(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A−1.頭部装着型表示装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態における頭部装着型表示装置の概略構成を示す説明図である。頭部装着型表示装置100は、頭部に装着する表示装置であり、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、HMD)とも呼ばれる。本実施形態のヘッドマウントディスプレイ100は、使用者が、虚像を視認すると同時に外景も直接視認可能な光学透過型の頭部装着型表示装置であって、使用者が視認する虚像における画像の焦点距離を変更可能な頭部装着型表示装置である。なお、本実施形態において「使用者が視認する虚像における画像の焦点距離」とは、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者の両眼と、ヘッドマウントディスプレイ100の使用に伴い使用者が視認する虚像に含まれる画像が結像する位置と、の間の距離を意味する。
【0021】
ヘッドマウントディスプレイ100は、使用者の頭部に装着された状態において使用者に虚像を視認させる画像表示部20と、画像表示部20を制御する制御部(コントローラー)10とを備えている。
【0022】
画像表示部20は、使用者の頭部に装着される装着体であり、本実施形態では眼鏡形状を有している。画像表示部20は、右保持部21と、右表示駆動部22と、左保持部23と、左表示駆動部24と、右光学像表示部26と、左光学像表示部28と、を含んでいる。右光学像表示部26および左光学像表示部28は、それぞれ、使用者が画像表示部20を装着した際に使用者の右および左の眼前に位置するように配置されている。右光学像表示部26の一端と左光学像表示部28の一端とは、使用者が画像表示部20を装着した際の使用者の眉間に対応する位置で、互いに接続されている。
【0023】
右保持部21は、右光学像表示部26の他端である端部ERから、使用者が画像表示部20を装着した際の使用者の側頭部に対応する位置にかけて、延伸して設けられた部材である。同様に、左保持部23は、左光学像表示部28の他端である端部ELから、使用者が画像表示部20を装着した際の使用者の側頭部に対応する位置にかけて、延伸して設けられた部材である。右保持部21および左保持部23は、眼鏡のテンプル(つる)のようにして、使用者の頭部に画像表示部20を保持する。
【0024】
右表示駆動部22は、右保持部21の内側、換言すれば、使用者が画像表示部20を装着した際の使用者の頭部に対向する側に配置されている。また、左表示駆動部24は、左保持部23の内側に配置されている。なお、以降では、右保持部21および左保持部23を区別せず「保持部」として説明する。同様に、右表示駆動部22および左表示駆動部24を区別せず「表示駆動部」として説明し、右光学像表示部26および左光学像表示部28を区別せず「光学像表示部」として説明する。
【0025】
表示駆動部は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、以下「LCD」と呼ぶ)241、242や投写光学系251、252等を含む(
図2参照)。表示駆動部の構成の詳細は後述する。光学部材としての光学像表示部は、導光板261、262(
図2参照)と調光板とを含んでいる。導光板261、262は、光透過性の樹脂材料等によって形成され、表示駆動部から出力された画像光を使用者の眼に導く。調光板は、薄板状の光学素子であり、画像表示部20の表側(使用者の眼の側とは反対の側)を覆うように配置されている。調光板は、導光板261、262を保護し、導光板261、262の損傷や汚れの付着等を抑制する。また、調光板の光透過率を調整することによって、使用者の眼に入る外光量を調整して虚像の視認のしやすさを調整することができる。なお、調光板は省略可能である。
【0026】
画像表示部20は、さらに、画像表示部20を制御部10に接続するための接続部40を有している。接続部40は、制御部10に接続される本体コード48と、本体コード48が2本に分岐した右コード42および左コード44と、分岐点に設けられた連結部材46と、を含んでいる。連結部材46には、イヤホンプラグ30を接続するためのジャックが設けられている。イヤホンプラグ30からは、右イヤホン32および左イヤホン34が延伸している。
【0027】
画像表示部20と制御部10とは、接続部40を介して各種信号の伝送を行う。本体コード48における連結部材46とは反対側の端部と、制御部10とのそれぞれには、互いに嵌合するコネクター(図示省略)が設けられており、本体コード48のコネクターと制御部10のコネクターとの嵌合/嵌合解除により、制御部10と画像表示部20とが接続されたり切り離されたりする。右コード42と、左コード44と、本体コード48には、例えば、金属ケーブルや光ファイバーを採用することができる。
【0028】
制御部10は、ヘッドマウントディスプレイ100を制御するための装置である。制御部10は、点灯部12と、タッチパッド14と、十字キー16と、電源スイッチ18とを含んでいる。点灯部12は、ヘッドマウントディスプレイ100の動作状態(例えば、電源のON/OFF等)を、その発光態様によって通知する。点灯部12としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。タッチパッド14は、タッチパッド14の操作面上での接触操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。タッチパッド14としては、静電式や圧力検出式、光学式といった種々のタッチパッドを採用することができる。十字キー16は、上下左右方向に対応するキーへの押下操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。電源スイッチ18は、スイッチのスライド操作を検出することで、ヘッドマウントディスプレイ100の電源の状態を切り替える。
【0029】
図2は、ヘッドマウントディスプレイ100の構成を機能的に示すブロック図である。制御部10は、入力情報取得部110と、記憶部120と、電源130と、無線通信部132と、GPSモジュール134と、CPU140と、インターフェイス180と、送信部(Tx)51および52とを備え、各部は図示しないバスにより相互に接続されている。
【0030】
入力情報取得部110は、例えば、タッチパッド14や十字キー16、電源スイッチ18などに対する操作入力に応じた信号を取得する。記憶部120は、ROM、RAM、DRAM、ハードディスク等によって構成されている。記憶部120には、焦点距離テーブル122が格納されている。焦点距離テーブル122は、画像処理部160が実行する焦点距離変更処理において使用されるテーブルである。焦点距離変更処理は、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する虚像における画像の焦点距離を変更する処理である。詳細は後述する。
