特許第6232652号(P6232652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6232652
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】換気靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/08 20060101AFI20171113BHJP
   A43B 13/20 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A43B7/08
   A43B13/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-529102(P2017-529102)
(86)(22)【出願日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2017005754
【審査請求日】2017年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591169630
【氏名又は名称】株式会社インフォム
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆好
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−032604(JP,U)
【文献】 特開2008−110081(JP,A)
【文献】 特開2013−212348(JP,A)
【文献】 特開2006−034531(JP,A)
【文献】 実開平2−086303(JP,U)
【文献】 実開平3−027602(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/08
A43B 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーと、ソールと、靴内部の空気を換気するための換気装置とを備え、
前記換気装置は、
外気と連通する吸気通路と、
足指位置付近のソール表面に開口して、靴内部へ空気を排気するための排気通路と、
吸気通路と連通して配設される吸気用逆止弁及び排気通路と連通して配設される排気用逆止弁と、
ソール内に設けられ、踏み込みに伴って圧縮し、内部に貯留された空気を排気用逆止弁を介して排気通路から靴内部に送り、踏み込み解除に伴って復元し、吸気用逆止弁を介して吸気通路から空気を取り込むポンプ室とを備えたものであり、
前記吸気用逆止弁及び前記排気用逆止弁は、
扁平状をなし、
開閉孔が形成されてなる主面部を備える金属又は合成樹脂からなる担持部材と、
可撓性を有する薄い材料からなり、担持部材に一端が保持されて、前記開閉孔を内側から覆い、外側から開閉孔に空気圧が加わることによって内側へ変形して、開閉孔を開放する弁体とを有するものであり、
ソールは、複数の底板を積層してなり、
ポンプ室は、ソールの底板間に広く形成されて爪先に至り、歩行時に踵が上がって爪先で立つ状態で圧縮される扁平な室からなり、
ソールの内部で、上下に他の底板が重なる中間の底板に、吸気用逆止弁が収容される偏平な弁装着孔と、排気用逆止弁が収容される偏平な弁装着孔を夫々形成し、
吸気用逆止弁は開閉孔の外側が上方に位置するように、排気用逆止弁は開閉孔の外側が下方に位置するようにして夫々弁装着孔に嵌入し、
吸気用逆止弁にあっては、開閉孔の外側を靴内部と通気した吸気通路と連通させ、開閉孔の内側をポンプ室に連通させて配置し、
排気用逆止弁にあっては、開閉孔の外側をポンプ室に連通させ、開閉孔の内側を排気通路と連通させて配置した
ことを特徴とする換気靴。
【請求項2】
前記吸気用逆止弁及び前記排気用逆止弁は、
前記担持部材を構成するものであって、主面部と、該主面部に連続する側面部とを備えて、その内側を弁空間とし、主面部には開閉孔が形成されてなる扁平状開放ケースと、開放ケース内で一端が保持されて、前記開閉孔を内側から覆う弁体とを備え、
ソール内に、前記吸気用逆止弁にあっては、開閉孔を吸気通路と連通させ、弁空間をポンプ室に連通させて配置し、前記排気用逆止弁にあっては、開閉孔をポンプ室に連通させ、弁空間を排気通路と連通させて配置した
ことを特徴とする請求項1記載の換気靴。
【請求項3】
前記吸気用逆止弁及び前記排気用逆止弁は、
前記扁平状開放ケースと、開閉孔を内側から覆う弁体と、該開放ケースの開放面を覆うカバーとを備えて、該開放ケースとカバーとで、弁空間を区画してなり、
前記カバーには、連通孔を形成し、
吸気用逆止弁にあっては、開閉孔を吸気通路と連通させ、連通孔をポンプ室に連通させて配置し、
排気用逆止弁にあっては、開閉孔をポンプ室に連通させ、連通孔を排気通路と連通させて配置した
ことを特徴とする請求項2記載の換気靴。
【請求項4】
カバーは、連通孔を形成した主面部と、該主面部に連続する側面部とを備えてなり、開放ケースに内嵌して、開放ケースとカバーの側面部とで、弁体の一端を挟持することにより、弁体を保持したことを特徴とする請求項3記載の換気靴。
【請求項5】
弁体の一端を直角に折り曲げて形成した折り代を備え、開放ケースの側面部とカバーの側面部間で折り代を挟持して、弁体の一端を保持したことを特徴とする請求項4記載の換気靴。
【請求項6】
