(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
本実施形態に係る車両用表示装置として、車両が備えるルームミラー(バックミラー)に取り付けられて使用されるヘッドアップディスプレイを例に挙げ、
図1を参照して、その外観構成について説明する。本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ10は、コンバイナを介して情報を表示することで、車外の景色に重畳して情報を表示することができる表示装置である。
【0012】
図1は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ10を、このヘッドアップディスプレイ10が取り付けられたルームミラー600から車両の図示しないウィンドシールド(フロントガラス)の方(車両前方)に向かう視野により観察するよう設置した態様を示す斜視図である。以後の説明において、前、後、左、右で示される方向は、それぞれ車両の前方、後方、車両の左側方向、右側方向を意味するものとする。また、車両が水平な路面を走行している場合における重力方向とは反対の方向を上とし、重力方向を下とする。
【0013】
ヘッドアップディスプレイ10は、画像生成基板収納部150及び画像表示基板収納部100とを備える。画像生成基板収納部150は、外部からの画像信号を受信し、コンバイナ400に虚像として表示される画像に係る画像信号を生成する画像生成基板を収納する。画像表示基板収納部100は、画像生成基板において生成された画像信号を、ケーブル190を介して受信し、受信した画像信号を光学ユニット200に出力する画像表示基板を収納する。ヘッドアップディスプレイ10における表示画像の処理及び制御は、この画像生成基板収納部150内の回路及び画像表示基板収納部100内の回路において実行され、本明細書においては、これらを合わせて表示制御装置(車両用表示制御装置)1000と呼ぶ。ここで、画像表示基板収納部100は、不図示の取付部材を介してルームミラー600に取り付けられる。また、本実施形態では、車両前方の景色を撮像し、撮像された画像を表示制御装置1000に出力する撮像部であるカメラ1507もルームミラー600に取付けられている。
【0014】
なお、カメラ1507は、ヘッドアップディスプレイ10と一体に構成してもよいし、別体に構成してもよい。ただし、一体に構成すると、ヘッドアップディスプレイ10の各部との位置関係が常に定まるため、好ましい。また、ウィンドシールドをコンバイナ400として用いるような構成にしてもよい。
【0015】
ヘッドアップディスプレイ10は、画像表示基板から出力された画像信号が入力される光学ユニット200を備える。光学ユニット200は、光学ユニット本体210、及び投射部300を備える。光学ユニット本体210には、光源、画像表示素子、及び各種光学レンズなどが収納される。投射部300には、各種投射ミラー及び中間像スクリーンが収納される。画像表示基板が出力した画像信号は、光学ユニット本体210の上記各デバイス、及び投射部300の上記各デバイスを介して、投射口301から凹面形状を有するコンバイナ400に画像表示光として投射される。なお、本実施形態では画像表示素子として反射型液晶表示パネルであるLCOS(Liquid crystal on silicon)を用いる場合を例示するが、画像表示素子としてDMD(Digital Micromirror Device)を用いてもよい。その場合、適用する表示素子に応じた光学系及び駆動回路で構成するものとする。また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を用いたレーザ型の表示装置であってもよい。
【0016】
光学ユニット200は画像表示基板収納部100に対して回動可能な構成となっている。さらに、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ10では、投射部300及びコンバイナ400は光学ユニット本体210の所定の面に対して取付け向きが変更可能、また脱着可能な構成となっている。しかしながら、光学ユニット200及び画像表示基板収納部100は互いに回動可能でなくてもよく、一つの筐体内に配置されて構成されていてもよい。
【0017】
運転者であるユーザは投射された画像表示光をコンバイナ400を介して虚像として認識する。
図1では、投射部300が「A」の文字の画像表示光をコンバイナ400に投射している。ユーザはコンバイナ400を見ることで、「A」の文字が、ユーザから例えば1.7m〜2.0m前方(車両前方)に表示されているかのように認識する、すなわち虚像450を認識することができる。ここで、投射部300からコンバイナ400に投射される画像表示光の中心軸を投射軸320と定義する。
