(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
並列多気筒エンジンの上方に配置されたエアクリーナとエンジン燃焼室とを連通する吸気通路にスロットルボディが縦置きに配置され、前記吸気通路内に燃料を噴射するインジェクタとエアファンネルを有する内燃機関の燃料供給装置であって、
各気筒に備えた複数の前記インジェクタのうち一方のセカンダリインジェクタを、前記エアクリーナ内であって前記エアファンネル上方に配置すると共に、
車幅方向外側の前記セカンダリインジェクタの基部が車幅方向中央側へ偏倚し、且つその噴射口が前記スロットルボディを指向するように、該セカンダリインジェクタ及びこれに相対する前記エアファンネルが傾斜配置され、
エアクリーナ本体の側面は前記セカンダリインジェクタ及び前記エアフェンネルの傾斜に沿うように上面側が狭く形成され、その上面に開設された開口部にシール部材を介してエアクリーナ上蓋を載置して該開口部が塞がれ、
ステアリングヘッドパイプから車両後方へ延設した車体フレームは前記エアクリーナ本体の両側面に配置され、該エアクリーナ本体の側面に沿って略均一の隙間を形成することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
前記エアクリーナの後部上面に配管された前記第1の燃料供給管及びそのジョイントは側面視において、前記エアクリーナ上面と前記燃料タンク上面とに接する直線よりも下方に配管され、
前記エアクリーナの後部上面に前記第1の燃料供給管及びそのジョイントを収容する凹部を設けていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明における内燃機関の燃料供給装置の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の適用例としての自動二輪車100の側面図である。先ず、
図1を用いて、自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、
図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
【0019】
図1において鋼製或いはアルミニウム合金材でなる車体フレーム101(メインフレーム)の前部には、ステアリングヘッドパイプ102によって左右に回動可能に支持された左右2本のフロントフォーク103が設けられる。フロントフォーク103の上端にはハンドルバー104が固定され、ハンドルバー104の両端にグリップ105を有する。フロントフォーク103の下部には前輪106が回転可能に支持されると共に、前輪106上部を覆うようにフロントフェンダ107が固定される。前輪106は、前輪106と一体回転するブレーキディスク108を有している。
【0020】
車体フレーム101はステアリングヘッドパイプ102の後部に一体的に結合し、後方に向けて左右一対で二又状に分岐し、ステアリングヘッドパイプ102から後下方に拡幅しながら延設する。本例では高速性能を要求される車両に好適なものとして採用される所謂、ツインスパーフレームとする。なお、車体フレーム101の後部付近から、後上りに適度に傾斜してシートレール101Aが後方へ延出し、後述するシートを支持する。また、車体フレーム101の後部にはスイングアーム109が揺動可能に結合すると共に、両者間にリヤショックアブソーバ110が装架される。スイングアーム109の後端には後輪111が回転可能に支持される。後輪111は、後述するエンジンの動力を伝達するチェーン112が巻回されたドリブンスプロケット113を介して、回転駆動される。後輪111の直近周囲にはその前上部付近を覆うインナフェンダ114が設けられると共に、そのインナフェンダ114の上方にはリヤフェンダ115が配置されてよい。
【0021】
車体フレーム101に搭載されたエンジンユニット116には、図示しないエアクリーナ及び燃料供給装置(これらについては後述するものとする)からそれぞれ供給される空気及び燃料でなる混合気が供給されると共に、エンジン内での燃焼後の排気ガスがエキゾーストパイプを通って、マフラ117から排気される。エンジンユニット116の上方には燃料タンクが搭載されるが、この燃料タンクはタンクカバー118によって覆われる。燃料タンクの後方にシート119が連設される。
【0022】
車両外装において、フェアリング120及びサイドカウル121によって車両の主に前部及び側部が覆われ、車両後部にはサイドカバーあるいはシートカウル122が被着し、これらの外装部材により所謂、流線型を有する車両の外観フォルムが形成される。
