(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の乾燥処理装置について説明する。
本発明の乾燥処理装置は、水分を含む有機性廃棄物を乾燥する加熱部と、該加熱部から排出されるガスを浄化するガス浄化部とを具備する。
【0010】
(水分を含む有機性廃棄物)
水分を含む有機性廃棄物としては、農村集落排水処理施設、下水処理場、染色工場・食品工場・製紙工場等の有機排水処理施設等から排出される汚泥、養鶏、養豚、養牛場から排出される糞尿、食品加工場から排出される端材、飲食店から出される残飯等が挙げられるが、特に限定されるものではない。汚泥は、未消化汚泥、消化汚泥のいずれも用いることができる。
これらの有機性廃棄物は、フィルタープレス、ベルトプレス、遠心脱水等の脱水機によって脱水処理が施されて、含水率が100質量%以下にされたものが好ましい。
なお、有機性廃棄物の含水率の算出は、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」、公布日:昭和48年02月17日、環境庁告示13号、第一の表の備考の規定に準じて行われる。具体的には、有機性廃棄物の含水率は、下記(1)式により求められる。
有機性廃棄物の含水率(質量%)=(乾燥前の質量(g)−絶乾状態質量(g))/乾燥前の質量(g)×100 ・・・(1)
【0011】
(加熱部)
加熱部は、水分を含む有機性廃棄物を加熱して乾燥させるものである。
また、加熱部によって有機性廃棄物を加熱処理した際には、悪臭物質、有害物質及び煤塵よりなる群から選ばれる少なくとも1つの不要物質を生じることが多い。
【0012】
加熱部としては、公知の乾燥機を用いてもよく、特に限定されるものではない。例えば、熱風を乾燥炉内に直接吹き込むものや、蒸気やオイル等を熱媒体として用い、乾燥炉の外周や乾燥炉内に複数配置された加熱管の内部に前記熱媒体を通し、間接的に水を含む有機性廃棄物を乾燥するもの等が挙げられる。また、蒸気やオイル等に代えて電気ヒーター等を用いたものであってもよい。
乾燥の方式としては、連続式、バッチ式いずれであってもよいが、乾燥処理の効率の観点からは、連続式が好ましい。
【0013】
乾燥機としては、汚泥等の処理に用いられるものが好ましい。例えば、特開2006−17335号公報、特開2012−233599号公報、特開2012−037211号公報、特開2010−236731号公報、特開2013−46882号公報に記載の乾燥機が挙げられる。
また、特開2010−75783号公報に記載の誘導加熱を利用した揮発性有機溶剤回収装置を加熱部として用いることもできる。また、上記の乾燥機等に誘導加熱を組み合わせて加熱部として用いることも可能である。
市販されている乾燥機としては、株式会社大川原製作所製の連続式伝導伝熱乾燥機インナーチューブロータリー、破砕撹拌翼付回転乾燥装置スーパーロータリードライヤー、回転型通気乾燥装置ロートスルーや、山本技研工業株式会社のダブルドラムドライヤー、ロータリーコイルドライヤー等が挙げられる。
【0014】
(ガス浄化部)
本発明におけるガス浄化部は、前記ガスに複数の方向から水を噴霧する噴霧手段、及び、前記ガスを浄化する多孔質セラミックス焼成体製の吸着手段のうち、少なくとも一方を備える。
ガス浄化部は、噴霧手段と吸着手段の両方を備えてもよいし、噴霧手段と吸着手段のうち、一方のみを備えてもよい。ガス浄化率が高い点では、噴霧手段と吸着手段の両方を備えることが好ましい。さらに、吸着手段が、ガスの流れにおいて噴霧手段の下流側に配置されていることが、高いレベルでの除去効果を持続させるとの観点から好ましい。
また、噴霧手段及び吸着手段は、各々、1個でもよいし、複数個でもよい。
【0015】
<噴霧手段>
噴霧手段を用いてガス中に水を噴霧することにより、不要物質に含まれる煤塵を水に捕捉させることができ、また、悪臭物質及び有害物質のうちの水溶性成分を水に溶け込ませることができる。
噴霧手段としては、水を噴霧できれば特に限定されず、例えば、スプレーノズルやジェットノズル等が挙げられる。
噴霧手段から供給される水の噴霧パターンは、ガスとの接触面積を大きくするために、環状、面状又は帯状が好ましい。
後述するように、噴霧手段で噴霧される水には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれてもよい。
【0016】
噴霧手段は2個以上であることが好ましい。噴霧手段が2個以上であれば、2ヵ所以上から水を噴霧させることができ、様々な方向に無秩序に且つ高速に乱れ飛ぶ水滴が存在する空間中にガスを通過させることができる。これにより、ガスと水の接触機会を増加させることができ、水によって主に煤塵及び水溶性成分をより捕捉できる。
さらに、ガスと水との接触機会を高めるためには、2個以上の噴霧手段の水の噴霧方向は、各々、異なることが好ましい。
【0017】
噴霧手段によって噴霧した水の一部を回収し、循環ポンプを用いて、再び、噴霧手段に供給しても構わない。
また、噴霧した水を一定量貯水し、その貯水された水に、加熱部から排出されたガスを通し、バブリングさせて、不要物質を捕捉してもよい。この場合、貯水された水を通過したガスに、噴霧手段から噴霧した水を接触させることになる。
【0018】
<吸着手段>
吸着手段の配置は特に限定されないが、ガスとの接触機会が増えることから、ガスの進行方向に対して平行でない方向に配置することが好ましい。さらには、吸着手段を層状とし、ガスの進行方向に対して垂直に配置することがより好ましい。また、層状の吸着手段は複数配置してもよい。層状の吸着手段を複数配置した場合には、吸着手段の層と層の間に空気層を形成してもよいし、他のガス浄化部を配置してもよい。
また、吸着手段においては、多孔質セラミックス焼成体で充填してもよい。
【0019】
[多孔質セラミックス焼成体]
吸着手段を構成する多孔質セラミックス焼成体は、マイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔を有するものである。また、これらの気孔が連通しているものが好ましい。
より具体的には、多孔質セラミックス焼成体に形成されている気孔の大きさが、孔径1nm以上1000nm未満のナノメートルオーダーの気孔及び孔径1μm以上1000μm未満のマイクロメートルオーダーの気孔を有するものである。また、この範囲以外の、例えば、1mm以上100mm未満のミリメートルオーダーの気孔、またそれ以外の大きさの気孔を有していてもよい。
【0020】
