(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232685
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】p−キシレンの製造
(51)【国際特許分類】
C07C 2/86 20060101AFI20171113BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20171113BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20171113BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20171113BHJP
B01J 37/28 20060101ALI20171113BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
C07C2/86
C07C15/08
B01J29/40 Z
B01J37/10
B01J37/28
!C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-556029(P2015-556029)
(86)(22)【出願日】2014年1月13日
(65)【公表番号】特表2016-510337(P2016-510337A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】US2014011247
(87)【国際公開番号】WO2014120422
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】61/759,087
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトン テリー イー
(72)【発明者】
【氏名】ティンガー ロバート ジー
(72)【発明者】
【氏名】ハン ルー
(72)【発明者】
【氏名】ワイト アンドレア ピー
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−524069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 2/86
B01J 29/40
B01J 37/10
B01J 37/28
C07C 15/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p-キシレンの製造方法であって、該方法が以下の工程:
(a) ZSM-5、リンまたはその化合物およびバインダを含む触媒を準備する工程、ここで該触媒は5〜15質量%のZSM-5を含み、かつ、少なくとも900℃の温度にてスチーム処理されており、該スチーム処理された触媒は、温度120℃および2,2-ジメチルブタン圧8kPa(60トール)において測定した場合に、0.1〜15sec-1という2,2-ジメチルブタンに対する拡散パラメータを有し、該触媒は、リンまたはその化合物をZSM-5のスラリーに添加し、該バインダをリンまたはその化合物を添加した後にスラリーに添加して調製され;および
(b) 前記スチーム処理された触媒の存在下で、少なくとも500℃の温度および104〜108kPaa(15〜15.7psia)のH2O分圧を含む条件の下で、メタノール、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物から選択されるアルキル化剤で、ベンゼンおよび/またはトルエンをアルキル化する工程、
を含むことを特徴とする、p-キシレンの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)における触媒が、2から8質量%未満までの元素のリンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ZSM-5が、少なくとも200であるが1,000未満のシリカ/アルミナモル比を有するアルミノシリケートである、請求項1〜2の何れか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が8〜10質量%のZSM-5を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記バインダがシリカおよび/またはクレーを含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が75〜90質量%のバインダを含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(a)における触媒が、少なくとも900℃の温度にて、10分〜1.5時間にわたりスチーム処理されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(b)における条件が、500〜700℃の範囲の温度、100〜7,000kPa(1atm〜1,000psig)の範囲の全反応器圧力、0.5〜1,000の範囲の単位時間当たりの重量空間速度および少なくとも0.2のトルエン対メタノールモル比をも含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互引照)