上下に他の底板が重なる中間の底板のいずれか一つに、踵位置で、吸気用逆止弁が収容される弁装着孔と、排気用逆止弁が収容される弁装着孔を夫々形成し、吸気用逆止弁は開閉孔の外側が上方に位置するように、排気用逆止弁は開閉孔の外側が下方に位置するようにして夫々弁装着孔に嵌入し、底板間に形成したポンプ室を、逆止弁の下部に至る共通通路を介して、吸気用逆止弁の開閉孔に内側から連通し、排気用逆止弁の開閉孔に外側から連通したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の換気靴。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴は、靴内部の通気性が悪いので、長時間装着していると足が蒸れ、装着者が不快感を覚えるだけでなく、水虫の原因にもなる。そこで、ソールにポンプ室を配設し、歩行する際に靴に加わる装着者の体重及び屈曲による荷重変動を利用してポンプ室を圧縮し、空気を足指先に排出させ、靴内部の換気を行うようにした換気靴が提供されている。
【0003】
かかる構成として、ポンプ室を肉厚のヒール側に設け、外気と連通する吸気通路の開口を装着者の足の踵に位置する部位に配置し、さらに排気通路の開口を指先周囲に位置する部位に配置して、吸気通路と排気通路とを夫々逆止弁を介して、ポンプ室に連通し、換気靴の踏み降ろしにより、ポンプ室を圧縮して、室内の空気を、排気通路から足の指先周囲に放出し、靴の浮き上げにより、ポンプ室を復元して、その負圧により該ポンプ室へ吸気通路から空気を吸引する作動によって、上述の靴内部の換気を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−200327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来構成にあっては、換気靴には、ポンプ室と吸気通路との間及びポンプ部と排気通路との間に、一方向にのみ、空気の流出入を可能とする逆止弁が必要となるが、逆止弁の構造は、一般的に用いられるボール弁等をヒール内に用いる構成であるため、構造が複雑化し、過重量となる。
【0006】
また、逆止弁は、恒常的に湾曲、強負荷、摩耗が生じる箇所に適用され、かつ厳しい薄厚化が要求されるため、実際にはこれに耐え得る逆止弁が提案されていない。逆止弁にリード弁を用いた構成(特開2004−181113号公報)も開示されているが、いずれも机上の概念の域であって、具体化されているものではない。
【0007】
さらには、先行技術文献等、従来構成では、ヒール部に設けられたポンプ室と、逆止弁内とをパイプを介して連通しているものであり、ポンプ室の高さ方向の寸法を大きくする必要があり、換気靴の靴底が肉厚化してしまう。また、逆止弁やパイプ等には密封すべき接合部分が多く、はがれて壊れやすい。さらにまた、ソール内にパイプが延在するので、装着者が歩行するときに、ソールが湾曲するのが妨げられてしまい、ポンプ室を十分に圧縮することができない等の課題がある。
【0008】
このように、特に換気靴用の逆止弁として最適な弁構造が開発されていないため、換気靴は机上で種々提案されているものの、実際には市場に供されていないのが実状である。
【0009】
本発明は、従来の問題点を解決し、靴内部の換気を十分に行うことができるとともに、実用に適した換気靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
アッパーと、ソールと、靴内部の空気を換気するための換気装置とを備え、
前記換気装置は、
外気と連通する吸気通路と、
足指位置付近のソール表面に開口して、靴内部へ空気を排気するための排気通路と、
吸気通路と連通して配設される吸気用逆止弁及び排気通路と連通して配設される排気用逆止弁と、
ソール内に設けられ、踏み込みに伴って圧縮し、内部に貯留された空気を排気用逆止弁を介して排気通路から靴内部に送り、踏み込み解除に伴って復元し、吸気用逆止弁を介して吸気通路から空気を取り込むポンプ室とを備えたものであり、
前記吸気用逆止弁及び前記排気用逆止弁は、
開閉孔が形成されてなる主面部を備える担持部材と、
可撓性を有する薄い材料からなり、担持部材に一端が保持されて、前記開閉孔を内側から覆い、外側から開閉孔に空気圧が加わることによって内側へ変形して、開閉孔を開放する弁体とを有し、
ソールは、複数の底板を積層してなり、
ポンプ室は、底板間に形成された偏平な室からなり、
ソールの内部には、各逆止弁が収容される弁装着孔を夫々形成して、各逆止弁を開閉孔が上下方向に位置するように弁装着孔に内嵌し、
吸気用逆止弁にあっては、開閉孔の外側を靴内部と通気した吸気通路と連通させ、開閉孔の内側をポンプ室に連通させて配置し、
排気用逆止弁にあっては、開閉孔の外側をポンプ室に連通させ、開閉孔の内側を排気通路と連通させて配置した
ことを特徴とする換気靴である。
ここで開閉孔の内側とは、弁体が保持されている側をいい、開閉孔の外側とは、弁体が保持されていない側をいう。
【0011】
かかる構成にあっては、歩行に伴って、ポンプ室が圧縮されると、排気用逆止弁の開閉孔から弁本体に作用して、開閉孔が開放されて、空気が弁空間に流入する。そして、排気通路を通って足指の周囲に空気が放出される。靴の踏み込み解除によりポンプ室の湾曲が解除されると、ポンプ室が平板状に復元し、これにより容積が増加してポンプ室内が負圧となる。これにより吸気用逆止弁の弁空間内が負圧となって吸気通路を介して、開閉孔に作用し、弁体が開放されて、靴本体内を経由して、外気がポンプ室内に流入する。これにより、靴本体内の換気が連続的になされることとなる。
【0012】
上記構成にあって、逆止弁は、開閉孔が形成されてなる主面部を備える担持部材と、担持部材に一端が保持されて、開閉孔を開放する弁体とからなり、一体化しているものであり、これをソール内に装着して、吸気通路又は排気通路に連通することにより、容易に組み込むことができる。
【0013】