気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体の原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。気孔の孔径とは、気孔の長径を指す。ミリメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体をカット(板状物の場合はその厚さ方向に沿ってカット)し、スケールを用いて測定される値である。ナノメートルオーダーの気孔の孔径及びマイクロメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックス焼成体をカット(板状物の場合はその厚さ方向に沿ってカット)し、電子顕微鏡を用いて測定される値である。
【0021】
多孔質セラミックス焼成体がマイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔を有すると、後述する好ましい見かけ密度や飽和含水率にしやすくなる。そのため、ガスとの接触面積が増加して、不要物質の除去性能がより高くなる。
【0022】
多孔質セラミックス焼成体は、多孔質セラミックス焼成体用原料を混合した後、乾燥せずに焼成して得たものであることが好ましい。ここでいう「乾燥」とは、含水率を1質量%以下にする操作のことである。
乾燥せずに焼成することにより、焼成時に、混合物に含まれる水分が短時間に大量に蒸発し、多孔質セラミックス焼成体に亀裂が入る。この焼成時の亀裂により、得られる多孔質セラミックス焼成体の内部にまで、焼成時に熱が伝わり、マイクロメートルオーダーの気孔やナノメートルサイズの気孔をより形成できる。さらに、得られた多孔質セラミックス焼成体の亀裂を通して、多孔質セラミックス焼成体に供給される水や水に含まれる酸性物質等、さらにはガス中の不要物質が多孔質セラミックス焼成体の内部に入り込みやすくなり、さらに除去性能を向上できる。
多孔質セラミックス焼成体の亀裂の大きさは、混合物の組成、焼成速度、焼成時間等により調整できる。
なお、含水率は、有機性廃棄物の含水率と同様の方法でもとめることができる。
【0023】
多孔質セラミックス焼成体の形状は、板状物、柱状物、球状物、塊状物、粒状物のいずれであってもよいが、ガスの流れに対する抵抗を小さくし、かつ、ガスと多孔質セラミックス焼成体の接触機会を容易に増やせることから、粒状物が好ましい。
多孔質セラミックス焼成体の粒状物の粒子径は5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましい。多孔質セラミックス焼成体の粒状物の粒子径が前記上限値以下であれば、不要物質との接触機会をより多くできる。
一方、多孔質セラミックス焼成体の粒状物の粒子径は、ガスの流れに対して抵抗が小さくなることから、1mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好まし
い。
【0024】
多孔質セラミックス焼成体の粒状物は、様々な大きさの粒状物を用意し、任意の割合で配合して得てもよい。なお、粒子径は篩分けにより測定される値であり、例えば5mm超10mm以下の粒状物とは、目開き10mmの篩を通過し、目開き5mmの篩を通過できないものを意味する。
なお、粒状物が大きく篩の入手が困難な場合は、粒状物の長辺をノギス等で測定し、粒子径としてもよい。
【0025】
多孔質セラミックス焼成体は、見かけ密度が0.3〜1.5g/mlであることが好ましい。見かけ密度の上限については、1.1g/ml以下であることがより好ましく、0.8g/ml以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、多孔質セラミックス焼成体の強度を保ちつつ、多孔質セラミックス焼成体内の気孔が多くなる。そのため、多孔質セラミックス焼成体の表面積が大きくなり、ガス中の不要物質との接触機会を増大させることができる。
上記の見かけ密度は、「土壌標準分析・測定法」(博友社)の中の三相分布・容積重(実容積法)にて測定される乾土質量(g)より求められる容積重(仮比重、g/ml)である。
なお、多孔質セラミックス焼成体が大きいときの見かけ密度の単位は、実施例で説明する測定方法より、「g/cm
3」となる。
【0026】
多孔質セラミックス焼成体は、飽和含水率が15〜100質量%であることが好ましい。飽和含水率の下限については、30質量%以上であることがより好ましい。飽和含水率が上記の範囲内であれば、多孔質セラミックス焼成体の強度を保ちつつ、多孔質セラミックス焼成体内の気孔が多くなる。そのため、多孔質セラミックス焼成体の表面積が大きくなり、ガス中の不要物質との接触機会を増大させることができる。
なお、多孔質セラミックス焼成体の飽和含水率が前記上限値より大きいと、多孔質セラミックス焼成体の気孔率が大きく、また、飽和含水率が前記下限値より小さいと、気孔率が小さく、飽和含水率と気孔率には相関関係があるとみなすことができる。
【0027】
また、多孔質セラミックス焼成体には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が担持されてもよい。
具体的な酸性物質、塩基性物質、界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
酸性物質としては、酸化チタン、二酸化けい素、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛等の無機化合物、アクリル酸等のカルボキシル基含有化合物やスルホン酸基含有化合物、リン酸系化合物等の有機化合物が挙げられる。
塩基性物質としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び酸化バリウム等の無機化合物、ポリアミン系化合物、ジシアンジアミド系化合物、第四級アンモニウム系化合物等の有機化合物が挙げられる。
なお、酸化亜鉛や酸化アルミニウム等の両性物質は、処理の対象物質が酸性物質である場合には塩基性物質となり、処理の対象物質が塩基性物質の場合には酸性物質となる。従って、本発明においては、両性物質は、酸性物質又は塩基性物質に包含される。
界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、脂肪酸エチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型の非イオン界面活性剤、グリセロールの脂肪酸エステル等の多価アルコール型の非イオン界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記の酸性物質、塩基性物質、界面活性剤は臭いを有さないものが好ましく、例えば、両性界面活性剤ではアルキル部の炭素数が10以上で、純度の高いものが好ましい。
