(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0021】
<A.実施形態>
<1:アンテナ内蔵式電子時計の構造>
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計100(以下「電子時計100」という)を含むGPSシステムの全体図である。電子時計100は、複数のGPS衛星200の少なくとも1つからの電波(無線信号)を受信して内部時刻を修正する腕時計であり、腕に接触する面(以下、「裏面」という)の反対側の面(以下「表面」という)に時刻を表示する。
【0022】
GPS衛星200は、地球上空における所定の軌道上を周回する位置情報衛星であり、1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。以降の説明では、航法メッセージが重畳された1.57542GHzの電波を「衛星信号」という。衛星信号は、右旋偏波の円偏波である。
なお、本実施形態において電子時計100は、GPSシステムが備えるGPS衛星200からの電波を受信するものであるが、GPSシステムは衛星測位システムの一例である。本発明は、GPSシステムの他に、ガリレオ(EU)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)等の全地球的航法衛星システム(GNSS)、SBAS等の静止衛星、または、準天頂衛星等、時刻情報を含む衛星信号を発信する位置情報衛星を備える、GPSシステム以外の衛星測位システムを使用することができる。すなわち、電子時計100は、GPS衛星200以外の衛星を含む位置情報衛星からの電波(無線信号)を受信して内部時刻を修正する腕時計であってもよい。
【0023】
現在、約31個のGPS衛星200(
図1においては、約31個のうち4個のみを図示)が存在している。各GPS衛星200は、衛星信号がどのGPS衛星200から送信されたかを識別するために、C/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンを衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。したがって、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
【0024】
GPS衛星200は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報(以下、「GPS時刻情報」という)が含まれている。また、地上のコントロールセグメントにより各GPS衛星200に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、衛星信号にはその時刻誤差を補正するための時刻補正パラメータも含まれている。電子時計100は、1つのGPS衛星200から送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と時刻補正パラメータを使用して内部時刻を正確な時刻に修正する。
【0025】
衛星信号にはGPS衛星200の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。電子時計100は、GPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行うことができる。測位計算は、電子時計100の内部時刻にはある程度の誤差が含まれていることを前提として行われる。すなわち、電子時計100の3次元の位置を特定するための3つのパラメータに加えて時刻誤差も未知数になる。そのため、電子時計100は、一般的には4つ以上のGPS衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行う。
【0026】
図2は、電子時計100の平面図である。
電子時計100は、金属またはその他の導電性材料で形成された円筒状のケース胴81と、ケース胴81に嵌合され、金属またはその他の導電性材料で形成された円筒状のベゼル82と、を備える。
また、電子時計100は、ベゼル82の内周側に設けられ、プラスチック等の非導電性材料で形成されたリング状のダイヤルリング21と、ダイヤルリング21の内周側に設けられた、円盤状の文字板11と、文字板11上に設けられ、指針軸12を中心に周回して現在時刻を指し示す指針13(秒針13a、分針13b、及び、時針13c)と、を備える。
【0027】
また、電子時計100は、文字板11の裏面側(つまり、
図2(及び、以下で説明する各図)において「−z方向」)に設けられた、液晶表示パネル14を備える。電子時計100の利用者は、文字板11に形成された開口部11aを介して液晶表示パネル14を視認できる。液晶表示パネル14には、例えば、電子時計100が位置するタイムゾーンの代表的な都市名が表示される。
図2の例では、「東京」を意味する「TYO」の文字が表示されている。この例では、電子時計100が、東京と同一のタイムゾーンに位置している場合を例示している。
なお、以下では、文字板11、指針13、及び、液晶表示パネル14を、「表示部」と総称する場合がある。
【0028】
図2に示すように、電子時計100は、竜頭16と、複数の操作ボタン17と、を備えている。これら竜頭16、操作ボタン17を手動操作することにより、電子時計100を、少なくとも1つのGPS衛星200からの衛星信号を受信して内部時刻情報の修正を行うモード(時刻情報取得モード)と、複数のGPS衛星200からの衛星信号を受信して測位計算を行い内部時刻情報の時差を修正するモード(位置情報取得モード)と、のうちいずれかのモードに設定できる。また、電子時計100は、時刻情報取得モードや位置情報取得モードを定期的に(自動的に)実行することもできる。
【0029】
図2に示すように、電子時計100は、電子時計100の利用者が電子時計100を装着するときに用いるバンド110を、電子時計100に取り付けるためのバンド取付部86及び87を備える。バンド取付部86は、電子時計100の12時方向に設けられ、一対の突出部(カン)86a及び86bを具備する。一対の突出部86a及び86bには、バンド110の一端が接続される。バンド取付部87は、電子時計100の6時方向に設けられ、一対の突出部87a及び87bを具備する。一対の突出部87a及び87bには、バンド110の他端が接続される。