【0031】
図3は、焦点距離テーブル122の一例を示す説明図である。焦点距離テーブル122は、移動量と、焦点距離とを含んでいる。移動量には、0(ピクセル)〜n(ピクセル)までの数字が格納されている。ここでnは任意の整数を表す。焦点距離には、表示駆動部から射出される画像光を、初期状態から「移動量」に格納されているピクセル数だけ移動させた場合における、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する画像の焦点距離を表す数字が格納されている。例えば、
図3の例では、移動量が0ピクセルの場合は、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する画像の焦点距離は無限遠となることがわかる。また、移動量が1ピクセルの場合は、使用者が視認する画像の焦点距離は199mであることがわかる。
【0032】
電源130は、ヘッドマウントディスプレイ100の各部に電力を供給する。電源130としては、例えば二次電池を用いることができる。無線通信部132は、無線LANやブルートゥースといった所定の無線通信規格に則って、他の機器との間で無線通信を行う。GPSモジュール134は、GPS衛星からの信号を受信することにより、自身の現在位置を検出する。
【0033】
CPU140は、記憶部120に格納されているコンピュータープログラムを読み出して実行することにより、オペレーティングシステム(ОS)150、画像処理部160、音声処理部170、表示制御部190として機能する。
【0034】
画像処理部160は、インターフェイス180や無線通信部132を介して入力されるコンテンツ(映像)に基づいて信号を生成する。そして、画像処理部160は、生成した信号を、接続部40を介して画像表示部20に供給することで、画像表示部20を制御する。画像表示部20に供給するための信号は、アナログ形式とディジタル形式の場合で異なる。アナログ形式の場合、画像処理部160は、クロック信号PCLKと、垂直同期信号VSyncと、水平同期信号HSyncと、画像データーDataとを生成し、送信する。具体的には、画像処理部160は、コンテンツに含まれる画像信号を取得する。取得した画像信号は、例えば動画像の場合、一般的に1秒あたり30枚のフレーム画像から構成されているアナログ信号である。画像処理部160は、取得した画像信号から垂直同期信号VSyncや水平同期信号HSync等の同期信号を分離し、それらの周期に応じて、PLL回路等によりクロック信号PCLKを生成する。画像処理部160は、同期信号が分離されたアナログ画像信号を、A/D変換回路等を用いてディジタル画像信号に変換する。画像処理部160は、変換後のディジタル画像信号を、RGBデーターの画像データーDataとして、1フレームごとに記憶部120内のDRAMに格納する。一方、ディジタル形式の場合、画像処理部160は、クロック信号PCLKと、画像データーDataとを生成し、送信する。具体的には、コンテンツがディジタル形式の場合、クロック信号PCLKが画像信号に同期して出力されるため、垂直同期信号VSyncおよび水平同期信号HSyncの生成と、アナログ画像信号のA/D変換とが不要となる。なお、画像処理部160は、記憶部120に格納された画像データーDataに対して、解像度変換処理や、輝度、彩度の調整といった種々の色調補正処理や、キーストーン補正処理等の画像処理を実行してもよい。
【0035】
画像処理部160は、生成されたクロック信号PCLK、垂直同期信号VSync、水平同期信号HSyncと、記憶部120内のDRAMに格納された画像データーDataとを、送信部51、52を介してそれぞれ送信する。なお、送信部51を介して送信される画像データーDataを「右眼用画像データーData1」とも呼び、送信部52を介して送信される画像データーDataを「左眼用画像データーData2」とも呼ぶ。送信部51、52は、制御部10と画像表示部20との間におけるシリアル伝送のためのトランシーバーとして機能する。
【0036】
表示制御部190は、右表示駆動部22および左表示駆動部24を制御する制御信号を生成する。具体的には、表示制御部190は、制御信号により、右LCD制御部211による右LCD241の駆動ON/OFFや、右バックライト制御部201による右バックライト221の駆動ON/OFF、左LCD制御部212による左LCD242の駆動ON/OFFや、左バックライト制御部202による左バックライト222の駆動ON/OFFなどを個別に制御することにより、右表示駆動部22および左表示駆動部24のそれぞれによる画像光の生成および射出を制御する。表示制御部190は、右LCD制御部211と左LCD制御部212とに対する制御信号を、送信部51および52を介してそれぞれ送信する。同様に、表示制御部190は、右バックライト制御部201と左バックライト制御部202とに対する制御信号を、それぞれ送信する。
【0037】
音声処理部170は、コンテンツに含まれる音声信号を取得し、取得した音声信号を増幅して、連結部材46に接続された右イヤホン32内の図示しないスピーカーおよび左イヤホン34内の図示しないスピーカーに対して供給する。なお、例えば、Dolby(登録商標)システムを採用した場合、音声信号に対する処理がなされ、右イヤホン32および左イヤホン34からは、それぞれ、例えば周波数等が変えられた異なる音が出力される。
【0038】
インターフェイス180は、制御部10に対して、コンテンツの供給元となる種々の外部機器OAを接続するためのインターフェイスである。外部機器ОAとしては、例えば、パーソナルコンピューターPCや携帯電話端末、ゲーム端末等がある。インターフェイス180としては、例えば、USBインターフェイスや、マイクロUSBインターフェイス、メモリーカード用インターフェイス等を用いることができる。
【0039】
画像表示部20は、右表示駆動部22と、左表示駆動部24と、右光学像表示部26としての右導光板261と、左光学像表示部28としての左導光板262と、9軸センサー66とを備えている。9軸センサー66は、加速度(3軸)、角速度(3軸)、地磁気(3軸)を検出するモーションセンサーである。
【0040】
右表示駆動部22は、受信部(Rx)53と、光源として機能する右バックライト(BL)制御部201および右バックライト(BL)221と、表示素子として機能する右LCD制御部211および右LCD241と、右投写光学系251とを含んでいる。なお、右バックライト制御部201と、右LCD制御部211と、右バックライト221と、右LCD241とを総称して「画像光生成部」とも呼ぶ。
【0041】
