(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のサセプタ、炭化珪素成膜装置、及び炭化珪素除去装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0031】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るサセプタのクリーニング方法で使用する炭化珪素サセプタの平面図である。
図1に示すCは、サセプタ本体11の中心(以下、「中心C」という)を示している。
図2は、
図1に示す炭化珪素サセプタのうち、領域Aで囲まれた部分を拡大した図であり、(a)は領域Aで囲まれた部分の斜視図(炭化珪素サセプタの外周部のみ断面図)であり、(b)は、(a)に示す炭化珪素サセプタのD−D線方向の断面図である。
図3は、炭化珪素基板が載置された炭化珪素サセプタを拡大した断面図である。
図3に示すSは、炭化珪素基板20の面方向(言い換えれば、炭化珪素基板20の表面方向)を示している(以下、「面方向S」という)。また、
図3では、説明の便宜上、炭化珪素基板20の表面20aに形成される炭化珪素膜21を図示する。
図1、
図2(a),(b)、及び
図3において、同一構成部分には同一符号を付す。
【0032】
始めに、
図1、
図2(a),(b)、及び
図3を参照して、本実施の形態のサセプタのクリーニング方法で使用する炭化珪素サセプタ10について説明する。
炭化珪素サセプタ10は、複数の炭化珪素基板に対して同時に炭化珪素膜を成膜するバッチ式の炭化珪素成膜装置の成膜チャンバ内で使用されるサセプタであって、サセプタ本体11と、複数の収容部12(
図1の場合、8つ)と、を有する。
【0033】
サセプタ本体11は、円盤形状とされた部材であり、その外形が円形とされている。 サセプタ本体11は、平坦な面とされた上面11a及び下面11bを有する。サセプタ本体11は、バルクの炭化珪素(具体的には、例えば、3C−SiC)のみで構成されている。言い換えれば、炭化珪素サセプタ10は、バルクの炭化珪素のみで構成されている。
このため、サセプタ本体11の表面(具体的には、サセプタ本体11の上面11a、下面11b、及び側面と、収容部12を構成するサセプタ本体11の面と、を含む面)の平均表面粗さRaは、例えば、1μm以下にすることができる。
【0034】
一般的にバルクの炭化珪素の表面は、炭化珪素コート成膜装置を用いて成膜される炭化珪素コート膜の表面(例えば、平均表面粗さRaが10μm)と比較して、非常に滑らかな面とされている。よって、異方性ドライエッチングを用いて、バルクの炭化珪素と、炭化珪素膜と、をエッチングすると、表面が荒れている方がエッチングされやすいため、滑らかな表面とされたバルクの炭化珪素がエッチングされる速度は、炭化珪素コート膜がエッチングされる速度の1/10程度となる。
つまり、炭化珪素サセプタ10の材料として、バルクの炭化珪素を用いることで、炭化珪素コート膜よりもエッチングされにくくすることができる。
【0035】
ここで、バルクの炭化珪素の表面を滑らかにする方法について説明する。バルクの炭化珪素の表面を滑らかにする方法としては、例えば、鏡面研磨加工を用いることができる。
上記鏡面研磨加工を用いることで、バルクの炭化珪素の表面の平均表面粗さRaを0.02μm程度にすることができる。
【0036】
なお、上記鏡面研磨加工を行う前のバルクの炭化珪素の標準的な平均表面粗さRaは、2μm程度であるが、バルクの炭化珪素は、上記鏡面研磨加工処理を行うことが可能である。このため、上記のように、鏡面研磨加工処理後のバルクの炭化珪素の表面の平均表面粗さRaを0.02μm程度にすることができる。
【0037】
一方、炭素よりなる部材の表面を覆うように成膜された炭化珪素コート膜は、強固に炭素に密着しているが、上記鏡面研磨加工を行うと、炭化珪素コート膜が破損する(具体的には、炭化珪素コート膜が剥がれたり、割れたりする)ため、鏡面研磨加工を行うことができない。
【0038】
鏡面研磨加工に替えて、サンドペーパーを用いて、炭化珪素コート膜の表面を研磨することは可能であるが、成膜後の炭化珪素コート膜の平均表面粗さRaが10μmの場合、サンドペーパーを用いて、成膜後の炭化珪素コート膜研磨を行ったとしても、平均表面粗さRaを1μm程度に向上させることが精一杯である。
【0039】
炭化珪素サセプタ10の平均表面粗さRaを、例えば、0.5μm以下にすることで、バルクの炭化珪素がエッチングされる速度は、炭化珪素膜がエッチングされる速度の1/30程度にすることができる。
【0040】
収容部12は、サセプタ本体11の上面11a側に複数(
図1の場合、8つ)設けられている。複数の収容部12は、サセプタ本体11の中心Cを中心とする円周B上に、複数の収容部12が位置するように等間隔で配置されている。収容部12は、第1の凹部12−1と、第2凹部12−2と、を有する。
【0041】
第1の凹部12−1は、その上端がサセプタ本体11の上面11aから露出されるように、サセプタ本体11の上面11a側に設けられている。第1の凹部12−1は、第2の凹部12−2の上方に配置されており、第2の凹部12−2と一体とされている。第1の凹部12−1の形状は、円盤形状とされている。
第1の凹部12−1は、表面20aに炭化珪素膜21(例えば、4H−SiC膜)が形成される炭化珪素基板20が収容される部分である。
【0042】
第1の凹部12−1は、第2の凹部12−2の外側に位置する部分に、炭化珪素基板20の裏面20bのうち、外周部に配置された面と接触するリング状の底面12−1aを有する。炭化珪素基板20は、その裏面20bの外周部が第1の凹部12−1の底面12−1aと接触することで、支持されている。
【0043】
第1の凹部12−1の開口径は、炭化珪素基板20の外径(口径)よりも僅かに大きい大きさとされている。これにより、第1の凹部12−1は、第1の凹部12−1の内壁と炭化珪素基板20の外周縁20Aとの間にリング状の隙間Eが形成された状態で、炭化珪素基板20を支持している。隙間Eの大きさは、例えば、1〜2mmとすることができる。
炭化珪素基板20の外径が4インチ(102mm)の場合、第1の凹部12−1の開口径は、例えば、104mmとすることができる。
【0044】
サセプタ本体11の上面11aを基準としたときの第1の凹部12−1の深さは、例えば、炭化珪素基板20の厚さの値と同じにするとよい。
つまり、収容部12に収容された炭化珪素基板20の表面20aがサセプタ本体11の上面11aに対して面一にするとよい。
【0045】
このように、第1の凹部12−1(収容部12)に収容された炭化珪素基板20の表面20aをサセプタ本体11の平坦な上面11aに対して面一とすることにより、横方向から原料ガスを供給する気相成長装置(炭化珪素成膜装置)を用いた際、原料ガスが凸部にぶつかって原料ガスの流れが変化することを抑制可能となるので、複数の炭化珪素基板20の表面20aに良好な炭化珪素膜を形成することができる。
【0046】
上記構成とされた第1の凹部12−1は、炭化珪素基板20を支持すると共に、面方向Sにおける炭化珪素基板20の位置を規制している。
【0047】
第2の凹部12−2は、第1の凹部12−1の下方に位置するサセプタ本体11に設けられている。第2の凹部12−2の形状は、第1の凹部12−1よりも開口径の小さい円盤形状とされている。第2の凹部12−2は、第1の凹部12−1の上端と一体とされている。第2の凹部12−2は、第1の凹部12−1の底面12−1aに載置された炭化珪素基板20の裏面20bの大部分を露出している。
