【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度〜平成25年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第一実施形態〕
以下、
図1〜5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
【0017】
〔燃料電池モジュールの構造〕
はじめに、本発明に係るセルスタック(燃料電池用セル)の製造方法によって製造される燃料電池モジュール(燃料電池)の構造の一態様について、
図1〜3を参照して説明する。
以下の説明では、便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定する場合があるが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はない。例えば、紙面における上方向が鉛直方向における下方向に対応してもよい。また、紙面における上下方向が鉛直方向に直交する水平方向に対応してもよい。
【0018】
図1,2に示すように、燃料電池モジュール(燃料電池)201は、例えば、複数のカートリッジ203と、これら複数のカートリッジ203を収納する圧力容器205と、を備える。また、燃料電池モジュール201は、燃料ガス供給管207と、複数の燃料ガス供給枝管207aと、を備える。さらに、燃料電池モジュール201は、燃料ガス排出管209と、複数の燃料ガス排出枝管209aと、を備える。また、燃料電池モジュール201は、酸化性ガス供給管(不図示)と、酸化性ガス供給枝管(不図示)と、を備える。また、燃料電池モジュール201は、酸化性ガス排出管(不図示)と、複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)と、を備える。
【0019】
燃料ガス供給管207は、圧力容器205の外部に設けられて、燃料電池モジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスGfを供給する燃料ガス供給部(不図示)に接続されると共に、圧力容器205の内部に配された複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。すなわち、燃料ガス供給管207は圧力容器205の内部から外部まで延びている。燃料ガス供給管207は、上記した燃料ガス供給部から供給される所定流量の燃料ガスGfを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。
燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、圧力容器205の内部に配された複数のカートリッジ203に接続されている。燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスGfを複数のカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0020】
上記した燃料ガスGfとしては、例えば、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)等の炭化水素系ガス、石炭等の炭素質原料のガス化により得られた炭化水素を含むガス、又は、これらの2以上の成分を含むガス等が利用される。
【0021】
燃料ガス排出枝管209aは、圧力容器205の内部に配されており、複数のカートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。燃料ガス排出枝管209aは、カートリッジ203を通過して排出された燃料ガスGf(排燃料ガス)を燃料ガス排出管209に導くものである。
燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、圧力容器205の内部から外部まで延びるように配置されている。燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される燃料ガスGfを圧力容器205の外部に導くものである。
【0022】
不図示の酸化性ガス供給管は、前述した燃料ガス供給管207と同様に、圧力容器205の内部から外部まで延びるように配され、酸化性ガスGoを圧力容器205の内部に導くものである。
不図示の酸化性ガス供給枝管は、前述した燃料ガス供給枝管207aと同様に、酸化性ガス供給管に接続されると共に、複数のカートリッジ203に接続される。酸化性ガス供給枝管は、酸化性ガス供給管から供給される酸化性ガスGoを複数のカートリッジ203に分岐して導くものである。複数のカートリッジ203には、燃料電池モジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスGoが供給される。
【0023】
上記した酸化性ガスGoとしては、例えば、酸化剤としての酸素を略15〜30vol%含むガス等が利用される。代表的な酸化性ガスGoとしては、空気であるが、例えば、圧力容器205の外部に排出された燃料ガスGf(排燃料ガス)と空気との混合ガスや、酸素と空気との混合ガスなどを利用してもよい。
【0024】
不図示の酸化性ガス排出枝管は、前述した燃料ガス排出枝管209aと同様に、圧力容器205の内部に配されており、複数のカートリッジ203に接続されると共に、酸化性ガス排出管に接続される。酸化性ガス供給枝管は、カートリッジ203を通過して排出された酸化性ガスGoを酸化性ガス排出管に導くものである。
不図示の酸化性ガス排出管は、前述した燃料ガス排出管209と同様に、複数の酸化性ガス排出枝管に接続され、圧力容器205の内部から外部まで延びるように配される。酸化性ガス排出管は、酸化性ガス排出枝管から導出された酸化性ガスGoを圧力容器205の外部に導くものである。
【0025】
圧力容器205は、内部の圧力が0.1MPa〜約1MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用される。このため、耐力性と酸化性ガスGo中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0026】
