特許第6232628号(P6232628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232628
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】不燃性膜材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20171113BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B32B5/02 B
   B32B27/18 A
   B32B27/18 B
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-18(P2014-18)
(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公開番号】特開2015-128824(P2015-128824A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五味渕 保
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−093280(JP,A)
【文献】 特開2007−183562(JP,A)
【文献】 特表2012−506794(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0287265(US,A1)
【文献】 特開2007−091486(JP,A)
【文献】 特開昭54−003180(JP,A)
【文献】 特開2008−179923(JP,A)
【文献】 特開2008−144305(JP,A)
【文献】 特開2015−28223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D06M 10/00−11/84
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなる基布と、少なくとも1層の熱線遮蔽層とを有する可撓性シートであって、前記熱線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、平均一次粒子径0.01〜0.20μmの導電性金属酸化物微粒子、および、平均粒子径0.9〜2.2μmかつ波長589.3nmに対する屈折率が1.50〜1.70の透明無色無機粒子を含み、前記熱線遮蔽層が、前記導電性金属酸化物微粒子と前記透明無色無機粒子とを合わせて3〜20質量%含み、前記熱線遮蔽層中において、前記導電性金属酸化物微粒子と前記透明無色無機粒子の質量比が1:2〜1:10であることを特徴とする不燃性膜材。
【請求項2】
前記導電性金属酸化物微粒子が、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、および、ガリウムドープ酸化亜鉛から選ばれた1種または2種以上からなる、請求項1に記載の不燃性膜材。
【請求項3】
前記無機繊維が、ガラス繊維、および、シリカ繊維から選ばれる1種以上を含み、前記基布が空隙率0〜5%の編布または織布である、請求項1または2に記載の不燃性膜材。
【請求項4】
前記透明無色無機粒子が、硫酸バリウムおよび、炭酸カルシウムから選ばれた1種以上である、請求項1または3いずれか1項に記載の不燃性膜材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料として要求される不燃性と防水性を有し、高い透光性を求められる用途や、カラフルな彩色を求められる用途にも応用可能であり、かつ、高周波ウェルダーによる熱融着縫製可能な可撓性の膜材に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、火災発生時に、燃焼物から放射される熱線を反射して、膜材の温度上昇を抑制し、膜材自体からの発火および膜材への引火を遅延させることで、火災の延焼を遅らせることができる不燃性膜材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火地区、準防火地区に設置されるテント倉庫等膜構造建築物には、建築基準法に基づく不燃性膜材が用いられている。不燃性膜材としては、例えば、ガラス繊維からなる織布を基材として、可撓性の樹脂層をコーティングした膜材などが使用されており(例えば、特許文献1参照)、コーティング層には、通常、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、モリブデン化合物などの無機難燃剤を多量に含み、更に、樹脂層中の可燃物の割合を低くする為に、無機充填剤も多量に含まれている。その為、これらの不燃性膜材は一般に透光性が低く、これを用いた膜構造建築物内部では、日中でも照明が必要となるという問題があった。また、最近では、オーニングやパーティションにも不燃性膜材を使用する動きがあるが、従来の膜構造建築物向けの不燃性膜材は、上述の様に、コーティング層に無機難燃剤や無機充填剤を多量に含むため可視光の散乱により、顔料を加えない状態で既に白い外観を有するため、膜材の色相としては白、アイボリー、明るいグレー等の白系統、あるいは、黒顔料を含む濃色系に限られてしまい、カラフルな色調を求められるオーニングや、透光性を求められるパーティションには適していなかった。
【0003】
これに対して、ガラス繊維からなる基材の全面に、芳香族リン酸エステル化合物を40〜80質量%含む軟質塩化ビニル樹脂組成物による樹脂含浸被覆層を設けることで、不燃性で高透光の膜材を提供する提案がなされている。(例えば、特許文献2参照)この方法によれば、透明に近い高透光の不燃性膜材を提供する事が可能となり、樹脂層には無機難燃剤や無機充填剤を全く、あるいはほとんど含まないため、彩色も自由に行う事ができる。しかし、被覆樹脂層が多量に可塑剤を含むため樹脂強度が弱く、高周波ウェルダーなどで熱融着した縫製部の強度が不足する懼れがあるため、強度を必要とする膜構造建築物の屋根部や壁面を構成する材料として用いることができないものであった。
【0004】
また、塩化ビニル樹脂に無機難燃剤と黒色の赤外線反射顔料を配合したシートにより、火災発生時の熱を散乱して、シートに着火するまでの時間を延長し、延焼を長時間防いで火炎伝播を抑制する試みも提案されている。(例えば、特許文献3参照)この方法を不燃性膜材に応用すれば、少量の無機難燃剤を加えるだけで不燃性を示すことのできる膜材が得られることが期待できる。しかしながら、ここで用いる赤外線反射顔料は黒色であり、採光性や彩色性をもたらすものではなかった。
【0005】
近赤外線を散乱して遮熱性を示し、可視光線を透過する顔料として、平均粒子径1μm程度の粗粒酸化チタンを用いる方法が知られている。(例えば、特許文献4参照)この粗粒酸化チタンを不燃性膜材に応用すれば、選択的に可視光線を透過して採光性を有し、かつ、赤外線を反射して不燃性に優れた膜材を得られる事が期待できる。しかし、酸化チタンは非常に屈折率が高く、樹脂中に分散した場合の光の散乱が大きすぎるため、可視領域においても色相への影響は避けがたく、顔料を加えて彩色する場合にカラフルな色彩を得る事ができない問題がある。
【0006】
可視光線を透過する一方熱線を反射する物質としては、スズドープ酸化インジウムやアンチモンドープ酸化スズなどの導電性金属酸化物も知られている。これらは、可視光の波長よりも充分に小さな粒子として樹脂に分散させることで、可視光の透過を妨げずに、熱線を反射する事ができる。これを上述の粗粒酸化チタンの変わりに用いれば、高透光の膜材を得られるばかりでなく、カラフルな彩色の不燃性膜材を得ることも可能となる。しかし、不燃性に寄与する程度に充分に熱線を反射するためには、導電性金属酸化物微粒子を樹脂中に多量に分散させる必要がある一方、導電性金属酸化物微粒子には可視領域に多少の吸収があり、これを多量に加えると樹脂層に着色して色相への影響が大きくなる問題があった。また、導電性金属酸化物は一般に高価であり、テントや日除け用の膜材に多量に用いることはコスト面で不利である。更に、導電性金属酸化物微粒子を多量に含む樹脂層は導電性を示すため、高周波ウェルダーによる縫製時にスパークを生じ易い問題も有している。
【0007】
以上の様に、建築材料として要求される不燃性を有し、防水性を有し、高い透光性を求められる用途や、彩色を求められる用途にも応用可能であり、かつ、高周波ウェルダーによる熱融着縫製可能な可撓性の不燃性膜材はこれまで提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−73973号公報