【0023】
本実施形態において、エンジンユニット116のエンジンは例えば4サイクル多気筒、典型的には並列4気筒エンジンであってよい。ここで、この実施形態におけるエンジンユニット116は
図2に示されるように、クランクケース116Aの上部に順次シリンダブロック116B、シリンダヘッド116C及びシリンダヘッドカバー116Dが一体的に結合してなる。また、エンジンユニット116は複数のエンジンマウントを介して車体フレーム101に懸架されることで車体フレーム101に一体的に結合支持され、それ自体で車体フレーム101の剛性部材として作用する。
【0024】
図2及び
図3において、ステアリングヘッドパイプ102から後方やや下方へ向けて左右一対の車体フレーム101が延出する。
図3に示されるように車体フレーム101は左右の内面相互間の幅が、ステアリングヘッドパイプ102から後方へ向けて滑らかに次第に増加し、部分的ではあるが典型的には卵型あるいは水滴状を呈する内空間もしくはスペースを有している。車体フレーム101は
図2のようにステアリングヘッドパイプ102の軸方向長と略同等程度の上下方向幅を有する。この場合、
図4に示されるように車体フレーム101の上面側が下面側よりも幅狭に形成され、即ちその上面を内側に絞り込む形状でハの字状となっている。つまり車体フレーム101は、車幅方向における上面側の内幅w
1が下面側の内幅w
2よりも小さく設定される。
【0025】
上記のような形態を有する車体フレーム101の左右間に形成される内空間もしくはスペース内に、
図4及び
図5等のようにエアクリーナ10が収容配置される。エアクリーナ10とエンジンユニット116、特にシリンダヘッド116Cとは、吸気装置を構成するスロットルボディにより接続される。エアクリーナ10により清浄化された空気は吸気装置によって吸気されると共に、燃料供給装置から燃料が供給され、これにより所定混合比の混合気がシリンダヘッド116Cのインテークポートに送給される。
図2からも分かるようにエアクリーナ10はシリンダヘッド116Cの上方に位置している。インテークポートに連通するエンジン燃焼室とエアクリーナ10とを繋ぐ吸気通路には、
図2あるいは
図5に示されるようにスロットルボディ123が略鉛直方向に縦置きで配置され、即ち本例ではダウンドラフト型の吸気構造を有する。
【0026】
ここで、
図6及び
図7は本実施形態におけるエアクリーナ10の具体的構成例を示している。エアクリーナ10は上下に2分割構成されたエアクリーナ本体11とエアクリーナ上蓋12とからなり、両者が一体に結合して概して変形箱型を呈する。エアクリーナ本体11の前面、上面及び底面にはそれぞれ開口部11a,11b,11cが開設される。このうちエアクリーナ本体11の上面の開口部11bにはシール部材13(
図5)が装着されてエアクリーナ上蓋12が載置され、両者をボルト締結することで開口部11bが塞がれる。この場合、
図6及び
図7のように複数(この例では4つ)の締結部14を有し、エアクリーナ本体11には締結用ボス14Aが形成され、ボルト15が螺合するネジ部を有する。また、エアクリーナ上蓋12には締結用フランジ部14Bが突設され、この締結用フランジ部14Bにボルト15が挿通する開孔を有する。4つの締結部14の締付によりエアクリーナ本体11及びエアクリーナ上蓋12が剛固に結合される。
【0027】
エアクリーナ本体11の前面の開口部11aは
図4(A)のように左右方向に長く形成され、
図4及び
図5等に示される吸気ダクト124から開口部11aに空気が導入される。即ち前面の開口部11aは空気導入口として構成される。
図5のようにステアリングヘッドパイプ102の前部には吸気ダクト124に連通する吸気口125が開口している。吸気口125に連通する吸気ダクト124は、ステアリングヘッドパイプ102の左右両側から回り込んで、その後部で合流してエアクリーナ本体11の開口部11aと接続される。エアクリーナ本体11の開口部11aは
図5のように、シール部材であるゴムシール16を介して吸気ダクト124に差し込まれ、浮動固定される。
【0028】
また、
図6等に示されるようにエアクリーナ本体11の外側面における後端付近の下方角部17(
図6では左右一対のうち左側のもののみが示される)には、車体フレーム101に対する左右一対の締結部18を有し、各締結部18にて車体フレーム101に突設された締結用ブラケット19(
図2参照)に浮動支持される。より具体的には
