(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなしで電力を供給するワイヤレス給電技術が注目されつつある。現在のワイヤレス給電技術は、(A)電磁誘導を利用するタイプ(近距離用)、(B)磁場の共振現象を利用するタイプ(中距離用)(C)電波を利用するタイプ(遠距離用)、の3種類に大別できる。
【0003】
これらの3種類のワイヤレス給電技術のうち、電磁誘導を利用するタイプ(A)は、送電側コイルを通る交流が磁界を発生させ、その結果受電側コイルに生じる電圧を利用する送電技術である。この電磁誘導を利用するタイプは、距離を大きくすると電力伝送効率が急激に低下してしまうものの、数cm程度の近距離であれば、十分な電力伝送効率が得られるうえ、低コストで実現できるため、電動シェーバーなどの身近な家電製品において一般的に利用されている。
【0004】
磁場共振現象を利用するタイプ(B)は、比較的新しい技術であり、一対の自己共振コイルを電磁場において共振させ、電磁場を介して送電するワイヤレスの送電技術である。この技術を応用すれば、数m程度の距離であっても、数kWの大電力を高い電力伝送効率で送電させることも可能である。たとえば、電気自動車の車両下部に受電コイルを埋め込み、地中の給電コイルから非接触にて電力を送り込むという案も検討されている。ワイヤレスであるため完全に絶縁されたシステム構成が可能であり、特に、雨天時の給電に効果的であると考えられる。
【0005】
これらの電磁誘導を利用するタイプ(A)や磁場の共振現象を利用するタイプ(B)のワイヤレス電力伝送装置においては、送電側コイルから受電側コイルに電力をできるだけ効率よく伝送することが求められる。一方で、動作原理の違いこそあれ、コイルを利用して電力を伝送するため、電力伝送時にコイルから漏れ磁束が発生し、周辺の電子機器に悪影響を及ぼす虞があることから、コイルから発生する漏れ磁束を遮蔽することの要求が高まってきている。
【0006】
このような要求に対して、例えば特許文献1では、非接触電力伝達に用いられるコイルのシールドであって、磁界の低減が可能な第1の遮蔽材と、第1の遮蔽材と比べて、損失は大きいがより多くの電界及び磁界の両方の低減が可能な第2の遮蔽材とを備え、第1の遮蔽材が第2の遮蔽材よりもコイルに近い側に配置されるシールドにより、電力の伝送効率の低下を抑制しつつ、電磁場の漏洩を防止することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示される技術では、磁界の低減が可能な第1の遮蔽材として磁性材を含んで構成されているが、この磁性材として一般的に広く用いられるフェライトなどの金属酸化物は硬くて脆く、衝撃に対して破損し易いということが知られている。したがって、第1の遮蔽材と他の部材との接触する機会を極力避ける必要があった。
【0009】
また、磁界の低減が可能な第1の遮蔽材としての磁性材は、漏れ磁束を吸収すると、磁性材自身に磁歪現象に基づく膨張・収縮挙動が発生する。つまり、磁性材の本来の性能を発揮させるためには、第1の遮蔽材の膨張・収縮挙動が阻害なく行われるように配置・固定する必要があった。
【0010】
これに対して、特許文献1に開示される技術では、磁界の低減が可能な第1の遮蔽材が第2の遮蔽材とは互いに接するように配置されているものの、コイルユニットとの間にはスペースを空けて配置されている。しかしながら、特許文献1に開示される技術では、この第1の遮蔽材とコイルユニットとの間のスペースを確実に確保するための固定方法については何ら検討なされていない。したがって、例えば特許文献1に開示されるシールド及びコイルユニットを電気自動車などの移動体に搭載した場合、シールドあるいはコイルユニットに加わる衝撃により第1の遮蔽材とコイルユニットとの間のスペースが失われ、第1の遮蔽材とコイルユニットとの接触による破損を招く虞があるとともに、第1の遮蔽材の膨張・収縮挙動が阻害され、本来の性能が発揮できなくなる虞があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、破損を抑制しつつ、コイルから発生する漏れ磁束の抑制効果を十分に発揮した磁性シールド材を備えたコイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコイルユニットは、箱状の筐体と、筐体の収容空間に配置されるコイル及び磁性シールド材と、を備え、筐体は、第1のパーツと第2のパーツとを有し、磁性シールド材は、第1のパーツの内側面に設けられ、コイルは、磁性シールド材に対して非接触、且つ、第1のパーツの第2のパーツへの取り付け位置とは異なる位置において、第2のパーツに取り付けられて支持固定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、コイルが、磁性シールド材に対して非接触、且つ、第1のパーツの第2のパーツへの取り付け位置とは異なる位置において、第2のパーツに取り付けられて支持固定されている。