特許第6232723号(P6232723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232723
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】粘着剤およびそれを用いた粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20171113BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171113BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-71505(P2013-71505)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196376(P2014-196376A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 稔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 忠士
(72)【発明者】
【氏名】田邉 慎吾
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−041453(JP,A)
【文献】 特開2012−153901(JP,A)
【文献】 特開2012−001647(JP,A)
【文献】 特開2011−219602(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/018142(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有さずカルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)と、カルボキシル基を有さず水酸基を有するアクリル系重合体(B)と、エポキシ化合物と、金属キレート化合物と、ポリイソシアネート化合物とを含み、
前記アクリル系重合体(A)は、重量平均分子量が50万〜200万で、前記アクリル系重合体(B)は、重量平均分子量が10万〜100万である粘着剤。
【請求項2】
前記アクリル系重合体(A)と前記アクリル系重合体(B)との割合が、重量比で(A)/(B)=95/5〜5/95である、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
基材と、請求項1または2記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えた、粘着シート。
【請求項4】
基材が、光学部材である請求項記載の粘着シート。
【請求項5】
23℃における、粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)が0.1〜5.0MPaであり、かつ、80℃における貯蔵弾性率(G’)が0.1〜2.0MPaであることを特徴とする請求項または記載の粘着シート。
【請求項6】
偏光板と、請求項1または2記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを含む、偏光板粘着シート。
【請求項7】
ガラス層と、請求項1または2記載の粘着剤から形成されてなる粘着剤層と、光学部材とが順次積層されてなることを特徴とする液晶セル用部材。
【請求項8】
光学部材が、偏光板であることを特徴とする請求項記載の液晶セル用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやガラス等の部材に使用できる粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子計算機、電子時計、携帯電話、テレビジョン等の家庭用・業務用電化製品など様々な機器に使用される液晶ディスプレイ等の表示装置は、大型化が進んでおり、特に液晶テレビやプラズマテレビ等は大型化が顕著である。また、近年ではスマートフォンやタブレットをはじめとするタッチパネル方式の液晶ディスプレイが急速に普及しており、今後も大きな市場拡大が期待されている。一方で、液晶ディスプレイは、カーナビゲーションなど車載機器等にも使用されており、高温高湿雰囲気などの過酷な車内環境下で使用できる耐久性が必要とされている。
そして、液晶ディスプレイには、様々な光学的機能を有する偏光板や位相差板等が用いられており、これらは粘着剤を介してガラスや透明なプラスチックを使用した液晶セル等の被着体に貼付される。
【0003】
前記偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルムがトリアセチルセルロース系フィルムやシクロオレフィン系フィルムにより、挟まれた構成の積層体である。そして、これらのフィルムは、それぞれ機械特性が異なるため加熱時の寸法変化率が異なる、そのため高温雰囲気下に置かれた場合、前記積層体に反りが生じることが多い。
【0004】
ここで例えば偏光板/粘着剤層/ガラス(ガラスは液晶セルの表面部材)の積層体を、高温雰囲気に放置すると、偏光板の構成部材間の寸法変化率に由来する反りが発生すると、粘着剤層とガラスとの貼着界面に気泡(発泡)が発生し、また偏光板がガラスから浮き上がり、剥がれるという問題が発生する。また、そりに起因して積層体の応力分布が不均一となり、応力が積層体の周辺端部へ集中した結果、積層体の四隅や周辺端部から光が漏れる、いわゆる「光漏れ現象」という問題が生じた。前記の問題は、高温高湿雰囲気でも同様に発生する。
【0005】
他方、液晶ディスプレイ等の製造工程では偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合せるときに、貼合せ位置にずれが生じた場合など、貼合せからある程度の時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが行われている。そのため粘着剤には貼付から時間が経過した後に偏光板を液晶セルから再剥離できる機能(リワーク性)が求められている。
【0006】
これらの問題を解決するために特許文献1では、光漏れの問題を解決するために、粘着剤に可塑剤など添加することで、粘着剤層を適度に軟らかくして応力緩和性を付与する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、応力緩和性を付与するために、芳香環含有モノマーを使用したアクリル系共重合体を含むことで塗膜の応力緩和性を高め、光漏れを防止する技術が開示されている。
【0008】
一方で、特許文献3では、再剥離性を付与するために、重量平均分子量50万以上の高分子量アクリル系重合体に対し、酸価が高く、重量平均分子量0.2〜10万の低分子量アクリル系重合体をブレンドする技術が開示されている。
【0009】
さらには、特許文献4では、カルボキシル基を有する重量平均分子量70万以上のアクリル系重合体と、重量平均分子量800〜5万のアクリル系重合体とを併用する事で、応力緩和性を高める技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献5では、水酸基を有するアクリル系重合体と、Tgが60℃以上の(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を含むアクリル系重合体とを併用する事で、十分な凝集力を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−87593号公報
【特許文献2】特開2007−169329号公報
【特許文献3】特開2010−100710号公報
【特許文献4】特許第4136524号公報