図2のように車体フレーム101に形成された窓部101a内に締結用ブラケット19が延出し、この締結用ブラケット19は側面視では窓部101aから覗いている。
図4(B)は締結部18の詳細構造を示しており、締結部18にはインサートナット20が埋設されている。締結用ブラケット19にはクッション21が装着され、このクッション21に挿通した締結用のボルト22をインサートナット20と螺合させるようにしている。この場合、ボルト22のネジ部22aが締結部18に設けた座18aに当接し、これによりクッション21が適度な力量で締め付けられると共に締結部18をガタつきなく支持するようになっている。
【0029】
図6及び
図7に示されるようにエアクリーナ本体11の底面の開口部11cには、エアクリーナ底板23がシール部材を介してエアクリーナ本体11に締付けられる。本実施形態の並列4気筒エンジンでは、左右(車幅)方向に左から♯1〜♯4気筒(なお、以下の説明では単に「♯1」等として記載する)が配列される(
図8参照)。気筒毎にスロットルボディ123が接続されるが、本例では隣接するもの同士の組合せでブラケットを介して結合してユニット化されている。即ち、4つのスロットルボディ123は♯1及び♯2の組と♯3及び♯4の組に2分割される。♯1及び♯2に対応するエアクリーナ底板23Lと♯3及び♯4に対応するエアクリーナ底板23Rとに対して左右2つの開口部11cを有する。各エアクリーナ底板23は、締結手段としてボルトを用いる、この例では3つの締結部24にてエアクリーナ本体11に締結される。
【0030】
各エアクリーナ底板23にはエンジン燃焼室とエアクリーナ本体11の内部を繋ぐ通路孔23aが形成され、この通路孔23aを介して吸気を流通させるようにしている。各エアクリーナ底板23はまた、スロットルボディ123毎に通路孔23aの外周部付近に設定された、この例では2つの締結部25にて、対応するスロットルボディ123に締結される。締結部25においても締結手段としてボルトを用いる。
図4及び
図5に示されるようにエアクリーナ本体11はスロットルボディ123の上端部に結合するが、直接的にはエアクリーナ底板23がスロットルボディ123に結合し、通路孔23aはスロットルボディ123の吸気通路に整合して配置される。
【0031】
更に、
図6及び
図7を参照して、エアクリーナ本体11の前面の開口部11aと底面の開口部11cの間には、略上面の開口部11bの方向に向けて斜めにエアフィルタ26が装着される。エアフィルタ26は
図4等に示されるように山型、即ち上部側が幅狭に形成され、この例では4つの締結部27にてエアクリーナ本体11に締結される。締結部27においても締結手段としてボルトを用いる。
【0032】
上記の場合、車体フレーム101に搭載されたエアクリーナ10の後側には、図示しない燃料タンクが搭載支持される。この燃料タンクとエアクリーナ10は全体として一体にタンクカバー118によって覆われる。
【0033】
また、
図2の側面視で車体フレーム101と重なる部分、即ち
図4のように車体フレーム101の内側に配置されるエアクリーナ本体11の形状は、底面部よりも上面部が狭い形状となっている。この場合、エアクリーナ本体11の外側面と車体フレーム101の内面との間に沿って略均一の隙間Sが形成されている。また、エアクリーナ本体11の上面の開口部11bに結合するエアクリーナ上蓋12は、
図4あるいは
図6等から分かるように開口部11bと同等もしくはそれ以下の平面形状を有する。つまりエアクリーナ10全体として車体フレーム101の左右の内幅内に収まる形態となっている。
【0034】
ここで、
図8に示すようにエアクリーナ10等の組付に際して、エアクリーナ本体11はエンジンユニット116の搭載前に車体フレーム101の下方(即ち幅広側)から挿入し(
図8、矢印Y)、車体フレーム101に固定される。エアクリーナ本体11は上記のようにその上面側が幅狭で、車体フレーム101の内面との間に隙間Sが確保されるように設定されているため、ツインスパーフレームである車体フレーム101に無理なく、且つ適正に挿入組付けすることができる。
【0035】
ツインスパーフレームにより車両の前面投影面積が小さくなり空力性能が向上する。また、ライダー乗車時の自由度を拡大することで乗車性が向上し、このように空力性能及び乗車性双方を向上させながら、幅広の並列多気筒エンジンを搭載の自動二輪車100を提供することを可能としている。
また、車体フレーム101の捻り、横及び縦それぞれの剛性調整が車両の特性(要求性能)によって容易に行うことができる。