すなわち、第1のパーツとコイルがそれぞれ独立して第2のパーツに取り付けられている。そのため、第1のパーツと第2のパーツにより画定される筐体の収容空間と、コイルと第2のパーツにより画定されるコイルと磁性シールド材との間のスペースが互いに影響を及ぼすことなく形成される。したがって、コイルと第2のパーツとの支持固定が確実になされることから、筐体に予期せぬ衝撃が加わったとしても、コイルと磁性シールド材との間のスペースを確実に確保することができる。その結果、磁性シールド材の他の部材との接触する機会が抑制されるとともに、漏れ磁束を吸収した際に発生する磁性シールド材の膨張・収縮挙動が阻害されることなく行われるため、破損を抑制しつつ、コイルから発生する漏れ磁束の抑制効果を十分に発揮した磁性シールド材を備えたコイルユニットを得ることができる。
【0014】
ここで、第1のパーツとコイルを一体的に第2のパーツに取り付けると、第1のパーツとコイルとはそれぞれ構成部材の製造上の寸法ばらつきや熱膨張係数が異なることから、第2のパーツへの固定力が損なわれてしまうばかりか、場合によっては、第2のパーツに支持固定されるはずのコイルが外れてしまい、磁性シールド材に接触する不具合が考えられる。これに対して本発明では、第1のパーツとコイルがそれぞれ独立して第2のパーツに取り付けられているため、上述のような構成部材の製造上の寸法ばらつきや熱膨張係数の違いにより固定力が失われることを防止することができる。したがって、コイルと第2のパーツとの支持固定が確実になされることから、筐体に予期せぬ衝撃が加わったとしても、コイルと磁性シールド材との間のスペースを確実に確保することができる。
【0015】
好ましくは、磁性シールド材は、第2のパーツに対して非接触状態で配置されているとよい。この場合、筐体の第2のパーツに加わる衝撃が直接磁性シールド材に加わることが抑制されるため、磁性シールド材の破損を確実に抑制することができる。
【0016】
好ましくは、コイルは、平面状の複数のボビンと、複数のボビンに設けられた巻線収納部に沿って連続して巻回される巻線と、を含み、複数のボビンは、互いの巻線収納部が重なるように層状に配置され、且つ、第2のパーツに一体的に支持固定されているとよい。この場合、平面状の複数のボビンが層状に配置され、複数のボビンに設けられた巻線収納部に沿って巻線が連続して巻回されていることから、装置の大型化を極力抑制しつつ、コイルの自己インダクタンスを増加させることができる。また、複数のボビンは、互いの巻線収納部が重なるように層状に配置され、且つ、第2のパーツに一体的に支持固定されていることから、層状に配置された複数のボビンの互いの中心が一致することとなるため、複数のボビンの層ごとに巻回された巻線によって放射される磁束の相殺が抑制されるとともに、各層同士の結合が高まり自己インダクタンスを増加させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、破損を抑制しつつ、コイルから発生する漏れ磁束の抑制効果を十分に発揮した磁性シールド材を備えたコイルユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
まず、
図1を参照して、本発明のコイルユニットが適用されるワイヤレス電力伝送装置の一例について説明する。
図1は、本発明のコイルユニットが適用されるワイヤレス電力伝送装置を示す概略図である。
【0021】
ワイヤレス電力伝送装置S1は、
図1に示されるように、ワイヤレス送電装置100と、ワイヤレス受電装置200と、を有する。ここでは、ワイヤレス電力伝送装置S1を電気自動車などの移動体への給電設備に適用した例を用いて説明する。つまり、ワイヤレス送電装置100は地上に設置される給電設備となり、ワイヤレス受電装置200は移動体となる。ワイヤレス受電装置200が適用される移動体としては、二次電池の電力を利用する電気自動車やハイブリッド自動車が挙げられる。
【0022】
ワイヤレス送電装置100は、電源VGと、インバータINVと、コイルユニットL1と、を有する。電源VGは、直流電力を後述するインバータINVに供給する。電源VGとしては、直流電力を出力するものであれば特に制限されず、商用交流電源を整流・平滑した直流電源、二次電池、太陽光発電した直流電源、あるいはスイッチングコンバータなどのスイッチング電源装置などが挙げられる。
【0023】