酸性物質、塩基性物質、界面活性剤は、複数のものを組み合わせて使用してもよいが、酸性物質と塩基性物質を併用する場合にはこれらが結合しないように界面活性剤等で均一な分散状態を保つようにすることが好ましい。
【0028】
[多孔質セラミックス焼成体の製造方法]
多孔質セラミックス焼成体の製造方法の一例について説明する。ただし、多孔質セラミックス焼成体の製造方法は、下記例の製造方法に限定されるものではない。
本例の多孔質セラミックス焼成体の製造方法は、多孔質セラミックス焼成体用の原料を混合して混合物(以下、単に「混合物」ということがある)を調製し(混合工程)、該混合物を成形して成形体を作製し(成形工程)、該成形体を焼成して多孔質セラミックス焼成体を得る(焼成工程)方法である。
【0029】
混合工程は、粘土を含む原料を混合して混合物を得る工程である。
混合物としては、例えば、発泡剤と粘土とを含むものが好ましく、発泡剤、有機汚泥及び粘土を含むものがより好ましい。また、珪藻土を配合してもよい。発泡剤と粘土を用いることで大きなミリメートルオーダーの気孔やマイクロメートルオーダーの気孔また多孔質セラミックス焼成体の表面にミリメートルオーダー、マイクロメートルオーダーの凹凸を形成することができる。さらに、有機汚泥を用いることでより多くのマイクロメートルオーダーの気孔と、さらに小さなナノメートルオーダーの気孔を形成することができる。このような混合物を焼成して得られた多孔質セラミックス焼成体は、相互の気孔が連通した孔を有するものとなる。さらに、珪藻土を加えることで、珪藻土由来のマイクロメートルオーダー等の気孔を有するものとなる。
【0030】
発泡剤は、焼成時に発泡するものであり、例えば、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、炭酸マグネシウム、スラグ等の公知のセラミックス用の発泡剤を用いることができる。これら発泡剤の中でも、スラグが好ましい。スラグは、特に限定されず、例えば、金属精錬時に発生する高炉スラグ、都市ゴミの溶融時に発生する都市ゴミ溶融スラグ、下水汚泥の溶融時に発生する下水汚泥溶融スラグ、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄時に発生する鋳鉄スラグ等のガラス質スラグ等が挙げられ、中でも、組成が安定しているため安定した発泡状態が得られると共に、他のスラグに比べ1.5〜2倍程度の発泡率である鋳鉄スラグがより好まし
い。
また、鋳鉄スラグは、SiO
2、Al
2O
3、CaO、Fe
2O
3、FeO、MgO、MnO、K
2O、Na
2O等の成分を含み、得られる多孔質セラミックス焼成体は、塩基性物質を別途担持させなくとも優れた酸性物質除去性を有している。
【0031】
配合物中のスラグの配合量は、混合物の成形性を勘案して決定することができ、例えば、80質量%以下が好ましく、20〜75質量%がより好ましく、30〜65質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度、気孔率(飽和含水率)を好適な範囲にすることができる。
【0032】
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。有機汚泥は、任意のものを用いることができ、下水や工場等の排水処理に由来する活性汚泥が特に好ましい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集・脱水工程を経て排出される。このような有機汚泥を用いることで、マイクロメートルオーダーの気孔を効率的に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。ナノメートルオーダーの気孔が形成されることで、多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度を小さく、気孔率(飽和含水率)をより高めることができ、不要物質との接触機会を増加させることができる。さらに、廃棄物
の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料として利用することができる。
有機汚泥の含水率は、例えば、5〜90質量%が好ましく、65〜85質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、均質な混合物が得られると共に、良好な成形性を維持しやすい。
【0033】
有機汚泥中の有機物の含有量は、特に限定されないが、例えば、有機汚泥の固形分中の有機物の含有量(有機物含有量)として70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。前記有機物含有量が多いほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、有機物含有量は、乾燥後の汚泥をJIS M8812−1993に準じ、炭化温度700℃で灰分(質量%)を測定し、下記(2)式により求まる値である。
【0034】
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(2)
【0035】
有機汚泥の平均粒子径は、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmとされる。有機汚泥は、焼成により焼失し、その部分に気孔を形成するため、平均粒子径が小さいほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)により測定される体積基準のメディアン径(体積50%径)である。
【0036】
混合物中の有機汚泥の含有量は、混合物の成形性等を勘案して決定することができ、例えば、1〜60質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。有機汚泥の含水量が65質量%以上の場合では、上記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形性が向上し、成形装置を閉塞することなく円滑に成形できる。また、含水率が35質量%未満の有機汚泥の場合は、30質量%を上回ると、ミリメートルオーダーの気孔が少なくなる。
【0037】
