特許第6232687号(P6232687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232687
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】半導体装置とその動作方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20171113BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20171113BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01L29/78 654Z
   H01L29/78 655D
   H01L29/78 652T
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-207074(P2016-207074)
(22)【出願日】2016年10月21日
(62)【分割の表示】特願2012-171456(P2012-171456)の分割
【原出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-11319(P2017-11319A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年11月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509260466
【氏名又は名称】菅原 良孝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良孝
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/015764(WO,A1)
【文献】 特開2012−099630(JP,A)
【文献】 特開2011−187693(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/020320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドギャップ半導体で形成された逆導通IGBT半導体装置であり、ドリフト層とバッファー層を有する逆導通IGBT半導体装置、もしくはドリフト層をより厚くしバッファー層は設けていない逆導通IGBT半導体装置において、
コレクタ電極とエミッタ電極間に順方向電圧を印加し且つゲート電極とエミッタ電極間にも低いゲート電圧を印加して順方向バイアス状態にして、エミッタ領域とコレクタ短絡部を介して多数キャリアのみによる順方向電流を流し、この電流による自己発熱により前記逆導通IGBT半導体装置を積層欠陥の少数キャリアトラップ現象を抑制できる所定の温度に昇温させた後に、コレクタ領域からドリフト層に少数キャリアが注入されるように、前記ゲート電圧をより高い電圧に制御して逆導通IGBT半導体装置をバイポーラ動作させることを特徴とする逆導通IGBT半導体装置の動作方法。
【請求項2】
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型の第1半導体層の裏面に設けられた第1導電型の第2半導体層と、前記第1導電型の第2半導体層の裏面に設けられた第2導電型の第1半導体層を備え、更に前記第2導電型の第1半導体層を貫通する複数の第1導電型の第1半導体領域とを備え、
前記第1導電型の第1半導体層のおもて面には、選択的に設けられた複数の第2導電型の第1半導体領域と、
前記第2導電型の第1半導体領域の各々のおもて面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域と前記第1導電型の第2半導体領域とに接する第1の主電極と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域の、前記各々の第1導電型の第2半導体領域と前記第1導電型の第1半導体層とに挟まれた部分の表面に、絶縁膜を介して設けられた制御電極と、
前記第2導電型の第1半導体層と前記複数の第1導電型の第1半導体領域との裏面に接する第2の主電極とを備えた活性領域を含む半導体装置であり、各半導体層と各半導体領域がワイドギャップ半導体から構成されている逆導通IGBT半導体装置において、
前記第1の主電極と前記第2の主電極間に順方向電圧を印加し且つ前記制御電極と前記第1の主電極間にも低い電圧を印加して順方向バイアス状態にし、前記第1導電型の第2半導体領域と前記第1導電型の第1半導体領域を介して多数キャリアのみによる順方向電流を流し、この電流による自己発熱により前記逆導通IGBT半導体装置を積層欠陥の少数キャリアトラップ現象を抑制できる40℃以上の温度に昇温させた後に、前記第2導電型の第1半導体層から前記第1導電型の第1半導体層に少数キャリアが注入されるように前記制御電極と前記第1の主電極間の電圧をより高い電圧に制御して逆導通IGBT半導体装置をバイポーラ動作させることを特徴とする逆導通IGBT半導体装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に係わり、特に高性能の逆導通IGBTとその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高耐圧の大電力および中電力用途ではもっぱらシリコン(Si)を材料としたSi−IGBTが主要半導体装置として種々の応用分野で多用されており、6kV級まで製品が供給されている。近年これらのSi−IGBTのターンオフ速度を短くし損失を低減するために様々な工夫がこらされている。その代表的な例として、図5に示す従来例1や図6に示す従来例2のSi逆導通IGBTが開発され、各々非特許文献1や2に開示されている。
従来例1の短絡コレクタSi−IGBTではnドリフト層がpコレクタ層に設けたn短絡部によりコレクタ電極に短絡されており、ターンオフ時にnドリフト層内に残存するキャリアをこのn短絡部を介して排除することによりターンオフ時間を短くし損失の低減を図っている。
従来例2のSi逆導通IGBTは、逆導通Si−IGBT領域とパイロットIGBT領域とから構成されている。Si逆導通IGBT領域には従来例1と同様にnドリフト層がpコレクタ層に設けたn短絡部によりコレクタ電極に短絡されており、ターンオフ時にnドリフト層内に残存するキャリアをこのn短絡部を介して排除することによりターンオフ時間を短くし損失の低減を図っている。また、パイロットIGBT領域のコレクタの幅は逆導通IGBT領域のコレクタの幅よりも大幅に大きくし、パイロットIGBT領域が逆導通IGBT領域に先駆けてオンするようにしている。
なお、これらの開示されているIGBTはnドリフト層がn短絡部によりコレクタ電極に短絡されているので、逆電圧に対する阻止能力がないために、近年逆導通IGBTと総称されている。それ故、以下ではいづれも逆導通IGBTと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ハジメ・アキヤマ (Hajime AKIYAMA)、他5名、イヘクト オブ ショーテドコレクタ オン キャラクタリスティックス オブ IGBTS (EFECTS OF SHORTED COLLECTOR ON CHARACTERISTICS OF IGBTS)、プロシーディングス オブ ザ セカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 2nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),1990年4月、p.131−136
【非特許文献2】リウタウラス ストラスタ (Litauras Storasta),他2名、ア コンパリソン オブ チャージ ダイナミックス イン ザ レヴァースーコンダクテング RCIGBT アンド バイモード インシュレイテド ゲイト トランジスタ BiGT)(A Comparison of charge dynamics in the Reverse−Conducting RCIGBT and Bi−mode Insulated Gate Transistor BiGT)、プロシーディングス オブ ザ トエンテイセカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 22nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),2010年6月、p.391−394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、開示されている従来例1および2のSi逆導通IGBTの出力特性、すなわちコレクターエミッタ間電圧(以下、Vceと記す)とコレクターエミッタ間電流(以下、Iceと記す)の間のIce−Vce特性には、オン直前のコレクターエミッタ間電圧がオン直後のコレクターエミッタ間電圧(以下、Von0と記す)よりも大きいというスナップバック現象が発生する。オン直前のコレクターエミッタ間電圧を、従来例1ではknee point voltageと呼び、従来例2ではスナップバック前ピーク電圧と呼んでいるが、以下ではスナップバック電圧と呼び、Vsbと記述する。また、このVsbにおけるコレクターエミッタ間電流をスナップバック電流と呼びIsbと記述する。
【0006】
ところで、これらの逆導通IGBTはオン直前から直後に推移するまでの時間すなわちターンオン時間が短いので、スナップバック現象が存在するとターンオン時に 急峻な電圧変化(以下dV/dtと表記)や急峻な電流変化(以下dI/dtと表記)を生じる。この結果、回路内に存在する寄生容量により急峻な跳ね上がり電圧(C・dv/dt)が、また寄生リアクトルにより急峻な跳ね上がり電流(L・dI/dt)が生じ、これに起因して大きな過度現象が誘発される。このため、この逆導通IGBTを用いた回路に大きな擾乱を招いてしまい誤動作を起したり、場合によっては素子や回路の破壊に至る。これは極めて深刻な第1の課題である。
【0007】
また、従来例2のSi逆導通IGBTでは、多数の逆導通IGBTセルから構成される逆導通IGBT領域に隣接してパイロットIGBT領域を設けている。パイロットIGBT領域のpコレクタ幅は逆導通IGBT領域のIGBTセルのpコレクタ幅よりも大幅に大きくすることによりpコレクタ上のバッファー層の横方向抵抗を大きくしており、従ってまず小さいIceでパイロットIGBT領域をオンさせるようにしている。これにより、パイロットIGBT領域のスナップバック現象を抑制している。この結果、まずスナップバック現象が抑制されたパイロットIGBT領域が小さなIceでオンしてより大きなオン電流が流れ、このオン電流が拡がって最隣接の逆導通IGBTセルに流れ込む。最隣接の逆導通IGBTセルのpコレクタは幅が小さいためpコレクタ上のバッファー層の横方向抵抗が小さいが、パイロットIGBTのオン電流の一部が大きな拡がり電流となって流れ込むために、最隣接の逆導通IGBTセルのpコレクタ接合が容易にビルトイン電圧に達してオンする。この結果、オン電流が更に増大し、この最近接の逆導通IGBTセルに隣接する逆導通IGBTセルが同様にオンする。このような動作を繰り返して、パイロットIGBT領域に近接する逆導通IGBTセルから順次オンしてゆき、逆導通Si−IGBT全体がオンするに至る。
【0008】
しかし、この引例2の場合は全体のIGBTチップ面積に占めるパイロットIGBT領域の面積がかなり大きくなってしまう。例えば、引例2の場合、データから読み取ると、逆導通IGBTセルのpコレクタ幅が180μmであるのに対し、パイロットIGBTのpコレクタ幅を約4倍以上の720μm以上にすることにより、Vsbをビルトイン電圧である0.7V以下にしている。この結果、スナップバック現象は解消されるが逆導通IGBT領域の面積が少なくなるので、ターンオフ時に残存するキャリアを排除するという本来の逆導通IGBTの機能が大幅に損ねられてしまう。これは歩留まりなどの経済性の点から素子のチップサイズが通常12mmx12mm以下程度に設定されている現状では大きな問題であり、解決すべき第2の課題である。
【0009】
高耐圧の逆導通IGBTの場合は、耐圧が高くなるほどチップ表面の電界を緩和するのにより大きな占有面積が必要となるため活性面積がより少なくなるので、この第2の課題はより深刻になる。
【0010】
