【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る光コネクタ1の構成を示す断面図である。
図2は、(a)が
図1に示す筒状突出部20のA−A線断面図であり、(b)が(a)に示す筒状突出部20の変形例の断面図である。
図3は、光コネクタ1の各箇所の寸法について説明するための図である。
図4は、光コネクタ1のがたつきによって係合位置が光軸方向にズレた状態を示す断面図である。
本発明の実施例に係る光コネクタ1は、第一ハウジング10と、第一ハウジング10に収容される第一光ファイバ100と、第一ハウジング10に係合される第二ハウジング40と、第二ハウジング40に収容される第二光ファイバ200とを有し、第一ハウジング10と第二ハウジング40との係合に伴い、第一光ファイバ100の先端面100aと第二光ファイバ200の先端面200aとを突き合わすことによって光学的に接続する。
【0018】
まず、第一光ファイバ100および第二光ファイバ200について説明する。
第一光ファイバ100は、端末部の不図示の被覆部を除去し、露出された第一光ファイバ100の先端部100b(以下、第一先端部100bという。)がファイバ挿通孔12から突出するように第一ハウジング10に収容される。
第二光ファイバ200は、端末部の不図示の被覆部を除去し、露出した第二光ファイバ200の先端部200b(以下、第二先端部200bという。)がファイバ挿通孔42から突出するように第二ハウジング40に収容される。
【0019】
次に、第一ハウジング10について説明する。
第一ハウジング10は、第二ハウジング40との繰り返しの着脱によっても、不図示のロック機構や後述する筒状突出部20等が破損せずに弾性変形できる合成樹脂材からなる。例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が適用できる。
この第一ハウジング10は、本体部分を構成する第一ハウジング基部11と、第一ハウジング基部11から突出し、第一および第二先端部100b、200bを調芯する筒状突出部20と、係合をガイドする第一係合ガイド部30と、が一体成形されている。
【0020】
第一ハウジング基部11は、第一光ファイバ100を挿通するファイバ挿通孔12と、第一光ファイバ100を加締め、接着、溶着等によって第一ハウジング10に固定する不図示の固定機構と、を有する。
【0021】
筒状突出部20は、第一先端部100bを筒孔21内に収容し、筒孔21内に第二先端部200bが挿入可能、かつ筒孔21の孔径が弾性的に縮径変形可能で、第一ハウジング10の先端方向に筒状に突出している。
【0022】
この筒状突出部20には、
図2(a)に示すように、筒孔21を中心とする点対称の位置に先端面から3つのスリット22が形成されている。これにより、筒状突出部20は、筒孔21を中心として点対称の位置に3つの弾性片部23が設けられる。スリット22は、径方向内側に向けて外力を作用すると、スリット22の間隔が狭くなり、筒孔21の孔径が縮径変形する。一方、外力を取り除くと、スリット22の間隔が元にもどる。
【0023】
なお、この実施例では、筒状突出部20は、3箇所にスリット22が形成されるものを例示したが、これに限らず、筒状突出部20が筒孔21内に保持された第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の外周面を均一に押圧するように筒孔21の孔径を縮径変形できればその他の構造であっても構わない。例えば、
図2(b)に示すように、筒状突出部20は、筒孔21を中心とする点対称の位置に先端面から4つのスリット22を形成した構造でもよい。
【0024】
また、筒状突出部20は、先端部がテーパー状の先端テーパー部20aと、先端テーパー部20aより筒孔21内方側に連接され、外径が一定である非テーパー部20bとを有する。非テーパー部20bの外周面20cは、第一ハウジング10と第二ハウジング40を係合する場合に、後述する押圧部50の筒内周面52との接触面であり、光軸方向に対して平行になっている。
【0025】
筒状突出部20に、径方向内側に向けて外力を作用させていない状態で、筒孔21の孔径を第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の外径より僅かに大きい寸法に調整している。
また、筒状突出部20は、第一先端部100bが筒孔21内に収容されているため、第一先端部100bを保護するようになっている。
【0026】
第一係合ガイド部30は、押圧部50の外周面と摺接する面が内周面に形成され、光軸方向に直交する方向で第一ハウジング10と第二ハウジング40と位置決めするためのガイドである。
【0027】
次に、第一ハウジング10に第一光ファイバ100を取り付ける手順について説明する。
まず、第一光ファイバ100の端末部を覆う不図示の被覆部を除去し、第一光ファイバ100の端面が平滑になるように第一光ファイバ100を切断する。
【0028】
