(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ベッドに寝たきりとなったいわゆる寝たきり患者、または寝たきり老人の多くは、自らで体位変換を行い得ないため、身体と身体を支える支持面との接触部の血液循環が阻害され、褥瘡を起こし易いという問題を抱えている。また、睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる睡眠時無呼吸症候群や、いびきや歯ぎしりなどを抱えている者は、質の低い睡眠の継続によって慢性的睡眠不足の状態にあり、突然死のおそれすらある。
【0009】
また、腰痛や肩の痛みを抱えた患者、手術直後の患者等は、自己の痛みを和らげることのできる体位でないと眠りに付きにくいし、眠れた場合であっても睡眠中の自発的体位変動で突然痛みを感じて目が覚めてしまうといった問題を抱えている。
【0010】
このような原因による慢性的睡眠不足は、健全な生活を営むのを阻害すると共に、時には人命にかかわる重大事故を引き起こすおそれがあるが、本人自身がこのような睡眠障害を抱えていることに気付いていない場合が多い。
【0011】
上記に鑑み、本発明は、寝たきり患者の褥瘡が予防できるように定期的ないし不連続的または随時にベッド床面を傾斜駆動させることができ、また睡眠時における無呼吸・低呼吸・いびき・歯ぎしり等のいわゆる睡眠時異常を検知でき、かつ、睡眠時異常が検知されたときには当該異常を軽減させることのできる寝姿勢に体位を誘導する多方向傾斜可能ベッドシステムを提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するための一群の発明は次のように構成されている。
(1)第一の発明
寝者の背側を起こすための背上げ部を有する寝台と、前記寝台を支える寝台支持体と、前記背上げ部の頭側を高めて傾斜させる背上げ用駆動部と、を備える寝姿勢制御ベッドシステムであって、前記背上げ部は、異なった傾斜角度に調節できる背受け面と頭受け面とを有してなり、前記背受け面が傾斜隆起していないときの傾斜角を0°とし、傾斜隆起させたときの前記背受け面の傾斜角をθx 、前記傾斜角θxのときの背受け面の傾斜延長線を基準0°とした場合における前記頭受け面の傾斜角をθyとするとき、前記背上げ用駆動部は前記背受け面と前記頭受け面とを、下記数1を満たすように傾斜隆起させることを特徴とする寝姿勢制御ベッドシステム。
【0013】
[数1]
0°<θx≦70°、かつ、−45°≦θy<0°、かつ、−30°≦θx +θy ・・・(1)
【0014】
この構成における傾斜角θxは、背受け面が傾斜隆起していないときの傾斜角を0°とし、これを基準とする仰角(プラスの角度)であり、傾斜角をθyは、傾斜角θxのときの背受け面の傾斜延長線を0°とし、前記傾斜延長線方向を基準とするマイナスの仰角(プラスの俯角)である。
【0015】
この構成の寝姿勢制御ベッドシステムに仰臥位で横たわった寝者は、0°<θx≦70°に規定されているので、腰部側よりも頭部側がより高い状態に保持される。また、また、−45°≦θy<0°であるので、頭は背部に対し最大45°反り返った状態から、背部とほぼ同等の角度の範囲内で変化することになる。更に、「−30°≦θx +θy」であるので、傾斜隆起していないときの背受け面に対する頭部の仰角は最大−30°になる。つまり、本発明にかかる寝姿勢制御ベッドの寝台が重力方向に対し垂直(水平面に対して平行)に設定されている限り、頭部の傾きは水平面に対し最大−30°の傾きになる。
【0016】
例えば、寝者の気道確保のために、頭から胴体を貫く中心線に対して頭部を10°そり返す場合(仰角θyが−10°)、頭部が水平のままであっても、背受け面の傾斜角度を10°とすれば、頭から胴体を貫く中心線に対して頭部のみを10°そり返す(後屈させる)ことができ、気道を広げる(確保する)ことができる。この姿勢であると、心臓に負担がかかることがないと共に、頭部に血液が集まることがない。よって寝者に負担を掛けることなく、気道を拡張することができる。
【0017】
(2)第二の発明
第二の発明は、上記第一の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記背上げ用駆動部が、数2を満たすように、前記背受け面と前記頭受け面とを傾斜隆起させる構成とする。
[数2]
0°<θx≦70°、かつ、−45°≦θy<0°、かつ、0°≦θx +θy ・・・(2)
【0018】
(3)第三の発明
第三の発明は、寝者の背側を起こすための背上げ部を有する寝台と、前記寝台を支える寝台支持体と、前記背上げ部の頭側を高めて傾斜させる背上げ用駆動部と、を備える寝姿勢制御ベッドシステムであって、前記背上げ部は、異なった傾斜角度に調節できる背受け面と頭受け面とを有してなり、前記背受け面が傾斜隆起していないときの傾斜角を0°とし、傾斜隆起させたときの前記背受け面の傾斜角をθx 、前記傾斜角θxのときの背受け面の傾斜延長線を基準0°とした場合における前記頭受け面の傾斜角をθyとするとき、前記背上げ用駆動部は、前記背受け面と前記頭受け面とを、下記数3を満たすように傾斜隆起させる、ことを特徴とする寝姿勢制御ベッドシステムである。
[数3]
2°≦θx≦85°、かつ、−45°≦θy≦−2°、かつ、0°≦θx +θy・・・(3)
【0019】
この構成では、背受け面に対する頭受け面の下げ角度が2°(仰角として−2°)以下になり、且つ水平面(鉛直線に直交する平面)に対する頭受け面の角度(仰角)が0°以上になるように規定されている。つまり、この構成では、背受け面を2°以上傾斜させることにより、胴体を貫く人体中心線に対し頭を2°以上下げることが可能であるが、水平面に対し頭は下がらないという条件を保持させることができる。ここで、θxの下限は2°以上であればよいが、気道拡張効果を高めるため、例えば3°、5°、7°、又は10°以上とする。
【0020】
(4)第四の発明
第四の発明は、上記第一の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝台支持体が、前記寝台を傾斜駆動させる寝台傾斜駆動部を備える構成とする。
【0021】
寝たきり患者などは、自力で体位変換ができなかったり、極端に体動回数が少なかったりする。このような寝たきり患者は身体の特定部位が長時間にわたり圧迫された状態になるために褥瘡(床ずれ)を生じる。この褥瘡を防止するには定期的(例えば2時間ごと)に体位変換をする必要があるが、この構成では寝台を傾斜させることにより、寝者の重心を変化させることができ、傾斜の下側方向に寝者の寝返りを誘導できるので、褥瘡予防が図れる。
【0022】
また、この構成によると、背受け面と頭受け面とで首を介して身体本体と頭とを「へ」字状に屈曲させ、かつ、寝台傾斜駆動部を駆動させて寝台を傾斜させて顔を上向きとすることができる。例えば、横向きであっても低呼吸であったり、いびきが発生している場合に、顔を上向きとなるように誘導し、首部分を「へ」の字状に屈曲させると、気道を直接拡張して低呼吸やいびきを解消できる。
【0023】
(5)第五の発明
第五の発明は、上記第一から第四の何れかの発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、さらに、前記寝台上の寝者の睡眠状態を監視する睡眠監視部と、前記睡眠監視部の監視データに基づいて睡眠時異常の有無を判定する睡眠時異常判定部と、前記睡眠時異常判定部の判定結果に基づいて前記θxおよびθyを決定し、前記決定条件が満たされるように前記背上げ用駆動部を駆動制御する背上げ傾斜制御部と、を備える構成とする。
【0024】
寝者自身は、自己の睡眠中の状況、例えば睡眠時無呼吸の発生、いびきの発生、歯ぎしりの発生などを知ることはできない。また、寝たきり患者などは、極端に体動回数が少なかったりするが、これを自力で改善することはできない。また、腰痛や肩痛などの持病を持つ者や外科手術直後の患者は、睡眠中の無意識な体位変換により、突然に痛みを感じて覚醒してしまうといったことがあるが、上記構成であると、睡眠監視部、睡眠時異常判定部、傾斜駆動制御部と、背上げ用駆動部及び/又は寝台傾斜駆動部とが協働して定期的、断続的、または任意的に、寝者の睡眠の質の改善を図るように作用する。
【0025】
上記構成の寝姿勢制御ベッドシステムの技術的・医学的意義を説明する。無呼吸や低呼吸は、睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが主な原因として生じる。仰向け状態で寝ている場合、舌根部や軟口蓋による気道の閉塞が起こり易いので、無呼吸や低呼吸状態になり易い。これに対し、横向きに寝ている場合には、舌根部や軟口蓋による気道の閉塞が起こり難い。よって睡眠時無呼吸や低呼吸状態が発生したとき、寝姿勢を横向きにしてやったり、頭部をそり返したりすると、これらが改善することになる。
【0026】
また、いびきは、睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道の一部を閉塞することにより発生するので、いびきが発生したときに睡眠時無呼吸の場合と同様にすることにより、いびきが改善する場合が多い。他方、歯ぎしりは、横向きやうつ伏せで寝ている場合に起こり易く、仰向けで寝ている場合に起こり難いので、歯ぎしりが発生したときには、仰向けにしてやると歯ぎしりが改善する場合が多い。また、歯ぎしり且ついびきの場合、仰向けにして頭部をそり返すと、いずれもが改善する場合が多い。
【0027】
上記発明構成では、睡眠監視部が寝者の状態を監視しており、睡眠時異常判定部が、睡眠時異常(無呼吸・低呼吸・いびき・歯ぎしりなど)の発生の有無を判定する。そして睡眠時異常判定部が異常有りと判定した場合、その情報に基づいて背上げ傾斜制御部が背上げ用駆動部を駆動させて上記数1、数2、または数3の条件を充足しつつ背受け面と頭受け面とを持ち上げ傾斜させたり、寝台を傾斜駆動させたりする。これにより、寝台に横たわっている寝者の気道を広げたり、睡眠時異常が起き難い体位への体位変換を誘導したりすることができる。
【0028】
(6)第六の発明
第六の発明では、上記第四の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、さらに、前記寝台上の寝者の睡眠状態を監視する睡眠監視部と、前記睡眠監視部の監視データに基づいて睡眠時異常の有無を判定する睡眠時異常判定部と、前記睡眠時異常判定部の判定結果に基づいて前記θxおよびθyを決定し、前記決定条件が満たされるように前記背上げ用駆動部を駆動制御する背上げ傾斜制御部と、を備え、前記背上げ傾斜制御部は、前記睡眠時異常判定部の判定結果に基づいて前記θxおよびθyを決定すると共に、前記寝台の傾斜方向および傾斜角度を決定し、前記各決定条件が満たされるように前記背上げ用駆動部及び/又は前記寝台傾斜駆動部を駆動制御する。
【0029】
この構成では、前記背上げ傾斜制御部が、前記睡眠時異常判定部からの情報に基づいて、背上げ部の傾斜隆起と寝台の左右方向又は前後方向の傾斜とが寝者に協働的に作用するように、前記背上げ用駆動部と前記寝台傾斜駆動部とを駆動制御する。これにより、寝者の病態に一層きめ細かに対応させた駆動が可能になる。例えば、前記背受け面と頭受け面とを適度に持ち上げて傾斜させ(例えば2°〜15°、または3°〜30°に傾斜させ)、寝者の背部と頭部とを首部で「へ」字状に屈曲させる。この状態で寝台を右左の何れかの方向に、例えば2°〜8°、好ましくは2.5°〜5°傾けて、顔を上向きに誘導する。これにより、睡眠を邪魔することなく、又は寝者に殆ど違和感を与えることなく、又は寝者に負担を掛けることなく、睡眠時異常を改善することができる。
【0030】
(7)第七の発明
第七の発明は、上記第一から第六の何れかの発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムが、更に寝者の頭が前記頭受け面上に存在するか否かを検知する頭検知部を備える。
【0031】
例えば、頭受け面上に寝者の頭が存在しない場合には、頭受け面を傾斜させても気道拡張効果を奏さないので、寝者の頭が前記頭受け面上に存在するか否かを知ることは重要である。よって、好ましくは頭検知部の検知結果をディスプレイに表示できるようにしたり、寝者の頭が頭受け面上に存在しない場合には、警告ブザーを鳴らしたりするなどして、寝者の寝姿勢を正すよう促すシステムとするのがよい。また寝者の頭が頭受け面に存在しない場合、前記背上げ傾斜制御部が、前記頭受け面の傾斜角度を背受け面の傾斜角度と同じ(θ
y=0°)にするように、前記背上げ用駆動部を駆動制御する構成とするのもよい。
【0032】
(8)第八の発明
第八の発明は、上記第一から第七の何れかの発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、更に、前記頭受け面に対し寝者の顔が仰向き、右下向き、左下向き、顔臥せの何れの状態にあるかを検知判定する顔向き判定部を備える構成とする。
【0033】
前記したように、仰臥位であるのか、側臥位であるのかと、睡眠時異常の種類とが密接に関連している。また、寝姿勢に対応させて寝台の傾斜方向を決めたり、仰向きでない場合には頭受け面を傾斜させないようにしたりする必要がある。顔の向きは寝姿勢を端的に表しているので、頭受け面に対する寝者の顔向き(仰向き(上向き)、右下向き、左下向き、顔臥せ(下向き))を知ることにより、適正にベッドシステムを駆動制御できる。