【特許文献5】特許第4788937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の粘着剤は、可塑剤を添加した場合、偏光板を剥離した際に被着体を汚染するブリードアウトの原因となる上、凝集力を低下させるため、経時による浮きや剥がれが生じやすくなる。また、過剰量の可塑剤添加によって、塗膜の白化が生じる問題があった。
【0013】
また、芳香環含有モノマーを使用した粘着剤は、光漏れ評価において、白抜けが発生し、また光学特性が劣る問題があった。
【0014】
また、過酸化物を使用し重量平均分子量が異なる共重合体を使用した粘着剤は、粘着剤の乾燥条件が制限されるため実用的ではなかった。
【0015】
また、過酸化物を使用しないで、重量平均分子量が異なる共重合体を使用した粘着剤は、低分子量の共重合体により凝集力が著しく低下するという問題があった。
【0016】
また、一般的な共重合体に、高Tgの共重合体を配合した粘着剤は、凝集力は良好であったが、応力緩和性が不足しているため白抜けが発生する問題があった。
【0017】
本発明は、粘着フィルムに用いたときに、剥離性に優れ、高温環境や高温高湿環境に曝された後でも被着体からの浮きや剥がれが発生しにくく、さらに光漏れ評価が良好なだけでなく、粘着フィルム生産時の圧痕が発生しない粘着層を作成できる粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、水酸基を有さずカルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)と、カルボキシル基を有さず水酸基を有するアクリル系重合体(B)と、エポキシ化合物、金属キレート化合物、およびアジリジン化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物と、ポリイソシアネート化合物とを含む粘着剤である。
に関する。
【発明の効果】
【0019】
上記のように構成した本発明によれば、粘着剤から形成した粘着剤層はアクリル系重合体(A)のカルボキシル基とエポキシ化合物、金属キレート化合物、およびアジリジン化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物が架橋反応し、アクリル系重合体(B)がポリイソシアネート化合物と架橋反応した2つのポリマーネットワークが生成する。当該粘着剤層は凝集力を損なわず、応力緩和に優れるため、高温雰囲気または高温高湿雰囲気に放置された場合に、浮きおよび剥がれが生じにくく光漏れも生じにくい、さらに粘着剤層に圧痕が生じにくいという効果を有する。
【0020】
本発明により再剥離性に優れ、高温環境や高温高湿環境に曝された後に、例えばガラスやプラスチックス等に被着体から浮きや剥がれが生じにくく、光漏れが生じにくい上、粘着剤層に圧痕が生じにくい粘着シートを作成できる粘着剤を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の粘着剤は、水酸基を有さずカルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)と、カルボキシル基を有さず水酸基を有するアクリル系重合体(B)と、エポキシ化合物、金属キレート化合物、およびアジリジン化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物と、ポリイソシアネート化合物とを含む。本発明の粘着剤は、塗工、乾燥することで粘着剤層を形成した粘着テープとして使用することが好ましい。当該粘着テープは、光学部材用、特に液晶ディスプレイの部材を接着する用途に使用することが好ましい。
【0022】
本発明においてアクリル系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体の共重合体である。アクリル系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)は、架橋反応により、それぞれポリマーネットワークを形成することで、浮きおよび剥がれ、光漏れ、ならびに圧痕を抑制する効果が得られる。なお、本発明において(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。
【0023】
本発明においてアクリル系重合体(A)は、水酸基を有さずカルボキシル基を有する重合体である。具体的には、反応性官能基として水酸基を有する単量体を含まず、カルボキシル基を有する単量体を含む単量体混合物を共重合することが必要である。
カルボキシル基を含有する単量体は、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p−カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(付加モル数:2〜18)フタル酸アクリル酸エステル、フタル酸モノヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸などが挙げられる。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0024】
前記カルボキシル基を有する重合体は、単量体混合物100重量%中、0.01〜20重量%含まれることが好ましく、0.5〜15%重量%がより好ましい。含有量が0.01%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が20重量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0025】
本発明のアクリル系重合体(B)は、カルボキシル基を有さず水酸基を有する重合体である。具体的には、反応性官能基としてカルボキシル基を有する単量体を含まず、水酸基を有する単量体を含む単量体混合物を共重合することが必要である。
【0026】
水酸基を含有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0027】
前記水酸基を有する単量体は、単量体混合物100重量%中、0.01〜20重量%含まれることが好ましく、0.2〜15%重量%がより好ましい。含有量が0.01%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が20重量以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0028】
アクリル系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)の共重合に使用できる単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびその他ビニル系単量体が好ましい。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸ブチルが、良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体混合物100重量%中5〜50重量%含むことが好ましく、10〜30%重量%がより好ましい。含有量が5%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が50重量以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0030】
前記その他ビニル系単量体は、アミド結合を含有する単量体、エポキシ基を含有する単量体、アミノ基を含有する単量体、アルキレンオキサイド単位を有する単量体、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましいが、共重合可能であれば良く特にこれらに限定されるものではない。