【0048】
このように、第1の凹部12−1の下方に炭化珪素基板20の裏面20bの大部分を露出する第2の凹部12−2を設けると共に、第1の凹部12−1のリング形状とされた底面12−1aにより炭化珪素基板20の裏面20bの外周部を支持することで、加熱により炭化珪素基板20に反りが発生した場合でも、サセプタ本体11からの輻射熱により、炭化珪素基板20全体を均一に加熱することができる。
【0049】
また、収容部12を第1及び第2の凹部12−1,12−2で構成することで、第2の凹部12−2が無い場合と比較して、第1の凹部12−1のリング形状とされた底面12−1aと炭化珪素基板20の裏面20bとの接触面積がかなり小さくなる。
このため、炭化珪素サセプタ10を構成する炭化珪素に含まれる不純物(例えば、重金属)により、炭化珪素基板20の裏面20bが汚染されることを抑制できる。
【0050】
図4は、
図1、
図2(a),(b)、及び
図3に示す炭化珪素サセプタを使用可能なバッチ式の炭化珪素成膜装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図4において、
図1、
図2(a),(b)、及び
図3に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0051】
図4を参照するに、バッチ式の炭化珪素成膜装置30は、成膜チャンバ31と、ステージ33と、第1の加熱部35と、第1の断熱部材37と、排気口38と、回転軸39と、回転駆動部41と、サセプタ受け部材42と、天井板部材43と、第2の加熱部44と、第2の断熱部材45と、第3の断熱部材47と、原料ガス導出部49と、を有する。
【0052】
成膜チャンバ31は、ステージ33、複数の炭化珪素基板20が載置された炭化珪素サセプタ10、及び原料ガス導出部49の端部を収容している。成膜チャンバ31は、炭化珪素サセプタ10と天井板部材43との間に反応空間31Aを有する。ステージ33は、成膜チャンバ31の底に配置されている。
第1の加熱部35は、ステージ33の下部に内設されている。第1の加熱部35は、第1の断熱部材37、サセプタ受け部材42、及び炭化珪素サセプタ10を介して、炭化珪素サセプタ10の輻射熱及び熱伝導により、複数の炭化珪素基板20を所定の温度に加熱する。
【0053】
第1の断熱部材37は、ステージ33の上部に内設されている。第1の断熱部材37は、加熱された炭化珪素サセプタ10の温度が低下することを抑制するための部材である。第1の断熱部材37の上面は、ステージ33の上面から露出されている。
排気口38は、ステージ33の外周側面と成膜チャンバ31の内壁との間に設けられている。排気口38は、反応空間31A内に存在する不要なガスを成膜チャンバ31の外に排気する。
【0054】
回転軸39は、ステージ33の下方に配置されている。回転軸39は、その上端がステージ33の中心部と接続されており、下端が回転駆動部41と接続されている。
回転駆動部41は、回転軸39を所定の方向に回転させることで、サセプタ受け部材42を介して、ステージ33上に固定された炭化珪素サセプタ10をステージ33とともに回転させる。
サセプタ受け部材42は、ステージ33上に固定された部材である。サセプタ受け部材42は、着脱可能な状態で炭化珪素サセプタ10を固定するための部材である。
【0055】
天井板部材43は、成膜チャンバ31の上端を塞ぐように配置されている。第2の加熱部44は、天井板部材43の上部に内設されている。第2の加熱部44は、第2及び第3の断熱部材45,47を介して、反応空間31A及び複数の炭化珪素基板20を加熱する。
第2の断熱部材45は、天井板部材43の下部に内設されており、その下面が天井板部材43から露出されている。第2の断熱部材45は、第2の加熱部44により、加熱された天井板部材43の下部の温度が低下することを抑制する。
【0056】
第3の断熱部材47は、天井板部材43の下面、及び第2の加熱部44の下面を覆うように配置されている。第3の断熱部材47の下面は、反応空間31Aにより露出されている。第3の断熱部材47は、反応空間31Aの温度が所定の温度から低下することを抑制する。
原料ガス導出部49は、天井板部材43の中央部を貫通し、その端部が反応空間31Aに配置されている。原料ガス導出部49は、原料ガス供給源(図示せず)と接続されている。原料ガス導出部49は、原料ガス供給源(図示せず)から供給された原料ガスを反応空間31Aに供給する。
【0057】
これにより、複数の炭化珪素基板20の表面20aには、炭化珪素膜21(例えば、4H−SiC膜)が成膜される。このとき、サセプタ本体11の上面11a、及び隙間Eに露出された第1の凹部12−1の底面12−1aに、炭化珪素(例えば、3C−SiC)よりなる堆積物22(
図4参照)が堆積する。堆積物22は、同一の炭化珪素サセプタ10を用いて、炭化珪素膜21の成膜処理を繰り返し行うことで、その厚さが増加する。
【0058】
上記説明では、バッチ式の炭化珪素サセプタ10、及びバッチ式の炭化珪素サセプタ10が使用可能な炭化珪素成膜装置30について説明したが、本実施の形態のサセプタのクリーニング方法は、
図5(a),(b)に示す枚葉式の炭化珪素サセプタ55にも適用可能である。
【0059】
図5は、本実施の形態のサセプタのクリーニング方法が適用可能な他の炭化珪素サセプタを示す図であり、(a)は、炭化珪素サセプタの斜視図であり、(b)は、(a)に示す炭化珪素サセプタのF−F線方向の断面図である。
図5(a),(b)において、
図1及び
図2に示す炭化珪素サセプタ10と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0060】
ここで、
図5(a),(b)を参照して、炭化珪素サセプタ55の構成について説明する。
炭化珪素サセプタ55は、バルクの炭化珪素よりなるサセプタ本体56と、1つの収容部12と、を有する。サセプタ本体56は、平坦な上面56a及び下面56bを有しており、外形が異なること以外は、
図1及び
図2に示すサセプタ本体11と同様な構成とされている。
【0061】
図6は、
図5(a),(b)に示す炭化珪素サセプタを使用可能なバッチ式の炭化珪素成膜装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図6において、
図5(a),(b)に示す炭化珪素サセプタ55と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0062】
図6を参照するに、枚葉式の炭化珪素成膜装置60は、成膜チャンバ61と、第1の断熱部材68と、第2の断熱部材69と、サセプタ受け部材71と、第3の断熱部材74と、第1の加熱部76と、第2の加熱部78と、を有する。
【0063】
成膜チャンバ61は、第1の断熱部材68、第2の断熱部材69、サセプタ受け部材71、及び第3の断熱部材74を収容している。成膜チャンバ61は、炭化珪素サセプタ55と第3の断熱部材74との間に反応空間67を有する。
また、成膜チャンバ61は、一方の側壁に配置され、原料ガスを反応空間67内に導くための原料ガス導入口81と、他方の側壁に配置され、反応空間67内の不要なガスを排出するガス排出口82と、を有する。
