特許第6232753号(P6232753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232753
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】吸気マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20171113BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F02M35/10 101D
   F02M35/10 101N
   F02M35/16 D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-115415(P2013-115415)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-234734(P2014-234734A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成
(72)【発明者】
【氏名】有永 毅
(72)【発明者】
【氏名】土田 博文
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2699915(JP,B2)
【文献】 特開2006−342747(JP,A)
【文献】 特開2002−174152(JP,A)
【文献】 特開2010−169024(JP,A)
【文献】 特開2007−192160(JP,A)
【文献】 特開2012−158994(JP,A)
【文献】 実開昭63−024359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して横置き搭載される内燃エンジンに用いられ、エンジン本体よりも車両前方に位置する吸気マニホールドであって、
車両前方側の前側半割体と、
前記前側半割体の裏側に位置して前記前側半割体に一体化される後側半割体と、
を含み、
前記前側半割体の板厚は前記後側半割体の板厚よりも薄い、又は、前記前側半割体は前記後側半割体よりも脆弱な材料で形成される、又は、前記前側半割体には脆弱部が形成されるが前記後側半割体には脆弱部が形成され
前記後側半割体の車両前後方向の前端位置は、前記吸気マニホールドを除いて前記エンジン本体に取り付けられる部品の車両前後方向の前端位置と略等しい、
吸気マニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記脆弱部は、ノッチで形成される、
吸気マニホールド。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記ノッチは、前記吸気マニホールドを構成する吸気管の吸気の流れ方向と平行に形成される、
吸気マニホールド。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記ノッチは、前記吸気マニホールドを構成する吸気管の幅方向中央に形成される、
吸気マニホールド。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記エンジン本体に取り付けられる部品は、可変圧縮比機構のアクチュエーターである、
吸気マニホールド。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の吸気マニホールドにおいて、
前記前側半割体は、前記後側半割体よりも脆弱な多孔質材料で形成される、
吸気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に対して横置き搭載、すなわちクランクシャフトが車幅方向に向くように搭載される内燃エンジンに用いられる吸気マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の吸気マニホールドは、3つの分割体(車両後方側(エンジン側)の第1分割体、中央の第2分割体、車両前方側の第3分割体)で構成される。第1分割体の剛性は、他の分割体の剛性よりも高い。また第2分割体には、リブ構造が形成されている。特許文献1は、このような構造であるので、車両前後方向の外部荷重が加わったときに、リブ構造が突っ張り要素となって応力集中点が生じ、この応力集中点が起点となって、第2分割体及び第3分割体が破壊する、としている。このように、第2分割体及び第3分割体が破壊することで、クラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−285916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1の構造では、リブ構造の方向と外部荷重の方向とが一致すればリブ構造が突っ張り要素となって応力集中点が生じるものの、一致しない場合には応力集中点が生じない可能性があり、そのような場合には車両前方側の分割体を効果的にクラッシュさせられないおそれがある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされた。