(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1では、回転制御装置が正常に作動していないと、正常な制動制御を行うことができない。このため、発電機の起動直後で、電源回路の電源電圧が回転制御装置を正常に作動できる電圧に上昇するまでの低電圧領域では、回転制御装置からスイッチ用トランジスターに出力される制動制御信号に、外的要因や回路の特性などによってノイズが混入する場合があった。このようなノイズが混入すると、意図しないタイミングで前記スイッチ用トランジスターをオン制御する制動制御信号を入力してしまうことがあった。この場合、ブレーキがオン制御されるために発電機の回転スピードが遅くなり、発電機から電源回路へ供給される電力が増大しない。その結果、電源回路の電源電圧が上がらないため、回転制御装置を正常に作動することができず、前記スイッチ用トランジスターのオン制御を継続してしまう、という悪循環が発生する場合がある。このような悪循環が発生すると、回転制御装置を正常に作動可能な電圧を得ることができず、いつまで経っても回転制御装置を作動させることができなかった。
【0008】
本発明の目的は、発電機の起動時に回転制御装置を確実に作動させることができる電子制御式機械時計および電子制御式機械時計の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子制御式機械時計は、機械的エネルギー源と、前記機械的エネルギー源によって駆動されて電気的エネルギーを供給する発電機と、前記電気的エネルギーが充電される電源回路と、前記電源回路から供給される電気的エネルギーで駆動されて発振信号を発生させる発振信号発生源と、前記電源回路から供給される電気的エネルギーで駆動されて前記発電機の回転周期を制御する回転制御装置と、を備え、前記回転制御装置は、前記発電機の制動制御を行う制動制御装置と、前記発振信号発生源による発振の開始を検出可能であり、前記発振の開始を検出していない場合、前記発電機を非制動状態に維持し、前記発振の開始を検出した場合、前記制動制御装置による前記発電機の制動制御を行わせる制動可否制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、制動可否制御装置は、発振の開始を検出していない場合は、発電機を非制動状態に維持し、発振の開始を検出した場合は、制動制御装置による発電機の制動制御を行わせる。
発電機の起動直後において電源回路の電源電圧が回転制御装置を正常に作動させるには不十分である低電圧領域の場合は、発振信号発生源でも発振を開始しない。このため、制動可否制御装置で発振の開始を検出するまでは、発電機を非制動状態(ブレーキオフ状態)に維持することで、ノイズなどの影響で発電機にブレーキを掛けてしまうことを防止でき、従来例において起こりうる、上述の一連の悪循環に陥ることを防止できる。従って、発電機の起動直後においても、発電機による発電を継続できて電源電圧を上昇させることができ、回転制御装置を確実に作動させることができる。
また、発振の開始を検出した場合は、回転制御装置を作動させることができ、制動制御装置による発電機の制動制御を行わせることができる。
【0011】
本発明において、前記回転制御装置は、前記発振信号発生源を用いて発振信号を出力する発振回路と、前記発振信号を分周する分周回路と、を備え、前記制動可否制御装置は、前記発振回路または前記分周回路から出力された信号に基づいて発振の開始を検出することが好ましい。
本発明によれば、制動可否制御装置は、発振回路から出力される発振信号、または分周回路から出力される信号に基づいて、発振の開始を検出する。このため、発振回路または分周回路が安定的に作動して発振開始が検出されない限り、発電機を非制動状態とすることができ、発電機の起動直後においても、発電機による発電を継続できて電源電圧を上昇させることができ、回転制御装置を確実に作動させることができる。
【0012】
本発明において、前記制動可否制御装置は、前記発振の開始を検出する発振開始検出回路を備え、前記発振開始検出回路は、第1の電圧の印加端に接続された第1のコンデンサーと、前記第1のコンデンサーおよび第2の電圧の印加端の間に接続された第1のスイッチと、前記第1のコンデンサーに並列に、前記第1の電圧の印加端に接続された第2のコンデンサーと、前記第1のコンデンサーに並列、かつ、前記第1のスイッチおよび前記第2のコンデンサーに直列に接続された第2のスイッチと、一端が前記第1の電圧の印加端に接続され、他端が前記第2のコンデンサーと前記第2のスイッチとの接続点に接続された抵抗と、入力端子が前記接続点に接続され、入力電圧に基づいて、LレベルまたはHレベルの信号を出力するインバーターと、を備え、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは、前記発振回路または前記分周回路からクロック信号が出力されると、前記クロック信号によって交互にオン、オフされることが好ましい。
【0013】
このように構成された、発振開始検出回路では、発振回路または分周回路からクロック信号が出力されると、第1のスイッチと第2のスイッチが交互にオン、オフされる。第1のスイッチがオンの場合、第1のコンデンサーに電荷が蓄積され、第2のスイッチがオンの場合、第1のコンデンサーに蓄積された電荷が第2のコンデンサーに移動する。これを繰り返すことにより、第2のコンデンサーの電圧値が増大する。インバーターの入力端子は、第2のコンデンサーと第2のスイッチとの接続点に接続されているので、第2のコンデンサーの電圧値に応じて、入力電圧が変化する。インバーターは、入力電圧に基づいて、LレベルまたはHレベルの信号を出力する。