本実施形態においては、複数のカートリッジ203が集合化されて圧力容器205に収納される態様について説明しているが、これに限られず、例えば、カートリッジ203が集合化されずに圧力容器205内に収納される態様とすることも可能である。
【0027】
カートリッジ203は、
図2に示すように、複数のセルスタック(燃料電池用セル)101と、発電室215と、燃料ガス供給室217と、燃料ガス排出室219と、酸化性ガス供給室221と、酸化性ガス排出室223と、を備える。また、カートリッジ203は、上部管板225aと、下部管板225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bと、を備える。
【0028】
本実施形態において、カートリッジ203は、燃料ガス供給室217、燃料ガス排出室219、酸化性ガス供給室221及び酸化性ガス排出室223が、
図2のように配置されることで、燃料ガスGfと酸化性ガスGoとが後述するセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造(
図3参照)となっているが、必ずしもこの必要はない。カートリッジ203は、例えば、燃料ガスGfと酸化性ガスGoとがセルスタック101の内側と外側とを互いに平行して流れる、あるいは、燃料ガスGfがセルスタック101の長手方向に流れると共に、酸化性ガスGoがセルスタック101の長手方向と直交する方向へ流れる構造となっていてもよい。
【0029】
セルスタック101について
図3を参照して説明する。以下の説明では、セルスタック101として円筒形(円筒形セルスタック)を例示するが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセル(燃料電池用セル)であってもよい。
図3に示すように、セルスタック101は、円筒形状の基体管(支持体)103と、基体管103の外周面(表面)に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107と、を備える。燃料電池セル105は、基体管103の外周面から燃料極109、固体電解質(電解質)111及び空気極113を順次積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の燃料電池セル105のうち、基体管103の軸方向において最も端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を備える。
【0030】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、Y
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、MgAl
2O
4等のいずれかである。基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持するものである。また、基体管103は、その内周側に供給される燃料ガスGfを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させるものである。
【0031】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成されるものであり、例えば、Ni/YSZ等である。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスGfに対して触媒として作用する。触媒としての作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスGf、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質する作用である。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、後述する空気極113において生成され、固体電解質111を介して供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するものである。燃料電池セル105では、上記した反応過程において酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0032】
固体電解質111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するものであり、YSZが主として用いられる。固体電解質111は、空気極113で生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極109に移動させるものである。
【0033】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又は、LaCoO
3系酸化物で構成される。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガスGo中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成するものである。
【0034】
インターコネクタ107は、例えば、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成されている。インターコネクタ107は、燃料ガスGfと酸化性ガスGoとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。インターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極109とを電気的に接続する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105同士を直列に接続するものである。
【0035】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及び、セルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、例えば、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で構成されている。リード膜115は、インターコネクタ107により直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0036】