またスナップバック現象に基づく回路動作の擾乱を介して逆導通IGBTが誤動作や部分破壊を起こすといった間接的な半導体装置の信頼性の問題は、上記のように明らかにされている。しかし、スナップバック現象により直接的に半導体本体に及ぼされる損傷に関連する信頼性の問題は明らかにされておらず、引例でも言及されていない。これは重要な第3の課題である。
【0011】
本発明は、前記の従来技術の課題を解消し、VsbやIsbを小さくできスナップバック現象を抑制できる高性能逆導通IGBTを提供することを目的にする。また、この発明は、パイロットIGBT領域を設けた逆導通IGBTにおいて、パイロットIGBT領域の専有面積を小さくでき、且つターンオフ時の残存キャリアの排除機能があまり抑制されない高性能逆導通IGBTを提供することを目的にする。更に、この発明はスナップバック現象が直接的な原因となって生じる半導体本体の劣化に起因して信頼性が損ねられるのを抑制し、高い信頼性を達成できる高性能逆導通IGBTと逆導通IGBTの動作方法を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下では、理解を容易にするために、各半導体層や半導体領域が機能的にどの層に相当するかを括弧内に付記して説明する。
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、
第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)と、
前記半導体層(ドリフト層)の裏面に設けられた第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)と、前記第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)を貫通する複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)とを備え、
前記第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)のおもて面には、選択的に設けられた複数の第2導電型の第1半導体領域(pボディ層)と、
前記第2導電型の第1半導体領域(pボディ層)の各々のおもて面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域(エミッタ層)と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域(pボディ層)と前記第1導電型の第2半導体領域(エミッタ層)とに接する第1の主電極(エミッタ電極)と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域(pボディ層)の、前記各々の第1導電型の第2半導体領域(エミッタ層)と前記第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)とに挟まれた部分の表面に、絶縁膜を介して設けられた制御電極と、
前記第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)と前記複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)との裏面に接する第2の主電極(コレクタ電極)とを備えた半導体装置において、
各半導体層と各半導体領域がワイドギャップ半導体から構成されており
前記複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)間の距離Wp(WB)を、
Si半導体で構成した同耐圧で同一構成の前記半導体装置の前記距離Wp(Si)を上限とし、
前記ワイドギャップ半導体のpn接合のビルトイン電圧Vbi(WB)とワイドギャップ半導体装置の特性オン抵抗RonS(WB)との積を、前記Si半導体装置のpn接合のビルトイン電圧Vbi(Si)とSi半導体装置の特性オン抵抗RonS(Si)との積で割算した値に前記短絡部間距離Wp(Si)を乗じた値を下限とする範囲より選択したことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、
前記第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)と、前記第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)および前記複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)との間に第1導電型の第2半導体層(バッファー層)を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる半導体装置は、
第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)と、
前記第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)の裏面に設けられた第1導電型の第2半導体層(バッファー層)と、前記第1導電型の第2半導体層(バッファー層)の裏面に設けられた第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)を備え、更に前記第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)を貫通する複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)とを備え、
前記第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)のおもて面には、選択的に設けられた複数の第2導電型の第1半導体領域(ボディ領域)と、
前記第2導電型の第1半導体領域(ボディ領域)の各々のおもて面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域(エミッタ領域)と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域(ボディ領域)と前記第1導電型の第2半導体領域(エミッタ領域)とに接する第1の主電極(エミッタ電極)と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域(ボディ領域)の、前記各々の第1導電型の第2半導体領域(エミッタ領域)と前記第1導電型の第1半導体層(ドリフト層)とに挟まれた部分の表面に、絶縁膜を介して設けられた制御電極と、
前記第2導電型の第1半導体層(コレクタ層)と前記複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)との裏面に接する第2の主電極(コレクタ電極)とを備えた構成を有する活性領域を含む逆導通IGBT半導体装置において、
各半導体層と各半導体領域がワイドギャップ半導体から形成されており
前記ワイドギャップ半導体逆導通IGBT半導体装置の前記複数の第1導電型の第1半導体領域間の距離をWp(WB)、pn接合のビルトイン電圧をVbi(WB)、特性オン抵抗をRonS(WB)、前記第1導電型の第2半導体層の抵抗率をρb(WB)とし、
前記ワイドギャップ半導体逆導通IGBT半導体装置と、同耐圧で且つ断面形状は同じであり更に前記第1導電型の第1半導体領域の不純物濃度と幅も同じであるが同耐圧を実現するためにSi材料特有の物性を考慮して必要な各半導体層や各半導体領域の不純物濃度や厚さおよび幅を採用しているSi逆導通IGBT構造の半導体装置において、前記複数の第1導電型の第1半導体領域間の距離をWp(Si)、pn接合のビルトイン電圧をVbi(Si)、特性オン抵抗をRonS(Si)、第1導電型の第2半導体層の抵抗率をρb(Si)とし、
前記第1導電型の第1半導体領域間の距離Wp(WB)に対応する距離Wp(Si)を、前記Vbi(Si)の4倍の値をスナップバック電流密度Jsb(Si)と前記抵抗率ρb(Si)の積で割算した値とし、
前記Wp(WB)を、前記Wp(Si)を上限とし、
前記Vbi(WB)と前記RonS(WB)との積を、前記Vbi(Si)と前記RonS(Si)との積で割算した値に前記Wp(Si)を乗じた値を下限とする範囲より選択したことを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、
前記複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)間の距離Wp(WB)のうち、少なくとも一つの距離Wp(WB) を前記範囲の上限以下で下限よりも十分大きな値とし、それ以外のWp(WB)を前記範囲の下限に近い値としたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、
セル内に1個以上の前記第1導電型の第1半導体領域(短絡部)を有し、その幅Wn(WB)と前記第1導電型の第1半導体領域(短絡部)間の距離Wp(WB)との比率Wn(WB)/Wp(WB)を0.3〜5.0にしたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる半導体装置の動作方法は、
ワイドギャップ半導体で形成された逆導通IGBT半導体装置であり、ドリフト層とバッファー層を有する逆導通IGBT半導体装置、もしくはドリフト層をより厚くしバッファー層は設けていない逆導通IGBT半導体装置において、
コレクタ電極とエミッタ電極間に順方向電圧を印加し且つゲート電極とエミッタ電極間にも低いゲート電圧を印加して順方向バイアス状態にして、エミッタ領域とコレクタ短絡部を介して多数キャリアのみによる順方向電流を流し、この電流による自己発熱により前記逆導通IGBT半導体装置を積層欠陥の少数キャリアトラップ現象を抑制できる所定の温度に昇温させた後に、コレクタ領域からドリフト層に少数キャリアが注入されるように、前記ゲート電圧をより高い電圧に制御して逆導通IGBT半導体装置をバイポーラ動作させることを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体装置の動作方法は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型の第1半導体層の裏面に設けられた第1導電型の第2半導体層と、前記第1導電型の第2半導体層の裏面に設けられた第2導電型の第1半導体層を備え、更に前記第2導電型の第1半導体層を貫通する複数の第1導電型の第1半導体領域とを備え、
前記第1導電型の第1半導体層のおもて面には、選択的に設けられた複数の第2導電型の第1半導体領域と、
前記第2導電型の第1半導体領域の各々のおもて面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域と前記第1導電型の第2半導体領域とに接する第1の主電極と、
前記各々の第2導電型の第1半導体領域の、前記各々の第1導電型の第2半導体領域と前記第1導電型の第1半導体層とに挟まれた部分の表面に、絶縁膜を介して設けられた制御電極と、
前記第2導電型の第1半導体層と前記複数の第1導電型の第1半導体領域との裏面に接する第2の主電極とを備えた活性領域を含む半導体装置であり、各半導体層と各半導体領域がワイドギャップ半導体から構成されている逆導通IGBT半導体装置において、
前記第1の主電極と前記第2の主電極間に順方向電圧を印加し且つ前記制御電極と前記第1の主電極間にも低い電圧を印加して順方向バイアス状態にし、前記第1導電型の第2半導体領域と前記第1導電型の第1半導体領域を介して多数キャリアのみによる順方向電流を流し、この電流による自己発熱により前記逆導通IGBT半導体装置を積層欠陥の少数キャリアトラップ現象を抑制できる40℃以上の温度に昇温させた後に、前記第2導電型の第1半導体層から前記第1導電型の第1半導体層に少数キャリアが注入されるように前記制御電極と前記第1の主電極間の電圧をより高い電圧に制御して逆導通IGBT半導体装置をバイポーラ動作させることを特徴とする。



【0017】
この発明によれば、各半導体層と各半導体領域をワイドギャップ半導体で構成し、前記短絡部間の距離Wp(WB)を(1)式に示すように、その上限をSi半導体で構成した同耐圧で同一構成の半導体装置の短絡部間距離Wp(Si)とし、その下限を新しく発見した下限、すなわちAxWp(Si)とするようにし、これらの上限と下限の間の値になるように設定する。
Wp(Si) > Wp(WB) ≧ A Wp(Si) (1)
.