【特許文献2】特開2010−052370号公報
【特許文献3】特開2009−120655号公報
【特許文献4】特開2007−055177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、可視領域の光線を透過して、採光性に優れ、あるいは顔料添加による彩色が可能であり、高周波ウェルダー縫製が可能であり、不燃性を有し、しかも、火災時の燃焼物から放射される熱線による自らの温度上昇を抑制して延焼を長時間防ぐことができ、特にテント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、および間仕切り膜などに好適に用いられる可撓性の不燃性膜材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決する為鋭意検討を行った結果、無機繊維からなる基布と樹脂被覆層を有する膜材において、少なくとも1層の樹脂被覆層を熱線遮蔽層とし、その熱線遮蔽層が、可視光透過性と熱線の反射性を有する導電性金属酸化物微粒子と、可視光領域から赤外線領域にかけて吸収が少なく特定の範囲の屈折率を有する透明無色無色無機粒子とを、熱可塑性樹脂中に分散して含み、その際、それぞれの粒子径の組み合わせ、配合比、および添加量を特定の範囲とすることで、膜材の採光性あるいは彩色性を損なわずに、延焼を長時間防ぐことのできる不燃性膜材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の不燃性膜材は、無機繊維からなる基布と、少なくとも1層の熱線遮蔽層とを有する可撓性シートであって、前記熱線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、平均一次粒子径0.01〜0.20μmの導電性金属酸化物微粒子、および、平均粒子径0.9〜2.2μmかつ波長589.3nmに対する屈折率が1.50〜1.70の透明無色無機粒子を含み、前記熱線遮蔽層が、前記導電性金属酸化物微粒子と前記透明無色無機粒子とを合わせて3〜20質量%含み、前記熱線遮蔽層中において、前記導電性金属酸化物微粒子と前記透明無色無機粒子の質量比が1:2〜1:10であることを特徴とする。
【0012】
本発明の不燃性膜材において、前記導電性金属酸化物微粒子が、スズドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、タンタルドープ酸化スズ粒子、リンドープ酸化スズ粒子、ニオブドープ酸化チタン粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子、および、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子から選ばれた1種または2種以上からなることが好ましい。
【0013】
本発明の不燃性膜材において、前記無機繊維が、ガラス繊維、および、シリカ繊維から選ばれる1種以上を含み、前記基布が空隙率0〜5%の編布または織布であることが好ましい。
【0014】
本発明の不燃性膜材において、前記透明無色無機粒子が、硫酸バリウムおよび、炭酸カルシウム、から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可視領域の光線を透過して採光性に優れた不燃性膜材、あるいは鮮やかな色彩の彩色をほどこされた不燃性膜材を提供する事が可能となる。本発明の不燃性膜材は、高周波ウェルダー縫製が可能であり、しかも、火災時の燃焼物から放射される熱線による自らの温度上昇を抑制して延焼を長時間防ぐことができるため、防火地区、準防火地区に設置するテント倉庫、イベント向けテントなどの膜構造建築物や、オーニング、パーティションなどに好適に用いることができる。本発明の不燃性膜材を用いれば、火災発生時に延焼を遅らせることができ、避難のための時間をより多く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の不燃性膜材の一例を示す図
図2】本発明の不燃性膜材の一例を示す図
図3】実施例・比較例において高周波ウェルダー縫製性を評価した試料を示す図
図4】実施例・比較例において縫製部強度の評価方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の不燃性膜材は、無機繊維からなる基布と、その基布の一方の面あるいは両面を被覆する樹脂層を有する可撓性シートであり、樹脂層の内少なくとも1層が熱線遮蔽層である。基布に対する樹脂層の形成方法としては、熱線遮蔽層形成用樹脂加工液(ペーストゾル、樹脂溶液、樹脂分散液)を用いるディッピング加工(基布への両面加工)、及びコーティング加工(基布への片面加工、または両面加工)によるもの、カレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された熱線遮蔽層用樹脂フィルム又は樹脂シートを、基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、ディッピング加工またはコーティング加工した樹脂層上に熱線遮蔽層用樹脂フィルム又は樹脂シートをラミネートする方法、および、ディッピング加工またはコーティング加工した樹脂層上に熱線遮蔽層用樹脂加工液(ペーストゾル、樹脂溶液、樹脂分散液)をコーティング加工(基布への片面加工、または両面加工)により積層する方法、等を例示することができる。本発明において、形成される樹脂層のうち少なくとも1層が熱線遮蔽層であればよいが、実際の使用状況によって、不燃性膜材のどちらの面側で火災が発生するか限定できる状況である場合を除き、基布に対して両面側にそれぞれ、少なくとも1層の熱線遮蔽層を有することが好ましい。
【0018】
本発明の不燃性膜材において、基布は、無機フィラメント束を隙間無く配置編織して得られる織物、または編物である。無機フィラメント束は、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維などの、繊度138〜2223dtex(デシテックス)、特に277〜1500dtexの無機長繊維を、フィラメント数3〜600本で集束してなる糸条であり、これらは撚りを掛けて、あるいは撚りを掛けずに単独使用または混用、混紡した、断面が円形、楕円、または扁平の糸条である。これら無機フィラメント束による織物は、平織、綾織、繻子織、模紗織など公知の織布が挙げられるが、中でも特に平織織布が、得られる不燃性内照式看板の経緯物性バランスに優れ好ましく、編物としてはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましい。これら編織物は、糸条間の間隙を密にして平行に多数配置した経糸、及び糸条間の間隙を密にして平行に多数配置した緯糸を含んで構成された、経糸と緯糸との織交点に生じる空隙の和が0〜5%の空隙率である高密度の編布または織布であることが好ましい。本発明において基布には、必要に応じて、繊維の収束剤を除去するために精練処理(酵素や過酸化物水溶液による処理、あるいはヒートクリーニングなど)を行っても良く、樹脂との接着性を付与する為にシランカップリング処理を行っても良い。また、膜構造建築物を構成した際に、基布の繊維束内に雨水が浸透するのを防ぐため、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、およびパラフィンなどによる撥水処理を行っても良い。
【0019】
本発明において熱線遮蔽層は、熱可塑性樹脂と、導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子とを、必須として含むものである。
【0020】
本発明において、熱線遮蔽層に含まれる熱可塑性樹脂には特に限定は無く、例えば軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂など、可視光領域から赤外線領域までの光線に対して比較的吸収が少なく、可撓性のある熱可塑性樹脂が好ましく用いられ、これらから単独で、あるいは2種以上をブレンドして用いることができる。これらの内特に軟質塩化ビニル樹脂は、導電性金属酸化物微粒子や透明無色無機粒子を分散させ易く、加工性に優れ、高周波ウェルダー適性も優れている為、特に好ましく用いられる。
【0021】