図2に示すように、カートリッジ203の発電室215は、後述する上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。発電室215は、例えば、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間において断熱材(不図示)等によって囲まれる領域である。発電室215は、セルスタック101の燃料電池セル105が配置され、燃料ガスGfと酸化性ガスGoとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、発電室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度は、燃料電池モジュール201の定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気となる。
【0037】
燃料ガス供給室217は、カートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域である。燃料ガス供給室217は、上部ケーシング229aに備える燃料ガス供給孔231aによって、燃料ガス供給枝管207aと連通されている。また、燃料ガス供給室217には、セルスタック101の長手方向の一方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放するように配置されている。燃料ガス供給室217は、燃料ガス供給枝管207aから燃料ガス供給孔231aを介して供給される燃料ガスGfを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させるものである。
【0038】
燃料ガス排出室219は、カートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域である。燃料ガス排出室219は、下部ケーシング229bに備える燃料ガス排出孔231bによって、燃料ガス排出枝管209aと連通されている。また、燃料ガス排出室219には、セルスタック101の長手方向の他方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放するように配置されている。燃料ガス排出室219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出室219に供給される燃料ガスGf(排燃料ガス)を集約し、燃料ガス排出孔231bを介して燃料ガス排出枝管209aに導くものである。
【0039】
酸化性ガス供給室221は、カートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域である。酸化性ガス供給室221は、下部ケーシング229bに備える酸化性ガス供給孔233aによって、不図示の酸化性ガス供給枝管と連通されている。酸化性ガス供給室221は、不図示の酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスGoを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導くものである。
【0040】
酸化性ガス排出室223は、カートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域である。酸化性ガス排出室223は、上部ケーシング229aに備える酸化性ガス排出孔233bによって、不図示の酸化性ガス排出枝管と連通されている。酸化性ガス排出室223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出室223に供給される酸化性ガスGo(排酸化性ガス)を、酸化性ガス排出孔233bを介して不図示の酸化性ガス排出枝管に導くものである。
【0041】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板部(
図2において燃料ガス供給孔231aが形成された板部)と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板部と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板部(
図2において酸化性ガス排出孔233bが形成された板部)に固定されている。上部管板225aは、カートリッジ203に備えるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部を、気密部材237としてのシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給室217と酸化性ガス排出室223とを隔離するものである。
【0042】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板部(
図2において燃料ガス排出孔231bが形成された板部)と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板部と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板部(
図2において酸化性ガス供給孔233aが形成された板部)に固定されている。下部管板225bは、カートリッジ203に備えるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221とを隔離するものである。
【0043】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板部と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板部に固定されている。また、上部断熱体227aには、カートリッジ203に備えるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔にはセルスタック101が挿通されている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、該内面に対向するセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを有する。