粘土は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料である。
粘土は、セラミックスに用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、粘土系等の鉱物組成で構成され、構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、パイロフィライトを含むものが好ましい。このような粘土としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合できる。これらの粘土に含まれる成分もガスに含まれる悪臭物質、有害物質の除去に効果を発揮する。
【0038】
混合物中の粘土の含有量は、多孔質セラミックス焼成体に求める強度や成形性等を勘案して決定でき、例えば、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼成体の強度を充分なものにできる。
【0039】
混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、マイティ2000WH(商品名、花王株式会社製)等のナフタリン系の流動化剤、メルメントF−10(商品名、昭和電工株式会社製)等のメラミン系の流動化剤、ダーレックススーパー100pH(商品名、グレースケミカルズ株式会社製)等のポリカルボン酸系の流動化剤、銀、銅、亜鉛等の抗菌剤、塩化アンモニウム、塩化亜鉛等の消臭剤、ゼオライト、アパタイト等の吸着剤、長さが1mm〜5cmの炭素繊維、バサルト繊維、ロックウール等の強度向上剤、また、金属アルミニウム等が挙げられる。
混合物に任意成分を配合する場合、任意成分の配合量は、例えば、0.01〜10質量%の範囲で決定することが好ましい。
【0040】
また、成形性の観点より、混合物の流動性の調整等を目的として、適宜、水を配合してもよいが、有機汚泥が好適な配合比で配合されている場合には、混合工程にて水を添加しなくてもよい。
また、水分が多い場合には、例えば、ガラス、瓦等の破砕物や、フライアッシュ、クリンカーアッシュ等を含むことが好ましい。特に瓦の破砕物を配合することにより、過剰な水分を吸収し、配合物の流動性を調整でき、成形性を向上させることができる。
ガラスを用いる場合には、好ましくは、溶融温度が900℃以上の高融点ガラスの粒子状フィラーがより好ましい。高融点ガラスの粒子を用いることで、多孔質セラミックス焼成体に形成される気孔を維持しながら水分調整が可能である。また、高融点ガラスやフライアッシュは強度向上剤としても用いることができる。
【0041】
高融点ガラスや瓦の粒子の粒子径は、0.1〜5mmが好ましい。粒子径が0.1mm未満であると、多孔質セラミックス焼成体における気孔の形成が不充分になるおそれがある。気孔の形成が不充分であると、ガス中に含まれる不要物質の除去性能、多孔質セラミックス焼成体の耐久性が低下することがある。
粒子径が5mm超であると、成形性が低下したり、成形時に押出し口の金具が破損したりするおそれがある。
【0042】
また、クリンカーアッシュやフライアッシュは、火力発電所から排出されるものであって、廃棄物の有効活用の観点より好ましい。
【0043】
混合物中の高融点ガラス、瓦の粒子、フライアッシュ、クリンカーアッシュの含有量は、本発明の目的を逸脱しない範囲で配合物の目的とする流動性にあわせて適宜選択すればよいが、高融点ガラスや瓦、フライアッシュ、クリンカーアッシュ以外の原料の合計100質量部に対し、3〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
【0044】
混合工程に用いられる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
混合装置としては、例えば、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)、混合機(日陶科学株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
成形工程は、混合工程で得られた混合物を任意の形状に成形する工程である。
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や所望する成形体の形状を勘案して決定することができる。具体的な成形方法としては、成形機を用いて、押し出し成形し、ペレット等を含めた板状、粒状又は柱状等の成形体を得る方法、混合物を任意の形状の型枠に充填して成形体を得る方法、あるいは、混合物を押し出し、延伸又は圧延した後、任意の寸法に切断する方法等が挙げられる。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機、平板押出し成形機等が挙げられ、中でも、真空土練成形機が好ましい。
【0046】
焼成前の混合物の含水率は1質量%超であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。混合物の含水率が前記下限値を下回ると、得られる多孔質セラミックス焼成体の内部に不要物質が入り込みにくくなることがある。
一方、焼成前の混合物の含水率は45質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。混合物の含水率が前記上限値を超えると、成形性が損なわれるおそれがある。
【0047】
焼成工程は、成形体を焼成し(焼成操作)、粘土等を焼成して多孔質セラミックス焼成体を得る工程である。
上述したように、成形体を乾燥せずに焼成することが好ましい。原料を混合した後、乾燥せずに焼成して得た多孔質セラミックス焼成体は、不要物質の除去性能がより高くなる。また、乾燥しない場合には、多孔質セラミックス焼成体の生産性を向上させることもできる。
【0048】
成形体を乾燥する場合には、成形体を自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥してもよい。乾燥により、成形体の含水率を1質量%以下としてもよい。なお、形成体の含水率も有機性廃棄物の含水率と同様の方法で求めることができる。
【0049】
焼成操作は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルン等の連続式焼結炉、シャトルキルン等の回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、焼成操作には、乾燥処理の効率の観点から連続式焼結炉を用いることが好ましい。