受信部53は、制御部10と画像表示部20との間におけるシリアル伝送のためのレシーバーとして機能する。右バックライト制御部201は、入力された制御信号に基づいて、右バックライト221を駆動する。右バックライト221は、例えば、LEDやエレクトロルミネセンス(EL)等の発光体である。右LCD制御部211は、受信部53を介して入力されたクロック信号PCLKと、垂直同期信号VSyncと、水平同期信号HSyncと、右眼用画像データーData1とに基づいて、右LCD241を駆動する。右LCD241は、複数の画素をマトリクス状に配置した透過型液晶パネルである。右LCD241は、マトリクス状に配置された各画素位置の液晶を駆動することによって、右LCD241を透過する光の透過率を変化させることにより、右バックライト221から照射される照明光を、画像を表す有効な画像光へと変調する。なお、本実施形態ではバックライト方式を採用することとしたが、フロントライト方式や、反射方式を用いて画像光を射出してもよい。
【0042】
右投写光学系251は、右LCD241から射出された画像光を並行状態の光束にするコリメートレンズによって構成される。右光学像表示部26としての右導光板261は、右投写光学系251から出力された画像光を、所定の光路に沿って反射させつつ使用者の右眼REに導く。光学像表示部は、画像光を用いて使用者の眼前に虚像を形成する限りにおいて任意の方式を用いることができ、例えば、回折格子を用いても良いし、半透過反射膜を用いても良い。
【0043】
左表示駆動部24は、右表示駆動部22と同様の構成を有している。すなわち、左表示駆動部24は、受信部(Rx)54と、光源として機能する左バックライト(BL)制御部202および左バックライト(BL)222と、表示素子として機能する左LCD制御部212および左LCD242と、左投写光学系252とを含んでいる。
【0044】
図4は、使用者に視認される虚像の一例を示す説明図である。
図4では、使用者の視野VRを例示している。上述のようにして、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者の両眼に導かれた画像光が使用者の網膜に結像することにより、使用者は虚像VIを視認する。
図4の例では、虚像VIは、ヘッドマウントディスプレイ100のOSの待ち受け画面である。また、使用者は、右光学像表示部26および左光学像表示部28の半透過反射膜を透過して外景SCを視認する。このように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ100の使用者は、視野VRのうち虚像VIが表示された部分については、虚像VIと、虚像VIの背後に外景SCとを見ることができる。また、視野VRのうち虚像VIが表示されていない部分については、光学像表示部を透過して、外景SCを直接見ることができる。
【0045】
A−2.焦点距離変更処理:
図5は、焦点距離変更処理の手順を示すフローチャートである。焦点距離変更処理は、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する虚像における画像(例えば、
図4の虚像VIにおけるOSの待ち受け画面)の焦点距離を変更する処理であり、画像処理部160が実行する。
【0046】
画像処理部160は、焦点距離変更処理の開始トリガーを検出したか否かを判定する(ステップS102)。焦点距離変更処理の開始トリガーは任意に定めることができる。例えば、ヘッドマウントディスプレイ100が起動されたこと、換言すれば、電源のONを検出したことを開始トリガーとしてもよい。また、例えば、OS150や特定のアプリケーションからの処理開始要求を開始トリガーとしてもよい。なお、焦点距離変更処理が特定のアプリケーションから呼び出されて実行される場合、焦点距離変更処理は、特定のアプリケーションのサブルーチンとして動作する。焦点距離変更処理の開始トリガーを検出しない場合(ステップS102:NO)、画像処理部160は、処理をステップS102へ遷移させ、開始トリガーの検出を継続する。
【0047】
焦点距離変更処理の開始トリガーを検出した場合(ステップS102:YES)、画像処理部160は、目標焦点距離を取得する(ステップS104)。本実施形態において「目標焦点距離」とは、画像処理部160が画像の焦点距離を変更する際における、焦点距離の目標値である。目標焦点距離は、例えば、予め記憶部120に格納されていてもよい。その場合、画像処理部160は、記憶部120に格納されている目標焦点距離を読み出すことで、目標焦点距離を取得することができる。なお、OS150や特定のアプリケーションからの処理開始要求を開始トリガーとした場合、画像処理部160は、処理開始要求と共に与えられる引数を取得することで、目標焦点距離を取得してもよい。
【0048】
目標焦点距離を取得後、画像処理部160は、焦点距離テーブル122を用いて、表示駆動部(右表示駆動部22、左表示駆動部24)における射出領域の移動量を求める(ステップS106)。具体的には、画像処理部160は、ステップS104で取得した目標焦点距離をキーとして焦点距離テーブル122の「焦点距離」を検索し、一致するエントリの「移動量」に格納されている値(ピクセル)を取得する。なお、「表示駆動部における射出領域」については、
図6〜
図9を用いて説明する。
【0049】
射出領域の移動量を求めた後、画像処理部160は、求めた値を用いて、表示駆動部(右表示駆動部22、左表示駆動部24)の射出領域を移動させる(ステップS108)。なお、詳細は
図6〜
図9を用いて説明する。
【0050】
その後、画像処理部160は、終了トリガーを検出したか否かを判定する(ステップS110)。焦点距離変更処理の終了トリガーは任意に定めることができる。例えば、開始トリガーと同様に、ヘッドマウントディスプレイ100の起動が終了されたこと、換言すれば、電源のOFFを検出したことを終了トリガーとしてもよい。また、OS150や特定のアプリケーションからの処理終了要求を終了トリガーとしてもよい。焦点距離変更処理の終了トリガーを検出しない場合(ステップS110:NO)、画像処理部160は、処理をステップS104へ遷移させ、再び目標焦点距離を取得する。一方、焦点距離変更処理の終了トリガーを検出した場合(ステップS110:YES)、画像処理部160は、処理を終了する。
【0051】
図6は、表示駆動部の基準領域の大きさと、表示駆動部から画像光が実際に射出される射出領域の大きさとの関係について説明する説明図である。「表示駆動部の基準領域」とは、表示駆動部(右表示駆動部22、左表示駆動部24)が通常状態において画像光を射出する領域、換言すれば、表示駆動部が画像光を射出する基準となる領域を意味する。基準領域は、例えば、表示駆動部が画像光を射出することができる最大の領域よりも少し小さく設定されてもよいし、表示駆動部が画像光を射出することができる最大の領域とされてもよい。ここで「表示駆動部が画像光を射出することができる最大の領域」とは、本実施形態のように表示駆動部をバックライトとLCDとで構成している場合、右LCD241および左LCD242において液晶が配置された全ての領域、かつ、右バックライト221および左バックライト222が照明光を照射可能な領域として定義される。