【0044】
上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出室223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気の高温化よる強度低下や、酸化性ガスGo中に含まれる酸化剤による腐食の増加を抑制する。上部管板225a等は、インコネルなどの高温耐久性のある金属材料からなり、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて上部管板225a等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された酸化性ガスGo(排酸化性ガス)を、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出室223に導くものである。
【0045】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板部と下部管板225bとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板部に固定されている。また、下部断熱体227bには、カートリッジ203に備えるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔にはセルスタック101が挿通されている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、該内面に対向するセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを有する。
【0046】
下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給室221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気の高温化による強度低下や、酸化性ガスGo中に含まれる酸化剤による腐食の増加を抑制する。下部管板225b等は、インコネルなどの高温耐久性のある金属材料からなり、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給室221に供給される酸化性ガスGoを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
【0047】
上記したカートリッジ203の構造では、燃料ガスGfと酸化性ガスGoとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる。これにより、発電室215を通過した酸化性ガスGo(排酸化性ガス)は、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスGfとの間で熱交換がなされ、金属材料からなる上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室223に供給される。また、燃料ガスGfは、発電室215から排出される酸化性ガスGo(排酸化性ガス)との熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスGfを発電室215に供給することができる。
【0048】
また、カートリッジ203の構造では、燃料ガスGfと酸化性ガスGoとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる。これにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した燃料ガスGf(排燃料ガス)は、発電室215に供給される酸化性ガスGoとの間で熱交換がなされ、金属材料からなる下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出室219に供給される。また、酸化性ガスGoは、発電室215から排出される燃料ガスGf(排燃料ガス)との熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスGoを発電室215に供給することができる。
【0049】
さらに、カートリッジ203の構造では、発電室215で発電された直流電力が、複数の燃料電池セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、カートリッジ203の集電棒(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各カートリッジ203の外部へと取り出される。上記した集電棒によってカートリッジ203の外部に導出された電力は、各カートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、燃料電池モジュール201の外部へと導出されて、図示しないインバータなどにより所定の交流電力へと変換されて、電力負荷へと供給される。
【0050】
〔セルスタックの製造方法〕
次に、本発明に係るセルスタックの製造方法の第一実施形態について、主に
図4,5を参照して説明する。
本実施形態の製造方法では、上記したセルスタック101(
図3参照)を製造するために、
図4に示すように、成膜工程S1、焼成工程S2、検査工程S3、空気極形成工程S6を順次実施する。また、本実施形態の製造方法では、検査工程S3での検査結果に基づき、必要に応じて除去工程S4及び充填工程S5を順次実施する。
【0051】
セルスタック101を製造する際には、はじめに成膜工程S1を実施する。成膜工程S1では、基体管(支持体)103の外周面(表面)に、燃料極109を印刷技術等により成膜する。さらに、本実施形態の成膜工程S1では、燃料極109を成膜した後に、固体電解質111及びインターコネクタ107の各層を印刷技術等により順次成膜する。以下の説明では、成膜工程S1において成膜された燃料極109、固体電解質111、インターコネクタ107を「成膜体」と呼ぶことがある。