【0018】
ここで新しく発見した係数Aは(2)式に示すが、前記ワイドギャップ半導体のpn接合のビルトイン電圧Vbi(WB)とワイドギャップ半導体装置の特性オン抵抗RonS(WB)との積を、前記Si半導体装置のpn接合のビルトイン電圧とSi半導体装置の特性オン抵抗との積で割算したものである。
(2)

.
この係数Aは1よりも大幅に小さい値である。
【0019】
なお、ここで「Si半導体で構成した同耐圧で同一構成の半導体装置」とは、「ワイドギャップ半導体逆導通IGBTと断面形状は同じであり且つn短絡部の不純物濃度と幅も同じであるが、同耐圧を実現するためにSi材料特有の物性を考慮して、必要な各半導体層や各半導体領域の不純物濃度や厚さおよび幅を採用しているSi逆導通IGBT構造の半導体装置」を意味する。
【0020】
このように逆導通ワイドギャップ半導体IGBTの短絡部間の距離Wp(WB)を設定することにより、引例と同耐圧で同一構成のSi逆導通IGBTに比べてWpを小さくしているにもかかわらずスナップバック現象を抑制でき、且つ高速化とスイッチング損失の大幅低減による高性能化も達成でき、第1の課題を解決できるものである。
【0021】
以下に、その理由を新しく発見した係数Aの導出とあわせて、図1を参照しながら説明する。
図1はn型Si逆導通IGBTの断面図の一部を示す。以下のように構成されている。
逆導通IGBTのコレクタ電極1に接する裏面には、pコレクタ領域2とn+短絡部3とが交互に設けられ、これらの領域2と3のおもて面には、n(第2導電型)バッファー層4が設けられている。nバッファー層4の表面には、nドリフト層(第1半導体層)5が、またその表面には、n型半導体層(電流密度増大層:CEL、第2半導体層)6を設けている。nCEL6の表面層には、pボディ領域(第1半導体領域)7が選択的に複数設けられ、その表面層には、nエミッタ領域(第2半導体領域)8およびp低濃度チャネル領域9やp+コンタク領域10が選択的に設けられている。p低濃度チャネル領域9の表面には、ゲート絶縁膜11を介してゲート電極(制御電極)12が設けられている。エミッタ電極(入力電極)13は、nエミッタ領域8に接するとともにpコンタクト層10を介してpボディ領域7にも接する。また、エミッタ電極13はゲート電極12から絶縁されている。
【0022】
まず、この逆導通IGBTを用いてスナップバック現象の発生メカニズムを説明する。
逆導通Si−IGBTのMOSゲート電極12にしきい値以上のゲート電圧を印加しコレクタ電極1とエミッタ電極13の間の順方向電圧Vceを印加し上昇してゆくと、まずMOSFET部が動作し、エミッタ電極13からnエミッタ領域8、p低濃度チャネル領域9、nCEL層6、nドリフト層5、nバッファー層4、n短絡部3を順次介してコレクタ電極に電子電流が流れる。図中にはこの電子電流の流路を図式的にa、b、cの点線で示してある。この電流の一部cはコレクタ接合上のバッファー層4を横方向に流れn短絡部3を介してコレクタ電極1に流れるが、この横方向の電子電流によりpコレクタ接合中央部14とコレクタ電極1の間に電位差を生じ、この電位差がコレクタ接合のビルトイン電圧Vbi(Siの場合は約0.7V)を超えるとpコレクタ2からnバッファー層4ついでnドリフト層5に正孔の注入が生じ実線の矢印で示した正孔電流dが流れ、IGBT部がオンする。この際、pコレクタ層2の幅が小さい場合は横方向抵抗が小さいので、横方向電流による電位差をビルトイン電圧Vbi以上にするためには大きな電流が必要となり、この結果nドリフト層での電圧降下とMOSFET部での電圧降下が大きくなりVsbが大きくなってしまう。しかし、一旦IGBT部がオンするとpコレクタ2から注入された正孔によりnドリフト層5に伝導度変調が生じnドリフト層の内部抵抗が激減するので、オン後のVceは大幅に低くなる。このためスナップバック現象が生じてしまうのである。
【0023】
次に新しく発見した係数Aをどのようにして導き出したのか説明する。
まず、上記のスナップバック現象の発生のメカニズムの考察から、Si逆導通IGBTのコレクタから正孔の注入が生じる時のVbi(Si)は下式2項目のように表せ、3項目のように変換できる。


.
ここで、Rb(Si)とρb(Si)は各々Si逆導通IGBTのバッファー層の抵抗と抵抗率を、Jsb(Si)はスナップバック電流密度を示す。
これよりWp(Si)は近似的に(3)式で示すことができる。

(3)

.
同様に、同じ構成のワイドギャップ半導体逆導通IGBTにおいてコレクタからの正孔の注入が生じる条件は
(4)

.
ここで、ρb(WB)はワイドギャップ半導体逆導通IGBTのバッファー層の抵抗率を、Jsb(WB)はスナップバック電流密度を示す。
【0024】
ところで、高耐圧IGBTで定状オン損失とターンオフ損失をバランスよく低減し適正化するには、コレクタからの正孔の適正な注入を行う必要がある。この適正な正孔注入を行うためのnバッファー層4のρbは半導体材料にあまり依存しないでほぼ一義的に定めることができるので、ほぼ ρb(Si)=ρb(WB) となる。従って、(3)と(4)式から(5)式を導くことができる。
(5)

.
【0025】
ところで、高耐圧IGBTの場合はオンする前はドレイン層が伝導度変調されていないので、MOSFET部のチャネル抵抗での電圧ドロップVchやコレクタのビイルトイン電圧Vbiに比べてドレイン層の電圧ドロップVdriftがはるかに大きい。従って、

.
逆導通IGBTのオン直前のVceがVsbであり、IceがIsbであるので、
(6)


(5)式に(6)式より求めたJsbを代入すると、

.
従って、同耐圧のワイドギャップ半導体逆導通IGBTとSi逆導通IGBTとでVsbを同じにするための短絡部間距離Wp(WB)とWp(Si)との間の関係は、Vsb(WB)=Vsb(Si)とすることにより(7)式となる。
(7)


.
