特許第6232758号(P6232758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232758
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20171113BHJP
   F02D 41/32 20060101ALI20171113BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20171113BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20171113BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20171113BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F02D41/34 C
   F02D41/32 C
   F02D43/00 301H
   F02D43/00 301S
   F02D45/00 368G
   F02D15/02 C
   F02M63/00 P
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-120296(P2013-120296)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238033(P2014-238033A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】間野 忠樹
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−179389(JP,A)
【文献】 特開平11−343911(JP,A)
【文献】 特開2012−026340(JP,A)
【文献】 特開2007−231850(JP,A)
【文献】 特開2010−168905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 41/40
F02D 13/00 − 28/00
F02D 43/00 − 45/00
F02M 39/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射用燃料噴射弁と、燃焼室に燃料を噴射する筒内噴射用燃料噴射弁と、を備える内燃機関の制御装置において、
上記ポート噴射用燃料噴射弁と筒内噴射用燃料噴射弁の一方の噴射弁を定常的に作動させた状態で、他方の噴射弁に対し、その噴射弁で所定の燃料噴射量精度を確保できることが保証されている最小の噴射期間である最小保証期間よりも短い期間の作動信号を印加し、その際の機関運転状態の変動に基づいて、上記他方の噴射弁の最小保証期間よりも短い期間の噴射量を補正する噴射量補正手段を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
上記機関運転状態が、排気通路に配設された空燃比センサにより検知される空燃比の変動であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
上記噴射量補正手段は、噴射期間の伸縮及び印加電流の増減の少なくとも一方を用いて、上記最小保証期間よりも短い期間の噴射量を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
上記噴射量補正手段は、上記最小保証期間よりも短く噴射弁が開弁しない無効期間と、上記最小保証期間と、の乖離量に基づいて、補正条件を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
上記噴射量補正手段は、機関運転中に定期的に補正を実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
上記噴射量補正手段は、予め設定された作動信号に対する噴射量の基本特性に対する乖離量を用いて補正を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
上記噴射量補正手段は、上記最小保証期間よりも短く噴射弁が開弁しない無効期間を検知もしくは推定し、この無効期間と最小保証期間との間で噴射量を補正することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
上記噴射量補正手段は、上記一方の噴射弁のみを使用する運転領域で補正を実施することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
上記噴射量補正手段は、上記他方の噴射弁を補正する場合に、一時的に一方の噴射弁のみで燃料噴射量の全量を噴射する状況として補正を実施することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項10】
内燃機関圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を備え、
上記噴射量補正手段による補正中には、圧縮比を低下側へ補正することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項11】