焼成温度(最高到達温度)は、混合物の性状等に応じて決定でき、例えば、850℃〜1200℃とされる。上記下限値以上であれば、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。上記上限値超であると、多孔質セラミックス焼成体の組織全体のガラス化が進み、気孔が閉塞するおそれがある。
上記の製造方法によりマイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔を有する多孔質セラミックス焼成体が得られる。
【0050】
焼成工程の後、粒状物としたい場合には、必要に応じて、任意の大きさに多孔質セラミックス焼成体を破砕する破砕工程を有してもよい。破砕工程では、焼成工程で得られた多孔質セラミックス焼成体をハンマーミル、二軸回転式破砕、ジェットミル、ボールミル、エッジランナーミル等で破砕、粉砕し、多孔質セラミックス焼成体の粒状物を得ることができる。得られた粒状物は必要に応じ任意の粒子径になるように篩分けする。
【0051】
多孔質セラミックス焼成体を製造する際に原料として用いられる粘土あるいはスラグには金属酸化物等が含まれ、この金属酸化物が焼成体において酸性成分又は塩基性成分として機能する。この多孔質セラミックス焼成体の酸性成分は塩基性物質を吸着可能であり、多孔質セラミックス焼成体の塩基性成分は酸性物質を吸着可能である。
【0052】
[多孔質セラミックス焼成体への水供給手段]
ガス浄化部が多孔質セラミックス焼成体を具備する場合には、多孔質セラミックス焼成体に水を供給するための水供給手段をさらに具備することが好ましい。多孔質セラミックス焼成体に水を供給すると、ガス中の成分が多孔質セラミックス焼成体の塩基性成分、酸性成分等と接触しやすくなり、ガス中の不要物質を除去しやすくなる。
水供給手段としては、スプレーノズル、ジェットノズル、孔の開いたパイプやプレート状物等が挙げられる。水供給手段は、多孔質セラミックス焼成体の上方に配置することが好ましい。
ガス浄化部が水供給手段を備える場合には、ポンプ等を用いて、多孔質セラミックス焼成体を通過した水を再び水供給手段に供給してもよい。
後述するように、水供給手段で供給される水には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれてもよい。
【0053】
<他の構成>
本発明の乾燥処理装置には、加熱部からガス浄化部にガスを送るため、ガス浄化部内でガスを送るため、ガス浄化部から処理済みのガスを排出するための配管を適宜設置することができる。
該配管の途中又は末端には、ガスを送ったり排出したりする吸引ファンや送風ファン、ガス中のミストを捕捉するデミスター、煤塵を捕捉するフィルターやサイクロン等が設けられてもよい。
加熱部からガス浄化部にガスを送るための配管の途中又は末端には、加熱部から送られるガスを冷却する冷却手段を設けることが好ましい。加熱部から送られるガスを冷却することにより、噴霧手段において、悪臭物質等のうちの水溶性成分の水への溶解度が増し、悪臭物質等の不要物の除去性能がさらに向上する。冷却手段としては、水等の冷却媒を用いた熱交換器が挙げられ、具体的にはチューブ式、プレート式、再生式等が挙げられる。チューブ式では、二重管式、シェルアンドチューブ式、スパイラル式等が挙げられる。
また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、温度計や濃度計等の各種計器が設置されてもよい。
【0054】
(乾燥処理方法)
上記乾燥処理装置を用いた乾燥処理方法は、加熱工程とガス浄化工程とを有する。
【0055】
<加熱工程>
加熱工程は、水分を含む有機性廃棄物を加熱して乾燥させる工程である。
加熱工程における加熱温度は、任意の温度にすることができるが、60℃以上が好ましい。加熱温度が前記60℃未満では、汚泥等の減容化に時間を要し、乾燥処理の効率が低下する。また、加熱温度は、好ましくは100℃以上である。加熱温度が100℃以上であれば、水分を含む有機性廃棄物を容易に乾燥することができる。
【0056】
また、乾燥炉内の加熱温度は400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。さらに好ましくは200℃未満である。加熱温度が前記上限値を超えると、乾燥炉内に酸素が多いと発火するおそれがあり、また、還元状態では有機性廃棄物が炭化するおそれがある。なお、乾燥工程において、乾燥炉内に熱風を吹き込む方法を用いる場合には、吹き込む熱風の吹き込み温度は、上記の400℃以上であってもよいが、上限としては700℃以下が好ましい。
また、蒸気やオイル等を熱媒体として用い、乾燥炉の外周や乾燥炉内に複数配置された加熱管の内部に前記熱媒体を通す場合の熱媒体の温度は100℃以上が好ましくい。上限は特にないが、エネルギー効率や安全性等の観点より200℃以下が好ましい。
また、加熱工程においては、汚泥等の有機性廃棄物は撹拌等がなされ、均一に乾燥が行うものが好ましい。
【0057】
加熱工程によって得られる乾燥物は、減容化されているため運搬が容易で運搬費用が削減され、また、保管スペースも少なく済み保管費用も軽減できる。また、水を含む廃棄物の腐敗も抑制することができ保管も容易である。また、乾燥物は発熱量が大きく燃料としても用いることが可能である。また、有機性廃棄物が有機汚泥の場合には、当該乾燥物を先に説明を行った多孔質セラミックス焼成体の原料の一つである有機汚泥としても用いることができる。
加熱工程によって得られる乾燥物の含水率は1〜30質量%、より好ましくは、3〜15質量%がよい。
上記下限値以下では、乾燥にかかるエネルギーコストや時間がかかり過ぎるおそれがある。また、上記上限値超では、運搬コスト、保管コストの削減効果が小さくなったり、燃料としては水分が多く使用できなかったりするおそれがある。
なお、乾燥物の含水率の算出は、先に説明を行った有機性廃棄物の含水率と同様の方法で測定され、前記(1)式に準じて求められる。具体的には、乾燥物の含水率は、下記(3)式により求められる。
乾燥物の含水率(質量%)=(乾燥物の質量(g)−絶乾状態質量(g))/乾燥物の質量(g)×100 ・・・(3)
【0058】
<ガス浄化工程>
ガス浄化工程は、加熱工程で発生したガスに水を噴霧手段によって噴霧すること、加熱工程で発生したガスを吸着手段の多孔質セラミックス焼成体に通すことの少なくとも一方を行う工程である。
【0059】
[噴霧手段]
加熱工程で発生したガス中に煤塵、悪臭物質及び有害物質として水溶性成分が含まれる場合、ガスに水を噴霧することによって、主に、煤塵を水に捕捉させることができ、また、悪臭物質及び有害物質のうちの水溶性成分を水に溶け込ませることができる。