本発明において熱線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、二酸化スズ(SnO)、タンタルドープ酸化スズ(TaTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオブドープ酸化チタン(NbTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GaZO)、亜鉛−アンチモン複合酸化物、一酸化スズ(SnO)、および酸化銅(I)(CuO)などからなる微粒子から1種あるいは2種以上適宜選択して用いることができ、これらの内、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、および、ガリウムドープ酸化亜鉛は、可視領域の光の吸収が比較的少ないため、採光性や彩色性を阻害せず、しかも高い熱線遮蔽性が得られることから、特に好ましく用いられる。導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は、0.01〜0.20μmであることが好ましく、0.02〜0.15μmである事がより好ましい。(ここで、平均一次粒子径とは、粒子のBET比表面積と真比重から換算した粒子径を示す。)導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径がこの範囲であることで、樹脂中に分散させても可視光の散乱が抑えられて採光性および彩色性が損なわれず、また、少量の添加では導電性を示し難く、高周波ウェルダーでの縫製作業上の危険を回避できる。導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径が0.01μm未満であると、樹脂への均一な分散が困難となり、却って凝集して採光性および彩色性を損なうことがある。一方、平均一次粒子径が0.20μmを超えると、可視光領域の光を散乱して採光性および彩色性が損なわれたり、樹脂層中で粒子同士が接触し易くなって導電性を示し、高周波ウェルダーによる縫製が困難になる事がある。また、本発明において導電性金属酸化物微粒子は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、および酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種または2種以上を含む表面被覆剤により被覆されていても良い。なお、本発明において表面被覆された導電性金属酸化物微粒子が用いられる場合、平均一次粒子径や質量については、表面被覆を含む値が用いられる。
【0022】
火災時の燃焼温度は、最高1200℃に達するといわれ、この温度に達した物体から放射される熱線(赤外線)のピーク波長は約2μmである。また、樹脂の発火温度は一般に400〜500℃であり、一例としてポリ塩化ビニルの発火温度である450℃の場合、熱線のピーク波長は約4μmである。すなわち、概ね2〜4μmの範囲の熱線を反射する事ができれば、火災時の不燃性膜材の温度上昇を抑制して、延焼を遅延させることができることになる。上述の導電性金属酸化物微粒子はこの領域の熱線を反射する特性を有しているが、単独使用で延焼を遅延させるためには多量の添加が必要が必要である。しかし、導電性金属酸化物微粒子を多量に添加すると採光性および彩色性を損なうことがある。また、多量に含むことで導電性を示し、高周波ウェルダーでの縫製作業上の危険を生じることがある。
【0023】
粒子は、その粒子径の2倍の波長の光を良く散乱することが知られており、2〜4μmの範囲の熱線を散乱させるためには、概ね1.0〜2.0μmの粒子を加えればよいことになる。本発明においては、上述の導電性金属酸化物微粒子を、それを含む樹脂層が導電性を示さない程度に加え、更に、熱線を散乱させる粒子を加えて、延焼を遅延させる効果を得る。熱線を散乱させる粒子としては、可視光から赤外線にかけての吸収が少なく透明かつ無色で、波長589.3nmの光に対する屈折率が1.50〜1.70である必要があり、更に火災発生時に高温に曝されても変質しない無機粒子であることが好ましい。その条件を満たすものとして、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラスなどからなる粒子が例示される。透明無色無機粒子がこの範囲の屈折率を有することで、可視領域における熱可塑性樹脂との屈折率差を比較的小さくすることができるため、可視領域での光の拡散が抑制されて採光性が阻害されず、また、顔料を用いた彩色も阻害されない。透明無色無機粒子の屈折率が1.50未満、あるいは1.70を超える場合には、可視領域での光の拡散が大きくなり、採光性あるいは彩色性を阻害することがある。本発明において、上述の無機物の内、硫酸バリウム、および、炭酸カルシウムは、入手の容易さ、コスト、取扱い性などの面から、特に好ましく用いられる。硫酸バリウムとしては、ひ性硫酸バリウム(バライト粉)、沈降性硫酸バリウムのいずれを用いても良い。また、炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、および、沈降炭酸カルシウムのいずれを用いても良い。
【0024】
透明無色無機粒子の平均粒子径は、0.9〜2.2μmであることが好ましく、1.0〜1.8μmであることがより好ましい。(ここで、透明無色無機粒子の平均粒子径とは、レーザー回折粒子径分布測定装置で測定した粒子径分布から球体積相当径の平均として求めた値を示す。)透明無色無機粒子の平均粒子径がこの範囲にあることで、火災時に燃焼物あるいは燃焼によって加熱された物体から放射される熱線を散乱により反射して、不燃性膜材の温度上昇を抑止し、樹脂層からの可燃性ガスの発生を遅らせて、延焼を遅延させる事ができる。また、透明無色無機粒子の粒子径が可視光線の波長よりも充分に大きい為、可視光線に対しては透明無色無機粒子の粒子径に依存した散乱が起こり難く、一方、熱可塑性樹脂と透明無色無機粒子との界面を可視光線が透過する際の屈折による拡散が支配的になる。その際、熱可塑性樹脂と透明無色無機粒子の屈折率差が小さいので、可視光は拡散しつつも樹脂層を透過してほとんど反射されないため、採光性や彩色性がほとんど妨げられない。透明無色無機粒子の平均粒子径が0.9μm未満では、2〜4μmの範囲の熱線の散乱が充分に行われないだけでなく、可視光線が散乱されて、採光性や彩色性が損なわれることがある。透明無色無機粒子の平均粒子径が2.2μmを超えると、2〜4μmの範囲の熱線の散乱が充分に行えないことがある。
【0025】
本発明において、透明無色無機粒子は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、および酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、脂肪酸および樹脂酸などの有機物、のいずれか1種以上により表面被覆されたものを用いてもよい。透明無色無機粒子が、これらの物質により表面被覆されていることで、熱可塑性樹脂への分散性が良好となって採光性あるいは彩色性が得やすくなり、火災発生時の熱線を散乱させやすくなり、更に、熱可塑性樹脂との接着性が付与されて熱線遮蔽層の樹脂強度が増して折り曲げや摩擦による白化を生じ難くすることができる。なお、本発明において表面被覆された透明無色無機粒子が用いられる場合、平均粒子径や質量については、表面被覆を含む値が用いられる。
【0026】
本発明において、導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径および透明無色無機粒子の平均粒子径を上述の範囲とし、更に熱線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子の質量比を1:2〜1:10とすることで、熱線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子の量が合わせて3〜20質量%と比較的少なくても、火災時の熱線を反射して延焼を遅らせることができ、優れた採光性を得ることができ、または、顔料を加えた時の彩色性を阻害しない。さらに、導電性金属酸化物微粒子よりも透明無色無機粒子の量が多いため、導電性金属酸化物微粒子の連絡による導電性を示し難く、高周波ウェルダーでの縫製作業上の危険を回避できる。導電性金属酸化物微粒子の質量に対して透明無色無機粒子の質量が2倍未満である場合、合わせた添加量を多くしなければ熱線反射が充分に行われなくなることがあり、添加量が多くなると導電性金属酸化物微粒子により導電性を生じて高周波ウェルダーでの縫製に問題を生じることがある。導電性金属酸化物微粒子の質量に対して透明無色無機粒子の質量が10倍を超えた場合も、全体の添加量を多くしなければ熱線反射が充分に行われなくなることがあり、また、添加量が多くなると透明無色無機粒子により採光性と彩色性が低下することがある。