【0036】
更に
図9を参照してエアクリーナ底板23Lに対応する♯1及び♯2のスロットルボディ123はブラケット126Lを介して結合してユニット化されている(スロットルボディ123Lとする)。スロットルボディ123Lの下端側は、シリンダヘッド116Cにおいてエンジン燃焼室に連通する♯1及び♯2のインテークポート127に接続される。また、エアクリーナ底板23Rに対応する♯3及び♯4のスロットルボディ123はブラケット126Rを介して結合してユニット化されている(スロットルボディ123Rとする)。スロットルボディ123Rの下端側は同様に、♯3及び♯4のインテークポート127に接続される。
【0037】
スロットルボディ123はインテークポート127に対して着脱可能である。スロットルボディ123L及びスロットルボディ123Rに対応するエアクリーナ本体11の左右の開口部11cは、それらのスロットルボディ123L及びスロットルボディ123Rが通過するために必要な形状寸法を有している。
【0038】
前述のようにエアクリーナ本体11の前面、上面及び底面にそれぞれ開口部11a,11b,11cが開設される。このうちエアクリーナ本体11の上面の開口部11bにはシール部材13(
図5)が装着されてエアクリーナ上蓋12が載置され、両者をボルト締結することで開口部11bが塞がれる。
エアクリーナ上蓋12を取り外す際には、締結部14のボルト15に対して上方からアクセスしてこれを緩め、エアクリーナ上蓋12を容易に取り外すことができる。これによりエアクリーナ本体11の内部が開放され、この状態でメンテナンス作業等を容易且つ円滑に行うことができる。つまりエアクリーナ上蓋12は言わば、メンテナンスキャップとして機能し、メンテナンス性を大幅に向上することができる。
【0039】
また、エアクリーナ本体11の底面の開口部11cには、通路孔23aを有するエアクリーナ底板23が締結される。
各エアクリーナ底板23を外すことにより、底面の開口部11cが開放され、左右の開口部11cにそれぞれスロットルボディ123L及びスロットルボディ123Rが露呈する。そして、スロットルボディ123L及びスロットルボディ123Rはそれぞれ、左右の開口部11cを通して取り出すことができる。このようにエンジン側とエアクリーナ本体11の間に挟まれたスロットルボディ123を取り外すためにエアクリーナ本体11を取り外し、車体フレーム101からエンジンユニット116を下ろす必要がない。
【0040】
また、スロットルボディ123は所定の組合せで分割されると共に、それらに対応するエアクリーナ底板23及び開口部11cも分割される。
本例ではエアクリーナ底板23及びスロットルボディ123を左右2分割にすることにより、エアクリーナ本体11の上面の開口部11bが比較的小さくても、スロットルボディ123L及びスロットルボディ123R等の部品の着脱ができる。車体フレーム101に合せてエアクリーナ本体11の上部を絞った形状(ハの字断面)としても、良好な部品の着脱性を保証し、ツインスパーフレームに適用して高い効果を発揮する。
なお、エアクリーナ本体11の形状が上に絞られていない場合は、エアクリーナ底板23及びスロットルボディ123を2分割しなくても実質上問題ない。
【0041】
また、エアクリーナ底板23が、エンジン側に固定されたスロットルボディ123に締結されることで、エンジンとエアクリーナ本体11が一体的に固定される。これによりエンジン燃焼室とエアクリーナ本体11を繋ぐ通路孔23aの位置・寸法精度が確保され、良好な吸気性能が確保される。
【0042】
さて、本発明の燃料供給装置は、典型的には上記のようなエアクリーナ10と伴に内燃機関であるエンジンユニット116に適用される。
図10及び
図11は、この実施形態における燃料供給装置200の概略構成を示している。燃料供給装置200において、エアクリーナ10の車体後方に燃料タンク201が近接配置され、燃料タンク201の下面に燃料ポンプ202が取り付けられている。本実施形態では吸気系に燃料を噴射する2種類のインジェクタを装備し、即ち各気筒にプライマリインジェクタ及びセカンダリインジェクタからなる複数のインジェクタを有する。このうちプライマリインジェクタ203は
図10に示されるように、スロットルボディ123に装着されたスロットルバルブの下流に配置され、セカンダリインジェクタは後述するようにエアクリーナ10内に収容配置される。燃料ポンプ202とインジェクタ等の間は燃料配管により接続され、燃料ポンプ202から吐出された燃料が燃料配管を介してプライマリインジェクタ203等に供給される。なお、エアクリーナ10と燃料タンク201は