このようにして、(2)式の係数Aを導くことができる。
【0026】
次にWp(WB)を(1)式に示すように設定することにより第1の課題を解決できる理由を説明する。
(7)式より、Si逆導通IGBTに比べてワイドギャップ半導体逆導通IGBTは短絡部間距離Wp(WB)を大幅に低減できることが判る。例えば、ワイドギャップ半導体の一種である炭化ケイ素(以下、SiCと記す)半導体で構成したSiC逆導通IGBTの場合は、RonS(SiC)がRonS(Si)の約1/1000、Vbi(SiC)がVbi(Si)の約4倍なので、(7)式よりWp(SiC)がWp(Si)の約1/250となる。従って、Wp(SiC)をWp(Si)の約1/250まで大幅に低減しても、ほぼ同じVsbにできる。典型的な高耐圧Si逆導通IGBTのケースについて試算してみると、Wp(Si)は(3)式から175μmと算出でき、従ってSiC逆導通IGBTのVsbを同耐圧のSi逆導通IGBTよりも抑制できる範囲は(1)式から、次のようになる。
175μm>Wp(SiC)>0.7μm
この結果、同耐圧で同じチップサイズの場合、SiC逆導通IGBTのVsbをSi逆導通IGBTのVsbと同じにする時、Wp(SiC)を175μmまで大幅に増大できる余地が生じることになる。従って、Wp(SiC)をWp(Si)以上にならない範囲で大幅に増大してIsbを小さくすることによりVsbを大幅に小さくできる。これはスナップバック現象を大幅に抑制できることを意味するものである。
【0027】
また、同耐圧で同じチップサイズの場合、Wp(WB)を上記の範囲内でWp(Si)よりも小さく設定することにより上記のようにスナップバック現象を抑制する一方、その小さくした分の一部で短絡領域のみの面積を増やしたり、セル数を増やしたりすることができ、いづれの場合もn短絡部のトータル面積を大幅に増加できる。この結果、逆導通IGBTのターンオフ時の残存キャリアの排除機能を大幅に増大できるので、ターンオフ時間を低減させ逆導通IGBTを高速化することができるとともにスイッチング損失も低減でき、ワイドギャップ半導体逆導通IGBTをより高性能化できる。
【0028】
このように、スナップバック現象を大幅に抑制でき且つ逆導通IGBTをより高性能化できるので、第1の課題を解決できる。
なお当然ながら、ワイドギャップ半導体で構成していることに起因して同耐圧のままで損失を低減できるという公知の効果も享受できるものである。
【0029】
またこの発明によれば、上記構成により、前記複数の第1導電型の第1半導体領域(短絡部)間の距離Wpのうち、少なくとも一つの距離Wpを上限に近い値、すなわち前記範囲の上限以下で下限の数倍以上のかなり大きな値とし、それ以外のWpを前記範囲の下限に近い値としている。この短絡部間距離が上限に近い部分はパイロットIGBT部として十分機能させることができる。従って、Si逆導通IGBTに比べてワイドギャップ半導体逆導通IGBTはパイロットIGBT部の専有面積をはるかに小さく抑えることできる。このため、同耐圧で同じチップサイズの場合、パイロットIGBT部以外の逆導通IGBT領域の面積を増やすことができ、その結果パイロットIGBT部を導入してスナップバック現象を抑制したにもかかわらず、ターンオフ時に残存するキャリアを排除するという逆導通IGBT本来の機能の低下を防止でき、逆に増大も可能であり第2の課題を解決できる。これは歩留まりなどの経済性の点からワイドギャップ半導体素子のチップサイズが10mmx10mm以下、一般的には5mmx5mm程度以下に制約されている現状では、逆導通IGBTの本来の機能を発揮させる上で極めて効果が大きいものである。
【0030】
当然ながら、同構造のSi逆導通IGBTのパイロットIGBT部のWpを超えない範囲内で、本発明になる逆導通IGBTのパイロットIGBT部のWpを大きくした場合は更にスナップバック現象を抑制できる。
【0031】
また、この発明によれば、第1導電型の第1半導体領域(短絡部)の幅Wnと前記第1導電型の第1半導体領域(短絡部)間の距離Wpの比率を特定の範囲に限定にしており、これによりスナップバック現象が直接的な原因となって生じる半導体本体の劣化を抑制し、高性能逆導通IGBTの高い信頼性を実現でき、第3の課題を達成できる。
【0032】
一般に、ワイドギャップ半導体材料にはSiよりも各種の欠陥が多量に発生する。それらの欠陥のうちの積層欠陥は、注入された少数キャリアが結晶の格子点に衝突すると衝突エネルギーで格子点の原子が動かされるので積層欠陥が拡大してしまうというワイドギャップ半導体特有の性質がある。この積層欠陥は少数キャリアをトラップして再結合させ通電にあまり寄与することなく消滅させてしまうので、積層欠陥の拡大はIGBT半導体装置の内部抵抗の増大を招く。従って、IGBTのようなバイポーラタイプのワイドギャップ半導体装置の場合は、装置を稼働し通電している間に注入される少数キャリアにより積層欠陥が拡大し内部抵抗が増大してゆくので、オン電圧増大すなわちオン電圧劣化をもたらし信頼性が大きく損ねられてしまう。しかし、このワイドギャップ半導体の積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまうという現象は、温度を約40℃以上に上げると徐々に抑制され、200℃以上ではほぼ完全に消失することが発明者らにより見出されており、Silicon Carbide and Related Materials 2007の論文集(K.Nakayama他7名、Behavior of Stacking Faults in TEDREC Phenomena for4.5kV SiCGT、Silicon Carbide and Related Materials 2007、2007年10月、p.1175−1178)に開示されている。
以下では、この種のオン電圧増大を、オン電流増大に伴うオン電圧の増大と区別するためにオン電圧劣化と記述する。
【0033】
ワイドギャップ半導体逆導通IGBTにスナップバック現象が存在すると、オンする直前のVsbではコレクタから少数キャリアの注入を生じるのに必要な電圧降下すなわちVbiを実現するために比較的大きなIsbを流す必要がある。オンする直前のVsbまではもっぱら多数キャリアによるIsbが流れており積層欠陥を拡大しないが、一旦オンするとこのIsbに対応する多量の少数キャリア電流がコレクタから一挙にバッファー層やドリフト層に流れ込む。これによりワイドギャップ半導体逆導通IGBTに存在する積層欠陥が一挙に拡大してしまい、オン電圧劣化の急速な進展を招き、半導体本体が劣化し、ついには損傷や破壊に至ってしまう。このスナップバック現象が存在するワイドギャップ半導体逆導通IGBTがオンする際のオン電圧の急速な劣化を、以後急速オン電圧劣化と記載する。
【0034】
しかし、この発明によれば、n短絡部の幅Wnを増大しn短絡部のトータル面積を増大することにより、上記のスナップバック現象が直接的な原因となって生じる半導体本体が劣化するという急速オン電圧劣化を抑制でき高い信頼性を実現できる。
すなわち、スナップバック現象が存在する逆導通IGBTがオンする前にn短絡部を介してIsbが流れるが、この電流は多数キャり電流であり積層欠陥の拡大を招かない。そこで、n短絡部の幅Wnを増大しn短絡部の面積を増大することにより積極的に多数キャりアで構成されるIsbの増大を図り、これにより逆導通IGBTの素子温度を、積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまう現象が抑制される温度まで、逆導通IGBTがオンする前に上昇させ、オン時点での急速オン電圧劣化を抑制することができる。
【0035】
同耐圧で同じチップサイズの場合、セルの第1導電型の第1半導体領域(n短絡部)の幅Wnの増大によるn短絡部のトータル面積を増大は、セルの前記第1導電型の第1半導体領域(n短絡部)間の距離Wpの減小ひいてはコレクタ面積の減少を招く。これは前者の場合はスナップバック現象の増大を招き後者の場合はオン後のオン電圧の増大即ち電力損失の増大を招く。すなわち、セルの幅を一定にした場合、Wn/Wpの比率が小さいとオン電圧劣化を抑制できるレベルまでの温度上昇が容易でなく、大きすぎるとスナップバック現象の増大やオン電圧の増大による電力損失の増大を招く。従って、Wn/Wpの比率を適正な範囲に設定する必要がある。一方、高耐圧素子ほどドリフト領域の不純物濃度は低く且つその厚さは厚く設定されるので、ドリフト領域の内部抵抗が大きく素子温度をより少ないIsbで上昇できる。従って、Wn/Wpの適正範囲は耐圧によっても異なる。発明者は種々の検討の結果、3kV以上の高耐圧逆導通IGBTにおいては、Wn/Wpの適正範囲はSiC半導体の場合、0.2〜5.0の範囲にするのが良く、より好ましくは0.3〜3.0の範囲にするのが良いことを見出した。
これにより第3の課題を解決し、高性能逆導通IGBTの高い信頼性を実現できる。
【0036】
また、この発明の動作方法によれば、ワイドギャップ半導体逆導通IGBTの急速オン電圧劣化に加えて初動時のオン電圧劣化も抑制でき高い信頼性を実現できる。
【0037】
ワイドギャップ半導体逆導通IGBTには上記のように積層欠陥に起因し通常のオン電圧劣化が発生するとともに、スナップバック現象に起因し急速オン電圧劣化が発生する。
従って、この発明の動作方法により、少なくともワイドギャップ半導体逆導通IGBTがオンする前に所定の低いゲート電圧でMOSFET部をオンさせて前記短絡部を介して多数キャリアによる順方向電流を流し、この積層欠陥の増大を招かない多数キャリア電流により半導体装置を所定温度まで昇温させ、その後にゲート電圧を高くしてコレクタ層から少数キャリアを注入させ、逆導通IGBTをオンさせる。
これにより、すでに存在する積層欠陥の拡大のみならず、スナップバック現象によりコレクタ層からバッファー層やドリフト層に大量の少数キャリアが短時間に急激に注入されることによる積層欠陥の急速拡大も、温度上昇により積層欠陥の少数キャリアトラップ現象を抑制できるので通常のオン電圧劣化のみならず急速オン電圧劣化も抑制できる。