【0031】
前記アミド結合を含有する単量体は、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有した化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0032】
前記エポキシ基を含有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0033】
前記アミノ基を含有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルなどが挙げられる。
【0034】
前記アルキレンオキサイド単位を有する単量体は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の単位を有することが好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0035】
その他ビニル系単量体は、これらの単量体を単独または2種以上を併用できる。
【0036】
前記その他ビニル系単量体は、単量体混合物100重量%中5〜30重量%含むことが好ましく、10〜25%重量%がより好ましい。含有量が5%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が30重量以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0037】
本発明の粘着剤は、アクリル系重合体(A)とアクリル系重合体(B)とを、(A)/(B)=95/5〜5/95の重量比で含むことが好ましく、(A)/(B)=90/10〜10/90がより好ましく、(A)/(B)=90/10〜50/50がさらに好ましい。(A)および(B)の合計量でアクリル系重合体(A)を90重量%以下含むことで凝集力がより向上する。また、アクリル系重合体(B)を90重量%以下含むことで応力緩和性がより向上する。本発明において、アクリル系重合体(A)とアクリル系重合体(B)との混合比が重要であり、アクリル系重合体(A)とアクリル系重合体(B)とが、(A)/(B)=95/5〜5/95の重量比に混合することで光漏れの抑制と偏光板の浮きおよび剥がれの抑制が可能となる。
【0038】
本発明の粘着剤においてアクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、50万〜200万が好ましい。50万〜200万の範囲にあることで凝集力などがより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制でき、応力緩和性もより向上する。
またアクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、10万〜100万が好ましい。10万〜100万の範囲にあることで凝集力などがより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制でき、応力緩和性もより向上する。
また、アクリル系重合体(A)および(B)を混合したときの分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率を表す分子量分布(Mw/Mn))は、2〜20が好ましい。前記範囲にあることで、浮きおよび剥がれが生じにくく、粘着力が寄り向上する。なお、上記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0039】
本発明でアクリル系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)は、単量体混合物をラジカル重合開始剤でラジカル重合することで得ることができる。ラジカル重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、本発明では溶液重合が好ましい。溶液重合で使用できる溶媒は、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。重合温度は、60〜120℃の沸点反応が好ましく、重合時間は5〜12時間が好ましい。
【0040】
ラジカル重合開始剤は、重合温度でラジカルを発生できる化合物であれば特に制限はなく、過酸化物およびアゾ化合物等の公知の化合物を使用できる。
前記過酸化物は、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;
シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール類;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などの有機過酸化物、又はこれらの混合物があげられる。
【0041】
前記アゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル類;
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル類;
2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル類;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル類などが使用できる。
ラジカル重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0042】
ラジカル重合開始剤は、前記単量体混合物100重量部に対し、0.01〜10重量部を使用することが好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
【0043】
本発明の粘着剤は、前記アクリル系重合体(A)が有する反応性官能基に反応する硬化剤を使用し、前記アクリル系重合体(B)が有する反応性官能基に反応する硬化剤を使用することが好ましい。アクリル系重合体(A)の架橋ネットワークとアクリル系重合体(B)の架橋ネットワークが、それぞれ、相互に絡み合う部分、独立して存在する部分および相互侵入する部分が存在することで、優れた凝集力と良好な応力緩和性が得られる。
ここでカルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)と反応する硬化剤は、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボジイミド化合物、およびN−メチロール基含有化合物等が好ましい。また水酸基を有するアクリル系重合体(B)と反応する硬化剤は、ポリイソシアネート系化合物が好ましい。なおアクリル系重合体(A)の硬化剤は凝集力及び応力緩和性がより向上することから、エポキシ化合物、金属キレート化合物、およびアジリジン化合物のいずれかが好ましい。
【0044】
前記エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0045】
前記金属キレート化合物は、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0046】
前記アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0047】
前記カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0048】
前記酸無水物基含有化合物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物であり特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などが好ましい。なお、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明の「酸無水物基含有化合物」に含まれる。