なお、ここで、「12時方向」とは、指針軸12から見て時針13cが12時を示す方向(すなわち、
図2において「+y方向」)であり、「6時方向」とは、指針軸12から見て時針13cが6時を示す方向(すなわち、
図2において「−y方向」)である。
また、電子時計100は、6時方向に設けられるバンド取付部87の突出部87a及び87bの間に、アンテナ収納部90を備える。
【0030】
以下、
図3乃至
図6を参照しつつ、電子時計100の構造について説明する。
図3は電子時計100の内部構造の概略を示す要部断面図であり、
図4及び
図5は電子時計100の一部の分解斜視図であり、
図6は、後述するアンテナ体40及びアンテナ収納部90の平面図である。
【0031】
図3に示すように、電子時計100は、表示機構収納部80を備える。表示機構収納部80は、ケース胴81と、ベゼル82と、カバーガラス84と、裏蓋85とを備える。カバーガラス84は、ベゼル82に嵌合され、ベゼル82の有する開口K1を塞いている。裏蓋85は、SUS(ステンレス)またはTi(チタン)等の金属またはその他の導電性材料で形成されている。この裏蓋85は、ケース胴81にスクリュー溝またはねじ等で固定され、ケース胴81が有する開口K2を塞いでいる。すなわち、裏蓋85はケース胴81に電気的に接続される。
【0032】
表示機構収納部80は「第1収納部」の一例であり、当該表示機構収納部80の収納空間88には、上述した文字板11、指針13、及び、液晶表示パネル14等の表示部、並びに、表示部の動作を制御する制御部等が収納されている。
以下、
図3及び
図4を参照しつつ、表示機構収納部80に収納された電子時計100の構成要素について説明する。
【0033】
カバーガラス84の裏面側(−z方向)には、ベゼル82の内周に沿って、ダイヤルリング21が設けられている。また、ダイヤルリング21の裏面側には、ケース胴81の内周よりも内側に、プラスチック等の非導電性材料で形成された地板38が設けられている。ダイヤルリング21及び地板38の間には、文字板11と、ソーラーパネル22とが設けられている。
【0034】
文字板11は、円形の板材であり、プラスチックなどの光透過性の非導電性材料で形成されている。文字板11には、指針軸12を貫通させるための穴が形成され、また、液晶表示パネル14を視認させるための開口部11a(
図2及び
図4参照)が形成されている。
ソーラーパネル22は、光エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する複数のソーラーセル(光発電素子)を直列接続した円形の平板である。ソーラーパネル22には、指針軸12を貫通させるための穴が形成され、また、液晶表示パネル14を視認させるための開口部22a(
図4参照)が形成されている。
【0035】
図3に示すように、表示機構収納部80には、文字板11、ソーラーパネル22、及び、地板38を貫通する指針軸12と、指針軸12を中心に周回して現在時刻を指し示す複数の指針13(秒針13a、分針13b、及び、時針13c)が設けられている。
指針軸12は、秒針13aを旋回させるための軸、分針13bを旋回させるための軸、及び、時針13cを旋回させるための軸を有する。指針13は、ダイヤルリング21の内周よりも内側で、且つ、カバーガラス84及び文字板11の間に配置されている。
【0036】
地板38の裏面側には、指針軸12を介して指針13を駆動するための駆動機構30が取り付けられている。駆動機構30は、複数のステップモーターを備えるとともに、複数のステップモーターのそれぞれに対応した複数の輪列を備える。各輪列は、1または複数の歯車等により構成されている。この駆動機構30は、指針軸12を回転させることにより、指針13(13a、13b、及び、13c)を駆動する。
【0037】
また電子時計100は、表示機構収納部80の内側に、基板25を備える。基板25は、樹脂や誘電体を含む素材で形成され、駆動機構30の裏面側に配置されている。
基板25には、GPS受信部26及び駆動制御部70を含む回路ブロックが実装されている。具体的には、基板25の上面(表面側の面)には、駆動制御部70が設けられ、基板25の下面(裏面側の面)には、GPS受信部26が設けられている。
【0038】
駆動制御部70は、制御信号をGPS受信部26に送り、GPS受信部26の受信動作を制御するとともに、駆動機構30の動作を制御する。
GPS受信部26は、例えば、1チップのICモジュールで構成され、そこにはアナログ回路とデジタル回路とが含まれている。GPS受信部26は、導電性材料により形成されたシールド23により覆われている。このシールド23には、回路ブロックのグランド電位が供給されている。また、シールド23は、回路押え24を介して、裏蓋85と電気的に接続されている。
なお、GPS受信部26及び駆動制御部70を含む回路ブロックと、駆動機構30とを「制御部」と総称する。
【0039】
基板25の下面には、信号線45と、基板25上に設けられた配線とを電気的に接続するコネクタ46が設けられている。本実施形態では、信号線45として同軸ケーブルを用いることで、当該信号線45により伝達される信号へのノイズの混入を防止する。但し、信号線45は、フレキシブル基板上に設けられる配線であってもよい。
【0040】
電子時計100は、表示機構収納部80に、リチウムイオン電池などの円柱形状の二次電池27、及び、当該二次電池27を収納するための電池収納部28を備える。
二次電池27は、ソーラーパネル22が発電した電力で充電される。この二次電池27を収納するための電池収納部28は、基板25の裏面側(つまり、基板25及び裏蓋85の間)に配置されている。
【0041】
また、電子時計100は、
図2、
図3及び
図5に示すように、表示機構収納部80の外側に、アンテナ収納部90、バンド取付部86及び87、竜頭16、及び、操作ボタン17を備える。