ワイドギャップ半導体逆導通IGBTは一旦オンすると自己発熱で温度が上昇してゆくので、通常のオン電圧劣化や急速オン電圧劣化の影響は抑制される。しかし、初動時にはワイドギャップ半導体逆導通IGBTの温度は周囲温度と同程度に低くなっている。この状態でオンさせると既に存在する積層欠陥が更に拡大しオン電圧劣化を促進し信頼性が損なわれる。
従って、少なくともワイドギャップ半導体逆導通IGBTの初動時には、この発明の動作方法により、逆導通IGBTをオンさせる前に積層欠陥の少数キャリアトラップ現象を抑制できる所定温度まで昇温させものである。これにより、初動時にもオン電圧の劣化の影響を大幅に抑制でき信頼性を向上できる。
【0038】
逆導通IGBTの積層欠陥の量や大きさに依存して適切な昇温温度が異なるが、少なくとも初動時には40℃以上に昇温するのが好ましく、より好ましくは50℃以上である。
また、動作開始後に40℃以上を維持できない場合でも、動作開始後の各オン時に本発明の動作方法を適用すると初動時と同様に甚大なオン電圧劣化の悪影響を抑制できる。
このように、この動作方法により第3の課題をより効果的に解決し、高性能逆導通IGBTの高い信頼性を実現できる。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、 本発明により、逆導通IGBTの短絡部の面積をあまり狭めることなくスナップバック現象を抑制でき、ターンオフ時の残存キャリアの排除もより効果的にできる。この結果、スナップバック現象に起因する回路動作の擾乱や破壊を低減できるとともに、ターンオフ時間をより短くしてスイッチング損失をより低減できる。また、より小さいチップ面積にしてもスナップバック現象を抑制ができるので低コスト化が図れる。また、オン電圧劣化の影響を抑制し信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】発見した係数Aの導出法説明図
図2】実施の形態1にかかる半導体装置の模式的断面図
図3】実施の形態2にかかる半導体装置の模式的断面図
図4】実施の形態3にかかる半導体装置の模式的断面図
図5】実施の形態4にかかる半導体装置の模式的断面図
図6】実施の形態5にかかる半導体装置の模式的断面図
図7】従来例1の高耐圧Si逆導通IGBT装置の断面図。
図8】従来例2の高耐圧Si逆導通IGBT装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nまたはpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。図面中の層や領域を示す番号と矢印は同じ層や領域の場合、各々代表して1個のみに記し他は省略してある。
【0042】
(実施の形態1)
図2は、実施の形態1にかかる半導体装置を模式的に示す断面図である。図2に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、炭化珪素(SiC)半導体を用いて作製された例えば設計耐圧15kV級のプレーナゲート構造の逆導通IGBT100である。図2には、逆導通IGBT100の活性領域の一部のみを示す。SiC逆導通IGBT100は、例えば活性領域を囲むように耐圧構造部(不図示)を備えている。活性領域とは、半導体装置のオン時に電流が流れる領域であり、耐圧構造部とは、半導体装置を構成するpn接合表面の電界強度を緩和し、所望の耐圧を実現する構造部である。
SiC逆導通IGBT100のチップサイズは8mmx8mmであり、活性領域は6mmx6mmであり、活性領域を囲んでいる耐圧構造部の幅は1mmである。活性領域中の逆導通IGBTセルはストライブ状であり、セルの幅は16ミクロンメートルである。
【0043】
図2に示すように、SiC逆導通IGBT100において、コレクタ電極101に接する裏面にはpコレクタ層とこの層を貫通する複数のn短絡部が設けられ、pコレクタ領域102とn短絡部領域103とが交互に形成されている。これらの領域102と103のおもて面には、n(第2導電型)バッファー層104が設けられている。nバッファー層104は、SiCエピタキシャル層である。pコレクタ領域102の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ3.5×1017cm−3および1.5μmであってもよい。n+短絡部103の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ1×1019cm−3および1.5μmであってもよい。また、nバッファー層104の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ1.5×1016cm−3および10μmであってもよい。セルの中のn+短絡部103はセルの中心付近に設けられてもよく、その幅は4μmであってもよい。n+短絡部間の距離、これはpコレクタ領域の幅に該当するが、この幅は12μmであってもよい。
【0044】
nバッファ層104の表面には、nドリフト層(第1半導体層)105が設けられている。nドリフト層105は、SiCエピタキシャル層である。nドリフト層105の不純物濃度は、nバッファー層102の不純物濃度よりも低い。具体的には、nドリフト層105の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ2×1014cm−3および150μmであってもよい。概略的にこの程度の不純物濃度の場合、nドリフト層105の厚さ10μm当たり例えば耐圧1kVは容易に実現することができる。このため、nドリフト層105の厚さを150μmとすることで、耐圧15kVが期待できる
【0045】
ドリフト層105の表面には、n型半導体層106を設けている。この層106はpコレクタ領域102から注入された正孔をnドリフト層105表面付近に蓄積させIGBTのオン電圧を低減させる効果を持つ層であり、以下ではn電荷蓄積層と記述する。このn電荷蓄積層は例えば窒素(N)を不純物としてエピタキシャル成長させたSiCエピタキシャル層であるが、窒素イオンをイオン注入することによって形成された半導体層であってもよい。また、n電荷蓄積層106は、活性領域のみに設けられていてもよく、例えば活性領域のnドリフト層105にイオン注入によって形成した半導体層であってもよい。
【0046】
n電荷蓄積層の不純物濃度は、nドリフト層105の不純物濃度よりも高く、後述するpボディ領域(pベース領域)107の不純物濃度よりも低い。但し、n電荷蓄積層106は、逆導通IGBT100の耐圧よりも小さい印加電圧で空乏化する不純物濃度および厚さを有することが肝要である。具体的には、n電荷蓄積層106の不純物濃度は、3×1015cm−3以上5×1017cm−3以下であってもよい。またn電荷蓄積層106のnドリフト層105とpボディ領域(pベース領域)間の厚さは、例えば0.3μm以上1.6μm以下であってもよい。
【0047】
n電荷蓄積層106の表面層には、pボディ領域(第1半導体領域)107が選択的に複数設けられている。pボディ領域107の不純物濃度は、nドリフト層105、n電荷蓄積層106の不純物濃度よりも高い。具体的には、pボディ領域107の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ1×1018cm−3および0.3μmであってもよい。隣り合うpボディ領域107に挟まれたn電荷蓄積層106の、pボディ領域107が並列する方向(以下、水平方向とする)の幅は、例えば6 μmであってもよい。
【0048】
pボディ領域107は、例えばアルミニュームのイオン注入によって形成された拡散層である。 本実施例ではn電荷蓄積層106の不純物濃度を5×1016cm−3、厚さを0.7μmとした。
【0049】
なお、SiC半導体は深さ方向に直行する方向の不純物拡散がシリコン半導体に比べて少ないので、図2において半導体層を矩形状に図示する(以下、図3〜5に示す逆導通IGBTにおいても同様に、半導体層を矩形状に図示する)。
【0050】
pボディ領域107の表面層には、nエミッタ領域(第2半導体領域)108およびp低濃度チャネル領域109やp+コンタク領域110が選択的に設けられている。nエミッタ領域108およびp低濃度チャネル領域109やp+コンタク領域110は、例えばイオン注入によって形成された半導体層である。p低濃度チャネル領域109は、pボディ領域108の一方の端部に設けられn電荷蓄積層106に接する。nエミッタ領域8は、p低濃度チャネル領域109のn電荷蓄積層106に接する端部に対して反対側の端部に接する。
【0051】
エミッタ領域108の、p低濃度チャネル領域109に接していない側の端部は、p+コンタク領域110に接している。各pボディ領域107に設けられたp低濃度チャネル領域109およびnエミッタ領域108は、隣り合う他のpボディ領域107のp低濃度チャネル領域109およびnエミッタ領域108と対称に配置されている。
【0052】
低濃度チャネル領域109の不純物濃度は、pボディ領域107の不純物濃度よりも低い。具体的には、p低濃度チャネル領域109の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ3×1016cm−3および0.3μmであってもよい。またチャネルの長さは0.75μmであってもよい。
エミッタ領域108の不純物濃度は、nドリフト層105、n電荷蓄積層106の不純物濃度よりも高い。具体的には、nエミッタ領域8の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ5×1019cm−3および0.3μmであってもよい。p+コンタク領域10の不純物濃度および厚さは、例えば1×1019cm−3および0.3μmであってもよい。
【0053】
低濃度チャネル領域109およびnエミッタ領域110は、pボディ領域108の表面層にそれぞれイオン注入によって形成される。p低濃度チャネル領域109およびnエミッタ領域108はpボディ領域107の表面層に例えば0.3μmの深さで設けられるので、pボディ領域107の、n電荷蓄積層106とp低濃度チャネル領域109およびnエミッタ領域108とに挟まれた部分の厚さは例えば0.3μmとなる。
【0054】
低濃度チャネル領域109の水平方向の幅は、例えば0.75μmであってもよい。nエミッタ領域108の水平方向の幅は、例えば3μmであってもよい。