【0064】
第1の断熱部材68は、成膜チャンバ61の底に内設されている。第1の断熱部材68は、加熱された炭化珪素サセプタ55の温度が低下することを抑制するための部材である。
第2の断熱部材69は、成膜チャンバ61の天井に設けられている。第2の断熱部材69は、第2の加熱部44により、加熱された第3の断熱部材74の温度が低下することを抑制する。
【0065】
サセプタ受け部材71は、第1の断熱部材68上に固定されている。サセプタ受け部材71の上面には、1枚の炭化珪素基板20が載置された炭化珪素サセプタ55が載置されている。炭化珪素サセプタ55は、サセプタ受け部材71に対して着脱可能な状態で固定されている。
第3の断熱部材74は、第2の断熱部材69の下面に設けられている。第3の断熱部材74の下面は、反応空間67により露出されている。第3の断熱部材74は、反応空間67の温度が所定の温度から低下することを抑制するための部材である。
【0066】
第1の加熱部76は、成膜チャンバ61の下方に配置されている。第1の加熱部76は、第1の断熱部材68、サセプタ受け部材71、及び炭化珪素サセプタ55を介して、炭化珪素基板20を所定の温度に加熱する。
第2の加熱部78は、成膜チャンバ61の上方に配置されている。第2の加熱部78は、第2及び第3の断熱部材69,74を介して、反応空間67を所定の温度となるように加熱する。
【0067】
図7は、本実施の形態に係るサセプタのクリーニング方法を行う際に使用する炭化珪素除去装置の概略構成を示す図である。
図8は、
図7に示すチャンバ内の構成を説明するためのチャンバの断面図である。
【0068】
次に、
図7及び
図8を参照して、炭化珪素除去装置90について説明する。
炭化珪素除去装置90は、チャンバ91と、ステージ93と、加熱部95と、サセプタ受け部材97と、フッ素含有ガス供給部101と、酸素含有ガス供給部102と、プラズマ発生部104と、真空ポンプ106と、ガス管107と、排ガス分析部109と、制御部111と、を有する。
本実施の形態のサセプタのクリーニング方法が適用可能な他の炭化珪素サセプタを示す図であり、(a)は、炭化珪素サセプタの斜視図であり、(b)は、(a)に示す炭化珪素サセプタのF−F線方向の断面図である。炭化珪素除去装置90は、炭化珪素を成膜する炭化珪素成膜装置30,60とは、別の装置である。
【0069】
チャンバ91は、その底部に、ステージ93、加熱部95、及びサセプタ受け部材97を収容している。チャンバ91は、サセプタ受け部材97とチャンバ91の天井との間に、反応空間91Aを有する。
このチャンバ91内に、後述する
図10(e)に示す構造体(具体的には、堆積物22が付着し、かつサセプタ保護基板121が載置された炭化珪素サセプタ10)が収容され、堆積物22と接触するように、プラズマ化されたフッ素含有ガス及び酸素含有ガスが供給されることで、炭化珪素サセプタ10に堆積した堆積物22が除去される。
このため、チャンバ91は、フッ素含有ガスに対して十分な耐性のある材料により構成するとよい。
【0070】
ステージ93は、チャンバ91の底に配置されている。加熱部95は、ステージ93に上部側に配置されており、その上面がステージ93の上面から露出されている。
ステージ93は、回転可能な構成としてもよい。このように、ステージ93を回転可能な構成とすることにより、より均一な堆積物22の除去処理を行うことができる。
【0071】
加熱部95は、サセプタ受け部材97、及びサセプタ受け部材97上に固定される炭化珪素サセプタ10を介して、複数の炭化珪素基板20を所定の温度に加熱する。加熱部95としては、例えば、ヒーターを用いることができる。
【0072】
ところで、炭化珪素は化学的に非常に安定しているため、単にプラズマ化したフッ素含有ガス及び酸素含有ガスと接触しただけでは十分な除去能力がない。
そこで、堆積物22が付着した炭化珪素サセプタ10を加熱する加熱部95を設けることで、プラズマ化したフッ素含有ガス及び酸素含有ガスと炭化珪素よりなる堆積物22との反応を促進させることができる。
【0073】
炭化珪素サセプタ10の加熱温度は、例えば、300℃以上が好ましい。あまり高い温度(例えば、400℃よりも高い温度)で炭化珪素サセプタ10を加熱すると、炭化珪素サセプタ10との反応が激しくなるため、好ましくない。
また、あまり高い温度で炭化珪素サセプタ10を加熱すると、チャンバ91とフッ素含有ガス及び酸素含有ガス(クリーニングガス)とが反応するため好ましくない。
【0074】
サセプタ受け部材97は、ステージ93の上面、及び加熱部95の上面に固定されている。サセプタ受け部材97は、炭化珪素サセプタ10が着脱可能な状態で固定される部材である。
【0075】
フッ素含有ガス供給部101は、プラズマ発生部104と接続されている。フッ素含有ガス供給部101は、プラズマ発生部104にフッ素含有ガスを供給する。フッ素含有ガスは、炭化珪素に含まれる珪素(珪素成分)を除去する。
フッ素含有ガスとしては、例えば、フッ素(F
2−GWP:0)、フッ化水素(HF−GWP:0)、ハイドロフルオロカーボン(CxHyFz(x,y,zは1以上の整数)、CH
3F−GWP−97)のうち、少なくとも1つを含むものを用いることができる。
【0076】
なお、フッ素含有ガスとしては、例えば、フルオロカーボン(CF
4−GWP:7,390,C
2F
6−GWP:12,200)や六フッ化硫黄(SF
6−GWP:22,800)、三フッ化窒素(NF
3−GWP:17,200)、三フッ化塩素(ClF
3−GWP:0)、二フッ化カルボニル(COF
2−GWP:1)等を使用することも可能である。
しかしながら、これらのガスは温暖化係数(GWP)の大きなガスであるため、温暖化の観点からあまり好ましくない。GWP値の小さいF
2やHF等の低環境負荷ガスが好ましい。
【0077】
酸素含有ガス供給部102は、プラズマ発生部104と接続されている。酸素含有ガス供給部102は、プラズマ発生部104に酸素含有ガスを供給する。
酸素含有ガス供給部102は、酸素含有ガスのみ、或いは、フッ素含有ガス供給部101から供給されたフッ素含有ガスと混合された酸素含有ガスを供給可能な状態で、プラズマ発生部104と接続されている。酸素含有ガスは、炭化珪素に含まれる炭素(炭素成分)を除去するガスである。
【0078】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O
2)、オゾン(O
3)、窒素酸化物(NxOy(x,yは1以上の整数))、水蒸気(H
2O)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)のうち、少なくとも1つのガスを含むガスを用いることができる。
【0079】
プラズマ発生部104は、フッ素含有ガス供給部101、及び酸素含有ガス供給部102と接続されている。プラズマ発生部104は、上記フッ素含有ガス及び酸素含有ガスをプラズマ化させると共に、プラズマ化したフッ素含有ガス及び酸素含有ガスをチャンバ91内(反応空間91A)に供給する。
【0080】
なお、クリーニングガスであるフッ素含有ガス及び酸素含有ガスを効率よくプラズマ化させるために、フッ素含有ガス及び酸素含有ガスにそれぞれ放電ガスとして、Ar,He,Ne等の不活性ガスを添加してもよい。
【0081】