前記ガスに水を噴射する場合には、前記ガス中に2か所以上から高速に噴霧することが好ましい。このように水を噴霧することにより、水滴が様々な方向に無秩序に且つ高速に移動し、ガス中の煤塵及び水溶性成分と水の接触の機会を増大させることができる。そのため、粉塵及び水溶性成分の除去性能が高くなる。
【0060】
噴霧する水には、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。酸性物質、塩基性物質、界面活性剤を水に添加した場合には、煤塵及び水溶性成分に加えて、水に不溶性、難溶性の、塩基性物質、酸性物質、油系成分、中性成分等を除去することも可能になる。
酸性物質、塩基性物質、界面活性剤としては、多孔質セラミックス焼成体に担持されるものと同様のものを用いることができる。
【0061】
また、本発明の目的を逸脱しない範囲で、噴霧する水には、マスキングのための香料、キレート剤、抗菌剤、触媒等を添加してもよい。特に、還元状態で炭化処理を行うものに比べ、加熱工程で乾燥を行うものは、加熱工程で排出されるガス量も多く、ガスに含まれる成分も多種にわたるため、浄化工程後も悪臭ではないものの、違和感のある臭いがあることがあるため、ガス浄化工程にてマスキングのために香料等の利用はこのような臭いによる嫌悪感を解消し、効果的である。
【0062】
水噴霧の際の温度は、浄化処理されるガスの温度、ガスに含まれる成分の溶解度や蒸気圧等を勘案し任意に設定すればよい。
【0063】
[吸着手段]
加熱工程で発生したガスを多孔質セラミックス焼成体に通した際には、不要物質を多孔質セラミックス焼成体の表面に物理吸着させて除去する。また、多孔質セラミックス焼成体中の酸性成分により、主に、ガス中の塩基性成分をイオン的に吸着して除去し、多孔質セラミックス焼成体中の塩基性成分により、主に、ガス中の酸性成分をイオン的に吸着して除去する。
【0064】
ガスを多孔質セラミックス焼成体で浄化する場合には、不要物質の除去率が高くなることから、多孔質セラミックス焼成体に水を供給することが好ましい。
また、多孔質セラミックス焼成体に供給する水の中に、酸性物質、塩基性物質、界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましい。酸性物質、塩基性物質、界面活性剤としては、多孔質セラミックス焼成体に担持されるものと同様のものを用いることができる。
多孔質セラミックス焼成体に供給する水の中に、前記酸性物質等を含ませた場合には、前記酸性物質等を多孔質セラミックス焼成体に担持させなくても、不要物質をより除去できる。大きな表面積を有する多孔質セラミックス焼成体中に、水と共に前記酸性物質等を通過させれば、ガス中の各成分と酸性物質等との接触機会が増え、また、新しい酸性成分等が多孔質セラミックス焼成体中に供給されるため、不要物質の除去性能がより高くなるものと考えられる。
【0065】
多孔質セラミックス焼成体に供給する水には、酸性物質等の他、マスキングのための香料、キレート剤、抗菌剤、触媒等を添加してもよい。特に、還元状態で炭化処理を行うものに比べ、加熱工程で乾燥を行うものは、加熱工程で排出されるガス量も多く、ガスに含まれる成分も多種にわたるため、浄化工程後も悪臭ではないものの、違和感のある臭いがあることがあるため、ガス浄化工程にてマスキングのために香料等の利用はこのような臭いによる嫌悪感を解消し、効果的である。
【0066】
吸着手段を2つ具備する場合、一方の吸着手段では、酸性物質を含む水を多孔質セラミックス焼成体に供給して主にガス中の塩基性物質を除去し、他方の吸着手段では、塩基性物質を含む水を多孔質セラミックス焼成体に供給して主にガス中の酸性物質を除去してもよい。
【0067】
(作用効果)
本発明の乾燥処理装置によれば、加熱部によって水分を含む有機性廃棄物を加熱した際に発生したガス中の不要物質を、噴霧手段及び多孔質セラミックス焼成体等による吸着手段のうち、少なくとも一方によって除去できる。これら手段により、不要物質を低コストで充分に除去できる。従って、中小規模の工場、廃棄物処理場、汚水処理場、養豚・養鶏場等であっても導入が容易であり、地域の臭気環境を向上させることができる。
本発明の乾燥処理装置によって水分を含む有機性廃棄物を乾燥して得た乾燥物は、減容化されているため、輸送や保管に係るコストを軽減できる。また、該乾燥物は、燃料、脱臭剤、土壌改良材等の有益物として利用できる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明について実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(製造例1)多孔質セラミックス焼成体の製造
スラグ50質量部、有機汚泥25質量部、粘土25質量部(合計100質量部)に対し、瓦20質量部を添加し、これらを、ミックスマラー(新東工業株式会社製)を用いて混合し、可塑状態の混合物を得た(混合工程)。
次いで、真空土練成形機で上記混合物を直径1.5cmの円柱状に押し出し、次いで、長さ3cmに切断して円柱状の成形体(含水率15質量%)を得た。その成形体を、乾燥工程を経ずに引き続き、連続式焼結炉を用いて、焼成温度1050℃、焼成温度での滞留時間7分間の焼成条件にて焼成した(焼成工程)。連続式焼結炉としては、ローラーハースキルン(焼結炉の有効長:全長15m、焼結炉を各1.5mのゾーン1〜10に分割)を用いた。焼成によって得られた多孔質セラミックス焼成体は、亀裂が入った、長径3cm〜10cm程度の粒状物と塊状物が混在したものであった。
得られた多孔質セラミックス焼成体の粒状物及び塊状物をハンマーミルで粉砕した。次に、篩を用いて、5mm超10mm以下のものに篩分けして、多孔質セラミックス焼成体の粒状物を得た。得られた多孔質セラミックス焼成体の粒状物は、マイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔が確認された。特に孔径が1μm〜30μm及び200nm〜500nmのものが多く観察された。また、多孔質セラミックス焼成体の見かけ密度は0.7g/ml、飽和含水率は43質量%であり、気孔同士の連通も確認された。
【0070】
<使用原料>
なお、上記製造例で用いた多孔質セラミックス焼成体の原料は、具体的には次のものである。
【0071】
[スラグ]
発泡剤として、鋳鉄スラグを用いた。この鋳鉄スラグは、SiO
2、Al
2O
3、CaO、Fe
2O
3、FeO、MgO、MnO、K
2O、Na
