
加えてまた、腰ベルトが、上前腸骨棘よりも上側の腸骨に対応する位置を通る第1腰ベルトと、上前腸骨棘と股関節よりも上側との間に対応する位置を通る第2腰ベルトとを有するようにすれば、仙骨被覆部により仙骨をより効果的に押すことができると共に、骨盤をより効果的に締め付けることができる。
【0014】
更にまた、第1腰ベルトを左右において2本ずつ有するようにすれば、脚の動きに応じて右臀部固定ベルト及び左臀部固定ベルトが引っ張られることにより第1腰ベルトが下に引っ張られても、確実に腸骨の上から覆い、下にずり落ちることを抑制することができる。また、個人の体形に合わせて固定の仕方を変えることができるので、より確実に腸骨の上から覆うことができる。
【0015】
加えてまた、仙骨被覆部の第4腰椎及び第5腰椎に対応する位置に、人体側に突出するように設けられた弾力性を有する腰椎クッション部を有するようにすれば、腰部多裂筋等が減弱して第4腰椎及び第5腰椎に緩みが発生していても、腰椎クッション部で押圧することにより、緊張しやすくすることができる。また、脚の動きに応じて右臀部固定ベルト及び左臀部固定ベルトが引っ張られることにより仙骨被覆部が下に引っ張られても、腰椎クッション部が仙骨に引っ掛かり、下にずり落ちることを抑制することができる。
【0016】
更にまた、衣類本体の両脇に形状を保持するための棒状の芯材を配設するようにしたので、衣類本体の脚側がずり上がるなどの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る骨盤ベルト付き衣類を後側から見た構成を表す図である。
図2図1に示した骨盤ベルト付き衣類を前側から見た構成を表す図である。
図3図1に示した骨盤ベルト付き衣類の仙骨被覆部の構成を取り出して表す縦方向の断面図である。
図4図1に示した骨盤ベルト付き衣類の右臀部固定ベルトを取り出して表す図である。
図5図1に示した骨盤ベルト付き衣類の左臀部固定ベルトを取り出して表す図である。
図6図1に示した骨盤ベルト付き衣類の右臀部協調ベルト及び左臀部協調ベルトを右臀部固定ベルト、左臀部固定ベルト及び連結部材と共に取り出して表す図である。
図7図1に示した骨盤ベルト付き衣類を横側から見た構成を表す図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る骨盤ベルト付き衣類を後前から見た構成を表す図である。
図9図8に示した臀部保護ベルト付き衣類を前側から見た構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る骨盤ベルト付き衣類10を後側から見た構成を表すものであり、図2は前側から見た構成を表すものである。図3から図6は、骨盤ベルト付き衣類10の一部の構成を取り出して表すものである。図7は骨盤ベルト付き衣類10を横側から見た構成を表すものである。この骨盤ベルト付き衣類10は、少なくとも臀部を覆う股付きの衣類本体11と、この衣類本体11に対して配設され、仙骨を覆う仙骨被覆部12と、この仙骨被覆部12から脇を通り腹部まで伸長された左右の腰ベルト13と、右臀部固定ベルト14と、左臀部固定ベルト15とを備えている。
【0020】
衣類本体11は、例えば、仙骨被覆部12、腰ベルト13、右臀部固定ベルト14、及び、左臀部固定ベルト15等を取り付けることにより、容易にかつ効果的に装着できるようにするものである。また、衣類本体11を備えれば、着用者に面で力を伝えることができるので好ましい。衣類本体11は、例えば、伸縮性のある材料により構成されることが好ましく、ポリウレタンを含む材料により構成されることが好ましい。
【0021】
仙骨被覆部12及び左右の腰ベルト13は、例えば、例えば、仙骨を押さえることにより、歩行開始時の仙骨固定性を高めるためのものである。仙骨は体重負荷された時に、両脇の腸骨に沈み込むことで安定化する。この時仙骨の前傾を強めるのが、背部の脊柱起立筋の収縮であり、それに対抗するのが骨間靭帯や仙結節靭帯、仙棘靭帯、大臀筋やハムストリングである。また、腸骨側には体を起こしていようとするカウンターニューテーションが起こる。そこで、仙骨に似せた仙骨被覆部12を靭帯に似せた左右の腰ベルト13で引っ張ることにより、加齢や運動不足による筋減弱でこれらの筋が弱るのをサポートし、仙骨の前傾(ニューテーション)に対抗できるようにし、また、腸骨を引き締めることでカウンターニューテーションが起きやすくしたものである。これにより、ハムストリングが固くなって、膝を曲げなければ立っていられない人も、膝が入っても立てるようになり、歩き始めのハムストリングの弛緩から緊張をスムーズにすることができるようになる。
