【実施例】
【0026】
図1〜
図3において、10は本発明の実施例1に係るペット用オムツで、このペット用オムツ10は、犬(ペット)Dの臀部を被う臀当て部11に、尻尾穴12と大便排泄穴13とが連通する臀当て部側穴14が形成されたオムツ本体15と、臀当て部11の外側に着脱自在に装着されるとともに、臀当て部側穴14と向かい合う尾便兼用開口部16が袋内側シート17に形成され、かつ尻尾Tが引き出される尻尾用開口部18が袋外側シート19に形成された大便袋20とを備えたものである。
【0027】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図2に示すように、オムツ本体15は、透水性の本体内側シート21と、防水性の本体外側シート22との間に、尿を吸収する吸水体23を挟み込んだ3層構造のものである。
本体内側シート21は、長さ方向の中間部付近に括れを有する縦長矩形状の不織布である。
本体外側シート22は、本体内側シート21と同一サイズ、同一形状のポリエチレンシートである。
吸水体23は、高分子吸収剤を混入した粉砕パルプを、本体内側シート21の括れ部分より幅が狭い縦長なシート状に加工したものである。本体内側シート21と本体外側シート22とは、吸水体23が位置ずれしないように、外周部同士が熱融着されている。
【0028】
オムツ本体15は、括れた領域が臀当て部11で、臀当て部11より下方の領域が犬Dの腹部を被う腹当て部24であって、臀当て部11より上方の領域が犬Dの背部を被う背当て部25となっている。腹当て部24の下端部および背当て部25の上端部の各幅方向の中間部分には、この腹当て部24の下端部と背当て部25の上端部とに、横方向の伸縮性を付与する帯状の伸縮部材26が配設されている。
本体内側シート21の表面には、吸水体23の両側縁に沿って、左右両側方への尿の漏れを防ぐポリエチレンシート製の縦長な2本のギャザー27が平行状態で配設されている。本体内側シート21の上端部のうちの幅方向の両端部には、オムツ装着時に腹当て部24と背当て部25とを着脱自在に連結する2本の装着テープ28が配設されている。
【0029】
オムツ本体15のうち、臀当て部11の略中央部には、上側の尻尾穴12と、下側の大便排泄穴13とを連通した臀当て部側穴14が形成されている。臀当て部側穴14は、臀当て部11に、間口が徐々に狭まる上向きコの字状の切り込み(スリット)Sを入れることにより、下底より上底の方が短い台形状の舌片を形成し、この舌片を、上底を折り線(上縁形成部)12aとして外方へ折り曲げることで得られる、台形状の開口である。
この舌片が、犬Dの尻尾Tの根元部fの上面に当接され、かつ袋外側シート19の上部が固定されることで、尻尾Tの根元部fと一体的に移動可能な固定用板片29となる。固定用板片29の基端である折線12aを、固定用板片29の先端の長さに比べて短く(狭く)したため、様々な方向へ動く犬Dの尻尾Tに対する固定用板片29の追従(移動)が容易となる。
固定用板片29は、3層構造体であるため、板片としての適度な硬さ(剛性)を有する。なお、固定用板片29の外縁部および臀当て部側穴14の内縁部は、高分子吸収剤や粉砕パルプが零れ落ちないように、熱融着により封止されている。
【0030】
次に、
図3を参照して、大便袋20を詳細に説明する。
大便袋20は、袋内側の部分を構成するポリ塩化ビニル樹脂製の袋内側シート17と、袋外側の部分を構成するポリ塩化ビニル樹脂製の袋外側シート19とを、上端が開口する袋状に接合した角型の透明なビニール袋である。袋上端の開口が、臀当て部側穴14と向かい合う尾便兼用開口部16となる。
この尾便兼用開口部16は、固定用板片29と同一形状、同一サイズの開口部分で、幅狭な上底側の辺を除いた3辺の形成部に、略コの字形のフランジ16aが一体形成されている。フランジ16aの外面には、コの字状の臀当て部用両面テープ30が固着されている(
図3を参照)。臀当て部用両面テープ30は、臀当て部11の外側のうち、台形状をした臀当て部側穴14の形成部のうち、両側形成部から下底形成部までの領域に着脱自在に貼着される。
【0031】
また、袋外側シート19の上部の内面には、この袋外側シート19の領域を、固定用板片29の上面に着脱自在に固定するための板片用両面テープ31が固着されている。板片用両面テープ31は、固定用板片29と同一形状(台形状)で、かつ同一サイズのもので、その上底側の辺が尾便兼用開口部16の上底側の辺と一致している。なお、板片用両面テープ31の上底側の辺と、尾便兼用開口部16の上底側の辺とを平行に離間させて、この離間部分に、使用済みの大便袋20を、臀当て部11の外側から剥離する際の握り手となる未接着領域を形成してもよい。使用済みの大便袋20を剥がす際、この未接着領域を握って行えば、大便袋20を剥がし易い。