真空ポンプ106は、チャンバ91及びガス管107と接続されている。真空ポンプ106は、チャンバ91内のガスを排気して、ガス管107に排ガスを導出させる。ガス管107は、真空ポンプ106及び排ガス分析部109と接続されている。
【0082】
排ガス分析部109は、ガス管107と接続されている。排ガス分析部109は、排ガスに含まれる四フッ化珪素の濃度及び/または二酸化炭素の濃度を測定するガス分析装置である。排ガス分析部109は、制御部111と接続されており、測定した四フッ化珪素の濃度または二酸化炭素の濃度を制御部111に送信する。
【0083】
排ガス分析部109として、例えば、非分散型赤外線式分析計を用いるとよい。このように、排ガス分析部109として非分散型赤外線式分析計を用いることにより、簡便、かつ低コストで四フッ化珪素及び二酸化炭素の濃度を測定することができる。
なお、排ガス分析部109として、例えば、フーリエ変換型赤外分光計、紫外線吸収計、質量分析計、ガスクロマトグラフ等の分析計を用いてもよい。
【0084】
制御部111は、加熱部95、フッ素含有ガス供給部101、酸素含有ガス供給部102、プラズマ発生部104、及び排ガス分析部109と電気的に接続されている。
【0085】
制御部111は、炭化珪素除去装置90の制御全般を行なう。例えば、制御部111は、排ガス分析部109から送信された四フッ化珪素の濃度または二酸化炭素の濃度に基づいて、プラズマ発生部104、加熱部95、フッ素含有ガス供給部101、及び酸素含有ガス供給部102の制御を行なう。
制御部111は、図示していない記憶部や演算部を有している。該記憶部には、予め入力された四フッ化珪素の濃度の閾値、または二酸化炭素の濃度の閾値が格納されている。
【0086】
また、演算部(図示せず)では、予め入力された四フッ化珪素の濃度の閾値、または二酸化炭素の濃度の閾値と、後述する第1及び第2のステップにおいて発生する四フッ化珪素の濃度、または二酸化炭素の濃度との比較が行なわれ、濃度が閾値以下になった際、第1及び第2のステップの処理を停止するように、チャンバ91、加熱部95、フッ素含有ガス供給部101、及び酸素含有ガス供給部102の制御を行なう。
【0087】
図9は、本実施の形態に係るサセプタのクリーニング方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
図10は、本実施の形態に係るサセプタのクリーニング方法を構成する各工程を説明するための図である。
図10(a)は、準備された炭化珪素サセプタの主要部の断面図である。
図10(b)は、炭化珪素成膜装置の成膜チャンバ内に配置され、かつ炭化珪素サセプタの収容部に炭化珪素基板が載置された炭化珪素サセプタの断面図である。
図10(c)は、炭化珪素基板の表面に炭化珪素膜を成膜後、炭化珪素よりなる堆積物が堆積した炭化珪素サセプタ、及び炭化珪素基板の断面図である。
図10(d)は、炭化珪素膜が成膜された炭化珪素基板を回収後、炭化珪素成膜装置の成膜チャンバから取り出され、かつ堆積物が堆積した炭化珪素サセプタの断面図である。
図10(e)は、炭化珪素除去装置のチャンバ内に収容され、収容部に炭化珪素サセプタ保護基板が配置され、かつ堆積物が堆積した炭化珪素サセプタ、及びサセプタ保護基板の断面図である。
図10(f)は、堆積物が除去された後の炭化珪素サセプタの断面図である。
なお、
図10(a)〜(f)において、
図1、
図2(a),(b)、
図3、及び
図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0088】
次に、
図9及び
図10(a)〜(f)を参照して、
図7に示す炭化珪素除去装置90を用いた場合の本実施の形態に係るサセプタのクリーニング方法について説明する。
始めに、
図9に示す処理が開始されると、STEP1(
図10(a)に示す工程)では、先に説明した
図1、
図2(a),(b)、及び
図3に示す複数の収容部12を有し、かつバルクの炭化珪素よりなる炭化珪素サセプタ10を準備する。その後、処理は、STEP2へと進む。
【0089】
このように、バルクの炭化珪素よりなる炭化珪素サセプタ10を準備することで、先に
図14(a),(b)で説明したような問題(具体的には、カーボンよりなる部材300−1を炭化珪素膜よりなる被膜300−2でコーティングされたサセプタ本体301を液体洗浄した際に、該液体がカーボンよりなる部材300−1に染み込み、熱により該液体が膨張して、サセプタ本体301が破損する問題)が発生することを抑制可能となる。
これにより、液体を用いた処理(具体的には、
図9に示すSTEP9で行うRCA洗浄)により、
図9に示すSTEP5,6後に炭化珪素サセプタ10の表面に残存するSTEP5,6で使用するエッチングガス(プラズマ化されたフッ素含有ガス及び酸素含有ガス)に含まれる成分(例えば、F成分やN成分等)を除去できる。
【0090】
上記STEP1では、先に説明した鏡面研磨加工を用いることで平均表面粗さRaが1μm以下(より好ましくは、0.5μm以下)とされ、かつバルクの炭化珪素よりなる炭化珪素サセプタ10を準備する。
【0091】
次いで、STEP2(
図10(b),(c)に示す工程)では、
図4に示す炭化珪素成膜装置30の成膜チャンバ31内に炭化珪素サセプタ10を配置し、炭化珪素サセプタ10の複数の収容部12に炭化珪素基板20を載置後、所定の成膜条件を用いて、複数の炭化珪素基板20の表面20aに炭化珪素膜21(例えば、4H−SiC膜)を成膜し、その後、炭化珪素膜21が形成された炭化珪素基板20を搬出する工程を、所定の条件を満たすまで繰り返し行う。
【0092】
上記所定の条件としては、例えば、炭化珪素膜21の成膜時間の合計時間(所定の期間)や炭化珪素サセプタ10の使用を開始してからの合計の炭化珪素膜21の膜厚等を用いることができる。
STEP2では、炭化珪素膜21の成膜時間の合計時間(所定の期間)や炭化珪素サセプタ10の使用を開始してからの合計の炭化珪素膜21の膜厚等の閾値を予め設定し、該閾値を超えた際、STEP2の処理を終了させる。
【0093】
一度の炭化珪素膜21の成膜処理でもサセプタ本体11の表面11aや隙間Eに露出された第1の凹部12−1の底面12−1aに、炭化珪素(例えば、3C−SiC膜)よりなる堆積物22が堆積するが、上記工程を繰り返し行うことで、炭化珪素サセプタ10(具体的には、サセプタ本体11の表面11aや隙間Eに露出された第1の凹部12−1の底面12−1a)に、厚さの厚い(例えば、45〜200μm以上)堆積物22が堆積する。
上記STEP2の処理が終了すると、処理はSTEP3へと進む。
【0094】
次いで、STEP3(
図10(d)に示す工程)では、
図4に示す炭化珪素成膜装置30の成膜チャンバ31から炭化珪素膜21が形成された複数の炭化珪素基板20(
図10(c)参照)を回収した後、炭化珪素よりなる堆積物22が堆積した炭化珪素サセプタ10を成膜チャンバ31から取り出す。その後、処理は、STEP4へと続く。
【0095】
この段階では、
図10(d)に示すように、サセプタ本体11の上面11a、及び隙間E(
図10(c)参照)に露出された第1の凹部21−1の底面21−1aに堆積物22が堆積している。
【0096】
次いで、STEP4(
図10(e)に示す工程)では、
図7に示す炭化珪素除去装置90のチャンバ91内に配置されたサセプタ受け部材97に堆積物22が堆積した炭化珪素サセプタ10を固定する。
