特許第6232612号(P6232612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井金属アクト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000002
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000003
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000004
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000005
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000006
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000007
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000008
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000009
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000010
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000011
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000012
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000013
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000014
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000015
  • 特許6232612-自動車用ドアラッチ装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232612
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】自動車用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/24 20140101AFI20171113BHJP
   E05B 83/18 20140101ALI20171113BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   E05B85/24
   E05B83/18
   B60J5/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-163764(P2013-163764)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-31132(P2015-31132A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】須郷 茂和
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3143586(JP,B2)
【文献】 特開昭61−172977(JP,A)
【文献】 実開平01−131772(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッチ軸に枢支され、ストライカが離脱したオープン位置から前記ストライカが辛うじて噛み合うハーフラッチ位置を経て前記ストライカが完全に噛み合うフルラッチ位置、及びその逆へ回転可能なラッチと、
係合部材軸に枢支され、前記ラッチに設けたフルラッチ係合部またはハーフラッチ係合部に係合可能であって、ドア開扉手段の開扉操作により前記フルラッチ係合部に係合した係合位置から付勢手段の付勢力に抗して当該係合を解除する解除方向へ回動して前記ラッチを前記オープン位置への回転を可能にする係合部材と、
前記ラッチが前記オープン位置から前記フルラッチ位置へ向けて回転するフルラッチ回転、または前記フルラッチ位置から前記オープン位置へ向けて回転するオープン回転の際、前記係合部材を前記ハーフラッチ係合部に対して係合不能とする解除位置に保持可能なハーフラッチ規制手段とを備え、
前記ハーフラッチ規制手段は、
前記ラッチと一体的に回転し得るように前記ラッチ軸に固定される前記フルラッチ回転用のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材または前記オープン回転用のドア開扉時用ハーフラッチ規制部材と、
前記ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材または前記ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材に設けたハーフラッチ規制ガイド路に係合することによって前記係合部材を前記解除位置に保持可能とし、前記係合部材に対して連動し得るように前記係合部材軸に取り付けられる連係部材とを含み、
前記ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材または前記ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材は、
前記ハーフラッチ規制ガイド路の長さ方向の一端部と連続する第1ガイド路、前記第1ガイド路と連続する第2ガイド路、及び前記第2ガイド路と前記ハーフラッチ規制ガイド路の長さ方向の他端部とに連続する第3ガイド路を備えることにより、ループ状をなすように連続するガイド路を有し、
前記ラッチがオープン位置からハーフラッチ位置を経てフルラッチ位置、及びその逆へ回転するのに伴い、前記連係部材の突部が前記ハーフラッチ規制ガイド路とループ状に連続するガイド路に沿って一方向に移動することを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記ハーフラッチ規制ガイド路は、前記ラッチ軸を中心とする円弧状をなし、前記連係部材は、突部が前記円弧状のハーフラッチ規制ガイド路に沿って移動する期間、前記係合部材を前記解除位置に保持することを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアに適用されるドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のバックドアに用いられるドアラッチ装置においては、バックドア側に固定されたベース部材に軸をもって支持され、車体側に設けたストライカから離脱することにより、バックドアを、全閉状態に保持されているフルラッチ位置から、オープン位置へ回動させることができるようにするラッチと、ラッチにおけるフルラッチ係合部と係合して、ラッチをフルラッチ位置に拘束しうる係合部材(ポールまたはラチェット)と、ドア開扉手段に連係され、係合部材をフルラッチ係合部との係合を解除する方向に回動させるリリースレバー等を備えている。