本発明によれば、一端が第1の電圧の印加端に接続され、他端が上記接続点、すなわちインバーターの入力端子側に接続された抵抗を備え、この抵抗は、インバーターの入力端子側の電圧を第1の電圧に引っ張る、プルアップ抵抗またはプルダウン抵抗として機能する。例えば、第1の電圧がVDDであり第2の電圧がVSS(<VDD)である場合、プルアップ抵抗として機能し、第1の電圧がVSSであり第2の電圧がVDDである場合、プルダウン抵抗として機能する。従って、発電機の起動直後であって電源回路の電源電圧が低い場合、インバーターの入力端子側の電圧が不安定になることを防止できる。このため、発振回路が発振していないにも関わらずインバーターの出力電圧が発振開始を示すレベルに切り替わることを確実に防止でき、発振開始検出回路は、発振開始状態を確実に検出することができる。
【0014】
上述のように、第1のスイッチがオン(第2のスイッチがオフ)されて第1のコンデンサーに蓄積された電荷が、第2のスイッチがオン(第1のスイッチがオフ)されて第2のコンデンサーに移動することで、第2のコンデンサーの電圧が増大し、インバーターの入力電圧が変化する。この動作を繰り返して前記入力電圧が閾値を跨ぐと、インバーターの出力電圧が発振開始を示すレベルに切り替わる。
本発明によれば、発振が開始して、クロック信号が発生しても、第2のスイッチがオフの間、すなわち少なくともクロック信号の半周期の間は、第2のコンデンサーに電荷が蓄積されない。従って、発振が開始しても、少なくともクロック信号の半周期の間は、インバーターの出力電圧が、発振開始を示すレベルに切り替わることを確実に防止でき、発振開始までの時間、すなわち発振非検出信号が出力されている時間を少なくともクロック信号の半周期確保することができる。
また、本発明によれば、発振開始検出回路では、第1のコンデンサーと第2のコンデンサーとの容量比によって、第2のコンデンサーへの電荷が貯まっていく時間を調整でき、発振非検出信号が出力し続ける時間をさらに調整できる。
この発振非検出信号は、初期化が必要な回路の初期化信号として用いることができる。従って、本発明によれば、前記回路を初期化するために必要な時間だけ初期化信号を出力でき、前記回路を確実に初期化することができる。
【0015】
本発明において、前記電源回路の入力端子および発電機の第1の出力端子間に接続された第1のチョッピングトランジスターと、前記電源回路の前記入力端子および発電機の第2の出力端子間に接続された第2のチョッピングトランジスターと、を備え、前記制動制御装置は、前記第1および第2のチョッピングトランジスターのオン、オフ制御を行うためのチョッピング信号を出力するチョッピング信号出力回路を備え、前記制動可否制御装置は、前記発振の開始を検出可能であり、前記発振の開始を検出していない場合、発振非検出信号を出力し、前記発振の開始を検出した場合、発振検出信号を出力する発振開始検出回路と、前記発振非検出信号が入力されている場合、前記第1および第2のチョッピングトランジスターのオフ制御を行うオフ信号を出力し、前記発振検出信号が入力されている場合、前記チョッピング信号に応じて前記第1および第2のチョッピングトランジスターのオン、オフ制御を行う制動制御信号を出力する制動制御信号出力回路と、を備えることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、発振開始検出回路は、発振の開始を検出していない場合、発振非検出信号を出力し、発振の開始を検出した場合、発振検出信号を出力する。そして、制動制御信号出力回路は、発振非検出信号が入力されている場合にオフ信号を出力し、第1および第2のチョッピングトランジスターをオフ状態とする。
このような構成では、発電機の起動直後において電源回路の電源電圧が回転制御装置を正常に作動させるのには不十分であっても、発振開始検出回路によって発振開始の有無を確実に検出でき、発振開始を検出しない限り、制動制御信号出力回路によって確実に発電機を非制動状態とすることができる。従って、発電機の起動直後に、発電機による電気的エネルギーへの変換を確実に行うことができ、電源回路に回転制御装置を正常に作動可能な電気的エネルギーを確実に充電でき、回転制御装置を正常に起動させることができる。
【0017】
本発明の電子制御式機械時計の制御方法は、機械的エネルギー源と、前記機械的エネルギー源によって駆動されて電気的エネルギーを供給する発電機と、前記電気的エネルギーが充電される電源回路と、前記電源回路から供給される電気的エネルギーで駆動されて発振信号を発生させる発振信号発生源と、前記電源回路から供給される電気的エネルギーで駆動されて前記発電機の回転周期を制御する回転制御装置と、を備える電子制御式機械時計の制御方法であって、前記回転制御装置は、前記発振信号発生源による発振の開始を検出するステップと、前記発振の開始を検出していない場合、前記発電機を非制動状態に維持し、前記発振の開始を検出した場合、前記発電機の制動制御を行うステップと、を実行することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記電子制御式機械時計と同じ作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[電子制御式機械時計の構成]