【0027】
本発明の熱線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子および透明無色無機粒子の量は、合わせて3〜20質量%である。3質量%より少ないと、熱線反射が充分に行われなくなることがあり、20質量%より多いと充分な採光性が得られなくなったり、顔料を加えた際の彩色性がそこ会われることがある。また、導電性金属酸化物微粒子および透明無色無機粒子の形状には特に限定は無く、球状の粒子であっても良く、その他、紡錘型、回転楕円形、立方体、円筒形、大きな粒子を粉砕してできた不規則な形状、平板型および棒状など、いずれの形状であっても良い。粒子のアスペクト比にも特に限定は無いが、導電性金属酸化物微粒子および透明無色無機粒子それぞれが独立して1〜3の範囲のアスペクト比を有することが好ましい。なお、アスペクト比とは一般に物体の縦横比を指すが、ここでは、粒子の最大縦径とそれに直交する最大の横幅との比を表す。
【0028】
本発明の熱線遮蔽層は、上述の熱可塑性樹脂、導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子の他に、有機あるいは無機の顔料を含んで、有彩色の熱線遮蔽層を形成することができる。用いる顔料には特に限定はないが、熱線遮蔽性向上のためには、赤外領域、特に2μm〜4μmの部分に吸収の少ない顔料である事が好ましい。この様な有機顔料としては、例えば、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、カルボニウム系、アントラキノン系、キノフタロン系、アゾ系(モノアゾ、ジスアゾ、縮合ジスアゾ等)、アゾメチン系、キナクリドン系等の有機顔料を例示することができる。また、無機顔料としては、ルチル型、ヘマタイト型、またはスピネル型構造を有し、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物を例示することができる。
【0029】
本発明の熱線遮蔽層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、分散剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、加工助剤、充填剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミネート系)などを含むことができる。
【0030】
本発明の不燃性膜材において、熱線遮蔽層以外の樹脂層にも、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、分散剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、加工助剤、充填剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミネート系)などを含むことができる。
【0031】
本発明の不燃性膜材は、経時的な汚れの付着による熱線遮蔽性、採光性の低下を防止し、且つ美観を維持するために、片面若しくは両面の熱線遮蔽層上に防汚層を有してもよい。防汚層は不燃性膜材の熱線遮蔽性及び採光性を損なわず、極度の隠蔽性を伴わないものであれば、その形成方法及び素材に特に限定はなく、例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を塗布して形成した塗膜、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を工程フィルム状に塗布して被膜を形成した後熱線遮蔽層上に転写した転写被膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布した親水性被膜層、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布した光触媒層、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択して用いることができる。
【0032】
本発明において、防汚層は、熱線の遮蔽性を更に向上させるために、導電性金属酸化物微粒子、または、導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子とを含んでも良い。防汚層に含まれる導電性金属酸化物微粒子としては、上述の熱線遮蔽層に含まれるものと同様、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、二酸化スズ(SnO)、タンタルドープ酸化スズ(TaTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオブドープ酸化チタン(NbTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GaZO)、亜鉛−アンチモン複合酸化物、一酸化スズ(SnO)、および酸化銅(I)(CuO)などからなる微粒子から1種あるいは2種以上適宜選択して用いることができ、導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径が0.01〜0.20μmであることが好ましい。また、本発明において、防汚層に含まれる透明無色無機粒子としては、上述の熱線遮蔽層に含まれるものと同様、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラスからなる平均粒子径が0.9〜2.2μmの粒子から、1種あるいは2種以上適宜選択して用いることができる。防汚層中に導電性金属酸化物微粒子や透明無色無機粒子を含む場合、導電性金属酸化物微粒子のみであっても良く、導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子の両方を含んでも良い。防汚層が導電性金属酸化物微粒子のみを含む場合は、防汚層の固形分に対して1〜4質量%であることが好ましい。導電性金属酸化物微粒子が1質量%未満では、熱線遮蔽性がほとんど向上しないことがある。4質量%を超えると、防汚層が導電性をを示し、高周波ウェルダーによる縫製に支障をきたす事がある。防汚層が導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子を含む場合、防汚層の固形分に対して両者を合わせて3〜10質量%であり、かつ、導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子の質量比が1:2〜1:10であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
次に、本発明の実施の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<評価項目>
1、可視光透過率
実施例および比較例で作成した膜材について、JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミ
ノルタ分光測色計CM−3600dを用いて可視光(380〜780nm)の透過率
を測定した。
2、耐炎試験
実施例・比較例で作成した膜材について、建築基準法第2条第9号の二のロ(防火戸
その他の政令で定める防火設備)の認定に係る性能評価法に準じて、耐炎性能を評価
した。ただし、試験に供した膜材の大きさは幅200cm×高さ100mとし、
幅190cm×高さ90cmの開口部を有する標準仕様の周壁(木造軸組工法に厚さ
12.5mmの石膏ボードの2枚重ね張り)の、開口部内側(加熱側)に、試料固定
用の鉄枠(枠部幅5cm)を介して隙間がない様固定し、ISO834に準拠した標
準加熱曲線に従って加熱を行い、20分(加熱温度781℃)及び30分(加熱温度
842℃)の時点で、下記の項目についてそれぞれ以下の様に評価・判定した。
(1)非加熱面への火炎の噴出
A1:非加熱側への火炎の噴出がない
A2:非加熱側への火炎の噴出があったが10秒以内であった
B:非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出があった
*判定:A1およびA2を適合とし、Bを不適合とした
(2)非加熱面での発炎の有無
A1:非加熱側に発炎を生じない