その後、第一光ファイバ100をファイバ挿通孔12内に挿入し、第一先端部100bを筒状突出部20の筒孔21内の所定位置に配置する。
ここで、筒状突出部20の先端側から筒孔21内に第二先端部200bを挿入する距離B(
図3参照)を第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の外径の4倍以上に設定することが好ましい。例えば、第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の外径が0.5mmの場合、距離Bを2mm以上に調整する。
このような第一光ファイバ100の取り付け位置の調整は、例えば、不図示の凸状冶具の凸部の長さを2mm以上とし、この凸部を筒状突出部20の先端側から挿入した状態で第一光ファイバ100を凸部先端に突き当てる方法がある。
【0029】
最後に、第一ハウジング基部11の固定機構によって、第一光ファイバ100を第一ハウジング10に固定し、第一ハウジング10への第一光ファイバ100の取り付けが完了する。
【0030】
次に、第二ハウジング40について説明する。
第二ハウジング40は、第一ハウジング10との繰り返しの着脱によっても、不図示のロック機構等が破損せずに弾性変形できる合成樹脂材からなる。例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が適用できる。
この第二ハウジング40は、本体部分を構成する第二ハウジング基部41と、第二ハウジング基部41から突出し、筒孔21の孔径を縮径変形するように筒状突出部20の外周面20cを押圧する円筒状の押圧部50と、係合をガイドする第二係合ガイド部60と、が一体成形されている。
【0031】
第二ハウジング基部41は、第二光ファイバ200を挿通するファイバ挿通孔42と、第二光ファイバ200を加締め、接着、溶着等によって第二ハウジング40に固定する不図示の固定機構と、第二光ファイバ200の余長分をたわませて吸収する空間である余長吸収空間43と、を有する。
【0032】
余長吸収空間43は、ファイバ挿通孔42の一部に結合する空間であり、第一光ファイバ100と第二光ファイバ200とを突き合わすことによって第二光ファイバ200に発生した余長部分を吸収する。
【0033】
押圧部50は、筒状突出部20の外周面20cを押圧するように筒状突出部20に対応した形状および寸法の有底の円筒状をなし、第二光ファイバ200がファイバ挿通孔42から筒内に先端を突出されるようにして配置されている。
【0034】
この押圧部50は、テーパー状のテーパー内縁面部51と、内径が一定でありテーパー内縁面部51に連接する筒内周面52と、を有する。
【0035】
筒内周面52は、筒孔21の孔径を縮径変形するように筒状突出部20の外周面20cを押圧する面である。この筒内周面52は、筒状突出部20の非テーパー部20bの外径に比して内径を小さく調整している。
また、筒内周面52は、第一ハウジング10と第二ハウジング40を係合する場合に、非テーパー部20bとの接触面であり、光軸方向に対して平行になっている。
このため、非テーパー部20bが筒内周面52に接触するまで、第一ハウジング10と第二ハウジング40との係合が進むと、筒状突出部20の筒孔21が第一光ファイバ100と第二光ファイバ200とを保持できる孔径に縮径変形する。
ここで、第一光ファイバ100と第二光ファイバ200とを安定して保持できるように筒孔21の孔径を、第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の外径に対して、例えば、1〜5%程度小さい寸法に縮径変形させる。
【0036】
第二係合ガイド部60は、第一係合ガイド部30の外面に摺接する面を有し、光軸方向に直交する方向に位置決めガイドするものである。
また、第二係合ガイド部60は、端縁面60aを第一ハウジング基部11と筒状突出部20との連結部分に設けた段差部10aに突き当てることによって、光軸方向での位置決めする。
【0037】
次に、第二ハウジング40に第二光ファイバ200を取り付ける手順について説明する。
まず、第二光ファイバ200の端末部を覆う不図示の被覆部を除去し、第二光ファイバ200の端面が平滑になるように第二光ファイバ200を切断する。
【0038】
その後、第二光ファイバ200をファイバ挿通孔42内に挿入し、第二先端部200bをファイバ挿通孔42から押圧部50の筒内に突出するように配置する。
ここで、
図3に示すように、押圧部50の筒内に突出する第二光ファイバ200の長さL1は、係合した状態の第一光ファイバ100の先端面100aから押圧部50の底面50aまでの距離L2より長い。また、長さL1と距離L2の差が第二光ファイバ200が余長吸収空間43でたわむことができる最大長さL3よりも短くなるように(0<L1−L2<L3)長さL1を設定する。第二光ファイバ200の組み付け時においては、不図示の冶具等に第二光ファイバ200の先端面を突き当てることによって長さL1を調整する。
【0039】