図1は、本発明の一実施形態の電子制御式機械時計を示すブロック図を、
図2は、電子制御式機械時計を示す回路図を示す。
電子制御式機械時計は、機械的エネルギー源としてのゼンマイ1と、ゼンマイ1のトルクを発電機2に伝達するエネルギー伝達装置としての増速輪列3と、増速輪列3に連結されて時刻表示を行う指針4とを備えている。
【0021】
発電機2は、増速輪列3を介してゼンマイ1によって駆動され、誘起電力を発生して電気的エネルギーを供給する。この発電機2からの交流出力は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなる整流回路5を通して昇圧、整流され、電源回路6に充電供給される。
【0022】
[回転制御装置の構成]
前記発電機2は、電源回路6から供給される電力によって駆動される回転制御装置7により制御されている。この回転制御装置7は、ICによって構成され、
図1に示すように、発振回路71、分周回路72、回転検出回路73、制動制御装置74、および制動可否制御装置75を備えて構成されている。
【0023】
発振回路71は、発振信号発生源である水晶振動子71Aを用いて発振信号fs1(32768Hz、
図3参照)を出力し、この発振信号fs1は分周回路72によってある一定周期まで分周される。分周回路72は、発振信号fs1を分周して、複数の周波数(たとえば、2kHz〜8Hz)のクロック信号fs2−1〜fs2−nを出力する。
回転検出回路73は、発電機2に接続された図示しない波形整形回路とモノマルチバイブレーターとで構成され、ローター2Aの回転検出信号FG1を出力する。
【0024】
制動制御装置74は、チョッピング信号出力回路741と、電圧変換回路742とを備える。
チョッピング信号出力回路741は、前記クロック信号fs2−1〜fs2−nのうち、通常運針時の発電機2のローター2A(
図2参照)の基準回転速度の信号(たとえば、8Hzの信号fs2−n)を、制動制御を行うための基準信号fs2として選択し、この基準信号fs2と、回転検出信号FG1とを比較し、発電機2の調速を行うためのチョッピング信号を出力する。この際、チョッピング信号出力回路741は、分周回路72から入力されるクロック信号fs2−1〜fs2−nから選択した複数の信号を用いることなどで、チョッピング信号を生成する。
【0025】
電圧変換回路742は、チョッピング信号の電圧レベルを大きくする。本実施形態において、発振回路71、分周回路72、チョッピング信号出力回路741等の回路は、VDDとの電位差がVSSよりも小さい定電圧VREGで駆動され、後述するブレーキ回路や整流回路5は電源電圧VSSで駆動される。チョッピング信号の電圧レベルをVSSレベルに変換する電圧変換回路742を備えることにより、発振回路71、分周回路72、チョッピング信号出力回路741等の回路を定電圧VREGで駆動させることができ、消費電力を抑制することができる。
なお、電圧変換回路742から出力される信号は、電圧値が異なる以外は基本的にチョッピング信号と同様の特徴(パルス幅、周波数等)を有する信号なので、以下、電圧変換回路742から出力される信号をチョッピング信号CH(
図1参照)と称する。
【0026】
制動可否制御装置75は、発振回路71から入力された発振信号fs1から、水晶振動子71Aによる発振が開始したかを検出可能に構成され、発振開始の検出、非検出に応じて、発電機2に非制動状態とする、または制動制御を行う制動制御信号BKSを入力する。制動可否制御装置75は、発振開始検出回路751と、制動制御信号出力回路752とを備える。
【0027】
発振開始検出回路751は、発振回路71から入力された発振信号fs1に基づいて、発振開始を検出可能に構成され、検出結果に応じた検出信号DSを出力する。発振開始検出回路751は、一定のクロック信号が継続して入力されたことを検出することで発振開始を検出する。
【0028】
図3に、後述する電源回路6の電源コンデンサー61の電圧VCと、発振回路71、電圧変換回路742、発振開始検出回路751および制動制御信号出力回路752のそれぞれから出力される発振信号fs1、チョッピング信号CH、検出信号DS、および制動制御信号BKSとの時間変化を模式的に示す。
図3に示すように、発振開始検出回路751は、発振開始を検出していない場合、発振非検出信号として、Lレベルの検出信号DSを出力し、発振開始を検出した場合、発振検出信号として、Hレベルの検出信号DSを出力する。なお、発振が開始されてから発振開始検出回路751が発振開始を検出するまでの時間は、実際には数msec程度である。
【0029】
このような発振開始検出回路751は、トランジスター、コンデンサー、インバーターなどを備え、クロック信号が入力されることでコンデンサーの電位を高め、所定の電位になるとインバーターの出力を反転することで、Lレベルの発振非検出信号からHレベルの発振検出信号を出力する。
図4は、発振開始検出回路751の回路構成を示す。発振開始検出回路751は、
図4に示すように、第1のスイッチとしてのNchのトランジスター81と、第2のスイッチとしてのNchのトランジスター82と、第1のコンデンサー83と、第2のコンデンサー84と、抵抗85と、反転回路86と、波形整形用インバーター87とを備える。
【0030】
第1のコンデンサー83は、本発明の第1の電圧であるVDDの印加端(第1の電圧VDDが印加される電源ライン)に接続されている。