【0052】
図6の例では、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における基準領域MA1の大きさは、xピクセル:yピクセルである。同様に、使用者の左眼LEに対応する左表示駆動部24における基準領域MA2の大きさは、xピクセル:yピクセルである。
【0053】
また、
図6において、表示駆動部(右表示駆動部22、左表示駆動部24)から画像光が実際に射出される領域(「射出領域」とも呼ぶ。)を斜線で示す。本実施形態において、射出領域は、基準領域よりも水平方向(横方向)に小さい。具体的には、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における射出領域CA1の大きさは、x−nピクセル:yピクセルであり、基準領域MA1よりも水平方向に小さく設定されている。同様に、使用者の左眼LEに対応する左表示駆動部24における射出領域CA2の大きさは、x−nピクセル:yピクセルであり、基準領域MA2よりも水平方向に小さく設定されている。なお、射出領域CA1、CA2の「nピクセル」は、
図3に示した焦点距離テーブル122の「移動量」の最大値と一致させることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ100では、その初期状態において、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における射出領域CA1は、基準領域MA1の右端に配置されている。一方、使用者の左眼LEに対応する左表示駆動部24における射出領域CA2は、基準領域MA2の左端に配置されている。
【0055】
基準領域MA1、MA2の一部である射出領域CA1、CA2から画像光を射出させるために、画像処理部160は、以下に挙げる1、2のいずれか一方の方法を用いることができる。
【0056】
(1)画像処理部160は、右眼用画像データーData1を生成する際に、射出領域CA1にはコンテンツ等に基づく画像から生成されたドットデーターを挿入し、射出領域CA1以外の領域には、黒色のダミードットデーターを挿入する。同様に、画像処理部160は、左眼用画像データーData2を生成する際に、射出領域CA2にはコンテンツ等に基づく画像から生成されたドットデーターを挿入し、射出領域CA2以外の領域には、黒色のダミードットデーターを挿入する。
(2)画像処理部160は、表示駆動部の画像光生成部(右LCD241および右バックライト221、左LCD242および左バックライト222)による画像光生成の有効/無効を切り替えるための信号(Enable信号)を操作する。具体的には、画像処理部160は、右眼用画像データーData1と共に送信部51へ送信するEnable信号について、射出領域CA1ではHi(有効)値を出力し、射出領域CA1以外の領域ではLo(無効)値を出力する。同様に、画像処理部160は、左眼用画像データーData2と共に送信部52へ送信するEnable信号について、射出領域CA2ではHi値を出力し、射出領域CA2以外の領域ではLo値を出力する。
【0057】
上記1、2の方法を用いれば、射出領域CA1、CA2における画像データーは、同一のコンテンツ等に基づく同一の画像から生成された画像データーとすることができるため、画像処理部160における演算処理量を低減させることができる。
【0058】
図7は、焦点距離が無限遠の場合に、表示駆動部から射出された画像光により形成される像ついて説明する説明図である。
図7では、左右を区別するために、像に対して表示駆動部に含まれるLCDの符号を付している。焦点距離変更処理のステップS104において画像処理部160が取得した目標焦点距離が「無限遠」であった場合、画像処理部160がステップS106において求める射出領域の移動量は「0(ピクセル)」となる。このため、ステップS108において画像処理部160は、表示駆動部における射出領域CA1、CA2を、初期状態(
図6)のまま変更しない。その結果、射出領域CA1から射出される画像光に基づいて使用者の右眼REが視認する画像IM1と、射出領域CA2から射出される画像光に基づいて使用者の左眼LEが視認する画像IM2とは、使用者の両眼が平行に真正面を見つめる位置に表示された平行視の状態となり、無限遠の焦点距離を実現することができる(
図7)。
【0059】
図8は、焦点距離が0.3mの場合に、表示駆動部から射出された画像光により形成される像について説明する説明図である。
図8では、左右を区別するために、像に対して表示駆動部に含まれるLCDの符号を付している。
図9は、焦点距離が0.3mの場合において使用者が視認する虚像について説明する説明図である。焦点距離変更処理のステップS104において画像処理部160が取得した目標焦点距離が「0.3(m)」であった場合、画像処理部160がステップS106において求める射出領域の移動量は「n(ピクセル)」となる。このため、ステップS108において画像処理部160は、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における射出領域CA1と、左眼LEに対応する左表示駆動部24における射出領域CA2とを、初期状態(
図6)から、使用者の眉間に向かう方向(
図8の白抜き矢印の方向)にnピクセル、連動させて移動させる。その結果、射出領域CA1から射出される画像光に基づいて使用者の右眼REが視認する画像IM1と、射出領域CA2から射出される画像光に基づいて使用者の左眼LEが視認する画像IM2とは、使用者の両眼から距離Laだけ離れた位置に画像IMとして結像する。距離Laは目標焦点距離と概ね等しく、この例では0.3mとなる。
【0060】
以上のようにして、画像処理部160は、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における射出領域CA1と、左眼LEに対応する左表示駆動部24における射出領域CA2とを移動させることによって、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する虚像VIにおける画像IMの焦点距離Laを変更することができる(
図9)。また、画像処理部160は、射出領域CA1、CA2の移動量を焦点距離テーブル122に基づいて求めることによって、画像IMの焦点距離Laを、焦点距離変更処理のステップS104において取得した目標焦点距離とすることができる。
【0061】