また、ドアラッチ装置には、ラッチがフルラッチ位置に拘束されているとき、万一何らかの原因でラッチと係合部材との係合が外れても、不意にバックドアが開かないように、フルラッチ位置とオープン位置との間において、係合部材がハーフラッチ係合部と係合して、ドアを半閉状態に保持しうるようになっているハーフラッチ位置が設定されている。
【0003】
このようなハーフラッチ位置が設定されているドアラッチ装置においては、 例えば運転席等より、ドア開扉用の電動アクチュエータの操作スイッチやドア開扉用の操作レバーを操作して、バックドアを開扉する際において、例えばウェザーストリップの反発力が低下していたり、バックドアの周縁部が凍結するなどして、バックドアの持ち上がり量が不十分であると、係合部材が、ハーフラッチ位置においてハーフラッチ係合部と係合して、バックドアが半閉状態となってしまい、一度の開扉操作でバックドアを開放できなくなることがある。
このようになると、操作スイッチや操作レバーを再度操作して、ラッチと係合部材との係合を解除しなければならなくなり、その操作が面倒となるという問題がある。
【0004】
例えば特許文献1及び2には、上記の問題の解決を図ったドアラッチ装置またはドアロック装置が開示されている。
特許文献1に記載のドアラッチ装置は、オープンレバー部材がドアを開扉する方向に操作されたとき、オープンレバー部材によりポール部材を、ラッチ部材との係合を解除する方向に回動させ、また、オープンレバー部材がドアの解放操作端まで操作されたとき、オープンレバー部材に保持レバー部材が係合することにより、オープンレバー部材を介して、ポール部材を、ラッチ部材のハーフラッチ用係止部及びフルラッチ用係止部と係合しない位置に保持するようにしたものである。
また、特許文献2に記載のドアロック装置は、ラッチに、ラッチ軸を中心とする円弧突条を有するハーフラッチ防止板を一体的に設け、かつラチェットには、その開扉操作でフルラッチ係合段部より離脱するとき、ラチェットと共に動く突起付ハーフ防止レバーを設け、この突起付ハーフ防止レバーと前記円弧突条の関係を、開扉操作したとき、突起付ハーフ防止レバーの突起が円弧突条を乗り越えて戻らないようにし、ハーフラッチ係合段部にラチェットが係合しないようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−329731号公報
【特許文献2】特許第3143586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハーフラッチ位置が設定されているドアラッチ装置においては、ウェザーストリップの反発などにより、ドアを閉める際にも、係合部材が、ハーフラッチ位置においてハーフラッチ係合部と係合して、ドアが半閉状態となってしまい、一度の閉扉操作でバックドアを閉じることができなくなることがある。
このような問題に鑑み、ドアを開扉操作したときに、ラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止するドア開扉時用のハーフラッチ規制手段と、ドアを閉めたときに、ラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止するドア閉扉時用のハーフラッチ規制手段とを、選択的に組み込みうるようにすることにより、ドアを開けたときに、ラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止しうるドアラッチ装置と、ドアを閉じたときに、ラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止しうるドアラッチ装置を、顧客の要望等に応じて迅速に提供することが可能となる。
【0007】
しかし、その反面、上記特許文献1及び2に記載されているドアラッチ装置またはドアロック装置を、ドアを閉めたときにラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止しうるドアラッチ装置に適用するためには、各種構成要素の形状や配置を変更する必要があり、コスト上昇を招くこととなる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、ドアを閉めたときにラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置と、ドアを開けたときにラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置とを低コストで提供可能とした自動車用ドアラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
第1の発明は、ラッチ軸に枢支され、ストライカが離脱したオープン位置から前記ストライカが辛うじて噛み合うハーフラッチ位置を経て前記ストライカが完全に噛み合うフルラッチ位置、及びその逆へ回転可能なラッチと、係合部材軸に枢支され、前記ラッチに設けたフルラッチ係合部またはハーフラッチ係合部に係合可能であって、ドア開扉手段の開扉操作により前記フルラッチ係合部に係合した係合位置から付勢手段の付勢力に抗して当該係合を解除する解除方向へ回動して前記ラッチを前記オープン位置への回転を可能にする係合部材と、前記ラッチが前記オープン位置から前記フルラッチ位置へ向けて回転するフルラッチ回転、または前記フルラッチ位置から前記オープン位置へ向けて回転するオープン回転の際、前記係合部材を前記ハーフラッチ係合部に対して係合不能とする解除位置に保持可能なハーフラッチ規制手段とを備え、
前記ハーフラッチ規制手段は、前記ラッチと一体的に回転し得るように前記ラッチ軸に固定される前記フルラッチ回転用のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材または前記オープン回転用のドア開扉時用ハーフラッチ規制部材と、前記ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材または前記ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材に設けたハーフラッチ規制ガイド路に係合することによって前記係合部材を前記解除位置に保持可能とし、前記係合部材に対して連動し得るように前記係合部材軸に取り付けられる連係部材とを含み、