ここで、前記吸気用逆止弁及び前記排気用逆止弁は、前記担持部材を構成するものであって、主面部と、該主面部に連続する側面部とを具備して、その内側を弁空間とし、主面部には開閉孔が形成されてなる扁平状開放ケースと、開放ケース内で一端が保持されて、前記開閉孔を内側から覆う弁体とを備えた構成とすることができる。
かかる構成にあっては、開放ケース周囲の側面部により弁空間が規定されるため、この開放ケースの外形を弁装着孔に一致させることにより、安定的に、弁装着孔に保持される。
【0014】
吸気用逆止弁及び排気用逆止弁は、前記扁平状開放ケースと、開閉孔を内側から覆う弁体と、該開放ケースの開放面を覆うカバーとを備えた構成として、該開放ケースとカバーとで、弁空間を区画して、前記カバーには、連通孔を形成し、吸気用逆止弁にあっては、開閉孔を吸気通路と連通させ、連通孔をポンプ室に連通させて配置し、排気用逆止弁にあっては、開閉孔をポンプ室に連通させ、連通孔を排気通路と連通させて配置することもできる。
かかる構成にあっては、弁空間を開放ケースとカバーで囲んで形成し、一体化した構成であり、ユニット化されて取り扱いが容易であり、底板に形成した弁装着孔への装着により、簡単に換気装置を構成することができると共に、開放ケースとカバーにより、弁体が、歩行に伴う衝撃から確実に保護され、耐久性にすぐれているという利点がある。
【0015】
上述の構成にあって、開放ケースとカバーの側面部とで、弁体の一端を挟持することにより、弁体を保持することができ、これにより相互の組み付けによって、弁体が簡易に固定される。また、弁体の一端を直角に折り曲げて形成した折り代を備え、開放ケースの側面部とカバーの側面部間で折り代を挟持して、弁体の一端を保持してもよい。この折り代により、弁体が確実に固定される。
【0016】
本発明の換気靴に適合する逆止弁は、厚さが数ミリの極薄状であり、高い耐衝撃性が求められるが、かかる構成によって、製造容易で、小型で、堅牢で、しかも弁体が確実に保持されて、性能が安定した換気靴用逆止弁が実現可能となるものであり、従来机上の製品であった換気靴の、実現性ある提供を可能としているものである。
【0017】
また、上下に他の底板が重なる中間の底板のいずれか一つに、踵位置で、吸気用逆止弁が収容される弁装着孔と、排気用逆止弁が収容される弁装着孔を夫々形成し、吸気用逆止弁は開閉孔の外側が上方に位置するように、排気用逆止弁は開閉孔の外側が下方に位置するようにして夫々弁装着孔に嵌入し、底板間に形成したポンプ室を、逆止弁の下部に至る共通通路を介して、吸気用逆止弁の開閉孔に内側から連通し、排気用逆止弁の開閉孔に外側から連通した構成も提案される。
かかる構成にあっては、靴の中で最も強固で変形力を受けにくい、ヒールの上となる踵位置に、両逆止弁が隣接して配置される。このため、両逆止弁の損壊が抑止され、換気靴自体の耐久性が向上する。
【0018】
さらに、ソールは、複数の底板を積層してなり、ポンプ室は、底板間に形成された偏平な室からなり、上下に他の底板が重なる中間の底板には、逆止弁の厚みとほぼ等しく、かつ逆止弁が収容される弁装着孔を形成して、各逆止弁を弁装着孔に内嵌し、吸気用逆止弁にあっては、開閉孔を靴内部と通気した吸気通路と連通させ、連通孔をポンプ室に連通させ、排気用逆止弁にあっては、開閉孔をポンプ室に連通させ、連通孔を排気通路と連通させて配置した構成が提案される。
かかる構成にあっては、中間の底板のいずれかに弁装着孔を形成して、ここに逆止弁を装着したものであり、底板の積層により、容易に換気装置を構成することができる。
【0019】
尚、ここでの換気靴は、紳士靴、婦人靴、運動靴、安全靴、ブーツ、長靴、ゴルフシューズなど、換気を要する全ての靴を含む。
【発明の効果】
【0020】
ソールを複数の底板を積層して構成し、ポンプ室を底板間に扁平状に形成して、上下に他の底板が重なる中間の底板に弁装着孔を形成して、該弁装着孔に、担持部材を介して一体化された逆止弁を装着したものであるため、ソールの肉厚を薄くでき、換気靴を小型化することができるとともに、ポンプ室の容積を大きくすることができるので、靴本体内の換気を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の換気靴の縦断面図である。
図2】本発明が適用される換気靴の斜視図である。
図3】第1実施形態のソールの平面図である。
図4】第1実施形態の中敷板の平面図である。
図5】第1実施形態の中底板の平面図である。
図6】第1実施形態の下底板の平面図である。
図7】第1実施形態の本底板の平面図である。
図8】逆止弁V1,V2の第一実施例を示す分解斜視図である。
図9】逆止弁V1,V2の平面図である。
図10】逆止弁V1,V2の底面図である。
図11】吸気用逆止弁V1として用いた第1実施例の縦断面図である。
図12】排気用逆止弁V2として用いた第1実施例の縦断面図である。
図13図1のX−X断面図である。
図14】第2実施形態の換気靴の縦断面図である。
図15】第3実施形態の換気靴の縦断面図である。
図16】第4実施形態の換気靴の縦断面図である。
図17】第5実施形態の換気靴の縦断面図である。
図18図17のY−Y断面図である。
図19】第5実施形態の中敷板の平面図である。
図20】第5実施形態のスペーサの平面図である。
図21】第5実施形態の第1下底板の平面図である。
図22】第5実施形態の第2下底板の平面図である。
図23】第5実施形態の本底板の平面図である。
図24図23のZ−Z断面図である。
図25】第6実施形態の下底板を示す平面図である。
図26】第6実施形態の下底板を示す縦断側面図である。
図27】逆止弁V1,V2の第2実施例の平面図である。