以上のように、第1実施形態の焦点距離変更処理によれば、画像処理部160は、基準領域MA1、MA2の大きさよりも水平方向に小さい射出領域CA1、CA2を用いて、一方の表示駆動部(右表示駆動部22)から射出された画像光により形成される像と、他方の表示駆動部(左表示駆動部24)から射出された画像光により形成される像と、が互いに連動して近づく第1の方向に、射出領域CA1、CA2を移動させるように、一対の表示駆動部(右表示駆動部22、左表示駆動部24)を制御することによって、使用者が視認する虚像VIにおける画像の焦点距離Laを変更する。このようにすれば、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ100)を構成する部材を機械的に移動させることなく、使用者の左右の眼(右眼RE、左眼LE)に対応する表示素子(例えば、バックライトとLCD等)を機械的に移動させるのと同様の結果を得ることができる。また、虚像によって表されている画像に対するヘッドマウントディスプレイ100の使用者の右眼REと左眼LEとの輻輳角を変更することができ、使用者は、奥行きを知覚することができる。この結果、本形態のヘッドマウントディスプレイ100によれば、ヘッドマウントディスプレイ100を構成する部材を機械的に移動させることなく、使用者が視認する虚像における画像の焦点距離を変更可能とすることができる。
【0062】
さらに、上記の焦点距離変更処理によれば、画像処理部160は、焦点距離の目標値を取得し(ステップS104)、取得した目標値から射出領域の移動量を求め(ステップS106)、求めた移動量に基づいて、一対の表示駆動部(右表示駆動部22、左表示駆動部24)における画像光の射出領域CA1、CA2を移動させる(ステップS108)。一対の表示駆動部において、一方の表示駆動部から射出された画像光により形成される像と、他方の表示駆動部から射出された画像光により形成される像と、が互いに連動して近づくと、両画像光によって形成される像に対する使用者の右眼REと左眼LEとの輻輳角は大きくなる。すなわち、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者は近くに画像を知覚することができる。従って、このようにすれば、画像処理部160は、焦点距離の目標値に基づいて画像の焦点距離Laを変更することができる。
【0063】
さらに、上記の焦点距離変更処理によれば、画像処理部160は、使用者の右眼REに対応する一方の表示駆動部(右表示駆動部22)における射出領域CA1を基準領域MA1の右端とし、他方の表示駆動部(左表示駆動部24)における射出領域CA2を基準領域MA2の左端とする。このように、画像の焦点距離を無限遠とする状態、換言すれば、使用者の両眼が平行に真正面を見つめる位置に左右の画像を表示させた並行視の状態において、表示駆動部における射出領域CA1、CA2を基準領域MA1、MA2の左右の端部とすれば、画像処理部160は、基準領域MA1、MA2の全てを有効に利用して、画像と使用者の両眼(右眼RE、左眼LE)との間の輻輳角を変更することができる。
【0064】
A−3.焦点距離変更処理の第1の変形:
図10は、焦点距離変更処理の第1の変形について説明するための説明図である。
図10では、左右を区別するために、表示駆動部から射出された画像光により形成される像に対して、表示駆動部に含まれるLCDの符号を付している。第1の変形では、画像処理部160は、焦点距離変更処理(
図5)のステップS104において取得した目標焦点距離が「無限遠」であった場合に、ステップS106およびステップS108に代えて、以下のa1、a2の処理を行う。
【0065】
(a1)表示駆動部における射出領域CA1、CA2を、基準領域MA1、MA2と一致させる。具体的には、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22の射出領域CA1の大きさを、基準領域MA1と同じxピクセル:yピクセルとする。同様に、使用者の左眼LEに対応する左表示駆動部24の射出領域CA2の大きさを、基準領域MA2と同じxピクセル:yピクセルとする。また、射出領域CA1、CA2の配置を基準領域MA1、MA2の中央とする。
(a2)上記手順1で示したダミードットデーターの挿入や上記手順2で示したEnable信号の操作を行わず、コンテンツ等に基づく画像から生成されたドットデーターに基づいて、右眼用画像データーData1と左眼用画像データーData2とを生成する。これは、射出領域CA1、CA2が基準領域MA1、MA2と一致しているためである。
【0066】
なお、画像処理部160は、焦点距離変更処理(
図5)のステップS104において取得した目標焦点距離が「無限遠」以外であった場合、ステップS106およびステップS108で説明した処理を行う。
【0067】
このようにしても、射出領域CA1から射出される画像光に基づいて使用者の右眼REが視認する画像IM1と、射出領域CA2から射出される画像光に基づいて使用者の左眼LEが視認する画像IM2とは、使用者の両眼が平行に真正面を見つめる位置に表示された平行視の状態となり、無限遠の焦点距離を実現することができる(
図10)。
【0068】
以上のように、第1実施形態の焦点距離変更処理の第1の変形によれば、画像処理部160は、射出領域CA1、CA2の大きさを、基準領域MA1、MA2のと同じ大きさとする。このように、画像光の射出領域の大きさを表示駆動部の基準領域の大きさと一致させれば、画像処理部は、虚像VIとして表示される画像のサイズを大きくすることができる。
【0069】
A−4.焦点距離変更処理の第2の変形:
図11は、焦点距離変更処理の第2の変形について説明するための説明図である。
図11では、左右を区別するために、表示駆動部から射出された画像光により形成される像に対して、表示駆動部に含まれるLCDの符号を付している。
図5で説明した焦点距離変更処理との主たる違いは、初期状態における射出領域CA1、CA2の位置と、焦点距離テーブル122に格納されている内容である。
【0070】
図11で示すように、第2の変形では、ヘッドマウントディスプレイ100は、その初期状態において、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における射出領域CA1が、基準領域MA1の中央に配置されている。同様に、使用者の左眼LEに対応する左表示駆動部24における射出領域CA2が、基準領域MA2の中央に配置されている。
【0071】
図12は、焦点距離変更処理の第2の変形において使用される焦点距離テーブル122の一例を示す説明図である。移動量には、−n/2(ピクセル)〜n/2(ピクセル)までの数字が格納されている。ここでnは任意の整数を表す。焦点距離には、表示駆動部から射出される画像光を、初期状態から「移動量」に格納されているピクセル数だけ移動させた場合における、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する画像の焦点距離を表す数字が格納されている。例えば、
図12の例では、移動量が−n/2ピクセルの場合は、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する画像の焦点距離は無限遠となることがわかる。また、移動量が0ピクセルの場合は、使用者が視認する画像の焦点距離は95mであること、移動量がn/2ピクセルの場合は、使用者が視認する画像の焦点距離は1mであることがわかる。