【0034】
よって好ましくは顔向き判定部が判定した情報に基づいて前記背上げ傾斜制御部が前記背上げ用駆動部および前記寝台傾斜駆動部を駆動制御する構成とする。例えば寝者の顔向きが右下向きである場合には、寝者の左肩が下がる方向に寝台を傾斜させるようにすることにより、寝者の寝姿勢を上向きないし左下向きに誘導することができる。
【0035】
ここで上記頭検知部または顔向き判定部は、例えば碁盤目状に多数の区画が設けられた圧力検出シートで構成することができる。このようなシートを頭受け面上に配置し、圧力分布を検知すると、その圧力分布パターンの形状から、頭の存否や顔の向きなどが判定できる。
【0036】
(9)第九の発明
第九の発明は、上記第五又は第六の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、更に寝者の頭が前記頭受け面上に存在するか否かを検知する頭検知部と、前記頭受け面に対し寝者の顔が仰向き、右下向き、左下向き、顔臥せの何れの状態にあるかを検知判定する顔向き判定部と、を備え、前記頭検知部は、更に、前記頭受け面のどの区画に寝者の頭が存在するかを検知する頭位置検知機能を備え、前記背上げ傾斜制御部は、前記頭検知部からの頭位置情報と、前記顔向き判定部からの顔向きに関する情報に基づいて、前記頭受け面の傾斜角度および前記寝台の傾き方向を定め、前記背上げ用駆動部及び/又は前記寝台傾斜駆動部を駆動制御する構成とする。
【0037】
寝台上における寝者の寝姿勢に偏りがあり、頭の位置が頭受け面に適正に乗っていない状態で背上げ用駆動部や寝台傾斜駆動部を駆動させると、本願発明の所定の作用効果が得られにくい。上記構成であると、背上げ用駆動部及び/又は寝台傾斜駆動部を適正的確に駆動制御することができるので、本願発明の所定の作用効果が得られる。
【0038】
例えば、寝台上における寝者の寝姿勢に偏りがあり、頭の位置が頭受け面の右側に偏っている場合において、右側が下がるように寝台を傾斜させると、寝者の頭が頭受け面から外側に出てしまうおそれがあるので、この場合には、右側が下がるような傾斜を規制する。また、頭の位置がヘッドフレーム側(背受け面から遠い側)に出過ぎている場合において、[θx +θy]のマイナス値が大きいと(例えば−10°超、または−20°超)であると、頚部への負担が大きくなり、頸部捻挫といった事故が起きるおそれがある。また、頭の位置がヘッドフレーム側に出過ぎている場合に、寝台を前後方向に傾斜させ頭側を下げると、頭がベッド長手方向からはみ出すおそれがある。よってこのような場合には頭側を下げる傾斜を規制するのが好ましい。
【0039】
ここで前記頭検知部が検知する区画については、頭受け面を例えば「右」、「中央」、「左」の3つの区画に分ける(寝台短手方向に3分割)。または、頭受け面を例えば「上」、「中央」、「下」の3つの区画に分ける(寝台長手方向に3分割)。あるいは、例えば頭受け面を9区画に分割し、左1〜3、中央1〜3、右1〜3の9区画を形成する(例えば、3が下側、1が上側)。この場合、面積中心を含む「中央2」に頭重心が位置したときが最適な寝姿勢となる。
【0040】
(10)第十の発明
第十の発明は、床面を有するベッド本体と、前記床面を傾斜駆動させる床面傾斜駆動部と、前記床面上に寝ている寝者の睡眠状態を監視する睡眠監視部と、前記睡眠監視部の監視データに基づいて睡眠時異常の有無を判定する睡眠時異常判定部と、前記睡眠時異常判定部の判定結果に基づいて前記床面を傾斜駆動させるように前記床面傾斜駆動部を制御する傾斜駆動制御部と、を備える寝姿勢制御ベッドシステムである。
【0041】
この構成は、上記第六の発明と異なり、背上げ部を有さないがその他の点においては概ね同様である。この構成によると、背上げ部に基づく気道拡張効果以外の作用効果については上記第四及び第六の発明の説明で記載したと概ね同様な効果が得られる。
【0042】
この構成におけるベッド本体は、公知の吊下げ構造ベッド(特開2009−89860)やその他の公知のベッド枠組み構造を用いることができる。また、床面傾斜駆動部の構成については、特段の限定はなく、例えば油圧やモータ等を用いて床面を傾動する駆動手段と、油圧やストッパ(係止部材)等を用いて傾斜状態を保持する保持手段と、を備える構成とすることができる。
【0043】
また、睡眠監視部は、睡眠時異常の指標となる監視要素の何れか1つ又は複数と、寝者の顔向きと、を監視し検知する。上記監視要素としては、例えば心拍数、血圧、体温、体表温度、脳波、血中酸素濃度、体動数、体位変化、寝者周辺のCO
2量、寝者の口、鼻周辺のガス流速、いびき音、歯ぎしり音などが挙げられる。これらを検知するため、睡眠監視部には、例えば、寝る者の顔向きを監視する監視カメラ、頭が載る床面部分または当該部分を覆う敷布団、マットレスなどの上、或いは枕の上に配置した感圧シート、または頭部に装着された3軸センサ、及び睡眠時異常の指標となる監視要素を監視するための、終夜睡眠ポリグラフィー、脳波センサ、心電・心拍・体表温度・体幹部の3軸加速度をリアルタイムで測定でき記録できるバイオセンサ、脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)をモニターできるパルスオキシメータ、体動を監視できるシート状の多点感圧センサ、体動電波センサ、監視カメラ、空気流速センサ、気体成分センサ、音センサ、振動センサなどのセンサを配置する。
【0044】
睡眠時異常判定部は、中央演算処理装置などの処理装置と記憶装置とを備えてなるものであり、睡眠監視部が検知した情報と、前記記憶装置に格納されている判定基準情報と、を照合し比較することにより睡眠時異常の有無、及び/又は、睡眠時異常の種類を判定する。睡眠時異常の種類とは、例えば無呼吸、低呼吸、いびき、歯ぎしり、体動異常(過多、過少)、体温異常(過低温、過高温)、血圧異常(過高血圧、過低血圧)、心拍数異常(過多、過少)などであり、判定基準情報としては、例えば正常人の単位時間当たりの心拍数や体動数、体表温度、血中酸素濃度などなど、上記監視要素との関係で決定されるべき基準情報である。なお、前記記憶装置は、前記処理装置が有線ないし無線回線を介して記憶装置にアクセスできる構成であればよく、記憶装置自体が当該ベッドの設置場所に存在していなくともよい。また、処理装置は、睡眠監視部の監視情報を取得し、判定処理を行える構成であればよく、処理装置自体が当該ベッドの設置場所に存在していなくともよい。
【0045】
傾斜駆動制御部は、上記睡眠監視部の監視情報を用いて寝者の顔向きを判定するとともに、この判定情報と上記睡眠時異常判定部の判定結果とに基づいて床面を傾斜駆動させるように床面傾斜駆動部を制御するものであり、中央演算処理装置などの処理装置と、顔向きを判定するための顔向き判定用情報及び床面傾斜駆動部を制御するソフトウエア情報を格納する記憶装置とを備えてなる。傾斜駆動制御部は、傾斜駆動制御部の記憶装置に記憶された顔向き判定用情報と、上記睡眠監視部の監視情報と、照合することにより顔向きの判定を行う。ここでいうソフトウエア情報は、上記したごとく、例えば睡眠時異常判定部の判定結果が無呼吸である場合に、床面傾斜駆動部に無呼吸を改善できる方向(寝者の寝姿勢を側臥位に誘導する方向)にベッドを傾斜させるソフトウエア情報である。
【0046】
ここで、例えば仰臥位でなく、側臥位において無呼吸ないし低呼吸が検知された場合においては、先ず寝者を他の体位(仰臥位や逆方向の側臥位)に誘導し、この状態で無呼吸ないし低呼吸を監視する。そしてこの状態において無呼吸ないし低呼吸が改善しない場合には、寝者の体位を異なる体位に誘導する。これでも無呼吸ないし低呼吸が改善されない(無呼吸ないし低呼吸が検知される)場合には、ブザーを鳴らすなどして寝者を眠りから覚醒させる構成とすることができる。このように傾斜駆動動作手順は任意に設定することができ、これは傾斜駆動制御部を構成する記憶装置に、そのように床面傾斜駆動部を駆動制御するソフトウエア情報を格納しておくことにより実現することができる。歯ぎしりやいびきについても適当な手順を定め、そのように傾斜駆動動作させることのできるソフトウエア情報を傾斜駆動制御部の記憶装置に格納しておけばよい。
【0047】
なお、上記睡眠時異常判定部と同様に、前記記憶装置は、前記処理装置が有線ないし無線回線を介して記憶装置にアクセスできる構成であればよい。また、睡眠時異常判定部の処理装置が傾斜駆動制御部の処理装置を兼ねる構成であってもよく、睡眠時異常判定部の記憶装置が傾斜駆動制御部の記憶装置を兼ねる構成であってもよい。また、上記構成に例えばディスプレイ又は赤ランプ又はブザーを付加し、睡眠時異常判定部が寝者の体動数が少ないと判定した場合に、ディスプレイにその旨を表示し、又は赤ランプを点灯し、又はブザーを鳴らすなどすることにより、看護者が任意的にベッド床面を傾斜駆動させる構成としてもよい。
【0048】
(11)第十一の発明
第十一の発明は、上記第十の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、寝者の重心を検知する重心位置検知部を備え、前記傾斜駆動制御部は、前記睡眠時異常判定部が睡眠時異常有りと判定したときに、前記床面における寝者の重心位置が、前記床面の傾斜方向に直交し且つ前記床面の面積中心点を含む傾斜床面中央線よりも傾斜方向上方に位置するように、前記床面傾斜駆動部の傾斜駆動を制御する構成とする。
【0049】
上記重心位置検知部としては、ベッド本体やベッド本体に載置されるベットマットに重力センサ、多点感圧センサを設ける構成を採用でき、また、ベッド上方に画像撮影装置を設け、画像解析により重心を求める構成などを採用することができる。重心位置検知部を備える上記構成であると、体位変換に起因して寝者がベッドから転落することを防止できる。
【0050】
(12)第十二の発明
第十二の発明は、上記第十一の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、睡眠時異常が判定されたときにおける寝者の重心位置を基準とし、床面傾斜後の重心位置が閾値を超えて移動した場合、前記傾斜駆動制御部は、前記床面の傾きを減少させる方向に前記床面傾斜駆動部の傾斜駆動を制御する構成とする。
【0051】
床面が傾斜したことにより、睡眠時異常が判定されたときにおける寝者の重心位置を基準として寝者の重心位置が閾値を超えて移動した場合、そのままベッド床面の傾斜角度を保持し、又は傾斜角度を大きくすると、寝者がベッドからずり落ちるなど不都合が生じる。上記構成であると、寝者の重心位置の移動が閾値を超えた場合には、ベッド床面の傾きを減らすので、寝者がベッドからずり落ちるなどの不都合を防止することができる。ここで、上記閾値は、例えば寝者の体力や病態に、ベッド床部面積の大きさやマット特性(滑り易さ、圧縮反発特性、圧縮比)などを考慮して定める。
【0052】
(13)第十三の発明
第十三の発明は、上記第十の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、前記床面がベッド長手方向に向いたベッド長手方向を第1傾斜軸とし前記第1傾斜軸を傾斜中心として傾斜駆動でき、かつ、前記第1傾斜軸に直交する第2傾斜軸を傾斜中心として傾斜駆動できる構造とする。
【0053】
寝者はベッド長手方向の一方に頭を向け、他方に足を向けた形で、ベッド上に通常仰臥位で横たわる。よって第1傾斜軸を傾斜中心として床面を傾斜させることにより、寝者の床面に対する重心位置を変化させることができる。例えば仰臥位を側臥位に変化させることができる。この場合、例えば第2傾斜軸を傾斜中心として傾斜駆動させ、かつ第1傾斜軸を傾斜中心として床面を傾斜させるなど、ベッド床面を左右前後に傾斜させるようにすると、重心位置の変化や体位変換がし易い。また、第2傾斜軸を傾斜中心として傾斜させることにより、寝者の上半身を起こし、食事させるなどすることができる。なお、ここでいう「ベッド長手方向に向いたベッド長手方向」とは、長方形床面の一方の辺(頭側の辺)とこれに対向する他方の辺(足側の辺)のそれぞれの辺上の任意の点同志を結ぶ線分の方向を意味している。よって、第1傾斜軸は、ベッド床面の面積を左右に2等分する中央線(長手方向中央線)に平行であるとは限らない。ただし、長手方向中央線と第1傾斜軸とを一致させるのもよい。
【0054】
(14)第十四の発明
第十四の発明は、上記第十三の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、寝者の重心を検知する重心位置検知部を備え、前記傾斜駆動制御部が、睡眠時異常が判定されたときにおける寝者の重心位置を基準とし、床面傾斜後の重心位置が閾値を超えて移動した場合、前記床面の傾きを減少させる方向に前記床面傾斜駆動部の傾斜駆動を制御する構成とする。
【0055】
この構成であると、寝者の重心位置と閾値との関係において床面傾斜駆動部の傾斜駆動を適正に制御できる。寝者による体位変換が行われた後にもベッド床部を更に傾斜させたり、傾斜させたままとしたりすると、寝者の体位安定性が害され、更には寝者がベッドから転落するおそれが生じる。上記構成であるとベッド床面の傾斜程度を常に適正に管理されるので、このようなことがない。
【0056】
上記構成における寝者の重心を検知する重心位置検知部は、例えば重心センサ、多点感圧センサ、体動電波センサ、監視カメラなど用いて構成する。多点感圧センサの場合には例えば最も強い圧力が感知されて部分を重心とする。監視カメラの場合には、画像解析により重心を求めるようにするなどする。
