特許第6232693号(P6232693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232693
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】車両用電気部品の締結構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   B60K1/00ZHV
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-222291(P2012-222291)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-73757(P2014-73757A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 重成
(72)【発明者】
【氏名】印南 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】橘川 行徳
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−230329(JP,A)
【文献】 特開2012−096746(JP,A)
【文献】 特開2010−173567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00− 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品と、それとは別の部品の相互を締結して、車体側の部材に搭載固定する構造であって、
前記電気部品と前記別の部品のうち、何れか一方の部品は、その締結部に外部入力に対して変形可能な2つの突起片を隣設してある一方、
他方の部品は、その締結部に開口を形成してあり、
前記開口に対して、前記2つの突起片間のスリットを照合し、これらスリットと開口に軸部材を通して、該軸部材により前記2つの突起片を前記開口の周囲に挟み込んで締結固定し、
前記2つの突起片間のスリットの幅を、該突起片の先端側に向けて徐々に広がりをもって形成し
前記2つの突起片は、その挟み方向の外部入力に対しては板厚方向に曲げ変形し、前記軸部材と交差する方向の外部入力に対しては少なくとも一方の突起片が挟み込まれた状態で前記スリットが拡開する方向に曲げ変形が可能である
ことを特徴とする車両用電気部品の締結構造。
【請求項2】
前記突起片の延出方向を、前記外部入力の入力方向に応じて車両前後方向、または車幅方向、あるいは上下方向に設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両用電機部品の締結構造。
【請求項3】
前記一方の部品の締結部が、該一方の部品に取付けたブラケットに設けられ、該ブラケットは一方の部品を前記他方の部品から離間配置するための脚片を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用電気部品の締結構造。
【請求項4】
前記2つの突起片を、車両前後方向に対して交差する方向に延出したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の車両用電気部品の締結構造。
【請求項5】
前記他方の部品が、車体強度メンバに固定した高電圧部品であるインバータであって、前記一方の部品がこのインバータの筐体に締結した電子制御ユニットであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の車両用電気部品の締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電気部品の締結構造、とりわけ、車体側の部材に固定される電気部品に対して、他の部品を締結する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントコンパートメントにおける車載電気部品の締結構造として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。
【0003】
この電気部品の締結構造は、車体側の載置台上に固定されるインバータの締結部に車両前方側が開放したスリットを設け、このスリットを通してインバータを載置台上にボルト締結することにより、前面衝突時の外部入力に対して、スリットがボルト軸部から抜け出てインバータの後方移動を可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−90818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示技術では、スリットの形成方向の設定により抜け方向が車両後方に特定されているため、衝突入力が車両前後方向と異なる方向、例えば、車両の斜め前方、あるいは車両の側方からの入力に対してはスリットがボルト軸部から抜け出ることはなく、インバータの締結部が載置台から離脱し得ない構造である。