前記ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材または前記ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材は、前記ハーフラッチ規制ガイド路の長さ方向の一端部と連続する第1ガイド路、前記第1ガイド路と連続する第2ガイド路、及び前記第2ガイド路と前記ハーフラッチ規制ガイド路の長さ方向の他端部とに連続する第3ガイド路を備えることにより、ループ状をなすように連続するガイド路を有し、前記ラッチがオープン位置からハーフラッチ位置を経てフルラッチ位置、及びその逆へ回転するのに伴い、前記連係部材の突部が前記ハーフラッチ規制ガイド路とループ状に連続するガイド路沿って一方向に移動することを特徴とする。
【0011】
の発明は、第1の発明において、前記ハーフラッチ規制ガイド路は、前記ラッチ軸を中心とする円弧状をなし、前記連係部材は、突部が前記円弧状のハーフラッチ規制ガイド路に沿って移動する期間、前記係合部材を前記解除位置に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材またはドア開扉時用ハーフラッチ規制部材をラッチ軸に選択的に取付けることにより、他の部品の共通化を可能として、ドアを閉めたときラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置と、ドアを開けたときにラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置とを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ドアを閉めたときに、ラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止しうるようにした、本発明の一実施形態に係るドアラッチ装置を、バックドアに取り付けた状態の側面図である。
図2】同じく、ドアラッチ装置の分解斜視図である。
図3】同じく、ドアラッチ装置のラッチ機構部を、図1における矢印III方向より見た一部切欠き平面図である。
図4図1におけるIV−IV線横断面図である。
図5図3におけるV−V線拡大縦断面図である。
図6】ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材の拡大平面図である。
図7図6のVII−VII線縦断側面図である。
図8】同じく、VIII−VIII線縦断側面図である。
図9】同じく、IX−IX線縦断側面図である。
図10】ドア開閉時におけるラッチ機構の各部材の動きを順に説明する平面図である。
図11】本発明に係る、ドアを開けたときにラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置用のハーフラッチ規制部材の拡大平面図である。
図12】同じく、図11のXII−XII線縦断側面図である。
図13】同じく、図11のXIII−XIII線縦断側面図である。
図14】同じく、同じく図11のXIV−XIV線縦断側面図である。
図15】同じく、ドアを開けたときのラッチ機構の各部材の動きを順に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態に係るドアラッチ装置、すなわちドアを閉めたときに、ラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止しうるようにしたドアラッチ装置を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1及び図2における左方を自動車の「前方」、同じく右方を「後方」とし、図3及び図4における上方を自動車の「右方」、同じく下方を「左方」とする。
【0016】
図1に示すように、この実施形態のドアラッチ装置1は、例えば自動車の車体Bの後部に上下方向に開閉可能に枢支されているバックドア(以下、ドアと略称する)Dに適用されるもので、ドアDにおけるほぼ水平をなす下部パネルD1に取付けられ、車体Bに固着されているストライカSに係脱可能なラッチ機構2と、このラッチ機構2の上面に取り付けられ、ドアの開扉に伴って作動する、上下方向を向く電動アクチュエータ3とを備えている。
【0017】
図2図5に示すように、ラッチ機構2は、上面が開口する金属製の浅箱状をなすベース部材4と、ベース部材4の上面を覆う合成樹脂製のカバー部材5と、カバー部材5の上面に固定される金属製のブラケット6とを備えている。ベース部材4の後上部の左右1対の外向きフランジ部41、41は、ボルト(図示略)をもってドアDの下部パネルD1に固定されている。ベース部材4の底板42及びカバー部材5における左右方向の中央部には、それぞれ、ドアDが閉じられたとき、ストライカSが前方から進入しうる、後向きのストライカ進入溝43、51が形成されている。
【0018】
また、ラッチ機構2は、ベース部材4とカバー部材5との間の空間部内に、後述する上下方向のラッチ軸9と共に回動しうるように収容されている、ストライカSと係脱可能なラッチ7と、ラッチ7に係脱可能な係合部材としてのポール8とを備えている。
【0019】
ラッチ7は、それ自体に設けられた軸孔75に、ベース部材4、カバー部材5、及びブラケット6に回動可能に支持された上下方向を向くラッチ軸9の下部を圧入することにより、ラッチ軸9に相対回転不能として取り付けられている。これによりラッチ7は、ストライカSを解放するオープン位置(ドアDの開放状態)と、ストライカSと完全に係合するフルラッチ位置(ドアDを全閉状態に保持する位置)との間を、ラッチ軸9と共に平面視時計方向及び反時計方向に回転しうるようになっている。
【0020】
ポール8は、それと一体をなすポール軸10により、ベース部材4とカバー部材5との間に回動可能に支持されている。なお、ラッチ軸9とポール軸10は、ブラケット6を貫通して上方に突出している。
【0021】
図4に示すように、ラッチ7は、互いに対向する前側アーム71と後側アーム72とを有し、前側アーム71及び後側アーム72の先端部には、それぞれ、ポール8の爪部81が係合可能なフルラッチ係合部73及びハーフラッチ係合部74が形成されている。なお、ラッチ7は、フルラッチ係合部73とハーフラッチ係合部74のみを露出させて、樹脂モールドされている。