【0022】
仙骨被覆部12は、例えば、衣類本体11に対して配設されており、仙骨に対応して略逆三角形状に形成され、仙骨から第4腰椎まで覆うように構成されることが好ましい。仙骨被覆部12は、仙骨を押さえることができるように硬い材料により構成されることが好ましく、例えば、プラスチックにより構成することができる。仙骨被覆部12は、また、左右方向における中央部が人体側に突出するように湾曲していることが好ましい。疼痛が起きにくい正中線上で仙骨により密着させることができるからである。仙骨被覆部12には、例えば、仙骨に対応する人体側の部分に、弾力性を有する仙骨クッション部12Aが設けられることが好ましい。仙骨を適度に圧迫することにより、骨盤安定性をより高めることができるからである。
【0023】
仙骨被覆部12には、また、第4腰椎及び第5腰椎に対応する人体側の位置に、仙骨クッション部12Aよりも人体側に突出するように設けられた弾力性を有する腰椎クッション部12Bが設けられることが好ましい。本来、腰部多裂筋等の筋肉が膨隆して筋膜に張力を持たせることで背中を支えているが、腰部多裂筋等が減弱すると、第4腰椎及び第5腰椎に緩みが発生してしまうので、腰椎クッション部12Bで押圧することにより、緊張しやすくすることができるからである。また、脚の動きに応じて右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15が引っ張られ、それにより仙骨被覆部12が下に引っ張られても、腰椎クッション部12Bが仙骨に引っ掛かり、下にずり落ちることを抑制することができるからである。仙骨クッション部12Aの高さは、例えば、2cm以上4.5cm以下とすることが好ましい。仙骨クッション部12A及び腰椎クッション部12Bを構成する材料としては、例えば、ウレタンが好ましく挙げられる。
【0024】
左右の腰ベルト13は、仙骨被覆部12から、上前腸骨棘よりも上側の腸骨に対応する位置を通り、腹部まで伸長された左右の第1腰ベルト13Aと、仙骨被覆部12から、上前腸骨棘と股関節よりも上側との間に対応する位置を通り、腹部まで伸長された左右の第2腰ベルト13Bとを有することが好ましい。仙骨被覆部12により仙骨をより効果的に押すことができると共に、骨盤をより効果的に締め付けることができるからである。また、第2腰ベルト13Bは、股関節よりも上側を通し、股関節を覆わないようにすることにより、股関節の動きを制限しないようにすることが好ましい。
【0025】
第1腰ベルト13A及び第2腰ベルト13Bの少なくとも一部は、伸縮性を有する材料により構成することが好ましい。また、第1腰ベルト13A及び第2腰ベルト13Bは、例えば、仙骨被覆部12の側において衣類本体11に固定されており、前側は衣類本体11に固定されていないことが好ましい。自由度を高くすることにより、体形や症状に応じて着用することができるからである。第1腰ベルト13A及び第2腰ベルト13Bの太さは、例えば、4cmから10cm程度であることが好ましい。
【0026】
第1腰ベルト13Aと第2腰ベルト13Bとは、それぞれ別体とされていてもよいが、前側において連結されていることが好ましい。着用を容易とすることができるからである。第1腰ベルト13A及び第2腰ベルト13Bの前側は、着用したときに重なり合うように構成され、両端部の対向面には、例えば、これらを重ね合わせた状態で着脱可能に固定することができる着脱固定部材が配設されていることが好ましい。体形に合わせて調節して容易に装着することができるからである。着脱固定部材としては、例えば、面状ファスナーが挙げられる。
【0027】
なお、第1腰ベルト13Aは、左右において2本ずつ有することが好ましい。脚の動きに応じて右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15が引っ張られ、第1腰ベルト13が下に引っ張られても、確実に腸骨の上から覆い、下にずり落ちることを抑制することができるからである。また、個人の体形に合わせて固定の仕方を変えることもできるからである。
【0028】