本発明の目的は、さまざまな方向からの外部荷重に対して、吸気マニホールドの車両前方側が破壊されることで、確実にクラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保できる吸気マニホールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明による吸気マニホールドのひとつの実施形態は、車両に対して横置き搭載される内燃エンジンに用いられ、エンジン本体よりも車両前方に位置する。そして、車両前方側の前側半割体と、前記前側半割体の裏側に位置して前側半割体に一体化される後側半割体と、を含む。さらに、前記前側半割体の板厚は前記後側半割体の板厚よりも薄い、又は、前記前側半割体は前記後側半割体よりも脆弱な材料で形成される、又は、前記前側半割体には脆弱部が形成されるが前記後側半割体には脆弱部が形成され前記後側半割体の車両前後方向の前端位置は、前記吸気マニホールドを除いて前記エンジン本体に取り付けられる部品の車両前後方向の前端位置と略等しい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この態様によれば、外部荷重が加わったときに、吸気マニホールドの前側半割体が容易に破壊されることとなり、確実にクラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保される。
【0009】
本発明の実施形態、本発明の利点は、添付された図面とともに以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明による吸気マニホールドの実施形態を示す図である。
図2図2は、吸気マニホールドの斜視図である。
図3図3は、吸気マニホールドの一部分を拡大した図である。
図4図4は、可変圧縮比エンジンについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明による吸気マニホールドの実施形態を示す図である。
【0012】
この図1は、本発明による吸気マニホールドを用いる内燃エンジンが車載された状態を側方から示す。紙面左が車両の前方になる。
【0013】
吸気マニホールド100は、車両に対して横置き搭載、すなわちクランクシャフト32が車幅方向に向くように搭載される内燃エンジンに用いられる。吸気マニホールド100は、エンジン本体10よりも車両前方に位置する。吸気マニホールド100は、前側半割体110と、後側半割体120と、を含む。前側半割体110は、車両前方側に位置する構造体である。後側半割体120は、前側半割体110の裏側に位置して前側半割体110に一体化される構造体である。後側半割体120の車両最前方に位置する箇所は、破線で示されるように、吸気マニホールドを除いてエンジン本体10に取り付けられる部品の車両最前方位置と略等しくなっている。なお図1の内燃エンジン1は、クランクシャフト32とピストン33とを2つのリンク(ロアーリンク11、アッパーリンク12)で連結し、圧縮比を変更可能な可変圧縮比エンジンを例示しているが、これには限られない。クランクシャフトとピストンとをひとつのリンク(コネクティングロッド)で連結するコンベンショナルな内燃エンジンであってもよい。
【0014】
図2は、吸気マニホールドの斜視図である。
【0015】
吸気マニホールド100は、前側半割体110と、後側半割体120と、を含む。後側半割体120は、前側半割体110の裏側に位置して前側半割体110に一体化されている。なお本実施形態の吸気マニホールド100は、吸気管(ブランチパイプ)が3本であり、直列3気筒エンジンに適用されるものであるが、これには限定されない。
【0016】
図3は吸気マニホールドの一部分を拡大した図面であり、図3(A)は図2のIIIA−IIIAで切った吸気マニホールドの斜視図、図3(B)は吸気マニホールド100の前側半割体110の一部分を拡大した断面図である。
【0017】
図3(B)から明らかなように、吸気マニホールド100の前側半割体110の前面には、脆弱部としてのノッチ111が形成されている。一方、後側半割体120にはノッチ(脆弱部)が形成されていない。このノッチ111は、吸気マニホールドを構成する吸気管の吸気の流れ方向と平行に形成される。またこのノッチ111は、吸気管の幅方向中央に形成した。
【0018】
このような構造であるので、前側半割体110は、後側半割体120よりも脆弱である。したがって吸気マニホールドに外部荷重が加わったときに、このノッチ111が起点となって前側半割体110が破壊して、クラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保される。
【0019】
上述した特許文献1の構造では、リブ構造の方向と外部荷重の方向とが一致すればリブ構造が突っ張り要素となって応力集中点が生じるものの、一致しない場合には応力集中点が生じない可能性があり、そのような場合には車両前方側の分割体を効果的にクラッシュさせられないおそれがある。
【0020】
しかしながら、本実施形態のように、前側半割体110の前面にノッチ111を形成しておくので、さまざまな方向から外部荷重が加わっても、ノッチ111を起点として前側半割体110が破壊されるので、確実にクラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保されるのである。その一方で後側半割体120にはノッチが形成されていないので、強度が高く、たとえば、エンジン本体10と吸気マニホールド(後側半割体120)との間に配設されるもの(たとえば燃料配管)を保護できるのである。すなわち、本実施形態によれば、エンジン本体10と吸気マニホールド(後側半割体120)との間に配設される燃料配管などを保護しつつ、クラッシャブルゾーンを大きくできるのである。