【0072】
焦点距離変更処理の第2の変形における画像処理部160の処理は、
図5で説明した通りである。ただし、ステップS108において、画像処理部160は、以下の手順b1、b2を実行する。
【0073】
(b1)焦点距離テーブル122から求めた移動量が正の値である場合、右表示駆動部22から射出された画像光により形成される像と、左表示駆動部24から射出された画像光により形成される像と、が互いに連動して近づく第1の方向D1(
図11)に、射出領域CA1、CA2を移動させる。
(b2)焦点距離テーブル122から求めた移動量が負の値である場合、右表示駆動部22から射出された画像光により形成される像と、左表示駆動部24から射出された画像光により形成される像と、が互いに連動して遠ざかる第2の方向D2(
図11)に、射出領域CA1、CA2を移動させる。
【0074】
このようにしても、画像処理部160は、使用者の右眼REに対応する右表示駆動部22における射出領域CA1と、左眼LEに対応する左表示駆動部24における射出領域CA2とを移動させることによって、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する虚像における画像の焦点距離を変更することができる。また、画像処理部160は、射出領域CA1、CA2の移動量を焦点距離テーブル122に基づいて求めることによって、画像の焦点距離を、焦点距離変更処理(
図5)のステップS104において取得した目標焦点距離とすることができる。
【0075】
以上のように、第1実施形態の焦点距離変更処理の第2の変形によれば、一方の表示駆動部(右表示駆動部22)から射出された画像光により形成される像と、他方の表示駆動部(左表示駆動部24)から射出された画像光により形成される像と、が互いに連動して近づく第1の方向D1と、右表示駆動部22から射出された画像光により形成される像と、左表示駆動部24から射出された画像光により形成される像と、が互いに連動して遠ざかる第2の方向D2と、のいずれか一方に、射出領域CA1、CA2を移動させるように、一対の表示駆動部を制御することによって、ヘッドマウントディスプレイ100の使用者が視認する虚像における画像の焦点距離を変更する。このようにしても、第1実施形態の焦点距離変更処理と同様の効果を得ることができる。
【0076】
B.第2実施形態:
B−1.頭部装着型表示装置の構成:
本発明の第2実施形態では、頭部装着型表示装置の使用者の眼前に存在する物体までの距離に応じて画像の焦点距離を変更することが可能な構成について説明する。以下では、第1実施形態と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1実施形態と同様の構成部分については先に説明した第1実施形態と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
図13は、第2実施形態におけるヘッドマウントディスプレイ100aの構成を機能的に示すブロック図である。
図2に示した第1実施形態との違いは、制御部10に代えて制御部10aを備える点と、画像表示部20に代えて画像表示部20aを備える点である。制御部10aは、画像処理部160に代えて画像処理部160aを備えている。画像処理部160aは、焦点距離変更処理(
図5)における処理内容が、第1実施形態とは異なる。詳細は後述する。
【0078】
画像表示部20aは、第1実施形態で説明した各部に加えて、さらに、距離測定部61を備えている。距離測定部61は、ヘッドマウントディスプレイ100aの装着時における使用者の眉間に対応する位置に配置されており、使用者から、使用者の眼前に存在する物体までの距離を測定する機能を有する。距離測定部61は、例えば、カメラと、画像解析モジュールとの組み合わせで実現することができる。カメラは、画像表示部20aの表側方向、換言すれば、ヘッドマウントディスプレイ100aを装着した状態における使用者の視界方向の外景(外部の景色)を撮像し、外景画像を取得する可視光カメラである。画像解析モジュールは、カメラが取得した外景画像を画像認識し、外景画像に含まれる任意の物体までの距離を求める。また、距離測定部61は、反射光によって使用者の視界方向にある物体と画像表示部20aとの間の距離を取得するための測距センサーにより実現されてもよい。
【0079】
B−2.焦点距離変更処理:
第2実施形態における焦点距離変更処理は、
図5に示した第1実施形態とほぼ同様である。ただし、画像処理部160aは、ステップS104において、距離測定部61によって測定された距離を「目標焦点距離」として取得する。他のステップについては、
図5で説明した通りである。
【0080】
以上のように、第2実施形態の焦点距離変更処理によれば、画像処理部160bは、ヘッドマウントディスプレイ100aの使用者の眼前に存在する物体までの距離に応じて、使用者が視認する虚像VIにおける画像の焦点距離Laを変更することができる。
【0081】
B−3.焦点距離変更処理の第1の変形:
第2実施形態における焦点距離変更処理の第1の変形は、上述の第1実施形態と同様である。
【0082】
B−4.焦点距離変更処理の第2の変形:
第2実施形態における焦点距離変更処理の第2の変形は、上述の第1実施形態と同様である。
【0083】
C.第3実施形態:
本発明の第3実施形態では、頭部装着型表示装置の使用者の眼前に所定の目印が存在する場合に限って、画像の焦点距離を変更することが可能な構成について説明する。以下では、第1実施形態と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1実施形態と同様の構成部分については先に説明した第1実施形態と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
C−1.頭部装着型表示装置の構成:
図14は、第3実施形態におけるヘッドマウントディスプレイ100bの構成を機能的に示すブロック図である。
図2に示した第1実施形態との違いは、制御部10に代えて制御部10bを備える点と、画像表示部20に代えて画像表示部20bを備える点である。制御部10aは、画像処理部160に代えて画像処理部160bを備えている。画像処理部160bは、焦点距離変更処理(
図5)における処理内容が、第1実施形態とは異なる。詳細は後述する。
【0085】
画像表示部20bは、第1実施形態で説明した各部に加えて、さらに目印検出部62を備えている。目印検出部62は、ヘッドマウントディスプレイ100bの装着時における使用者の眉間に対応する位置に配置されており、使用者の眼前に存在する所定の目印(マーカー)の存在を検出する機能を有する。目印検出部62は、例えば、カメラと、画像解析モジュールとの組み合わせで実現することができる。カメラは、画像表示部20bの表側方向、換言すれば、ヘッドマウントディスプレイ100bを装着した状態における使用者の視界方向の外景を撮像し、外景画像を取得する可視光カメラである。画像解析モジュールは、カメラが取得した外景画像を画像認識し、予め定められた目印が存在するか否かを求める。