次いで、第1の凹部12−1のうち、炭化珪素基板20が配置されていた部分(
図10(c)参照)に、炭化珪素基板20と同様な形状とされたサセプタ保護基板121を載置する。その後、処理は、STEP5へと進む。
【0097】
このように、炭化珪素基板20が配置されていた第1の凹部12−1にサセプタ保護基板121を載置することにより、後述するドライエッチング(STEP5で実施されるプラズマ化させたフッ素含有ガスを用いたエッチング処理、及びSTEP6で実施されるプラズマ化させた酸素含有ガスを用いたエッチング処理)により、サセプタ保護基板121の下方に位置する炭化珪素サセプタ10がエッチングされることを防止できる。
【0098】
したがって、サセプタ保護基板121の材料としては、プラズマ化させたフッ素含有ガス、及びプラズマ化させた酸素含有ガスに対して耐性を有する材料を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、炭化珪素、炭化窒素、及びサファイア等を用いることができる。
【0099】
また、上記材料のうち、炭化窒素に含まれる窒素、及びサファイアに含まれるアルミニウムは、炭化珪素膜21を成膜する際に悪影響を及ぼす不純物であるため、不純物の観点から、サセプタ保護基板121の材料としては、高純度(純度が99.9999%以上)とされた単結晶の炭化珪素、多結晶の炭化珪素、及び焼結された炭化珪素がより好ましい。
【0100】
なお、サセプタ保護基板121の材料として、例えば、安価な石英(具体的には、合成石英や高純度(純度が99.9999%以上)な溶融石英)を用いてもよい。石英は、プラズマ化させたフッ素含有ガス、及びプラズマ化させた酸素含有ガスに対する良好な耐性を有してはいないが、上記説明したような不純物の問題がない。
このため、石英を用いて、十分な厚さでサセプタ保護基板121を構成することで、安価なサセプタ保護基板121を使用することができる。
【0101】
上記サセプタ保護基板121は、繰り返し使用することが可能であり、破損した場合には、新しいサセプタ保護基板121と交換する。
【0102】
次いで、STEP5では、プラズマ化させたフッ素含有ガスを供給するドライエッチングにより、炭化珪素サセプタ10に堆積した炭化珪素よりなる堆積物22に含まれる珪素を選択的に除去する(第1のステップ)。
【0103】
このとき、プラズマ化させたフッ素含有ガスは、チャンバ91の上方からチャンバ91の下方に向かう方向に供給されるが、プラズマ化させたフッ素含有ガスが鉛直方向に進むように誘導してはいない。そのため、プラズマ化させたフッ素含有ガスは、鉛直方向に向かうものもあれば、鉛直方向以外の方向に進むものもある。
STEP5では、堆積物22に含まれる珪素がフッ素含有ガスと反応して四フッ化珪素となり、脱離、除去される。
【0104】
第1のステップでは、チャンバ91から排出される排ガスである四フッ化珪素の濃度の時間変化を排ガス分析部109で測定し、四フッ化珪素の濃度が最大値に到達後、5〜10測定時間区間で連続して四フッ化珪素の濃度がマイナスの変化となった段階で終了させる。その後、処理は、STEP6へと続く。
なお、四フッ化珪素の濃度が徐々に減少する理由としては、堆積物22の表面の珪素が減少し、炭素が増加することで、その反応が妨げられるからである。
【0105】
次いで、STEP6では、炭化珪素サセプタ10に堆積した炭化珪素よりなる堆積物22に、プラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、ドライエッチングにより、堆積物22に含まれる炭素を選択的に除去する(第2のステップ)。
【0106】
このとき、プラズマ化させた酸素含有ガスは、チャンバ91の上方からチャンバ91の下方に向かう方向に供給されるが、プラズマ化させた酸素含有ガスが鉛直方向に進むように誘導してはいない。そのため、プラズマ化させた酸素含有ガスは、鉛直方向に向かうものもあれば、鉛直方向以外の方向に進むものもある。
STEP6では、堆積物22に含まれる炭素は、酸素含有ガスと反応して二酸化炭素となり、脱離、除去される。
【0107】
また、第2のステップでは、チャンバ91から排出される二酸化炭素の濃度の時間変化を排ガス分析部109で測定し、二酸化炭素の濃度が最大値となった時点から5〜10測定時間区間で連続して二酸化炭素の濃度がマイナスの変化となった段階で終了させる。次いで、処理は、STEP7へと続く。
【0108】
なお、二酸化炭素の濃度が徐々に減少してくる理由としては、堆積物22の表面の炭素が減少し、珪素が増加することで、その反応が妨げられるからである。
また、上記四フッ化珪素の濃度、及び二酸化炭素の濃度としては、移動平均等の算術処理を加えた値を用いるとよい。これにより、安定した濃度の挙動変化を掴むことが可能となる。
【0109】
次いで、STEP7では、排ガスに含まれる四フッ化珪素の濃度が、予め設定した閾値以下になったか否かの判定が行なわれる。
STEP7において、四フッ化珪素の濃度が、予め設定した閾値以下になったと肯定判定(Yesと判定)された場合、処理は、STEP8へと進む。
また、STEP7において、四フッ化珪素の濃度が、予め設定した閾値以下になっていない否定判定(Noと判定)された場合、処理は、STEP5に戻り、第1及び第2のステップの処理(STEP5,6の処理)が行なわれ、再度、STEP7へと処理が進む。
【0110】
つまり、STEP7において、肯定判定されるまで、第1及び第2のステップの処理を繰り返し行なうことで、炭化珪素よりなる堆積物22に含まれる珪素の除去、及び堆積物22に含まれる炭素の除去を繰り返し行う。
言い換えれば、第1及び第2のステップを繰り返し行うことで、炭化珪素サセプタ10に堆積した炭化珪素よりなる堆積物22の除去を行なう。これにより、
図10(f)に示すように、サセプタ本体11の上面11a、及び第1の凹部12−1の底面12−1aが露出される。
【0111】
ところで、堆積物22の除去が終了に近づくと、第1のステップで発生する四フッ化珪素の濃度、及び第2のステップで発生する二酸化炭素の濃度が徐々に減少する。
そこで、上記STEP7で説明したように、四フッ化珪素の濃度が予め設定した閾値以下になった際に、第1及び第2のステップの処理を終了することで、炭化珪素サセプタ10のうち、堆積物22に覆われていた部分にダメージを与えることなく、炭化珪素サセプタ10に堆積した堆積物22を精度良く除去することができる。
【0112】
また、四フッ化珪素の濃度の上記閾値(予め設定した閾値)としては、例えば、第1のステップで検出される四フッ化珪素の濃度の最大値に対して、四フッ化珪素の濃度が1/10以下の値を用いることができる。
【0113】
また、四フッ化珪素の濃度の上記閾値は、予め、一定量の炭化珪素量と除去処理速度の関係(第1のステップの四フッ化珪素の濃度の最大値と、第1及び第2のステップを繰り返し行った際の四フッ化珪素の濃度の関係)を把握した上で、初期段階の炭化珪素の量と目標とする炭化珪素の除去処理量に応じて任意に設定することができる。
【0114】
また、上記四フッ化珪素の濃度の閾値は、予め
図7に示す制御部111(具体的には、記憶部(図示せず))に格納されており、制御部111内において、排ガス分析部109が検出する四フッ化珪素の濃度と、上記四フッ化珪素の濃度の閾値との比較が行なわれ、この結果に基づいて、制御部111はチャンバ91、フッ素含有ガス供給部101、酸素含有ガス供給部102、及びプラズマ発生部104の制御を行なう。