図28】吸気用逆止弁V1として用いた第2実施例の縦断面図である。
図29】排気用逆止弁V2として用いた第2実施例の縦断面図である
図30】吸気用逆止弁V1として用いた第3実施例の縦断面図である。
図31】排気用逆止弁V2として用いた第3実施例の縦断面図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、換気靴30は、アッパー31とソール32と、靴内部34の空気を換気するための換気装置とを備える。
【0023】
ソール32の踵部には、ヒール33が設けられる。また、足の裏面と当接する中敷板35、該中敷板35より下方において中敷板35と重ねて配設された中底板36、該中底板36より下方において中底板36と重ねて配設された下底板37及び該下底板37より下方において下底板37と重ねて配設された本底板38を備える。中敷板35〜本底板38は、いずれもソール32を構成する本発明の底板に相当する。
【0024】
換気靴30の靴内部34は、アッパー31及びソール32によって包囲され、アッパー31と中敷板35との間に形成される。なお、中敷板35、中底板36、下底板37及び本底板38は、ゴム、軟質合成樹脂等の弾性材料から成り、接着剤等によって互いに接着されて、ソール32が構成される。
【0025】
また、換気靴30は、靴内部34を経由して外気を取り込み、靴内部34の足指先側に放出する換気装置を具備する。この換気装置について説明する。
【0026】
換気装置は、靴内部34の後端部に開口させて形成され、靴内部34の空気を吸気するための吸気通路L1、靴内部34の足指位置付近のソール表面に開口して形成され、靴内部34に空気を排気するための排気通路L2及び吸気通路L1において吸気した空気を排気通路L2に送るポンプ室Pを備える。
【0027】
前記吸気通路L1は、中敷板35の後端部において、換気靴30の幅方向に形成された複数の、本実施の形態においては、3個の開口148a〜148c、並びに中底板36の後端部において前記各開口148a〜148c及びポンプ室Pと連通させて形成された複数の、本実施の形態においては、3個の吸気路151a〜151cを備える。前記開口148a〜148c及び吸気路151a〜151cは、直下に配設された吸気用逆止弁V1と連通して吸気通路L1を構成することにより吸気を行う。
【0028】
前記排気通路L2は、中敷板35の前端部において、換気靴30の幅方向に形成された複数の、本実施の形態においては、4個の開口149a〜149d、中底板36の前端部において幅方向に形成された複数の、本実施の形態においては、4個の排気路155a〜155d及び下底板37の前端部に形成された排気案内路156を備え、開口149a〜149d及び排気路155a〜155dは、直下に形成された排気案内路156及び排気用逆止弁V2と連通して排気通路L2を構成することにより、排気を行う。
【0029】
このように換気装置は、中間の底板である下底板37と本底板38との間に空間を形成することによって形成されるポンプ室P、下底板37の後端部において吸気路151a〜151cと連通させて形成された吸気用弁装着孔152、該弁装着孔152に収容された吸気用逆止弁V1、下底板37の前端部において排気案内路156と連通させて形成された排気用弁装着孔157及び該弁装着孔157に収容された排気用逆止弁V2を備える。
【0030】
前記ポンプ室Pは、図7で示すように、本底板38の上面に、周囲に周縁部を残して、深さが数〔mm〕程度の十分に広い面積を有する凹部を形成し、本底板38に下底板37を貼り付け、密着させることによって形成され、後端に吸気用弁装着孔152と連通する連通口163を、前端に排気用弁装着孔157と連通する連通口164を備える。前記本底板38には、上面が本底板38の上面と同じ高さを有する突状スペーサ38a、38bが形成される。さらに、前記ポンプ室Pにおいて、連通口163と突状スペーサ38aとの間の領域161a及びポンプ室Pにおける突状スペーサ38a、38b間の領域161bには、ゴム等の弾性材料から成るクッション材38c、38dが、本底板38と下底板37との間に貼着して配設される。この突状スペーサ38a、38b及びクッション材38c、38dによって、換気靴30の長期使用による下底板37の形状の経年変化が防止される。
【0031】
なお、凹部の面積、深さ等を変えることによってポンプ室Pの容積を大きくすることができる。その場合、靴内部34に排気したり、靴内部34外から吸気したりすることができる空気の量を更に多くすることができる。
【0032】
次に、吸気用逆止弁V1及び排気用逆止弁V2の第1実施例について説明する。
図8図12に示されるように、弁体T、開放ケース201、該開放ケース201に隙間なく内嵌されるカバー202を備える。開放ケース201は、本発明の担持部材を構成する。吸気用逆止弁V1及び排気用逆止弁V2は同一構造であり、表裏逆にして配設される。
【0033】
開放ケース201は、主面部fと、該主面部fに連続する側面部wとを備え、一面が開放する薄く、扁平な箱形をなすものであり、主面部fには開閉制御される空気入口としての開閉孔205a,205bが形成される。カバー202も同様に主面部と、該主面部に連続する側面部とを備え、一面が開放する薄く、扁平な箱形をなすものであり、主面部には空気出口としての連通孔206a,206bが形成される。開閉孔205a,205bと連通孔206a,206bは互いに偏心して形成され、弁体Tが、開閉孔205a、205bを開いたときに連通孔206a、206bを塞ぐことがなく、空気を円滑に流すことができる。開放ケース201の内角に弁体Tの外角を合わせて設置し、カバー202を開放ケース201内に嵌入し、弁体Tの縁を挟み込み、固定することによって、内部(開閉孔205a、205bの内側)に弁空間を有する逆止弁が形成される。開放ケース201とカバー202とは、接着又はカシメなどにより接合して、一体化される。