【0086】
C−2.焦点距離変更処理:
第3実施形態における焦点距離変更処理は、
図5に示した第1実施形態とほぼ同様である。ただし、画像処理部160bは、ステップS102において、目印検出部62によって所定の目印の存在が検出されたこと、を処理の開始トリガーとする。他のステップについては、
図5で説明した通りである。
【0087】
以上のように、第3実施形態の焦点距離変更処理によれば、画像処理部160bは、ヘッドマウントディスプレイ100bの使用者の眼前に所定の目印が存在する場合に限って、使用者が視認する虚像VIにおける画像の焦点距離Laを変更することができる。この結果、例えば、美術館、博物館、遊園地、映画館等の施設において、展示物の近傍に設置されたマーカーを検出した場合にのみ、画像の焦点距離を変更するといった使用態様を実現することができる。
【0088】
C−3.焦点距離変更処理の第1の変形:
第3実施形態における焦点距離変更処理の第1の変形は、上述の第1実施形態と同様である。
【0089】
C−4.焦点距離変更処理の第2の変形:
第3実施形態における焦点距離変更処理の第2の変形は、上述の第1実施形態と同様である。
【0090】
D.変形例:
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。その他、以下のような変形も可能である。
【0091】
・変形例1:
上記実施形態では、ヘッドマウントディスプレイの構成について例示した。しかし、ヘッドマウントディスプレイの構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に定めることが可能であり、例えば、各構成部の追加・削除・変換等を行うことができる。
【0092】
上記実施形態における、制御部と、画像表示部とに対する構成要素の割り振りは、あくまで一例であり、種々の態様を採用可能である。例えば、以下のような態様としてもよい。(i)制御部にCPUやメモリー等の処理機能を搭載、画像表示部には表示機能のみを搭載する態様、(ii)制御部と画像表示部との両方にCPUやメモリー等の処理機能を搭載する態様、(iii)制御部と画像表示部とを一体化した態様(例えば、画像表示部に制御部が含まれ眼鏡型のウェアラブルコンピューターとして機能する態様)、(iv)制御部の代わりにスマートフォンや携帯型ゲーム機を使用する態様、(v)制御部と画像表示部とを無線通信かつワイヤレス給電可能な構成とすることにより接続部(コード)を廃した態様。
【0093】
上記実施形態では、説明の便宜上、制御部が送信部を備え、画像表示部が受信部を備えるものとした。しかし、上記実施形態の送信部および受信部は、いずれも、双方向通信が可能な機能を備えており、送受信部として機能することができる。また、例えば、
図2に示した制御部は、有線の信号伝送路を介して画像表示部と接続されているものとした。しかし、制御部と、画像表示部とは、無線LANや赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線の信号伝送路を介した接続により接続されていてもよい。
【0094】
例えば、
図2に示した制御部、画像表示部の構成は任意に変更することができる。具体的には、例えば、制御部からタッチパッドを省略し、十字キーのみで操作する構成としてもよい。また、制御部に操作用スティック等の他の操作用インターフェイスを備えても良い。また、制御部にはキーボードやマウス等のデバイスを接続可能な構成として、キーボードやマウスから入力を受け付けるものとしてもよい。また、例えば、タッチパッドや十字キーによる操作入力のほか、フットスイッチ(使用者の足により操作するスイッチ)による操作入力を取得してもよい。例えば、画像表示部に赤外線センサー等の視線検知部を設けた上で、使用者の視線を検知し、視線の動きに対応付けられたコマンドによる操作入力を取得してもよい。例えば、カメラを用いて使用者のジェスチャーを検知し、ジェスチャーに対応付けられたコマンドによる操作入力を取得してもよい。ジェスチャー検知の際は、使用者の指先や、使用者の手に付けられた指輪や、使用者の手にする医療器具等を動き検出のための目印にすることができる。フットスイッチや視線による操作入力を取得可能とすれば、使用者が手を離すことが困難である作業においても、入力情報取得部は、使用者からの操作入力を取得することができる。
【0095】
例えば、ヘッドマウントディスプレイは、両眼タイプの透過型ヘッドマウントディスプレイであるものとしたが、単眼タイプのヘッドマウントディスプレイとしてもよい。また、使用者がヘッドマウントディスプレイを装着した状態において外景の透過が遮断される非透過型ヘッドマウントディスプレイとして構成してもよい。
【0096】
図15は、変形例におけるヘッドマウントディスプレイの外観の構成を示す説明図である。
図15(A)の例の場合、
図1に示したヘッドマウントディスプレイ100との違いは、画像表示部20cが、右光学像表示部26に代えて右光学像表示部26cを備える点と、左光学像表示部28に代えて左光学像表示部28cを備える点である。右光学像表示部26cは、第1実施形態の光学部材よりも小さく形成され、ヘッドマウントディスプレイの装着時における使用者の右眼の斜め上に配置されている。同様に、左光学像表示部28cは、第1実施形態の光学部材よりも小さく形成され、ヘッドマウントディスプレイの装着時における使用者の左眼の斜め上に配置されている。
図15(B)の例の場合、
図1に示したヘッドマウントディスプレイ100との違いは、画像表示部20dが、右光学像表示部26に代えて右光学像表示部26dを備える点と、左光学像表示部28に代えて左光学像表示部28dを備える点である。右光学像表示部26dは、第1実施形態の光学部材よりも小さく形成され、ヘッドマウントディスプレイの装着時における使用者の右眼の斜め下に配置されている。左光学像表示部28dは、第1実施形態の光学部材よりも小さく形成され、ヘッドマウントディスプレイの装着時における使用者の左眼の斜め下に配置されている。このように、光学像表示部は使用者の眼の近傍に配置されていれば足りる。また、光学像表示部を形成する光学部材の大きさも任意であり、光学像表示部が使用者の眼の一部分のみを覆う態様、換言すれば、光学像表示部が使用者の眼を完全に覆わない態様のヘッドマウントディスプレイとして実現することもできる。
【0097】
例えば、画像処理部、表示制御部、音声処理部等の機能部は、CPUがROMやハードディスクに格納されているコンピュータープログラムをRAMに展開して実行することにより実現されるものとして記載した。しかし、これら機能部は、当該機能を実現するために設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)を用いて構成されてもよい。