【0115】
なお、
図9では、STEP7において、四フッ化珪素の濃度が閾値以下になったか否かの判定を行なう場合を例に挙げて説明したが、STEP7において、二酸化炭素の濃度が閾値以下になったか否かの判定を行なってもよい。この場合、STEP7において、四フッ化珪素の濃度が閾値以下になったか否かの判定を行なう場合と同様な効果を得ることができる。
【0116】
また、上記四フッ化珪素及び二酸化炭素の濃度を測定する排ガス分析部109としては、非分散式赤外線式分析計を用いるとよい。
このように、四フッ化珪素及び二酸化炭素の濃度を測定する排ガス分析部109として非分散式赤外線式分析計を用いることで、1つのデータの採取に要する時間が、短い場合には数秒、長くても数十秒となるため、データの採取時間が短い場合には10測定時間区間、データの採取時間が長い場合には5測定区間の応答時間を設けることで効率良く堆積物22の除去処理を行なうことができる。
【0117】
なお、本実施の形態では、炭化珪素よりなる堆積物22から発生する成分を四フッ化珪素と二酸化炭素とに特定したが、これは、1つには、四フッ化珪素及び二酸化炭素が、その発生物の大部分を占めるからである。
また、もう1つの理由としては、四フッ化珪素及び二酸化炭素が、主に発生するための除去反応条件が、フッ素含有ガス成分の濃度が低く、加熱温度も低く設定でき、かつ良好な除去性能を得ることができるからである。
【0118】
但し、例えば、炭化珪素よりなる堆積物22とフッ素含有ガスとの反応により、四フッ化炭素も相当量発生する場合は、炭化珪素起因の炭素として、二酸化炭素に四フッ化珪素も加えて終点検出、及び終点検出の制御機構を調整することで、より高精度な堆積物22の除去を行なうことができる。
【0119】
次いで、STEP8では、炭化珪素サセプタ10に堆積した堆積物22のクリーニング処理(除去処理)を停止し、炭化珪素サセプタ10に載置された複数のサセプタ保護基板121(
図10(e)参照)を回収する。
その後、
図7に示す炭化珪素除去装置90のチャンバ91内から堆積物22が除去された炭化珪素サセプタ10(
図10(f)に示す炭化珪素サセプタ10)を取り出す。その後、処理は、STEP9へと進む。
【0120】
次いで、STEP9では、
図10(f)に示す炭化珪素サセプタ10をRCA洗浄する。具体的には、始めに、例えば、濃度が5%の希フッ酸水溶液(HF)の中に炭化珪素サセプタ10を所定の時間(例えば、600sec)浸漬させて純水洗浄する。
次いで、28%のアンモニア水(NH
4OH)と、30%の過酸化水素水(H
2O
2)と、水(H
2O)と、が混合された混合液(アンモニア水:過酸化水素水:水=1:1:5の混合比)中に所定の時間(例えば、600sec)炭化珪素サセプタ10を浸漬させることで純水洗浄を行う。
【0121】
これにより、炭化珪素サセプタ10の表面から、異物、有機物、パーティクル、及び不純物金属等が除去される。STEP9の処理が終了すると処理は、STEP10へと進む。
【0122】
次いで、STEP10では、炭化珪素サセプタ10を超純水(例えば、比抵抗値18.1MΩ以上の純水)で洗浄することにより、炭化珪素サセプタ10に付着した薬液(希フッ酸水溶液(HF)及びアンモニア(NH
4OH)と過酸化水素(H
2O
2)とが混合された混合液)に含まれる成分を除去する。
このとき、炭化珪素サセプタ10の表面に残存するエッチングガス(STEP5,6で使用されるプラズマ化させたフッ素含有ガス及び酸素含有ガス)に含まれる成分(例えば、F成分やN成分等)も除去することができる。その後、処理は、STEP11へと進む。
【0123】
次いで、STEP11では、純水で濡れた炭化珪素サセプタ10を乾燥させる。乾燥方法としては、例えば、スピン乾燥法を用いることができる。これにより、
図9に示す処理は、終了する。堆積物22が除去された炭化珪素サセプタ10は、再度、
図4に示す炭化珪素成膜装置30の成膜チャンバ31内で使用される。
【0124】
本実施の形態のサセプタのクリーニング方法によれば、バルクの炭化珪素のみで構成された炭化珪素サセプタ10を用いることで、エッチング工程において、炭化珪素サセプタ10がエッチングされたとしても炭化珪素サセプタ10の材料としてカーボンを用いていないため、カーボンが露出することがなくなる。これにより、炭化珪素基板20に形成される炭化珪素膜21がカーボンで汚染されることを抑制できる。
また、バルクの炭化珪素のみで構成された炭化珪素サセプタ10を用いることで、液体を用いて炭化珪素サセプタ10を洗浄することが可能となる。
【0125】
また、バルクの炭化珪素は、被膜である炭化珪素膜よりも表面粗さの値が小さいため、エッチング工程において、エッチングされにくい。このため、繰り返し行われる第1及び第2のステップでの処理(エッチング工程)において、炭化珪素サセプタ10がエッチングされる量(エッチング量)を少なくすることが可能となる。
したがって、堆積物22を除去した炭化珪素サセプタ10を再度使用して、良好な膜質とされた炭化珪素膜21を成膜することができる。
【0126】
さらに、第1及び第2のステップにより堆積物22が除去された炭化珪素サセプタ10をRCA洗浄すると共に、その後、超純水洗浄することで、エッチングガス(プラズマ化されたフッ素含有ガス及び酸素含有ガス)に含まれる成分(例えば、F成分やN成分等)を除去することが可能となるので、エッチングガス起因による炭化珪素膜21の汚染を抑制できる。
【0127】
上記サセプタのクリーニング方法は、特に、エクサイチュー方式(Ex−Situ)のドライクリーニングにより、炭化珪素サセプタ10に堆積した厚い堆積物を除去する場合に有効である。
【0128】
なお、本実施の形態のサセプタのクリーニング方法では、
図9に示すように、第1のステップと、第2のステップと、を交互に行うことで、堆積物22を除去する場合を例に挙げて説明したが、第1及び第2のステップを同時に行うことで、堆積物22を除去してもよい。この場合、第1及び第2のステップの開始から連続して、排ガスに含まれる四フッ化珪素の濃度が測定され、該四フッ化珪素の濃度が所定の閾値以下になったかどうかの判定が行われる。
【0129】
このように、第1及び第2のステップを同時に行うことで、堆積物22を除去する場合、本実施の形態のサセプタのクリーニング方法(
図11に示す処理よりなるクリーニング方法)と同様な効果を得ることができる。
つまり、本実施の形態のサセプタのクリーニング方法において、第1及び第2のステップは、交互または同時に行えばよい。
【0130】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0131】
(実施例)
<炭化珪素サセプタの準備工程>
実施例では、複数の炭化珪素基板20が載置されるサセプタとして、
図1、
図2(a),(b)、及び
図3に示す炭化珪素サセプタ10を用いた。
炭化珪素基板20としては、口径が3インチ(7.62cm)、厚さが350μmの単結晶炭化珪素ウェハを用いた。
【0132】
炭化珪素サセプタ10の材料としては、バルクの炭化珪素を用いた。また、AFM装置(株式会社日立ハイテクノロジー社製のNX−10)を用いて、炭化珪素サセプタ10の平均表面粗さRaを測定したところ、0.39μmであった。