【0034】
図8で示すように、弁体Tは、厚さ0.03mm程度の薄い金属板又は合成樹脂板からなり、その後端は曲成され、曲げ代200を備える。この曲げ代200をケース側面とカバー側面間に挟むことにより、弁体Tの保持が確保され、かつ弁体Tの固着手段を適用すること無く、容易に弁体Tを開放ケース201に組み付けることができる。
【0035】
そして、吸気用逆止弁V1は、図11で示すように開閉孔205aを上方とし、連通孔206aを下方として、吸気用弁装着孔152に装着され、開閉孔205aの外側を吸気通路L1(図1)と、連通孔206aをポンプ室P(図8)と連通する。
【0036】
また、排気用逆止弁V2は、図12で示すように、開閉孔205bを下方とし、連通孔206bを上方として、開閉孔205bをポンプ室P(図7)と、連通孔206bの外側を排気通路L2と連通する。
【0037】
吸気用逆止弁V1及び排気用逆止弁V2において、開放ケース201及びカバー202は、金属、合成樹脂等の強度の高い材料から成り、弁体Tは、金属、合成樹脂等の可撓性を有する薄い材料から成る。
【0038】
吸気用逆止弁V1は、ポンプ室P内の圧力が靴内部34の圧力より低くなる(負圧)と開放され、靴内部34の空気が吸気通路L1からポンプ室Pに吸引され、排気用逆止弁V2は、ポンプ室P内の圧力が靴内部34の圧力より高くなると開放され、ポンプ室Pの空気が排気通路L2から排気される。
【0039】
かかる構成の逆止弁V1、V2の構成にあっては、弁空間を開放ケース201とカバー202で囲んで形成し、開放ケース201に弁体Tを固定して、一体化した構成であり、ユニット化されて取り扱いが容易であり、底板に形成した弁装着孔への装着により、簡単に換気装置を構成することができると共に、開放ケース201とカバー202により、弁体Tが、歩行に伴う衝撃から確実に保護され、耐久性にすぐれているという利点がある。また、逆止弁V1、V2の高さを2〜3〔mm〕にすることができるので、その占有スペースを小さくすることができる。
【0040】
ここで、開閉孔205a、205bと連通孔206a、206bとが互いに偏心させて形成されるので、弁体Tが、開閉孔205a、205bを開いたときに連通孔206a、206bを塞ぐことがなく、空気を円滑に流すことができる。さらに、吸気用逆止弁V1、排気用逆止弁V2は同一構造であるので、逆止弁を表裏選択することにより、いずれにも使用することができる。
【0041】
次に、靴内部34の通気構造について説明する。
換気靴30においては、換気装置によって、靴内部34外の空気が、靴内部34に吸引され、循環し、靴内部34外に排出されるようになっている。ところが、換気靴30を装着したときに装着者の足がアッパー31の内周面及び中敷板35の表面に隙間なく密着すると、靴内部34の通気性が悪くなる。その結果、靴内部34外の空気を靴内部34に取り込んだり、靴内部34で空気を循環させたり、靴内部34の空気を靴内部34外に十分に排出したりすることができなくなる。
【0042】
そこで、本実施の形態においては、図2図13で示すように、アッパー31の履き口部31aから爪先部31bまでの間の裏面、踵部31c及び側部31dの裏面及び中敷板35の表面には、凹凸溝列を有するシート80が貼着され、靴内部34の外気と連通する通気路41が形成される。これにより、靴内部34外が、通気路41を介して連通させられるので、靴内部34で空気を十分に循環させることができるとともに、靴内部34の空気を靴内部34外に十分に排出したり、靴内部34外の空気を靴内部34に十分に取り込んだりすることができる。
【0043】
これにより、靴内部34内外が、第1〜第3の通気路41〜43(図1参照)を介して連通させられるので、靴内部34内で空気を十分に循環させることができるとともに、靴内部34内の空気を靴内部34外に十分に排出したり、靴内部34外の空気を靴内部34内に十分に取り込んだりすることができる。
【0044】
本実施の形態において、凹凸溝列を有するシート80は、例えば、皮革に所定のピッチで段付き加工を施し、その裏面側に合成樹脂を塗布する等により形成される。
【0045】
このように、吸気通路L1を靴内部34を経由して外気と連通するようにしており、ヒール33などに開口を形成する従来構成とは異なり、該開口から雨水などが浸入することが無く、実用性に適したものとなる。
【0046】
次に、換気靴30の動作について説明する。
換気靴30を装着し、片方の足を踏み出すと、着地している他方の足に全体重が加わり、踵が上がって爪先で立つ状態になり、それに伴って、ソール32が圧縮、湾曲し、ポンプ室P内において下底板37と本底板38とが接近し、ポンプ室Pが圧縮されて圧力が高くなる。これにより、排気用逆止弁V2の開閉孔205bから弁体Tに空気圧が掛かって、図12鎖線のように内側に開き、開閉孔205bが開いて排気用逆止弁V2が開放され、ポンプ室P内の空気は、排気通路L2に吐出され、開口149a〜149dから靴内部34に排気される。このとき、吸気用逆止弁V1は閉鎖されている。
【0047】
次に、踏み出した一方の足を着地させ、他方の足を踏み出すと、他方の足の換気靴30が地面から離れてソール32が偏平な状態に戻り、ポンプ室Pが圧縮解除され、下底板37と本底板38とが離間させられ、ポンプ室Pが復元して負圧となる。これにより、吸気用逆止弁V1の弁体Tが図11鎖線のように内側に開き、吸気用逆止弁V1は開放され、靴内部34の空気が、図1の矢印方向に開口148a〜148cから吸気され、吸気通路L1、吸気用逆止弁V1を経由してポンプ室Pに送られる。これに伴い、靴内部34外の空気が靴内部34に吸引される。このとき、排気用逆止弁V2は閉鎖されている。