最後に、第二ハウジング基部41の固定機構によって、第二光ファイバ200を第二ハウジング40に固定し、第二ハウジング40への第二光ファイバ200の取り付けを完了する。
【0040】
このような光コネクタ1は、ロック機構のがたつきにより、距離C(
図4参照)だけ係合位置が光軸方向にズレる。この場合、非テーパー部20bと筒内周面52との接触区間を距離Cよりも長く調整することにより、筒孔21の孔径を第一光ファイバ100と第二光ファイバ200を突き合わした状態で保持できる孔径のまま維持する。
【0041】
また、距離Cだけ係合位置がズレることによって第二光ファイバ200が第二ハウジング40の前方に向けて引っ張られた場合、第二光ファイバ200の余長分となるたわみによって距離Cの変動分を吸収するため、第二光ファイバ200が破損しないようになっている。
【0042】
次に、
図5を用いて、第一ハウジング10と第二ハウジング40との係合が完了するまでの動作を説明する。
【0043】
第一ハウジング10と第二ハウジング40との係合が開始されると、第一ハウジング10と第二ハウジング40とは第一係合ガイド部30および第二係合ガイド部60によってガイドされながら係合方向に移動し、第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の互いの先端面100a、200aを突き合わせる(
図5(a)参照)。
【0044】
その後、第一ハウジング10と第二ハウジング40とをさらに係合方向に移動させると、先端テーパー部20bをテーパー内縁面部51に摺接させながら筒孔21を漸次縮径させる(
図5(b)参照)。この係合方向の移動によって、第二光ファイバ200の余長分が余長吸収空間43でたわみながら吸収される。
【0045】
最後に、第二係合ガイド部60の端縁面60aが段差部10aに突き当たるまで、第一ハウジング10と第二ハウジング40とを係合方向に移動し、ロック機構によってロックする。これによって、光コネクタ1の第一ハウジング10と第二ハウジング40との係合が完了する(
図5(c)参照)。
ここで、外周面20cと筒内周面52とが接触し、第一と第二先端部100b、200bが互いの先端面100a、200aを突き合わした状態で保持される。
【0046】
本発明の実施例に係る光コネクタ1は、第一ハウジング10と第二ハウジング40とを係合する場合、押圧部50により筒孔21の孔径が縮径変形することによって、第一と第二先端部100b、200bが互いの先端面100a、200aを突き合わした状態で筒孔21内に保持される。このため、突き合わした第一光ファイバ100と第二光ファイバ200との軸がズレないため、光接続損失を抑えることができる。
【0047】
また、本発明の実施例に係る光コネクタ1は、余長吸収空間43によって第二光ファイバ200をたわませることにより、第二光ファイバ200の余長を吸収することができる。
【0048】
また、本発明の実施例に係る光コネクタ1は、筒状突出部20の先端部に形成された3箇所のスリット22によって、筒孔21の孔径を弾性的に縮径変形し易くするとともに、筒状突出部20が第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の外周面に均一な押圧力を負荷させながら第一光ファイバ100および第二光ファイバ200を保持することができる。
【0049】
また、本発明の実施例に係る光コネクタ1は、光軸方向のがたつきによって係合位置が光軸方向にズレた場合であっても、筒状突出部20と押圧部50の接触面20c、52が、光軸方向に対して平行で、接触面20c、52の区間をがたつきによって生じる係合位置のズレよりも長くに調整することにより、筒孔21の孔径を第一光ファイバ100と第二光ファイバ200とを突き合わさせた状態で保持できる孔径のまま維持できる。このため、光コネクタ1のがたつきに対しても確実に第一光ファイバ100と第二光ファイバ200を保持することができる。
【0050】
なお、本発明の実施例に係る光コネクタ1は、筒状突出部20に複数のスリット22を形成することにより、筒孔21の孔径を縮径変形するものを例示したが、これに限らず筒状突出部20の筒孔21の孔径が縮径変形可能な構造になっていればその他の構造であっても構わない。例えば、筒状突出部20にスリット22を形成せず、筒状突出部20を押圧部50により圧縮することによって筒孔21の孔径が縮径変形する構造でも構わない。
【0051】
また、本発明の実施例に係る光コネクタ1は、余長吸収空間43を第二ハウジング40に設ける構造を例示したが、これに限らず、第一ハウジング10についても、第一光ファイバ100の余長分をたわませて吸収する空間である余長吸収空間を設ける構造にしても構わない。
【0052】
また、本発明の実施例に係る光コネクタ1は、筒状突出部20が円筒状であるものを例示したがこれに限らず、筒状であればその他の形状であっても構わない、例えば角筒状であっても構わない。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。