本件特許出願は、2013年1月31日付で出願された米国仮特許出願第61/759,087号に係る優先権を主張すると共に、その利益を請求するものである。この特許出願の開示事項全体を、言及によってここに組入れる。
【0002】
本発明は、ベンゼンおよび/またはトルエンをメタノールでアルキル化することによって、p-キシレンを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
キシレン異性体の内のp-キシレンは特に価値あるものである。というのは、これがテレフタル酸の製造において有用であり、該テレフタル酸が、合成繊維の製造における中間体の一つであるからである。キシレン異性体単独の、またはエチルベンゼンとの更なる混合物としての平衡混合物は、一般的に僅かに約22〜24質量%のp-キシレンを含むに過ぎず、またこのような混合物からのp-キシレンの分離は、典型的に超精留および多段冷蔵段階を必要とする。このような方法は、高い運転費を必要とし、また結果として限定された収量をもたらすに過ぎない。従って、p-異性体に対して高度に選択性である、キシレンの製法の提供に対する、永続的な要求がある。
キシレンを製造するための公知の一方法は、固体酸触媒上での、メタノールによるトルエンのアルキル化を含む。例えば、カチオン-交換されたゼオライトY上でのメタノールによるトルエンのアルキル化は、Yashima等によりJournal of Catalysis, 16, 273-280 (1970)において説明されている。これら研究者らは、おおよその温度範囲200〜275℃にわたるp-キシレンの選択的製造を報告しており、該キシレン混合物におけるp-キシレンの最大収率、即ち該キシレン生成物の混合物の約50%が、225℃において観測された。より高い温度が、結果としてm-キシレン収率の増加をもたらし、かつp-およびo-キシレン生産量の低下をもたらすことが報告された。
【0004】
温度120℃および2,2-ジメチルブタン圧8kPa(60トール)において測定した場合に、約0.1〜15sec
-1という2,2-ジメチルブタンに対する拡散パラメータ(Diffusion Parameter)を持つ多孔質結晶性物質を含有する触媒の存在下にて、トルエンとメタノールとを反応させることにより、90質量%を超える(全C
8芳香族生成物を基準として)p-キシレンに対する選択度が、最近になって報告された。該多孔質結晶性物質は、好ましくは中型細孔のゼオライト、特にZSM-5であり、これは、該スチーム処理段階中に該物質の細孔容積の減少を制御するために、好ましくはリンを含有する、少なくとも1種の酸化物改質剤の存在下で、少なくとも950℃の温度にて激しくスチーム処理されている。これについては、米国特許第6,423,879号および同第6,504,072号を参照のこと。
対照的に、米国特許第7,399,727号は、トルエンのp-キシレンへのメチル化における改善された選択度が、少なくとも200というシリカ/アルミナモル比、ゼオライトの少なくとも8質量%というリン含有率および約0〜約-50ppmにおいて複数の最大値を持つ複合
31P MAS NMRピークによって示される多数のリン種を有するリン-含有ZSM-5型ゼオライトを含む触媒の使用により実現し得ることを報告している。該リン-含有ZSM-5はスチーム処理せずに使用することができ、あるいは低温または温和な温度、例えば約150℃〜約350℃にてスチーム処理することができる。加えて、該リン-含有ZSM-5はバインダと共にまたはバインダなしに使用してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、幾つかの激しくスチーム処理されたリンを含有する、束縛されたZSM-5触媒が、高い蒸気分圧にて、トルエンおよび/またはベンゼンのp-キシレンへのメチル化において使用された場合に、選択度と安定性との特有の組合せを示すことが、今や見出された。水は、該メチル化法の不可避の副生物であるので、該触媒が、高い蒸気分圧において長期間にわたりその選択度を保持する能力は、既存の方法を超える有意な利点に相当する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一局面において、本発明は、p-キシレンの製造方法にあり、該方法は、以下の工程を含む:
(a) ZSM-5、リンおよびバインダを含む触媒を準備する工程、ここで該触媒は5〜15質量%のZSM-5を含み、また少なくとも900℃の温度にてスチーム処理されており、結果として該スチーム処理された触媒は、温度120℃および2,2-ジメチルブタン圧8kPa(60トール)において測定した場合に、約0.1〜15sec
-1という2,2-ジメチルブタンに対する拡散パラメータを有し;および