【0006】
そこで、本発明は電気部品と、それとは別の部品の相互を締結して車体に搭載する場合に、これら部品相互の締結部分にあらゆる方向から外部入力が作用した場合であっても、この外部入力により締結を解除可能として、部品相互の破損を回避することができる車両用電気部品の締結構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用電気部品の締結構造は、電気部品と、それとは別の部品の相互を締結して、車体側の部材に搭載固定するようにしている。
【0008】
前記電気部品と前記別の部品のうち、何れか一方の部品は、その締結部に外部入力に対して変形可能な2つの突起片を隣設してある。
【0009】
また、他方の部品は、その締結部に軸部材が挿通する開口を形成してある。
【0010】
そして、前記開口に対して、前記2つの突起片間のスリットを照合して電気部品と、別の部品相互の締結部を重ね合わせ、これらスリットと開口に軸部材を通して、該軸部材により前記2つの突起片を前記開口の周囲に挟み込んで締結固定し、前記2つの突起片間のスリットの幅を、該突起片の先端側に向けて徐々に広がりをもって形成し、前記2つの突起片は、その挟み方向の外部入力に対しては板厚方向に曲げ変形し、前記軸部材と交差する方向の外部入力に対しては少なくとも一方の突起片が挟み込まれた状態で前記スリットが拡開する方向に曲げ変形が可能であることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2つの突起片間のスリットは突起片の延出方向の入力に対しては軸部材から抜け易く、また、2つの突起片はその挟み方向の外部入力に対しては板厚方向に曲げ変形し、軸部材と交差する方向の外部入力に対しては少なくとも一方の突起片が挟み込まれた状態でスリットが拡開する方向に曲げ変形が可能である。2つの突起片間のスリットは、突起片の先端側に向けて徐々に広がりをもったスリット幅としてある。これにより、突起片の延出方向と平行な入力方向に対しては、軸部材から抜け易く、この延出方向と直交した軸部材とが直交して係合する入力方向に対しては、軸部材に対してスリットの側縁が抜け方向に滑り易くなって、突起片の変形または破断を誘起し易くなる。
【0012】
この結果、電気部品と、別の部品との締結部分にあらゆる方向から外部入力が作用した場合でも、2つの突起片間のスリットと軸部材とが相互に離脱し、これら部品が締結部分で破損するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の対象とする電気部品の搭載状態を示す車体前部の略示的平面説明図。
図2】本発明の一実施形態を示す車体斜め前方から見た斜視図。
図3】本発明の一実施形態を示す車体側方から見た側面図。
図4】電気部品相互の締結部を拡大して示す斜視図。
図5図4の締結ボルトを外した状態を示す斜視図。
図6】2つの突起片を拡大して示す平面図。
図7】車両の前面衝突時における電気部品の挙動を説明する略示的側面図。
図8】車両の前面衝突時における電気部品の挙動を説明する略示的側面図。
図9】車両の前面衝突時における電気部品の挙動を説明する略示的側面図。
図10】2つの突起片の抜け挙動を説明する側面図。
図11】2つの突起片の延出方向を変えた変形例を(A)〜(C)にて示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を電気部品として、高電圧部品であるインバータを、および別の部品として、電子制御ユニットとを例に採って図面と共に詳述する。
【0015】
図1は、一例としてハイブリッド車や電気自動車におけるフロントコンパートメント(モータルーム)の左側前部を平面視して略示的に示しており、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバ1の前端には、車幅方向に延在するバンパーレインフォース2をステイ3を介して結合している。
【0016】
左右のフロントサイドメンバ1には、空調用コンデンサやラジエータコア等を搭載するためのサポートメンバ4を跨設してあり、このサポートメンバ4とフロントサイドメンバ1とでなす隅部において、該フロントサイドメンバ1上にマウントブラケット5を結合してある。
【0017】
マウントブラケット5は車両中央側に向けてほぼ水平に張り出して配置してあり、該マウントブラケット5上に電気部品としてのインバータ11と、それとは別の部品としての電子制御ユニット14とを集合的に搭載している。