右臀部固定ベルト14は、腹部から右股関節よりも下側及び右臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から左大腿部の前側まで伸長されている。左臀部固定ベルト15は、腹部から左股関節よりも下側及び左臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から右大腿部の前側まで伸長されている。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15は、腸腰筋を補助するものであり、歩行時に、対側脚の振り子作用を利用して骨盤を締め付けることにより、自然な骨盤安定に近い状態を得ることができるようになっている。なお、本実施の形態の骨盤ベルト付き衣類10は、O脚に対応したものである。
【0029】
右臀部固定ベルト14において、左大腿部の前側というのは、左大腿部の内側部中心及び外側部中心よりも前側の範囲を意味している。右臀部固定ベルト14の大腿部側の端部は、左大腿部の1/3よりも上側において、左大腿部の内側部中心と前中心との中間位置から、外側部中心と前中心との中間位置までの範囲に固定するようにすればより好ましい。同じく、左臀部固定ベルト15において、右大腿部の前側というのは、右大腿部の内側部中心及び外側部中心よりも前側の範囲を意味している。左臀部固定ベルト14の大腿部側の端部は、右大腿部の1/3よりも上側において、右大腿部の内側部中心と前中心との中間位置から、外側部中心と前中心との中間位置までの範囲に固定するようにすればより好ましい。
【0030】
右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の少なくとも一部は、伸縮性を有する材料により構成することが好ましい。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の太さは、例えば、4cmから8cm程度であることが好ましい。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15は、例えば、腹部側の端部が腰ベルト13又は衣類本体11に対して面状ファスナー等により着脱可能に固定され、大腿部側の端部が衣類本体11に対して面状ファスナー等により着脱可能に固定されることが好ましい。体形に合わせて調節することができるからである。
【0031】
衣類本体11の両脇には、右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15が股関節よりも下側を通るように案内するベルト通し14A,15Aを設け、これらに右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15を通すことにより位置決めをすることが好ましい。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15で股関節を覆わないようにし、股関節の動きを制限しないようにするためである。また、右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15は、部分的に固定するようにすることが好ましい。自由度を高くすることにより、体形や症状に応じて効果的に着用することができるからである。
【0032】
右臀部固定ベルト14と左臀部固定ベルト15とは、肛門に対応する位置において、伸縮性を有する材料よりなる連結部材16により連結されている。連結部材16は、股関節の動きにある程度の自由度も持たせつつ、右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の力を肛門付近で作用させることができるようにするものである。これにより、人が歩行する時の感覚、すなわち、肛門を締めた状態で肛門を軸として体を左右に振って歩く感覚に近い状態を作り、骨盤を安定化させつつ、歩幅を広くすることができるようになっている。連結部材16の長さは、収縮時が2cm以上4cm以下、伸長時が3cm以上6cm以下であることが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。連結部材16の幅は、例えば、5mm以上3cm以下とすることが好ましい。
【0033】