【0018】
図2は、表示制御装置1000の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、表示制御装置1000は、画像生成部1100及び画像表示部1200を有している。
本実施形態において、画像生成部1100は、画像生成基板収納部150に収納されている画像生成基板によって実現される。画像生成部1100は、不図示のナビゲーションシステム及びスマートフォン等の外部機器1600から入力される画像信号を受信し、コンバイナ400を介して表示される画像の画像情報を生成し、表示制御情報と共に出力する。
【0019】
また、本実施形態において、画像表示部1200は、画像表示基板収納部100に収納されているに画像表示基板によって実現される。画像表示部1200は、画像生成部1100から出力された画像情報及び表示制御情報を受信し、受信された情報に基づいて光源及び画像表示素子を制御して画像をコンバイナ400に投射させる。なお、本実施形態においては、画像生成部1100及び画像表示部1200は、それぞれ画像生成基板収納部150及び画像表示基板収納部100内の機能ブロックであることとしたが、いずれかの収納部に配置される機能ブロックであってもよいし、統合して一つの収納部に配置されるものであってもよい。
【0020】
以下、本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、CPUやDSPをはじめとする素子やメモリで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々なかたちで実現できることは、当業者に理解されるところである。
【0021】
ここで、画像生成部1100は、操作受付部1170、情報取得部1180、画像制御部1110及び画像処理部1140を有している。操作受付部1170は、利用者により操作されるリモコン1400からの信号を受信する。情報取得部1180は、車両の内外の状態を示す信号を出力する複数の機器からなるセンサー群1500からの情報を取得する。画像処理部1140は、外部機器1600から出力される画像信号を受信(取得)し、その受信した画像信号を、画像制御部1110の指示に従って、デコード等の画像処理を施して、画像制御部1110及び画像表示部1200に出力する。このように画像処理部1140は、画像取得部としても機能している。
【0022】
画像制御部1110は、操作受付部1170で取得されたリモコン1400の操作の情報、情報取得部1180により取得されたセンサー群1500からの情報、及び画像処理部1140が受信した画像信号に含まれる走行中表示許可情報に基づいて、出力すべき画像の出力を制御する。画像処理部1140は、画像制御部1110の制御に従って画像表示部1200に画像出力することとなる。走行中表示許可情報とは、走行中に表示することが許可された画像であるか否かを示す情報である。
なお、本実施形態において、一例として、画像処理部1140は、外部機器1600から出力される画像信号を、NTSC方式のコンポジットビデオ信号で受信するものとする。また、画像処理部1140は、外部機器1600から出力される画像信号を有線で受信するものとする。
【0023】
また、画像表示部1200は、駆動部1270、表示調整部1240及び表示制御部1210を有している。駆動部1270は、光学ユニット200の光源及び画像表示素子を駆動させる。表示調整部1240は、画像処理部1140から出力された画像信号を受信し、画像表示素子に適した画像データへと画像調整を行って駆動部1270に出力する。
表示調整部1240は、例えば、LCOS素子に合わせたガンマ補正、画素変換(例えばRGB3画素からRGGB4画素への変換)等の調整を行う。
表示制御部1210は、画像制御部1110からの表示制御情報を受信すると共に、光源の温度を検知する温度センサ等の光学ユニットセンサー群1300の情報を取得し、表示調整部1240及び駆動部1270を制御する。
【0024】
図3は、車両の内外の状態(走行環境)に関する情報を出力するセンサー群1500の機能ブロックを示すブロック図である。この図に示されるように、センサー群1500は、パーキングブレーキ検知部1501、速度計1502、加速度計1503、方向指示器1504、GPS(Global Positioning System)端末1505及びジャイロスコープ1506を有している。
【0025】