【0052】
成膜工程S1後には、成膜体を焼成する焼成工程S2を実施した上で、欠陥を検査する検査工程S3を実施する。
ここで対象となる欠陥とは、少なくとも焼成工程S2の実施後に基体管103の外面側に現れるものであり、燃料極109の内部のみや内面のみに発生するものは、燃料電池モジュール201の機能に与える影響が少なく、今回の欠陥の対象にしないものである。欠陥には、例えば、印刷不良などによる成膜形成不良によって燃料極109と空気極113とが直接接触して短絡してしまう欠陥や、
図5(a)に示すように、固体電解質111を貫通して燃料極109側の燃料ガス雰囲気と空気極113側の空気雰囲気との気密性が損なわれる亀裂401がある。
【0053】
亀裂401は、基体管103の外周部から燃料極109及び固体電解質111を貫通して基体管103の外面側に現れるものである。亀裂401の主な発生要因は、基体管103の原料(CSZ等)に混入した異物である。異物は、例えば粒径の大きい結晶化した粒子である。代表的な異物には、例えば、単体のジルコニア(未安定なジルコニア)やアルミナ(酸化アルミ)などがある。異物自体、あるいは、異物と基体管103の原料中の成分との反応で生成された物質は、基体管103の原料と熱膨張係数が異なる。このため、焼成工程S2を実施した際には、基体管103の外周部に亀裂401が発生すると共に、該亀裂401が燃料極109、固体電解質111に伝播する。亀裂401は、
図5(a)において基体管103の内周面に開口していないが、例えば開口する場合もある。
【0054】
上記した欠陥は、例えば基体管103の外面側に欠陥特有の模様として現れる場合があるため、検査工程S3では、例えば目視による検査を実施することが可能である。また、欠陥が亀裂401である場合、検査工程S3では、浸透探傷検査(PT:penetrant testing)や亀裂401のバブルポイント検査を実施してもよい。バブルポイント検査は、例えば焼成工程S2後の基体管103をエタノール等の液体に浸し、基体管103の内側に空気圧をかけた際に、基体管103の外側に気泡(バブル)が発生するか否かを確認することで、亀裂401の有無を検査する方法である。これらの検査方法であれば、目視が困難な亀裂401を発見することも可能である。
【0055】
上記検査工程S3後には、該検査工程S3での検査結果に基づき、欠陥の有無を判断する(ステップS31)。検査結果において「欠陥無し」と判断された場合には、後述する空気極形成工程S6を実施する。検査結果において「欠陥有り」と判断された場合には、除去工程S4及び充填工程S5を順次実施する。
【0056】
除去工程S4では、検査工程S3での検査結果に基づいて、例えば
図5(b)に示すように、欠陥部分(欠陥(亀裂401)及びその周囲部分)を除去する。
図5(a)における符号403Pは、除去工程S4において除去される予定領域(除去予定領域)を示している。欠陥部分を除去する方法には、例えばドリルによる穿孔や表面研磨がある。除去工程S4では、各種除去方法を選択的に一つだけ実施してもよいし、適宜組み合わせて実施してもよい。
除去工程S4後の状態では、
図5(b)に示すように、成膜体の表面から窪む凹部が除去部分403として形成される。除去工程S4では、後述する充填工程S5を考慮して、除去部分403(凹部)の内面の表面粗さが粗くなるように欠陥部分を除去するとよい。この内面の表面粗さは、成膜体の表面よりも粗くして、充填剤の保持力を高くすると好ましい。
【0057】
充填工程S5では、
図5(c)に示すように、除去部分403に電気的な絶縁性を有する充填剤405を充填する。充填剤405は、除去部分403に充填する際に流動性を有し、焼成によって固化するものである。充填剤405は、成膜体の材料と一致するあるいは近い熱膨張係数を有する(成膜体との親和性が高い)とよい。また、充填剤405は、燃料極109側の燃料ガス雰囲気や空気極113側の空気雰囲気を通しにくい気密性を有するとよい。この気密性は、少なくとも充填剤405を焼成することで得られればよい。また、充填剤405は、成膜体の材料と化学的に反応しない安定性を有するとよい。このような充填剤405には、例えば、Al
2O
3系接着剤、MgO系接着剤、YSZ系接着剤がある。
【0058】
充填工程S5では、充填剤405を除去部分403に充填した後、自然乾燥させる。このため、除去部分403に充填する充填剤405の量は、充填剤405を自然乾燥させた状態で、充填剤405と成膜体との段差が十分に小さくなるように設定されることが好ましく、
図5(c)に例示するように、段差が無い(充填剤405が成膜体の表面と同一面をなす)ように設定されることがさらに好ましい。なお、自然乾燥した充填剤405は、後述する空気極形成工程S6において空気極113と一体に焼成される。
充填工程S5後の状態では、充填剤405が除去部分403(凹部)の内面に十分な接着強度で接着されるとよい。この接着強度は、例えば、前述した除去工程S4において除去部分403(凹部)の内面の表面粗さが予め粗く設定されることで得ることが可能である。
【0059】
空気極形成工程S6は、上記した充填工程S5後、あるいは、検査工程S3後に実施される。空気極形成工程S6では、空気極113を形成する。空気極形成工程S6では、空気極113を成膜体上に成膜し、その後、空気極113を焼成する。この焼成の際には、前述した充填剤405も焼成される。この空気極形成工程S6が充填工程S5後に実施される場合、空気極113は、
図5(d)に例示するように、除去部分403に充填された充填剤405を覆うことがある。
上記空気極形成工程S6が終了することで、本実施形態のセルスタック101の製造が完了する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のセルスタックの製造方法によれば、空気極113を形成する前に焼成工程S2を実施することで、焼成前の状態では発見し難い欠陥(焼成によって発生する成膜体の亀裂や印刷不良等の欠陥)が成膜体の表面に現れやすくなる。このため、検査工程S3では、欠陥を容易に発見することが可能となり、セルスタック101の製造途中において除去工程S4及び充填工程S5を実施してセルスタックの完成後に発現する欠陥を確実に取り除くことができる。したがって、セルスタック101の歩留まり低下を防ぐことができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0061】