2Oを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグである。
【0072】
[有機汚泥]
有機汚泥としては、染色工場(小松精練株式会社)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%、含水率は85質量%であった。
【0073】
[粘土]
粘土としては、蛙目粘土(岐阜県)を用いた。
【0074】
[瓦]
住宅用の瓦として使用された後、廃棄されたものを粉砕した粒子径0.1mm〜1.2mmのものを用いた。
【0075】
<物性の測定・確認>
多孔質セラミックス焼成体の物性値は、以下の方法により測定した。
【0076】
[孔径の確認]
多孔質セラミックス焼成体のマイクロメートルオーダーの気孔及びナノメートルオーダーの気孔の確認は、電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、日立サイエンスシステムズ製)を用い、30倍〜10000倍で観察した。
【0077】
[見かけ密度]
多孔質セラミックス焼成体が粒状物である場合は、「土壌標準分析・測定法」(博友社)における「三相分布・容積重(実容積法)」により測定される乾土質量(g)から求められる容積重(仮比重、g/ml)を、見かけ密度とした。
また、多孔質セラミックス焼成体の粒状物が測定容器と比べ大きい場合には、サンプルを直方体にカットし、サンプルの外形寸法をノギスにより測定し体積を求めた。カットしたサンプルを絶乾状態にし、電子天秤にて質量を測定(絶乾状態質量)し、下記(4)式により見かけ密度を算出した。
見かけ密度(g/cm
3)=絶乾状態質量(g)/体積(cm
3) ・・・(4)
【0078】
[飽和含水率]
多孔質セラミックス焼成体を、水に60分間浸漬し、水中から取り出し、直ちに質量を測定(飽和含水状態質量)し、下記(5)式により飽和含水率を求めた。飽和含水率の測定を試料数(N)=10について行い、平均値を求めた。
飽和含水率(質量%)={(飽和含水状態質量−絶乾状態質量)/絶乾状態質量}×100 ・・・(5)
【0079】
[気孔同士の連通の有無の確認]
多孔質セラミックス焼成体における気孔同士の連通の有無の確認は、得られた多孔質セラミックス焼成体を水に浸漬し、充分に吸水させた後に切断又は潰し、その断面を観察することで確認した。多孔質セラミックス焼成体の内部に、満遍なく水分が分布・保水されている場合、気孔同士が連通していると判断した。多孔質セラミックス焼成体の内部に水分が行き渡っていない場合には、個々の気孔又は孔隙が独立しており、気孔同士が連通していない又は連通が不充分であると判断した。
【0080】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1における乾燥処理装置1は、バッチ式乾燥機を用いた加熱部60と、ガス浄化部として第1ガス浄化部10及び第2ガス浄化部20を具備するものとした。
【0081】
第1ガス浄化部10は、槽11の側面11a及び上面11bの各々にスプレーノズル12(噴霧手段)が取り付けられたものとした。また、第1ガス浄化部10においては、槽11の底部に溜まった水を循環して、再度、スプレーノズル12に供給する循環ポンプ13を設けた。また、槽11の上部にガスを導入する配管40を接続し、槽11の下部に溜まった水を排出する排出管15を取り付けた。
【0082】
第2ガス浄化部20は、1層の多孔質セラミックス焼成体層21a(吸着手段)を備える槽22aと、5層の多孔質セラミックス焼成体層21b(吸着手段)を内部に備える槽22bと、5層の多孔質セラミックス焼成体層21c(吸着手段)を内部に備える槽22cとを備えるものとした。槽22aは、槽11の上部に連結した。
多孔質セラミックス焼成体層21a,21b,21cは、各々、製造例1で得た多孔質セラミックス焼成体の粒状物をメッシュ状容器に充填することにより構成され、ガスの流れに対して垂直になるように配置した。
また、槽22aの内部には、多孔質セラミックス焼成体層21aの上面に水を噴霧するスプレーノズル23aが設けられ、スプレーノズル23aの上方には、ミストを捕捉して除去する不織布製のデミスター24aが設けられた。
槽22bの内部には、最上層の多孔質セラミックス焼成体層21bの上面に水を噴霧するスプレーノズル23bが設けられ、スプレーノズル23bの上方には、ミストを捕捉して除去する不織布製のデミスター24bが設けられた。槽22bの下部には、溜まった水を排出する排出管25bを取り付けた。
槽22cの内部には、最上層の多孔質セラミックス焼成体層21cの上面に水を噴霧するスプレーノズル23cが設けられ、スプレーノズル23cの上方には、ミストを捕捉して除去する不織布製のデミスター24cが設けられた。槽22cの下部には、溜まった水を排出する排出管25cを取り付けた。
【0083】
また、乾燥処理装置1は、槽11の底部に溜まった水をスプレーノズル23aに供給するための配管31a及びポンプ32aと、槽22bの底部に溜まった水をスプレーノズル23bに供給するための配管31b及びポンプ32bと、槽22cの底部に溜まった水をスプレーノズル23cに供給するための配管31c及びポンプ32cを具備するものとした。
また、薬液タンク33aと薬液タンク33aの内部に入れられた薬液Aを配管31aに供給するための配管34a及びポンプ35aと、薬液タンク33bと薬液タンク33bの内部に入れられた薬液Bを配管31bに供給するための配管34b及びポンプ35bと、薬液タンク33cと薬液タンク33cの内部に入れられた薬液Cを配管31cに供給するための配管34c及びポンプ35cとを具備するものとした。今回は薬液タンク33a、33bには、それぞれ薬液A、Bを入れなかった。
また、槽22aの上部と槽22bの下部とを配管41で接続し、槽22bの上部と槽22cの下部とを配管42で接続し、槽22cの上部に配管43を取り付けた。配管41には送風ファン44aを取り付け、配管42には送風ファン44bを取り付け、配管43には排気ファン44cを取り付けた。
また、加熱部60の上部と槽11の上部とを配管40で接続した。配管40には送風ファン44dを取り付けた。
【0084】
本例では、多孔質セラミックス焼成体の原料として用いた有機汚泥を有機性廃棄物として用い、加熱部60で蒸気を熱媒体として用いて、間接的に加熱(乾燥炉内温度110℃)した。加熱部で乾燥された有機汚泥の乾燥物の含水率は5質量%となり、減容された。加熱部60から排出されたガスを、第1ガス浄化部10と第2ガス浄化部20を用いて浄化した。