A2:非加熱側に発炎を生じたが、10秒以内であった
B:非加熱側に10秒を超えて継続する発炎を生じた
*判定:A1およびA2を適合とし、Bを不適合とした
(3)火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間の有無
A:火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を発生しない
B:火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を発生した
*判定:Aを適合とし、Bを不適合とした
なお、実施例・比較例で作成した膜材のおもてうらに差異がある場合には、それぞれ
の面について評価を行い、差異が無い場合には、一方の面のみ評価を行った。
3、燃焼試験(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
実施例及び比較例で得た膜材に対して、輻射電気ヒーターによる50kW/mの輻
射熱を20分間照射する発熱性試験を行い、20分間の総発熱量と発熱速度を測定す
るとともに、試験後の膜材外観を観察し、以下の様に判定した。(いずれもAを適合
とし、Bを不適合とした)
(1)総発熱量
A:8MJ/m以下
B:8MJ/mを越えた
(2)発熱速度
A:10秒以上継続して200kW/mを超えない
B:10秒以上継続して200kW/mを超えた
(3)外観観察
A:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がない
B:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕が発生した
なお、実施例・比較例で作成した膜材のおもてうらに差異がある場合には、それぞれ
の面について評価を行い、差異が無い場合には、一方の面のみ評価を行った。
4、高周波ウェルダー縫製性
実施例・比較例で作成した膜材より、縦方向(基布の経糸方向)40cm×幅方向
(基布の緯糸方向)20cmの試料を2枚採取し、2枚の試料の端部を図3の様に、
4cmのラップ幅で、おもて面側とうら面側が接する様に重ね合わせ、4cm×30cm
のウェルドバーを装着した高周波ウェルダー融着機(山本ビニター(株)製YF-7000
型:出力7KW))を用いて、試料のおもて面側から、下記条件で高周波ウェルダー融着
接合を行い、以下の様に評価した。
※ウェルダーバー形状
歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm
凸部高さ:0.5mm・・・凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm
凹部深さ:0.5mm
※ウェルダー融着条件:融着時間4秒、冷却時間4秒、陽極電流0.8A、
ウェルドバー温度40〜50℃
評価
A:融着縫製可能
B:スパークを生じ融着縫製不可
5、高周波ウェルダー縫製部強度
高周波ウェルダー縫製性を評価したサンプルから、縫製部(9)を含む3cm×30
cmの短冊状試料(10)を3片採取し、JISL1096 8.14.1(A法)
に準じて図4に示した方向に引張試験を行い、破断した状態を観察して以下の様に評
価した。
評価
A:3片とも本体部分が破断した。
B:3片の内1片以上が、縫製部剥離により破断した。
【0035】
[実施例1]
<基布1>
1350dtexのガラス(Eガラス)マルチフィラメント糸条(フィラメント単糸直径6μm:デンプンサイジング:撚り回数60回/m)を、経糸及び緯糸に用いた平織布(織密度:経糸29本/インチ×緯糸32本/インチ)を、ヒートクリーニングにより精練した後、エポキシ基含有シランカップリング剤2質量%処理し、基布1として用いた。
基布1の質量は340g/m、空隙率は1%未満であった。
<不燃性膜材の形成>
下記配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をバスに入れ、基布1をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、両面合わせて100g/mの樹脂被覆層を形成した。次に、下記配合2の熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子を合わせて7.9質量%含む厚さ0.2mmの熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム1を2枚成型した。配合2において、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を用い、透明無色無機粒子としては、アスペクト比1〜2.5、平均粒子径1.5μmの不定型な硫酸バリウム(バライト粉)を用い、スズドープ酸化インジウム微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:4であった。得られた熱線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。次に、2枚のフィルム1の中間に、樹脂被覆層を形成した基布1を挿入し、熱圧着により積層した。さらに、両面の熱線遮蔽層上に、下記配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって両面に5g/mの防汚層が形成された不燃性膜材が得られた。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表1に示す。なお、実施例1の不燃性膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面のみに対して行った。
<配合1>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
<配合2>熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径1.5μm) 12質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
<配合3>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
【0036】
[実施例2]
配合2の代わりに下記配合4を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の不燃性膜材を得た。熱線遮蔽層中の導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子は合わせて7.8質量%であり、両者の質量比は1:4であった。。また、配合4は、配合2に、赤外線に吸収の少ない縮合ジスアゾ系有機顔料としてC.I.ピグメントイエロー155を加えており、得られた不燃性膜材の熱線遮蔽層は明るい黄色外観であった。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表1に示す。なお、実施例2の不燃性膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合4>熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径1.5μm) 12質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
【0037】
[実施例3]
配合2の代わりに下記配合5を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の不燃性膜材を得た。配合5は、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.02μmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子を用い、アンチモンドープ酸化錫微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:3であり、熱線遮蔽層におけるアンチモンドープ酸化錫微粒子、および、硫酸バリウム粒子の量は合わせて8.3質量%であった。また、配合5は、配合2に、赤外線に吸収の少ないフタロシアニン系有機顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を加えており、得られた不燃性膜材において、熱線遮蔽層の外観は明るい青色外観であった。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表1に示す。なお、実施例3の不燃性膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合5>熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