本実施形態において、バンド取付部86及び87(突出部86a、86b、87a、87b)は、ケース胴81と同一の導電性材料により、ケース胴81と一体に形成される。
図5に示すように、バンド取付部86が具備する突出部86a及び86b、並びに、バンド取付部87が具備する突出部87a及び87bのそれぞれには、貫通孔K4設けられる。バンド110の一端に設けられた貫通孔と、突出部86a及び86bに設けられた貫通孔K4とに接続ピンを挿通することで、バンド110の一端がバンド取付部86に接続される。また、バンド110の他端に設けられた貫通孔と、突出部87a及び87bに設けられた貫通孔K4とに接続ピンを挿通することで、バンド110の他端がバンド取付部86に接続される。
表示機構収納部80の外側に設けられるアンテナ収納部90は「第2収納部」の一例であり、衛星信号を受信するためのアンテナ体40が収納されている。
なお、以下において、表示機構収納部80、アンテナ収納部90、並びに、バンド取付部86及び87を、「外装ケース」と称する場合がある。
【0042】
以下、
図3、
図5、及び、
図6を参照しつつ、アンテナ収納部90及びアンテナ体40について説明する。
【0043】
図3に示すように、アンテナ収納部90は、突出部87a及び87bの間に設けられ、上面部91、底面部92、及び、側部93を備える。この上面部91、底面部92、側部93で囲まれた収納空間94に、後述するアンテナ体40を収納する。
上面部91は、アンテナ収納部90の上面を構成し、アンテナ体40よりも表面側に位置する。この上面部91は、セラミック、ガラス、プラスチック、またはその他の非導電性材料で形成されている。
底面部92は、アンテナ収納部90の底面を構成し、アンテナ体40よりも裏面側に位置する。すなわち、電子時計100を腕に装着した場合、底面部92はアンテナ体40よりも腕に近い側に位置する。また、底面部92は、SUS(ステンレス)またはTi(チタン)等の金属またはその他の導電性材料で形成されている。より具体的には、底面部92は、ケース胴81と同一の材料で、ケース胴81と一体に形成される。但し、底面部92は、ケース胴81とは異なる導電性材料で、または、ケース胴81とは別体として形成されるものであってもよい。
【0044】
側部93は、上面部91と底面部92の間に位置する部材であり、SUS(ステンレス)またはTi(チタン)等の金属またはその他の導電性材料で形成されている。より具体的には、側部93は、ケース胴81及び底面部92と同一の材料で、ケース胴81及び底面部92と一体に形成される。
本実施形態では、ケース胴81と一体に形成された底面部92と側部93とによって凹部が形成され、その凹部の上面を上面部91で覆うことにより、アンテナ体40を収納するための空間を形成する。なお、側部93を表面側からくり抜くことにより、凹部を形成するようにしてもよい。その場合、凹部の底面部分が底面部92に該当し、凹部の側面部分が側部93に該当する。
【0045】
側部93及びケース胴81には、貫通孔K3が設けられている。上述した信号線45は、当該貫通孔K3を貫通して、コネクタ46と、後述するアンテナ体40のアンテナ素子42と、を電気的に接続する。
本実施形態において、信号線45は、パッキン(図示省略)に挟み込まれた状態で、貫通孔K3に嵌め込まれている。これにより、アンテナ収納部90から、表示機構収納部80への水分等の侵入を防止することができる。但し、電子時計100は、このようなパッキンを具備しないものであってもよい。
【0046】
図3、
図5、及び、
図6に示すように、アンテナ体40は、パッチアンテナであり、誘電体41、アンテナ素子42、及び、アンテナ基板43を備える。
誘電体41は、比誘電率εrが50程度となるように形成されることが好ましい。本実施形態では、誘電体41は、チタン酸バリウム等の高周波で使用可能な誘電材料を樹脂に混ぜることで、比誘電率εrが「100」以上となるように形成される。
また、
図6に示すように、電子時計100を表面側(つまり、「+z方向」)から見た場合において(以下、表面側から電子時計100を見ることを、「平面視する」と表現する場合がある)、誘電体41は、x軸方向の幅が、y軸方向(「所定の方向」の一例)の幅に比べて広くなるように設けられている。
【0047】
アンテナ素子42は、誘電体41の上面(表面側の面)に、金属等の導電性材料をメッキまたは銀ペースト印刷等により形成したものである。
このアンテナ素子42は、信号線45と電気的に接続されている。すなわち、信号線45、コネクタ46、及び、基板25上の配線は、アンテナ素子42と、GPS受信部26とを電気的に接続する「接続配線」として機能する。
なお、本実施形態では、信号線45とアンテナ素子42とは、誘電体41の内部を貫通する給電部(図示省略)を介して電気的に接続されるが、当該給電部は誘電体41の表面に設けられるものであってもよい。
【0048】
アンテナ基板43は、金属等の導電性材料から形成される。また、アンテナ基板43は、
図6に示すように、平面視した場合に、底面部92のほぼ全面を覆うように設けられる。
なお、本実施形態において、アンテナ基板43は、底面部92の上に直接形成されるが、プリント基板上にアンテナ基板43を設け、導通ばねにより、アンテナ基板43と底面部92と電気的に接続してもよい。また、アンテナ基板43は、底面部92と同一の材料で底面部92と一体として形成されるものであってもよい。
【0049】
アンテナ基板43は、アンテナ体40のグランドプレーンとして機能する。
通常、グランドプレーンの面積が大きい場合、小さい場合と比較して、アンテナ体40の受信性能は向上するになる。従って、本実施形態のように、アンテナ基板43及び底面部92が電気的に接続され、且つ、底面部92及びケース胴81並びに裏蓋85が電気的に接続される場合、アンテナ基板43に加えて、底面部92、ケース胴81、及び、裏蓋85を、アンテナ体40のグランドプレーンとして機能させることができるため、アンテナ体40の良好な受信性能を確保することができる。
【0050】
本実施形態では、アンテナ素子42は正方形の形状を有し、且つ、平面視したときのアンテナ基板43の各辺の長さはアンテナ体40が受信する電波に共振する長さ(以下、「共振長ds」と称する)と等しい。
すなわち、