前側アーム71と後側アーム72との間には、ストライカ進入溝43、51に進入したストライカSが係合可能な平面視U字状の係合溝44が形成されている。ポール8は、その爪部81がフルラッチ係合部73またはハーフラッチ係合部74と係合可能な係合位置(図4に示す位置)と、フルラッチ係合部73またはハーフラッチ係合部74との係合を解除する解除位置(図4において係合位置から時計方向へ所定角度回転した位置)とに、ポール軸10と共に回動しうるようになっている。
【0022】
ドアDを閉じると、ストライカSがラッチ7の係合溝44に進入して、ラッチ7を平面視反時計方向に回転させ、ストライカSが係合溝44と係合し、かつポール8の爪部81がフルラッチ係合部73と係合することにより、ラッチ7は、図3及び図4に示すフルラッチ位置に拘束される。
【0023】
図4及び図5に示すように、ベース部材4とカバー部材5との間において、ラッチ軸9には、ねじりコイルばね11が、ポール軸10には、ねじりコイルばね12が、それぞれ巻装されている。ラッチ7は、ねじりコイルばね11により平面視時計方向、すなわちストライカSを解放する方向に付勢されている。ポール8は、ねじりコイルばね12により平面視反時計方向、すなわちラッチ7のフルラッチ係合部73またはハーフラッチ係合部74と係合する方向に付勢されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、電動アクチュエータ3は、電動モータの回転を減速する減速ギヤにより正面視反時計方向(ドアを開扉するリリース方向)に回動可能なオープンレバー13を備えている。オープンレバー13の下端部は、ポール軸10の上端部に着脱可能に固定された後述するリリースレバー16の先端部(後端部)の右側面に近接または当接している(図3図5参照)。
【0025】
ドアDに設けられた操作ハンドルまたは操作スイッチ(いずれも図示略)の操作により、電動アクチュエータ3が作動すると、オープンレバー13は正面視反時計方向(リリース方向)に回動し、その下端部がリリースレバー16の先端部に当接することにより、リリースレバー16を介して、ポール軸10とポール8が一体的に平面視時計方向に回動させられる。これにより、ポール8の爪部81がラッチ7のフルラッチ係合部73より離脱し、ドアDを開けることができる。
【0026】
図1図3及び図5に示すように、ポール軸10におけるブラケット6の上方に突出する突出部には、平面視扇状の連係部材14の前端部に設けた軸孔141が、相対回動可能、かつポール軸10に対し連係部材14が上下方向に傾動しうるように遊嵌されている。
また、ブラケット6の上方に突出するラッチ軸9の上端部には、角軸部91が形成され、この角軸部91には、平面視概ね扇状をなすフルラッチ回転用のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15に設けた矩形孔153が相対回動不能に嵌合され、ねじにより固定されている。ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15は、連係部材14の一部と上下に重なり合うように取付けられている。なお、本実施形態のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15は、ラッチ7がオープン位置からフルラッチ位置へ向けて回転する際、ポール8がラッチ7のハーフラッチ係合部74に係合しないようにするための要素の一つである。
【0027】
さらに、連係部材14の上方においてポール軸10の上端部に形成された角軸部101には、リリースレバー16に設けた矩形孔161が相対回動不能に嵌合され、ねじにより固定されている。これにより、リリースレバー16は、ポール8と一体的に回動する。リリースレバー16の後端部(先端部)は、連係部材14の後端より後方に突出するとともに、連係部材14の上方においてそれと上下方向に重なり合っている。リリースレバー16の後端部は、電動アクチュエータ3の直下に位置し、前述したように、電動アクチュエータ3におけるオープンレバー13の下端部に近接している。なお、連係部材14とドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15とにより、本発明に係るハーフラッチ規制手段を構成している。
【0028】
上述のように、連係部材14とリリースレバー16をポール軸10に、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15をラッチ軸9にそれぞれ取り付けるとともに、連係部材14、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15及びリリースレバー16を、それらの一部が上下に重なり合うように連係すると、ラッチ機構2をコンパクト化することができる。
【0029】
図1図2図5に示すように、連係部材14とリリースレバー16間においてポール軸10の外周面には、環状溝17が形成され、この環状溝17にE型止め輪18を嵌着することにより、連係部材14は上方へ抜け止めされている。ブラケット6と連係部材14との対向面間において、ポール軸10には、圧縮コイルばね19が嵌挿され、この圧縮コイルばね19により、連係部材14は常時上方に付勢されている。なお、圧縮コイルばね19により連係部材14を上方に付勢するのは、連係部材14に設けられる後述の第2ガイドピン27が、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15における後述の第2及び第3ガイド路23、24の傾斜面に沿って押し上げられながら移動する際に、連係部材14が圧縮コイルばね19を撓ませて上下に傾動しうるようにするためである。
図3に示すように、連係部材14の右側端部における前後方向の中間部と、リリースレバー16におけるポール軸10寄りの右側端部との間には、連係部材14を平面視時計方向に付勢するための引張コイルばね20が取り付けられている。
【0030】
図6図9は、上記ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15の詳細図である。なお、以下においては、図6の左方を「前」、右方を「後」、上方を「右」、下方を「左」として説明する。ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15は、平面視ほぼ半円形の基部151と、その後端部より後方に向かって平面視ほぼ扇状に拡開する扇状板部152とを有し、基部151には、上述したラッチ軸9の上端部の角軸部91に圧入される矩形孔153が穿設されている。扇状板部152の後端部(図6の右端部)の上面には、左側部(図6の下部)が開放されたラッチ軸9を中心とする円弧状かつ凹状断面のハーフラッチ規制ガイド路21が形成されている。なお、詳細は後述するが、ハーフラッチ規制ガイド路21は、ラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されないようにするためのものであるが、後述の第2ガイドピン27を移動可能に案内するガイド路も兼ねている。