アンチモンドープ酸化スズ微粒子(ATO:平均一次粒子径0.02μm)4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径1.5μm) 12質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン系有機顔料) 2質量部
【0038】
[実施例4]
配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をバスに入れ、基布1をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、両面合わせて100g/mの樹脂被覆層を形成した。次に、配合5を用いて、カレンダー成型法により、厚さ2.0mmの熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム4−1を成型した。次いで、下記配合6の導電性金属酸化物微粒子および透明無色無機粒子を含まない軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物を用いて、カレンダー成型法により厚さ0.20mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム4−2を成型した。次に、得られたフィルム4−1とフィルム4−2の中間に、樹脂被覆層を形成した基布1を挿入し、熱圧着により積層した。さらに、両面の熱線遮蔽層上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって両面に5g/mの防汚層が形成された不燃性膜材が得られた。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表1に示す。なお、実施例4の不燃性膜材は、おもてうらに差異があるため、フィルム4−1の側をおもて面として、おもてうらそれぞれに対して耐炎試験および燃焼試験を行った。
<配合6>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 30質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン系有機顔料) 2質量部
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1〜4の不燃性膜材はいずれも本発明の要件を満たし、耐炎試験、燃焼試験において各評価項目にいずれも適合していた。また、いずれも高周波ウェルダー縫製でスパークを生じず、縫製部を含む試料の引張試験において全ての試料が本体部分から破断したことから、高周波ウェルダーでの縫製が可能な膜材であった。実施例1は熱線遮蔽層に平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム微粒子と平均粒子径1.5μmの硫酸バリウム粒子を含む、かすかに青みのある乳白色外観の不燃性膜材であり、高い採光性を示すものであった。実施例2は熱線遮蔽層に有彩色の着色剤としてC.I.ピグメントイエロー155を含むものであり、熱線遮蔽層は導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子を含むにも関わらず、着色剤により有効に彩色されており、明るい黄色の色相を有していた。着色剤を含むことで採光性は実施例1より劣るものの、赤外線領域に吸収の少ない有機顔料が用いられている為、耐炎試験、燃焼試験について、実施例1と同等の結果であった。実施例3は、導電性金属酸化物微粒子としてスズドープ酸化インジウム微粒子の代わりにアンチモンドープ酸化スズ微粒子を用いており、実施例1に比べて導電性金属酸化物微粒子の割合が高くなっているが、本発明の要件の範囲内であり、高周波ウェルダーによる縫製が可能であり、C.I.ピグメントブルー15:3により有効に彩色され、明るい青色の色相を有していた。また、赤外線領域に吸収の少ない有機顔料が用いられている為、耐炎試験、燃焼試験について、実施例1と同等の結果であった。実施例1〜3の不燃性膜材は、いずれも高い強度を有しており、防火地区、準防火地区に設置されるテント倉庫などの膜構造建築物の屋根部や壁面を構成する材料に適しており、実施例1の様に熱線遮蔽層に彩色しなければ、明り取り部分に好適に用いる事ができ、実施例2および3の様に顔料を加えて彩色すれば、本体部分に用いることもできる。実施例4は、一方の面にのみ熱線遮蔽層を設けた不燃性膜材であり、耐炎試験において、裏面側から加熱した際に20分の時点までに発炎を認めたが、10秒以内であった。
【0041】
[実施例5]
<基布2>
675dtexのガラス(Eガラス)マルチフィラメント糸条(フィラメント単糸直径9μm:デンプンサイジング:撚り回数60回/m)を、織密度たて35本/インチ よこ28本/インチに製織した平織布を、ヒートクリーニングにより精練した後、エポキシ基含有シランカップリング剤2質量%処理し、基布2として用いた。基布2の質量は165g/m、空隙率は5%であった。
<不燃性膜材の形成>
配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をバスに入れ、基布2をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより基布2の両面への付着、および内部含浸した状態で、両面合わせて60g/mの樹脂被覆層を形成した。次に、下記配合7の熱線遮蔽層形成用軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子を合わせて8.4質量%含む厚さ0.12mmの熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム5を2枚成型した。配合7において、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を用い、透明無色無機粒子としては、脂肪酸で表面被覆したアスペクト比1〜2.5、平均粒子径1.8μmの不定型な重質炭酸カルシウム粒子を用い、スズドープ酸化インジウム微粒子と重質炭酸カルシウム粒子の質量比は1:7であった。次に、2枚のフィルム5の中間に、樹脂被覆層を形成した基布2を挿入し、熱圧着により積層した。さらに、両面の熱線遮蔽層上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって両面に5g/mの防汚層が形成された不燃性膜材が得られた。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表2に示す。なお、実施例5の不燃性膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面のみに対して行った。
<配合7>熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
炭酸カルシウム粒子(CaCO:平均粒子径1.8μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
【0042】
[実施例6]
配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をバスに入れ、基布2をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行った。これにより基布2の両面への付着、および内部含浸した状態で、両面合わせて60g/mの樹脂被覆層を形成した。次に、下記配合8の軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子を合わせて8.3質量%含む厚さ1.2mmの熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−1を成型した。次いで、配合7を用いて、カレンダー成型法により厚さ0.12mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−2を成型した。次に、得られたフィルム6−1とフィルム6−2の中間に、樹脂被覆層を形成した基布2を挿入し、熱圧着により積層した。さらに、両面の熱線遮蔽層上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって両面に5g/mの防汚層が形成された不燃性膜材が得られた。なお、配合8には赤外線に吸収の少ない有機顔料としてC.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料)を用いた事により、フィルム6−1は明るい黄色外観であった。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表2に示す。なお、実施例6の不燃性膜材は、おもてうらに差異があるため、フィルム6−1の側をおもて面として、おもてうらそれぞれに対して耐炎試験および燃焼試験を行った。