図6に示すように、アンテナ素子42を平面視したときに、アンテナ素子42の輪郭を表す辺L1〜L4のそれぞれの長さは、共振長dsに等しく、且つ、辺L1または辺L2と、辺L3または辺L4とは互いに直交する。
なお、本明細書において、「長さが等しい」とは、長さが完全に一致することまでは要さず、長さが等しいと看做せる程度であればよい。例えば、辺L1〜L4のうち最大の長さが共振長dsの110%以下であり、且つ、最少の長さが共振長dsの90%以上である場合には、「長さが等しい」と看做してもよい。
同様に、辺L1または辺L2と、辺L3または辺L4とは、厳密に直交している必要は無く、直交していると看做せる程度の角度で交差していればよい。例えば、90度から10度以下の誤差があってもよい。
また、本実施形態では、辺L1〜L4の全ての長さが、共振長dsと等しい(すなわち、等しいと看做せる)長さを有するが、辺L1及び辺L2の間の間隔と、辺L3及び辺L4の間の間隔のうち、少なくとも一方が共振長dsと等しいものであってもよい。
【0051】
パッチアンテナは、アンテナの電極の長さが、受信する電波の波長の2分の1の長さとなるときに共振し、高い受信性能を発揮する。そのため、パッチアンテナが円偏波を受信するためには、アンテナの電極の長さ(すなわち、アンテナ基板43の辺L1〜L4の長さ)を、波長の0.4〜0.6倍程度、理想的には0.5倍にすることが好ましい。
GPS衛星200からの電波の周波数は約1.575GHzであり、1波長は約19cmである。そのため、アンテナ体40が、GPS衛星200からの電波を受信するためには、辺L1〜L4のそれぞれの長さを約7.6〜11.4cmの範囲(理想的には、9.5cm)とすることが求められる。しかし、このような大きさのアンテナ素子42を電子時計100の内部に収める場合、電子時計100が大型化してしまう。
これに対して、本実施形態では、比誘電率εrが「100」以上の誘電体41を基材としてアンテナ体40が形成される。比誘電率がεrの誘電体41を用いる場合、当該誘電体41による波長短縮率は(εr)
−1/2となる。つまり、比誘電率がεrの誘電体41を備えることで、誘電体41を備えない場合に比べて、アンテナ体40の受信する電波の波長を(εr)
−1/2倍に短縮することができる。例えば、比誘電率εrが「100」である場合には、波長短縮率は0.1倍となるため、辺L1〜L4の長さは約0.7cm〜1.2cm(理想的には、0.95cm)とすることができ、電子時計100を大型化することなくアンテナ体40を設けることが可能となる。
【0052】
また、
図6に示すように、アンテナ素子42は、アンテナ素子42と側部93との距離が、所定の距離dmin以上となるように設けられる。本実施形態において、所定の距離dminは「2mm」とする。
具体的には、アンテナ素子42は、側部93の内周側の壁面Wsと辺L1〜L4のそれぞれとの距離d1〜d4が、全て「2mm」以上となるように設けられている。
【0053】
図7は、一般的なパッチアンテナの動作原理を説明する説明図である。パッチアンテナを送信アンテナとして使用する場合、アンテナ素子の周縁部からアンテナ基板に向けて、この図に示された電気力線により表されるような電場が生じる。その結果、アンテナ素子の周縁部から図の上方に向けて、電波が放射される。同様に、パッチアンテナが電波を受信する場合には、アンテナ素子の周縁部において、図において上方からの電波を受信する。
このため、アンテナ素子の周縁部に、金属その他の導電性物質が存在する場合、送信または受信される電波が、当該導電性物質により反射または吸収され、パッチアンテナの送受信性能が劣化する。
これに対して本実施形態では、導電性材料からなる壁面Wsとの間隔が「2mm」以上となるようにアンテナ基板43が設けられる。また、本実施形態では、上面部91が非導電性材料により形成される。このため、アンテナ体40が送受信する電波が、側部93または上面部91により吸収または反射されることを防止することができ、良好な受信性能を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態では、バンド取付部87は、電子時計100の6時方向に設けられ、且つ、アンテナ体40は、バンド取付部87の突出部87a及び87bの間に設けられたアンテナ収納部90に収納される。
電子時計100は、屋外において衛星信号を受信する。屋外において、電子時計100は、利用者の腕に装着されている場合が多い。そして、
図8に示すように、電子時計100の利用者は、屋外において腕を利用者の前方または下方向に向けた姿勢を取っている場合が多い。よって、屋外では、電子時計100の6時方向が、12時方向に比べて、天頂方向に近い方向となる場合が多い。
本実施形態において、アンテナ体40は、電子時計100の6時方向に設けられる。そのため、本実施形態では、アンテナ体40が12時方向に設けられる場合と比べて、アンテナ体40の受信性能を良好に保つことが可能になる。
【0055】
また、本実施形態に係る電子時計100は、アンテナ体40を、表示機構収納部80の外側に設けられたアンテナ収納部90に収納する。
以下では、本実施形態に係る電子時計100が、このような構成を有することによる効果を、
図9及び
図10に示す対比例に係る電子時計100Tと比較しながら、説明する。
【0056】
図9は、対比例に係る電子時計100Tの要部断面図である。
図10は、対比例に係る電子時計100Tの一部の分解斜視図である。
図9及び
図10に示すように、対比例に係る電子時計100Tは、表示機構収納部80t(ケース胴81t、ベゼル82t、カバーガラス84、及び、裏蓋85)にリング状のアンテナ体40tが収納されている。より具体的には、アンテナ体40tは、受信性能を確保するために、駆動機構30よりも表面側に設けられる。また、アンテナ体40tは、アンテナ体40tが利用者に視認されることによるデザイン性の低下を防止するために、ダイヤルリング21tよりも裏面側に設けられる。
【0057】
対比例に係る電子時計100Tは、アンテナ体40tを表示機構収納部80tに収納するため、表示機構収納部80tのZ軸方向の幅h1tが、本実施形態に係る表示機構収納部80のZ軸方向の幅h1(