さらに、本実施形態の製造方法では、成膜工程S1において、燃料極109、固体電解質111及びインターコネクタ107を順次成膜することで、焼成工程S2において燃料極109、固体電解質111及びインターコネクタ107を一括して焼成する場合であっても、成膜体に発生する欠陥に対する除去工程、充填工程を複数繰り返すことなく一回で完了できる。したがって、セルスタック101の製造効率向上を図ることができる。
【0062】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について、
図6を参照して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
本実施形態のセルスタックの製造方法では、第一実施形態と同様に、成膜工程S1、焼成工程S2、検査工程S3、除去工程S4、充填工程S5、空気極形成工程S6を適宜実施する。
ただし、本実施形態の成膜工程S1では、燃料極109を成膜する第一成膜工程と、少なくとも固体電解質111を燃料極109上に成膜する第二成膜工程と、を順番に実施する。また、本実施形態の製造方法では、除去工程S4及び充填工程S5が、第一成膜工程及び第二成膜工程の後にそれぞれ実施される。
【0064】
本実施形態では、第一成膜工程後に、焼成工程S2、検査工程S3が実施されるため、検査工程S3では、燃料極109における欠陥を検査する。燃料極109に欠陥が発見された場合には、除去工程S4において燃料極109における欠陥部分を除去し、
図6に示すように、充填工程S5において欠陥の除去部分403Aに第一充填剤405Aを充填し、自然乾燥させる。第一充填剤405Aは、第一実施形態の充填剤405と同様であってよいが、特に、燃料極109の材料と一致する熱膨張係数を有する(燃料極109との親和性が高い)とよい。また、第一充填剤405Aは、特に、燃料極109の材料と化学的に反応しない安定性を有するとよい。
【0065】
第二成膜工程は、上記した燃料極109に対する焼成工程S2、検査工程S3、除去工程S4、充填工程S5の後に実施される。第二成膜工程では、例えば、固体電解質111のみが成膜されてもよいが、固体電解質111及びインターコネクタ107が成膜されてもよい。以下では、第二成膜工程後の各工程を、固体電解質111についてのみ説明するが、インターコネクタ107についても同様である。
【0066】
第二成膜工程後には、焼成工程S2が再度実施される。ここで、第一成膜工程から第二成膜工程までの間に、充填工程S5が実施された場合、第二成膜工程後の焼成工程S2では、第一充填剤405Aが固体電解質111と一体に焼成される。
また、第二成膜工程後には、上記した焼成工程S2に続けて検査工程S3が再度実施されるため、検査工程S3では、固体電解質111における欠陥を検査する。固体電解質111に欠陥が発見された場合には、除去工程S4において固体電解質111における欠陥部分を除去し、
図6に示すように、充填工程S5において欠陥の除去部分403Bに第二充填剤405Bを充填する。
図6では、固体電解質111における除去部分403Bが燃料極109における除去部分403A上に重なっているが、重ならない場合もある。第二充填剤405Bは、第一実施形態の充填剤405と同様であればよいが、特に、固体電解質111の材料と一致する熱膨張係数を有する(固体電解質111との親和性が高い)とよい。また、第二充填剤405Bは、固体電解質111の材料と化学的に反応しない安定性を有するとよい。
充填工程S5では、第二充填剤405Bを充填した後、自然乾燥させる。この第二充填剤405Bは、例えば第一実施形態の場合と同様に、空気極113と一体に焼成される。
【0067】
本実施形態のセルスタックの製造方法によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のセルスタックの製造方法によれば、燃料極109及び固体電解質111の形成が個別に行われるため、各充填工程S5において燃料極109、固体電解質111の各層に適した充填剤405A,405Bを選択することができる。これにより、空気極形成工程S6において空気極113を焼成する際に、燃料極109、固体電解質111と充填剤405A,405Bとの間に欠陥が生じることを確実に防止でき、より信頼性の高いセルスタック101及びこれを備える燃料電池モジュール201を提供することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、第二実施形態の製造方法の第二成膜工程において、固体電解質111のみを成膜する場合には、固体電解質111に対する焼成工程S2、検査工程S3、除去工程S4、充填工程S5の後に、インターコネクタ107を成膜する第三成膜工程が実施され、第三成膜工程後に、インターコネクタ107に対する焼成工程S2、検査工程S3、除去工程S4、充填工程S5が実施されればよい。第三成膜工程が実施される場合、第二成膜工程後の充填工程S5で充填される第二充填剤405Bは、第一充填剤405Aの場合と同様に、第三成膜工程後の焼成工程においてインターコネクタ107と一体に焼成される。また、第三成膜工程後の充填工程S5で充填される充填剤(第三充填剤)は、第一実施形態の場合と同様に、空気極113と一体に焼成される。
【0069】
さらに、本発明の燃料電池は、上記実施形態の燃料電池モジュール201に限らず、少なくともセルスタック101を含む構成であればよい。したがって、本発明の燃料電池は、例えば上記実施形態におけるカートリッジ203であってもよい。
【0070】
また、本発明のセルスタックの製造方法は、円筒形のセルスタック101に適用されることに限らず、例えば平板形のセル(燃料電池用セル)にも適用可能である。円筒形のセルスタック101では、基体管103を支持体として燃料極109、固体電解質111、空気極113が成膜されるが、平板形のセルでは、例えば固体電解質を支持体とすればよい。