【0018】
具体的には、高電圧部品であるインバータ11をマウントブラケット5上に定置して締結固定してあり、インバータ11よりも小型の電子制御ユニット14を、該インバータ11の上面に後述するように外部入力に対して離脱可能に締結固定した配置としている。
【0019】
インバータ11および電子制御ユニット14は何れも筐体で保護されており、本実施形態では図2に示すように電子制御ユニット14の筐体下面にブラケット21を取付け、該ブラケット21を介して電子制御ユニット14をインバータ11の筐体上面に外部入力に対して離脱可能に締結固定するようにしている。
【0020】
ブラケット21は、電子制御ユニット14を載置するほぼ平坦な定置面22の車幅方向両側に脚片23を備え、該脚片23の脚高で電子制御ユニット14をインバータ11の上
方に離間配置するようにしている。
【0021】
脚片23は、車幅方向両側で高さを異ならせると共に、車両前後方向で高さを異ならせて定置面22を車幅方向外側が低く、かつ、車両後方側を高くした傾斜面として構成している。これにより、定置面22上に取付けた電子制御ユニット14が左下がりで、かつ、後ろ上がりとなる搭載姿勢の要求に応えられるようにしている(図3参照)。
【0022】
脚片23の下縁には、締結部としてのフランジ24を側方に向けて曲折成形してあり、このフランジ24に外部入力に対して変形可能な2つの突起片25を隣設してある。
【0023】
一対の突起片25は、それらの間のスリット26が後述する軸部材として固定用の座付きボルト30が挿通可能な幅となる離間間隔で延設してある。
【0024】
このスリット26は、図6に示すように隣接する突起片25の内側延を所要の開き角度δで傾斜して形成して、これらの突起片25,25の間で突起片25の先端側に向けて徐々に広がりをもったスリット幅として形成してある。
【0025】
一方、インバータ11の筐体上面には、図4図5にも示すように、前記各一対の突起片25に対応した位置に、締結部としてのボス部12を突設してあり、該ボス部12の頂面に開口としてのねじ孔13を形成してある。
【0026】
そして、このねじ孔13に対して、各一対の突起片25,25間のスリット26を照合し、これらスリット26とねじ孔13に軸部材としての座付きボルト30を挿入,螺合して、該座付きボルト30により2つの突起片25,25をボス部12上でねじ孔13の周囲に挟み込んで締結固定している。
【0027】
図2に示す例では、車幅方向内側(車両中央側)の脚片23のフランジ24は、該脚片23の前後方向に沿って一連に形成してその前,後部に各一対の突起片25を形成する一方、車幅方向外側の脚片23のフランジ24は、該脚片23の前部に形成して、ここに一対の突起片25を形成してある。
【0028】
即ち、本実施形態では各一対の突起片25と、インバータ11側のボス部12とにより、ブラケット21を車幅方向外側の前部1点と、車幅方向内側の前,後部2点の合計3点で締結固定するようにしている。
【0029】
上述のブラケット21の定置面22には、その後縁に電子制御ユニット14よりも車両後方に突出する突き当てアーム27を延設してあると共に、該定置面22の車幅方向外側の側縁後部に電子制御ユニット14よりも車幅方向外側に突出する突き当てアーム28を延設してある。
【0030】
また、上述の電子制御ユニット14は平面矩形状に形成してあり、その筐体底面の前,後縁には締結用のフランジ片15を一段低く有段成形して前後方向に延設してある。
【0031】
そして、これらフランジ片15をブラケット21の定置面22上に重合して、該定置面22に突設したスタッドボルト18と、ナット19とにより締結固定している。
【0032】
後側のフランジ片15の左右両側部にはボルト挿通孔16を形成してある一方、前側のフランジ片15の左右両側部にはボルト挿通スリット17を形成してある。
【0033】
このボルト挿通スリット17は、その側方に外部入力に対して変形可能な突起片17a
が形成されるように、極力フランジ片15の側縁近傍に設けてある。このボルト挿通スリット17と突起片17aは、上述のブラケット21の脚片23における一対の突起片25,25と、それらの間のスリット26との関係となる構造とすることもできる。
【0034】
一方、上述の定置面22上のスタッドボルト18は、前,後フランジ片15の対角位置に設定して、後側のフランジ片15の左右何れか一方のボルト挿通孔16と、これと対角位置となる前側のフランジ片15の左右何れか一方のボルト挿通スリット17に対応した位置で締結固定するようにしている。
【0035】