パーキングブレーキ検知部1501は、運転席の側方にあるパーキングブレーキが引かれているか否かを示す信号を送信する走行中検知部である。速度計1502は、車両の速度の情報を検知して出力し、加速度計1503は、車両の前後左右上下加速度を検知して出力する。
【0026】
また、方向指示器1504は、運転者が右折及び左折の際に操作される方向指示器の状態を示す情報を出力し、GPS端末1505は、GPS衛星から得た時間情報を基に車両の現在位置を演算し、その現在位置を示す位置情報を出力する。
【0027】
ジャイロスコープ1506は、車両の角度又は角速度を検知して、その角度又は角速度を示す情報を出力し、カメラ1507は、車両前方の景色を撮像して、その画像データを出力し、ハンドル角度取得部1508は、運転者が操作するハンドル(ステアリングホイール)が切られた角度を検知して、その角度を示す情報を出力する。ハンドル角度取得部1508は、例えば、車両が直進する状態から、ハンドルが何度回転されているかを示す情報を出力する。
【0028】
ワイパー1509は、降雨の際にウィンドシールドに付く雨滴を掃引し、照度計1510は、車外の明るさを検知し、雨滴検知部1511は、光学方式又は振動方式により雨滴の量を検知する。
【0029】
以下、画像制御部1110による、画像を視認される態様で出力するか、視認される態様での画像出力を停止するかの判定方法について説明する。なお、以下の説明においては画像を視認される態様で出力することを、単に「画像を出力する」と称することもある。また、視認される態様での画像出力を停止することを、単に「画像の出力を停止する」と称することもある。
【0030】
また、画像を視認される態様で出力する走行環境(第1の状態)と、視認される態様での画像出力を停止する走行環境(第2の状態)について説明するが、第2の状態において、第1の状態よりも、画像の輝度等を下げることにより透明度を上げて表示するようにしてもよい。つまり、第1の状態よりも画像の透明度を上げて表示すれば、画像を視認される態様で出力してもよい。なお、コントラスト値を下げて、画面の透明度を上げてもよい。
【0031】
画像が視認できる状態であっても、画像の輝度等を下げることにより透明度を上げて表示すれば車両外部の景色をより見やすい状況にすることができ、車両の走行環境に応じた適切な画像表示にすることができる。
【0032】
図4は、ヘッドアップディスプレイ10が搭載された右ハンドル車である車両80の左方向への旋回(左折)の様子を示す図である。
図5は、同じ車両80における右方向への旋回(右折)の様子を示す図である。本実施形態において、ヘッドアップディスプレイ10は、車両が備えるルームミラーに取り付けられて使用されるため、
図4に示されるように、ヘッドアップディスプレイ10のコンバイナ400は運転者81の左前方に配置されることとなる。よって、左旋回時において運転者81が視認すべき外部の景色は運転者からみて左前方向の景色となり、コンバイナ400と重なることとなる。一方で右旋回時には、
図5のように、コンバイナ400は運転者の視認すべき外部の景色は運転者からみて右前方向の景色となり、コンバイナ400とは重なりにくい。
【0033】
図4,
図5で説明した事項を前提として、画像制御部1110の旋回検知(左折又は右折の検知)に基づく画像出力制御について、
図6を用いて説明する。
図6は、画像制御部1110の旋回検知に基づく画像出力制御のフローチャートである。画像制御部1110は、まず、ステップS11において、旋回検知部である加速度計1503から情報取得部1180を介して車両の旋回情報である左右の加速度を取得する。次にステップS12において左旋回中であるか否かを判定する。ここで左旋回か否かは
図4に示すように右方向に所定値以上の加速度が発生していることにより判断する。右方向の加速度であっても所定値以下の加速度である場合には、運転者81が視認すべき外部の景色が、コンバイナ400の配置された位置と重ならない小さな旋回であると判断し、左旋回である旨の判定は行わない。左旋回である旨の判定が肯定的である場合(Y:第2の状態)には、ステップS14において、画像信号の出力を停止する。
一方、左旋回である旨の判定が否定的である場合(N:第1の状態)には、ステップS13に進み、画像信号の出力を継続する。
【0034】
このように画像出力の制御を行うことにより、旋回時に運転者が視認すべき外部の景色が、コンバイナ400と重なる場合であっても、画像信号の出力停止により、コンバイナ400に画像が表示されないため、運転者に外部の景色をより視認しやすくさせることができる。
【0035】
なお、