図3参照)と比較して広くなる。つまり、電子時計100Tは、電子時計100に比べて、厚くなる。
これに対して、本実施形態に係る電子時計100は、アンテナ体40を表示機構収納部80の外部に設けるため、表示機構収納部80の薄型化及び小型化が可能となる。
さらに、本実施形態に係る電子時計100は、アンテナ体40を、突出部87a及び87bの間のアンテナ収納部90に収納する。突出部87a及び87bの間の空間は、通常は、空洞またはケース胴81が設けられる空間に過ぎず、当該空間が特定の目的に利用されることは稀である。すなわち、本実施形態では、謂わば「用途の無い余った空間」にアンテナ収納部90を設ける。このため、アンテナ収納部90を設ける場合であっても、設けない場合と比較して、電子時計100の大型化やデザイン性の低下等が生じる可能性は低い。
このように、本実施形態に係る電子時計100は、表示機構収納部80にアンテナ体40を収納する場合(例えば、電子時計100T)と比較して、電子時計100の全体の薄型化及び小型化ができ、電子時計100のデザイン性を向上させることが可能となる。
【0058】
また、対比例に係るダイヤルリング21tの裏面側にはアンテナ体40tが配置される。このため、ダイヤルリング21tのZ軸方向の幅h2tは、本実施形態に係るダイヤルリング21のZ軸方向の幅h2(
図3参照)と比較して広くなる。つまり、ダイヤルリング21tが有する傾斜面TP2の傾きは、ダイヤルリング21が有する傾斜面TP1(
図3参照)の傾きと比べて急な傾きとなる。
傾斜面TP2の傾きが急である場合において、電子時計100Tの利用者が、例えば
図9の右斜め上方向(+Z方向且つ+X方向)から文字板11を見るとき、利用者は、ダイヤルリング21tに遮られ文字板11の端部を視認することができないことがある。
これに対して、本実施形態では、傾斜面TP2に比べて緩やかな傾きの傾斜面TP1を有するダイヤルリング21を備えるため、電子時計100の利用者は、ダイヤルリング21に遮られることなく、文字板11を広い角度方向から隅々まで視認することが可能となる。
【0059】
<2:アンテナ内蔵式電子時計の回路構成>
図11は、電子時計100の回路構成の一例を示すブロック図である。
図11に示すように、電子時計100は、GPS受信部26及び制御表示部36を含む。GPS受信部26は、衛星信号の受信、GPS衛星200の捕捉、位置情報の生成、時刻修正情報の生成等の処理を行う。制御表示部36は、内部時刻情報の保持及び内部時刻情報の修正等の処理を行う。
【0060】
ソーラーパネル22は、充電制御回路29を通じて二次電池27を充電する。電子時計100はレギュレータ34及び35を備え、二次電池27は、レギュレータ34を介して制御表示部36に、レギュレータ35を介してGPS受信部26に駆動電力を供給する。また電子時計100は、二次電池27の電圧を検出する電圧検出回路37を備える。なお、レギュレータ35に代えて、例えば、RF部50(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータと、ベースバンド部60(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ(ともに図示せず)とに分けて設けてもよい。
【0061】
また電子時計100は、アンテナ体40、及び、SAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ32を含む。
アンテナ体40は、上述したように、複数のGPS衛星200からの衛星信号を受信する。ただし、アンテナ体40は衛星信号以外の不要な電波も若干受信してしまうため、SAWフィルタ32は、アンテナ体40が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルタ32は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成される。
【0062】
また、GPS受信部26は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部50とベースバンド部60を含んで構成されている。以下に説明するように、GPS受信部26は、SAWフィルタ32が抽出した1.5GHz帯の衛星信号から航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する処理を行う。
【0063】
RF部50は、LNA(Low Noise Amplifier)51、ミキサ52、VCO(Voltage Controlled Oscillator)53、PLL(Phase Locked Loop)回路54、IFアンプ55、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)フィルタ56、ADC(A/D変換器)57等を含む。
【0064】
SAWフィルタ32が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅される。LNA51で増幅された衛星信号は、ミキサ52でVCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコンバートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信号と基準クロック信号を位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信号に同期させる。その結果、VCO53は基準クロック信号の周波数精度の安定したクロック信号を出力することができる。なお、中間周波数として、例えば、数MHzを選択することができる。
【0065】
ミキサ52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅される。ここで、ミキサ52でのミキシングにより、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も生成される。そのため、IFアンプ55は、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も増幅する。IFフィルタ56は、中間周波数帯の信号を通過させるとともに、この数GHzの高周波信号を除去する(正確には、所定のレベル以下に減衰させる)。IFフィルタ56を通過した中間周波数帯の信号はADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。