上記噴射量補正手段は、上記最小保証期間を超える噴射期間の補正も行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項12】
吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射用燃料噴射弁と、燃焼室に燃料を噴射する筒内噴射用燃料噴射弁と、を備える内燃機関の制御方法において、
上記ポート噴射用燃料噴射弁と筒内噴射用燃料噴射弁の一方の噴射弁を定常的に作動させた状態で、他方の噴射弁に対し、その噴射弁で所定の燃料噴射量精度を確保できることが保証されている最小の噴射期間である最小保証期間よりも短い期間の作動信号を印加し、その際の機関運転状態の変動に基づいて、上記他方の噴射弁の最小保証期間よりも短い期間の噴射量を補正することを特徴とする内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射用燃料噴射弁と、燃焼室に燃料を噴射する筒内噴射用燃料噴射弁と、を併用する内燃機関の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射用燃料噴射弁と、燃焼室内に直接に燃料を噴射する筒内噴射用燃料噴射弁と、を併用し、機関運転条件に応じて両者を適宜に切り換えて使用する燃料噴射装置を備えた内燃機関が、特許文献1に記載されている。この特許文献1では、リーン限界の空燃比が保てる範囲内で、かつHC排出量を最小限に抑えるように、筒内噴射とポート噴射との分担率を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒内噴射用燃料噴射弁は、一般的には、駆動パルス信号が印加されることによって開弁する電磁式ないし圧電式の噴射弁であって、駆動パルス信号のパルス幅に実質的に比例した量の燃料を噴射する。つまり、パルス幅が実質的に噴射期間に相当する。ここで、電圧印加の直後では噴射弁が開弁しない僅かな無効時間が含まれていることなどから、パルス幅の小さい状況ではパルス幅に対する燃料噴射量の誤差が大きく、所定の精度を確保できる最小のパルス幅、つまり最小保証期間は予め設定されている。このため、通常は最小保証期間を下回ることのないようにパルス幅が設定される。従って、燃料噴射量の最小値が最小保証期間により制限され、各噴射弁の燃料噴射領域(ダイナミックレンジ)が制限されていた。
【0005】
本発明は、予め設定された所定の最小保証期間よりも短い噴射期間の噴射量を補正・学習することによって、このような短い噴射期間での安定した噴射を可能とし、噴射弁の噴射可能領域(ダイナミンクレンジ)を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射用燃料噴射弁と、燃焼室に燃料を噴射する筒内噴射用燃料噴射弁と、を備える。そして本発明は、上記ポート噴射用燃料噴射弁と筒内噴射用燃料噴射弁の一方の噴射弁を定常的に作動させた状態で、他方の噴射弁に対し、その噴射弁で保証されている最小の噴射期間である最小保証期間よりも短い期間の作動信号を印加し、その際の機関運転状態の変動に基づいて、上記他方の噴射弁の最小保証期間よりも短い期間の噴射量を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一方の噴射弁を定常的に作動させることで安定した運転を継続した状態で、他方の噴射弁に対して最小保証期間よりも短い期間の噴射量を補正することができる。従って、この補正結果を学習・反映することで、最小保証期間よりも短い期間の噴射を可能とし、噴射可能領域(ダイナミックレンジ)を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の一実施例に係る制御装置のシステム構成を示す構成説明図。
図2】本実施例の制御の流れを示すフローチャート。
図3】本実施例の補正時における各気筒毎の空燃比の変動(A)及びパルス幅(B)を示す説明図。
図4】第1気筒のパルス幅(A)と空燃比の変動(B)を示す説明図。
図5】パルス幅と噴射量との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の一実施例が適用された自動車用内燃機関1のシステム構成を示している。この内燃機関1は、例えば複リンク式ピストンクランク機構を利用した可変圧縮比機構2を備えた4ストロークサイクルのターボ過給器付き火花点火内燃機関であって、燃焼室3の天井壁面に、一対の吸気弁4および一対の排気弁5が配置されているとともに、これらの吸気弁4および排気弁5に囲まれた中央部に点火プラグ6が配置されている。
【0010】
上記吸気弁4によって開閉される吸気ポート7の下方には、燃焼室3内に燃料を直接に噴射する筒内噴射用燃料噴射弁8が配置されている。また吸気ポート7には、該吸気ポート7内へ向けて燃料を噴射するポート噴射用燃料噴射弁41が配置されている。これらの筒内噴射用燃料噴射弁8およびポート噴射用燃料噴射弁41は、いずれも駆動パルス信号が印加されることによって開弁する電磁式ないし圧電式の噴射弁であって、駆動パルス信号のパルス幅に実質的に比例した量の燃料を噴射する。
【0011】
上記吸気ポート7に接続された吸気通路18のコレクタ部18aの上流側には、エンジンコントローラ9からの制御信号によって開度が制御される電子制御型のスロットルバルブ19が介装されており、さらにその上流側に、ターボ過給器のコンプレッサ20が配設されている。このコンプレッサ20の上流側に、吸入空気量を検出するエアフロメータ10が配設されている。