【0048】
このようにして、装着者が交互に足を踏み出して歩行すると、吸気通路L1からポンプ室Pに吸気された空気が、排気通路L2から靴内部34に排気され、靴内部34の換気が連続して行われる。
【0049】
本実施形態においては、靴内部34外の空気が、アッパー31の上縁から靴内部34に吸引され、アッパー31の上縁から靴内部34外に排出されるので、靴内部34外の空気を取り込むために、換気靴30のアッパー31、ソール32等に空気の取込み用の孔、空気の排出用の孔等を形成する必要がない。したがって、靴内部34の換気に伴って靴内部34に雨水等が進入することがない。
【0050】
また、前記突状スペーサ38a、38bが換気靴30の幅方向に延在させて形成されるので、装着者が歩行するときに中敷板35、中底板36、下底板37及び本底板38の湾曲が突状スペーサ38a、38bによって阻止されることがない。したがって、ポンプ室Pの容積を十分に変化させることができる。
【0051】
また、ポンプ室P内に、クッション材38c、38dが配設されるので、歩行により体重がかかりソール32が圧縮、湾曲させられ、ポンプ室P内において下底板37と本底板38とが近接させられた後、ソール32が偏平な状態に戻るときに、ポンプ室P内において下底板37と本底板38とを迅速に復元させ、離間させることができる。従って、靴内部34の換気を確実に行うことができる。
【0052】
さらに、本実施形態においては、図1に示されるように、吸気用逆止弁V1が踵Ar11より後方に配設され、排気用逆止弁V2が足指先Ar12より前方に配設されるので、歩行の際に吸気用逆止弁V1及び排気用逆止弁V2に荷重が加わって破損することはない。したがって、換気靴30の耐久性を向上させることができる。また、吸気用逆止弁V1及び排気用逆止弁V2が足に当たることがないので、装着者は違和感を感じることがない。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0054】
図14は本発明の第2実施形態における換気靴の縦断面図である。
本実施の形態において、ソール32は、足の裏面と当接する第2の底板としての中敷板235、該中敷板235より下方において中敷板235と重ねて配設された第1の底板としての中底板236、該中底板236より下方において中底板236と重ねて配設された下底板237及び該下底板237より下方において下底板237と重ねて配設された本底板238を備える。
【0055】
また、ポンプ室Pは、中敷板235と中底板236との間に形成され、吸気用逆止弁V1の連通孔206aを、第1〜第3の吸気案内路253、254、255を介してポンプ室Pに連通し、排気用逆止弁V2の開閉孔205bを、第1〜第3の排気案内路256、257、258を介してポンプ室Pに連通している。
【0056】
なお、前記ポンプ室Pは、中敷板235を変形させ、中底板236との間に、深さが数〔mm〕程度の十分に広い面積を有する空間を形成することによって形成され、ポンプ室P内には、発泡性ゴム等の弾性材料から成るクッション材238c、238dが、中敷板235と中底板236の間に貼着させて配設される。
【0057】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0058】
図15は本発明の第3実施形態における換気靴の縦断面図である。
本実施の形態において、ソール32は、足の裏面と当接する第2の底板としての中敷板235、該中敷板235より下方において中敷板235と重ねて配設された第1の底板として下底板237及び該下底板237より下方において下底板237と重ねて配設された本底板238を備え、中敷板235と下底板237との間に形成されるポンプ室Pを備える。
【0059】
該ポンプ室Pは、下底板237の上面に、周囲に周縁部を残して、深さが数〔mm〕程度の十分に広い面積を有する凹部を形成し、下底板237に中敷板235を貼り付け、密着させることによって形成される。
【0060】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0061】
図16は本発明の第4実施形態における換気靴の縦断面図である。
本実施の形態において、ソール32は、足の裏面と当接する中敷板235、該中敷板235より下方において中敷板235と重ねて配設された下底板237及び該下底板237より下方において下底板237と重ねて配設された本底板238を備え、中敷板235と下底板237との間に形成されるポンプ室Pを備える。
【0062】
次に、本発明の第5実施形態を図17図24に従って説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0063】
図17は換気靴の縦断面図である。
本実施の形態において、ソール32は、足の裏面と当接する中敷板530、該中敷板530の下に重ねて配設されたボード板540、ボード板540の下にアッパー31の折り返し部550を介して配設された第1下底板560、第1下底板560の下方に重ねて配設された第2下底板570、第2下底板570の下方に重ねて配設された本底板580を備え、第2下底板570の開口部571を、その上下で第1下底板560と本底板580とで覆うことにより、ポンプ室Pを形成している。本底板580の踵には、下方からヒール33が固着される。第1下底板560、第2下底板570及び本底板580は、その積層によりソール32をなす底板を構成する。