【0066】
ベースバンド部60は、DSP(Digital Signal Processor)61、CPU(Central Processing Unit)62、SRAM(Static Random Access Memory)63、RTC(リアルタイムクロック)64を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65やフラッシュメモリ66等が接続されている。
【0067】
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。フラッシュメモリ66には、例えば時差情報が記憶されている。時差情報は、時差データ(座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられたUTCに対する補正量等)が定義された情報である。
【0068】
ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、RF部50のADC57が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調する処理を行う。
【0069】
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モードまたは位置情報取得モードに設定されると、後述する衛星検索工程において、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。そして、ベースバンド部60は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星200に同期(すなわち、GPS衛星200を捕捉)したものと判断する。ここで、GPSシステムでは、すべてのGPS衛星200が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。したがって、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星200を検索することができる。
【0070】
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードにおいて、捕捉したGPS衛星200の衛星情報を取得するために、当該GPS衛星200のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングする処理を行う。ミキシングされた信号には、捕捉したGPS衛星200の衛星情報を含む航法メッセージが復調される。そして、ベースバンド部60は、航法メッセージの各サブフレームのTLMワード(プリアンブルデータ)を検出し、各サブフレームに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する(例えばSRAM63に記憶する)処理を行う。ここで、GPS時刻情報は、週番号データ(WN)及びZカウントデータであるが、以前に週番号データが取得されている場合にはZカウントデータのみであってもよい。そして、ベースバンド部60は、衛星情報に基づいて、内部時刻情報を修正するために必要な時刻修正情報を生成する。
【0071】
時刻情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報に基づいて測時計算を行い、時刻修正情報を生成する。時刻情報取得モードにおける時刻修正情報は、例えば、GPS時刻情報そのものであってもよいし、GPS時刻情報と内部時刻情報との時間差の情報であってもよい。
【0072】
一方、位置情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報や軌道情報に基づいて測位計算を行い、位置情報(より具体的には、受信時に電子時計100が位置する場所の緯度及び経度)を取得する。さらに、ベースバンド部60は、フラッシュメモリ66に記憶されている時差情報を参照し、位置情報により特定される電子時計100の座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられた時差データを取得する。このようにして、ベースバンド部60は、時刻修正情報として衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データを生成する。位置情報取得モードにおける時刻修正情報は、上記の通り、GPS時刻情報と時差データそのものであってもよいが、例えば、GPS時刻情報の代わりに内部時刻情報とGPS時刻情報の時間差のデータであってもよい。
なお、ベースバンド部60は、1つのGPS衛星200の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよいし、複数のGPS衛星200の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよい。
【0073】
また、ベースバンド部60の動作は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65が出力する基準クロック信号に同期する。RTC64は、衛星信号を処理するためのタイミングを生成するものである。このRTC64は、TCXO65から出力される基準クロック信号でカウントアップされる。なお、ベースバンド部60は、RTC64を備えずに構成されるものであっても構わない。
【0074】
制御表示部36は、駆動制御部70、駆動回路74及び水晶振動子73を含んで構成されている。