【0021】
また本実施形態では、脆弱部をノッチ111で形成した。このようにすれば、容易に脆弱部を設けることができる。
【0022】
さらに、本実施形態では、ノッチ111を、吸気マニホールド100を構成する吸気管の吸気の流れ方向と平行に形成した。またノッチ111を、吸気管の幅方向中央に形成した。このようにしたので、ノッチ111を長く形成することができ、吸気マニホールド100にさまざまな方向から外部荷重が加わっても、ノッチ111を起点として前側半割体110が破壊されやすくなるのである。
【0023】
なお、前側半割体110の前面にノッチ111を形成するのに代えて、前側半割体110の板厚を後側半割体120の板厚よりも薄くしてもよい。このようにしても、外部荷重が加わったときに、前側半割体110が容易に破壊されることとなり、確実にクラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保される。
【0024】
また、前側半割体110を後側半割体120よりも脆弱な材料で形成してもよい。これは、たとえば脆弱な多孔質材料を用いることが例示される。このようにしても、外部荷重が加わったときに、前側半割体110が容易に破壊されることとなり、確実にクラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)が確保される。
【0025】
なお前側半割体110を脆弱にする各手法を適宜組み合わせてもよい。
【0026】
上述したように、後側半割体120の車両最前方に位置する箇所は、吸気マニホールド100を除いてエンジン本体10に取り付けられる部品の車両最前方位置と略等しくなっている。この「吸気マニホールドを除いてエンジン本体10に取り付けられる部品」としては、たとえば、エンジン本体が可変圧縮比エンジンである場合に、圧縮比を調整するアクチュエーターが一例として挙げられる。
【0027】
そこで、次に図4を参照して、可変圧縮比エンジンの一例について説明する。
【0028】
図4に示されるように、可変圧縮比エンジン1は、クランクシャフト32とピストン33とを2つのリンク(ロアーリンク11、アッパーリンク12)で連結するとともに、コントロールリンク13でロアーリンク11の移動を規制して機械圧縮比を変更する。
【0029】
コントロールリンク13は、連結ピン24を介してコントロールシャフト25に連結する。コントロールリンク13は、この連結ピン24を中心として揺動する。連結ピン24は、コントロールシャフト25に対して偏心する。コントロールシャフト25にはギヤが形成されており、そのギヤがアクチュエーター51の回転軸52に設けられたピニオン53に噛合する。アクチュエーター51によってコントロールシャフト25が回転させられ、連結ピン24が移動する。可変圧縮比エンジン1は、コントロールシャフト25を回転して連結ピン24の位置を変更することで、上死点でのピストンの位置が変わり圧縮比を調整できる。
【0030】
コントローラー70はアクチュエーター51を制御してコントロールシャフト25を回転させて圧縮比を変更する。コントローラー70は燃料噴射弁41の燃料噴射を制御する。なお本実施形態の可変圧縮比エンジン1では、燃料噴射弁41は燃焼室に直接燃料を噴射する。またコントローラー70はシリンダーヘッドに設けられた点火プラグ42の点火時期を制御する。コントローラー70は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラー70を複数のマイクロコンピューターで構成してもよい。
【0031】
このような可変圧縮比エンジンにおいて、圧縮比を調整するアクチュエーターの車両最前方位置を、後側半割体120の車両最前方に位置する箇所と略等しくすることで、確実にクラッシュストローク(クラッシャブルゾーン)を確保できるのである。後側半割体120の前端位置を後退させるほどクラッシャブルゾーンは大きくなるが、他の部品(たとえば、圧縮比を調整するアクチュエーター)の前端位置よりも後退させても意味がない。クラッシュは他の部品の前端位置で止まってしまうからである。したがって、後側半割体120の車両最前方に位置する箇所が、他の部品の前端位置と揃えることが最も合理的である。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0033】
たとえば、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【0034】
また、内燃エンジンは、上記では、可変圧縮比エンジンを例示しているが、それには限られずコンベンショナルなエンジンであってもよいことは勿論である。また「吸気マニホールドを除いてエンジン本体10に取り付けられる部品」として、圧縮比を調整するアクチュエーターを挙げたが、それは一例に過ぎず、他の部品であってもよいことも勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 内燃エンジン(可変圧縮比エンジン)
10 エンジン本体
32 クランクシャフト
100 吸気マニホールド
110 前側半割体
111 ノッチ
120 後側半割体
図1
図2
図3
図4