具体的には、加熱部60から排出されたガスを配管40に通して、第1ガス浄化部10の槽11にガス供給速度3m
3/分で供給し、槽11の内部のガスに、水供給管16から供給した水を、スプレーノズル12を用いて充円形状のスプレーパターンで噴霧した。これにより、様々な方向に無秩序に且つ高速に乱れ飛ぶ水滴が存在する空間中にガスを通すことができる。槽11の底部に溜まった水の一部は、循環ポンプ13を用い、配管14を通じて、再度、スプレーノズル12から槽11の内部に噴霧し、残りは排出管15から廃棄した。これにより、第1ガス浄化部10において、主に、ガスに含まれる煤塵及び水溶性成分を除去した。
なお、薬液タンク17の内部に入れられた薬液Dを、配管18及びポンプ19により、配管14に供給することもできるが、今回は薬液タンク17には、薬液Dを入れなかった。
【0085】
次いで、槽11の上部から排出させたガスを、槽22aに導入し、多孔質セラミックス焼成体層21aに通した。その際、配管31a、ポンプ32a及びスプレーノズル23aを用いて、多孔質セラミックス焼成体層21aに、槽11の底部に溜まった水の一部と、水供給管36aから供給した水を噴霧した。
槽22aでは、不要物質を多孔質セラミックス焼成体の表面に物理吸着させて除去した。また、焼成体多孔質セラミックス焼成体に含まれる酸性成分により主にガス中の塩基性成分を吸着除去し、多孔質セラミックス焼成体に含まれる塩基性成分により主にガス中の酸性成分を吸着除去した。
多孔質セラミックス焼成体層21aを通過したガスをデミスター24aに通してミストを捕捉した後、送風ファン44aを用い、配管41に通して槽22bの下部に導入した。
【0086】
槽22bに導入したガスを、5層の多孔質セラミックス焼成体層21bに通した。その際、配管31b,ポンプ32b及びスプレーノズル23bを用いて、多孔質セラミックス焼成体層21bに、槽22bの底部に溜まった水と、水供給管36bから供給した水を噴霧した。
なお、噴霧された水の一部は、5層の多孔質セラミックス焼成体層21bを通過し、槽22bの底部に落下して溜まり、溜まった水の一部は排出管25bを用いて排出される。
多孔質セラミックス焼成体層21bを通過したガスをデミスター24bに通してミストを捕捉した後、送風ファン44bを用い、配管42に通して槽22cの下部に導入した。
【0087】
槽22cに導入したガスを、5層の多孔質セラミックス焼成体層21cに通した。その際、配管31c、配管34c、ポンプ32c、ポンプ35c及びスプレーノズル23cを用いて、多孔質セラミックス焼成体層21cに、槽22cの底部に溜まった水(薬液Cを多孔質セラミックス焼成体層に噴霧し、落下し溜まったもの)と、薬液タンク33cに入れられた薬液Cを噴霧した。なお、薬液タンク33cに入れられた薬液Cは配管34c及びポンプ35cを用いて配管31cに供給した。槽22cは、塩基性物質の除去を主な役割とするものである。薬液Cとしては、酸性物質である塩化亜鉛と塩化アンモニウム(塩化亜鉛:塩化アンモニウム30:1(質量比))を用い、薬液C中の酸性物質(塩化亜鉛と塩化アンモニウムの合計量)の濃度が2質量%となるように酸性物質を水に添加した。
なお、噴霧された水及び薬液Cの一部は、5層の多孔質セラミックス焼成体層21cを通過し、槽22cの底部に落下して溜まり、溜まった水及び薬液Cの一部は排出管25cを用いて排出される。そして、槽22cの底に溜まった水と薬液タンク33cから供給される薬剤Bがスプレーノズル23cから多孔質セラミックス焼成体槽21cに噴霧され、供給される。
多孔質セラミックス焼成体層21cを通過したガスをデミスター24cに通してミストを捕捉した後、排気ファン44cを用い、配管43に通して槽22cの外部に放出した。
【0088】
実施例1におけるガス中に含まれる悪臭物質等の脱臭性能について、配管40、配管43からガスをサンプリングし、アンモニア、酢酸、メチルメルカプタン、硫化水素、アミン類、アセトアルデヒドを、それぞれ気体検知管(株式会社ガステック製、アンモニア:No.3L及びNo.3M、酢酸:No.81、メチルメルカプタン:No.70L、硫化水素:No.4LB、アミン類:No.180L及び180、アセトアルデヒド:92及び92L。各吸引回数1回。100ml)を用いて濃度(ppm)を測定することにより評価を行った。
また、評価者がそれぞれのサンプルの臭いを嗅いで行う、官能試験も実施した。
なお、加熱部で乾燥された有機汚泥の含水率は5質量%であり、減容された。
【0089】
(実施例2)
有機性廃棄物として、実施例1で用いた有機汚泥100質量部に消臭剤(塩化亜鉛:塩化アンモニウム=30:1(質量比))を0.3質量部追加した以外は実施例1と同様にして廃棄物を処理した。
加熱部で乾燥された有機汚泥の含水率は5質量%であり、減容された。
また、ガス中に含まれる悪臭物質等の脱臭性能について、実施例1と同様に評価を行った。
【0090】
上記実施例1,2の評価結果を、表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
(※)実施例1のアミン類の濃度については、1/2(50ml)吸引で測定した場合もスケールオーバーしたが、おおよそ240ppmと推定された。
【0093】
表1に示すように、気体検知管による評価では、乾燥処理装置1を用いることにより、実施例1、実施例2ともに、加熱部から排出されたガスに含まれる悪臭物質等が充分に除去された。
一方、官能試験では、臭いは弱まったものの、依然、残っていた。そこで、実施例1、実施例2において、薬液タンク33cに香料を2質量%添加したところ、官能試験で感じられる臭いが全く感じられなくなり、香料の良い香りが感じられた。特に、有機汚泥に消臭剤を添加した実施例2では、顕著に高い消臭効果が確認された。
【0094】
(実施例3)
配管40における送風ファン44dの上流側に、加熱部60から送られるガスの冷却手段として熱交換器を設置する以外は、実施例1と同様にして廃棄物を処理した。熱交換器は、冷却媒に水を用いたシェルアンドチューブ式のものを用いた。
熱交換器設置前後における悪臭物質等の脱臭性能の違いを評価するために、槽11内のガス中に含まれるアンモニア、硫化水素、アミン類、アセトアルデヒドについて、実施例1と同様に気体検知管を用いて濃度(ppm)を測定した。
上記実施例3の評価結果を、表2に示す。なお、表2における配管40の濃度は、表1の実施例1の配管40のデータと同じものである。
【0095】
【表2】
【0096】
その結果、熱交換器を設置することにより、槽11における各悪臭物質の除去性能がさらに向上することが確認された。