【実施例】
【0019】
図1に示すように、片麻痺患者用歩行訓練装置10は、歩行補助具20と、この歩行補助具20に付設され、片半身が麻痺した患者の麻痺している下肢の機能回復を促す運動機構40と、からなる。
【0020】
歩行補助具20は、フレーム21の上部に後部が開いているU字状のハンドレール22が設けられ、フレーム21の下に4個の自在車輪23L、23L、23R、23R(Lは患者から見て左、Rは同右を示す添え字である。以下同様)が設けられる歩行具である。歩行補助具20は、病院などに常備される歩行具(歩行器)であればよく、形状や構造は任意である。
【0021】
フレーム21に左の横バー24が渡され、この左の横バー24に縦長の板25が固定され、この板25に上に延びるサブフレーム26が固定され、このサブフレーム26の上部に患者の左脇を支える湾曲部材27が固定されている。
なお、実施例では、左下肢が麻痺した患者のための片麻痺患者用歩行訓練装置10を示すが、右下肢が麻痺した患者のためには、右の横バー28に板25が取付けられる。
【0022】
図2に示すように、板25の内面(患者側の面)に2本の縦レール31、31が付設されている。これらの縦レール31、31にスライダ32、32が嵌められ、これらのスライダスライダ32、32が横長のステイ33に固定され、このステイ33の前部に第1駆動ユニット41が取付られる。
そして、ステイ33と板25との間に、ガススプリング34が渡されている。
【0023】
ガススプリング34は、例えば、車両のハッチバック、すなわち、背面ドアの支持部材として採用され、シリンダ35と、このシリンダ35に移動可能に収納されるピストン36と、このピストン36から下へ延びるピストンロッド37と、シリンダ35内に且つピストン36の上下に封入される圧縮ガス38、38とからなる。ピストン36にはオリフィス39と称する小穴が設けられている。
【0024】
周知のように、ピストン36に圧縮ガス38、38による上向き力と下向き力が加わり、一定の荷重に対してはピストン36が静止する。この状態をバランス状態という。
このバランス状態から、ステイ33に上向きの外力を加えると、オリフィス39を通って圧縮ガス38が移動するため、ステイ33は上へ移動する。また、ステイ33に下向きの外力を加えると、ステイ33は下へ移動する。
【0025】
なお、板25は、縦レール31を一体的に備えると共に歩行補助具(
図1、符号20)に固定される。よって、ガスシリンダ34は、板25に一端を連結する他、縦レール31又は歩行補助具に連結することができる。
また、ステイ33は、スライダ32、32を一体的に備えると共に運動機構(
図3、符号40)を一体的に備える。よって、ガスシリンダ34は、ステイ33に他端を連結する他、スライダ32又は運動機構に連結することができる。
【0026】
図3に示すように、運動機構40は、第1駆動ユニット41から延びているスイングアーム42と、このスイングアーム42から下がられる第1メンバー43と、この第1メンバー43に設けられ大腿部の上部に巻き付ける第1巻き付け具44と、体側に沿って第1巻き付け具44から下げられる第2メンバー45と、この第2メンバー45に設けられ大腿部の下部に巻き付ける第2巻き付け具46と、第2メンバー45の下部に前後にスイング可能に取付けられるタイプレート47と、このタイプレート47の下部に前後にスイングに取付けられる第3メンバー48と、この第3メンバー48に設けられ下腿部の上下部に各々巻き付ける第3巻き付け具49及び第4巻き付け具51とを備える。
【0027】
第1巻き付け具44は、U字部材とベルトからなる。第2〜第4巻き掛け具46、49、51も同様である。
【0028】
第2メンバー45は第2駆動ユニット80を含み、第3メンバー48は第3駆動ユニット100を含む。第2・第3駆動ユニット80、100の内部構造は後述する。
【0029】
図4に示すように、第1駆動ユニット41は、第1ケース52と、この第1ケース52に固定される第1サーボモータ53と、この第1サーボモータ53に付属されモータ回転角を検出する第1エンコーダ54と、第1サーボモータ53のモータ軸55に取付けられる第1ウオーム56と、この第1第1ウオーム56に噛み合う第1ホイール64とを備える。この第1ホイール64の回転軸65にスイングアーム42が固定される。第1サーボモータ53を回すことで、第1ウオーム56が回され、第1ホイール64が回され、スイングアーム42が上又は下へスイングする。
【0030】
さらに、第1駆動ユニット41に、スイングアーム42に掛かる負荷トルクを検出する第1トルク検出機構58が付属される。第1トルク検出機構58は、モータ軸55に取付けられるクロスメンバー59と、一端が第1ケース52に固定され他端がクロスメンバー59の端部に固定されるトルク検出バー61、61と、トルク検出バー61、61のくびれ部62、62に貼り付けられる歪みゲージ63、63とからなる。