【0031】
扇状板部152の左側部の上面には、ハーフラッチ規制ガイド路21の左側部と連続する幅広の第1ガイド路22が、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15の回動方向と交差する方向を向くようにして形成されている。
また、扇状板部152の基部151寄りの上面には、右側部(図6の上部)が開放されたラッチ軸9を中心とする円弧状かつ凹状断面の第2ガイド路23が、左端部が第1ガイド路22と連続するようにして形成されている。さらに、扇状板部152の右側部(図6の上部)の上面には、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15の回動方向と交差する方向を向く幅広の第3ガイド路24が、ハーフラッチ規制ガイド路21の右側部と第2ガイド路23の右端部とに連続するようにして形成されている。
【0032】
図7に示すように、第3ガイド路24は、第2ガイド路23の溝底面から、ハーフラッチ規制ガイド路21の上端部に向かって、上向きに緩く傾斜している。また、図9に示すように、第1ガイド路22は、ハーフラッチ規制ガイド路21の溝底面から、第2ガイド路23の上端部に向かって、上向きに緩く傾斜している。このように、第1ガイド路22と第3ガイド路24とを上下反対方向に傾斜させて、それらを、ハーフラッチ規制ガイド路21と第2ガイド路23の両端部に連続させてあるため、ハーフラッチ規制ガイド路21及び第2ガイド路23の深さを小として、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15の板厚を小さくしうるとともに、後述の第2ガイドピン27をハーフラッチ規制ガイド路21及び第2ガイド路23に向かって円滑に移動させることができる。
【0033】
ハーフラッチ規制ガイド路21と第1、第2、第3ガイド路22、23、24とにより、互いに連続するループ状ガイド路が形成され、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15が、ラッチ7と共にオープン位置からフルラッチ位置を経て再度オープン位置まで回転するのに伴い、後述の第2ガイドピン27は、図6の矢印で示すように、ハーフラッチ規制ガイド路21の始端部211から、第1ガイド路22、第2ガイド路23の始端部231及び第3ガイド路24を経て、ハーフラッチ規制ガイド路21の始端部211に戻るように一方向に移動するようになっている。これにより、ラッチ7は、オープン位置から、ハーフラッチ位置とフルラッチ位置を経て、再度オープン位置へ円滑に回転することができる。
【0034】
図3及び図5に示すように、連係部材14の前後方向の中間部には、ポール軸10を中心とする円弧状の長孔25が、左端部から中央部に至る長さの範囲で形成されている。この長孔25には、リリースレバー16における前後方向(長さ方向)の中央部の取付孔に上端部が固着された上下方向を向く第1ガイドピン26の下端部が、相対移動可能として遊嵌されている。これにより、連係部材14は、ポール8に対して回転方向へ所定の遊びを介して連動しうるように、ポール軸10に取り付けられている。
【0035】
第1ガイドピン26が長孔25に沿って移動することにより、連係部材14とリリースレバー16とが相対回動するとともに、第1ガイドピン26が長孔25の右端部と当接することにより、連係部材14とリリースレバー16とポール8とが一体的にラッチ7方向へ回動して、ポール8がフルラッチ係合部73と係合可能となり、また第1ガイドピン26が長孔25の左端部に向かって移動することにより、ポール8とフルラッチ係合部73との係合が解除されるようになる。
【0036】
連係部材14における右側部の後隅部の取付孔には、突部としての上下方向を向く第2ガイドピン27の上端部が固着され、この第2ガイドピン27の下端部は、ラッチ7がフルラッチ位置まで回転してドアDが全閉状態にあるとき、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15における第2ガイド路23の始端部(左端部)231に位置するようになっている(図3参照)。
【0037】
次に、図10の(a)〜(h)図を参照して、上記第1の実施形態に係るドアラッチ装置1の作用、特にドアの開閉時における各部材の動きについて説明する。なお、以下の説明においては、上述したと同様に、各図における紙面の左方を「前」、右方を「後」、上方を「右」、下方を「左」とする。
図10(a)は、ドアが開かれている状態、すなわちポール8の爪部が81とラッチ7とが非係合状態にあって、ラッチ7がストライカSを解放しているオープン状態を示すもので、この状態では、リリースレバー16の第1ガイドピン26は、連係部材14の長孔25の右端部に位置するとともに、連係部材14の第2ガイドピン27は、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15におけるハーフラッチ規制ガイド路21の始端部(後端部)211に位置している。従って、図10(a)に示すオープン状態では、ポール8、当該ポール8と共に回動するリリースレバー16、及び連係部材14は、反時計方向へ回動するのが阻止されている。
【0038】
図10(a)に示すオープン状態においてドアを閉めると、ストライカSがラッチ7の係合溝44に突入することにより、ラッチ7とドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15とが、図10(b)のハーフラッチ位置(ドアを半閉状態に保持する位置)を経て、図10(c)のフルラッチ位置(ドアを全閉状態に保持する位置)まで、一体的に反時計方向に回転させられる。
この際のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15の回転により、連係部材14の第2ガイドピン27は、ハーフラッチ規制ガイド路21に係合しながら案内され、その始端部211から第1ガイド路22側に向かって相対移動する。第2ガイドピン27がハーフラッチ規制ガイド路21に案内されて移動している間、すなわちラッチ7がハーフラッチ位置を越えてフルラッチ位置の直前まで回転する間は、ポール8、リリースレバー16、及び連係部材14は反時計方向へ回動するのが規制される。
【0039】