トランジスター81は、第1のコンデンサー83と、本発明の第2の電圧であるVSSの印加端(第2の電圧VSSが印加される電源ライン)との間に接続されている。このトランジスター81は、ゲートに発振信号fs1が入力され、この発振信号fs1によってオン、オフされる。
第2のコンデンサー84は、第1のコンデンサー83に並列に、VDDの印加端に接続されている。
トランジスター82は、第1のコンデンサー83に並列、かつ、トランジスター81および第2のコンデンサー84に直列に接続されている。すなわち、一端がVDDの印加端に接続された第1のコンデンサー83および第2のコンデンサー84の他端間に、トランジスター82は接続されている。このトランジスター82は、ゲートに反転回路86が接続され、反転回路86によって発振信号fs1の位相が反転された反転信号xfs1が入力される。トランジスター82は、反転信号xfs1によってオン、オフされる。
抵抗85は、第2のコンデンサー84に並列に、一端がVDDの印加端に接続され、他端がトランジスター82と第2のコンデンサー84との接続点に接続されている。
【0031】
波形整形用インバーター87は、Pchトランジスター871と、Nchトランジスター872とのドレインを互いに接続したCMOSインバーターである。
Pchトランジスター871のソースはVDDの印加端に接続され、一方、Nchトランジスター872のソースはVSSの印加端に接続されている。また、Pchトランジスター871およびNchトランジスター872のゲートは、トランジスター82と第2のコンデンサー84との接続点(すなわち、抵抗85の他端側)に接続されている。
【0032】
このように構成された発振開始検出回路751は、一定のクロック信号としての発振信号fs1に応じて、トランジスター81と、トランジスター82とが交互にオンとオフを繰り返す。トランジスター81がオンの時は、第1のコンデンサー83に電荷が蓄えられ、トランジスター82がオンの時は、第1のコンデンサー83に蓄えられた電荷が第2のコンデンサー84に移動する。これを繰り返すことで、第2のコンデンサー84に蓄えられた電荷量が徐々に増加すると、第2のコンデンサー84の電圧が大きくなり、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧がVSS方向、すなわちマイナス方向に大きくなっていく。このゲート側の電圧が所定値を下回ると、波形整形用インバーター87の出力である検出信号DSが、Lレベル(VSSレベル)から、Hレベル(VDDレベル)に切り替わる。
【0033】
なお、発振が停止して、一定のクロック信号としての発振信号fs1の入力が停止すると、第2のコンデンサー84に蓄積された電荷が、抵抗85によって放電され、コンデンサー84の電圧が低くなる。すなわち、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧が高くなり、所定値以上になると、波形整形用インバーター87の出力である検出信号DSが、HレベルからLレベルに切り替わる。
【0034】
制動制御信号出力回路752は、発振開始検出回路751から発振非検出信号であるLレベルの検出信号DSが入力されている場合、第1および第2のチョッピングトランジスター21,22をオフ制御するオフ信号としての制動制御信号BKSを出力する。また、制動制御信号出力回路752は、発振検出信号であるHレベルの検出信号DSが入力されている場合、チョッピング信号CHに応じて第1および第2のチョッピングトランジスター21,22をオン、オフ制御を行う制動制御信号BKSを出力する。
【0035】
本実施形態では、制動制御信号出力回路752は、
図2に示すように、NAND回路で構成され、電圧変換回路742および発振開始検出回路751からの入力に応じた信号を出力する。
すなわち、制動制御信号出力回路752は、
図3に示すように、発振開始の検出前では、発振開始検出回路751からLレベルの検出信号DSが入力され、電圧変換回路742から入力されるチョッピング信号CHによらず、オフ信号としてのHレベルの制動制御信号BKSを出力する。また、発振開始の検出以降では、発振開始検出回路751からHレベルの検出信号DSが入力され、電圧変換回路742から入力されるチョッピング信号CHの電圧レベルを反転させた制動制御信号BKSを出力する。
制動制御信号BKSは、後述する第1および第2のチョッピングトランジスター21,22のゲートへ入力される(
図2参照)。
【0036】
[電源回路の構成]
電源回路6は、
図2に示すように、電源コンデンサー61、補助コンデンサー62、電源コンデンサー61に直列に接続されたスイッチ63を備えている。
電源コンデンサー61と補助コンデンサー62は、発電機2に対して並列に接続されている。また、補助コンデンサー62の容量は、電源コンデンサー61の容量に比べて小さく設定されている。すなわち、電源コンデンサー61は、1〜15μF程度、たとえば10μF程度の静電容量を有している。一方、補助コンデンサー62は、0.05〜0.5μF程度、たとえば0.1μF程度の静電容量を有している。
【0037】
スイッチ63は、リューズの引き出し操作に連動して作動される機械的スイッチであり、指針4の針合わせ操作のためにリューズを二段目まで引き出すと切断される。スイッチ63が切断されると、発電機2が停止する。従って、針合わせ操作時には、指針4の運針も停止でき、かつ、電源コンデンサー61に充電された電力が消費されることも防止できる。このため、針合わせ操作時には、電源コンデンサー61も比較的高い電圧(たとえば1V)に維持でき、針合わせ操作後にスイッチ63が接続された場合にICを確実に駆動できる。