また、サセプタ本体11の外径を300cm、収容部12が配置されていない部分のサセプタ本体11の厚さを3mm、第1の凹部12−1の開口径を7.82cm(言い換えれば、リング状の隙間Eの幅が1mm)、第1の凹部12−1の深さを炭化珪素基板20と同じ350μm、第2の凹部12−2の深さを1mmとした。
【0133】
また、炭化珪素基板20の裏面20bのうち、炭化珪素基板20の最外周から内側1mmまでの面と、第1の凹部12−1の底面12−1aと、を接触させることで、炭化珪素サセプタ10に設けられた複数の収容部12(具体的には、第1の凹部12−1)に炭化珪素基板20を載置した。
このとき、複数の収容部12に配置された炭化珪素基板20の表面20aがサセプタ本体11の上面11aに対して面一となるようにした。
【0134】
<複数の炭化珪素基板に対する炭化珪素膜の成膜工程>
次に、
図4に示す炭化珪素成膜装置30(大陽日酸株式会社製)の成膜チャンバ31内に炭化珪素サセプタ10を収容し、複数の炭化珪素基板20の表面20aに炭化珪素膜21として、厚さ10μmとされた4H−SiC膜を成膜する(エピタキシャル成長させる)工程を15回繰り返し行った。
【0135】
このとき、原料ガスとしては、SiH
4(供給量が240sccm)、及びC
3H
8(供給量が180sccm)を用いた。また、キャリアガスとしては、H
2(供給量が1000sccm)を用いた。エピタキシャル成長時の成膜チャンバ31内の温度は、1600℃とした。
【0136】
上記4H−SiC膜を成膜する工程を実施することで、隙間Eに炭化珪素よりなる堆積物22(
図10(c)参照)が堆積したことを確認すると共に、サセプタ本体11の上面11aに厚さ200μmの堆積物22(炭化珪素(3C−SiC)よりなる堆積物)が堆積したことを確認した。
【0137】
<炭化珪素サセプタに堆積した堆積物を除去するクリーニング工程>
次に、
図4に示す炭化珪素成膜装置30から堆積物22が堆積した炭化珪素サセプタ10を取り出した。次いで、
図7に示す炭化珪素除去装置90(大陽日酸株式会社製)のチャンバ91内に配置されたサセプタ受け部材97(
図8参照)上に、堆積物22が堆積した炭化珪素サセプタ10を固定し、堆積物22を除去するクリーニング処理を実施した。
【0138】
該クリーニング処理としては、先に
図9及び
図10を参照して説明したクリーニング方法を用いて、チャンバ91内にプラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、炭化珪素よりなる堆積物22に含まれる珪素成分を選択的に除去する第1のステップと、チャンバ91内にプラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、堆積物22に含まれる炭素成分を選択的に除去する第2のステップと、順次繰り返し行うことで、炭化珪素サセプタ10に堆積した堆積物22を除去した。
【0139】
このとき、フッ素含有ガスとしては、NF
3(供給量が100sccm)を用い、酸素含有ガスとしては、O
2(供給量が500sccm)を用いた。また、上記クリーニング処理を実施中のチャンバ91内の温度は、300℃とした。
【0140】
堆積物22の除去が完了後、炭化珪素サセプタ10がほとんどエッチングされていないことが確認できた。
【0141】
<RCA洗浄、超純水洗浄、及び乾燥工程>
次いで、堆積物22が除去された炭化珪素サセプタ10をRCA洗浄した。具体的には、5%の希フッ酸に堆積物22が除去された炭化珪素サセプタ10を浸漬させた。このとき、5%の希フッ酸の温度を70℃とした。
その後、5%の希フッ酸から炭化珪素サセプタ10を取り出し、イオン交換水を用いた超音波洗浄により、炭化珪素サセプタ10を2分間洗浄した。このとき、イオン交換水は、メルク株式会社製のイオン交換水製造カートリッジであるMilli−DIを用いて、原水である市水(市で運営している水道のことで、飲料水以外も含む水)をろ過することで精製した。
また、超音波洗浄には、ヤマト科学株式会社製のWT−300M(型番)を用いた。
【0142】
次に、水酸化アンモニウム:過酸化水素:水=1:1:5の条件で混合した混合液に、堆積物22が除去された炭化珪素サセプタ10を浸漬させた。このとき、上記混合液の温度を70℃とし、炭化珪素サセプタ10を10分間浸漬させた。その後、炭化珪素サセプタ10を取り出し、イオン交換水を用いた超音波洗浄により、炭化珪素サセプタ10を2分間洗浄した。
【0143】
次いで、イオン交換水を用いた超音波洗浄により、炭化珪素サセプタ10を2分間洗浄した。次いで、超純水(具体的には、比抵抗値が18.1MΩ以上の純水)を用いた流水洗浄により、炭化珪素サセプタ10を2分間洗浄した。
次いで、真空乾燥炉(図示せず)内に炭化珪素サセプタ10を設置する。次いで、真空乾燥炉(図示せず)内の温度を120℃とし、かつ真空乾燥炉(図示せず)内の真空度を5×10
−5Pa・m・S
−1以上となるように、12時間以上保持することで、炭化珪素サセプタ10を乾燥させた。
【0144】
<乾燥工程後の炭化珪素サセプタを用いた複数の炭化珪素基板に対する炭化珪素膜の成膜工程>
次いで、乾燥工程後の炭化珪素サセプタ10を用いた複数の炭化珪素基板20に複数の炭化珪素基板20を載置して、複数の炭化珪素基板20の表面20aに、先に説明した炭化珪素膜91の成膜工程と同様な処理(具体的には、10μmの4H−SiC膜を15回成膜する処理)を行った。
実施例では、上記15回の成膜処理において、4H−SiC膜のエピ不良は、確認されなかった。このことから、エッチング工程により堆積物22が除去され、かつRCA洗浄、純水洗浄、及び乾燥工程が実施された炭化珪素サセプタ10を再利用することで、良好な4H−SiC膜を形成できることが確認できた。
【0145】
(比較例)
<サセプタの準備工程>
図11は、比較例で使用したサセプタの概略構成を示す平面図である。
図12は、
図11に示すサセプタのG−G線方向の断面図である。
図12では、説明の便宜上、
図11には図示していない炭化珪素基板20を点線で図示する。
【0146】
比較例では、複数の炭化珪素基板20が載置されるサセプタとして、
図11及び
図12に示すサセプタ250を用いた。
ここで、
図11及び
図12を参照して、比較例で使用するサセプタ250の構成について説明する。
サセプタ250は、サセプタ本体251と、複数の収容部252と、を有する。複数の収容部252は、サセプタ本体251の中心Nを中心とする円周上に各収容部252の中心が位置するように、等間隔で配置した。
【0147】
収容部252は、炭化珪素基板20が配置される空間である第1の凹部252−1と、第1の凹部252−1の下方に配置され、第1の凹部252−1よりも開口径が小さく、かつ第1の凹部252−1と一体とされた空間である第2の凹部252−2と、を有する構成とした。
【0148】
炭化珪素基板20は、その外周縁20Aと第1の凹部252−1の側壁との隙間Pが1mmとなるように載置した。
第1の凹部252−1は、その外計を7.82cm(言い換えれば、隙間Pが1mm)、深さを炭化珪素基板20の厚さと同じ350μmとした。また、第2の凹部252−2の深さは、1mmとした。
上記サセプタ250としては、カーボンよりなる部材を被膜である厚さ200μmの炭化珪素膜でコーティングしたものを用いた。
【0149】