図6の形態においては、旋回検知部として加速度計1503を使用して旋回を判定することとしたが、旋回検知部、及び旋回検知部から取得される旋回情報はこれに限られず、GPS端末1505から取得した車両の座標の経過、ジャイロスコープ1506の出力する角度又は角速度の値、ハンドル角度取得部1508から取得した角度、カメラ1507で撮像された画像の遷移、及び方向指示器1504の右折又は左折の指示の情報、の一又は複数を組み合わせて旋回を判定することとしてもよく、又、これらと速度計1502の値を組み合わせて判定することとしてもよい。例えば、ハンドルが所定角度以上回転されたときに旋回中であると判断することができる。
【0036】
また、
図6の形態では、右ハンドル車の左側に表示部であるコンバイナ400が配置された場合について示したが、右ハンドル車、左ハンドル車に関係なく、運転者の左前方に表示部が配置された場合にこのような制御とすることができる。一方、運転者の右前方に表示部が配置されている場合には、ステップS12の左旋回の判定を右旋回とすることにより、同様の効果を有する制御とすることができる。ステップS12において左旋回中であるか否かを判定して、左旋回中である場合に画像出力を停止するようにしたが、ステップS12において右旋回中であるか否かを判定して、右旋回中である場合に画像出力を停止するようにすればよい。
【0037】
以上のように、画像が表示される表示位置が運転者の左前方の場合における左旋回のとき(第2の状態)に画像が視認される態様で出力されないよう制御する。また、画像が表示される表示位置が運転者の右前方の場合における右旋回のとき(第2の状態)に画像が視認される態様で出力されないよう制御するため、旋回時に視界が確保できる。
【0038】
また、表示部が運転者の右側に配置されているか左側に配置されているかの情報を取得していない場合、又は右旋回及び左旋回の区別をしない場合等においては、右旋回及び左旋回どちらの場合であっても、画像の出力を停止することとしてもよい。
【0039】
次に振動検知に基づく画像出力制御について説明する。
図7は、画像制御部1110の振動検知に基づく画像出力制御のフローチャートである。
【0040】
画像制御部1110は、まず、ステップS21において、振動検知部である加速度計1503から情報取得部1180を介して車両の振動情報である上下方向の加速度を取得する。次にステップS22において上下方向の加速度の情報から振動の程度を演算する。ここで、振動の程度とは、一定時間内における振動の周波数及び振幅を意味する。次に、ステップS23において、振動の周波数が所定値以上であり、かつ、振幅が所定値以上である振動であるか否かを判定する。ここで、判定が肯定的である場合(Y:第2の状態)には、ステップS25において、画像信号の出力を停止する。一方、判定が否定的である場合(N:第1の状態)には、ステップS24に進み、画像信号の出力を継続する。
【0041】
車両の振動が大きい場合に、コンバイナ400に投射された画像を視認することは難しいため、このように画像の出力を停止して、運転者に外部の景色をより視認しやすくさせることができる。
【0042】
なお、
図7の形態においては、振動検知部である加速度計1503を使用して振動を判定することとしたが、振動検知部、及び振動検知部から取得される振動情報はこれに限られず、ジャイロスコープ1506の出力する角度及び角速度の値、及びカメラ1507で撮像された画像の遷移の情報、の一又は複数を組み合わせて使用して振動を判定することとしてもよい。
【0043】
図8は、画像制御部1110の降雨検知に基づく画像出力制御のフローチャートである。画像制御部1110は、まず、ステップS31において、降雨検知部である雨滴検知部1511から情報取得部1180を介して降雨情報である雨滴の検知情報を取得する。次にステップS32において、取得した雨滴の検知情報から、所定量以上の雨滴である降雨であるかどうかを判定する。ここで、判定が肯定的である場合(Y:第2の状態)には、ステップS34において、画像信号の出力を停止する。一方、判定が否定的である場合(N:第1の状態)には、ステップS33に進み、画像信号の出力を継続する。
【0044】
このように画像出力の制御を行うことにより、降雨の場合に画像の出力を停止するため、視認しずらい降雨時の外部の景色を運転者に視認しやすくさせることができる。
【0045】
ここで、
図8の形態では、降雨を検知する降雨検知部として、光学式又は振動式の雨滴検知部1511を用いることとしたが、降雨検知部、及び降雨検知部から取得される降雨情報はこれに限られず、ワイパー1509の動作又はカメラ1507で撮像された画像により降雨の判定を行うこととしてもよい。また、降雨判定と車両が走行していることとを組み合わせて画像の出力制御をしてもよい。つまり、走行中でなければ、所定量以上の雨滴の降雨であっても、画像信号の出力を継続してもよい。この場合には、走行は、パーキングブレーキ検知部1501、速度計1502、GPS端末1505及びカメラ1507等の出力に基づいて判定することができる。