【0038】
また、電源コンデンサー61に並列に接続された補助コンデンサー62を備えているので、振動・衝撃等によりスイッチ63が一瞬外れて、電源コンデンサー61がIC(回転制御装置7)から切り離されてしまっても、一瞬であれば補助コンデンサー62によりICへの電源供給が行え、ICがシステムダウンすることを防止できる。
【0039】
[ブレーキ回路]
本実施形態では、
図2にも示すように、発電機2を調速機として機能させるためにブレーキ回路を備えている。
ブレーキ回路は、発電機2で発電された交流信号(交流電流)が出力される第1の出力端子MG1に接続された第1のチョッピングトランジスター21と、前記交流信号が出力される第2の出力端子MG2に接続された第2のチョッピングトランジスター22とを有し、各チョッピングトランジスター21,22をオンすることにより、第1、第2の出力端子MG1,MG2を短絡させて閉ループ状態にし、発電機2にショートブレーキを掛けるようになっている。
これらの各チョッピングトランジスター21,22は、電源回路6の入力端子側(VDD側)に接続されている。
【0040】
各チョッピングトランジスター21,22は、Pchの電界効果型トランジスター(FET)で構成されている。これらの各チョッピングトランジスター21,22のゲートには、制動制御信号出力回路752から制動制御信号BKSが入力される。このため、各トランジスター21,22は、制動制御信号BKSがLレベルとなっている間はオン状態に維持される。一方、制動制御信号BKSがHレベルとなっている間は、各トランジスター21,22はオフ状態に維持され、発電機2にはブレーキが加わらない。
すなわち、制動制御信号BKSのレベルによって、各チョッピングトランジスター21,22のオン、オフが制御され、発電機2をチョッピング制御することができる。
【0041】
ここで、発振開始の検出以降において、制動制御信号BKSは、たとえば128Hzの信号であり、デューティ比を変えることで、発電機2のブレーキ力を調整する。すなわち、制動制御信号BKSの1周期においてLレベルの期間が長ければ、各チョッピングトランジスター21,22がオン状態に維持されてショートブレーキが加えられる期間も長くなる。
【0042】
なお、制動制御信号BKSのデューティ比を変更するには、チョッピング信号出力回路741から出力されるチョッピング信号のデューティ比を変更すればよい。このため、チョッピング信号出力回路741は、たとえば、デューティ比が異なる2種類のチョッピング信号を切り替えて出力する。すなわち、基準信号fs2に比べて回転検出信号FG1の周期が大幅に短い場合には、ブレーキ力が強い強ブレーキ用のチョッピング信号を出力し、基準信号fs2と回転検出信号FG1の周期の差が小さい場合には、ブレーキ力が弱い弱ブレーキ用のチョッピング信号を出力する。
【0043】
[整流回路]
整流回路5は、第1の整流用スイッチ23と、第2の整流用スイッチ24と、ダイオード25と、ダイオード26と、昇圧用コンデンサー27とを備えている。
第1の整流用スイッチ23は、第1のチョッピングトランジスター21と並列に接続され、かつ、第2の出力端子MG2にゲートが接続された第1の整流用トランジスターで構成されている。
同様に、第2の整流用スイッチ24は、第2のチョッピングトランジスター22と並列に接続され、かつ、第1の出力端子MG1にゲートが接続された第2の整流用トランジスターで構成されている。
これらの各整流用トランジスターも、Pchの電界効果型トランジスター(FET)で構成されている。
ダイオード25,26は、一方向に電流を流す一方向性素子であればよく、その種類は問わない。特に、電子制御式機械時計では、発電機2の起電圧が小さいため、ダイオード25,26としては降下電圧や逆リーク電流が小さいショットキーバリアダイオードやシリコンダイオードを用いることが好ましい。
【0044】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、第1のチョッピングトランジスター21、第2のチョッピングトランジスター22、第1の整流用スイッチ23、第2の整流用スイッチ24、ダイオード25、ダイオード26は、回転制御装置7と同様にIC内に構成され、発電機2、ローター2A、昇圧用コンデンサー27、電源コンデンサー61、補助コンデンサー62、およびスイッチ63はICの外部に設けられている。
【0045】
各チョッピングトランジスター21,22の能力、つまりサイズは、発電機2におけるチョッピング時の電流に基づいて設定されている。
たとえば、本実施形態の発電機2におけるチョッピング時の電流は、電圧1.5V発生時に約40μAである。このため、ICの設計において、従来のチョッピング用トランジスターのサイズは、たとえば、幅Wが500μm、チャネル長Lが1μmに設定されていた。
これに対し、本実施形態では、2つのチョッピングトランジスター21,22で構成しているので、各トランジスター21,22のサイズ(面積、能力)は、従来に比べて半分でよい。このため、ICの設計において、各チョッピングトランジスター21,22の幅Wは、たとえば250μm、チャネル長Lは1μmとされている。
【0046】
[電子制御式機械時計の動作]
次に、本実施形態における動作を説明する。
巻き上げられたゼンマイ1が解放されて、発電機2から電気的エネルギーの供給が開始されると、
図3に示すように、電源回路6の電源コンデンサー61の電圧VCが上昇し、回転制御装置7への印加電圧も上昇する。