ラッチ7及びドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15が、ほぼ図10(c)のフルラッチ位置まで回転し、第2ガイドピン27がハーフラッチ規制ガイド路21の終端部(左端部)より外れると、第2ガイドピン27は第1ガイド路22を介して、第2ガイド路23側に移動可能となる。すなわち、ポール8及びリリースレバー16は、上述したねじりコイルばね12により反時計方向に付勢されており、かつ連係部材14もリリースレバー16に設けた第1ガイドピン26を介して反時計方向に付勢されているので、第2ガイドピン27がハーフラッチ規制ガイド路21の終端部より外れると、第2ガイドピン27は、第1ガイド路22に沿って若干押し上げられながら、第2ガイド路23に向かって移動し、その始端部(左端部)231に突入し、第2ガイド路23に案内されて移動する(図9参照)。すると、図10(d)に示すように、ポール8、リリースレバー16、及び連係部材14が共に反時計方向に回動し、ポール8の爪部81がラッチ7のフルラッチ係合部73と係合することにより、ラッチ7はフルラッチ状態に拘束され、ドアは全閉状態に保持される。
【0040】
背景技術の項に記載したように、ドアを閉める際において、ウェザーストリップの反発などにより、ラッチ7が、ドアを全閉状態に保持するフルラッチ位置まで回動せずに、ポール8の爪部81がラッチ7のハーフラッチ係合部74と係合し、ドアが半閉状態に保持されてしまうことがある。
【0041】
しかし、本実施形態に係るドアラッチ装置においては、上記のように、第2ガイドピン27が、ハーフラッチ規制ガイド路21に案内されて移動している間、すなわち、ラッチ7がハーフラッチ位置を越えてフルラッチ位置の直前まで回転する間は、連係部材14、リリースレバー16、及びポール8が反時計方向へ回動するのが阻止されているので、図10(b)に示すように、ポール8の爪部81は、ラッチ7のハーフラッチ係合部74の回動軌跡の外側に離間し、ハーフラッチ位置において、ポール8の爪部81がハーフラッチ係合部74に係合不能とする解除位置に保持される。従って、ドアを閉める際に、ラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されることはなく、図10(c)及び(d)に示すように、ハーフラッチ位置を飛び越えて、フルラッチ位置においてポール8の爪部81がラッチ7のフルラッチ係合部73と係合するため、ドアを一度の閉扉操作で全閉状態に保持することができる。
なお、ハーフラッチ規制ガイド路21を凹状断面をなす形状とし、このハーフラッチ規制ガイド路21に沿って、第2ガイドピン27が移動するので、第2ガイドピン27がハーフラッチ規制ガイド路21を乗り越えるおそれはなく、ラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されるのが確実に防止される。
【0042】
図10(d)に示すフルラッチ状態において、上述したように、ドアに設けられた操作ハンドルまたは操作スイッチを操作して電動アクチュエータ3を作動させ、オープンレバー13をリリース方向に回動させると、図10(e)に示すように、オープンレバー13に連係されたリリースレバー16及びポール8が平面視時計方向に一体的に回動させられる。これにより、ポール8の爪部81がラッチ7のフルラッチ係合部73より離脱し、ラッチ7が、図10(f)のハーフラッチ位置を経て、図10(h)のオープン位置まで時計方向に回転して、ストライカSを係合溝44より解放することにより、ドアを開けることができる。
【0043】
図10(e)に示すオープン操作時においては、第1ガイドピン26が長孔25に案内されて左端部に移動するので、連係部材14は回動せず、従って、連係部材14に設けた第2ガイドピン27は第2ガイド路23内にとどまり、ラッチ7が図10(f)のハーフラッチ位置まで回転するのに伴い、第2ガイドピン27は第2ガイド路23に案内されて、第3ガイド路24方向に相対移動する。
【0044】
ラッチ7がハーフラッチ位置を越える位置まで時計方向に回転し、第2ガイドピン27が第2ガイド路22の終端部(右端部)より外れると、図10(g)に示すように、第2ガイドピン27が第3ガイド路24側に移動すると同時に、連係部材14は引張コイルばね20の付勢力により時計方向に回動する。これにより、第2ガイドピン27はハーフラッチ規制ガイド路21内に入り込み、連係部材14とリリースレバー16が反時計方向へ回動するのを阻止した状態で、ラッチ7は図10(h)に示すオープン位置、すなわち図10(a)と同じオープン状態まで時計方向に回転する。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態に係るドアラッチ装置においては、ドアを閉める際、ラッチ7がハーフラッチ位置を越えるまで位置まで回転する間は、連係部材14に設けた第2ガイドピン27が、ハーフラッチ規制ガイド路21に案内されて移動するようにし、連係部材14、リリースレバー16、及びポール8がラッチ7側に回動するのを阻止することにより、ハーフラッチ位置においてポール8の爪部81がラッチ7のハーフラッチ係合部74と係合しないようにしている。
そのため、ドアを閉める際に、ラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されることがなく、ハーフラッチ位置を飛び越えて、フルラッチ位置においてポール8の爪部81がラッチ7のフルラッチ係合部73と係合するようになる。その結果、ドアが半閉状態に保持されることがなくなり、一度の閉扉操作でドアを確実に全閉しうるので、半閉状態となったドアを開いて再度閉め直すという煩わしさが解消される。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係るドアラッチ装置、すなわち、上記第1の実施形態のドアラッチ装置より、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15を取外して、ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300と交換することにより、ドアを開けたときにラッチがハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置に変更した実施形態ついて説明する。なお、本実施形態のドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300は、ラッチ7がフルラッチからオープン位置へ向けて回転する際、ポール8がラッチ7のハーフラッチ係合部74に係合しないようにするための要素の一つである。