(b) 前記スチーム処理された触媒の存在下で、少なくとも500℃の温度および少なくとも83kPaa(12psia)のH
2O分圧を含む条件の下で、メタノールおよび/またはジメチルエーテル(DME)等のアルキル化剤で、ベンゼンおよび/またはトルエンをアルキル化する工程。
種々の態様において、上記スチーム処理された触媒は、0〜-50ppmの範囲に、
31P MAS NMRスペクトルにおけるただ一つのピークを持つ。
種々の態様において、工程(a)における上記触媒は、2から8質量%未満までの元素のリン(elemental phosphorus)を含む。
様々な態様において、工程(a)における上記触媒は、8〜10質量%のZSM-5を含み、また該ZSM-5は、少なくとも200のシリカ/アルミナモル比を有するアルミノシリケートである。
【0007】
様々な態様において、上記触媒は75〜90質量%のバインダを含み、また該バインダはシリカおよび/またはクレー、例えばカオリンを含む。
様々な態様において、工程(a)における上記触媒は、少なくとも900℃の温度にて、約10分〜約10.0時間にわたるスチーム処理されている。
様々な態様において、工程(b)における上記諸条件は、少なくとも103kPaa(15psia)のH
2O分圧を含む。
様々な態様において、工程(b)における上記諸条件は、また約500〜700℃の温度、約100〜7,000kPa(1atm〜1,000psig)の圧力、約0.5〜約1,000の単位時間当たりの重量空間速度および少なくとも約0.2のトルエン対メタノールのモル比をも含む。
本発明の目的の一つは、p-キシレンを選択的に製造するための改良法を提供することにあり、また更なる目的は、改善された熱安定性を持つ触媒を用いて、p-キシレンを選択的に製造するための方法を提供することにある。
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴および利点は、以下の詳しい説明、図面、特定の態様、実験および添付された特許請求の範囲において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)および1(b)は、約76kPaa(11psia)の蒸気分圧および約108kPaa(15.7psia)の蒸気分圧において、実施例4の水熱エージングテスト(hydrothermal aging test)に掛けた場合の、実施例1(985℃にてスチーム処理)および実施例2(1060℃にてスチーム処理)の触媒に関する、スチーム処理時間に対して、2,2-ジメチルブタンの拡散率(D/r2)を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ZSM-5、リンおよびバインダを含む、激しくスチーム処理された触媒の存在下で、メタノールおよび/またはジメチルエーテル(DME)等のアルキル化剤を用いた、ベンゼンおよび/またはトルエンの接触的アルキル化によるp-キシレンの製造方法が、ここに記載される。特に、該触媒が5〜15質量%のZSM-5を含む場合、該触媒は、少なくとも83kPaa(12psia)を超える、例えば少なくとも約104kPaa(約15psia)またはこれを超える高い蒸気分圧において操作した際に、水熱安定性、p-キシレン選択度および活性の特有の組合せを示すことが確認される。
ここにおいて使用される上記アルキル化法では、トルエンおよび/またはベンゼンを含む任意の芳香族供給原料を使用することができる。しかし、該芳香族供給材料は、少なくとも90質量%、とりわけ少なくとも99質量%のベンゼン、トルエンまたはこれらの混合物を含むことが、一般的には好ましい。少なくとも99質量%のトルエンを含む芳香族供給材料が特に望ましい。同様に、該メタノール-含有供給材料の組成は決定的なものではないが、少なくとも90質量%、とりわけ少なくとも99質量%のメタノールを含む供給材料を使用することが、一般的には望ましい。
【0010】
上記アルキル化法において使用される触媒は、通常は酸化物の形状にあるリンで改質され、かつバインダと組合されたZSM-5を含む。
ゼオライトZSM-5およびその従来の製造は、米国特許第3,702,886号に記載されている。この特許の開示事項全体を、言及することによりここに組入れる。本発明の方法において使用される該ZSM-5は、典型的に、上記触媒の拡散率を調節するために、そのあらゆるスチーム処理に先立って測定された如き、シリカ(SiO
2)対アルミナ(Al
2O
3)のモル比少なくとも200を有するアルミノシリケートまたはシリケートである。
従来、上記触媒へのリン改質剤の組込は、米国特許第4,356,338号、同第5,110,776号、同第5,231,064号および同第5,348,643号に記載されている方法によって実行されている。これら特許の全開示事項を、言及することによりここに組入れる。リン-含有化合物を用いた処理は、単独の該ZSM-5またはこれとバインダ物質との組合せを、適当なリン化合物の溶液と接触させ、次いで乾燥し、焼成して、該リンをその酸化物形に転化することにより容易に達成し得る。該リン-含有化合物との接触は、一般的に約25℃〜約125℃の温度にて、約15分〜約20時間という期間にわたり行われる。該接触混合物中の該リンの濃度は、約0.01〜約30質量%であり得る。
