(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232700
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】弾性舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 11/24 20060101AFI20171113BHJP
E01C 7/32 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
E01C11/24
E01C7/32
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-277988(P2012-277988)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-122475(P2014-122475A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年12月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】国生 正人
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−176503(JP,A)
【文献】
特開2000−144616(JP,A)
【文献】
特開2006−144280(JP,A)
【文献】
特開2012−017609(JP,A)
【文献】
特開平06−264407(JP,A)
【文献】
特開2001−011811(JP,A)
【文献】
特開平11−050411(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/061905(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0229262(US,A1)
【文献】
英国特許出願公開第01514808(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る弾性舗装構造において、
前記下層に排水性能を有する舗装路面幅に延びる目地を有し、該目地が舗装路面幅方向に延びる凹部と該凹部を満たすように配置された目地材料のみから構成され、該目地材料が骨材をバインダーで固結した排水性舗装材料からなることを特徴とする弾性舗装構造。
【請求項2】
前記目地をアスファルト系排水性舗装とした請求項1に記載の弾性舗装構造。
【請求項3】
前記目地の幅を、走行中のタイヤが入り込まない寸法に設定した請求項1または2に記載の弾性舗装構造。
【請求項4】
前記目地の深さは、40mm〜100mmで、かつ下層の深さの20%〜60%に設定する請求項1,2または3に記載の弾性舗装構造。
【請求項5】
前記目地の間隔が、道路の長手方向に沿って5m〜20mである請求項1,2,3または4に記載の弾性舗装構造。
【請求項6】
前記目地は、下層のみに設ける請求項1,2,3,4または5に記載の弾性舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る弾性舗装構造に係わり、更に詳しくは表層及び/または下層にポットホール(下地と弾性舗装との境界部に発生する空洞部)が発生した場合、このポットホールを起点として車両進行方向に、タイヤの轍部近傍に沿って延長方向に発生する剥離現象を防止した弾性舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸音性、排水性及び湿潤時の耐滑り抵抗性を兼ね備えた排水性(透水性)の弾性舗装材で構成された弾性舗装構造が知られており(例えば、特許文献1参照)、この弾性舗装構造の弾性舗装材は、
図5及び
図6に示すように、道路の路盤上に積層された基層(非透水性下地:下層1)上に、接着剤等を介して弾性骨材を樹脂バインダーにより固結した透水性の弾性舗装2から成る表層を固結して構成されている。
【0003】
このような表層が透水性の弾性舗装2で、下層1が非透水性の下地から成る弾性舗装構造において、弾性舗装2(表層)及び/または下層1にポットホールPが発生した場合、このポットホールPを起点として車両の進行方向に、タイヤWの轍部近傍に沿って延長方向に剥離が発生する傾向があった。なお、図中3は集水マスを示している。
【0004】
この剥離が発生する原因としては、
図8(a)〜(f)及び
図9(a)〜(f)の説明図に示すように、車両の走行に伴い、弾性舗装2のポンピング作用(車両の重量によって弾性舗装が弾性変形して加圧部・減圧部が発生し、層内の流体を押し出す作用)によって、ポットホールPに滞留した雨水等の水分Sが轍部近傍の減圧部に噴出し、弾性舗装2と下層1との境界部に浸入することが原因と考えられる。
【0005】
そして境界部に浸入した水分Sにより剥離が促進されていると推測され、またタイヤの進行(車両の進行)と共に加圧・負圧が繰り返され、進行方向の延長上に拡大していくと推測される。
【0006】
このような剥離の拡大を防止させる対策として、ポットホールPが発生しないようにすることが考えられるが、ポットホールPは局所的な強度不足または過度の衝撃負荷により発生し、実際には対策としては難しい。またポットホールPが発生しても雨水等が滞留しないように、下層1を排水性、透水性の舗装とすることも考えられるが、構造強度が低くなると言う欠点がある。
【0007】
また、ポンピング作用が起きないようにすることも考えられるが、表層を弾性舗装以外とせざるを得ない。更に、一旦発生した滞留した水分Sの拡散を極力抑えるためには、下層1には排水機能を設けた目地を設ける必要がある。
【0008】