【0064】
底板の各構成を図18〜24に従って説明する。
図19で示す中敷板530は、その指位置に対応する前部に排気口となる複数の開口531が形成される。また、その後部には、吸気口となる4つの開口532が形成される。
【0065】
中敷板530と重ねられるボード板540は折返し部550上に接合されて、アッパー31を形成し、図18で示すように開口531と下部で一致する開口541と、開口532と下部で一致する開口542を有する。
【0066】
図18で示すように、折返し部550の内部には折返し部550の厚みにより連通開口551a、551bが形成される。連通開口551a、551bは踵近傍に形成された折返し部550と同じ厚さの遮断膜部552により遮断されており、連通開口551aの踵側で排気用逆止弁V2の連通孔206bと連通するようにし、前方に延在して、開口531,541に下方から対向している。この連通開口551aには、図20で示すように折返し部550と同じ厚さの薄板状のスペーサ555が配設される。
【0067】
スペーサ555の周囲が連通路553(図18図20参照)となり、この連通路553を介して、前方で開口531,541に連通する。さらには、連通開口551bは、後方で吸気用逆止弁V1の開閉孔205に上方から連通している。このスペーサ555は前部で開口531,541を塞がない形状とし、開口531,541に延在するようにしている。このスペーサ555により、連通路553の高さが圧縮すること無く保持される。
【0068】
図21で示す第1下底板560の踵部位には、前寄りに排気用連通孔561が、その後方には吸気用連通孔562が形成されている。排気用連通孔561は排気用逆止弁V2の連通孔206bに一致し、吸気用連通孔562は吸気用逆止弁V1の開閉孔205aに一致する。
【0069】
中間の底板である第2下底板570は、図22で示すように土踏まず部位から前方に掛けてポンプ室Pとなる開口部571が形成され、さらに踵部位に、前側に、排気用逆止弁V2が密に装着される矩形状の弁装着孔572が、後側に、吸気用逆止弁V1が密に装着される矩形状の弁装着孔573が形成される。この第2下底板570の厚は、各逆止弁V1,V2の厚と同じであり、2〜4mm程度に設定される。
【0070】
図23,24で示す本底板580はその後半部上面に共通路581が形成される。この共通路581は前端部で第2下底板570の開口部571に至り、後部で弁装着孔572,573を下方で横断する細長溝よりなる。また、前半部上面には二本のクッション材582が接着される。このクッション材582は、積層状態で、開口部571内に納まるように配置され、その板厚は第2下底板570の板厚とほぼ等しい。かかる構成により開口部571上に第1下底板560が覆われ、開口部571の下面側を本底板580で覆うことにより、開口部571により上下面が遮蔽されたポンプ室Pが構成される。クッション材582は、圧縮されたポンプ室の復元を助ける。
【0071】
なお、下底板560,570及び本底板580は、ゴム、軟質合成樹脂等の弾性材料から成り、接着剤等によって互いに接着され、いずれも底板として機能してソール32を形成する。
【0072】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
上述の実施態様は、スペーサ555,第1下底板560、第2下底板570を、夫々形成して表裏で接合する構成としているが、これを一体成形することも可能となる。
図25,26は、かかる構成を示し、上述の構成と同じ意義を有する構成には、同一符号を付して説明を省略する。
中間の底板である下底板600の下面には、溝状の開口部571,排気用弁装着孔572,吸気用弁装着孔573を形成し、弁装着孔572,573の直上に排気用連通孔561,吸気用連通孔562を形成している。また、下底板600の上面には、突状スペーサ555が一体的に突成されている。この下底板600の下面には、本底板580が配置され、開口部571の空間がポンプ室Pとなる。このようにスペーサ555,第1下底板560、第2下底板570が一体化されるため、ソールを構成する底板の積層枚数が減少し、構造が簡単となる。
【0073】
次に、第5,第6実施態様の換気作用について説明する。
歩行により、開口部571を上下で遮蔽して成るポンプ室Pに体重が掛かり湾曲すると、該ポンプ室Pが圧縮され、圧縮空気が共通路581を通り、排気用逆止弁V2の開閉孔205bの弁体Tを押し上げて開放し、連通孔206bから流出する。そして、排気用連通孔561、連通開口551a及び開口531,541からなる排気通路L2を通って、開口531から足指の下面に噴射される。
【0074】
次に、靴が地面から離れてポンプ室Pの圧縮が解除されると、ポンプ室Pが平板状に復元し、容積が増加してポンプ室P内が負圧となる。これにより共通路581及び吸気用逆止弁V1の連通孔206aを介して弁空間内が負圧となり、弁体Tが引き下げられて開放され、吸気用連通孔562、連通開口551b及び開口532,542とからなる吸気通路L1を通って、踵部分の乾燥した空気がポンプ室P内に流入する。
【0075】
この乾燥した空気は次の歩行に伴うポンプ室Pの圧縮により、靴内部34で、足指先下面に噴射されることとなる。これにより、靴内部34の換気が連続的になされることとなる。足指間への作用は、第1実施形態で記載したと同じであり、説明を省略する。
【0076】
かかる第5、第6実施形態にあっては、靴の中で最も強固で変形力を受けにくい、ヒール33の上となる踵位置に、逆止弁V1、V2が隣接して配置される。このため、逆止弁V1、V2の損壊が抑止され、換気靴自体の耐久性が向上する。