<配合8>熱線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
炭酸カルシウム粒子(CaCO:平均粒子径1.8μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
【0043】
[実施例7]
配合8において、脂肪酸で表面被覆したアスペクト比1〜2.5、平均粒子径1.8μmの不定型な重質炭酸カルシウム粒子のかわりに、脂肪酸で表面被覆したアスペクト比1〜2.5、平均粒子径1.0μmの不定型な重質炭酸カルシウム粒子を用い、C.I.ピグメントイエロー155で彩色されたフィルム7−1を形成した以外は、実施例6と同様にして、実施例7の不燃性膜材を得た。フィルム7−1は、フィルム6−1に比べてやや白みを帯びた明るい黄色外観であった。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表2に示す。なお、実施例7の不燃性膜材は、おもてうらに差異があるため、フィルム7−1の側をおもて面として、おもてうらそれぞれに対して耐炎試験および燃焼試験を行った。
【0044】
[実施例8]
配合3のかわりに下記配合9の防汚層塗工液を形成した以外は、実施例5と同様にして実施例8の不燃性膜材を得た。配合9の防汚層塗工液は、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子と、透明無色無機粒子として脂肪酸で表面被覆したアスペクト比1〜2.5、平均粒子径1.8μmの不定型な重質炭酸カルシウム粒子を含み、スズドープ酸化インジウム微粒子と重質炭酸カルシウム粒子の質量比は1:7であり、防汚層には導電性金属酸化物微粒子、および、透明無色無機粒子を合わせて8.8質量%含んでいた。この不燃性膜材について、各種評価を行った結果を表2に示す。なお、実施例8の不燃性膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面のみに対して行った。
<配合9>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂 1質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)0.2質量部
炭酸カルシウム粒子(CaCO:平均粒子径1.8μm) 1.4質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
【0045】
【表2】
【0046】
実施例5〜7の不燃性膜材はいずれも本発明の要件を満たし、耐炎試験において、実施例1〜4より耐炎試験の30分時点でわずかに劣る(10秒以下の発炎を生じた)結果を示したものの適合し、燃焼試験には全ての項目で適合していた。また、いずれも高周波ウェルダー縫製でスパークを生じず、縫製部を含む試料の引張試験において全ての試料が本体部分から破断したことから、高周波ウェルダーでの縫製が可能な膜材であることが確認された。実施例5は、熱線遮蔽層に平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子と、脂肪酸で表面被覆したアスペクト比1〜2.5、平均粒子径1.8μmの不定型な重質炭酸カルシウム粒子を含み、かすかに青みのある乳白色外観の不燃膜材であり、可視光透過率は実施例1よりも高く、透視性は無いものの膜材の向こう側の様子を伺うことができ、工場やオフィスなどの間仕切りに好適に用いることのできる不燃性膜材であった。実施例6は、実施例5の一方の面側の熱線遮蔽層にのみ彩色した不燃膜材である。熱線遮蔽層は導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子を含むにも関わらず、着色剤により有効に彩色されており、明るい黄色の色相を有し、工場やオフィスなどの間仕切り、あるいはオーニングとして好適に用いることのできる不燃性膜材であった。実施例7は彩色された側の熱線遮蔽層に含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径が実施例5の1.8μmに対して1.0μmであるが、本発明の要件を満たしており、耐炎試験、燃焼試験の全てに適合していた。フィルム7−1の色調がフィルム6−1の比べてやや白みを帯びていたのは、透明無色無機粒子として含まれる重質炭酸カルシウムの平均粒子径がフィルム6−1に含まれる重質炭酸カルシウムよりも小さく、可視光線領域の波長に近かった為、粒子径に依存した散乱の影響を多少受けたためであると考えられる。実施例8は、実施例5の防汚層を導電性金属酸化物微粒子と無機化合物微粒子を含む防汚層に変更した構成を有し、そのため、耐炎試験においても実施例1〜4と同等の結果を示した。
【0047】
[比較例1]
配合2のかわりに下記配合10を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の薄い乳白外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表3に示す。なお、比較例1の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合10>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
【0048】
比較例1の膜材は、導電性金属酸化物微粒子と透明無色無機粒子を含む熱線遮蔽層を有さないため、耐炎試験において20分以内に10秒を超える非加熱面への火炎の噴出、および非加熱面での発炎を生じ、燃焼試験においては、発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えた。
【0049】
[比較例2]
配合2のかわりに下記配合11を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の乳白外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表3に示す。なお、比較例2の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合11>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
水酸化アルミニウム(難燃剤) 100質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
【0050】
比較例2の膜材は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物に無機難燃剤を多量に含むため、燃焼試験においては全ての項目で適合したが、耐炎試験においては30分以内に10秒を超える非加熱面での火炎の噴出および発炎を生じた。また、可視光透過率が低く、実施例1に比べて採光性が大きく劣っていた。
【0051】
[比較例3]
配合1のかわりに下記配合12を、配合2のかわりに下記配合13を、それぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表3に示す。なお、比較例2の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合12>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 200質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
<配合13>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