【0057】
(15)第十五の発明
第十五の発明は、上記第十ないし十四の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムの何れかにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、前記床面に載置されるベッドマットを更に備え、前記ベッドマットが、マット幅方向の両端部からベッド長手方向に沿う中央部に向かって窪んだ凹形状である構成とする。
【0058】
この構成では、床面上にベッドマットを配置し、この前記ベッドマットの形状を、マット幅方向の両端部からベッド長手方向に沿う中央部に向かって窪んだ凹形状とする。この形状のベッドマットであると、ベッド床面が長手方向に直交する方向(左右方向)に傾斜したとき、凹形状のベッドマットの両端部が、寝者がベッドマットの外にズリ落ちるのを防止する。なおマット幅方向の両端部とは、4辺をもったマットの場合、一対の長辺部分を意味する。
【0059】
(16)第十六の発明
第十六の発明は、上記第十五の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムにおいて、前記ベッドマットのベッド長手方向に直交する断面における凹形状が、楕円弧形状である構成とする。
【0060】
上記凹形状が楕円弧形状であると、凹形状マットの底から左右端部に向かって、徐々に曲率が大きくなるので、寝者に違和感を与えにくく、しかもベッド床面が長手方向に直交する方向(左右方向)に傾斜したときに、寝者がベッドマットの外にズリ落ちにくい。また、楕円弧形状であると、左右方向への傾斜により、円滑に寝者の体位変換を行える。
【0061】
(17)第十七の発明
第十七の発明は、上記第十ないし十四の発明にかかる寝姿勢制御ベッドシステムの何れかにおいて、前記寝姿勢制御ベッドシステムは、前記床面に載置されるベッドマットを更に備え、前記ベッドマットの中央部分の圧縮率が、両端部の圧縮率よりも大きいものとすることができる。
【0062】
この構成であると、寝者がベッドマット上に寝た場合、ベッドマットの中央部分がより深く沈み込んで包み込むようにして寝者を保持するので、ベッド床面が左右に傾斜した場合、寝者がベッドマットから滑り落ちるといった事故が起きにくい。なおこの構成において、ベッドマットの形状を凹形状とすることもでき、更にこの場合においても凹形状を楕円弧形状とすることもできる。
【発明の効果】
【0063】
本発明によると、寝者の身体状態に合わせて寝姿勢を自動的または任意に規制ないし誘導できる寝姿勢制御ベッドシステムを提供できる。また本発明によると、寝者の睡眠時の体動や異常を自動監視することができ、睡眠時異常が検知されたときには、自動的に背受け面と頭受け面を隆起傾斜させ、及び/又は寝台を傾斜させることのできる寝姿勢制御ベッドシステムを提供できる。
【0064】
このような本発明寝姿勢制御ベッドシステムは、自力で寝返りできない寝者の体位変換や重心位置の移動を補助することができるので、寝たきり患者の褥瘡(床擦れ)を予防することができる。また、寝者が抱えている無呼吸・低呼吸、いびき、歯ぎしりなどの睡眠時異常を解消ないし改善することができる。また本発明寝姿勢制御ベッドシステムは、手術直後の患者、四十肩・五十肩の患者、腰痛を持った患者、身体の一方側面に痛みを有する患者、片方の腕に痛み箇所を有する患者など、寝姿勢によって痛みの程度が変動する患者に対して、その寝姿勢を痛みが和らぐ寝勢に保持させることができる。
【0065】
このように本発明は、種々の睡眠障害患者の睡眠の質を高めることができるという顕著な効果を奏する。また、心臓病患者などの場合には、患者の体勢を心臓への負荷が少ない体勢に保持させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0068】
〔実施の形態1〕
図1に、ベッド本体10と制御操作部11からなる本発明の実施の形態1にかかる寝姿勢制御ベッドシステム1の全体図を示す。このベッド本体10は、寝者が横たわる寝台と、この寝台を支える寝台支持体とで構成されている。寝台の基本的枠組みは、横枠部材28・28と、横枠部材28・28の両端を繋ぐ縦枠部材27・27、及び縦枠部材27・27の間にあって横枠部材相互間を繋ぐ連結部材37・37とで構成され、この枠組みは、ヘッドフレーム12及びフットフレーム13の補強材32部分にそれぞれ取り付けられた吊下げ部材15・15により吊り下げられた構造である。この枠組みからなる寝台の上面が、寝者が直接または間接的に横たわる「床面」となる。
【0069】
また、寝台は、頭受け面部17、背受け面部16、腰受け面部20、大腿受け面部24、下腿受け面部25からなる(
図2参照)。これらの受け面部材は、隣の受け面部材との間が回動自由に連結されている。また、頭受け面部17を持ち上げ駆動する頭受け面用駆動部(アクチュエータ19)、背受け面部16を持ち上げ駆動する背受け面用駆動部(アクチュエータ18)、大腿受け面部24及び下腿受け面部25を持ち上げ駆動する膝曲げ用駆動部(アクチュエータ21)が、縦枠部材27の内側の適当な位置に配置されている。
【0070】
頭受け面部17には、
図5に示すように、頭検知部を兼ねる顔向き判定部としての感圧シート36が配置されている。このシートは碁盤目状に多数の区画が設けられた圧力検出シートであり、荷重が加わると碁盤目ごとで荷重の大きさに比例して電流が流れる構造となっており、圧力分布パターンが判る構造みになっている。制御操作部11の記憶部には、予め頭位置の検知情報や顔向きを検知する情報(顔向き検知用パターン)が記憶されており、検知した圧力分布パターンの形状と制御操作部11の記憶部に記憶された情報とを比較することにより、頭の存否や顔向き、頭の位置を判定できるよう構成されている。
【0071】
寝台を支える寝台支持体は、下側に足部30を有する逆U字状のヘッドフレーム12及びフットフレーム13と、ヘッドフレーム12とフットフレーム13とを連結する2つ以上のヘッドフット連結部材29と、寝台を上下動させる寝台上下動用駆動部(アクチュエータ22・23)と、足部30の最下端に取り付けられたストッパー付コロ33を有してなる。このような寝台支持体のヘッドフレーム12及びフットフレーム13のそれぞれには、
図3(a)に示すように、補強材32が溶接され、この補強材32・32の頂上近傍に、
図3(b)に示すように、吊下げ部材15・15が回転軸ピン14・14で軸支されて、吊下げられている。これにより寝台が寝台支持体に吊下げられた構造の実施の形態1にかかるベッド本体が構成されている。ここで
図3(a)は、フットフレーム13の外方からベッド本体を見た場合におけるベッド本体正面図であり、
図3(b)は、フットフレーム13部分を上方から見た平面図である。
【0072】
また、吊下げ部材15には寝台左右傾斜用駆動部26が取り付けられ、これにより寝台を左右方向に傾斜(回転軸ピン14を中心に回動)させることが可能となっている(
図4(a)、(b)参照)。また、寝台上下動用駆動部23(ヘッドフレーム側は22)、寝台左右傾斜用駆動部26、頭受け面用駆動部19、背受け面用駆動部18、膝曲げ用駆動部21は、リード線31によって制御操作部11と繋がれており、制御操作部11の駆動制御が各駆動部に伝達される。なお、
図1では、寝台左右傾斜用駆動部26はフットフレーム13側の吊下げ部材15にのみ取り付けられているが、ヘッドフレーム12側に取り付けてもよく、両方に取り付けてもよい。
【0073】
図6に、本実施の形態にかかるベッドシステムのブロック図を示す。ベッドシステムは、寝台と寝台支持体とを有するベッド本体801と、睡眠監視部802と、睡眠時異常判定部803と、背上げ傾斜制御部804と、背上げ用駆動部805と、顔向き判定部806と、頭位置検知部807とを備えている。そして、背上げ傾斜制御部804の制御によって、背上げ用駆動部805が背上げ駆動する。これらのうち、睡眠監視部802、睡眠時異常判定部803、背上げ傾斜制御部804、顔向き判定部806、頭位置検知部807は、上記制御操作部を構成する要素である。
【0074】
この構成において、睡眠監視部802は、睡眠時異常の指標となる監視要素の何れか1つ又は複数を監視し検知するものである。監視要素としては、例えば心拍数、血圧、体温、体表温度、脳波、血中酸素濃度、体動数、体位変化、寝者周辺のCO
2量、寝者の口、鼻周辺のガス流速、いびき音、歯ぎしり音などが挙げられ、これらの監視要素を検知するために、睡眠監視部には、例えば終夜睡眠ポリグラフィーや脳波センサ、或いは心電・心拍・体表温度・3軸加速度(姿勢)をリアルタイムで測定でき、記録することができるバイオセンサ、脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)をモニターできるパルスオキシメータ、体動を監視できるシート状の多点感圧センサ、また、体動電波センサ、監視カメラ、空気流速センサ、気体成分センサ、音センサ、振動センサなどのセンサが1つ以上ベッド本体周辺に配置されている。
【0075】
睡眠時異常判定部803は、睡眠監視部802の監視データに基づいて睡眠時異常の有無を判定するものであり、睡眠監視部802が検知した情報と、記憶装置に格納されている判定基準情報とを照合し比較することにより、睡眠時異常の有無を判定し、さらに睡眠時異常の種類を判定するものであってもよい。
【0076】
頭位置検知部807は、頭受け面における寝者の頭の存否及び頭位置を検知するものである。この検知は、頭受け面に設けられた頭検知部の情報を用い、記憶装置に記憶された情報と照合して行う。また、顔向き判定部806は、寝者の顔向きを判定するものである。頭位置の検知や顔向きの判定方法としては、例えば監視カメラを頭位置検知部807や顔向き判定部806の主要要素とし、監視カメラで撮影した情報を記憶装置に記憶された情報と照合することにより行うことができる。また、例えば頭受け面部17に設けられた感圧シート36(
図5参照)の圧力分布情報を記憶装置に記憶された情報に照合することによって行うことができる。
【0077】
背上げ傾斜制御部804は、睡眠監視部802の監視データと、頭位置検知部807及び顔向き判定部806での検知判定情報に基づいて、背受け面及び頭受け面の傾斜角度を決定して傾斜させる。そして、或る時点での背受け面の傾斜角θxおよび頭受け面の傾斜角θyは、背上げ傾斜制御部804に設けられたメモリに記憶させるか、又は背受け面および/または頭受け面の傾斜角度を多段階に規定し、背上げ傾斜制御部804に設けたカウンタに、背受け面の傾斜段階数および頭受け面の傾斜段階数を記憶させる構成としてある。
【0078】
ここで、通常ベッド床面には敷布団やマットレスが載置されその上に寝者が横たわり、頭部分には枕が使用される場合が多いが、
図5では敷布団等や枕などが省略されて描かれている。寝者の身体の動きや頭の動きを感圧シートで捉える場合において、床面と寝者との間に介在する敷布団等が障害となる場合には、感圧シートは敷布団の上、または枕の上に載置する。この場合、例えば、背受け面の傾斜段階数および頭受け面の傾斜段階数を、敷布団等の厚みや枕の厚みを考慮して調整できる構成とする。或いはベッド側面側に監視カメラを配置し首と頭部の映像から屈曲程度を判定できる構成とする。そして寝者と床面との間に敷布団等が介在しない状態で下記数式1、2、又は3の条件で背受け面と頭受け面を可動させた場合における首部の屈曲程度と等価となるように背受け面および頭受け面の傾斜角度を増減調整できる構成とすることができる。
【0079】
床面に載置する敷布団やマットレスとしては、折り曲がりが容易な構造のものを使用するのが好ましく、例えば局所的に折り曲がりが可能な構造のもの(例えば、継ぎ目が形成されたマットレス、折れ曲がり易くするための切れ目を入れた天然ゴム製または発泡ウレタン製のマットレスなど)を用い、折り曲がり部分とベッドの床面の屈曲する部分とが一致するようにしてベッド床面に載置する。なお、背上げや左右方向の傾斜等によってベッド床面と敷布団等とがずれることを防止するために、布団等をファスナー、ボタン、バンドなどの固定手段で床面に固定できる構造とすることもできる。
【0080】
また、顔の向きが上向き(仰臥位)でない場合や、頭の位置が頭受け面の上下方向中央領域にない場合には、背受け面及び頭受け面を傾斜させても、気道拡張効果が得られない場合がある。よって背上げ傾斜制御部804は、睡眠時異常判定部803、頭位置検知部807、顔向き判定部806の情報から、睡眠時異常の改善効果が期待できる場合にのみ、背受け面及び頭受け面の傾斜を行い、改善効果が期待できない場合には、傾斜は行わずに、例えば寝者や介助者にブザーで警告を出す、ディスプレイに警告マークを表示する等の処理を行うように構成するのが好ましい。また、異常を検知した時点で、背受け面及び頭受け面の傾斜角度が最大となっている場合には、さらなる傾斜の余地がないので、上記と同様に警告を出す等の処理を行うように構成するのが好ましい。
【0081】
また、仰臥位で且つ頭の位置が頭受け面の上下方向中央領域に位置する場合には、背受け面及び頭受け面を傾斜させて気道を拡張させ、この状態で無呼吸ないし低呼吸を監視する。仰臥位でない場合、頭の位置が頭受け面の上下方向中央領域に位置しない場合や、頭受け面の傾斜(マイナスの仰角)を順次大きくし最大にしたが、その後も睡眠時異常が改善されない場合には、介助者への警告や寝者を覚醒させるために、ブザーを鳴らす構成とする。なおこれは一例であり、傾斜駆動条件や動作手順は任意に設定することができ、その傾斜駆動条件や動作手順は、背上げ傾斜制御部804を構成する記憶装置にそのように背上げ用駆動部805を駆動制御するソフトウエア情報を予め格納しておけばよい。