【0049】
前記テトラカルボン酸二無水物は、例えば無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0050】
本発明においてポリイソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートモノマー、具体的には芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、およびビュレット体、ヌレート体、及びアダクト体が好ましい。
【0051】
前記芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0052】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0053】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0054】
前記脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0055】
前記ビュレット体は、前記イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物をいう。具体的には、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
【0056】
前記ヌレート体は、前記イソシアネートモノマーの3量体をいい、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体イソホロンジイソシアネートの3量体トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0057】
前記アダクト体は、前記イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物などが挙げられる。
【0058】
前記2官能以上の低分子活性水素含有化合物は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(エチレンオキサイドの付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(プロピレンオキサイドの付加モル数10以下)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,1,1−トリメチロールオクタン、1,1,1−トリメチロールノナン、1,1,1−トリメチロールデカン、1,1,1−トリメチロールウンデカン、1,1,1−トリメチロールドデカン、1,1,1−トリメチロールトリデカン、1,1,1−トリメチロールテトラデカン、1,1,1−トリメチロールペンタデカン、1,1,1−トリメチロールヘキサデカン、1,1,1−トリメチロールヘプタデカン、1,1,1−トリメチロールオクタデカン、1,1,1−トリメチロールナノデカン、1,1,1−トリメチロール−sec−ブタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ペンタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ノナン、1,1,1−トリメチロール−tert−トリデカン、1,1,1−トリメチロール−tert−ヘプタデカン、1,1,1−トリメチロール−2−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−2−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロールイソヘプタデカンなどのトリメチロール分岐アルカン類、トリメチロールブテン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,2,6−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等の3官能ポリオール類;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール等の4官能以上のポリオール類;
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ヘプチレンジアミン、オクチレンジアミン、ノニレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン等の脂肪族ポリアミン類;
フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ポリアミン類;
エチレンジチオール、プロピレンジチオール、ブチレンジチオール、ペンチレンジチオール、ヘキシレンジチオール、ヘプチレンジチオール、オクチレンジチオール、ノニレンジチオール、ジメルカプトジシクロヘキシルメタン、3−メルカプトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオール、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等のポリチオール類を挙げることができる。
これら多官能低分子活性水素含有化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0059】
前記ポリイソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましく、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体がより好ましい。具体的にはヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が好ましく、更にはトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0060】
本発明においてアクリル系重合体(A)が有する反応性官能基に反応する硬化剤は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.05〜5重量%使用することが好ましく、0.1〜3%重量%がより好ましい。
【0061】
本発明においてアクリル系重合体(B)が有する反応性官能基に反応する硬化剤は、アクリル系重合体(B)100重量部に対して、1〜50重量%使用することが好ましく、5〜35%重量%がより好ましい。
【0062】
本発明の粘着剤は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤を用いることで粘着力がより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制できる。
【0063】
前記シランカップリング剤は、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0064】
前記シランカップリング剤は、アクリル系共重合体(A)およびアクリル系共重合体(A)の合計100重量部に対して、0.01〜2重量部を使用することが好ましく、0.05〜1重量部の範囲がより好ましい。
【0065】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、任意成分として粘着付与樹脂、各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を配合しても良い。
【0066】
本発明の粘着剤は、光学部材用粘着剤として好適であるほか、各種プラスチックシート、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0067】