上記第1の実施形態のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15は、ラッチ軸9の上端部に、着脱可能に取り付けられているので、ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300と容易に交換することができる。なお、本実施形態において上述した第1の実施形態に係るドアラッチ装置と異なる点は、ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300の形状のみであるので、上記第1の実施形態と同様の他の部材については、詳細な説明を省略する。
【0047】
図11図14に示すように、本実施形態のドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300の平面形状は、第1の実施形態のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15と同形をなし、矩形孔303を有する基部301と扇状板部302を有している。扇状板部302の上面には、ラッチ軸9を中心とする円弧状のハーフラッチ規制ガイド路304と、幅広の第1ガイド路305と、ラッチ軸9を中心とする円弧状の第2ガイド路306と、幅広の第3ガイド路307とが、上記第1の実施形態のドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15と同様に、互いに連続するループ状のガイド路が形成されるようにして設けられている。
【0048】
上記ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15とは反対に、ハーフラッチ規制ガイド路304の右側部(図11の紙面上部)と第2ガイド路306の左側部(図11の紙面下部)は開放され、図12に示すように、第1ガイド路305は、ハーフラッチ規制ガイド路304の右側部の溝底面から、第2ガイド路306の上端部に向かって、上向きに緩く傾斜している。
また、第3ガイド路307は、図14に示すように、第2ガイド路306の左側部の溝底面から、ハーフラッチ規制ガイド路304の左側部の上端部に向かって、上向きに緩く傾斜している。
【0049】
図15に示すように、ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300がラッチ7と共にフルラッチ位置とオープン位置間を回転するのに伴い、連係部材14に設けた第2ガイドピン27は、図11の矢印で示すように、ハーフラッチ規制ガイド路304、第1ガイド路305、第2ガイド路306及び第3ガイド路307に沿って、上記第1の実施形態と逆方向に移動する。
【0050】
次に、図15の(a)〜(d)を参照して、第2の実施形態に係るドアラッチ装置1の作用、特にドアの開扉操作時における各部材の動きについて説明する。なお、以下においては、図15の各図における左方を「前」、右方を「後」、上方を「右」、下方を「左」として説明する。
図15(a)は、ドアが全閉され、ポール8の爪部81がラッチ7のフルラッチ係合部73と係合したフルラッチ状態を示すもので、この状態では、第1ガイドピン26が、長孔25における紙面上方の右端部に位置するとともに、第2ガイドピン27は、第2ガイド路306の開放部、すなわち第3ガイド路307と対向する部分に位置している。これにより、連係部材14、リリースレバー16及びポール8は、反時計方向に回動するのが阻止されている。
【0051】
図15(a)に示す状態において、第1の実施形態と同様に、電動アクチュエータ3を作動させ、オープンレバー13に連係されたリリースレバー16を、平面視時計方向(リリース方向)に回動させると、図15(b)に示すように、リリースレバー16の第1ガイドピン26が長孔25における紙面下方の左端部と当接まで移動することにより、ポール8の爪部81がフルラッチ係合部73から離脱し、ラッチ7は時計方向(ドア開放方向)に回転可能となる。また同時に、第2ガイドピン27が第3ガイド路307を介してハーフラッチ規制ガイド路304の左端部まで移動し、このハーフラッチ規制ガイド路304内に突入する。
【0052】
ラッチ7が時計方向へ回転すると、図15(c)に示すように、連係部材14の第2ガイドピン27が、ハーフラッチ規制ガイド路304に案内されて第1ガイド路305方向に相対移動する。これにより、第2ガイドピン27がハーフラッチ規制ガイド路304に案内されて移動している間、すなわち、ラッチ7がハーフラッチ位置を飛び越えてオープン位置の手前まで回転する間は、連係部材14、リリースレバー16及びポール8が反時計方向へ回動するのが規制されるので、図15(c)に示すハーフラッチ位置においては、ポール8の爪部81がハーフラッチ係合部74の回動軌跡の外側の係合解除位置に位置する。従って、ドアを開けた際に、例えばウェザーストリップの反発力が低下して、ドアの持ち上がり量が不足するなどしても、ラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されることはなく、一度の開扉操作で確実にドアを開放することができる。
【0053】
また、第2ガイドピン27がハーフラッチ規制ガイド路304及び第1〜第3ガイド路305〜306に沿って一方向に連続して移動するので、ラッチ7の回転の妨げにはならず、ドア開閉時の操作感が悪くなるおそれもない。
【0054】
なお、図15(d)に示すオープン位置においてドアを閉扉すると、第2ガイドピン27は、第2ガイド路306に沿って図15(a)の位置まで相対移動する。また、図15(d)に示すオープン位置においてドアを閉める際、第1ガイドピン26が長孔25の左端部に移動して、ラッチ7の外周面に摺接しているポール8及びリリースレバー16の時計方向への回動を許容するので、ポール8は支障なくフルラッチ係合部73またはハーフラッチ係合部74と係合することができる。
【0055】
このように、第2の実施形態のドアラッチ装置においては、上記第1の実施形態のドアラッチ装置におけるドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15のみを、他の部材をそのままとして、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材300と交換するだけで、ドアを開けたときにラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置に容易に変更することができる。