【0011】
上記リン-含有化合物の製造後、上記触媒を乾燥し、また焼成して、該リンを酸化物形状に転化することができる。焼成は、不活性雰囲気内で、あるいは酸素の存在下で、例えば空気中で、約150〜850℃、例えば300〜650℃、または約540〜810℃の温度にて、少なくとも30分間、例えば45〜90分間または30〜60分間の期間にわたり行うことができる。
上記触媒中にリン酸化物改質剤を組込むのに使用し得る代表的なリン-含有化合物は、前より米国特許第6,504,072号に記載されている。
一般的に、上記リン酸化物改質剤は、上記触媒が、元素のリンを基準として、1〜10質量%、例えば2から8質量%未満まで、例えば2〜6質量%のリンを含むような量で、該触媒中に存在する。
好ましい一態様において、上記リンの源、例えばリン酸は脱イオン水中のZSM-5のスラリーに添加される。次いで、クレー、例えばティエル(Thiele) RC-32等のカオリンクレーが、該ZSM-5およびリン化合物のスラリーに添加される。次に、この段階由来の噴霧乾燥製品は、スチーム処理に先立って、好ましくは空気中でまた約540〜810℃の標準温度(nominal temperature)にて焼成される。
【0012】
本発明の方法において使用される上記触媒は、この方法において使用される上記温度およびその他の諸条件に対して耐性のバインダまたはマトリックス物質を含むことが好ましい。このような物質は、活性および不活性物質、例えばクレー、シリカおよび/またはアルミナ等の金属酸化物を含む。後者は、天然産のものまたはシリカと金属酸化物との混合物を含む、ゼラチン状の沈殿またはゲル形状にあるものの何れかであり得る。活性である物質の使用は、該触媒の転化率および/または選択度を変える傾向にあり、またそれ故に一般的には好ましくない。不活性物質は、都合の良いことに、与えられた工程における転化の量を制御するための希釈剤として働き、そのため、反応速度を制御するための他の手段を使用することなしに、生成物を経済的にかつ整然と得ることを可能とする。これら物質を、天然産のクレー、例えばベントナイトおよびカオリンに組込んで、商業的な操作条件下での該触媒の圧潰強さを改善することができる。該物質、即ちクレー、酸化物等は、該触媒用のバインダとして機能する。良好な圧潰強さを持つ触媒を提供することが望ましい。というのは、商業的な使用においては、該触媒の粉末-様物質への崩壊を防止することが望ましいからである。
【0013】
本発明の触媒において使用することのできる天然産のクレーは、モンモリロナイトおよびカオリン群のものを含み、これらの群は、サブベントナイト(subbentonites)、およびディキシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)およびフロリダ(Florida)クレーとして一般に知られているカオリンまたは主な無機成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトであるその他のものを含む。このようなクレーは、元来の採掘状態、または当初に焼成、酸処理または化学的改質に付された如き、未加工の状態において使用し得る。使用される特定のクレーおよびその処理は、ある程度まで性能に変化をもたらすであろうし、また最も適当なクレー(またはより一般的にはバインダ)の決定が、日常的な実験により決定するために本開示を手にしている当業者の範囲内にあることが認識されるであろう。
上述の物質に加えて、上記ZSM-5は、多孔質マトリックス物質、例えばシリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-べリリア、シリカ-チタニア並びに三成分組成物、例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシアおよびシリカ-マグネシア-ジルコニアと複合化することができる。
一般的に、上記触媒は、75〜90質量%の上記バインダを含むであろう。
【0014】
本発明の方法において使用される上記触媒は、上記スチーム処理された触媒が、温度120℃および2,2-ジメチルブタン圧8kPa(60トール)において測定した場合に、2,2-ジメチルブタンに対する拡散パラメータ約0.1〜15sec
-1を持つようにスチーム処理されることが好ましい。
本明細書において使用するように、特定の多孔質結晶性物質の上記拡散パラメータは、D/r
2×10
6として定義され、ここにおいてDは拡散係数(cm
2/sec)であり、またrは結晶半径(cm)である。該拡散パラメータは、収着測定から得ることができるが、但し平面シートモデルが、該拡散過程を説明するものと仮定する。従って、与えられたソルビン酸ローディング(sorbate loading)Qに対して、Q/Q
eqの値は数学的に(Dt/r
2)
1/2と関係付けられ、ここでQ