【0055】
低濃度チャネル領域109の表面には、ゲート絶縁膜111を介してゲート電極(制御電極)112が設けられている。ゲート絶縁膜111の厚さは約500オングストロームであってもよい。エミッタ電極(入力電極)113は、nエミッタ領域108に接するとともにpコンタクト層110を介してpボディ領域107にも接する。また、エミッタ電極113はゲート電極112から絶縁されている。
【0056】
つぎに、図2に示すSiC逆導通IGBT100の製造方法について説明する。
まず、300μm厚のオフアングルnSiC基板に厚さ170μmのnドリフト層105を、ついで11.5μm厚のnバッファー層104をエピタキシャル成長で順次形成する。更に1.5μm厚のpコレクタ層をアルミニュームのイオン注入により形成し、ついで選択的に窒素のイオン注入により1.5μm厚のn短絡部領域103とpコレクタ領域102を形成する。以下では本明細書全体に渡って、n短絡部領域およびpコレクタ領域を単にn短絡部およびpコレクタと記述する。
その後、nSiC基板の研磨時にpコレクタ102と短絡部103を保護する保護用被覆膜をpコレクタ102上と短絡部103上に形成する。次に研磨によりnSiC基板を完全に除去し、nドリフト層105も約20μm研磨し150μmの厚さにする。
【0057】
つぎに、例えば窒素を不純物としてドープしてエピタキシャル成長を行い、nドリフト層105の表面にnCEL106を成長させる。nCEL106は、少なくとも活性領域にのみ設けられていればよいので、例えばイオン注入によって、活性領域のnドリフト層105の表面層のみにnCELを形成してもよい。
【0058】
イオン注入によってnCEL106を形成する場合、まず、nドリフト層105の表面に、nCEL106の形成領域が露出する開口部を有するレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクをマスクとして、レジストマスクの開口部に露出するnドリフト層105に例えば窒素イオンをイオン注入する。さらに、熱アニール処理を行う。これにより、活性領域全体にわたってnドリフト層105の表面層にn電荷蓄積層106が形成される。その後、n電荷蓄積層106の形成に用いたレジストマスクを除去する。
n電荷蓄積層106をエピタキシャル成長で形成する場合は、例えば窒素を不純物としてドープしてエピタキシャル成長をさせる。
【0059】
つぎに、n電荷蓄積層106の表面に、pボディ領域107の形成領域が露出する開口部を有するレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクをマスクとして、レジストマスクの開口部に露出するn電荷蓄積層106にp型不純物イオンをイオン注入する。このとき、後の工程においてpボディ領域107の表面層にpボディ領域107よりも不純物濃度が低いp低濃度チャネル領域109を形成するために、pボディ領域107の、浅い部分の不純物濃度が深い部分の不純物濃度よりも低くなるようにイオン注入を行うのが好ましい。
【0060】
つぎに、熱アニール処理を行う。これにより、n電荷蓄積層106の表面層に選択的にpボディ領域107が形成される。つぎに、pボディ領域107の形成に用いたレジストマスクを除去する。つぎに、pボディ領域107の表面にpコンタクト層形成領域110が露出する開口部を有するレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクをマスクとして、レジストマスクの開口部に露出するpボディ領域107にp型不純物イオンをイオン注入する。
更に、p低濃度チャネル領域109の形成領域が露出する開口部を有するレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクをマスクとして、レジストマスクの開口部に露出するpボディ領域107に不純物イオンをイオン注入する。
【0061】
低濃度チャネル領域109を形成するためのイオン注入では、pボディ領域107の表面層の不純物濃度がp低濃度チャネル領域109の所望の不純物濃度よりも低い場合には、p低濃度チャネル領域109が所望の不純物濃度となるようにp型不純物濃度をイオン注入する。一方、pボディ領域107の表面層の不純物濃度がp低濃度チャネル領域109の所望の不純物濃度よりも高い場合には、p低濃度チャネル領域109が所望の不純物濃度となるようにn型不純物濃度をイオン注入する。
【0062】
つぎに、熱アニール処理を行う。pボディ領域107の表面層に選択的にp低濃度チャネル領域109が形成される。つぎに、p低濃度チャネル領域109の形成に用いたレジストマスクを除去する。つぎに、p低濃度チャネル領域109の表面に、nエミッタ領域8の形成領域が露出する開口部を有するレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクをマスクとして、レジストマスクの開口部に露出するpボディ領域107にn型不純物イオンをイオン注入する。
【0063】
つぎに、熱アニール処理を行う。これにより、pボディ領域107の表面層に選択的にnエミッタ領域108が形成される。つぎに、nエミッタ領域108の形成に用いたレジストマスクを除去する。つぎに、p低濃度チャネル領域109の表面に、ゲート絶縁膜111を介して多結晶シリコンのゲート電極112を形成する。つぎに、おもて面に層間絶縁膜113を形成し、層間絶縁膜113でゲート電極112を覆う。
【0064】
つぎに、フォトリソグラフィによって層間絶縁膜113およびゲート絶縁膜111を選択的に除去し、nエミッタ領域108およびpコンタクト層形成領域110とエミッタ電極114とを接続するためのコンタクトホールを形成する。つぎに、おもて面およびコンタクトホール内にエミッタ電極114を形成し、エミッタ電極114と、nエミッタ領域108およびpコンタクト領域110とを接続する。つぎに、半導体基板のおもて面に保護膜(不図示)などを形成する。その後、半導体基板の裏面に、pコレクタ102とn短絡部103に接するコレクタ電極111を形成し、図1に示す逆導通IGBT100が完成する。
【0065】
次に、前記の製造方法で作製するIGBT100の特性について説明する。
前記のIGBT100はTO型の高耐圧パッケージのリードフレームにダイボンデングし、更にエミッタ電極114上に結線用のAlワイヤを複数本ワイヤボンデングし、ついで保護用の高耐熱レジン(ナノテクレジン)でチップとAlワイヤを完全に被覆して半導体装置にしたのち動作試験に供する。
ゲート電圧を印加しない状態でエミッタ電極114とコレクタ電極101間に順方向電圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は約16.4kである。また、なだれ降伏前のリーク電流は室温で3.5×10−3A/cm以下、250℃の高温でも5×10−2A/cm以下と良好である。
【0066】
ゲート電極112に閾値電圧以上のゲート電圧を印加し、ついでコレクタ電極−エミッタ電極間に順方向電圧を印加し増加してゆくと約2.7Vのビルトイン電圧付近でオン電流が流れ始め、スナップバック現象は観察されない。これは本発明の効果である。コレクタ−エミッタ間電圧(以下Vce)が5VでのJceは105A/cmと良好である。
【0067】
(7)式より導出したSiC逆導通IGBTのWp(SiC)の下限値はWp(Si)の約1/250である。n短絡部間距離Wpはpコレクタの幅そのものであり、本実施例では前記のように例えば12μmであってもよい。従って、同耐圧・同構成でのスナップバック現象を解消できるSi逆導通IGBTの場合は、n短絡部間距離Wp(Si)は3000μmである。ここで同構成とは、前記したように図2と同じ構造であるが、Si材料の物性を考慮して同耐圧を実現するために必要な各半導体層や各半導体領域の不純物濃度や厚さ及び幅等を採用している逆導通IGBT構造を意味する。両者のWnは4μmであり活性領域の面積を同程度の約6mmx6mmにすると、Si逆導通IGBTの場合は2個のpコレクタと3個のn短絡部しか設けることができない。このため、スナップバック現象は解消できても逆導通IGBTの狙いとするターンオフ速度の改善はWnの占有面積があまりにも少ないため微々たるものであろうと推測される。実際には上記のスナップバック現象を解消した15kV級SiC逆導通IGBTと同耐圧・同構成設計の逆導通Si−IGBTはシミュレーション検討ではIGBT動作が達成できていない。そこで、耐圧を6kVに低減した同構成のSi逆導通IGBTを検討したところ、上記の逆導通SiC−IGBTと同じくWn(Si)を4μmおよびWp(Si)を12μmにした場合、Vsbが0.7kV以上でありオン動作を繰り返す過程で破壊する可能性が大である。
【0068】
本実施の形態になる半導体装置の場合は、直流電源電圧6kV、電流密度50A/cm通電時のターンオフ時間を1.1μsに短縮できている。同耐圧で同構成の上記の6kVSi逆導通IGBTの場合はターンオフ時間は6.5μsである。一般に耐圧を高くするとターンオフ時間は更に長くなる傾向にあるので、本実施の形態の効果が明らかである。
すなわち、本実施の形態のSiC逆導通IGBTはn短絡部の幅は同じであるが、n短絡部間距離Wpがはるかに小さいので、その分セル数を増やすことができトータルのn短絡部103の占有面積を増加できるため、逆導通IGBT本来のターンオフ時のキャリアの排除機能を増加できるものである。
【0069】
また、n短絡幅Wnが4μm、n+短絡部間距離Wpが3000μmとSi逆導通IGBTと同じであり、それ以外の構造が本実施例と同じSiC逆導通IGBTのターンオフ時間は4.2μsである。更に、Wpを1μmにしターンオフ時のキャリアの排除機能の大幅増加を図ったSiC逆導通IGBTはターンオフ時間を約0.35μsに短縮できたが、顕著なスナップバック現象が発生した。
【0070】
本実施の形態になるSiC逆導通IGBTを、Jce100A/cmで500時間の通電試験実施後のオン電圧の増大は、ほとんどの素子がSi逆導通IGBTと同等の0.1V以下にとどまり顕著な信頼性への悪影響は見いだされない。
【0071】