本発明の粘着シートは、基材と、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。前記粘着シートは、例えば、基材に粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成することで得られる。また、剥離性シートに粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、基材を貼り合わせることで得られる。なお粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。また、本発明でシート、フィルムおよびテープは同義語である。また、粘着剤層の基材と接していない面に剥離性シートを貼り合せることはいうまでも無い。
【0068】
粘着剤を塗工するときに、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することができる。また粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等はアクリル系共重合体(B)とポリイソシアネート化合物との架橋反応を阻害するため、使用を避けることが好ましい。
【0069】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられる。基材は板状でもフィルム状でも良い。また基材は、単独または、複数の基材を積層した構成も好ましい。
【0070】
前記プラスチックは、例えば、ポリビニルアルコールやトリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂(PAR:ビスフェノールAとフタル酸の共重合樹脂です)、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂(エポキシ基含有樹脂とポリアミン又は無水カルボン酸を反応させた樹脂です)などが挙げられる。
【0071】
本発明において粘着剤は、公知の方法で塗工できる。例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件は、通常60〜160℃程度の熱風加熱でよい。
【0072】
粘着剤層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。0.1μmに満たない場合、十分な粘着力が得られないことがあり、300μmを超えても粘着力等の性能はそれ以上向上しない場合が多い。
【0073】
更に、本発明の粘着フィルムは、無アルカリガラスに貼合わせた後、23℃で1日後の粘着力が2〜20N/25mmであることが好ましく、2〜15N/25mmがより好ましい。粘着力が2N/25mm以上になることで浮きおよび剥がれが生じにくい十分な粘着力が得易くなる。また、粘着力が20N/25mm以下になることで、被着体からより容易に剥離が可能になる。
【0074】
本発明の粘着シートの粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.1〜5MPaであることが好ましい。23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.1MPa以上になることで粘着物性がより向上する。また、23℃における貯蔵弾性率(G’)が5MPa以下になることで粘着力がより向上する。なお、23℃の貯蔵弾性率(G’)は0.1〜2.0MPaがより好ましい。
前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率(G’)は、0.1〜2MPaが好ましい。80℃における貯蔵弾性率(G’)が0.1MPa以上になることで高温雰囲気および高温高湿雰囲気での浮きおよび剥がれをより抑制できる。また、80℃における貯蔵弾性率(G’)が、2MPa以下になることで高温雰囲気および高温高湿雰囲気での粘着力をより向上できる。なお80℃の貯蔵弾性率(G’)は0.1〜1MPaがより好ましい。貯蔵弾性率(G’)の測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0075】
粘着剤を基材に塗工し、粘着シートを生産する際、塗工した粘着シートを一旦巻取り、その後裁断等の加工を行うことが一般的である。前記加工の際に外部から混入する塵、埃等の異物が粘着シートに付着して、前記異物が粘着剤層に押し跡等の痕跡(本発明で圧痕という)を残す場合がある。特に基材に偏光板を使用する場合、所望の大きさに粘着シートを裁断した後、端部を円滑にするため研磨をかける工程を行う。前記工程の際に、圧痕が発生し易いため、歩留まりが著しく低下する。本発明の粘着剤は、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.1〜5MPaであるため、粘着シート生産時の圧痕発生をより抑制することができる。貯蔵弾性率(G’)が、0.1MPa以上になることで圧痕をより抑制できる。また、5MPa以下になることで粘着力をより向上できる。
【0076】
本発明の粘着シートは、光学部材の貼合わせに好適に用いることができる。すなわち基材に光学部材を使用することが好ましい。光学部材は、具体的には、偏光板、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等を挙げることができる。
【0077】
基材に光学部材を使用した本発明の粘着シートは、液晶セルのガラス部材に貼り付けて液晶セル部材として使用することも好ましい。前記光学部材が偏光板の場合、高温雰囲気及び高温高湿雰囲気に放置されたときにも、粘着剤層は応力緩和性が良好であるため偏光板の反りに起因する光漏れを抑制できる。
【0078】
本発明の粘着シートは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材やプロテクトフィルム、建材や車輌の窓ガラス等のガラス部材に好ましく使用できるが、ポリオレフィン、ABS、アクリル等のプラスチック、ダンボール、木材、合板、ステンテス、アルミ等の金属にも使用できる。
【実施例】
【0079】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。なお、本明細書において実施例1〜31、33〜43は、参考例である。
【0080】
<合成例1:アクリル共重合体(A)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)にアクリル酸ブチル99.5部、アクリル酸0.5部、酢酸エチル100部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.025部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を還流温度で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度3000m(Mw)を測定したところ、重量平均分子量は100万であった。得られた共重合体を共重合体(A−1)とする。
【0081】
<合成例2〜20>
表1の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例1と同様の方法でアクリル共重合体(A)を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量を表1に示す。
【0082】
<合成例21:アクリル共重合体(B)>