電源コンデンサー61の電圧VCが回転制御装置7を正常に作動可能な値になると、水晶振動子71Aによる発振が開始し、発振回路71が発振信号fs1として略一定のクロック信号の出力を開始する。なお、ゼンマイ1が解放されてから発振が開始されるまでの時間は、実際には数秒、たとえば1,2秒程度である。
【0047】
ここで、電源コンデンサー61の電圧VCが小さく、回転制御装置7が正常に作動可能ではない場合、発振回路71は、発振信号fs1として一定のクロック信号を出力できずにノイズ等の不安定な信号を出力しており、電圧値がHレベルになったり、Lレベルになったりしている。また、この不安定な信号が入力されるチョッピング信号出力回路741の出力に基づく電圧変換回路742もチョッピング信号CHとして、同様に不安定な信号を出力している。
【0048】
発振開始検出回路751は、発振開始の検出前では、Lレベルの検出信号DSを出力する。そして、発振開始検出回路751は、発振が開始されて、一定のクロック信号が継続して入力されると、第2のコンデンサー84に蓄積される電荷が増大して、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧値が低くなる。そして、この電圧値が所定値を下回ると、波形整形用インバーター87の出力が切り替わり、Hレベルの検出信号DSが出力される。このようにして、発振開始検出回路751は、発振開始を検出し、検出結果に応じた検出信号DSを出力する。
【0049】
制動制御信号出力回路752は、発振開始検出回路751からLレベルの検出信号DSが入力されている間は、電圧変換回路742から入力されるチョッピング信号CHによらず、Hレベルに維持された制動制御信号BKSを出力する。Hレベルの制動制御信号BKSが入力された各チョッピングトランジスター21,22は、オフ状態に維持される。これにより、発電機2が非制動状態に維持される。
【0050】
また、制動制御信号出力回路752は、発振開始の検出以降、発振開始検出回路751からHレベルの検出信号DSが入力されると、チョッピング信号CHの電圧レベルを反転させた制動制御信号BKSを出力する。制動制御信号BKSが入力された各チョッピングトランジスター21,22は、制動制御信号BKSのレベルに応じてオン、オフが制御される。これにより、発電機2の制動制御が行われる。
なお、本実施形態の昇圧整流の動作や、調速動作は、従来と同様であるため説明を省略する。
【0051】
[電子制御式機械時計の作用効果]
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)制動可否制御装置75は、発振信号fs1として一定のクロック信号の発生つまり発振開始を検出していない場合、発電機2を非制動状態に維持し、発振信号fs1として一定のクロック信号の発生つまり発振開始を検出した場合、制動制御装置74からのチョッピング信号CHに基づく発電機2の制動制御を行わせるように構成されている。
このような構成では、電源回路6から供給される電気的エネルギーによって作動される回転制御装置7が安定的に作動して発振開始が検出されない限り、発電機2を非制動状態とすることができる。これにより、発電機2の起動直後において電源回路6の電源電圧が回転制御装置7を正常に作動させるには不十分である場合は、発電機2にブレーキを掛けることを防止でき、電圧変換回路742等の回路の特性や、ノイズの影響などによって意図しないブレーキオン制御が継続して、回転制御装置7がいつまでも作動しないという悪循環に陥ることを防止できる。従って、発電機2の起動直後に、発電機2による発電を継続できて電源電圧を上昇させることができ、回転制御装置7を確実に起動させることができる。
【0052】
(2)制動制御信号出力回路752としてNAND回路を用いたので、発振開始検出回路751は、発振開始を検出するまでLレベルの発振非検出信号を出力し、発振開始を検出したらHレベルの発振検出信号を出力する回路を設ければよく、回路構成を簡易にできる。
また、電子制御式機械時計のICは、消費電力を低減するために、たとえば、0.3〜0.4V程度の低電圧での動作が求められる。このため、ノイズなどの影響を非常に受けやすい。従って、電源電圧が低い低電圧領域において、ノイズなどの影響を受けても、検出信号DSとしてLレベルの発振非検出信号の出力を維持できる発振開始検出回路751、および当該発振非検出信号の入力が維持される限りオフ信号の出力を維持できる制動制御信号出力回路752を備える制動可否制御装置75を用いることで、低電圧でのICの動作を保証でき、回転制御装置7を確実に起動できる。
【0053】
(3)発振開始検出回路751は、一端がVDDの印加端に、他端が波形整形用インバーター87のゲート側に接続された抵抗85を備える。この抵抗85は、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧をVDDに引っ張るプルアップ抵抗として機能する。従って、発電機2の起動直後であって電源電圧が低い低電圧領域において、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧が不安定になることを防止できる。このため、一定のクロック信号としての発振信号fs1が継続して入力されていないにも関わらず波形整形用インバーター87の出力電圧が発振開始を示すHレベルに切り替わることを確実に防止でき、発振開始検出回路751は、発振開始状態を確実に検出することができる。