【0031】
第1トルク検出機構58の作用を、
図5で説明する。
図5にて、第1ウオーム56が駆動側部材で第1ホイール64が従動部材であることを基本とするが、白抜き矢印で示す負荷により、第1ホイール64に負荷トルクが加わることがある。普通のギヤセットであれば、従動側ギヤで駆動側ギヤが回されるが、ウオームギヤでは、第1ウオーム56は第1ホイール64で回されない。この現象はセルフフロック(自己制動機能)と呼ばれる。
【0032】
第1ウオーム56は回されないため、第1ホイール64の回転を受けて、モータ軸55が軸方向に僅かに移動又は圧縮変形する。この僅かな移動又は圧縮により、クロスメンバー59は僅かに上に凸になるように撓む。クロスメンバー59にトルク検出バー61が直角に取付けられているが、この直角は変化しない。結果、トルク検出バー61は、くびれ部62で折り曲がり、くの字に変形する。この変形に応じて歪みゲージ63が変形に対応する電気信号を発生する。
【0033】
スイングアーム42に歪みゲージ63を取付けて負荷トルクを計測することは差し支えないが、本実施例では、トルク検出バー61により、微小変位を十分に大きな変位に増大することができ負荷トルクの検出精度が飛躍的に高まる。
【0034】
図6に示すように、スイングアーム42は、第1ホイール64の回転軸65に固定される筒部材67と、この筒部材67に抜き差し自在に取付けられる鉤型部材68と、この鉤型部材68の先端に取付けられる横レール69と、この横レール69に移動自在に嵌められるサブスライダ71とからなる。このサブスライダ71に第1メンバー43が前後に延びる軸廻りに回転自在に取付けられる。
【0035】
円で示す麻痺した方の大腿部72に
図3に示す第1・第2巻き付け具44、46が巻き付けられる。結果、大腿部72に対して第2メンバー(
図3、符号45)の位置が決まる。加えて、横レール69上をサブスライダ71が横移動するため、第1メンバー43が、患者正面視で大腿部72の中心73へ移動する。訓練中に、大腿部72が左右に振れるが、この振れはサブスライダ71の移動により許容される。
【0036】
前後方向においては、第1ホイール64の回転軸65が大腿部72の中心73を通ることが望まれる。そこで、ロックダイヤル(又はロックレバー)74を弛め、筒部材67に対して鉤型部材68を前又は後に移動し、大腿部72の中心73に合わせ、ロックダイヤル74を締める。これで、前後位置が定まる。
訓練中に、大腿部72が上げ下げされるが、これはスイングアーム42の上下動で吸収される。
【0037】
次に、第2メンバー45について説明する
図7に示すように、第2メンバー45は、第2駆動ユニット80と、この第2駆動ユニット80から上へ延びる延長プレート81とからなる。
第2駆動ユニット80は、上述の第1駆動ユニット41とほぼ同一の構成物であり、第2ケース82と、この第2ケース82に固定される第2サーボモータ83と、この第2サーボモータ83に付属されモータ回転角を検出する第2エンコーダ84と、第2サーボモータ83のモータ軸85に取付けられる第2ウオーム86と、この第2ウオーム86に噛み合う第2ホイール92と、第2トルク検出機構87とを備える。
【0038】
第2ホイール92は、タイプレート47の上部に止めねじ93で固定されている。
第2トルク検出機構87は、クロスメンバー88と、トルク検出バー89、89と、歪みゲージ91、91とからなる。
【0039】
次に、第3メンバー48について説明する
図7に示すように、第3メンバー48は、第3駆動ユニット100と、この第3駆動ユニット100から下へ延びる延長プレート101とからなる。
第3駆動ユニット100は、第3ケース102と、この第3ケース102に固定される第3サーボモータ103と、この第3サーボモータ103に付属されモータ回転角を検出する第2エンコーダ104と、第3サーボモータ103のモータ軸105に取付けられる第3ウオーム106と、この第3ウオーム106に噛み合う第3ホイール112と、第3トルク検出機構107とを備える。
【0040】
第3ホイール112は、タイプレート47の下部に止めねじ113で固定されている。
第3トルク検出機構107は、クロスメンバー108と、トルク検出バー109、109と、歪みゲージ111、111とからなる。
【0041】
図8に示すように、第2サーボモータ83を回転させると、第2ホイール92を基準にして第2メンバー45が例えば図面時計回りに回転する。
また、第3サーボモータ103を回転させると、第3ホイール112を基準にして第3メンバー48が例えば反図面時計回りに回転する。