【0046】
図9は、画像制御部1110における、車両がトンネル等の暗い環境への進入したことの検知に基づく画像出力制御のフローチャートである。なお、以下の説明においては、第1の状態のときに、照度計1510の測定値に応じた画像表示を行うことを例に説明するが、第1の状態のときに、照度計1510の測定値に関係なく、明るさや透明度が一定の画像表示を行うようにしてもよい。ただし、照度計1510の測定値に応じた画像表示を行うことで、より視認し易い画像を表示できるため、好ましい。
【0047】
画像制御部1110は、まず、ステップS41において、照度検知部である照度計1510から情報取得部1180を介して照度情報である測定値を取得する。引き続き、ステップS42において前回取得された照度計1510の測定値を取得する。情報取得部1180は、例えば、1秒おきに照度計1510の測定値を取得する。ここで、前回取得された照度計1510の測定値は、画像制御部1110内の揮発又は不揮発の記憶装置に保存されている値である。
【0048】
次にステップS43において、照度計1510から取得した測定値と前回の測定値とを比較し、測定値が所定値以上低下しているか否かということを基準として、車両が暗い環境への進入したかどうかを判定する。ここで、測定値が所定値以上低下している場合(Y:第2の状態)には、車両が暗い環境へと進入したと判断して、ステップS45において、画像信号の出力を停止する。一方、測定値が所定値以上低下していない場合(N:第1の状態)には、車両は暗い環境へと進入していないと判断して、ステップS44に進み、照度計1510の測定値に応じた画像信号の出力を継続する。
【0049】
なお、測定値が所定値以上低下した後に、測定値が所定値以上低下する前の値へと戻った場合は、速やかに、第1の状態における表示制御に戻すことが好ましい。
【0050】
このように画像出力の制御を行うことにより、車両がトンネル等の暗い環境へ進入した場合に、画像の出力を停止するため、眩しすぎる画像表示にならず、運転者に外部の景色をより視認しやすくさせることができる。なお、
図9の形態においては、暗い環境への進入を検知する照度検知部として照度計1510を用いることとしたが、照度検知部、及び照度検知部から取得される照度情報はこれに限られず、カメラ1507の撮像画像その他の照度を検知できる手段からの情報を用いることとしてもよい。
【0051】
ここで、画像制御部1110は、ステップS44では、照度計1510の測定値に応じた画像信号を出力することとなるが、「照度計1510の測定値に応じた画像信号の出力」とは、コンバイナ400に投射される画像は、視認できる程度の明るすぎず暗すぎない表示とするため、より暗い環境では暗い画像として出力し、より明るい環境では明るい画像として出力することを意味する。
【0052】
図10は、照度計1510の測定値と、表示画像の輝度値との関係を示す図である。例えば、第1の状態のとき、画像制御部1110は、
図10に示す特性G1のように、照度計1510の測定値が明るければ明るいほど、表示画像の輝度を明るくする。
【0053】
なお、第2の状態において画像出力を完全に停止せずに、第1の状態よりも画像の透明度を上げて表示するように制御する場合(例えば第1の状態よりも画像の輝度を下げて表示するように制御する場合)、画像制御部1110は、同じ照度計1510の測定値であっても第1の状態よりも暗い画像とするように制御する。例えば、特性G2のような輝度制御を行う。第1の状態における特性G1の傾きと、第2の状態における特性G2の傾きとは同じでなくてもよい。また、照度計1510の測定値が明るくなるに伴って、表示画像の輝度を明るくするような特性であれば、各特性における、照度計1510の測定値と、表示画像の輝度値との関係は比例関係でなくてもよい。
【0054】
また、測定値が所定値以上低下した後に、測定値がその所定値以上低下した状態を保っている場合であっても、徐々に、第1の状態における表示制御に近くなるようにすることが好ましい。これは、人の目が徐々に暗い環境に慣れてくるからである。例えば、画像制御部1110は、ステップS45の画像信号の出力が停止された後に、時間経過とともに、特性G2に基づく輝度制御、特性G21に基づく輝度制御、特性G22に基づく輝度制御へと順に切り替える。
【0055】
次に、
図11の時刻T1以前に示すように、第1の状態のときに照度計1510の測定値に関係なく、明るさや透明度が一定の画像表示を行っている場合について説明する。なお、時刻T1において第1の状態から第2の状態へと変化したとする。