図10(B)に略記したようにタンクカバー118(
図1をも参照)により一体的に覆われる。
【0043】
ここで、
図12に示されるようにエアクリーナ10内部にセカンダリインジェクタ204等の部品が配置される。♯1〜♯4の各気筒に対してセカンダリインジェクタ204を有するが、この場合一対のパイプ支柱205を介して車幅方向に横架されたセカンダリデリバリパイプ206に沿って、4つのセカンダリインジェクタ204が搭載支持される。各パイプ支柱205は、エアクリーナ底板23(23R,23L)の所定部位に締結され、図示のように前方に張り出すように立設されたその先端部にてセカンダリデリバリパイプ206を支持する。各セカンダリインジェクタ204は後述するエアファンネルの上方にてその噴射口が下方を向いて取り付けられ、セカンダリデリバリパイプ206から供給される燃料を噴射するようになっている。
【0044】
また、♯1〜♯4の各気筒に対してエアファンネル207を有するが、各エアファンネル207は対応するエアクリーナ底板23の通路孔23aと整合して連通するように、該エアクリーナ底板23(23R,23L)の所定部位に締結される。なお、4つのエアファンネル207は実質的に気筒間ピッチと同一ピッチで車幅方向に配置される。エアファンネル207はラッパ状に拡径する上部開口からエアクリーナ10内の空気を吸入し、その空気は通路孔23aを介してスロットルボディ123へと供給される。各気筒ともエアファンネル207の上方にセカンダリインジェクタ204が配置される。
【0045】
また、スロットルボディ123の後斜め下方には、
図12のようにプライマリデリバリパイプ208が車幅方向に横架される。プライマリデリバリパイプ208に沿って、気筒間ピッチと同一ピッチで4つのプライマリインジェクタ203が搭載支持される。プライマリデリバリパイプ208は、後述のように燃料配管を介して燃料ポンプ202と接続され、燃料が供給される。
【0046】
本発明において特に、各気筒に備えた複数のインジェクタのうち一方のセカンダリインジェクタ204を、エアクリーナ10内においてエアファンネル207上方に配置すると共に、車幅方向外側のセカンダリインジェクタ204の基部が車幅方向中央側へ偏倚し、且つその噴射口がスロットルボディ123を指向するように、該セカンダリインジェクタ204及びこれに相対するエアファンネル207が傾斜配置される。
【0047】
より具体的には
図13に示したように♯1のセカンダリインジェクタ204はその噴射口側が左方へ寄るように鉛直方向に対して傾倒し、このセカンダリインジェクタ204に相対する♯1のエアファンネル207はその上部開口側が右方へ寄るように鉛直方向に対して傾倒する。この場合、これらのセカンダリインジェクタ204及びエアファンネル207のそれぞれ軸線は、実質的に相互に一致する。また、♯4のセカンダリインジェクタ204はその噴射口側が右方へ寄るように鉛直方向に対して傾倒し、このセカンダリインジェクタ204に相対する♯4のエアファンネル207はその上部開口側が左方へ寄るように鉛直方向に対して傾倒する。この場合、これらのセカンダリインジェクタ204及びエアファンネル207のそれぞれ軸線は、実質的に相互に一致する。なお、♯2及び♯3のセカンダリインジェクタ204及びこれらに相対するエアファンネル207は傾倒せず、実質的に鉛直方向を指向する。
【0048】
♯1及び♯4のセカンダリインジェクタ204を上記のように傾倒配置することで、
図13に示されるように♯1及び♯2のセカンダリインジェクタ204の配設ピッチP′は、♯2及び♯3のセカンダリインジェクタ204の配設ピッチ(実質的に気筒間ピッチPと同一)よりも狭くなる。♯3及び♯4のセカンダリインジェクタ204の配設ピッチP′についても同様であり、即ち4つのセカンダリインジェクタ204のうち両側で配設ピッチが小さく設定される。
【0049】
次に、燃料ポンプ202とインジェクタ等の間に配索される燃料配管構造の例を、主に
図14及び
図15を参照して説明する。
図14はエアクリーナ上蓋12の取付け時、
図15はエアクリーナ上蓋12の取外し時のエアクリーナ10をそれぞれ示している。本実施形態に係る燃料供給装置200により構成される燃料供給系の主要な流れとして、先ず燃料ポンプ202が燃料タンク201内の燃料を吸引し、燃料ポンプ202から吐出された燃料が、プライマリデリバリパイプ208を介してプライマリインジェクタ203に供給される。これと伴に燃料はプライマリデリバリパイプ208からセカンダリデリバリパイプ206へ吐出され、このセカンダリデリバリパイプ206を介してセカンダリインジェクタ204に供給される。その後、燃料はセカンダリデリバリパイプ206から燃料ポンプ202、更に燃料タンク201へ戻される。