【0054】
(4)発振開始検出回路751は、2つのトランジスター81,82と、2つのコンデンサー83,84とを備えるため、発振非検出信号が出力されている時間を容易に調整することができる。
すなわち、発振開始検出回路としては、VDDとVSSの印加端間に1つのトランジスターと1つのコンデンサーとを直列に接続し、この接続点に波形整形用インバーターの入力端子を接続し、前記コンデンサーの電圧を変化させて波形整形用インバーターの出力レベルを切り替えるものがある。このような構成では、トランジスターの能力や、コンデンサーの容量によっては、発振信号fs1がトランジスターをオンした最初の1クロック目で、波形整形用インバーターの出力が発振非検出信号から発振検出信号に切り替わる場合がある。この場合、発振非検出信号を出力している時間が短くなり、発振非検出信号の入力で初期化を行う回路を初期化できないおそれがある。
このような課題に対して、コンデンサーの容量を大きくしたり、トランジスターの能力を小さくすることが考えられる。しかしながら、コンデンサーの容量を大きくすると回路面積が増大してしまう。また、トランジスターの能力を小さくすると、低電圧時の動作が不安定となるおそれがある。
【0055】
これに対して、発振開始検出回路751では、トランジスター82がオフの間、すなわち少なくとも発振信号fs1の半周期の間は、第2のコンデンサー84に電荷が蓄積されない。従って、少なくとも発振信号fs1の半周期の間は、発振非検出信号を出力できる。また、発振開始検出回路751では、第2のコンデンサー84に蓄積する電荷量を、第1のコンデンサー83と第2のコンデンサー84との容量比によって調整できる。これにより、発振非検出信号の出力時間を調整できる。
例えば、第1のコンデンサー83と第2のコンデンサー84との容量比を1:5とすると、トランジスター82がオンされた際に第2のコンデンサー84に貯まる電荷は、その容量の1/5ずつになる。このため、各コンデンサー83,84の容量比で第2のコンデンサー84に電荷が貯まっていく時間を調整でき、発振非検出信号が出力されている時間を調整できる。
従って、コンデンサーの容量を大きくしたり、トランジスターの能力を小さくすることなく、発振非検出信号の出力時間を調整でき、初期化が必要な回路も確実に初期化できる。
【0056】
[実施形態の変形]
本発明は前記実施形態の構成に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
たとえば、前記実施形態では、発振開始検出回路751は、発振回路71から出力された発振信号fs1に基づいて発振開始を検出する構成としたが、分周回路72から出力された信号に基づいて検出するように構成してもよい。
図5は、本発明の一変形例に係る電子制御式機械時計の要部の回路構成を示す回路図である。本変形例の電子制御式機械時計の回転制御装置7Aにおいて、分周回路72は、クロック信号fs2−1〜fs2−nをチョッピング信号出力回路741に出力する他に、発振開始検出用の分周信号fs3を発振開始検出回路751に出力する。この分周信号fs3は、前記クロック信号fs2−1〜fs2−n(たとえば、2kHz〜8Hz)から選択すればよく、たとえば、1kHzのクロック信号を用いればよい。
【0057】
発振開始検出回路751は、前記実施形態とは異なり、発振回路71からの発振信号fs1ではなく、前記分周信号fs3が入力される。発振開始検出回路751は、分周回路72から出力された分周信号fs3が、一定のクロック信号として継続して入力されたことを検出することで発振開始を検出し、検出結果に基づく検出信号DSを出力する。
回転制御装置7Aは、それ以外の点では、
図2に示す前記実施形態の回転制御装置7と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0058】
このように構成された、本変形例では、発振開始検出回路751は、分周回路72から分周信号fs3が安定的に出力されていることを検出することで、発振開始を検出する。これにより、分周回路72が、安定的に作動し始めて、クロック信号が出力されるようになる前に、発振開始検出回路751が発振開始を検出してしまうことを防止できる。従って、発振回路71および分周回路72が安定的に動作していることを担保でき、発電機2の起動直後において上述の悪循環に陥ることをより確実に防止して、回転制御装置7Aをより確実に起動させることができる。
【0059】
前記実施形態および変形例では、制動制御信号出力回路752は、NAND回路で構成するとしたが、AND回路、OR回路、およびNOR回路といった他の論理回路を適宜用いて構成してもよい。すなわち、制動制御信号出力回路752は、各チョッピングトランジスター21,22のオフ状態に対応するゲート入力の電圧レベルがLレベルかHレベルか、および、発振開始検出回路751の発振非検出を示す検出信号DSの電圧レベルがLレベルかHレベルかに応じて、当該発振非検出を示す検出信号DSの入力時に、各チョッピングトランジスター21,22のオフ状態に対応する電圧レベルのオフ信号としての制動制御信号BKSを出力するように構成してもよい。
具体例としては、前記実施形態および変形例のように、各チョッピングトランジスター21,22が、Hレベルでオフ状態となる場合、発振開始検出回路751を、発振非検出信号としてHレベルの検出信号DS、および発振検出信号としてLレベルの検出信号DSを出力するように構成し、制動制御信号出力回路752をOR回路で構成してもよい。