【0082】
背上げ用駆動部805は、寝者の上半身を傾斜させるための駆動部であり、背受け面を傾斜させる背受け面用駆動部と、頭受け面を傾斜させる頭受け面用駆動部とを備える。背上げ用駆動部805は、背受け面用駆動部と頭受け面用駆動部を制御して背受け面と頭受け面とを「へ」の字状に屈曲させることにより、寝者の胴体と首とを首部分で「へ」の字状に屈曲させ、寝者の頭を下げた状態とすることができる。
図2に示すように、背受け面用駆動部は例えばアクチュエータ18で構成され、頭受け面用駆動部は例えばアクチュエータ19で構成される。
【0083】
なお、上記睡眠時異常判定部803と同様に、前記記憶装置は、前記処理装置が有線ないし無線回線を介して記憶装置にアクセスできる構成であればよい。また、睡眠時異常判定部803の処理装置が背上げ傾斜制御部804の処理装置を兼ねる構成であってもよく、睡眠時異常判定部803の記憶装置が背上げ傾斜制御部804の記憶装置を兼ねる構成であってもよい。
【0084】
制御操作部11は、例えば、演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置、警告音などを発生させる出力装置、ON・OFFを切り替えるスイッチ、制御の状態等を表示する表示装置等を備えたコンピュータにより構成することができる。この場合、演算装置及び記憶装置が、睡眠時異常判定部803、背上げ傾斜制御部804、顔向き判定部806、頭位置検知部807を兼ねる構成とすることができ、各部ごとに別個の演算装置、記憶装置等を備えていてもよい。
また、一部の装置は、有線ないし無線通信を介して接続される構成として、制御操作部11内に全ての装置が組み込まれていない構成とすることもできる。また、記憶装置が睡眠監視情報を記憶しておき、この情報を医者が通信回線や外部メモリ等により取得し、この情報を用いて睡眠時異常に対する診察を行えるような構成としてもよい。
【0085】
ここで実施の形態1では、背上げ用駆動部805にアクチュエータを使用したが、駆動部はアクチュエータに限られるものではなく、各々の駆動目的に合致する動きを実現できる駆動方式であればよい。また、2つの足部を有する逆U字状のフレーム12・13は、大径のパイプからなる本体とこれにより小径のパイプからなる足部との2種類のパイプを摺合せ滑動が可能なように組み合わせてなるものすることができ、この構造において、寝台上下動用駆動部(アクチュエータ23)と同期して上下動することができるアクチュエータ又はモータ駆動の螺旋機構や歯車機構をパイプ内に組み込むのもよい。
【0086】
図2に、寝台の背受け面部16、頭受け面部17、大腿受け面部24、下腿受け面部25を持ち上げた状態のベッドシステムを示す。例えば、背受け面の傾斜角θxは10°、背受け面を基準とする頭受け面の傾斜角θyは−10°(この条件であると、頭受け面はベッド設置面に対して平行になる)であり、大腿受け面の角度は12°、下腿受け面の角度は大腿受け面に対して−10°とする。
【0087】
ここで、
図1の状態から
図2の状態に至るまでの間(頭受け面部17を持ち上げる過程)で、背受け面部16と頭受け面17との夾角は変化するが、この動きを
図5に示した。この場合における、背受け面部16の傾斜角θxと、背受け面部16を基準とする頭受け面部17の傾斜角θyとの関係は、〔0°<θx≦70°、−45°≦θy<0°、−30°≦θx +θy ・・数式1〕、又は〔0°<θx≦70°、かつ、−45°≦θy<0°、かつ、0°≦θx +θy ・・数式2〕、又は〔2°≦θx≦85°、かつ、−45°≦θy≦−2°、0°≦θx +θy ・・数式3〕となるように制御される。なお、θyは、背受け面の傾斜延長線より下側にあるときにマイナスの値になる。
【0088】
背受け面部16の角度と、背受け面部16を基準とする頭受け面部17の傾斜角度の大小は、睡眠時異常の大きく影響する要素であるので、寝者の病態に合わせて適正に設定する必要がある。例えば重度の睡眠時無呼吸症候群の患者は、気道確保のために、頭を大きく反らす(マイナス方向に屈曲させる)必要があるが、本発明においては、単に頭をマイナス方向に大きく反らす(|θy|を大とする)のではなく、θxを大きくしつつ|θy|を大きくする(頭を反らす)よう構成してある。この構成であると、水平面(ベッド設置面)に対して頭が下がらないので、頭へ過剰な血液が流入することを防止することができる。
【0089】
しかし、|θy|が過大になると、寝者に対する負荷が大きくなり、首が捻挫するおそれが生じる。よって、θx及びθyは、寝者の年齢、健康状態、病態・病状などに合わせて適正に設定する。例えば[θx +θy]を、0°以上、好ましくは0°より大きい、2°以上、5°以上、7°以上、10°以上などから選択する。また、θyの下限は−45°とし、好ましくは30°、20°、10°、5°、3°、などから選択する。なお、寝たきり老人を適用対象とする場合には、例えば、−20°≦θy<−3°とする。
【0090】
頭受け面が常に床面(重力方向に垂直な面)に対し0°以上([θx +θy]を0°以上)としつつ、背受け面を傾斜させて背受け面と頭受け面の間に「へ」の字状の屈曲を形成する方式であると、頭を常に心臓の高さよりも高い位置に維持しつつ、気道を拡張することができる。よって、頭が水平面より下がって過剰の血液が頭に流れ込むことがないので、寝者に負担を掛けることなく気道を拡張できる。
【0091】
実施の形態1に係る寝姿勢制御ベッドシステムにおいては、背受け面部16及び頭受け面部17の駆動は、2つの駆動部(背受け面用駆動部18と頭受け面用駆動部19)でそれぞれ別個に駆動できるようになっており、それぞれの駆動部は制御操作部11により設定された傾斜条件を充足しつつ駆動するように構成されている。ただし、この構成に制限されるものではない。例えば背受け面部16と頭受け面部17とを要素とする四節回転機構を形成して、一つのアクチュエータで背受け面部16を立ち上げることにより、これと連動して頭受け面部17が持ち上がる構造とすることができる。大腿受け面部24と下腿受け面部25についても同様な構造が採用できる。なお、上記四節回転機構の要素の1つ以上を可変できるようにしておけば頭受け面17の傾斜を調整できる。また、頭受け面部にも駆動部(例えばアクチュエータ)を設ければ頭受け面の傾斜を自由に制御できる。
【0092】
また、実施の形態1に係る寝姿勢制御ベッドシステムのベッド寝台は、背受け面部16の頭受け面部17側を持ち上げて傾斜させたときに寝者の頭が頭受け面部17に位置するように、寝者の胴長に応じて背受け面部16の縦長(ベッド長手方向の長さ)が伸縮できる構造とするのが好ましい。このような変形例を
図24、
図25(1)〜(3)に基づいて説明する。
図24は、背受け面部16の縦長を最も短くした場合における様子を示している。
【0093】
背受け面縦枠602は、
図25(1)〜(3)に示すように、背受け面縦枠基軸部材602aとこの部材に内側に入り込んでスライドする背受け面縦枠伸縮部材602bとで構成される。背受け面縦枠基軸部材602aの内側の空間には、外周にラセン溝が形成された回転棒603が先端を開放口側に向けて配置され、空間の奥には回転棒を駆動するモータ604が配置され、当該モータにより回転棒を正回転または逆回転させることができる構造になっている。このモータ604は制御操作部11で制御できるよう接続されている。
【0094】
他方、背受け面縦枠伸縮部材602bには、その内部に空洞があり、その空洞の内壁に前記回転棒603のラセン溝に対偶する溝が形成されている。このような背受け面縦枠伸縮部材602bが背受け面縦枠基軸部材602aに、前記溝が前記回転棒603のラセン溝に対偶するように嵌め込まれて背受け面部16が構成される。背受け面縦枠伸縮部材602bを背受け面縦枠基軸部材602aに嵌め込んだ状態を
図25(3)に示す。
【0095】
この構造の背受け面部16はモータ604の正逆回転により、寝者の胴長に応じて背受け面部16の縦長を調節することができるので、寝者の頭部を頭受け面部17に位置するように調整することができる。この操作方法は、例えば、介助者が寝者の背起こしの状態と頭部の位置を見ながら制御操作部11を操作する。叉は制御操作部11に備えられたコンピュータが後記する頭位置検知部(
図6参照)からの情報を受けてモータ604の回転方向と回転量を自動制御するように構成する。
【0096】
更に
図24に示す縦補強部材605,606についても、背受け面部16の伸縮に追随して伸縮できるよう、背受け面縦枠伸縮部材側の部材の径を背受け面縦枠基軸部材側の部材よりも小さくし、互いにスライド嵌合できる構造にするのが好ましいが、縦補強部材605,606については、ラセン溝付きの回転棒やモータを用いた伸縮機構を組み込む必要性は少ない。また、縦補強部材605,606については、背受け面部16の伸張に追随する構造ではなく、背受け面部16が拡張したときに背受け面縦枠伸縮部材側の部材と背受け面縦枠基軸部材側の部材との間に隙間ができる態様であってもよい。なお、頭受け面部17を背受け面部16とは別個の駆動動力(アクチュエータ等)で駆動させる場合には、背受け面部16の伸縮に追随できるように別個の駆動動力を調整できるようにする。例えばアクチュエータの腕の長さが自動調整されるようにする。
【0097】
以上ではラセン溝付き回転棒をモータで回転駆動させる伸縮機構を示したが、伸縮機構はこれに限定されるものではない。例えば背受け面部16の縦方向を伸縮自在な蛇腹構造とし、蛇腹を一方から引っ張るバネ機構と、逆方向から引っ張る動力機構とで蛇腹の伸縮を調整する機構とすることもできる。
【0098】
更に、
図5では説明を判り易くするために、寝者がベッド床面に直接横たわった状態を図示したが、ベッド床面に布団、マットレスなど敷く場合が多く、また頭部に枕を使用する場合もある。ベッド床面に布団、マットレスなど敷く場合、背受け面と頭受け面の境目部分に折り目が設けられた「へ」の字に曲がり易くした布団、マットレスを用いるのがよい。一般的に用いられている厚さが均一な平坦な敷き布団やマットレスを使用し、かつ枕を用いない場合、概ね背受け面と頭受け面の角度で実際上の両者の交差角度を算出すればよいが、寝者の体重による敷布団等の圧縮が無視できない場合には、圧縮にともなう角度補正を行うのが好ましい。
【0099】
敷布団などに加え頭部に枕を使用する場合には、少なくとも枕の厚み分が首曲げ角度に影響を与えるので、布団の厚みと枕の厚みを考慮し、背受け面と頭受け面の交差角度が実質的に数式1〜3の条件を実現できるよう、数式1〜3の角度の増減調節を行う。具体的には、敷布団やマットレス及び枕を使用した場合においても、身体中心軸線35(
図5参照)に対する頭部の傾き程度(首の屈曲程度)が上記した数式1〜3におけると等価となるように、敷布団やマットレス及び枕を使用する分だけ、頭受け面の傾斜角度を増減調整する(上記した数式1〜3の角度を増減する)のが好ましい。
【0100】
図5を参照しつつ、寝者の寝姿勢と、背受け面部16・頭受け面部17・大腿受け面部24・下腿受け面部25の動きとの関係を示す。寝台の寝者が横たわる面は通常水平(鉛直軸に直交する面)であり、この上に寝者は横たわっている(
図5矢印a)。制御操作部11の要素が寝者の睡眠時異常を検知すると、制御操作部の指令に基づいて背受け面用駆動部18及び頭受け面用駆動部19が、数1、数2、または数3の条件を満たしつつベッド寝台の背受け面部16と頭受け面部17を持ち上げる(
図5矢印b、c)。これにより頭が下がり顎が前方に突き出た状態になり、寝者の気道が広がる。ここで、顔向き判定部806及び頭位置検知部807が、顔の向きが上向き(仰臥位)でない場合や、頭の位置が頭受け面部17の上下方向中央領域にないことを検知した場合には、背受け面部16や頭受け面部17を上下動させることなく、警告音を発生させる構成とすることができる。
【0101】
[数1]
0°<θx≦70°、かつ、−45°≦θy<0°、かつ、−30°≦θx +θy ・・・(1)
【0102】
[数2]
0°<θx≦70° 、かつ、−45°≦θy<0° 、かつ、0°≦θx +θy ・・・(2)
【0103】
[数3]
2°≦θx≦85°、かつ、−45°≦θy≦−2°、0°≦θx +θy・・・(3)
【0104】
実施の形態1に係る寝姿勢制御ベッドシステムの基本的動作フローを、睡眠時異常としての睡眠時無呼吸症候群を監視する場合を例にして、
図7を参照しつつ説明する。
【0105】
スイッチのON操作があり、且つ、寝台上に寝者の存在を検知すると、処理がスタートする。
【0106】
(ステップS101)
この動作フローは背受け面や頭受け面が傾斜していない状態から開始する。先ず制御操作部に設けられたスイッチで傾斜状態をリセット(床面は水平)し、且つ、傾斜段階を記憶するカウンタを0にリセットする。
【0107】
(ステップS102)
次に睡眠時異常判定部が、睡眠監視部の監視情報を用いて睡眠時異常の有無を検知する。異常ありの場合には、ステップS103に進む。異常なしの場合には、ステップS110に移行する。
【0108】
(ステップS103)
次に顔向き判定部が、頭位置検知部の情報に基づいて寝者の顔の向きを判定する。頭が上向きの場合には、ステップS104に進む。上向きでない場合には、ステップS109に移行する。
【0109】