即ち、本実施形態ではインバータ11と電子制御ユニット14との集合モジュールを、フロントコンパートメントの前部左側に搭載する仕様としてあるので、定置面22の前側のスタッドボルト18を、前側のフランジ片15の左側のボルト挿通スリット17に対応する位置に、および後側のスタッドボルト18を、後側のフランジ片15の右側のボルト挿通孔16に対応する位置に設定してある。右側搭載仕様では、これらスタッドボルト18と、ボルト挿通孔16およびボルト挿通スリット17とは、上述と逆の配置関係となる。
【0036】
図2図3に示す例では、上述のボルト挿通孔16とボルト挿通スリット17を、それぞれ前,後フランジ片15の左右両側部に形成して、電子制御ユニット14を左側搭載仕様と右側搭載仕様とに共用可能としているが、専用とする場合は、これらボルト挿通孔16とボルト挿通スリット17を対角位置に1つ設定すればよい。
【0037】
以上の構成からなる本実施形態によれば、2つの突起片25,25間のスリット26は突起片25の延出方向の外部入力に対しては座付きボルト30の軸部から抜け易い。また、2つの突起片25,25はその挟み方向の外部入力に対しては板厚方向に曲げ変形し、座付きボルト30の軸部と交差する方向の外部入力に対しては少なくとも一方の突起片25が挟み込まれた状態でスリット26が拡開する方向に曲げ変形が可能である。
【0038】
図7図9は、車両の前面衝突時におけるインバータ11と電子制御ユニット14の挙動を示している。
【0039】
車両の前面衝突により、図1に示すフロントコンパートメント前部の車体強度メンバ1〜4が変形して後退移動すると、フロントサイドメンバ1上に結合したマウントブラケット5も一体に後退移動する。
【0040】
これに伴って、インバータ11と電子制御ユニット14が結合状態のまま図7の矢印a1に示すように、マウントブラケット5と一体に後退移動する。
【0041】
この後退移動の過程で、図8に示すようにブラケット21の後方に張り出した突き当てアーム27が車体側部材Bに突き当ると、インバータ11と電子制御ユニット14との締結部分に車両前後方向に衝突入力が作用する。
【0042】
この締結部分では、上述のように座付きボルト30によりボス部12上に挟み込まれた2つの突起片25,25に、該座付きボルト30の軸部と交差する方向に衝突入力が作用する。
【0043】
このとき、2つの突起片25,25の少なくとも後側の突起片25がボルト軸部により、上述の挟み込まれた状態でスリット26が拡開する車両後方に曲げ変形して、ボルト軸部からスリット26が抜け出る。
【0044】
これにより、図9に示すようにブラケット21が電子制御ユニット14と共にインバータ11の上面から離脱し、電子制御ユニット14が車体側部材Bにより後退方向の動きが拘束されたまま、インバータ11の矢印a2方向の後退移動が許容される。
【0045】
この結果、高電圧部品であるインバータ11の筐体上面が、ブラケット21の締結部分で破損するのが回避され、同様に電子制御ユニット14の筐体が破損するのを回避することができる。
【0046】
このため、インバータ11の筐体を必要以上に剛体構造としなくても済むので、インバータ11の軽量化を図ることができる。
【0047】
車両の斜め前方衝突、あるいは側面衝突により、フードリッジメンバ等の車体側面部材が変形した場合、上述のブラケット21の車幅方向外側に張り出した突き当てアーム28にこの車体側面部材が干渉して、インバータ11と電子制御ユニット14との締結部分が車幅方向に衝突入力が作用する。
【0048】
この締結部分では、ブラケット21の車幅方向外側の脚片23側において、上述のように突き当てアーム28によりボス部12上に挟み込まれた2つの突起片25,25間のスリット26が、ボルト軸部から抜ける方向に衝突入力が作用する。
【0049】
これにより、スリット26がボルト軸部から抜け出て、図10の鎖線21Aで示すようにブラケットの脚片23Aの一方がインバータ11の上面から離脱すると共に、車両中央側では他方の脚片23Aが締結状態のまま車幅方向に座屈変形して、インバータ11に対する電子制御ユニット14の車幅方向の相対移動が許容される。
【0050】
これにより、インバータ11と電子制御ユニット14との締結部分で相互に破損するのを回避することができる。
【0051】
また、車両の前面衝突時等に、ブラケット21の前端部分に上向きに衝突入力が作用した場合には、座付きボルト30によりボス部12上に挟み込まれた2つの突起片25,25が板厚方向に曲げ変形してスリット26がボルト軸部から抜け出る。
【0052】
これにより、図10の鎖線21Bで示すようにブラケットの左右の脚片23Bがインバータ11の上面から離脱し、インバータ11と電子制御ユニット14との締結部分で相互に破損するのを回避することができる。
【0053】
この場合、ブラケット21の定置面22に、突き当てアーム27,28と同様の突き当てアームを車両前方に向けて張り出して設ければ、上述のブラケット21の離脱入力を容易に取り込むことができる。