連結部材16には、例えば、右補助ベルト16Aの一端部が接続されており、右補助ベルト16Aの他端部は右臀部固定ベルト14の股下部分に接続されている。また、連結部材16には、例えば、左補助ベルト16Bの一端部が接続されており、左補助ベルト16Bの他端部は左臀部固定ベルト15の股下部分に接続されている。右補助ベルト16A及び左補助ベルト16Bは、右臀部固定ベルト14又は左臀部固定ベルト15の股下部分がめくれてしまうことを防止するためのものである。右補助ベルト16A及び左補助ベルト16Bの少なくとも一部は、伸縮性を有する材料により構成されることが好ましい。右補助ベルト16A及び左補助ベルト16Bは、例えば、長さが3cmから7cm程度、太さが5mmから15mm程度であることが好ましい。
【0034】
この骨盤ベルト付き衣類10は、また、腰から右臀部下部まで伸長され、右臀部固定ベルト14と連結された右臀部協調ベルト17と、腰から左臀部下部まで伸長され、左臀部固定ベルト15と連結された左臀部協調ベルト18を備えていることが好ましい。通常、片側の広背筋と反対側の大臀筋とは胸腰筋膜を介して同時に作用する。この役割は、腰椎と仙腸関節部を介して上肢−下肢間での荷重伝達を行うことである。また、脊柱起立筋と多裂筋の収縮による筋の膨隆によって胸腰筋膜が緊張するが、仙骨が前傾したままだと多裂筋が消退して骨盤の不安定性が高まり、股関節包の負荷が大きくなる。股関節包の負荷が大きくなるとそれ以上の力は仙腸関節と腰椎に伝達され、上肢−下肢間での荷重伝達がスムーズにできなくなる。そこで、右臀部協調ベルトと右臀部固定ベルト、及び、左臀部協調ベルトと左臀部固定ベルトとを協調させ、右臀部協調ベルト17又は左臀部協調ベルト18により広背筋の緊張を補強しながら、右臀部固定ベルト14又は左臀部固定ベルト15により大臀筋を引き締めることで、広背筋と大臀筋との連携を補強して、上肢−下肢間での荷重連携を補強するようになっている。
【0035】
右臀部協調ベルト17の腰側端部は、例えば、仙骨被覆部12の幅に合わせて形成され、仙骨被覆部12の上端部に対応する位置において、衣類本体11に対して固定されることが好ましい。右臀部協調ベルト17の下側端部は、例えば、右臀部固定ベルト14と連結部材16との連結位置に隣接して、右臀部下部において右臀部固定ベルト14に固定されることが好ましい。同様に、左臀部協調ベルト18の腰側端部は、例えば、仙骨被覆部12の幅に合わせて形成され、仙骨被覆部12の上端部に対応する位置において、衣類本体11に対して固定されることが好ましい。左臀部協調ベルト18の下側端部は、例えば、左臀部固定ベルト15と連結部材16との連結位置に隣接して、左臀部下部において左臀部固定ベルト14に固定されることが好ましい。
【0036】
右臀部協調ベルト17及び左臀部協調ベルト18の腰側端部と下側端部との間は、固定されていないことが好ましい。右臀部協調ベルトと右臀部固定ベルト、及び、左臀部協調ベルトと左臀部固定ベルトとを協調して効果的に作用させるためである。右臀部協調ベルト17及び左臀部協調ベルト18の少なくとも一部は、伸縮性を有する材料により構成することが好ましい。右臀部協調ベルト17及び左臀部協調ベルト18の太さは、例えば、腰側端部が10cmから16cm程度、下側端部が4cmから8cm程度であることが好ましい。右臀部協調ベルト17及び左臀部協調ベルト18は、1枚のベルトで構成してもよいが、2枚のベルトを重ねることにより構成するようにしてもよい。例えば、幅が4cmから8cm程度のベルトを下側端部で重ね合わせ、腰側端部で幅を広げるようにずらして固定するようにしてもよい。
【0037】
この骨盤ベルト付き衣類10は、更に、衣類本体11の両脇に、形状を保持するための棒状の芯材19が配設されていることが好ましい。衣類本体11の脚側がずり上がるなどの変形を抑制するためである。芯材の幅は、例えば、5mmから20mm程度とすることが好ましい。
【0038】
この骨盤ベルト付き衣類10は、例えば、次のようにして装着し用いられる。まず、例えば、左右の腰ベルト13の前側、右臀部固定ベルト14、及び、左臀部固定ベルト15の固定をはずし、衣類本体11を穿く。そののち、体形に合わせて、左右の腰ベルト13、右臀部固定ベルト14、及び、左臀部固定ベルト15を固着する。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、仙骨を覆う仙骨被覆部12と、この仙骨被覆部12から脇を通り腹部まで伸長された腰ベルト13とを備えるようにしたので、仙骨を後面から押して骨盤を安定させることができ、歩行開始時の仙骨固定性を高めることができる。また、腹部から股関節よりも下側及び臀部下部を通り股下から反対側の大腿部付け根の前側まで伸長されるか、又は、股下から同一側の大腿部脇まで伸長された右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15を備えるようにしたので、歩行時に、対側脚の振り子作用を利用して骨盤を締め付けることができ、自然な骨盤安定に近い状態を得ることができる。