【0060】
また、前記実施形態および変形例では、各チョッピングトランジスター21,22は、Hレベルでオフ状態となり、Lレベルでオン状態となるPchのFETで構成するとしたが、Lレベルでオフ状態となり、Hレベルでオン状態となるNchのFETで構成してもよい。
なお、この場合、発振開始検出回路751を、発振非検出信号としてLレベルの検出信号DS、および発振検出信号としてHレベルの検出信号DSを出力するように構成し、制動制御信号出力回路752をAND回路で構成すればよい。また、この場合、発振開始検出回路751を、発振非検出信号としてHレベルの検出信号DS、および発振検出を示す信号としてLレベルの検出信号DSを出力するように構成し、制動制御信号出力回路752をNOR回路で構成してもよい。
【0061】
図6は、発振開始検出回路の一変形例を示す。
図6に示す、発振開始検出回路751Aは、前記実施形態における発振開始検出回路751とは異なり、発振非検出信号としてHレベルの検出信号DS、および発振検出信号としてLレベルの検出信号DSを出力する。
発振開始検出回路751Aは、
図6に示すように、第1のスイッチとしてのPchのトランジスター91と、第2のスイッチとしてのPchのトランジスター92と、第1のコンデンサー93と、第2のコンデンサー94と、抵抗95と、反転回路86と、波形整形用インバーター87とを備える。
【0062】
発振開始検出回路751Aでは、第1のコンデンサー93、第2のコンデンサー94、および抵抗95は、一端がVSSの印加端に接続されており、第1の電圧がVSS、第2の電圧がVDDである。すなわち、発振開始検出回路751Aは、発振開始検出回路751に対して、第1の電圧と第2の電圧、および発振検出・非検出の出力電圧レベルが逆になるように構成されている以外は、発振開始検出回路751と基本的に同様の構成を有する。
【0063】
このように構成された発振開始検出回路751Aは、発振開始検出回路751と同様に、発振信号fs1によって、トランジスター91およびトランジスター92が交互にオン、オフされ、第2のコンデンサー94に蓄えられた電荷量が徐々に増加し、第2のコンデンサー94の電圧が増大し、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧が大きくなっていく。このゲート側の電圧が所定値を超えると、波形整形用インバーター87の出力である検出信号DSが、Hレベルから、Lレベルに反転する。
また、発振が停止すると、第2のコンデンサー94に蓄積された電荷が、抵抗95によって放電され、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧が所定値以下になったタイミングで、検出信号DSがHレベルに反転する。
【0064】
発振開始検出回路751Aでは、抵抗95は、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧をVSSに引っ張るプルダウン抵抗として機能する。これにより、電源電圧が低い低電圧領域において、波形整形用インバーター87のゲート側の電圧が不安定になることを防止できる。このため、一定のクロック信号としての発振信号fs1が継続して入力されていないにも関わらず波形整形用インバーター87の出力電圧が発振開始を示すLレベルに切り替わることを確実に防止でき、発振開始検出回路751Aは、発振開始状態を確実に検出することができる。
【0065】
なお、発振開始検出回路751とは、検出信号DSのレベルが反転している発振開始検出回路751Aを一例として説明したが、単に、検出信号DSのレベルを反転させるのであれば、波形整形用インバーター87の出力側に、さらに同様のCMOSインバーターを配置する構成としてもよい。
また、発振開始検出回路751Aにおいても、発振信号fs1の代わりに分周信号fs3を用いて、発振開始の検出を行うように構成してもよい。
また、発振開始検出回路751,751Aとして、第1の電圧がVSSおよびVDDのいずれか一方であり、第2の電圧が他方である例について説明したが、VSSの代わりにVREGを用いる構成としてもよい。
【0066】
前記実施形態および変形例では、電圧変換回路742を備える構成を例示したが、本発明はこれに限らず、電圧変換回路742を備えず、チョッピング信号出力回路741のチョッピング信号を制動制御信号出力回路752に入力するように構成してもよい。
ただし、前記実施形態のように電圧変換回路742を備えることにより、上述のように、消費電力を抑制することができる利点がある。
【0067】
前記実施形態および変形例では、発振開始検出回路751は、発振信号fs1に基づいて発振開始を検出する構成としたが、電源回路6の電源コンデンサー61の電圧VCに基づいて発振開始を検出するように構成してもよい。この場合、発振信号fs1が発生し始める電源コンデンサー61の電圧値(発生開始電圧)を予め調べておき、発振開始検出回路751は、電圧VCが発生開始電圧以下であれば、発振非検出を示す検出信号DSを出力し、超えていれば、発振検出を示す検出信号DSを出力するように構成すればよい。
【0068】
前記実施形態および変形例では、発電機2を調速機として機能させるためのブレーキ回路は、2つのチョッピングトランジスター21,22を有する構成としたが、本発明はこれに限らない。たとえば、各出力端子MG1,MG2を短絡させて閉ループ状態とすることができればよく、1つのチョッピングトランジスターを用いて構成してもよい。