インバータINVは、電源VGから供給される入力直流電力を交流電力に変換する機能を有している。インバータINVとしては、複数のスイッチング素子がブリッジ接続されたスイッチング回路から構成される。このスイッチング回路を構成するスイッチング素子としては、例えばMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)やIBGT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの素子が挙げられる。
【0024】
コイルユニットL1は、コイルL11と、磁性シールド材120と、を有し、これらが筐体110によってパッケージングされている。ここで、コイルL11は、インバータINVから供給される交流電力を後述するコイルL12にワイヤレスにて送電する送電コイルとして機能することとなる。また、ワイヤレス電力伝送装置S1を電気自動車などの移動体への給電設備に適用した場合、コイルユニットL1は地中又は地面近傍に配設されることとなる。なお、コイルユニットL1の具体的な構成については後述する。
【0025】
ワイヤレス受電装置200は、コイルユニットL2と、整流器230と、充電器240と、蓄電器250と、を有する。
【0026】
コイルユニットL2は、コイルL12と、磁性シールド材220と、を有し、これらが筐体210によってパッケージングされている。ここで、ワイヤレス送電装置100のコイルL11とワイヤレス受電装置200のコイルL12は、その間に距離を空けて対向することにより、磁気的に結合し、インバータINVからコイルL11に供給された交流電力が近接電磁界効果によってコイルL12に誘導起電力が励起される。すなわち、ワイヤレス送電装置100からワイヤレス受電装置200に向けてワイヤレスにて電力が伝送される。ここで、コイルL12は、コイルL11から送電された交流電力を受電する受電コイルとして機能することとなる。また、ワイヤレス電力伝送装置S1を電気自動車などの移動体への給電設備に適用した場合、コイルユニットL2は電気自動車の車両下部に搭載されることとなる。
【0027】
整流器230は、コイルL12が受電した交流電力を直流電力に整流する機能を有している。整流器230としては、半波整流回路や全波整流回路などの複数のスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ型回路と、このブリッジ型回路に並列に接続され、整流された電圧を平滑して直流電圧を生成する平滑コンデンサから構成される。
【0028】
充電器240は、整流器230により整流された直流電力を後述する蓄電器250に充電している。具体的には、蓄電器250に対して定電流定電圧充電(CCCV充電)を行うように充電を制御している。すなわち、蓄電器250に一定の充電電流を流す定電流充電過程と、定電流充電の後に、蓄電器250の電圧が一定になるように充電電流を制御する定電圧充電過程とを含むように充電を制御する2段階方式の充電が行われる。
【0029】
蓄電器250は、電力を蓄える機能を有していれば特に限定されず、例えば二次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池など)や容量素子(電気二重層キャパシタなど)が挙げられる。これらの中では、エネルギー密度が高いという観点から、リチウムイオン電池が好ましく、リチウムイオン電池が単一から構成されていてもよく、複数のリチウムイオン電池が直列及び並列に組み合わされて構成されていてもよい。
【0030】
このような構成を備えることにより、ワイヤレス送電装置100のコイルL11からワイヤレス受電装置200のコイルL12にワイヤレスにて電力が伝送されるワイヤレス電力伝送装置S1が実現される。
【0031】
(第1実施形態)
次に、
図2〜
図4を参照して、本発明の第1実施形態に係るコイルユニットL1,L2の構成について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係るコイルユニットを示す斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係るコイルユニットの構成を示す分解斜視図である。
図4は、
図2におけるA−A´に沿うコイルユニットの模式切断部端面図である。なお、コイルユニットL1とコイルユニットL2の構造は同様のため、ここではコイルユニットL1の構造のみ説明する。
【0032】
コイルユニットL1は、
図2及び
図3に示されるように、コイルL11と、磁性シールド材120と、を有し、これらが筐体110によってパッケージングされている。コイルL11は、ボビン130と、巻線140と、を含む。
【0033】
筐体110は、
図3に示されるように、上下に分離可能な、ベースプレート(第1のパーツ)110aとカバー(第2のパーツ)110bの2つのパーツから構成されている。筐体110の外観としては、箱状を呈している。
【0034】
ベースプレート110aは、