【0040】
更に、右臀部固定ベルト14と左臀部固定ベルト15とを肛門に対応する位置において連結する伸縮性を有する材料よりなる連結部材16を備えるようにしたので、右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の力を肛門付近で作用させることができると共に、股関節の動きにある程度の自由度も持たせることができる。よって、人が歩行する時の感覚、すなわち、肛門を締めた状態で肛門を軸として体を左右に振って歩く感覚に近い状態を作ることができ、骨盤を安定化させつつ、歩幅を広くすることができる。従って、骨盤の安定性を向上させることができ、かつ、高い運動性も得ることができる。
【0041】
加えて、連結部材16の長さを収縮時が2cm以上4cm以下、伸長時が3cm以上6cm以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0042】
更にまた、腰から右臀部下部まで伸長され、右臀部固定ベルト14と連結された右臀部協調ベルト17と、腰から左臀部下部まで伸長され、左臀部固定ベルト15と連結された左臀部協調ベルト18とを備えるようにすれば、右臀部協調ベルト17と右臀部固定ベルト14との協調、及び、左臀部協調ベルト18と左臀部固定ベルト15との協調により、股関節包を補強し、片側の大臀筋と反対側の広背筋との連携を補強して、上肢−下肢間での荷重連携を補強することができる。よって、仙骨の前傾により多裂筋が消退して骨盤の不安定性が高くなり、股関節包の負荷が大きくなっていても、その負荷を緩和し、上肢−下肢間での荷重連携を改善することができる。
【0043】
加えてまた、腰ベルト13が、上前腸骨棘よりも上側の腸骨に対応する位置を通る第1腰ベルト13Aと、上前腸骨棘と股関節よりも上側との間に対応する位置を通る第2腰ベルト13Bとを有するようにすれば、仙骨被覆部により仙骨をより効果的に押すことができると共に、骨盤をより効果的に締め付けることができる。
【0044】
更にまた、第1腰ベルト13Aを左右において2本ずつ有するようにすれば、脚の動きに応じて右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15が引っ張られることにより第1腰ベルト13Aが下に引っ張られても、確実に腸骨の上から覆い、下にずり落ちることを抑制することができる。また、個人の体形に合わせて固定の仕方を変えることができるので、より確実に腸骨の上から覆うことができる。
【0045】
加えてまた、仙骨被覆部12の第4腰椎及び第5腰椎に対応する位置に、人体側に突出するように設けられた弾力性を有する腰椎クッション部12Bを有するようにすれば、腰部多裂筋等が減弱して第4腰椎及び第5腰椎に緩みが発生していても、腰椎クッション部12Bで押圧することにより、緊張しやすくすることができる。また、脚の動きに応じて右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15が引っ張られることにより仙骨被覆部12が下に引っ張られても、腰椎クッション部12Bが仙骨に引っ掛かり、下にずり落ちることを抑制することができる。
【0046】
更にまた、衣類本体11の両脇に形状を保持するための棒状の芯材19を配設するようにしたので、衣類本体11の脚側がずり上がるなどの変形を抑制することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図8及び図9は、本発明の第2の実施の形態に係る骨盤ベルト付き衣類20の構成を表すものである。この骨盤ベルト付き衣類20は、第1の実施の形態に係る骨盤ベルト付き衣類10とは、右臀部固定ベルト24及び左臀部固定ベルト25の構成が異なると共に、右補助ベルト16A及び左補助ベルト16Bを備えていないことを除き、同様の構成を有している。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態と対応する構成要素には十の位の数字を“2”に変えた符号を付して説明する。
【0048】