(ステップS104)
次に、頭位置検知部が頭受け面における頭の位置情報を検知する。頭が上下方向中央領域に位置する場合には、ステップS105に進む。位置しない場合には、ステップS109に移行する。
【0110】
(ステップS105)
次に、前記カウンタの情報より、現時点での頭受け面、背受け面の傾斜段階を確認する。傾斜段階が最大限でない場合には、ステップS106に進む。最大限である場合には、ステップS109に移行する。
【0111】
(ステップS106)
頭受け面、背受け面はさらに傾斜可能な状態であるので、1段階さらに頭受け面、背受け面を傾斜させ、寝者の気道をより確保する。この後、ステップS107に進む。背上げ傾斜制御部804の記憶装置には、背受け面の傾斜角度θx、頭受け面の傾斜角度θy、及び背受け面と頭受け面との傾斜角度θx+θy(上記数1〜3の少なくとも1つを満たす)を多段階に規定して記憶されており、背上げ傾斜制御部804は、この情報を用いて背上げ用駆動部の動作を制御して、背受け面および/または頭受け面を傾斜駆動させる。
【0112】
(ステップS107)
カウンタに、現時点での傾斜段階を記憶させるため、カウンタに記憶された傾斜段階数を+1して保存する。この後、ステップS108に進む。
【0113】
(ステップS108)
傾斜処理によって、睡眠状態が異常からの回復する前に速やかに睡眠状態の監視に移ると、頭受け面、背受け面を傾斜させ過ぎてしまうおそれがある。このため、傾斜処理後、監視に戻る前に所定時間が経過したか否かを確認する。確認された場合には、ステップS102に戻り、継続的な睡眠状態の監視に移行する。確認されていない場合には、ステップS108を繰り返し行う。この所定時間は、医者、看護師等が決定して記憶させておくことができる。例えば、3分、5分、10分等に設定できる。
【0114】
(ステップS109)
睡眠異常があり、且つ、(1)顔が上向きでない、(2)頭の位置が頭受け面の上下方向中央領域にない、(3)傾斜状態が既に最大限に達している、のいずれかである。これらの場合、頭受け面、背受け面を傾斜させても睡眠時異常からの回復に効果がない状態であるか、頭受け面、背受け面をさらに傾斜させる余地がない状態である。よって、睡眠時異常の警告を行う。これは、警告音声、振動等によって寝者に直接通知したり、警告音声、振動、警告画像等によって介助者に通知したりする方法を採用できる。
【0115】
(ステップS110)
睡眠異常がない場合、終了シグナルがあるか否かを確認する。終了シグナルとしては、スイッチOFF操作、又は寝者がベッドからいなくなることを検知するにより行うことができる。終了シグナルがない場合には、ステップS102に移行し、終了シグナルの有無を検知しつつ絶えず睡眠時異常を監視する。有る場合には、終了処理を行う。なお、傾斜状態をリセットする操作を行った後に終了処理を行う構成としてもよい。
【0116】
(実施の形態1のフロー変形例)
また、
図8に示すように、睡眠時異常が所定時間検知されない場合には、頭受け面と背受け面の傾斜を戻すような処理を行ってもよい。
図8に示すフローについて、
図7との変更点についてのみ、以下に説明する。
【0117】
(ステップS107)
カウンタに、現時点での傾斜段階を記憶させるため、カウンタに記憶された傾斜段階数を「+1」して保存するとともに、傾斜処理時刻をタイマーに記憶する。この後、ステップS108に進む。
【0118】
(ステップS110)
睡眠異常がない場合、終了シグナルがあるか否かを確認する。終了シグナルとしては、スイッチOFF操作、寝者の非検知等により行うことができる。終了シグナルがない場合には、ステップS111に移行する。
【0119】
(ステップS111)
監視に移行するフローでは、現時点で頭受け面、背受け面が傾斜しているか否かを判定する。傾斜していない(傾斜段階を記憶するカウンタが0である)場合には、ステップS102に移行し、絶えず睡眠時異常を監視する。傾斜している傾斜段階を記憶するカウンタが0でない)場合には、ステップS112に進む。
【0120】
(ステップS112)
傾斜させた時刻を確認し、傾斜処理時刻から所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間は、医者、看護師等が決定して記憶しておくことができる。例えば、20分、30分等に設定できる。所定時刻が経過している場合には、ステップS113に移行し、経過していない場合には、ステップS102に移行する。
【0121】
(ステップS113)
頭受け面、背受け面の傾斜段階を1段階戻し、ステップS114に移行する。
【0122】
(ステップS114)
カウンタに、現時点での傾斜段階を記憶させるため、カウンタに記憶された傾斜段階数を−1して記憶するとともに、傾斜処理時刻をタイマーに上書き記憶する。この後、ステップS102に進み、睡眠監視を繰り返し行う。
【0123】
なお、上記では、傾斜状態を1段階ずつ戻していく例を示したが、複数段階戻す構成や、所定時間経過後に傾斜をリセット(0にする)するような処理を行ってもよい。また、傾斜状態及びカウンタのリセット(ステップS101)は、スイッチのOFF操作や寝者がいなくなったことを検知した後(ステップS110の後でフロー終了の前)に行う構成であってもよい。
【0124】
また、背受け面部16の縦長を伸縮させる構造のベッド寝台を用いる場合、背受け面部16の縦長を記憶するメモリを背上げ傾斜制御部804に設けるとともに、
図7の動作フローを次のように変更することができる。まず、ステップS101では、カウンタと傾斜状態のリセットとともに、背受け面部16の縦長を初期状態(背受け面が傾斜していない状態での長さ)に戻し、縦長を記憶するメモリをリセットする。
【0125】
そして、ステップS106とステップS107の間において、頭位置検知部807からの情報を用いて縦長の変更の有無を判定するステップと、縦長の変更が有ると判定された場合に、背受け面部16の縦長を変更(伸長又は縮小)するステップと、を挿入する。このとき、背上げ傾斜制御部804は、その記憶装置に記憶されたソフトウエア情報を用いて背受け面部16の縦長の変更量を決定し、背上げ用駆動部805の動作を制御して背受け面部16の縦長を変更させる。
【0126】
さらに、ステップS107では、カウンタの+1とともに、その時点での背受け面部の縦長を上書き保存する。
【0127】
次に、睡眠時異常の有無の判定フローについて、
図9を用いて説明する。
図9は、睡眠時異常の有無の判定フローを示す図である。ここでは、呼気中のCO
2濃度情報を監視し、これにより睡眠時無呼吸の有無を判定するものを例として説明する。
【0128】
(ステップS201)
動作が開始されると、まず、CO
2濃度センサが寝者の口や鼻周りの気体成分濃度を常時監視する。濃度が閾値未満(低呼吸ないし無呼吸)の場合には、ステップS202に進む。閾値以上の場合には、ステップS204に移行する。
【0129】
(ステップS202)
閾値未満と判定されると、判定部が閾値未満が継続する時間を算出する。閾値未満が継続する時間が所定値(例えば10秒)以上の場合には、ステップS203に進む。継続する時間が所定値未満の場合には、ステップS204に進む。
【0130】
(ステップS203)
閾値未満が所定値以上継続している場合には、低呼吸ないし無呼吸状態となっているので、睡眠時異常Yesと判定される。
【0131】
(ステップS204)
閾値未満でない場合や、閾値未満が所定値以上継続していない場合には、低呼吸・無呼吸状態ではないので、睡眠時異常Noと判定される。
【0132】
なお、上記では寝姿勢制御ベッドシステムを好適に構成するのに必要な最小の要素について説明した。よって、上記で説明した部材以外の部材を設けることができることは勿論であり、例えばベッド本体やベッド床体の構造を補強するために、更にフレームや補強部材を設けるのもよい。
【0133】
また、寝者や介護者等の使用者が傾斜状態を自在に制御するためのコントローラをさらに備える構成であってもよい。
【0134】
以上に説明したように、本実施の形態によると、寝台の背受け面及び頭受け面を傾斜させることにより、寝者の気道を拡張でき、これによりを気道縮小に起因する睡眠時異常を改善・解消できるという効果がある。
【0135】
〔実施の形態2〕
図10に、本発明の実施の形態2にかかる寝姿勢制御ベッドシステムのベッド本体を示し、
図11に、全体構成(ブロック図)を示す。実施の形態2に係る寝姿勢制御ベッドシステムは、床面120を有する寝台部102が吊下げられた構造のベッド本体501(
図10参照)と、床面120上に寝ている寝者の睡眠状態を監視する睡眠監視部502と、睡眠監視部502の監視データに基づいて睡眠時異常の有無を判定する睡眠時異常判定部503と、床面120を有する寝台部102を傾斜駆動させる床面傾斜駆動部505と、睡眠時異常判定部503の判定結果に基づいて床面120を傾斜駆動させるように床面傾斜駆動部505を制御する傾斜駆動制御部504と、床面における寝者の重心位置を検知する重心位置検知部506を備えている(
図11参照)。前記実施の形態1では、頭受け面及び背受け面をベッド前後方向(足→頭方向)に持ち上げて傾斜させたが、実施の形態2では、寝台の床面全体を左右方向に傾斜させる点に特徴がある。
【0136】
図11に示す構成において、睡眠監視部502は、睡眠時異常の指標となる監視要素の何れか1つ又は複数と、寝る者の顔向きと、を監視し検知する。上記監視要素としては、例えば心拍数、血圧、体温、体表温度、脳波、血中酸素濃度、体動数、体位変化、寝者周辺のCO
2量、寝者の口、鼻周辺のガス流速、いびき音、歯ぎしり音などが挙げられる。これらの監視要素を検知するため、睡眠監視部には、例えば、寝る者の顔向きを監視するための監視カメラ、頭が載る床面部分または当該部分を覆う敷布団、マットレスなどの上、或いは枕の上に配置した感圧シート、または頭部に装着された3軸センサ、及び 睡眠時異常の指標となる監視要素を監視するための、終夜睡眠ポリグラフィー、脳波センサ、心電・心拍・体表温度・体幹部の3軸加速度をリアルタイムで測定でき記録できるバイオセンサ、脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)をモニターできるパルスオキシメータ、体動を監視できるシート状の多点感圧センサ、体動電波センサ、監視カメラ、空気流速センサ、気体成分センサ、音センサ、振動センサなどのセンサの1以上と、を配置する。
【0137】
睡眠時異常判定部503は、睡眠監視部502の監視データに基づいて睡眠時異常の有無を判定するものであり、中央演算処理装置などの処理装置と、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置とを備えてなり、睡眠監視部502が検知した情報と、記憶装置に格納されている判定基準情報とを照合し比較することにより、睡眠時異常の有無、及び/又は、睡眠時異常の種類を判定する。
【0138】
上記判定基準情報は、上記監視要素との関係で決定されるべき基準情報であり、例えば正常人の単位時間当たりの心拍数や体動数、体表温度、血中酸素濃度などである。また、睡眠時異常の種類とは、例えば無呼吸、低呼吸、いびき、歯ぎしり、体動異常(過多、過少)、体温異常(過低温、過高温)、血圧異常(過高血圧、過低血圧)、心拍数異常(過多、過少)などである。
【0139】
なお、記憶装置は、処理装置が有線ないし無線回線を介して記憶装置にアクセスできる構成であればよく、記憶装置自体が当該ベッドの設置場所に存在していなくともよい。また、処理装置は、睡眠監視部の監視情報を取得し、判定処理を行える構成であればよく、処理装置自体が当該ベッドの設置場所に存在していなくともよい。
【0140】
傾斜駆動制御部504は、上記睡眠監視部502の監視情報を用いて寝者の顔向きを判定するとともに、この判定情報と上記睡眠時異常判定部503の判定結果とに基づいて床面を傾斜駆動させるように床面傾斜駆動部を制御する要素であり、中央演算処理装置などの処理装置と、顔向きを判定するための顔向き判定用情報及び床面傾斜駆動部を制御するソフトウエア情報を格納する記憶装置とを備えてなる。顔向きの判定においては、傾斜駆動制御部は、傾斜駆動制御部の記憶装置に記憶された顔向き判定用情報と、上記睡眠監視部の監視情報と、照合することにより行う。ここでいうソフトウエア情報は、上記したごとく、例えば睡眠時異常判定部の判定結果が無呼吸である場合に、床面傾斜駆動部に無呼吸を改善できる方向(寝者の寝姿勢を側臥位に誘導する方向)にベッドを傾斜させるソフトウエア情報である。
【0141】
ここで、例えば仰臥位において無呼吸ないし低呼吸が検知された場合には、寝者を左右いずれかの側臥位に誘導するように寝台(すなわち床面)を傾斜させる。この際の傾斜角度は例えば7度とする。他方、仰臥位でなく、側臥位において無呼吸ないし低呼吸が検知された場合においては、先ず寝者を仰臥位に誘導し、この状態で無呼吸ないし低呼吸を監視する。そしてこの状態において無呼吸ないし低呼吸が改善しない場合には、寝者の体位を上記側臥位と逆方向の側臥位方向に誘導する。これでも無呼吸ないし低呼吸が改善されない(無呼吸ないし低呼吸が検知される)場合には、ブザーを鳴らすなどして寝者を眠りから覚醒させる構成とすることができる。このように傾斜駆動動作手順は任意に設定することができ、これは傾斜駆動制御部を構成する記憶装置に、そのように床面傾斜駆動部を駆動制御するソフトウエア情報を格納しておくことにより実現することができる。歯ぎしりやいびきについても適当な手順を定め、そのように傾斜駆動動作させることのできるソフトウエア情報を傾斜駆動制御部の記憶装置に格納しておけばよい。