一方、n+短絡部間距離Wpを極端に小さくしてスナップバック現象を意図的に発生させたSiC逆導通IGBTの場合は、同様の通電試験で2V以上のオン電圧劣化を示すIGBTが発生する。また、この構造のSiC逆導通IGBTはJce60A/cmでパルス幅500μsとする20時間のオン・オフ繰り返し試験後に、オン電圧の急速オン電圧劣化が観察され7V以上のオン電圧劣化を示すIGBTも発生する。
【0072】
これらのSiC逆導通IGBTは前記の本発明になる動作方法の適用により、IGBT動作時のオン電圧の増大を0.2V以下に抑制でき信頼性への悪影響を解消できるとともに、上記のオン・オフ繰り返し試験でも、急速オン電圧劣化を解消できる。すなわち、まずコレクタ電極とエミッタ電極間に所定のVce電圧を印加し且つゲート電極にIGBT動作が始まらないゲート電圧、例えば5V程度を印加し動作させる。これにより、n短絡部103を介してMOSFET電流を流し、この電流で素子の温度を上昇させる。素子の温度が50℃以上になった時点でゲート電圧を20V程度に昇圧しIGBT動作をさせる。
このような本発明になる動作方法の適用により、オン電圧の増大をもたらした積層欠陥による少数キャリアをトラップし消滅させる現象が大幅に抑制されることによるものである。
【0073】
なお、上記本発明になる動作方法を適用しない場合、すなわち、所定のVce電圧と20Vのゲート電圧を印加してオンさせる動作をSiC逆導通IGBTが周囲温度程度に冷える時間間隔をおいて何回か繰り返す場合は、そのたびにオン電圧の増大が更に進行し、オン時に破壊に至る素子が発生する可能性が増大する。
【0074】
以上に説明したように、実施の形態1にかかる半導体装置によれば、スナップバック現象を大幅に抑制でき且つ更なる高速・低損失化により高性能化できるとともに、オン電圧劣化が抑制でき信頼性も高い逆導通IGBT100を実現できる。また、n短絡部間距離Wpを極端に小さくしてスナップバック現象を意図的に発生させたSiC逆導通IGBTに本発明になる動作方法を適用することにより、オン電圧劣化を抑制でき信頼性も高い逆導通IGBTの動作方法を実現できる。
【0075】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2にかかる半導体装置を模式的に示す断面図である。上記の実施の形態1の半導体装置に比べて、nドリフト層を175μmと厚くしnバッファー層を設けていない点とn電荷蓄積層を設けていない点を除けば、その他は同じ構造である。また、製作プロセスもnドリフト層を195μmと厚くエピタキシャル成長させている点とnバッファー層およびn電荷蓄積層の形成プロセスが削除されている点を除けばほぼ同じである。
【0076】
次に、本実施の形態2にかかるSiC逆導通IGBTの特性を説明する。
ゲート電圧を印加しない状態でエミッタ電極214とコレクタ電極201間に順方向電圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は17.8kV付近である。また、なだれ降伏前のリーク電流は室温で1.5×10−3A/cm以下、250℃の高温でも3×10−2A/cm以下と良好である。
ゲート電極212に閾値電圧以上のゲート電圧を印加し、ついでコレクタ−エミッタ間に順方向電圧を印加すると約2.7Vのビルトイン電圧以上でオン電流が流れ、スナップバック現象は観察されない。コレクタ−エミッタ間電圧(以下Vce)が5VでのJceは約80A/cmと良好である。
【0077】
本実施の形態になる半導体装置の場合は、同耐圧で同構成のスナップバック現象を解消できる上記の短絡部間距離Wpが3000μmのSi逆導通IGBTに比べて、n短絡部幅は4μmと同じであるがn+短絡部間距離Wpが12μmでありはるかに小さい。従って、Wpが短い分セル数を増やすことができトータルのn短絡部203の面積を増加できるため、逆導通IGBT本来のターンオフ時のキャリアの排除機能を増加できる。この結果、直流電源電圧6kV、電流密度50A/cm通電時のターンオフ時間を1.2μsに短縮できている。一方、同構成の6kV耐圧のSi逆導通IGBTは耐圧が低いにもかかわらずターンオフ時間は8.1μsである。また、n短絡幅Wnとn短絡部間距離WpがSi逆導通IGBTと同じであり、それ以外の構造が本実施例と同じSiC逆導通IGBTの場合は、ターンオフ時間は3.9μsである。
【0078】
また、Jce100A/cmでの500時間の通電試験後でも、オン電圧の増大は0.1V以下にとどまりSi逆導通IGBTと同等であり顕著な信頼性への悪影響は見いだされない。一方、n短絡部間距離Wpを極端に小さくしてスナップバック現象を意図的に発生させたSiC逆導通IGBTの場合は、同様の通電試験を実施すると4V以上のオン電圧劣化をしめすIGBTが発生する。
以上に説明したように、実施の形態2にかかる半導体装置によれば、スナップバック現象を大幅に抑制でき且つ更なる高速・低損失化により高性能化できるとともに、オン電圧劣化が抑制でき信頼性も高いSiC逆導通IGBT200を実現できる。
【0079】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3にかかる半導体装置を模式的に示す断面図である。設計耐圧30kVのSiC逆導通IGBTであり、スナップバック現象を抑制するためにパイロットIGBT領域を設けており、図4には、その1/2と逆導通IGBT1セル分とが示されている。
【0080】
SiC逆導通IGBTセルの中のn短絡部303はpボディ307に対向してその中心付近に設けられてもよく、その幅は4μmであってもよい。n短絡部間の距離、これはpコレクタの幅に該当するが、この幅は12μmであってもよい。一方、パイロットIGBT領域のpコレクタの幅は108μmであってもよい。
本SiC逆導通IGBT300は上記のパイロットIGBT領域を設けた点と、nドリフト層305とpコレクタ層302およびnバッファー層304の濃度と厚さが異なる点を除けば、その他の構造は実施の形態1とほぼ同じである。
【0081】
本実施の形態におけるnドリフト層305は不純物濃度が9×1013cm−3、厚さが300μmであってもよい。また、pコレクタ302の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ6×1017cm−3および1.5μmであってもよい。nバッファ層304の不純物濃度および厚さは、例えば、それぞれ3.0×1016cm−3および17μmであってもよい。
【0082】
本SiC逆導通IGBT300の製造プロセスは以下の点を除けば実施の形態1とほぼ同じである。
300μm厚のオフアングルnSiC基板に厚さ320μmのnドリフト層305を、ついで17μm厚のnバッファー層304をエピタキシャル成長で順次形成する。更に1.5μm厚のpコレクタ層をエピタキシャル成長する。ついで1.5μm厚のn短絡部303を公知のホトリソ技術を用いて選択的に窒素のイオン注入することにより順次形成する。
その後、nSiC基板の研磨時にpコレクタ302と短絡部303を保護する保護用被覆膜をpコレクタ302上と短絡部303上に形成する。次に研磨によりnSiC基板を完全に除去し、nドリフト層303も約20μm研磨し300μmの厚さにする。
【0083】
次に、本実施の形態3にかかるSiC逆導通IGBT300の特性を説明する。
ゲート電圧を印加しない状態でエミッタ電極314とコレクタ電極301間に順方向電圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は31.2kV付近であった。また、なだれ降伏前のリーク電流は室温で6.5×10−3A/cm以下、250℃の高温でも5×10−2A/cm以下と良好であった。
【0084】
ゲート電極312に閾値電圧以上のゲート電圧を印加し、ついでコレクタ−エミッタ間に順方向電圧を印加すると約2.7Vのビルトイン電圧以上でオン電流が流れ、スナップバック現象は観察されなかった。コレクタ−エミッタ間電圧(以下Vce)が5VでのJceは63A/cmと良好であった。
【0085】
本実施の形態になる半導体装置の場合は、同耐圧で同構成のスナップバック現象を解消したSi逆導通IGBTに比べて、n短絡部幅は同じであるが、逆導通IGBTセルおよびパイロットIGBT領域のn短絡部間距離Wpがいづれもはるかに小さいので、その分セル数を増やすことができる。このためn短絡部303の面積を増加できるため、逆導通IGBT本来のターンオフ時のキャリアの排除機能を増加できる。この結果、直流電源電圧10kV、電流密度50A/cm通電時のターンオフ時間を1.8μsにできている。一方、同構成の30kV級のSi逆導通IGBTは製作困難であり、シミュレーションにより検討では、ターンオフ時間は約20μs以上と推測される。
【0086】
また、Jce50A/cmでのパルス幅500μs 20時間のオン・オフ繰り返し試験実施後でも急速オン電圧劣化は観察されない。これは本実施の形態によりスナップバック現象が解消できることによる効果である。なお、Jce50A/cmでの500時間の通電試験後でもオン電圧の増大はほとんどの素子で0.1V以下にとどまり、オン電圧劣化は観察されない。
【0087】
以上に説明したように、実施の形態3にかかる半導体装置によれば、スナップバック現象を大幅に抑制でき且つ更なる高速・低損失化により高性能化できるとともに、オン電圧劣化が抑制でき信頼性も高い超高耐圧SiC逆導通IGBTを実現できる。
【0088】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4にかかる半導体装置を模式的に示す断面図である。上記の実施の形態1の半導体装置に比べて、n短絡部403の幅Wnを12μm、短絡部間の距離すなわちpコレクタ402の幅Wpを4μmとしている点を除けば、その他は同じ構造である。これにより、実施の形態4にかかるSiC逆導通IGBTは、前記の実施形態1に比べて更により高い信頼性を実現するものである。
【0089】