【0032】
袋外側シート19の上部には、尻尾Tを袋外へ引き出すための横長なスリット状の尻尾用開口部18が形成されている。具体的には、袋外側シート19の板片用両面テープ31の下底側の辺に沿って形成されている。犬Dが尻尾Tを振った際にスリットが裂けないように、スリット形成部の外面には、補強用の紙テープ32が貼着されている。紙テープ32の両端部には、スリット形成部の両端部分を含めて、横方向へ延びるミシン目33が形成されている。これにより、ミシン目33を利用し、犬Dの尻尾Tの太さに尻尾用開口部18の開口サイズを合わせることができる。また、尻尾用開口部18の周囲には、輪ゴムなどを利用した図示しない環状の伸縮部(しぼみ部)や、環状のギャザーを取り付けてもよい。これにより、尻尾用開口部18と尻尾Tとの密着性が高まり、尻尾用開口部18からの便漏れを防止できる。
【0033】
なお、大便袋20に代えて、
図4に示すような上端が閉じた別の大便袋20Aを採用してもよい。
この別の大便袋20Aは、袋内側シート17の上部に尾便兼用開口部16が形成され、尾便兼用開口部16の形成部の外面全域に矩形枠状の枠形両面テープ34が貼着されたものである。また、別の大便袋20Aの袋外側シート19の上部には、横長なスリット状の尻尾用開口部18が形成されている。さらに、この袋外側シート19の上部の内面のうち、尻尾用開口部18の直上領域には、固定用板片29の上面に袋外側シート19の上部を固定するための板片用両面テープ31が貼着されている。
別の大便袋20Aの使用時には、尾便兼用開口部16から固定用板片29を袋内に挿入し、剥離紙を剥がした板片用両面テープ31を介して、固定用板片29の外面に袋外側シート19の上部を貼着する。その後、剥離紙を剥がした枠形両面テープ34を、袋内側シート17の尾便兼用開口部16の形成部の外面全域に貼着する。これにより、上端が閉じた別の大便袋20Aが、臀当て部11の外側に着脱自在に貼着される。このように、別の大便袋20Aは、上端が閉じているため、収容した大便Fの臭いが外に漏れにくい。
【0034】
次に、
図1〜
図3、
図5および
図6を参照して、本発明の実施例1に係るペット用オムツ10を犬Dに装着する方法について説明する。
図1および
図2に示すように、まず、オムツ本体15により犬Dの下半身を包み込む。具体的には、まず臀当て部側穴14の上部(尻尾穴12)に犬Dの尻尾Tを挿通し、この状態で犬Dの腹部に腹当て部24、犬Dの背部に背当て部25をそれぞれ被せ、腰部付近で重ね合わされた本体外側シート22の端部同士を、2本の装着テープ28により貼着する。このとき、オムツ本体15は、各伸縮部材26の弾性力の作用により、犬Dの下半身を包み込んだ状態で保持される。なお、犬Dの肛門は、臀当て部側穴14の下部(大便排泄穴13)内に配置される。
【0035】
次に、
図1、
図3、
図5および
図6に示すように、大便袋20を臀当て部11の外側に装着する。具体的には、大便袋20の上端開口である尾便兼用開口部16が臀当て部側穴14と向き合うように、犬Dの尻尾Tを、袋内側シート17の尾便兼用開口部16の上部と、袋外側シート19の尻尾用開口部18とに一連に差し通す。このとき、尻尾Tの根元部fの上面に固定用板片29の下面が当接される。尻尾用開口部18が狭い場合には、ミシン目33を開き、尻尾Tの根元部fに尻尾用開口部18の形成部が密着するように、その開口サイズを調整する。このような密着状態で尻尾用開口部18に尻尾Tを差し通すことにより、尻尾Tと尻尾用開口部18との隙間から大便Fの臭いが漏れるのを防ぐことができる。
その後、臀当て部用両面テープ30の剥離紙を剥がし、臀当て部用両面テープ30を介して、台形状である臀当て部側穴14の両側形成部のうち、両側形成部から下底形成部までの領域に、大便袋20の尾便兼用開口部16を着脱自在に貼着する。次いで、板片用両面テープ31の剥離紙を剥がし、板片用両面テープ31を介して、臀当て部11の固定用板片29の外面に、袋外側シート19の上部を着脱自在に貼着する。
【0036】
犬Dが排泄した尿は、オムツ本体15に形成されたギャザー27によって外部への漏出を防止されながら透水性の本体内側シート21を通過して吸水体23に吸収され、吸水体23の内部に保持される(
図2を参照)。
一方、大便Fは、臀当て部側穴14から尾便兼用開口部16を通って大便袋20に入り、広げられた袋内の投入口aから大便袋20の底部へ落下し、収容される(
図6を参照)。具体的には、大便Fの排泄時、犬Dは、尻尾Tが汚れないように、条件反射的に尻尾Tを緊張状態で突き立てるか、水平に突き出す。このとき、大便袋20内で投入口aが開く。投入口aとは、大便袋20の上部内に現出する仮想の開口(袋内側シート17の上部の内面と、袋外側シート19の上部の内面との間に現出する空間)である。袋内に侵入した大便Fは、大便袋20の底部に落下する前に、必ずこの投入口aを通過する。