eqは平衡ソルビン酸ローディングであり、またtは該ソルビン酸ローディングQに至るまでに要する時間(sec)である。該平面シートモデルに関する図解法は、「拡散の数学(The Mathematics of Diffusion)」, オックスフォードユニバーシティープレス(Oxford University Press)刊, ロンドンエリーハウス(Ely House, London), 1967においてJ. Crankによって与えられている。
上記触媒のスチーム処理は、該触媒の細孔容積における制御された減少を、スチーム処理されていない該触媒に係る細孔容積の50%以上、および好ましくは50〜90%とするように準備される。スチーム処理前後の、90℃およびn-ヘキサン圧約10kPa(75トール)における、該ゼオライトのn-ヘキサン吸着容量を測定することにより、細孔容積における減少が監視される。
【0015】
上記多孔質結晶性物質の所望の拡散率および細孔容積における低下を実現するためのスチーム処理は、蒸気の存在下で少なくとも約900℃、好ましくは約950〜約1,075℃、および最も好ましくは約1,000〜約1,050℃の温度にて、また約10分〜約10時間、好ましくは30分〜5時間、例えば30分〜2時間の期間にわたり、該物質を加熱することにより達成し得る。他の好ましい温度および温度範囲は、本節に列挙された任意の低い温度および/または短い時間から、ここに列挙された任意の高い温度および/または長い時間まで、例えば約900〜1,050℃、約10分〜2時間等を含む。
上記アルキル化法は、任意の公知の反応容器内で行うことができるが、一般に上記メタノールおよび芳香族供給材料は、上述の触媒と接触させられ、該触媒粒子は、1またはそれ以上の流動床に配置されている。該メタノールおよび芳香族供給材料各々は、単一の段階で該流動化触媒に投入し得る。しかし、一態様においては、該芳香族反応体の該流動化触媒への投入位置から下流側の1またはそれ以上の位置にて、複数の段階で該メタノール供給材料を該流動化触媒に投入する。例えば、該芳香族供給材料は、触媒の単一の垂直流動床の下方部分に投入でき、該メタノールは、該床の複数の垂直に一定の間隔で配置された中間的位置において該床に投入され、またその生成物は該床の上部から取出される。あるいはまた、該触媒は、複数の垂直に一定の間隔で配置された触媒床に配置することができ、該芳香族供給材料は、その第一の流動床の下方部分に投入され、かつ該メタノールの一部は該第一の床の中間部分に投入され、また該メタノールの一部は下流側触媒床に、あるいは隣接する下流側触媒床間に投入される。
【0016】
本発明のアルキル化法のための特に好ましいシステムは、米国特許出願第13/557,605号において記載されている。しかし、本発明は、一般に固定床、移動床、または流動床反応器に対して適用される。
本発明の方法に係る上記アルキル化段階において使用される諸条件は、狭く制約されることはないが、トルエンのメチル化の場合、一般的には以下のような範囲を含む:(a) 約500〜約700℃の範囲、例えば約500〜約600℃の範囲の温度;(b) 約100〜約7,000kPa(約1atm〜約1,000psig)の範囲、例えば約170〜約1,480kPa(約10psig〜約200psig)の範囲の圧力;(c) 少なくとも約0.2、例えば約0.2〜約20のトルエンモル数/メタノールモル数(上記反応器装入材料における);および(d) 上記反応器内の全触媒を基準として、上記芳香族反応体について約0.2〜約1,000、例えば約0.5〜約500、および上記併合されたメタノール試薬の段階流(stage flows)について約0.01〜約100という、上記反応器(1または複数)への全炭化水素供給材料に対する単位時間当たりの重量空間速度(「WHSV」)。
p-キシレンおよびその他のキシレン異性体の製造に加えて、本発明の方法は水蒸気を生成し、これは、該方法において使用される高温において、上記触媒の迅速なエージングへと導く恐れがある。該反応において水が生成するにも拘らず、例えば1またはそれ以上の上記芳香族供給材料(1または複数)および/またはアルキル化剤供給材料(1または複数)において、水が該反応に添加されることが有利かつ好ましい。このような方法での水の添加は、アルキル化剤の転化率を増大し、副反応を減じ、および更には該反応器への供給流を加熱するために使用される炉内でのコーキングを減じることが分かっている。
【0017】
以下の実施例および添付図面に示されるように、本発明の触媒は、少なくとも83kPaa(12psia)を超える蒸気分圧にて操作された際においてさえ、15質量%を超えるZSM-5添加量を持つ触媒と比較して、改善された水熱安定性およびp-選択度を示す。これは、上記メチル化反応器内で減じられるべき該蒸気分圧を下げるために高価な手段を使用することなしに、上記メチル化法を実施することを可能とする。更に、該ZSM-5含有率を5質量%またはそれ以上に維持するという条件下では、上述の有利な水熱安定性およびp-選択度特性が、該触媒の活性における過度の喪失なしに実現し得る。
【実施例】
【0018】