【0142】
なお、上記睡眠時異常判定部と同様に、前記記憶装置は、前記処理装置が有線ないし無線回線を介して記憶装置にアクセスできる構成であればよい。また、睡眠時異常判定部の処理装置が傾斜駆動制御部の処理装置を兼ねる構成であってもよく、睡眠時異常判定部の記憶装置が傾斜駆動制御部の記憶装置を兼ねる構成であってもよい。
【0143】
床面傾斜駆動部505は、ベッド本体501の床面を傾斜させるとともに、床面の傾斜状態を保持するものである。床面傾斜駆動部505は、駆動と保持とを一体的に行う構成であってもよく、床面の傾斜駆動を行う駆動装置と、床面の傾斜状態を保持する保持装置と、が別個に設けられた構成であってもよい。
【0144】
傾斜駆動制御部504は、床面傾斜駆動部505の傾動・傾斜保持動作を統合的に制御するものである。具体的には、睡眠時異常判定部503が睡眠時異常ありと判定したときに、傾斜駆動制御部504は、床面が傾斜状態となるように、床面傾斜駆動部505の動作を制御する。傾斜駆動制御部504としては、中央制御装置(CPU)等の公知の制御装置を用いることができる。ここで、睡眠時異常判定部503の制御装置が、傾斜駆動制御部504の制御装置を兼ねる構成としてもよい。
【0145】
重心位置検知部506は、寝者の重心位置を検知するものである。重心位置とは、寝者の全体重を支えることのできる支点をいい、重心位置検知部506は、当該支点を床面に投影した場合における投影点の位置を検知することになる。重心位置検知部506としては、ベッド本体やベッド本体に載置されるベットマットに重力センサ、多点感圧センサを設ける構成を採用でき、重力センサや多点感圧センサの圧力分布情報に基づいて上記投影点を算出する。また、ベッド上方に画像撮影装置を設ける構成とし、画像解析により重心が床面に投影された上記投影点を算出する構成を採用することができる。
【0146】
重心位置検知部506が検知した位置情報は、上記傾斜駆動制御部504および床面傾斜駆動部505との関係において次のように機能する。睡眠時異常判定部503が睡眠時異常有りと判定したときにおける寝者の重心投影点位置(重心位置検知部506が検知した位置)が、床面120の傾斜方向に直交し且つ床面120の面積中心点を含む傾斜床面中央線よりも傾斜方向下方に位置している場合は、寝者の重心投影点位置が床面120の傾斜方向に直交し且つ床面120の面積中心点を含む傾斜床面中央線よりも上方に位置するよう、傾斜駆動制御部504が床面傾斜駆動部505を介して床面120を傾斜させる(
図10,11参照)。
【0147】
また、睡眠時異常が判定されたときにおける寝者の床面重心投影点位置を基準とし、床面傾斜後に重心投影点位置が閾値を超えて移動したときには、この情報を得た傾斜駆動制御部504がベッド床面120の傾きを減少させる方向に床面傾斜駆動部505の傾動駆動を制御する。このような動作により、体位変換に起因して寝者がベッドからズリ落ちることが防止できる。
【0148】
上記閾値は、寝者の体力や病態、ベッド床部面積の大小、マット特性(滑り易さ、圧縮反発特性、圧縮比)などを考慮して定める。また、床面傾斜駆動部505による床面120の傾斜は、0<傾斜角度≦30度程度で十分であり、通常は0〜7度程度とする。このように傾斜駆動動作させることのできるソフトウエア情報は、傾斜駆動制御部504の記憶装置に格納しておけばよい。
【0149】
ここで、
図10のベッド本体501の構成要素について更に説明する。ベッド本体501は、寝台部102と、寝台部102を吊下げる支持体であって寝台部102を傾斜させたり、上下動させたりする駆動手段を備える寝台支持構造体102’とで構成されている。上記寝台部102は、寝台部102を寝台支持構造体102’に吊下げる吊下げ部材108、床面120を構成する床面縦枠部材121、床面横枠部材122、床面支持部材123、及び床面支持部材123に載置された床板120’で構成される。なお、ここでは、寝者が直接または間接的に横たわるベッド面を「床面」と称するが、この構成例では床板120’上が床面120となる。
【0150】
上記寝台支持構造体102’は、外方から上記寝台部102を2か所で吊下げ支持する枠組みである。寝台支持構造体102’は、寝台部102を傾斜駆動させる傾斜駆動手段112aを備えた傾斜制御部材112と、上下可動フレーム部材107と、上下可動フレーム部材107を上下動させるための上下動駆動手段107aと、設置床面側に伸縮自在な足部104を有する2つのスタンドフレーム103・103と、スタンドフレームの足部同士を連結する足部連結フレーム105およびヘッドフット連結部材110と、上方でU字状のスタンドフレームの中間部分を連結固定するスタンド連結フレーム106と、足部連結フレーム105の略中央とスタンド連結フレーム106の略中央とを連結する部材であってスタンド連結フレーム106を上下動させる上下動駆動手段107aと、手すり115などで構成されている。
【0151】
上記傾斜駆動手段112aは、
図11に示す床面傾斜駆動部505を構成する要素であり、傾斜制御部材112を介して寝台部102(床面120)を傾斜制御するものである。上下動駆動手段107aは、寝台部102を上下駆動させるものである。上記傾斜駆動手段112aや上下動駆動手段107aは、傾斜駆動または上下駆動できる機構であればよく、特段の制約はない。例えば、油圧により駆動と保持とを行う構成(一体的構成)や、モータで駆動し係止部材で床面を傾斜状態で係止保持する構成(別個構成)を採用することができる。
図10の構成例においては、傾斜駆動手段112aは歯車と電動モータで構成され、上下動駆動手段107aは油圧シリンダと電動ポンプで構成されている。
【0152】
また、
図10の構成例では、制御操作部130と傾斜駆動手段112aおよび上下動駆動手段107aとがリード線131で結ばれている。制御操作部130は、
図11に示す傾斜駆動制御部504、睡眠時異常判定部503、重心位置検知部506を含み、かつ、オペレータがベッドを駆動制御する条件を入力する入力装置(例えばキーボード)を備えている。ただし、これは一例であり、傾斜駆動制御部504、睡眠時異常判定部503、重心位置検知部506の全てが制御操作部130に含まれていなくともよい。例えば、傾斜駆動制御部504が、床面傾斜駆動部505と一体的に形成されたものであってもよい。
【0153】
図12の部分拡大図を用いて、ベッド本体501の構造について更に説明する。スタンドフレーム103・103は、U字状の大径のパイプ(45φmm、外幅1200mm、直線部の長さ1100mm)に、円柱状の小径のパイプ(42φmm、長さ900mm)とを摺動可能に嵌め合わせた構造としてあり、足部(大径のパイプから出ている小径パイプ部分)の長さが100〜550mmの範囲で伸縮するように構成されている。
【0154】
両パイプの材質は特に限定されない。例えば、鉄、アルミニウム、チタン、各種合金、プラスチックなどが使用できる。パイプ径やサイズも適宜設定すればよい。また、「U」字状に繋がっていない、各々が独立した2つのスタンドフレームを用いることもできる。
【0155】
上記2つのスタンドフレームの両足部は、長さ1110mmの金属製角材(42mm×42mm)を足部連結フレーム105として用いて連結固定される。連結固定方法としは、足部に金属製角材を溶接する方法、連結固定具を用い結合する方法、両部材を直接螺合させる方法など、如何なる方法でもよい。
【0156】
スタンド連結フレーム106は、スタンドフレームの足部の長さを最小とした状態で、下から800mmの位置に、45φmm、1110mmの金属製パイプをスタンド連結フレームとして用いて、足部連結フレーム105の場合と同様にして連結固定されている。
【0157】
上下可動フレーム部材107は、足部連結フレーム105の長さ方向の中央付近に、上下動駆動手段としての油圧シリンダ107aを固定し、当該油圧シリンダの上端に、45φmmの金属製パイプ取り付け、更にその先端をスタンド連結フレーム106の中央付近に連結固定されている。更に、
図10の例では、スタンド連結フレーム106の中央とU字状頂上部分との間についても同様な金属製パイプで連結されている。なお、連結固定方法については何らの制限はない。上記と同様、溶接する方法、連結固定具を用い結合する方法などを用いればよい。この設定では、スタンドフレームの長さが、最大500mm伸びるようにしてある。
【0158】
次に、
図12、
図13を参照しながら、スタンドフレーム103と吊下げ部材108との連結状態、ベッド本体501及び床面120と吊下げ部材108との関係を説明する。
図12は、寝台部102と寝台支持構造体102’との連結状態を示す部分拡大図である。
図13(a)は、ベッドの床面120上に複数の柱状マットユニット125を敷き詰めた様子を示す上面図であり、
図13(b)は、
図13(a)のA―A矢視断面図である。
【0159】
図12より、吊下げ軸部を構成する吊下げ連結具108aを備えた吊下げ部材108を用い、吊下げ連結具108aの一方端を上下可動フレーム部材107とスタンド連結フレーム106との交差部分に固定し、他方端を吊下げ部材本体の上方頂部に形成された、球体を内蔵した転がり軸受け部に差し込むことにより、吊下げ部材108本体がベッド長手方向に直交する方向(幅方向)に回動可能に構成されている。なお、転がり軸受け部は、上下可動フレーム部材107とスタンド連結フレーム106との交差部側に設けてもよい。また、吊下げ部材を回動可能にする方法は、転がり軸受け方式でない、公知の他の方式を用いてもよいことは勿論である。
【0160】
また、
図12の例では、下末広がり形状の吊下げ部材108の下部に、床面120を構成する床面縦枠部材121、床面横枠部材122が直接取り付けられた構造になっているが、下末広がり形状の吊下げ部材108の両端を繋ぐ部材を配置し、この部材の上にベッド床体を載置して吊下げる構造でもよい。床面120と吊下げ部材108との連結方法については、ベッド床体重量とこのベッドを利用する人体重が合算された重量を安定して支えることができる方法であればよく、特段の制限はない。例えば溶接法やボルトナットでの締結にすることができる。
【0161】
傾斜制御部材112は、吊下げ部材108の肩部にピンを用いたヒンジ109を介して取り付けられている。ヒンジ109を用いたのは、吊下げ部材108の回動を円滑に行わせるためである。また、傾斜制御部材112の傾斜駆動手段112aは、
図10に示すように、リード線131を介して駆動のエネルギー源(例えば、電源装置)と接続されるように構成されている。なお、傾斜制御部材112の取り付け位置は、
図10に示す形態に限定されない。また、傾斜制御部材112を、傾斜駆動を行う駆動部と、傾斜状態を保持するピンやブレーキ等の保持部とで構成としてもよい。
【0162】
図13に基づいて、床面120上に柱状マットユニット125を載置した例を説明する。
図13(b)は、
図13(a)におけるA−A矢視断面図である。
図13(a)、(b)に示すように、ベッド床面120上に断面円形(例えば直径100mm)の複数の柱状マットユニット(ベッドマット部材)125が互いに間隔(2〜20cm程度の隙間)を空け、ベッド幅方向に平行に敷かれている。柱状マットユニット125の材質としては、例えば天然ゴム製のマットケースの内部空洞にポリウレタンゲルが充填されてなるものとする。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0163】
円柱状マットユニット125は、寝者の体重が架かると横方向に広がり柱状マットユニット相互間が略平坦面となるので、その上に寝る寝者に凸凹感などの違和感を殆ど与えない。また、マットユニットを円柱状とすると、圧縮反発力に強弱変化があるので、寝者の僅かな動きにより皮膚へのマッサージ効果が生まれ、睡眠の質を高めることができる。特に、複数の柱状マットユニットが互いに間隔を空けて敷かれた床面であると、上記皮膚マッサージ効果が都合よく発揮され、かつ、ベッド床面の下方から上方への通気性が向上する。よってこの材質及び形状は、衛生面と睡眠の質向上の面の双方から好ましく、汚れの付着を防止する目的からは、天然ゴムからなる柱状マットユニットのケース表面を、撥水性を有する樹脂フィルムなどのフィルムで覆うのが更に好ましい。
【0164】
ただし、柱状マットユニットの材質は、上記構成に限定されることはない。例えば、マットケースを用いないで、発泡ゴムのみからなる構成としてもよい。また、マットケースは、ポリエチレン等を用いることができ、内部に充填される流動体としては、気体、液状体(液体、ゲル)、粉体、粒体等を用いることができる。また、柱状マットユニットの形状は、断面円形に限られず、楕円形、四角形、多角形、台形などであってもよい。また、円形と四角や三角形の柱状マットユニットなどを併用してもよい。また、高さや大きさを違えた柱状マットユニットを併用してもよい。
【0165】
また、上記では床板120’をベッド床面としこの上に柱状マットユニットを載置したが、床板に代えて網を採用することもできる。また、床板120’を配置せずに、床面支持部材123上に直接に柱状マットユニットまたは他のベッドマットを載置してもよい。
【0166】