図3に示されるように、略正方形の平板状の外形を呈している。このベースプレート110aには、固定のための複数のネジN1が設けられている。具体的には、複数のネジN1は、ベースプレート110aの一方の主面(図示下方)から他方の主面(図示上方)に貫通し、他方の主面から上方に向けて突出するように設けられている。本実施形態においては、8つのネジN1がベースプレート110aの外周縁に均等に設けられている。ベースプレート110aの材料としては、銅やアルミニウムなどの金属材料や絶縁性の樹脂などが挙げられる。
【0035】
カバー110bは、
図3に示されるように、ベースプレート110aとほぼ同一の外形寸法の略正方形の外形を呈している。カバー110bの外周縁には、
図4に示されるように、段差(階段状)が設けられている。より具体的には、カバー110bの外周縁には、図示下方に突出する突出高さが異なる2つの突部111b,112bを有する。突部111bは、突部112bに比してカバー110bの中心側に設けられるとともに、その突出高さが小さくなっている。突部112bは、カバー110bの中心点とベースプレート110aの中心点が対向するように配置した状態において、ベースプレート110aの複数のネジN1と対向する位置に設けられている。これら突部111b,112bには、ネジが挿入されて固定が可能なネジ穴が設けられている。カバー110bの材料としては、絶縁性の樹脂などが挙げられる。
【0036】
そして、ベースプレート110aの複数のネジN1がカバー110bの突部112bの下部の当接面に突き合わされて複数のネジ穴に挿入されることにより、ベースプレート110aがカバー110bに取り付けられる。このようにベースプレート110aとカバー110bが組み合わされることにより、筐体110の内部に後述するコイルL11と磁性シールド材120が配置される収容空間が画定される。
【0037】
ボビン130は、
図3に示されるように、平面状であって、中央部に略正方形の孔130aを有する。ボビン130は、中央部から外周縁に向けて渦状に形成された突部130b及び溝部130cを有する。より具体的には、突部130b及び溝部130cは、中央部の孔130aから外周縁に向けて並行して渦状に延びている。すなわち、これら突部130bと溝部130cにより中央部の孔130aから外周縁に至る巻線収納部130dが形成されることとなる。ボビン130は、巻線収納部130dが形成される領域よりも外周側に枠状の鍔部130eをさらに有する。この鍔部130eには、固定のための複数のネジ穴が設けられている。本実施形態においては、8つのネジ穴がボビン130の外周縁に均等に設けられている。そして、ボビン130の鍔部130eと筐体110のカバー110bの突部111bの下部の当接面が突き合わされて、複数のネジN2がボビン130の鍔部130eの複数のネジ穴を介してカバー110bの突部111bの複数のネジ穴に挿入されることにより、ボビン130がカバー110bに取り付けられて、コイルL11がカバー110bに支持固定される。言い換えると、コイルL11は、
図4に示されるように、カバー110bに吊り下げられている。ここで、突部111bと突部112bはカバー110bの異なる位置に設けられていることから、ボビン130のカバー110bへの取り付け位置は、ベースプレート110aのカバー110bへの取り付け位置とは異なることとなる。ボビン130の材料としては、絶縁性の樹脂が好ましく、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などが挙げられる。なお、本実施形態では、ボビン130の外形形状は略正方形を呈しているがこれに限られることなく、多角形、円形、楕円形のいずれの形状を呈していてもよい。
【0038】
巻線140は、銅やアルミニウムなどのリッツ線から構成され、ボビン130の巻線収納部130dに沿って連続して巻回されている。すなわち、
図3に示されるように、巻線140の一方の端部がボビン130の孔130aから引き出され、他方の端部がボビン130の外周縁から引き出される。
【0039】
磁性シールド材120は、磁路の磁気抵抗を減らし、コイル間の磁気的な結合を高める作用を有し、