【0077】
排気用逆止弁V2を、土踏まずの部分、例えば、図7の突状スペーサ38aとクッション材38cとの間、又は突状スペーサ38aとクッション材38dとの間に配設したり、排気通路L2の直下に配設したりすることもできる。その場合、歩行の際に排気用逆止弁V2に荷重が加わらないので、排気用逆止弁V2が破損することはない。
【0078】
次に、本発明の逆止弁V1、V2の第2実施例について説明する。
図27は平面図、図28は吸気用逆止弁V1として用いた形態の断面図、図29は排気用逆止弁V2として用いた形態の断面図である。
【0079】
吸気用逆止弁V1及び排気用逆止弁V2は、同一構造であり、主面部fとその周囲の側面部wとからなり、下方が開放された、薄く、扁平な箱形の形状を有する開放ケース301、弁体T及び接着剤等によって開放ケース301に固定され、弁体Tの一縁を開放ケース301の裏面に押し付け、固定する固定部材303を備える。開放ケース301の主面部fには空気入口としての開閉孔305a,305bが形成される。この開放ケース301は、本発明の担持部材を構成する。
【0080】
吸気用逆止弁V1にあっては、図28で示すように、開放ケース301の開放面を下方に向けて吸気用弁装着孔152(図1)内に嵌入させることによって、開放ケース301の内部に弁空間が形成される。そして、吸気用逆止弁V1は、開閉孔305aの外側が吸気通路L1(図1)と、弁空間の下部(開閉孔305aの内側)がポンプ室Pと連通する。
【0081】
また、排気用逆止弁V2にあっては、図29で示すように、開放ケース301の開放面を上方に向けて排気用弁装着孔157内に嵌入させることによって、開放ケース301の内部に弁空間が形成される。そして、排気用逆止弁V2は、開閉孔305bの外側がポンプ室Pと、弁空間の上部(開閉孔305bの内側)が排気通路L2と連通させられる。
【0082】
本実施の形態においては、吸気用逆止弁V1、排気用逆止弁V2は同一構造であるから、上下反転させることによっていずれにも使用することができる。かかる構成にあっては、開放ケース301に弁体Tを固定して、一体化した構成であり、底板に形成した弁装着孔572,573への装着により、簡単に換気装置を構成することができると共に、開放ケース301周囲の側面部wにより弁空間が規定されるため、この開放ケース301の外形を弁装着孔572,573に一致させることにより、安定的に、弁装着孔572,573に保持される。また、部品点数が少なく、構造が簡単であるという利点もある。
【0083】
次に、本発明の逆止弁V1、V2の第3実施例について説明する。
図30は吸気用逆止弁V1として用いた形態の断面図、図31は排気用逆止弁V2として用いた形態の断面図である。
【0084】
逆止弁V1、V2は、プレート401、弁体T及び細板状スペーサ403,404により構成される。弁体Tは、プレート401の一側縁で接着剤等によってプレート401とスペーサ403間に固定される。またプレート401の他側縁には、弁体Tの他縁と対向させて、接着剤等によりスペーサ404が固着される。このスペーサ403,404の内方に、弁体Tの動作を可能とする弁空間が形成される。さらに、プレート401には空気入口としての開閉孔205a、205bが形成される。このプレート401は、本発明の担持部材を構成する。
【0085】
吸気用逆止弁V1として用いる場合には、プレート401を、図30で示すように、裏面(開閉孔205aの内側)を下方に向けて吸気用弁装着孔内に嵌入させることによって、その下部に弁空間を形成し、弁空間をポンプ室Pと連通させ、開閉孔205aを吸気通路L1と連通させる。
【0086】
また、排気用逆止弁V2として用いる場合には、プレート401を、図31で示すように、裏面(開閉孔205bの内側)を上方に向けて排気用弁装着孔内に嵌入させることによって、その上部に弁空間を形成し、弁空間を排気通路L2と連通させ、開閉孔205bをポンプ室Pと連通させる。
【0087】
かかる構成にあっても、プレート401に弁体Tを固定して、一体化した構成であり、底板に形成した弁装着孔への装着により、簡単に換気装置を構成することができると共に、構造が簡単で、製造が容易となる利点がある。
【符号の説明】
【0088】
30 換気靴
31 アッパー
32 ソール
34 靴内部
37、570、600 下底板(中間の底板)
38、580 本底板
152、157 弁装着孔
205a、205b 開閉孔
206a、206b 連通孔
201、301 開放ケース(担持部材)
202 カバー
305a、305b 開閉孔
401 プレート(担持部材)
405a、405b 開閉孔
572、573 弁装着孔
L1 吸気通路
L2 排気通路
P ポンプ室
V1 吸気用逆止弁
V2 排気用逆止弁
T 弁体
【要約】
換気靴を小型化することができるとともに、靴内部の換気を十分に行うことができるようにする。
アッパー(31)と、複数の底板を積層してなるソール(32)と、空気を靴内部(34)に取り込み、空気を靴内部(34)外に排出するための換気装置とを有する。換気装置は、空気を吸気するための吸気通路(L1)、空気を排気するための排気通路(L2)及び吸気通路(L1)において吸気された空気を排気通路(L2)に送るポンプ室(P)を備える。ソール(32)は、複数の底板を積層して構成し、ポンプ室(P)を底板間に扁平状に形成して、上下に他の底板が重なる中間の底板に弁装着孔(152、157)を形成して、該弁装着孔(152、157)に、担持部材を介して一体化された逆止弁(V1、V2)を装着した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31