以上により、患者は膝を曲げることができる。
【0042】
図9(a)に示すように、第1〜第3駆動ユニット41、80、100から延びるハーネス116が制御部115に繋がっている。無線の場合は、ハーネス116は不要である。
例えば、刺激付与機構として電気刺激を与える電極117を大腿部72に貼り付け、電極117を制御部115に繋ぐ。刺激付与機構117は、振動を付与するバイブレーター又は打撃を付与するゴムハンマーに代表される機械的刺激機構であってもよい。
【0043】
第1巻き付け部44と第2巻き付け部46を大腿部72に巻き付け、第3巻き付け部49と第4巻き付け部51を下腿部118に巻き付ける。
【0044】
電極117に通電すると、大腿部72が刺激されて筋肉が伸縮し、僅かではあるが屈曲側に移動する。この移動は第1駆動ユニット41に内蔵の第1トルク検出機構で第1トルクとして検出され、第2駆動ユニット80に内蔵の第2トルク検出機構で第2トルクとして検出され、第3駆動ユニット100に内蔵の第3トルク検出機構で第3トルクとして検出される。
【0045】
すると、制御部115は、第1トルクに対応する第1補助トルクを第1駆動ユニット41で発生させ、第2トルクに対応する第2補助トルク記第2駆動ユニット80で発生させ、第3トルクに対応する第3補助トルクを第3駆動ユニット100で発生させる。
【0046】
結果、
図9(b)のように前にけり出した屈曲姿勢が得られる。
図9(a)、(b)を繰り返すことにより、歩行訓練が実施される。
【0047】
患者が下肢に力を入れない状態(脱力状態)で下肢の屈曲を機械的に行っても訓練の効果が乏しいと言われている。この点、本実施例によれば、電気刺激を加えることで僅かではあるが患者が自律的に下肢に力を入れることで、訓練が実施され、訓練の効果が高まる。
【0048】
次に、より好ましい変更例を説明する。
図10に示すように、歩行補助具20Bは、前後左右に配置される4個の自在車輪23L、23L、23R、23Rに加えて、運動機構が取付けられる側に、V字ブラケット119、119が設けられ、これらのV字ブラケット119、119に補助輪120、120が取付けられている。そして、V字ブラケット119の上方に、患者の左脇を支える湾曲部材27を配置する。
【0049】
湾曲部材27に患者の体重が掛かると、力の加わる方向によっては横転や横よろけに繋がる回転モーメントが発生する心配がある。しかし、本例では、下から上へ支える湾曲部材27を通って地面から上への力により、回転モーメントを相殺することができ、結果、転倒や横よろけを効果的に防止することができる。
【0050】
構造的には、正面視で、自在車輪23Lと補助輪120の間の上方に湾曲部材27を配置すると良い。湾曲部材27を頂点とし、自在車輪23Lを下位の頂点の一つとし、補助輪120を残りの頂点とする三角形を描くことができる。湾曲部材27に加えられる下向き力は、自在車輪23Lと補助輪120とで安定的に支えられる。
よって、湾曲部材27とV字ブラケット119と自在車輪23Lと補助輪120とで横よろけ防止機構が構成され、歩行補助具が倒れにくく且つ横よろけしにくくなり、患者に安心感を与えることができ、安定した訓練が継続できる。
【0051】
以上の説明は、下肢の動作に力点を置いたが、歩行にはヒップ・ムーブメントと呼ばれる腰の回転が付随する。
そこで、
図11に示すように、サブスライダ71に力覚センサ112及びサブサーボモータ113を取付け、第1ホイール64の回転軸65に第2横レール124を固定し、この第2横レール124に第2サブスライダ125を前後移動可能に嵌め、この第2サブスライダ125に力覚センサ126及び第2サブサーボモータ127を取付ける。
この構成により、腰の回転や股関節のねじり回転、左右回転などに補助トルクを加えることができる。
【0052】
以上に述べた本発明の片麻痺患者用歩行訓練装置10によれば、次に列挙する作用効果が得られる。
(1)運動機構(いわゆる装着ユニット)の荷重を、使用者(患者)に負担させない。
(2)歩行時に腰の上下起伏を妨げない。
(3)能動的な筋力補助(いわゆるパワーアシスト)を有する。
(4)膝関節の運動、3自由度回転運動を妨げない。
(5)足の長さなど個人差に適応可能。
(6)患足側の横転倒を防止する。
(7)電気的刺激機能や機械的刺激機構を有する。
【0053】
尚、
図3で4個の巻き付け具44、46、49、51を好適例として示したが、巻き付け具44、46を1個の幅広巻き付け具に統一し、巻き付け具49、51を1個の幅広巻き付け具に統一することは差し支えない。ただし、装着の安定性を考えると、4個の巻き付け具44、46、49、51である。