図4に示されるように、ベースプレート110aの他方の主面(図示上方)に沿って設けられている。具体的には、ベースプレート110aとカバー110bによって画定される収容空間側のベースプレート110aの内側面に沿って設けられている。この磁性シールド材120は、弾性変形が可能な接着剤によりベースプレート110aの内側面に貼り付けられて固定されている。つまり、磁性シールド材120は、磁束の吸収により生じる磁歪現象に基づく膨張・収縮挙動が阻害なく行われるようにベースプレート110aに接着固定されている。ここで、上述したように、カバー110bの突部111b,112bは、突出高さが異なっている。これら突部111bと突部112bの突出高さの差よりも磁性シールド材120の厚みを十分に薄く形成しておくことで、磁性シールド材120とカバー110bに吊り下げられているコイルL11との間にスペースが形成される。つまり、コイルL11と磁性シールド材120は、非接触状態で配置されている。なお、磁性シールド材120は、コイルL11だけでなく、カバー110bに対しても非接触状態で配置されていると好ましい。この場合、筐体110のカバー110bに加わる衝撃が直接磁性シールド材120に加わることが抑制されるため、磁性シールド材120の破損を確実に抑制することができる。磁性シールド材120の材料としては、センダスト、MnZnフェライト、パーマロイなどが挙げられる。磁性シールド材120の透磁率及び電気抵抗は高ければ高いほど好ましく、これらの中では、特にMnZnフェライトが好ましい。
【0040】
以上のように、本発明に係るコイルユニットL1(L2)は、コイルL11(L12)が、磁性シールド材120に対して非接触、且つ、ベースプレート110aのカバー110bへの取り付け位置とは異なる位置において、カバー110bに取り付けられて支持固定されている。すなわち、ベースプレート110aとコイルL11(L12)がそれぞれ独立してカバー110bに取り付けられている。そのため、ベースプレート110aとカバー110bにより画定される筐体110の収容空間と、コイルL11(L12)とカバー110bにより画定されるコイルL11(L12)と磁性シールド材120との間のスペースが互いに影響を及ぼすことなく形成される。したがって、コイルL11(L12)とカバー110bとの支持固定が確実になされることから、筐体110に予期せぬ衝撃が加わったとしても、コイルL11(L12)と磁性シールド材120との間のスペースを確実に確保することができる。その結果、磁性シールド材120の他の部材との接触する機会が抑制されるとともに、漏れ磁束を吸収した際に発生する磁性シールド材120の膨張・収縮挙動が阻害されることなく行われるため、破損を抑制しつつ、コイルL11(L12)から発生する漏れ磁束の抑制効果を十分に発揮した磁性シールド材120を備えたコイルユニットL1(L2)を得ることができる。
【0041】
また、本発明に係るコイルユニットL1(L2)は、ベースプレート110aとコイルL11(L12)がそれぞれ独立してカバー110bに取り付けられているため、ベースプレート110aとコイルL11(L12)を一体的にカバー110bに取り付けた場合に起こり得る、ベースプレート110aとコイルL11(L12)の構成部材の製造上の寸法ばらつきや熱膨張係数の違いにより固定力が失われることを防止することができる。したがって、コイルL11(L12)とカバー110bとの支持固定が確実になされることから、筐体110に予期せぬ衝撃が加わったとしても、コイルL11(L12)と磁性シールド材120との間のスペースを確実に確保することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係るコイルユニットL100の構成について説明する。
図5は、
図4に示した本発明の第1実施形態に係るコイルユニットの
図2におけるA−A´線に沿う模式切断部端面図に相当する、本発明の第2実施形態に係るコイルユニットの模式切断部端面図である。第2実施形態に係るコイルユニットL100は、コイルL110が複数のボビン330,430を備えている点において、第1実施形態に係るコイルユニットL1と相違する。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0043】
コイルユニットL100は、第1実施形態に係るコイルユニットL1と同様に、コイルL110と、磁性シールド材120と、を有し、これらが筐体110によってパッケージングされている。筐体110、磁性シールド材120の構成は、第1実施形態に係るコイルユニットL1と同様である。
【0044】
コイルL110は、
図5に示されるように、複数のボビン330,430と、巻線340と、を含む。
【0045】
ボビン330は、平面状であって、中央部に略正方形の孔330aを有する。ボビン330は、中央部から外周縁に向けて渦状に形成された突部330b及び溝部330cを有する。より具体的には、突部330b及び溝部330cは、中央部の孔330aから外周縁に向けて並行して渦状に延びている。すなわち、これら突部330bと溝部330cにより中央部の孔330aから外周縁に至る巻線収納部330dが形成されることとなる。ボビン330は、巻線収納部330dが形成される領域よりも外周側に枠状の鍔部330eをさらに有する。この鍔部330eには、固定のための複数のネジ穴が設けられている。本実施形態においては、8つのネジ穴がボビン330の外周縁に均等に設けられている。ボビン330の材料としては、絶縁性の樹脂が好ましく、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などが挙げられる。なお、本実施形態では、ボビン330の外形形状は略正方形を呈しているがこれに限られることなく、多角形、円形、楕円形のいずれの形状を呈していてもよい。