反応容器にアクリル酸ブチル99・8部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.2部、酢酸エチル100部、AIBN0.025部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を還流温度で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度3000mPa・sの共重合体溶液を得た。また、GPCを用いてアクリル共重合体の重量平均分子(Mw)を測定したところ、重量平均分子量は100万であった。得られた共重合体を共重合体(B−1)とする。
【0083】
<合成例22〜40>
表2の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例21と同様の方法でアクリル共重合体(B)を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量を表2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は島津製作所製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー(株)製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/min
カラム温度 : 40℃
【0087】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体溶液中のアクリル系共重合体(A−1)と、アクリル系共重合体(B−1)を(A−1)/(B−1)=80/20の重量比(不揮発分換算)で混合し、エポキシ化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.5部、ポリイソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体10部を配合し、更に酢酸エチルを加えて不揮発分を20%に調整して粘着剤を得た。
【0088】
前記粘着剤を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性シートに、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間熱風乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ積層構造の偏光板の片面を貼り合せ、「剥離フィルム/粘着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」という構成の粘着シートを得た。次いで、得られた粘着シートを温度35℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、積層体を得た。
【0089】
(実施例32および44〜50、参考例2〜31および33〜43、比較例1〜20)
表3及び表4の配合比率に従って、参考例1と同様にして粘着剤を得た。更に参考例1と同様に行うことで積層体を得た。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
得られた積層体を以下の方法で評価した。
【0093】
(1)耐熱性および耐湿熱性評価
得られた積層体を幅160mm、縦120mmの大きさに準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板に、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体が貼り付けられた前記ガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。また、前記測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を60℃、相対湿度95%で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性、および耐湿熱性は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:「発泡、浮き、剥がれが全く認められず、良好である」
○:「0.5mm以下の発泡、浮き、剥がれのいずれかが認められるが、実用上問題がない」
×:「全面的に発泡、浮き、剥がれがあり、使用できない」
【0094】
(2)光漏れ評価
得られた積層体を幅160mm、縦120mmの大きさに2枚準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板の両面に2枚の積層体をその偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着した。続いて、前記圧着物を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、85℃で500時間放置した後、偏光板に光を透過させたときの光漏れを目視で観察した。光漏れ性は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:「白抜けが無く、良好である」
○:「わずかに白抜けが有るが、実用上問題がない」
×:「全面的に白抜けがあり、使用できない」
【0095】
(3)再剥離性評価
得られた積層体を幅25mm、縦150mmの大きさに準備した。次いで剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、85℃で3時間放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機を用いて、180°方向に300mm/分の速度で引っ張る、剥離試験を行った。次いで、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
○:「糊残り、曇りが認められず、良好である」
×:「糊残り、曇りが認められ、実用不可である」
【0096】
(4)圧痕評価
得られた積層体を幅50mm、縦50mmの大きさに準備した。次いで剥離性シートを上にしガラス板の上に静置し、前記積層体の中央部に重さ500gのステンレス球を静置し、30分間放置した。直ぐにステンレス球を取り除き、前記積層体に付いた押し跡(圧痕)を目視で観察した。またステンレス球を1分間放置した評価を行い前記同様に押し跡を目視で観察した。以下の基準に基づいて評価した。なお圧痕が残り難いことは、応力緩和性が特に優れているといえる。
◎:「ステンレス球を1分間保持した後の押し跡が、24時間後に完全に消失する」
○:「ステンレス球を1分間保持した後の押し跡は、24時間後に完全に消失しないが、30秒間保持した後の押し跡は、24時間後に完全に消失する」
×:「ステンレス球を30秒間保持した後の押し跡が、24時間後に完全に消失しない」
【0097】
120
(5)貯蔵弾性率(G’)
得られた粘着剤を乾燥後の厚さが30μmになるように剥離性シートに塗工し、乾燥することで粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を厚みが約30mmになるように複数枚積層した後、オートクレーブで気泡を除去した後、直径8mmに打ち抜いて円柱状の試験片を得た。前記試験片の貯蔵弾性率(G’)をねじり剪断法により、下記の条件で測定した。
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDA III」
周波数:1Hz
温度 :23℃、80℃
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
表5および表6の結果から実施例1〜50に示すように本発明の粘着剤は、高温雰囲気および高温高湿雰囲気での耐久性、応力緩和性、ならびに再剥離性が優れている。一方、比較例1〜20は、前記特性を全て満たすことはできなかった。