時刻T1において、画像制御部1110は、輝度を大幅に低下させるよう制御する。もちろん、画像信号の出力を完全に停止してもよい。その後、画像制御部1110は、所定の時間をかけて、徐々に輝度を上げるよう制御する。なお、測定値が所定値以上低下する前の値へと戻った場合は、速やかに、第1の状態における輝度に戻すことが好ましい。
【0056】
なお、明るさを制御する方法としては、出力される画像信号の階調値(コントラスト)を変化させてもよいし、光源の明るさを変化させてもよい。なお、輝度が低ければ低いほど、画面の透明度が上がることとなる。また、コントラスト値が低ければ低いほど、画面の透明度が上がることとなる。
【0057】
図12は、コンバイナ400を介して表示する画像を運転者側から見た際のヘッドアップディスプレイ10と車外の景色とを示す図である。この図に示されるように、車両の走行環境によっては、コンバイナ400を介して表示する画像と、信号機88等の車両の走行規則を示す交通標識とが重なってしまうことがある。
【0058】
図13は、コンバイナ400を介して表示する画像と、信号機88等の車両の走行規制を示す交通標識等とが重なってしまっていることを検知した場合の画像出力制御のフローチャートである。
【0059】
なお、カメラ1507は、画像が表示される領域を撮像するよう設置されている。そのため、カメラ1507のレンズの中心軸が向く方向を、投射部300からの投射軸320が向く方向と略一致させることが好ましい。
図12に示すように、カメラ1507は、コンバイナ400から少し離れた位置に設置することも可能であるが、少なくとも、画像が投射される方向を撮像する位置に設置される。
【0060】
画像制御部1110は、まず、ステップS51において撮像部であるカメラ1507から情報取得部1180を介して撮像画像を取得する。引き続き、パターンマッチング等の周知の画像認識技術を用いて、ステップS52において取得した撮像画像から交通標識を検知し、ステップS53において、検知された交通標識が、運転手からの視野において、コンバイナ400と重なる又はその周辺であるかどうか判定する。
【0061】
ここで、判定が肯定的である場合(Y:第2の状態)には、ステップS55において、画像信号の出力を停止する。一方、判定が否定的である場合(N:第1の状態)には、ステップS54に進み、画像信号の出力を継続する。なお、本実施形態においては、交通標識の例として信号機としたが道路標識や渋滞情報等その他の車両の進行に係る情報であってもよい。
【0062】
このように画像出力の制御を行うことにより、
図12のように、コンバイナ400を介して表示する画像と、交通標識等とが重なってしまったり、又は、交通標識等の近くに画像が表示されたりすることがあった場合に、画像の出力を停止するため、交通標識等をより視認しやすくさせることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態においては、走行環境に応じてより効率的に表示部に情報が表示されるため、特に外部からの情報が重要である走行環境において外部の景色を視認しやすくすることができる。
【0064】
なお、本実施形態は、コンバイナを用いるヘッドアップディスプレイを例として用いたが、液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)表示装置等の実像を表示する透明ディスプレイにも適用することができる。コンバイナを用いた場合には、コンバイナの位置よりも奥側に画像を表示できるため、目線の移動が少なくなり、より外部の景色を視認しやすくすることができる。
【0065】
また、上述の実施形態においては、画像信号の出力処理を停止することにより、視認される態様での出力を停止することとしたが、光源の出力を停止したり、低下させたりすることにより、画像が視認される態様での出力を停止してもよい。また、画像表示素子に入力される階調値を下げることにより、画像が視認される態様での出力を停止してもよい。
【0066】
また、本発明は、虚像を表示するヘッドアップディスプレイだけではなく、車両外の景色に重畳して情報を表示することが可能な種々の表示装置に適用可能である。例えば、実像を表示する透明なディスプレイ等にも適用可能である。
【0067】
また、以上説明してきた、画像を視認される態様で出力するか視認される態様での画像出力を停止するかの判定方法は、それぞれ組み合わせて使用することができる。全ての判定方法を採用してもよい。なお、以上説明してきた各実施形態により、コンバイナや透明ディスプレイ等の表示部と、表示制御装置とを含む車両用表示装置も提供される。