【0054】
このように、本実施形態の構成によれば、インバータ11と電子制御ユニット14との締結部分にあらゆる方向から衝突入力(外部入力)が作用した場合でも、2つの突起片25,25間のスリット26と固定用の座付きボルト30とが相互に離脱し、締結部分で部品相互が破損するのを回避することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の構造では、車両の側面衝突時に電子制御ユニット14に衝突入力が直接車幅方向内側に向けて作用した場合、前側のフランジ片15の突起片17aがボルト挿通スリット17が拡開する方向に変形する。
【0056】
これにより、ボルト挿通スリット17がスタッドボルト18から離脱し、電子制御ユニ
ット14が後側のフランジ片15を締結したスタッドボルト18を中心にブラケット21上を車幅方向内側に回動して緩衝機能し、自体の破損を回避することができる。
【0057】
ここで、ブラケット21の突起片25は、インバータ11に対する電子制御ユニット14の装着形態に応じて、例えば、図11の(A),(C)に示すように突起片25の延出方向を上下方向に、または、図11の(B)に示すように斜め上下方向に、あるいは図示は省略したが前後方向に設定して、あらゆる方向の外部入力にも対応させることが可能である。
【0058】
また、本実施形態では上述のように電子制御ユニット14に付設したブラケット21を介してインバータ11の上面に締結する構造とし、このブラケット21の脚片23により電子制御装置14をインバータ11の上面から離間配置してある。
【0059】
これにより、車両衝突時における電子制御ユニット14の慣性力や、衝突入力で脚片23の倒れ変形(座屈変形)、あるいは突起片25の板厚方向の曲げ変形を誘起し易く、前述の座付きボルト30からの離脱作用を有利に行わせることができる。
【0060】
また、2つの突起片25,25間のスリット26は、突起片25の先端側に向けて徐々に広がりをもったスリット幅としてある。これにより、突起片25の延出方向と平行な入力方向に対しては、ボルト軸部から抜け易く、この延出方向と直交したボルト軸部とが直交して係合する入力方向に対しては、ボルト軸部に対してスリット26の側縁が抜け方向に滑り易くなって、突起片25の変形または破断を誘起し易くなる。
【0061】
更に、本実施形態では、2つの突起片25を車両前後方向に対して交差する方向に延出してあるので、衝突傾向性の多い車両の前面衝突時におけるインバータ11および電子制御ユニット14の保護対策として有効である。
【0062】
また、このように、高電圧部品であるインバータ11と、電子制御ユニット14との締結部に上述の対衝突離脱機能を付与してあるので、これら重要な電気保安部品の保護対策を有利に行える。
【0063】
そして、複数の電気部品を、あるいは電気部品とそれとは別の部品を相互に締結して、これらを集約して搭載できるため、限られた搭載スペースを有効に活用できると共に、それぞれの専用取付部品を低減できて設計上およびコスト上有利に得ることができる。
【0064】
なお、前記実施形態では電子制御ユニット14をブラケット21を介してインバータ11の上面に締結する例を示したが、ブラケット21を用いずに電子制御ユニット14に突起片とスリット構造を設定して、インバータ11に直接締結することも可能である。
【0065】
また、電気部品としてインバータ11を例示したが他の電気部品であってもよく、また、別の部品としては前期電子制御ユニット14以外の電気部品または他のモータルーム内搭載部品であってもよい。
【0066】
更に、前記実施形態におけるインバータ11と、マウントブラケット5等の車体側の部材との締結部分に本発明の締結構造を適用することも可能である。
【0067】
また、本発明は前記実施形態の他、各種の電気部品と、それとは別の部品との相互締結に有効で、その締結方向も上下方向に限らず、車両前後方向,車幅方向とすることも可能である。
【0068】
また、開口13と2つの突起片25との関係を前述とは逆の構成に、即ち、開口13を別の部品14側に、および2つの突起片25とをそれらの間のスリット26を電気部品11側に設けるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…フロントサイドメンバ(車体側の部材)
5…マウントブラケット(車体側の部材)
11…インバータ(電気部品)
12…ボス部(締結部)
13…ねじ孔(開口)
14…電子制御ユニット(別の部品)
21…ブラケット
23…脚片
24…フランジ(締結部)
25…突起片
26…スリット
30…座付きボルト(軸部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11