【0098】
例えば、上記実施形態では、画像表示部を眼鏡のように装着するヘッドマウントディスプレイであるとしているが、画像表示部が通常の平面型ディスプレイ装置(液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等)であるとしてもよい。この場合にも、制御部と画像表示部との間の接続は、有線の信号伝送路を介した接続であってもよいし、無線の信号伝送路を介した接続であってもよい。このようにすれば、制御部を、通常の平面型ディスプレイ装置のリモコンとして利用することもできる。
【0099】
また、画像表示部として、眼鏡のように装着する画像表示部に代えて、例えば帽子のように装着する画像表示部といった他の形状の画像表示部を採用してもよい。また、イヤホンは耳掛け型やヘッドバンド型を採用してもよく、省略しても良い。また、例えば、自動車や飛行機等の車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD、Head-Up Display)として構成されてもよい。また、例えば、ヘルメット等の身体防護具に内蔵されたヘッドマウントディスプレイとして構成されてもよい。
【0100】
例えば、上記実施形態では、電源として二次電池を用いることしたが、電源としては二次電池に限らず、種々の電池を使用することができる。例えば、一次電池や、燃料電池、太陽電池、熱電池等を使用してもよい。
【0101】
例えば、上記実施形態では、表示駆動部は、バックライトと、バックライト制御部と、LCDと、LCD制御部と、投写光学系を用いて構成されるものとした。しかし、上記の態様はあくまで例示である。表示駆動部は、これらの構成部と共に、またはこれらの構成部に代えて、他の方式を実現するための構成部を備えていても良い。例えば、表示駆動部は、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)のディスプレイと、有機EL制御部と、投写光学系とを備える構成としても良い。例えば、表示駆動部は、LCDに代えてDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)等を用いることもできる。例えば、表示駆動部は、RGBの各色光を発生させるための色光源とリレーレンズを含む信号光変調部と、MEMSミラーを含む走査光学系と、これらを駆動する駆動制御回路と、を含むように構成されてもよい。このように、有機ELやDMDやMEMSミラーを用いても、「表示駆動部における射出領域」とは、表示駆動部から画像光が実際に射出される領域であることに変わりはなく、各デバイス(表示駆動部)における射出領域を上記実施形態と同様に制御することによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、例えば、表示駆動部は、画素信号に応じた強度のレーザーを、使用者の網膜へ出射する1つ以上のレーザーを含むように構成されてもよい。この場合、「表示駆動部における射出領域」とは、表示駆動部から画像を表すレーザー光が実際に射出される領域を表す。レーザー(表示駆動部)におけるレーザー光の射出領域を上記実施形態と同様に制御することによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
・変形例2:
上記実施形態では、焦点距離変更処理の一例を示した。しかし、焦点距離変更処理の手順はあくまで一例であり、種々の変形が可能である。例えば、一部のステップを省略してもよいし、更なる他のステップを追加してもよい。また、実行されるステップの順序を変更してもよい。
【0103】
例えば、第2実施形態の焦点距離変更処理のステップS104において、画像処理部は、使用者の視線の先に存在する物体と画像表示部との間の距離を「目標焦点距離」として取得してもよい。具体的には、画像表示部に使用者の視線の方向を検出する視線検出部を備える構成とする。視線検出部は、例えば、赤外線センサーや使用者の眼を撮像するカメラ等により実現可能である。距離測定部の画像解析モジュールは、カメラが取得した外景画像を画像認識し、外景画像に含まれ、かつ、視線検出部によって検出された視線の方向に存在する物体までの距離を求める。このようにすれば、画像処理部は、ヘッドマウントディスプレイの使用者の視線の方向に存在する物体までの距離を用いて、画像の焦点距離を変更することができる。
【0104】
例えば、第3実施形態の焦点距離変更処理のステップS104において、画像処理部は、ヘッドマウントディスプレイの使用者と、使用者の眼前に存在する所定の目印(マーカー)との間の距離を「目標焦点距離」として取得してもよい。具体的には、目印検出部は、使用者の眼前に存在する所定の目印の存在を検出すると共に、使用者から所定の目印までの距離を測定可能な構成とする。例えば、目印検出部の画像解析モジュールが、カメラが取得した外景画像を画像認識し、外景画像に含まれる所定の目印までの距離を求めることで実現可能である。このようにすれば、画像処理部は、ヘッドマウントディスプレイの使用者の眼前に存在する所定の目印までの距離を用いて、画像の焦点距離を変更することができる。
【0105】
例えば、第1〜第3実施形態の焦点距離変更処理のステップS102において、画像処理部は、以下の少なくともいずれかの条件が満たされたことを、焦点距離変更処理の開始トリガーとしてもよい。なお、この場合、画像表示部に使用者の視線の方向を検出する視線検出部を備える構成とする。視線検出部は、例えば、赤外線センサーや使用者の眼を撮像するカメラ等により実現可能である。
・検出された視線の方向が、水平約200°、垂直約125°(例えば、下方向75°、上方向50°)の視野角の範囲内であるとき。
・検出された視線の方向が、情報受容能力に優れる有効視野である、水平約30°、垂直約20°の範囲内であるとき。
・検出された視線の方向が、注視点が迅速に安定して見える安定注視野である、水平60°〜90°、垂直45°〜70°の範囲内であるとき。
・検出された視線の方向が、映像に誘発される自己運動感覚(ベクション)の誘発が起こりはじめる水平約20°から、自己運動感覚が飽和する約110°の範囲内であるとき。
【0106】
・変形例3:
上記実施形態では、焦点距離テーブルの一例を示した。しかし、焦点距離テーブルの詳細はあくまで一例であり、種々の変更が可能である。例えば、フィールドの追加、削除、変更を行うことができる。また、焦点距離テーブルは、複数のテーブルに分割して正規化してもよい。
【0107】
例えば、移動量は、ピクセル以外の単位で表現されていてもよい。また、焦点距離は、メートル以外の単位で表現されていてもよい。
【0108】
焦点距離テーブルは省略可能である。焦点距離テーブルを省略する場合、画像処理部は、演算により移動量を求めることができる。
【0109】
・変形例4:
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。