すなわち、本SiC逆導通IGBTではn+短絡部の幅Wnとpコレクタの幅Wpの比率Wn/Wpを大きくし3にしている。セルの幅は12μmと同じなので、実施の形態1に比べて、n短絡部の幅Wnの増大によりn短絡部の面積が増大するとともに、Wnの増大分だけWpが低減されることによりpコレクタ接合がビルトインする電流Isbが増大される。このSiC逆導通IGBTがオンする前に流れるIsb電流は多数キャり電流であり積層欠陥の拡大を招かないので、本実施の形態では積極的に増大するものである。Isbの増大により、特にドリフト層405での電力損失に伴う発熱が増大しこれにより、SiC逆導通IGBTがオンする前にその素子温度を、積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまう現象が抑制される温度まで上昇させ、オン時点でのオン電圧劣化の抑制をはかっている。
【0090】
セルの幅を一定にした場合、Wn/Wpの比率が小さすぎるとオン電圧劣化を抑制できるレベルまでの温度上昇が困難であり、大きすぎるとスナップバック現象の増大やオン電圧の増大による電力損失の増大を招く。従って、Wn/Wpの比率は適正な範囲に設定する必要がある。一方、高耐圧素子ほどドリフト領域の不純物濃度は低く且つその厚さは厚く設定されるので、ドリフト領域の内部抵抗が大きく素子温度をより少ないIsbで上昇できる。従って、Wn/Wpの適正範囲は耐圧によっても異なる。発明者は種々の検討の結果、5kV以上の高耐圧SiC逆導通IGBTにおいては、Wn/Wpの適正範囲は、0.2〜5.0の範囲にするのが良く、より好ましくは0.3〜3.0の範囲にするのが良いことを見出した。
【0091】
以下に、本実施の形態4にかかるSiC逆導通IGBTの特性を説明する。
ゲート電圧を印加しない状態でエミッタ電極413とコレクタ電極401間に順方向電圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は17.3kV付近である。また、なだれ降伏前のリーク電流は室温で2.3×10−3A/cm以下、250℃の高温でも2.8×10−2A/cm以下と良好である。
ゲート電極412に閾値電圧以上のゲート電圧を印加し、ついでコレクタ−エミッタ間に順方向電圧を印加すると約2.7Vのビルトイン電圧以上でオン電流が流れ、スナップバック現象は観察されなかい。コレクタ−エミッタ間電圧Vceが5VでのJceは約60A/cmと良好である。
【0092】
また、ターンオフ時間が0.7μsであり、実施の形態1に比べて短縮できている。これは、同耐圧でチップサイズとセル幅が同じ逆導通IGBTで、Wn/Wpの比率を大きくしたためにn短絡部のトータル面積が大きくなり、従ってターンオフ時の残存キャリアの排出能力が大きくなりターンオフ時間を短くできることによるものである。これにより電力損失も低減でき、より高性能化できている。
【0093】
また、Jce60A/cmでパルス幅500μsとする20時間のオン・オフ繰り返し試験後で、オン電圧の急速劣化は観察されない。これは本実施の形態においてスナップバック現象が解消できることによる効果である。更に、本実施の形態になるほとんどの素子のオン電圧の変化は0.1V以下にとどまり、低耐圧の市販のSi逆導通IGBTと同等であり顕著な信頼性への悪影響は見いだされない。
【0094】
また、上記のオン・オフ繰り返し動作試験を500時間の長時間実施した場合、試験終了後にSiC逆導通IGBTの温度が室温程度(30℃以下)に低減した状態で測定すると、オン電圧が劣化している素子が発生する。従って、室温程度の温度でこの素子を動作させる場合は素子損傷などの懸念が生じる。
但し、一旦動作を開始し動作試験実施中には素子温度が自己発熱で100℃以上に高くなっているので、前記の積層欠陥のトラップ現象が抑制されるためこのようなオン電圧が劣化している素子でも著しく電力損失が増える等の実害は生じない。
【0095】
上記からも判るように、本実施の形態の効果を確認するうえでは耐久オン・オフ繰り返し動作試験がより好ましい。この試験は、20時間オン・オフ繰り返し動作後に素子温度を室温程度まで冷却し、再度20時間オン・オフ繰り返し動作させ再度室温程度まで冷却するといった動作を繰り返す試験である。
実施の形態1においてn短絡部203の幅Wnを2μm、短絡部間の距離すなわちpコレクタ202の幅Wpを14μmとしたWn/Wpが約0.14のSiC逆導通IGBTにこの耐久オン・オフ繰り返し動作試験を試みると、20回程度の繰り返し時にオン電圧が15V以上に増大し容易に破損してしまう。
一方、本実施の形態4のSiC逆導通IGBTの場合は100回以上繰り返しても破壊する素子は発生することはなく、より高い信頼性を実現できている。これは上記のWn/Wpを大きくしたことによる本実施の形態の効果である。
【0096】
以上に説明したように、実施の形態4にかかる半導体装置によれば、Wn/Wpを大きくし適正化することにより、高速・低損失化による高性能化が実現できるとともに、オンする直前の温度を上昇させてきオン電圧劣化を抑制でき信頼性も高いSiC逆導通IGBTを実現できる。
【0097】
(実施の形態5)
図6は、実施の形態5にかかる半導体装置を模式的に示す断面図である。上記の実施の形態4の半導体装置に比べて、n短絡部503の幅Wnを2.5μm、短絡部間の距離すなわちpコレクタ502の幅Wpを1.5μmとし、セル内に4組のn短絡部とpコレクタを設けた点を除けば、その他は同じ構造である。
【0098】
本SiC逆導通IGBTでは実施の形態4と同様に、実施形態1に比べてWn/Wpを大きくして1とすることにより高性能化とオン電圧劣化抑制による高信頼性化を図っている。その一方、実施の形態4に比べてセル内のpコレクタ502の幅Wpを細断することにより2μmと小さくしているためIsbを大きくでき、オン直前の素子温度の上昇がより高くなるようにしている。しかしセル内のWpのトータル幅は8μmであり実施形態4に比べて2倍に大きくしており、これによりオン後のJceを増大させる一方、オン電圧の低減による電力損失の低減を図っている。
【0099】
以下に、本実施の形態5にかかるSiC逆導通IGBTの特性を説明する。
ゲート電圧を印加しない状態でエミッタ電極513とコレクタ電極501間に順方向電圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は17.1kV付近である。また、なだれ降伏前のリーク電流は室温で2.5×10−3A/cm以下、250℃の高温でも3.1×10−2A/cm以下と良好である。
Vceが5V、 ゲート電極512の電圧が20VでのJceは約85A/cmと良好であり実施の形態4に比べて大幅に増加できる。これは一定オン電流でのオン電圧を低減できることでもあり電力損失の低減ができる。これらは本実施の形態5の効果である。また、ターンオフ時間は0.9μsである。
【0100】
本実施の形態5のSiC逆導通IGBTは、耐久オン・オフ繰り返し動作試験において、200回以上繰り返しても破壊する素子は発生しない。これは実施の形態4に比べてWpの幅が低減したのでSiC逆導通IGBTがオンする前に流れるIsb電流が増大できたために、逆導通IGBTがオンする前にその温度を実施の形態4よりも高い温度に上昇させることができ、積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまう現象がより大幅に抑制されオン電圧劣化の大幅な抑制を達成できることによる。
【0101】
以上のように、本実施の形態5のSiC逆導通IGBTにより、より高い性能とより高い信頼性を実現できる。
【0102】
以上、第1から第5の実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく各種の変形応用が容易に出来ることは当業者には自明である。例えば、構造諸元の数値を変更し3kVといった低い耐圧や50kVといった更に高い耐圧のワイドギャップ半導体逆導通IGBTに展開できることは当然である。セル形状も言及したストライブ形状以外にメッシュ形状等の種々の形状が採用できることは当然である。また、セルの幅やn短絡部の幅やpコレクタの幅および両者の面積比も言及した値以外に逆導通IGBTの仕様によって種々の値を採用できることも当然のことである。主に、n短絡部をセルの中心付近のpボディ下に対向して設けたセル構造について言及したが、n短絡部をセルの片側端部もしくは両端部に設けたセル構造等に応用展開できることも当然である。また、n型逆導通SiC−IGBTに言及したが、極性の異なるp型逆導通SiC−IGBTにも同様に展開できることは自明である。更に、逆導通SiC−IGBTについて言及したが、GaNやダイヤモンドといった他のワイドギャップ半導体を用いた逆導通IGBTにも応用展開できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は配電系統に直結する高耐圧インバータ等に利用でき、この場合はトランスの大幅な小型化やトランス自体の除去することもでき、システムの大幅な小型軽量化や省エネルギー化・省資源化が可能になる。また、現在の配電系統にとどまらず、次世代の系統網であるスマートグリッドへの利用が可能である。更に、大型ファンやポンプ、圧延機といった産業用機器の制御装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0104】
1、101,201,301、401、501 :コレクタ電極
2、102,202,302、402、502 :pコレクタ
3、103,203,303、403、503 :n短絡部
4、104、304、404、504 :nバッファー層
5、105,205,305、405、505 :nドリフト層
6、106,306、406、506 :n電荷蓄積層
7、107,207,307、407、507 :pボディ領域
8、108,208,308、408、508 :nエミッタ領域
9、109,209,309、409、509 :pチャネル領域
10、110,210,310、410、510:pコンタクト領域
11,111、211,311、411、511:ゲート酸化膜
12,112,212,312、412、512:ゲート電極
13、113,213,313、413、513:エミッタ電極
14 :pコレクタ接合中央部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8