【0037】
ここで、
図5および
図6を参照して、犬Dの尻尾Tが緊張状態で突き立てられるか、水平に突き出されたとき、大便袋20内の投入口aが広がる理由を詳しく説明する。
尻尾Tは、尾便兼用開口部16と尻尾用開口部18とに一連に挿通されることで、その根元部fの上面に、固定用板片29の下面が常時当接される。仮に犬Dが排便前に“おすわり”をしたとする。これにより、大便袋20は犬Dの臀に敷かれて扁平状態となる(
図5を参照)。この状態で犬Dが軟便を排泄するものとする。便が硬ければ、排泄した大便Fが臀当て部側穴14を通過しながら袋外側シート19を外方へ押し広げることで、大便Fは袋内に収容され易い。しかしながら、便が軟らかければ、従来品の場合、臀当て部側穴14を大便Fが通過しようとする際、袋外側シート19を十分に押し広げることができず、軟便が犬Dの臀部とペット用オムツ10とのすき間に流れ込み、犬Dの臀部の毛を汚していた。
【0038】
これに対して、実施例1の大便袋20の場合は、このように大便袋20が扁平状態で、さらに排泄した便が軟便という悪条件であっても、排便時、犬Dが条件反射的に尻尾Tを緊張状態で突き立てるか、水平に突き出す動作を行うことで、尻尾Tの根元部fの上面に当接する固定用板片29が、下底側の端を中心にして、起立位置または水平位置まで上方回動する(
図6を参照)。すなわち、オムツ本体15の臀当て部11の外側に、袋内側シート17の上端部(尾便兼用開口部16の一部)を固定した状態で、袋外側シート19の上部を固定した固定用板片29が上方回動する。その結果、犬Dは、無意識のうちに自身の尻尾Tによって、大便袋20の投入口aを広げることとなる。よって、仮に軟便であっても、確実に大便Fを大便袋20内に収容することができる。
【0039】
また、固定用板片29として、前記3つの軟質素材を重ね合わせた3層構造のものを採用したため、固定用板片29の硬さ(剛性)は、犬Dが尻尾Tを振る動きをさほど妨げず、固定用板片29は上下方向の回動だけでなく、斜め方向や横方向への揺動も行える。これにより、尻尾Tの根元部fに対する追従性が高い(自由度が大きい)固定用板片29を得ることができる。
さらには、この3層構造の固定用板片29を採用したことで、尻尾Tが立ち上がったとき、大便袋20に収容された大便Fの重さが作用しても、固定用板片29がヘタリにくい(形状が崩れにくい)。仮に、大便Fの排泄時、尻尾Tを立てた状態で固定用板片29にヘタリが生じれば、尻尾Tをガイドにして袋外側シート19の上部がずれ落ち、大便Fの袋内の投入口aを塞いでしまい、袋底部への大便Fの投入を妨げてしまう。なお、仮にヘタリが生じても、固定用板片29の内面または外面に硬度調整用の各種の素材からなる薄肉部材(シート、シール、テープ、薄板など)を積層することで、ヘタリを解消することができる。
また、このように3層構造の臀当て部11に、所定の切り込みを入れて固定用板片29を形成するようにしたため、簡単かつ低コストで、臀当て部11に固定用板片29を設けることができる。
使用済みの大便袋20を付け替えしたい場合には、大便袋20を握り、これを尻尾Tの先端方向へ強く引っ張る。これにより、固定用板片29から板片用両面テープ31が、また臀当て部11の外側から臀当て部用両面テープ30がそれぞれ剥がされて、臀当て部11の外側から使用済みの大便袋20が外れる。その後、使用済みの大便袋20を尻尾Tから抜き取る。次いで、上述した装着方法に従って、新しい大便袋20を臀当て部11の外側に装着する。
【0040】
このように、大便袋20を臀当て部11の外側に着脱自在に装着したことで、犬Dが大便Fのみを排泄した際、大便袋20のみの交換で済むため、経済的である。
また、尻尾用開口部18であるスリットを、袋外側シート19のうち、固定用板片29の先端との対峙部付近に形成したため、尻尾Tの根元部fの上面に、常時、固定用板片29を当接することができる。これにより、大便排泄時の尻尾Tの立ち上げや水平突き出しの動作に、固定用板片29を機敏に追従させることができる。その結果、仮に尻尾Tの動作と略同時に排便を始めたとしても、袋内の投入口aを即座に広げて、支障なく大便Fを収容することができる。
なお、ここでは、大便袋20を臀当て部11の外側に着脱自在に取り付けるもの(臀当て部用両面テープ30)を大便袋20に設けたが、これを臀当手部11の外側(外面)に設けてもよい。同様に、固定用板片29に大便袋20の上部を着脱自在に固定するもの(板片用両面テープ31)を固定用板片29の上面に設けてもよい。