駆動制御部70は、記憶部71、RTC(Real Time Clock)72を備え、各種制御を行う。駆動制御部70は、例えばCPUで構成することが可能である。駆動制御部70は、制御信号をGPS受信部26に送り、GPS受信部26の受信動作を制御する。また駆動制御部70は、電圧検出回路37の検出結果に基づいて、レギュレータ34及びレギュレータ35の動作を制御する。また駆動制御部70は、駆動回路74を介してすべての指針13の駆動を制御するとともに、液晶表示パネル14の動作を制御する。
【0075】
記憶部71には受信データが記憶されている。駆動制御部70はその受信データに基づいて内部時刻情報を修正する。内部時刻情報は、電子時計100で計時される時刻の情報であり、常時駆動されているRTC72でカウントされており、水晶振動子73によって生成される基準クロック信号によって更新される。したがって、GPS受信部26への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針の運針を継続することができるようになっている。
【0076】
駆動制御部70は、時刻情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、GPS時刻情報に基づいて内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。より具体的には、内部時刻情報は、取得したGPS時刻情報にUTCオフセットを加算することで求められるUTC(協定世界時)に修正される。また、駆動制御部70は、位置情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データに基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。
【0077】
<3:実施形態のまとめ>
以上で説明したように、本実施形態では、表示機構収納部80の外部に設けられたアンテナ収納部90にアンテナ体40を収納するため、アンテナ体40を表示機構収納部80に収納する場合と比較して、電子時計100を薄型化及び小型化させることが可能となるとともに、電子時計100のデザイン性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、比誘電率εrが「100」以上の誘電体41を基材としてアンテナ体40を形成するため、アンテナ体40を設けることに伴う電子時計100の大型化を防止することができる。
また、本実施形態では、ケース胴81、ベゼル82、側部93、及び、底面部92が、金属等の導電性材料により形成されるため、これのうち一部を非導電性材料により形成する場合と比較して、電子時計100のデザインを、より重厚感及び高級感のあるものとすることができる。
【0078】
本実施形態では、アンテナ素子42を側部93から「2mm」以上離れるように設け、且つ、上面部91を非導電性材料により形成するため、アンテナ体40の良好な受信性能を確保することが可能となる。
また、本実施形態では、アンテナ体40を収納するアンテナ収納部90を、電子時計100の6時方向に設けるため、12時方向に設ける場合と比較して、アンテナ体40の良好な受信性能を確保することができる。
更に、本実施形態では、アンテナ基板43に加えて、アンテナ基板43と電気的に接続される底面部92、ケース胴81、及び、裏蓋85がアンテナ体40のグランドプレーンとして機能するため、アンテナ体40の良好な受信性能を確保することができる。
【0079】
<B.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を、適宜に組み合わせることもできる。
【0080】
<変形例1>
上述した実施形態において、アンテナ収納部90の上面部91は、非導電性材料により形成されるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、上面部91の一部を導電性材料により形成してもよい。
例えば、上面部91は、導電性材料により形成された第1上面部と、非導電性材料により形成された第2上面部と、を有するものであってもよい。この場合、アンテナ素子42の有する4辺のうち、辺L1及び辺L2の2辺、または、辺L3及び辺L4の2辺のうち、少なくとも一方が、平面視して、非導電性材料により形成された第2上面部と重なる(第1上面部と重ならない)ものであればよい。
【0081】
図12は、本変形例に係るアンテナ収納部90a及びアンテナ体40aを表す分解斜視図であり、
図13は、アンテナ収納部90aに収納されたアンテナ体40aを表す平面図である。以下、
図12及び
図13を参照しつつ、アンテナ収納部90a及びアンテナ体40aについて説明する。
【0082】
アンテナ収納部90aは、上面部91の代わりに上面部91aを備える点を除き、実施形態に係るアンテナ収納部90と同様に構成される。
具体的には、
図12に示すように、上面部91aは、導電性材料により形成された第1上面部912と、非導電性材料により形成された第2上面部914及び916と、を備える。
【0083】
また、アンテナ体40aは、アンテナ素子42の代わりにアンテナ素子42aを備える点を除き、実施形態に係るアンテナ体40と同様に構成される。
図13に示すように、アンテナ素子42aは、X軸方向の幅が、Y軸方向の幅に比べて広い。すなわち、平面視したときのアンテナ素子42aの輪郭を表す辺L1a〜L4aのうち、X軸方向に延在する辺L3a及び辺L4aは、Y軸方向に延在する辺L1a及び辺L2aに比べて長い。より具体的には、アンテナ素子42aは、辺L1a及び辺L2aの長さが共振長dsよりも短く、且つ、辺L3a及び辺L4aの長さが共振長dsと等しくなる(つまり、等しいと看做すことができる)ように設けられる。
なお、本変形例においても、アンテナ素子42aは、壁面Wsと辺L1a〜L4aのそれぞれとの距離d1a〜d4aが、全て「2mm」以上となるように設けられる。
【0084】
また、
図13に示すように、第1上面部912は、平面視したときに、辺L1a及び辺L2aの間に位置するように設けられる。換言すれば、平面視したときに、辺L1a及び辺L2aと、第1上面部912とが重ならないように(つまり、辺L1aと第2上面部914が重なり、且つ、辺L2aと第2上面部916とが重なるように)、上面部91a及びアンテナ素子42aが設けられる。