【0012】
また、排気ポート11に接続された排気通路12には、三元触媒からなる触媒装置13が介装されており、その上流側に、空燃比を検出する空燃比センサ14が配置されている。
【0013】
上記エンジンコントローラ9には、上記のエアフロメータ10、空燃比センサ14のほか、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ15、冷却水温を検出する水温センサ16、運転者により操作されるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ17、等のセンサ類の検出信号が入力されている。エンジンコントローラ9は、これらの検出信号に基づき、燃料噴射弁8,41による燃料噴射量および噴射時期、点火プラグ6による点火時期、スロットルバルブ19の開度、等を最適に制御している。
【0014】
一方、可変圧縮比機構2は、公知の複リンク式ピストンクランク機構を利用したものであって、クランクシャフト21のクランクピン21aに回転自在に支持されたロアリンク22と、このロアリンク22の一端部のアッパピン23とピストン24のピストンピン24aとを互いに連結するアッパリンク25と、ロアリンク22の他端部のコントロールピン26に一端が連結されたコントロールリンク27と、このコントロールリンク27の他端を揺動可能に支持するコントロールシャフト28と、を主体として構成されている。上記クランクシャフト21および上記コントロールシャフト28は、シリンダブロック29下部のクランクケース内で図示せぬ軸受構造を介して回転自在に支持されている。上記コントロールシャフト28は、該コントロールシャフト28の回動に伴って位置が変化する偏心軸部28aを有し、上記コントロールリンク27の端部は、詳しくは、この偏心軸部28aに回転可能に嵌合している。上記の可変圧縮比機構2においては、コントロールシャフト28の回動に伴ってピストン24の上死点位置が上下に変位し、従って、機械的な圧縮比が変化する。
【0015】
また、上記可変圧縮比機構2の圧縮比を可変制御する駆動機構として、クランクシャフト21と平行な回転中心軸を有する電動モータ31がシリンダブロック29下部に配置されており、この電動モータ31と軸方向に直列に並ぶように減速機32が接続されている。この減速機32としては、減速比の大きな例えば波動歯車機構が用いられており、その減速機出力軸32aは、電動モータ31の出力軸(図示せず)と同軸上に位置している。従って、減速機出力軸32aとコントロールシャフト28とは互いに平行に位置しており、両者が連動して回動するように、減速機出力軸32aに固定された第1アーム33とコントロールシャフト28に固定された第2アーム34とが中間リンク35によって互いに連結されている。
【0016】
すなわち、電動モータ31が回転すると、減速機32により大きく減速された形で減速機出力軸32aの角度が変化する。この減速機出力軸32aの回動は第1アーム33から中間リンク35を介して第2アーム34へ伝達され、コントロールシャフト28が回動する。これにより、上述したように、内燃機関1の機械的な圧縮比が変化する。なお図示例では、第1アーム33および第2アーム34が互いに同方向に延びており、従って、例えば減速機出力軸32aが時計回り方向に回動するとコントロールシャフト28も時計回り方向に回動する関係となっているが、逆方向に回動するようにリンク機構を構成することも可能である。
【0017】
上記可変圧縮比機構2の目標圧縮比は、エンジンコントローラ9において、機関運転条件(例えば要求負荷と機関回転速度)に基づいて設定され、この目標圧縮比を実現するように上記電動モータ31が駆動制御される。
【0018】
図2は、本実施例の制御の流れを示すフローチャートである。なお、以下の説明では、筒内噴射用燃料噴射弁8による筒内噴射を「GDI」とも呼び、ポート噴射用燃料噴射弁41によるポート噴射を「MPI」とも呼ぶ。また、本実施例では筒内噴射用燃料噴射弁8に対して最小保証期間Qminよりも短い期間の噴射量の補正を行う例について説明しているが、同様に、ポート噴射用燃料噴射弁41に対して補正を行うこともできる。
【0019】
ステップS11では、筒内噴射用燃料噴射弁8に対して最小保証期間Qminよりも短い期間の噴射量の補正を行うか否かを判定する。最小保証期間Qminは、所定の精度を確保できる最小のパルス幅として予め設定された各噴射弁に固有の値であり、一般的には、この最小保証期間を下回ることのないようにパルス幅が設定される。
【0020】
ステップS11の判定が肯定されるとステップS12へ進み、機関運転に必要な燃料噴射量の全量をポート噴射のみで噴射供給しつつ、筒内噴射用燃料噴射弁8を最小保証期間Qminよりも短い期間で作動する。ステップS13では、空燃比センサ14により検出される各気筒の空燃比(A/F)の変動に基づいて、各気筒毎に最小保証期間Qminよりも短い期間における噴射量を補正する。具体的には噴射パルス幅を増減する。そしてステップS14では、この補正量を学習して、補正後の最小保証期間Qminよりも短い噴射期間を含めてGDI噴射領域(ダイナミックレンジ)を拡大した形で、機関運転を継続する。
【0021】