以上に説明したように、実施の形態2にかかる寝姿勢制御ベッドシステムでは、寝台部102が吊下げ部材108で寝台支持構造体102’に回動可能に吊り下げられ、寝台部102が傾斜制御部材112により左右方向に傾動でき且つ一定の傾斜状態が維持される。これにより、寝者が横たわる床面120を傾斜傾動させて、寝者の体位変換を誘導させる。
【0167】
次に、睡眠時異常の検知と解消の動作フローについて、
図14を用いて説明する。
図14は、実施の形態2にかかる寝姿勢制御ベッドシステムの動作フローを示す図である。本実施の形態では、実施の形態1と同様に、睡眠時異常としての睡眠時無呼吸症候群を監視する場合を例にして説明する。なお、ここでは、寝台の左右及び寝者の顔の向き方向は、いずれも、上向きに寝た寝者から見た場合の方向を意味しており、寝台を上方から見た場合の方向とは逆となっている。
【0168】
スイッチのON操作があり、且つ、寝台上に寝者の存在を検知すると、処理がスタートする。
【0169】
(ステップS301)
寝台が傾斜していない状態(水平状態)から開始させるため、寝台を水平にする傾斜状態リセットが行われ、且つ、記憶された傾斜状態レベルをリセットする。
【0170】
(ステップS302)
次に睡眠監視部の監視情報を用いて睡眠時異常判定部が睡眠時異常の有無を検知する。異常ありの場合には、ステップS303に進む。異常なしの場合には、ステップS317に移行する。睡眠時異常の有無の判定(S302)の内容は、実施の形態1のステップS201〜204(
図9参照)と同様とすればよい。
【0171】
(ステップS303)
次に、傾斜駆動制御部が睡眠監視部の監視情報と顔向き判定用情報とを照合して、寝者の顔の向きを検知する。顔が上向きの場合には、ステップS304に進む。上向きでない場合には、ステップS316に移行する。
【0172】
(ステップS304)
次に、重心位置検知部が重心位置情報を検知する。重心が左右方向中央領域に位置する場合には、ステップS305進む。位置しない場合には、ステップS307に移行する。
【0173】
(ステップS305)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態を確認する。傾斜している場合には、ステップS306に進む。傾斜していない場合には、ステップS309に移行する。
【0174】
(ステップS306)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態が最大限であるかを判定する。最大限である場合には、ステップS311に進む。最大限でない場合には、ステップS310に移行する。
【0175】
(ステップS307)
重心位置が中央領域にない状態において、現時点での傾斜状態を確認する。重心が存在しない側(頭が左領域にある場合には右領域側、重心が右領域にある場合には左領域側)が下に傾斜している場合にはステップS312、そうでない場合にはステップS308に進む。
【0176】
(ステップS308)
重心位置が中央領域にない状態であるので、この場合、重心が存在しない側に寝返りを打っても転落のおそれが小さい。重心が存在しない側が下に傾斜していない状態であるので、重心が存在しない側が下の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS314に進む。
【0177】
(ステップS309)
重心の位置が中央領域にあり、且つ寝台が傾斜していない状態であるので、いずれか一方が下の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS314に進む。
【0178】
(ステップS310)
重心位置が中央領域にあり、且つ寝台が最大限でなく傾斜した状態である。この場合、寝台を同じ方向にさらに一段階傾斜させる。この後、ステップS314に進む。
【0179】
(ステップS311)
重心の位置が中央領域にあり、寝台が最大限に傾斜状態であるので、現状とは逆側が上の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS314に進む。
【0180】
(ステップS312)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態が最大限であるかを判定する。最大限である場合には、ステップS313に進む。最大限でない場合には、ステップS316に移行する。
【0181】
(ステップS313)
重心位置が左右領域のいずれかにあり、且つ寝台が最大限でなく傾斜した状態である。この場合、寝台を同じ方向にさらに一段階傾斜させる。この後、ステップS314に進む。
【0182】
(ステップS314)
現時点での傾斜レベルを記憶させる。この後、ステップS315に進む。
【0183】
(ステップS315)
傾斜処理によって、睡眠状態が異常から回復する前に速やかに睡眠状態の監視に移ると、寝台を傾斜させ過ぎてしまうおそれがある。このため、傾斜処理後、監視に戻る前に、所定時間が経過したか否かを確認する。所定時間経過した場合には、ステップS302に戻り、継続的な睡眠状態の監視に移行する。経過していない場合には、ステップS315を繰り返し行う。この所定時間は、医者、看護師等が決定して記憶しておくことができる。例えば、5分、10分等に設定できる。
【0184】
(ステップS316)
睡眠異常があり、且つ、(1)顔が上向きでない、(2)重心位置が頭受け面の左領域または右領域にあり、重心とは逆方向が下に最大限傾斜した状態、のいずれかである。この場合、寝台を傾斜させても睡眠時異常からの回復に効果がない状態であるか、寝がえりを促す方向に寝台をさらに傾斜させる余地がない状態である。よって、睡眠時異常の警告を行う。これは、警告音声、振動等によって寝者に直接通知したり、警告音声、振動、警告画像等によって介助者に通知したりする方法を採用できる。
【0185】
(ステップS317)
睡眠異常がない場合、終了シグナルがあるか否かを確認する。終了シグナルとしては、スイッチOFF操作、又は寝者がベッドからいなくなることの検知を用いることができる。終了シグナルがない場合には、ステップS302に移行し、終了シグナルの有無を検知しつつ絶えず睡眠時異常を監視する。有る場合には、終了処理を行う。
【0186】
なお、実施の形態2においても、実施の形態1の変形例と同様に、傾斜を元に戻すフローを採用してもよい。また、本実施の形態では、傾斜状態の記憶に関して、「左が上に傾斜」を負、「傾斜していない」を0、「右が上に傾斜」を正の値としてカウンタに記憶し、傾きを大きくした後には、その絶対値を大きくするような処理を行う方法を採用できる。
【0187】
以上に説明したように、本実施の形態によると、寝台の床面を左右方向に傾斜させることにより、寝者の体位変換を誘導でき、これにより様々な睡眠時異常を改善・解消できるという効果がある。
【0188】
(実施の形態3)
本実施の形態では、頭受け面及び背受け面の傾斜と、寝台の左右方向の傾斜と、の両方を行うベッドシステムについて説明する。この実施の形態では、寝台の左右方向の傾斜の動作制御が必須であること以外は、上記実施の形態1と同様であり、相違点以外の構成(例えば、ベッド本体の構成)についてはその説明を省略する。
図15は、実施の形態3にかかる寝姿勢制御ベッドシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0189】
本実施の形態では、寝台傾斜駆動部708を必須の構成としていること以外は、実施の形態1で説明した
図6の構成と同様である。この寝台傾斜駆動部708は、ベッド本体701の寝台を左右方向に傾斜させるための駆動部である。寝台を左右方向に傾斜させることにより、寝者の体位変換を誘導することができる。
図1に示すように、寝台傾斜駆動部708は、例えば回転軸ピン14を中心に寝台を回動させる寝台左右傾斜用駆動部26(
図1参照)で構成される。
【0190】
また、背上げ傾斜制御部704は、睡眠監視部702の監視データと、頭位置検知部707及び顔向き判定部706での検知判定情報に基づいて、背受け面及び頭受け面の傾斜角度及び寝台の左右方向の傾斜角度を決定し、傾斜させる。そして、或る時点での背受け面の傾斜角θx、頭受け面の傾斜角θy及び寝台の左右方向の傾斜角度は、背上げ傾斜制御部704に設けられたメモリに記憶させるか、又は背受け面の傾斜角度、頭受け面の傾斜角度、寝台の左右方向の傾斜角度のそれぞれについて多段階に規定し、背上げ傾斜制御部704に設けたカウンタに、背受け面の傾斜段階数、頭受け面の傾斜段階数、寝台の左右方向の傾斜レベル数を記憶させる構成としてある。
【0191】
以下、頭受け面及び背受け面の傾斜を、寝台の左右方向の傾斜よりも優先させて行うフローについて説明する。
図16〜18は、それぞれ実施の形態3にかかる寝姿勢制御ベッドシステムの動作フローを示す図である。
【0192】
図16に示すように、スイッチのON操作があり、且つ、寝台上に寝者の存在を検知すると、処理がスタートする。
【0193】
(ステップS401)
背受け面や頭受け面、寝台が傾斜していない状態から開始するため、記憶された傾斜状態レベル(左右方向)をリセットし、背受け面、頭受け面の傾斜状態を記憶するカウンタを0にし、傾斜状態をリセットする。
【0194】
(ステップS402)
次に睡眠監視部の監視情報を用いて睡眠時異常判定部が睡眠時異常の有無を検知する。異常ありの場合には、ステップS403に進む。異常なしの場合には、ステップS419に移行する。
【0195】
(ステップS403〜405)
次に顔向き判定部が、頭位置検知部の情報に基づいて寝者の顔の向きを判定する。顔が上向きの場合には、1のフローに、右向きの場合には、ステップS406に、左向きの場合は2のフローに、いずれでもない(下向き)の場合には3のフローに、それぞれ移行する。
【0196】
(ステップS406、407)
次に、頭位置検知部が頭受け面における頭の位置情報を検知する(
図6参照)。頭が左右方向右領域に位置する場合には、ステップS420に進み警告を発する。頭が左右方向左領域に位置する場合には、ステップS410に、いずれでもない(左右方向中央領域に位置する)場合には、ステップS408に移行する。
【0197】
(ステップS408)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態を確認する。傾斜している場合には、ステップS409に進む。傾斜していない場合には、ステップS413に移行する。
【0198】
(ステップS409)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態が最大限であるかを判定する。最大限である場合には、ステップS415に進む。最大限でない場合には、ステップS414に移行する。
【0199】
(ステップS410)
頭の位置が左右方向左領域にある状態において、現時点での傾斜状態を確認する。左領域側が上に傾斜している場合にはステップS411、そうでない場合にはステップS412に進む。
【0200】
(ステップS411)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態が最大限であるかを判定する。最大限である場合には、ステップS420に進む。最大限でない場合には、ステップS416に移行する。
【0201】
(ステップS412)
左領域が上の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS417に進む。
【0202】
(ステップS413)
いずれか一方が上の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS417に進む。
【0203】
(ステップS414)
傾斜レベルが最大限でないので、寝台をさらに1段階傾斜させる。この後、ステップS417に進む。
【0204】
(ステップS415)
頭の位置が中央領域にあり、寝台が最大限に傾斜状態であるので、現状とは逆側が上の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS417に進む。
【0205】
(ステップS416)
傾斜レベルが最大限でないので、寝台をさらに1段階傾斜させる。この後、ステップS417に進む。
【0206】
(ステップS417)
現時点での傾斜レベルを記憶させる。この後、ステップS418に進む。
【0207】
(ステップS418)
傾斜処理によって、睡眠状態が異常からの回復する前に速やかに睡眠状態の監視に移ると、寝台を傾斜させ過ぎてしまうおそれがある。このため、傾斜処理後、監視に戻る前に、所定時間が経過したか否かを確認する。所定時間経過した場合には、ステップS402に戻り、継続的な睡眠状態の監視に移行する。経過していない場合には、ステップS418を繰り返し行う。この所定時間は、医者、看護師等が決定して記憶しておくことができる。例えば、5分、10分等に設定できる。
【0208】
(ステップS419)
睡眠異常がない場合、終了シグナルがあるか否かを確認する。終了シグナルとしては、スイッチOFF操作、寝者がベッドからいなくなることを検知する等により行うことができる。終了シグナルがない場合には、ステップS402に移行し、終了シグナルの有無を検知しつつ絶えず睡眠時異常を監視する。有る場合には、終了処理を行う。
【0209】
(ステップS420)