【0052】
比較例3の膜材は、難燃性の可塑剤であるリン酸トリクレジルを、ペースト組成物およびフィルム組成物に多量に含むことで、燃焼試験においては全ての項目で適合したが、耐炎試験においては20分以内に10秒を超える非加熱面での火炎の噴出および発炎を生じた。また、可塑剤を多量に含むため、樹脂強度が弱く、高周波ウェルダー縫製部が接合部剥離により破断し、高い強度を要求される膜構造建築物には用いることのできない膜材であった。
【0053】
[比較例4]
配合2から硫酸バリウム粒子を除いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の薄い乳白外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表3に示す。なお、比較例4の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
【0054】
比較例4の膜材は、熱線遮蔽層中に透明無色無機粒子を含まず、導電性金属酸化物微粒子のみ含み、しかも3質量%未満(1.7質量%)であるため、耐炎試験において20分以内に10秒を超える非加熱面での発炎を生じた。
【0055】
[比較例5]
配合2のかわりに下記配合14を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5の青みの乳白外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表3に示す。なお、比較例5の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合14>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)10質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
【0056】
比較例5の膜材は、熱線遮蔽層に導電性金属酸化物微粒子を5.4質量%含むことで、耐火試験、燃焼試験の各項目に適合した。しかし、透明無色無機粒子を含まないため、樹脂層に導電性を生じ、高周波ウェルダー縫製においてスパークして、縫製することができなかった。
【0057】
[比較例6]
配合5のかわりに下記配合15を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例6の淡い黄色外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表4に示す。なお、比較例6の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合15>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径1.5μm) 60質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
【0058】
比較例6の膜材は、熱線遮蔽層に透明無色無機粒子のみ25.4質量%含むが、導電性金属酸化物微粒子を含まなかった為、熱線を充分に反射することができず、耐炎試験において20分以内に10秒を超える非加熱面での発炎を生じた。また、透明無色無機粒子を多量に含むため、黄色の顔料を加えても淡い色彩にしかならず、実施例2に比べて彩色性に劣っていた。
【0059】
[比較例7]
配合4において、硫酸バリウム粒子のかわりに、平均粒子径1.0μmのルチル型酸化チタン粒子を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例7の淡い黄色外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表4に示す。なお、比較例7の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
【0060】
比較例7の膜材は、熱線遮蔽層にスズドープ酸化インジウム微粒子と酸化チタン粒子を合わせて7.8質量%含み、耐火試験、燃焼試験の各項目に適合した。しかし、酸化チタンの屈折率が2.71であったため、可視領域の光が拡散されて色相に影響を及ぼし、黄色の顔料を加えても淡い黄色にしかならず、実施例2と比べて彩色性が劣っていた。
【0061】
[比較例8]
配合2において、平均粒子径1.5μmの硫酸バリウム粒子のかわりに、平均粒子径5.0μmの硫酸バリウム粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例8の青みの乳白外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った。結果を表4に示す。なお、比較例8の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
【0062】
比較例8の膜材は、熱線遮蔽層に含まれる透明無色無機粒子の平均粒子径が2.2μmを超え、5.0μmであったため、熱線を散乱して反射することができず、耐炎試験において20分以内に10秒を超える非加熱面での発炎を生じた。
【0063】
[比較例9]
配合2において、平均粒子径1.5μmの硫酸バリウム粒子のかわりに、平均粒子径0.3μmの硫酸バリウム粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例9の乳白外観の膜材を得た。この膜材について、各種評価を行った結果を表4に示す。なお、比較例9の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
【0064】
比較例9の膜材は、熱線遮蔽層に含まれる透明無色無機粒子の平均粒子径が0.3μmであったため、熱線を散乱して反射することができず、耐炎試験において20分以内に10秒を超える非加熱面での発炎を生じた。また、可視領域の光が散乱され、実施例1に比べて採光性が劣っていた。
【0065】
[比較例10]
配合2のかわりに下記配合16を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例10の乳白色外観の膜材を得た。配合16では、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.30μmのスズドープ酸化インジウム微粒子を用いた。この膜材について、各種評価を行った結果を表4に示す。なお、比較例10の膜材は、おもてうらに差異が無いため、耐炎試験および燃焼試験は一方の面からのみ行った。
<配合16>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 40質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.30μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径1.5μm) 12質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
【0066】
比較例10の膜材は、熱線遮蔽層に含まれるスズドープ酸化インジウム微粒子の平均一次粒子径が0.20μmを超えて、0.30μmであったため、可視領域の光線が散乱され、実施例1より採光性が劣っていた。また、スズドープ酸化インジウム微粒子の粒子径が大きかった為、質量比で4倍の硫酸バリウム粒子を含んでも導電性を有し、高周波ウェルダーでスパークを生じ縫製することができなかった。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の不燃性膜材は、火災時の燃焼物から放射される熱線を反射して、自らの温度上昇を抑制するため、延焼を長時間防ぎ、避難の為の事案をより多く確保することができる。一方、可視領域の光に対しては吸収や散乱が少ないため、採光性に優れ、あるいは、顔料による彩色で鮮やかな色彩の不燃膜材を得る事ができる。そのため、防火地区、準防火地区に設置するテント倉庫、イベント向けテントなどの膜構造建築物や、オーニング、パーティションなどに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1:不燃性膜材
2:熱線遮蔽層
3:導電性金属酸化物微粒子
4:透明無色無機粒子
5:基布
6:防汚層
7:熱線遮蔽層以外の樹脂層
8:実施例・比較例で作成した膜材
9:高周波ウェルダー融着部分
10:高周波ウェルダー縫製部強度を評価した短冊状試料
図1
図2
図3
図4