このように、剥離の拡大を防止させる対策として種々のことが考えられるが、それぞれの対策には問題点や欠点があり、有効な対策が未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−219856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明はかかる従来の課題に着目し、下地構造の強度を維持しながら、ポットホールを起点として車両進行方向に、タイヤの轍部近傍に沿って延長方向に発生する剥離現象を防止した弾性舗装構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は上記目的を達成するため、表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る弾性舗装構造において、前記下層に排水機能を有する舗装路面幅方向に延びる目地を有し、該目地が舗装路面幅方向に延びる凹部と該凹部を満たすように配置された目地材料
のみから構成され、該目地材料が骨材をバインダーで固結した排水性舗装材料からなることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、上記のように表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る弾性舗装構造において、前記下層に排水機能を有する舗装路面幅方向に延びる目地を設けたので、下地構造の強度を維持しながら、ポットホールを起点として車両進行方向に、タイヤの轍部近傍に沿って延長方向に発生する剥離現象を防止することが出来、これにより一旦発生した剥離部の拡大を防止するので、補修費用の削減を図ることが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明を実施した表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る弾性舗装構造の縦断面図である。
【
図2】
図1の道路幅のセンターラインX−Xに沿った道路の半平面図である。
【
図6】
図5の道路幅のセンターラインX−Xに沿った道路の半平面図である。
【
図7】(a)〜(c)は、この発明の弾性舗装構造の施工工法の説明図である。
【
図8】(a)〜(f)は、表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る従来の弾性舗装構造における排水後のポットホールP部の保水状況において、ポットホールPを起点として車両の進行方向に、タイヤの轍部近傍に沿って延長方向に剥離が発生する原因の説明図である。
【
図9】(a)〜(f)は、表層が透水性の弾性舗装で、下層が非透水性の下地から成る従来の弾性舗装構造における排水途中のポットホールP部の保水状況において、ポットホールPを起点として車両の進行方向に、タイヤの轍部近傍に沿って延長方向に剥離が発生する原因の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
なお、従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
図1は、この発明を実施した表層が透水性の弾性舗装2で、下層1が非透水性の下地から成る弾性舗装構造の縦断面図、
図2は
図1の道路幅のセンターラインX−Xに沿った道路の半平面図、
図3は
図2のa1−a2に沿う横断面図、
図4は
図2のb1−b2に沿う横断面図を示し、図中3は集水マス、Wは車両のタイヤ、Sは雨水等の水分を示している。
【0015】
この発明の実施形態では、上記のように表層が透水性の弾性舗装2で、下層1が非透水性の下地から成る弾性舗装構造であって、下地構造の強度を維持しながら、ポットホールPを起点として車両進行方向に、タイヤWの轍部近傍に沿って延長方向に発生する剥離現象を防止するために、下層1に排水機能を有する舗装路面幅方向Zに延びる目地5を設けて構成したものである。
【0016】
前記弾性舗装2の目地5の目地材料4としては、例えば、単粒度の砕石、小石、スラグ、粒状樹脂及び粒状ゴムなどの骨材をアスファルト系,セメント系及び樹脂系バインダーで固結した排水性舗装材料等があり、前記目地5の幅Lを、走行中のタイヤWが入り込まない寸法(例えば、250mm以下)に設定し、前記目地5の深さHは、40mm〜100mmで、かつ下層1の深さの20〜60%に設定し、前記目地の間隔が、道路の長手方向に沿って5m〜20mであることが好ましい。
【0017】
深さHが40mm〜100mmで、かつ下層1の深さの20〜60%に設定すると、排水機能にすぐれ、目地部の強度を維持するとともに下地構造の強度を維持することが出来る。更に、目地は、下層1のみに設けるのが好ましい。
【0018】
次に、
図7(a)〜(c)は、この発明の弾性舗装構造の施工工法の説明図であって、先ず道路の非透水性の下地から成る下層1を施工した後、下層1の表面に道路の長手方向に沿って5m〜20mの間隔で所定幅の目地5を構成するための凹部6を切断・切削して形成する。
【0019】
この目地5を構成するための凹部6は、目地5の幅Lを、走行中のタイヤWが入り込まない寸法(例えば、250mm)に設定すると共に、前記目地5の深さHは、40mm〜100mmで、下層1の深さの20%〜60%に設定するものである。
【0020】
そして、目地5を構成するための凹部6を形成した後に、この凹部6に目地材料4を充填して施工し、更に、その上に透水性の弾性舗装2を所定の厚さで施工するものである。
【0021】
このように、表層が透水性の弾性舗装2で、下層1が非透水性の下地から成る弾性舗装構造において、前記下層1に排水機能を有する舗装路面幅方向Zに延びる目地5を設けたので、仮にポットホールPが発生したとしても、そのポットホールPに溜まった水分Sは車両の走行時に進行方向に延びたとしても、目地5に浸入して舗装路面幅方向Zの延びる目地5から道路外部に排出されることになる。
【0022】
従って、透水性の弾性舗装2の下地構造の強度を弱めることなく、ポットホールPを起点として車両進行方向に、タイヤWの轍部近傍に沿って延長方向に発生する剥離現象を防止することが出来る。またこれにより一旦発生した剥離部の拡大を防止するので、補修費用の削減を図ることが出来るものである。
【符号の説明】
【0023】
1 下層
2 弾性舗装
3 集水マス
4 目地材料
5 目地
W 車両のタイヤ
P ポットホール
S 水分
X−X 道路幅のセンターライン