すなわち、他の部品を共通化して、上面形状が互いに異なるドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15とドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300のみを選択的に取付けるだけで、ドアを閉めたときラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置と、ドアを開けたときにラッチ7がハーフラッチ位置で拘束されるのを防止可能なドアラッチ装置とを低コストで提供することができる。しかも、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15及びドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300は、ラッチ軸9に着脱可能に取付けられ、また連係部材14もポール軸10に着脱可能に取り付けてあるので、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15及びドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300の取付けや交換作業が容易であるとともに、ラッチ7やポール8、及び他の各種構成要素に特別な加工を施したり、形状や配置を変更したりする必要がない。
【0056】
以上、本発明を上記実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような変形や変更を施すことが可能である。
上記第1、第2実施形態では、ラッチ7がハーフラッチ位置に拘束されるのを防止するハーフラッチ規制ガイド路21、304を、凹状断面をなすものとしたが、円弧状の上向き突条とすることもできる。また、第2ガイドピン27を案内する凹状断面をなす円弧状の第2ガイド路23、305についても、円弧状の上向き突条とすることができる。
【0057】
また、上記第1、第2実施形態では、連係部材14、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15、ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300及びリリースレバー16を、互いの一部が上下に重なり合うように、下方から順に配置しているが、それらの上下方向の順序は変えることもできる。この際には、第1、第2ガイドピン26、27を上下反対方向に突出させたり、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15またはドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300の下面に、ハーフラッチ規制ガイド路21、304や各ガイド路を設けたりすればよい。
【0058】
さらに、上記第1、第2実施形態では、ラッチ7のフルラッチ係合部73及びハーフラッチ係合部74と係合可能な係合部材をポール8としているが、この係合部材は平板状のラチェットを用いることもできる。この際には、ラチェットを電動アクチュエータ3のオープンレバー13に連係して回動させうるようにするとともに、ラチェットの軸に、連係部材14をラチェットに対し回転方向へ所定の遊びを介して連動しうるように取り付ければ、リリースレバー16は必ずしも必要なくなる。
【0059】
上記第1、第2実施形態では、電動アクチュエータ3を作動させてリリースレバー16を回動させるようにしたドアラッチ装置としているが、電動アクチュエータ3を省略し、一端をリリースレバー16に、他端を車体内部に設けた開扉用操作レバーに連係したケーブル等をもって、リリースレバー16を手動により回動させるようにしたドアラッチ装置としてもよい。
【0060】
連係部材14、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15またはドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300、リリースレバー16を別のカバー部材により覆うか、またはベース部材4の上下寸法を大としてカバー部材5との間に大きな空間を形成し、その空間内に連係部材14、ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15またはドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300及びリリースレバー16を収容するようにしてもよい。
【0061】
ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材15及びドア開扉時用ハーフラッチ規制部材300を、ラッチ7の樹脂モールドと一体的に形成するようにしてもよい。
【0062】
第2実施形態においては、ドアを閉めた際、ポール8がラッチ7の外周面に摺接して時計方向に回動するのを許容するために、連係部材14に長孔25を設け、連係部材14とポール8とが遊びを介して連動しうるようにしているが、長孔25を省略して遊びをなくすようにしてもよい。この際には、第3ガイド路306の溝幅を大として、ドアを閉めた際に、第2ガイドピン27が溝幅方向に移動しうるようにすればよい。
【0063】
本発明は、上記バックドアの外に、自動車のサイドドアやスライドドア等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 ドアラッチ装置
2 ラッチ機構
3 電動アクチュエータ
4 ベース部材
5 カバー部材
6 ブラケット
7 ラッチ
8 ポール(係合部材)
9 ラッチ軸
10 ポール軸(係合部材軸)
11、12 ねじりコイルばね
13 オープンレバー
14 連係部材
15 ドア閉扉時用ハーフラッチ規制部材
16 リリースレバー
17 環状溝
18 E型止め輪
19 圧縮コイルばね
20 引張コイルばね
21、304 ハーフラッチ規制ガイド路
22、305 第1ガイド路
23、306 第2ガイド路
24、307 第3ガイド路
25 長孔
26 第1ガイドピン
27 第2ガイドピン(突部)
41 外向きフランジ部
42 底板
43、51 ストライカ進入溝
44 係合溝
71 前側アーム
72 後側アーム
73 フルラッチ係合部
74 ハーフラッチ係合部
75 軸孔
81 爪部
91、101 角軸部
141 軸孔
151、301 基部
152、302 扇状板部
153、161、303 矩形孔
211、231 始端部
300 ドア開扉時用ハーフラッチ規制部材
B 車体
D バックドア
D1 下部パネル
S ストライカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15