以下の実施例において、蒸気分圧は、反応器の入口および出口において熱電対により測定された如き、反応ゾーン全体にわたる平均として理解される。最大蒸気分圧は、全反応器圧力に依存するであろう。該全反応器圧力は、有利には100〜7,000kPa(1atm〜1,000psig)の範囲にある。
実施例1:
クレーバインダを、ZSM-5とリン源とを一緒にスラリー化した後に添加する、上述の好ましい方法によって製造した、25質量%のZSM-5、名目上4質量%のリンおよび残部のクレーを含有する触媒の3つのサンプルを、約102kPaa(14.7psia)にてロータリー焼成炉内でスチーム処理し、次いで100%蒸気内で45分間にわたり1060℃にてスチーム処理した。
実施例2:
実施例1と同様な方法で製造した、10質量%のZSM-5、名目上4質量%のリンおよび残部のクレーを名目上含有する触媒の3つのサンプルを、約102kPaa(14.7psia)にてロータリー焼成炉内でスチーム処理し、次いで100%蒸気内で45分間にわたり985℃にてスチーム処理した。
【0019】
2つの50-日間に渡る水熱エージング研究を、実施例1の触媒(25質量%のZSM-5、名目上4質量%のP)について、および実施例2の触媒(10質量%のZSM-5、名目上4質量%のP)について行った。その第一の研究においては、該触媒を、593℃(1100°F)にて76kPaa(11psia)の蒸気内で加熱し、一方でその第二の研究においては、同一の温度を維持したが、蒸気分圧を108kPaa(15.7psia)まで高めた。水熱安定性を、該触媒の2,2-ジメチルブタン拡散率(D/r2)によって測定した。結果を
図1(a)および1(b)に示したが、これらの結果は、該触媒の長期安定性が、76kPaa(11psia)の蒸気内で加熱した場合と極めて類似している一方で、上記10質量%ZSM-5触媒が、該25質量%ZSM-5触媒と比較して、108kPaa(15.7psia)という蒸気分圧において、明らかにより水熱的に安定であることを明確に示している。
【0020】
以上、本発明を特定の態様を参照しつつ説明し、かつ例証してきたが、当業者は、本発明が、必ずしも本明細書において例証されていない変形に対しても適していることを理解するであろう。
また本発明は以下の態様であり得る。
〔1〕p-キシレンの製造方法であって、該方法が以下の工程:
(a) ZSM-5、リンまたはその化合物およびバインダを含む触媒を準備する工程、ここで該触媒は5〜15質量%のZSM-5を含み、かつ、少なくとも900℃の温度にてスチーム処理されており、該スチーム処理された触媒は、温度120℃および2,2-ジメチルブタン圧8kPa(60トール)において測定した場合に、約0.1〜15sec-1という2,2-ジメチルブタンに対する拡散パラメータを有し;および
(b) 前記スチーム処理された触媒の存在下で、少なくとも500℃の温度および少なくとも83kPaa(12psia)のH2O分圧を含む条件の下で、メタノール、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物から選択されるアルキル化剤で、ベンゼンおよび/またはトルエンをアルキル化する工程、
を含むことを特徴とする、p-キシレンの製造方法。
〔2〕前記工程(a)における触媒が、2から8質量%未満までの元素のリンを含む、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕前記ZSM-5が、少なくとも200のシリカ/アルミナモル比を有するアルミノシリケートである、前記〔1〕〜〔2〕の何れか1項に記載の方法。
〔4〕前記触媒が8〜10質量%のZSM-5を含む、前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載の方法。
〔5〕前記バインダがシリカおよび/またはクレーを含む、前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項に記載の方法。
〔6〕前記触媒が75〜90質量%のバインダを含む、前記〔1〕〜〔5〕の何れか1項に記載の方法。
〔7〕前記工程(a)における触媒が、少なくとも900℃の温度にて、約10分〜約1.5時間にわたりスチーム処理されている、前記〔1〕〜〔6〕の何れか1項に記載の方法。
〔8〕前記工程(b)における条件が、少なくとも103kPaa(15psia)のH2O分圧を含む、前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の方法。
〔9〕前記工程(b)における条件が、約500〜700℃の範囲の温度、100〜7,000kPa(約1atm〜1,000psig)の範囲の全反応器圧力、約0.5〜約1,000の範囲の単位時間当たりの重量空間速度および少なくとも約0.2のトルエン対メタノールモル比をも含む、前記〔1〕〜〔8〕の何れか1項に記載の方法。
〔10〕前記H2O分圧の上限が、7,000kPa(1,000psig)未満である、前記〔1〕〜〔9〕の何れか1項に記載の方法。
〔11〕前記シリカ/アルミナモル比が、1,000未満である、前記〔1〕〜〔10〕の何れか1項に記載の方法。