【0046】
ボビン430は、平面状であって、中央部に略正方形の有底の底面部430aを有する。ボビン430は、中央部から外周縁に向けて渦状に形成された突部430b及び溝部430cを有する。より具体的には、突部430b及び溝部430cは、中央部から外周縁に向けて並行して渦状に延びている。すなわち、これら突部430bと溝部430cにより中央部から外周縁に至る巻線収納部430dが形成されることとなる。ボビン430は、巻線収納部430dが形成される領域よりも外周側に枠状の鍔部430eをさらに有する。この鍔部430eには、固定のための複数のネジ穴が設けられている。本実施形態においては、8つのネジ穴がボビン430の外周縁に均等に設けられている。ボビン430の材料としては、絶縁性の樹脂が好ましく、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などが挙げられる。なお、本実施形態では、ボビン430の外形形状は略正方形を呈しているがこれに限られることなく、多角形、円形、楕円形のいずれの形状を呈していてもよい。
【0047】
ボビン330とボビン430は、互いの巻線収納部330d,430dが重なるように層状に配置されている。より具体的には、ボビン330の巻線収納部330dの開口部とボビン430の巻線収納部430dの開口部が同一方向に開口し、ボビン330の中心点とボビン430の中心点が略一致するように層状に重ね合わされている。本実施形態においては、ベースプレート110a側からカバー110b側に向けてボビン430が1層目、ボビン330が2層目となるように順に重ね合わされて層を構成している。
【0048】
そして、ボビン430の鍔部430eとボビン330の鍔部330eが突き合わされるとともに、ボビン330の鍔部330eとカバー110bの突部111bの下部の当接面が突き合わされて、複数のネジN2がボビン430の鍔部430eの複数のネジ穴及びボビン330の鍔部330eの複数のネジ穴を介してカバー110bの突部111bの複数のネジ穴に挿入されることにより、ボビン330及びボビン430が一体的にカバー110bに取り付けられて、コイルL110がカバー110bに支持固定される。言い換えると、コイルL110は、
図5に示されるように、カバー110bに吊り下げられている。ここで、本実施形態においても、突部111bと突部112bの突出高さの差よりも磁性シールド材120の厚みを十分に薄く形成しておくことで、磁性シールド材120とカバー110bに吊り下げられているコイルL110との間にスペースが形成される。つまり、コイルL110と磁性シールド材120は、非接触状態で配置されている。
【0049】
巻線340は、銅やアルミニウムなどのリッツ線から構成され、複数のボビン330,430に設けられた巻線収納部330d,430dに沿って連続して巻回されている。より具体的には、巻線340は、ボビン430の外周縁から中央部に向けて巻線収納部430dに沿って連続して巻回され、続いて、ボビン330の中央部から外周縁に向けて巻線収納部330dに沿って連続して巻回されている。すなわち、巻線340の一方の端部がボビン430の外周縁から引き出され、他方の端部がボビン330の外周縁から引き出される。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るコイルユニットL100は、コイルL110が、平面状の複数のボビン330,430と、複数のボビン330,430に設けられた巻線収納部330d,430dに沿って連続して巻回される巻線340と、を含み、複数のボビン330,430は、互いの巻線収納部330d,430dが重なるように層状に配置され、且つ、カバー110bに一体的に支持固定されている。この場合、平面状の複数のボビン330,430が層状に配置され、複数のボビン330,430に設けられた巻線収納部330d,430dに沿って巻線340が連続して巻回されていることから、装置の大型化を極力抑制しつつ、コイルL110の自己インダクタンスを増加させることができる。また、複数のボビン330,430は、互いの巻線収納部330d,430dが重なるように層状に配置され、且つ、カバー110bに一体的に支持固定されていることから、層状に配置された複数のボビン330,430の互いの中心が一致することとなるため、複数のボビン330,430の層ごとに巻回された巻線340によって放射される磁束の相殺が抑制されるとともに、各層同士の結合が高まり自己インダクタンスを増加させることができる。