<複数の炭化珪素基板に対する炭化珪素膜の成膜工程>
次に、
図4に示す炭化珪素成膜装置30(大陽日酸株式会社製)の成膜チャンバ31内にサセプタ250を収容し、複数の炭化珪素基板20の表面20aに炭化珪素膜として、厚さ10μmとされた4H−SiC膜を成膜する(エピタキシャル成長させる)工程を15回繰り返し行った。
このときの4H−SiC膜の成膜条件は、実施例と同じ条件を用いた。
【0150】
上記4H−SiC膜を成膜する工程を実施することで、隙間Pに炭化珪素よりなる堆積物が堆積したことを確認すると共に、サセプタ本体251の上面251aに厚さ200μmの堆積物(炭化珪素よりなる堆積物)が堆積したことを確認した。
【0151】
<サセプタに堆積した堆積物を除去するクリーニング工程>
次に、
図4に示す炭化珪素成膜装置30から堆積物が堆積したサセプタ250を取り出した。次いで、
図7に示す炭化珪素除去装置90(大陽日酸株式会社製)のチャンバ91内に配置されたサセプタ受け部材97(
図8参照)上に、炭化珪素よりなる堆積物が堆積したサセプタ250を固定し、該堆積物を除去するクリーニング処理(第1及び第2のステップを繰り返し行うドライエッチング処理)を実施した。
ドライエッチング処理の条件としては、実施例と同じ条件を用いた。
【0152】
堆積物の除去が完了後、サセプタ250を構成する第1の凹部252−1の側壁がエッチングされて厚さが薄くなり、コーティング材である炭化珪素膜からカーボンが露出されていることが確認できた。つまり、ドライエッチングにより、サセプタ250が損傷していることが確認できた。
【0153】
<クリーニングされたサセプタを用いた複数の炭化珪素基板に対する炭化珪素膜の成膜工程>
次いで、損傷したサセプタ250に複数の炭化珪素基板20を載置して、複数の炭化珪素基板20の表面20aに、先に説明した炭化珪素膜の成膜工程と同様な処理(具体的には、10μmの4H−SiC膜を15回成膜する処理)を行った。
比較例では、5回目以降に、4H−SiC膜のエピ不良が確認された。これは、損傷したサセプタ250を用いて、4H−SiC膜を形成したためであると考えられる。
【0154】
(実験例)
ここでは、サセプタのうち、炭化珪素基板20が載置されない部分から切り出したサンプル1〜サンプル8を準備し、それぞれのサンプルの平均表面粗さRa(μm)と、それぞれのサンプルのエッチングレート(μm/min)と、を測定した。
サンプル1〜8の外径は、縦10mm×横10mm×高さ2mmとした。
【0155】
この結果を表1及び
図13に示す。
図13は、表1に示す結果をグラフ化した図である。
図13は、多孔質炭化珪素、炭化珪素コート(研磨有無)、及びバルク炭化珪素(研磨有無)の平均表面粗さRa(μm)とエッチングレート(μm/min)との関係を示すグラフである。
【0157】
サンプル1は、常圧で、SiCの微粉(平均粒子径サイズが1〜100μm)とSiの微粉(平均粒子径サイズが1〜100μm)とを1500℃の温度で加熱して常圧焼結することで形成した。
サンプル2は、常圧で、SiCの微粉(平均粒子径サイズが1〜100μm)とSiの微粉(平均粒子径サイズが1〜100μm)とを1800℃の温度で加熱して常圧焼結することで形成した。
【0158】
サンプル3は、バルクのカーボンを炭化珪素コート膜(厚さ200μm)で被膜することで形成した。サンプル4は、サンプル3と同様なものを作製した後、その表面を、平均粒子径が4〜8μmの砥粒を有する♯3000のサンドペーパーを用いて、5minの間研磨することで形成した。
サンプル5は、サンプル3と同様なものを作製した後、その表面を、平均粒子径が2〜4μmの砥粒を有する♯8000のサンドペーパーを用いて、5minの間研磨することで形成した。
【0159】
サンプル6は、SiCの微粉(平均粒子径サイズが0.1〜10μm)に対して温度(2000℃)、圧力(50MPa)を印加する加圧焼結で形成した。
サンプル7は、サンプル6と同様な手法により形成されたバルクの炭化珪素の表面をバフ研磨することで作製した。このとき、バフ研磨には、♯400の砥粒を用いると共に、研磨布として羽布を用いた。また、バフ研磨時間は、5minとした。
サンプル8は、サンプル6と同様な手法により形成されたバルクの炭化珪素の表面を鏡面研磨することで作製した。このとき、鏡面研磨には、♯800の砥粒を用いると共に、研磨布として羽布を用いた。また、鏡面研磨時間は、5minとした。
【0160】
また、サンプル1〜8の平均表面粗さRa(μm)を測定する装置としては、株式会社小坂研究所社製の触針式段差計であるET4000Aと、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製のAFM(Atomic Force Microscope)装置であるNX−10と、を用いた。
なお、平均表面粗さRaが1μm以上の場合、小坂研究所社製の触針式段差計であるET4000Aを用い、平均表面粗さRaが1μm以下の場合、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製のNX−10を用いた。
【0161】
次いで、平均表面粗さRaが測定された上記サンプル1〜8の表面のエッチング処理を行った。
具体的には、
図7に示す炭化珪素除去装置90(大陽日酸株式会社製)のチャンバ91内に配置されたサセプタ受け部材97(
図8参照)上に、平均表面粗さRaが測定された上記サンプル1〜8を固定後、サンプル1〜8の表面のエッチング処理を実施した。
【0162】
このとき、エッチング処理として、先に
図9を参照して説明したクリーニング方法を用いた。具体的には、チャンバ91内にプラズマ化させたフッ素含有ガスを供給することで、炭化珪素よりなるサンプル1〜8の表面に含まれる珪素成分を選択的に除去する第1のステップと、チャンバ91内にプラズマ化させた酸素含有ガスを供給することで、表面に含まれる炭素成分を選択的に除去する第2のステップと、順次繰り返し行うことで、サンプル1〜8の表面をエッチングした。
【0163】
また、フッ素含有ガスとしては、NF
3(供給量が100sccm)を用い、酸素含有ガスとしては、O
2(供給量が500sccm)を用いた。また、上記クリーニング処理を実施中のチャンバ91内の温度は、300℃とした。
【0164】
表1に示すサンプル1〜8のエッチングレートは、株式会社日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡(SEM)であるTM3030を用いたエッチング前後の各サンプル1〜8の断面を観察し、該断面観察に基づき、エッチング前後の各サンプル1〜8の厚さの変化を求め、これをエッチング時間(第1及び第2のステップよりなる合計のエッチング時間)で割ることで算出した。
【0165】
表1を参照するに、エッチング処理時の目標とするバルクの炭化珪素のみで構成された炭化珪素サセプタのエッチングレートは、例えば、0.02μm/min以下にするとよい。
その理由としては、表1に示すように、サンプル4,5のエッチングレートが2μm程度であり、バルクの炭化珪素のみで構成された炭化珪素サセプタの目標とするエッチングレートを0.02μm/min以下にすることで、例えば、炭化珪素コートされたサセプタの100倍以上のエッチング耐性を得ることができる。言い換えれば、1度の使用で使用不可になっていたサセプタを100回以上使用することが可能となる。