右臀部固定ベルト24は、腹部から右股関節よりも下側及び右臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から右大腿部後側を通り右大腿部脇まで伸長されている。左臀部固定ベルト25は、腹部から左股関節よりも下側及び左臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から左大腿部後側を通り左大腿部脇まで伸長されている。すなわち、第1の実施の形態の右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15は、股下から反対側の大腿部付け根の前側まで伸長しているのに対して、本実施の形態の右臀部固定ベルト24及び左臀部固定ベルト25は、股下から同一側の大腿部脇まで伸長したものである。この骨盤ベルト付き衣類20は、X脚に対応したものである。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の機能及び他の構造は、第1の実施の形態と同様である。
【0049】
なお、右臀部固定ベルト24において、右大腿部脇というのは、右大腿部の外側部中心と前中心との中間位置から、外側部中心と後中心との中間位置までの範囲を意味している。右臀部固定ベルト24の大腿部側の端部は、右大腿部の1/3よりも上側において、右大腿部脇に固定するようにすることが好ましい。同じく、左臀部固定ベルト25において、左大腿部脇というのは、左大腿部の外側部中心と前中心との中間位置から、外側部中心と後中心との中間位置までの範囲を意味している。左臀部固定ベルト25の大腿部側の端部は、左大腿部の1/3よりも上側において、左大腿部脇に固定するようにすることが好ましい。
【0050】
右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の少なくとも一部は、伸縮性を有する材料により構成することが好ましい。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15の太さは、例えば、4cmから8cm程度であることが好ましい。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15は、例えば、腹部側の端部が腰ベルト13又は衣類本体11に対して面状ファスナー等により着脱可能に固定され、大腿部側の端部が衣類本体11に対して面状ファスナー等により着脱可能に固定されることが好ましい。体形に合わせて調節することができるからである。
【0051】
このようにこの骨盤ベルト付き衣類20は、X脚用に右臀部固定ベルト24及び左臀部固定ベルト25の構成を対応させたことを除き、第1の実施の形態と同一の機能を有している。よって、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えている必要はなく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
骨盤安定性を向上させることができる骨盤ベルト付き衣類に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10,20…骨盤ベルト付き衣類、11…衣類本体、12…仙骨被覆部、12A…仙骨クッション部、12B…腰椎クッション部、13…腰ベルト、13A…第1腰ベルト、13B…第2腰ベルト、14,24…右臀部固定ベルト、14A…ベルト通し、15,25…左臀部固定ベルト、15A…ベルト通し、16…連結部材、16A…右補助ベルト、16B…左補助ベルト、17…右臀部協調ベルト、18…左臀部協調ベルト、19…芯材
【要約】
【課題】骨盤の安定性と運動性とを両立させることができる骨盤ベルト付き衣類を提供する。
【解決手段】骨盤ベルト付き衣類10は、少なくとも臀部を覆う股付きの衣類本体11と、この衣類本体11に対して配設され、仙骨を覆う仙骨被覆部12と、この仙骨被覆部12から脇を通り腹部まで伸長された左右の腰ベルト13と、右臀部固定ベルト14と、左臀部固定ベルト15とを備えている。右臀部固定ベルト14及び左臀部固定ベルト15は、腹部から側部及び臀部下部を通り股下まで伸長されたのち、股下から反対側の大腿部の前側まで伸長されている。右臀部固定ベルト14と左臀部固定ベルト15とは、肛門に対応する位置において、伸縮性を有する材料よりなる連結部材16により連結されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9