睡眠異常があり、且つ、(1)顔が上向きでない、(2)頭の位置が頭受け面の左右領域にあり、頭とは逆方向が下に最大限傾斜した状態、のいずれかである。この場合、寝台を傾斜させても睡眠時異常からの回復に効果がない状態であるか、寝がえりを促す方向に寝台をさらに傾斜させる余地がない状態である。よって、睡眠時異常の警告を行う。これは、警告音声、振動等によって寝者に直接通知したり、警告音声、振動、警告画像等によって介助者に通知したりする方法を採用できる。
【0210】
(1のフロー)
ここでは、顔の向きが上向きなので、実施の形態1と同様にステップS104〜S109及び終了の処理を行えばよく、その説明は省略する。なお、ステップS108からステップS102への移行は、ステップS402への移行と読み替えればよい。
【0211】
(2のフロー)
このフローについて、
図17に示す。ここでは、顔の向きが左下向きであるため、顔の向きが右下向きである場合のステップS406〜S418、S420と、左右が対称となった処理を行えばよい(ステップS501〜S514)。このため、その説明は省略する。
【0212】
(3のフロー)
このフローについて、
図18に示す。ここでは、顔の向きが下向きである。この場合、上記とは逆に、頭が中央領域にある場合には、寝がえりによって上向きにしようとすると転落のおそれがある。
【0213】
(ステップS601,602)
次に、頭受け面における頭の位置情報を検知する。頭が左右方向右領域に位置する場合には、ステップS605に、頭が左右方向左領域に位置する場合には、ステップS603に、いずれでもない(左右方向中央領域に位置する)場合には、ステップS613に移行する。
【0214】
(ステップS603)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態を確認する。左領域が上となるように傾斜している場合には、ステップS604に進む。左領域が上となるように傾斜していない場合には、ステップS608に移行する。
【0215】
(ステップS604)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態が最大限であるかを判定する。最大限である場合には、ステップS613に進む。最大限でない場合には、ステップS609に移行する。
【0216】
(ステップS605)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態を確認する。右領域が上となるように傾斜している場合には、ステップS606に進む。右領域が上となるように傾斜していない場合には、ステップS607に移行する。
【0217】
(ステップS606)
次に、傾斜レベル記憶情報を用いて、現時点での寝台の傾斜状態が最大限であるかを判定する。最大限である場合には、ステップS613に進む。最大限でない場合には、ステップS610に移行する。
【0218】
(ステップS607)
右領域が上の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS611に進む。
【0219】
(ステップS608)
左領域が上の第1レベルに寝台を傾斜させる。この後、ステップS611に進む。
【0220】
(ステップS609)
傾斜レベルが最大限でないので、寝台をさらに1段階傾斜させる。この後、ステップS611に進む。
【0221】
(ステップS610)
傾斜レベルが最大限でないので、寝台をさらに1段階傾斜させる。この後、ステップS611に進む。
【0222】
(ステップS611)
現時点での傾斜レベルを記憶させる。この後、ステップS612に進む。
【0223】
(ステップS612)
傾斜処理によって、睡眠状態が異常からの回復する前に速やかに睡眠状態の監視に移ると、寝台を傾斜させ過ぎてしまうおそれがある。このため、傾斜処理後、監視に戻る前に、所定時間が経過したか否かを確認する。所定時間経過した場合には、ステップS402に移行し、3のフローから離れる。
【0224】
(ステップS613)
睡眠異常があり、頭が下向きであり、且つ、(1)頭の位置が頭受け面の左右方向中央領域にある状態、(2)頭の位置が頭受け面の左右領域にあり、頭とは逆方向が下に最大限傾斜した状態、のいずれかである。この場合、寝台を傾斜させても睡眠時異常からの回復に効果がない状態であるか、寝がえりを促す方向に寝台をさらに傾斜させる余地がない状態である。よって、睡眠時異常の警告を行う。これは、警告音声、振動等によって寝者に直接通知したり、警告音声、振動、警告画像等によって介助者に通知したりする方法を採用できる。
【0225】
なお、実施の形態3においても、実施の形態1の変形例と同様に、傾斜を元に戻すフローを採用してもよい。また、背受け面及び頭受け面を傾斜させる前に、寝台の左右方向の傾斜をリセットする構成としてもよい。
【0226】
次に、睡眠時異常の有無の判定について説明する。ここでは、呼吸によって濃度が高まるCO
2濃度を用いて検知する方法を例として説明する。
【0227】
この場合、睡眠時異常判定部503は、CO
2濃度センサと、CO
2濃度センサのデータと、所定の閾値とを比較して、呼吸異常(低呼吸ないし無呼吸)の有無を判定する判定部と、を備えている。無呼吸とは、口、鼻の気流が10秒以上停止するもの、低呼吸とは、10秒以上換気量が50%以上低下するものであり、所定の閾値は、寝者の睡眠時データや標準的なデータ等を用いて医師、看護師等が決定することができる。
【0228】
睡眠監視部502は、例えばCO
2濃度センサを備えており、監視データを睡眠時異常判定部503に送る通信部をさらに備える構成とすることができる。
【0229】
少なくともCO
2濃度センサは、寝者の鼻ないし口近傍に配置されるが、両者に配置されていてもよい。
【0230】
〔実施の形態4〕
実施の形態4に係る寝姿勢制御ベッドシステムに用いるベッド本体の全体像を、
図19に示す。実施の形態4は、
図19に示すように、寝台部230を、縦枠231と横枠232と半円状部材234とからなる構成とし、この寝台部230が床面233を保持し、寝台部230がスタンドフレーム211に設けられた縦フレーム235に回動可能(傾斜可能)に取り付けられている。この実施の形態の全体構成は、前記
図11と同様である。
【0231】
このベッドシステムにおける床面傾斜駆動部(床面233を傾斜させる傾動手段)としては、例えば半円状部材234の内周又は外周に歯車の受け溝を設け、半円状部材234の下端付近にこの受け溝に当接する対偶する歯車を配置しこの歯車を電動モータで駆動する構造とする。または例えば一対の縦フレーム235・235と床面233の縦方向中心線との交点近傍に回転軸受けを設け、かつ、寝台部230に回転軸棒を設け、当該回転軸棒を前記回転軸受けに挿入し、当該回転軸棒を電動モータで回転する構造とする。この構造において半円状部材234の何れかの箇所に、寝台部230を傾斜させた状態で寝台支持構造体230’に係合固定させるストッパー(床面傾斜駆動部の保持部)を設け、ストッパーによる係合固定のON、OFFを床面傾斜駆動部が自動制御する構成とすることができる。
【0232】
上記電動モータは、実施の形態2で記載した制御操作部(睡眠時異常判定部、傾斜駆動制御部、重心位置検知部を備えるもの)と同様の制御部(図示せず)に接続されており、制御部が電動モータを制御するようにする。ただし、これの構成に限られるものではない。要は睡眠監視部、睡眠時異常判定部、または重心位置検知部からの情報に基づいて傾斜駆動制御部が、床面233を円滑に傾斜駆動でき好適な傾斜が保持できるようにすればよい。
【0233】
なお、重心位置検知部はなくとも良い。また、
図19においては、図を見易くするために、睡眠監視部、床面傾斜駆動部の保持部(ストッパー)及びベッド本体床面上の柱状マットユニットが省略されて描かれている。
【0234】
この構成によっても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0235】
〔実施の形態5〕
実施の形態5に係る寝姿勢制御ベッドシステムに用いるベッド本体及び床面傾斜駆動部を
図20に示す。
図20はベッド本体の斜視図である。
図20に示すように、実施の形態5は、床面を有する寝台部363を保持し、且つ寝台部363を傾動させる昇降機構367を備えるベッド床部保持体369と、ベッド床部保持体369を下部より支えるベッドマット支持体364と、寝台部363上に保持されたベッドマット365と、を備えている。本実施の形態では、寝台部363の上面が、ベッド本体の床面を構成する。上記昇降機構367が、床面を左右方向に傾斜駆動させる床面傾斜駆動部となる。この昇降機構367には、実施の形態2で記載した制御操作部(睡眠時異常判定部、傾斜駆動制御部、重心位置検知部を備えるもの)と同様の制御部320にリード線321により接続されており、制御部320が睡眠時異常や重心位置を検知するとともに昇降機構367を制御するようにする。
【0236】
ここでベッド床部保持体369は、寝台部363を傾動させる昇降機構(床面傾斜駆動部)367と、昇降機構367を支持する足部368とを有している。また、昇降機構367の端部及び寝台部363の両端部には、両者を係合させる係合部367a、363aが設けられている。なお、
図20においては、睡眠監視部が省略されて描かれている。
【0237】
ベッドマット支持体364は、寝台部363を支持する床支持部362と、床支持部362を支持する足部361とを有している。
【0238】
この構造の寝姿勢制御ベッドシステムでは、例えば
図20中右側の昇降機構367を上昇させ、左側の昇降機構を下降させるように動作させると、寝台部363が右上がりに傾斜した状態となり、その逆の動きをさせると、寝台部363が左上がりに傾斜した状態となる。上記昇降機構367の制御は、実施の形態2と同様、制御操作部が行う。なお、昇降機構は、公知の構成を採用でき、例えば油圧を利用した構成とすることができる。
【0239】
この構成によっても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0240】
〔実施の形態6〕
実施の形態6では、音を用いていびきの有無を判定し、これを解消させる寝姿勢制御ベッドシステムについて説明する。本実施の形態では、睡眠時異常判定部の異常判定フローが異なる以外は、実施の形態2と同様であり、異常判定フローについてのみ説明する。
図21は、実施の形態6にかかる寝姿勢制御ベッドシステムの睡眠時異常の有無の判定フローを示す図である。
【0241】
(ステップS701)
動作が開始されると、まず、音センサが寝者の口周りで発生する音をモニタリングする。
【0242】
(ステップS702)
判定処理を容易とするために、ノイズ除去やフーリエ変換等の前処理を行う。
【0243】
(ステップS703)
睡眠時異常判定部には、あらかじめ寝者のいびきを前処理してデータを記憶しておく。測定した音データと予め記憶されたデータの一致度を比較する。一致度が所定の値(例えば、80%)以上の場合には、ステップS704に進む。一致度が所定の値未満の場合には、ステップS705に進む。なお、一致度が所定の値未満には、音が検知されない場合も含まれる。
【0244】
(ステップS704)
一致度が所定の値以上のときには、いびき発生状態となっているので、睡眠時異常有りと判定する。
【0245】
(ステップS705)
一致度が所定の値未満のときには、いびき発生状態となっていないので、睡眠時異常なしと判定する。
【0246】
なお、流速を用いて判定する場合には、ステップS201〜204と同様にして行うことができ、振動を用いて判定する場合には、ステップS701〜705と同様にして行うことができる。
【0247】
〔実施の形態7〕
実施の形態7では、寝者の転落を防止するベッドマット構造について説明する。本実施の形態では、ベッドマット構造の構成が異なる以外は、実施の形態2と同様であり、共通する部分については説明を省略する。
図22は、実施の形態7にかかるベッドマットの横断面図である。
【0248】
本実施の形態では、
図22に示すように、ベッドマット125の中央部125aが、両端部125bよりも窪んだ凹形状をなしている。このため、ベッド床面を傾斜させた状態において、両端部125bが寝者の転落を防止するように機能する。
【0249】
ここで、中央部125aの幅は、ベッドマット全幅の80%以上であることが好ましい。また、両端部125bの幅はそれぞれ、ベッドマット全幅の3%以上であることが好ましい。
【0250】
なお、本実施の形態では、窪みの形状を半楕円状としているが、これに限定されるものではなく、円弧状、カテナリー曲線状等とすることができる。
【0251】
〔実施の形態8〕
実施の形態8では、寝者の転落を防止するベッドマット構造の変形例について説明する。本実施の形態では、ベッドマット構造の構成が異なる以外は、実施の形態2と同様であり、共通する部分については説明を省略する。
図23は、実施の形態8にかかるベッドマットの横断面図である。
【0252】
本実施の形態では、
図23に示すように、ベッドマット125の中央部125aと、両端部125bと、で材料が異なっており、中央部125aに用いる材料が、両端部125bで用いる材料よりも圧縮率が大きくなっている。このため、寝者が上にのると、中央部125aでは大きく沈み、両端部125bではほとんど沈まない。よって、圧縮され難い両端部125bが寝者の転落を防止するように機能する。
【0253】
実施の形態7、8のベッドマット構造は、実施の形態1のベッドシステムに適用することも可能である。この場合において、柱状ベッドマットは、頭受け面及び背受け面の屈曲を阻害しないように配置する。