次に図3図5を参照して、上記噴射量の補正についてより具体的に説明する。図3(B)に示すように最小保証期間Qminよりも短いパルス幅の複数段の信号を段階的に与え、図3(A)に示すように、その際の各気筒毎の空燃比の変動に基づいて、噴射量(パルス幅)を増減する。
【0022】
図4及び図5は、第1気筒#1の補正例を示している。図5に示すように、パルス幅に対する燃料噴射量(Q)は基本的には比例関係にあり、その基準特性L0に対する乖離量が補正量として求められる。なお、噴射開始の極初期の無効期間t0〜t1では、パルス幅に対する燃料噴射量の変動が大きく、安定した噴射量の設定が不可能であるために、この無効期間を検出もしくは推定し、この無効期間と最小保証期間Qminとの間(t1〜t4)で補正が行われる。
【0023】
例えば区間t2〜t3の補正後のパルス幅z2’は、次式(1)により求められる。
【0024】
’=x/(y+z)+z …(1)
このような本実施例の特徴的な構成及び作用効果について、以下に列記する。
【0025】
[1]本実施例では、ポート噴射用燃料噴射弁41と筒内噴射用燃料噴射弁8の一方の噴射弁(実施例ではポート噴射用燃料噴射弁41)を定常的に作動させた状態で、他方の噴射弁(実施例では筒内噴射用燃料噴射弁41)に対し、その噴射弁で保証されている最小の噴射期間である最小保証期間Qminよりも短い期間の作動信号を印加し、その際の機関運転状態の変動に基づいて、上記他方の噴射弁の最小保証期間Qminよりも短い期間の噴射量を補正している(噴射量補正手段)。
【0026】
このように、一方の噴射弁により機関運転(車両走行)に必要な燃料噴射量を確保し、失火やトルク変動を招くことなく、他方の噴射弁に対して最小保証期間よりも短い期間の噴射量を補正することができる。また、最小保証期間Qminよりも短い極わずかな噴射量を段階的に増加させるために、トルク変動や空燃比の変動も極僅かなものであり、機関運転性に悪影響を与えることもない。そして、この補正結果を反映・学習することで、最小保証期間Qminよりも短い期間の噴射を可能とし、噴射可能領域(ダイナミックレンジ)を拡大することができる。
【0027】
従って、例えば上記実施例のように筒内噴射用燃料噴射弁8の噴射量を補正するようにした場合、筒内噴射の静流設定を拡大し、筒内噴射による走行領域を拡大することができる。また、オイル希釈,スーパーノック,PMPN等の発生を抑制するためにポート噴射を用いざるを得なかった一部の運転領域でも筒内噴射が可能となり、筒内噴射による燃費向上やノッキングの抑制等の効果が得られる運転領域を拡大することができる。
【0028】
[2]上述した噴射量の補正の際に用いられる機関運転状態の変動として、上記実施例では排気通路12に配設された空燃比センサ14により検知される空燃比の変動を用いている。但し、これに限らず、トルク変動率や回転変動,排気レベルや排気温度の変動などを用いて補正を行うようにしても良い。
【0029】
[3]補正の態様としては、上記実施例のような噴射期間(パルス幅)の伸縮の他、印加電流の増減を単独又は組み合わせて行うようにしても良い。
【0030】
[4]また、補正条件(補正を行う段数)は、補正が不可能な噴射開始の極初期の段階の無効期間(図4のt1)と、上記最小保証期間(図4のt4)と、の乖離量に基づいて設定される。例えば、乖離量が大きい(パルス幅が小さい)ほど、補正を行う段数が多く設定される。
【0031】
[5]上述した噴射量の補正・学習は、噴射弁の劣化状況を考慮して、好ましくは例えば数サイクル毎のように定期的に実施される。
【0032】
[6]また、補正の具体例としては、上記実施例のように、予め設定された作動信号に対する噴射量の基本特性L0に対する乖離量を用いて補正が行われる。
【0033】
[7]更に、噴射開始の極初期の段階ではパルス幅に対する噴射量の変動が大きく安定した特性が得られないことから、好ましくは安定した燃料噴射量の供給が不可能な噴射所期の無効期間(図4のt1)を検知もしくは推定し、この無効期間と最小保証期間との間(図4のt1〜t4)で噴射量を補正する。
【0034】
[8]また、上述した噴射量の補正・学習の際には、一方の噴射弁のみを使用することになるため、一方の噴射弁のみを使用する運転領域で補正を実施することで、補正の前後で噴射弁の分担率を変更する必要がなく、これによるトルク変動等を招くことがない。
【0035】
[9]但し、一方の噴射弁のみを使用する運転領域が狭いような場合には、補正を行う機会を確保するために、一時的に一方の噴射弁のみで燃料噴射量の全量を噴射する状況として補正を実施するようにしても良い。
【0036】
[10]内燃機関の機械的な圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構2を備える構成の場合、噴射量の補正中に、圧縮比を低下側へ補正する。このような圧縮比の低下により、混合気の均一化が促進されて、空燃比の変動を検知し易くなり、補正精度の向上を図ることができる。
【0037】
[11]また、上述したように最小保証期間よりも短い期間の補正を行う際に、燃料噴射量の増加による運転性の低下を招くことのない範囲で、最小保証期間を超える噴射期間の補正も行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…内燃機関
2…可変圧縮比機構
6…点火プラグ
8…筒内噴射用燃料噴射弁
9…エンジンコントローラ
14…空燃比センサ
20…コンプレッサ
41…ポート噴射用燃料噴射弁
図1
図2
図3
図4
図5