【0085】
本変形例のように、上面部の一部を導電性材料により形成する場合、上面部の全てを非導電性材料により形成する場合と比較して、デザイン上の制約を緩和することができ、電子時計のデザイン上の自由度を高めることができるとともに、電子時計のデザインを、より重厚感及び高級感のあるものとすることができる。
また、本変形例では、辺L1a及び辺L2aの上方には、非導電性材料により形成された第2上面部914または第2上面部916が配置される。このため、導電性の第1上面部912により衛星信号が遮られることによる、アンテナ体40aの受信性能の低下を小さく抑えることが可能となる。
なお、アンテナ素子42aの辺L1a及び辺L2aの間の距離を、実施形態に係るアンテナ素子42の辺L1及び辺L2の間の距離に比べて長くする場合、誘電体41の有する比誘電率εrを「100」よりも小さくすることが可能となり、誘電体41を形成する際の材料選択の幅が広がり、電子時計100の製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0086】
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例において、アンテナ体40は、パッチアンテナであるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、逆Fアンテナであってもよいし、これら以外の平面アンテナであってもよい。更には、小型化可能であり、且つ、衛星信号を受信可能なアンテナであれば、どのようなものであってもよい。
【0087】
図14は、本変形例に係る電子時計に設けられる、アンテナ体40bの斜視図である。アンテナ体40bは、逆Fアンテナであり、アンテナ体40bを備える。アンテナ体40bは、誘電体41、アンテナ素子42b、及び、アンテナ基板43を具備する。アンテナ素子42bは、誘電体41の上面と当該上面に隣り合う1の側面(厳密には、+Y方向側の1つの側面)との表面上に形成される。
逆Fアンテナは、円偏波を受信する場合、アンテナの電極の長さが受信する電波の波長の4分の1の長さとなるときに共振し高い受信性能を発揮する。そのため、逆Fアンテナの電極の長さ(すなわち、
図14における辺Lfhと、辺Lfvと長さの合計値である長さdf)は、波長の0.2〜0.3倍程度、理想的には0.25倍に設定される。よって、平面視したときのアンテナ素子42bの辺Lfhの長さを、上述したアンテナ体40の辺L3や、アンテナ体40aの辺L3a等に比べて短くすることができるのと同時に、誘電体41の有する比誘電率εrを「100」よりも小さくすることができる。
【0088】
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例において、貫通孔K4は、バンド取付部86及び87(つまり、突出部86a、86b、87a、及び、87b)に設けられるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、
図15に示すように、アンテナ収納部90の側部93に設けられるものであってもよい。
【0089】
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例において、電子時計は、表示部として文字板11及び指針13を具備する、いわゆるアナログ式時計であるが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、電子時計はデジタル式時計であってもよい。
図16は、本変形例に係る電子時計100Dの平面図である。この図に示すように、電子時計100Dは、表示部として、文字板11及び指針13の代わりに、液晶表示パネル10を具備する。この場合、電子時計100Dは、駆動機構30及び指針軸12等を備えないものであってもよい。
【0090】
<変形例5>
上述した実施形態及び変形例において、表示機構収納部は、平面視して円盤状の形状を有するが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、表示機構収納部の形状は円盤状の形状とは異なる形状、例えば、四角形であってもよい。
【0091】
<変形例6>
上述した実施形態及び変形例において、側部93は、ケース胴81及び底面部92と同一の材料で、ケース胴81及び底面部92と一体に形成されるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、側部93は、ケース胴81及び底面部92とは異なる材料で、または、ケース胴81及び底面部92とは別体として形成されるものであってもよい。
また、本実施形態では側部93は導電性材料で形成されるが、側部93を、セラミック等の非導電性材料で形成してもよい。
【0092】
<変形例7>
上述した実施形態及び変形例において、外装ケースは、導電性材料で形成されたケース胴と、導電性材料で形成されたベゼルとを備えるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、ベゼルを、ABS等の樹脂もしくはセラミックまたはその他の非導電性材料で形成してもよい。
また、ケース胴及びベゼルを、導電性材料または非導電性材料のうち一方の同一材料により一体として形成するものであってもよい。
【0093】
<変形例8>
上述した実施形態及び変形例において、電子時計は、GPS衛星200等の位置情報衛星からの電波を受信するが、位置情報衛星からの電波に限らず、例えば、無線タグ用の900MHz帯の電波を受信する電子時計であってもよい。また、例えば、Bluetooth(登録商標)等の2.4GHz帯の電波を受信する電子時計でもよい。
【0094】
<変形例9>
上述した実施形態及び変形例では、腕時計である電子時計(電子時計100等)を例示して説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、腕時計以外の時計、例えば、懐中時計や置き時計に適用することもできる。
また、電子時計以外の、受信した電波に基づいて情報を表示する電子機器(例えば携帯電話機やデジタルカメラ等)に対して、本発明を適用してもよい。