【0050】
かかる燃料供給系を構成するための具体的な燃料配管構造において、燃料ポンプ202に接続する第1の燃料供給管209が、プライマリインジェクタ203に燃料を供給するプライマリデリバリパイプ208の一端側(右端)に接続され、プライマリデリバリパイプ208の他端側(左端)に接続する第2の燃料供給管210が、セカンダリデリバリパイプ206の一端側(右端)に接続される。また、セカンダリデリバリパイプ206の他端側(左端)に接続する燃料帰還管211が、燃料ポンプ202に接続される。
【0051】
上記の場合、第1の燃料供給管209は、ジョイントクランプ212(単にジョイントとも言う)を介してその途中適所で分離及び接続可能に、燃料供給管209A及び燃料供給管209Bに2分割構成される。この例では
図14(B)及び
図15(B)のようにエアクリーナ10の後面視において燃料ポンプ202の吐出口から一旦左側方向へ出て上方へ配管され、エアクリーナ10(エアクリーナ上蓋12)の後方上面を通って左方から右方に配管されて後、エアクリーナ10の後部側面を通って下方に位置するプライマリデリバリパイプ208に接続される。
【0052】
第1の燃料供給管209を上記のように配管する際、
図10及び
図11を参照してエアクリーナ上蓋12の後部上面に第1の燃料供給管209及びジョイントクランプ212を収容する凹部12aを設けている。このようにエアクリーナ10の後部上面に配管された第1の燃料供給管209及びジョイントクランプ212は
図10(A)に示したように側面視において、エアクリーナ10(エアクリーナ上蓋12)の上面と燃料タンク201の上面とに接する直線Zよりも下方に配管され、つまりエアクリーナ10及び燃料タンク201の双方に対して高さ方向で上方へ突出しない。なお、
図14(B)及び
図15(B)等に示されるように第1の燃料供給管209(燃料供給管209A)は、燃料帰還管211の車幅方向内側を通って上方へ配管される。
【0053】
また、第2の燃料供給管210はジョイントクランプ213(単にジョイントとも言う)を介して、エアクリーナ10の外部から内部に挿通され、エアクリーナ10の内部で配管される。即ち、第2の燃料供給管210はジョイントクランプ213を介して実質的に分離及び接続可能に、燃料供給管210A及び燃料供給管210Bに2分割構成される。
【0054】
更に、セカンダリデリバリパイプ206の他端側に対応して、
図11あるいは
図13(B)等に示されるようにエアクリーナ10、具体的にはエアクリーナ上蓋12の上面の連通孔12bから覗くように該セカンダリデリバリパイプ206のジョイント214が配設される。そして、燃料帰還管211はこのジョイント214に対して上方から差し込んで接続される。
【0055】
上記のように構成される燃料供給装置200の基本動作において、例えば特に
図15を参照して説明すると、燃料ポンプ202が燃料タンク201内の燃料を吸引し、燃料ポンプ202から吐出された燃料は、第1の燃料供給管209を介してプライマリデリバリパイプ208に供給される(
図15、矢印F
1)。燃料はプライマリデリバリパイプ208により各プライマリインジェクタ203に分配供給され、これらのプライマリインジェクタ203から所定タイミング及び所定量の燃料が噴射される。プライマリインジェクタ203はエンジン低回転、低負荷時用として機能するが、車両に搭載のECU(エンジン制御ユニット)の制御信号により作動するようになっている。プライマリデリバリパイプ208内の燃料は、第2の燃料供給管210を介してセカンダリデリバリパイプ206に供給される(
図15、矢印F
2)。燃料はセカンダリデリバリパイプ206により各セカンダリインジェクタ204に分配供給され、これらのセカンダリインジェクタ204から所定タイミング及び所定量の燃料が噴射される。セカンダリインジェクタ204はエンジン高回転、高負荷時用として機能するが、この場合もECUの制御信号により作動するようになっている。その後、燃料はセカンダリデリバリパイプ206から燃料帰還管211を介して燃料ポンプ202(
図15、矢印F
3)、更に燃料タンク201へ戻される。
【0056】
次に本発明の燃料供給装置200における主要な作用効果について説明する。先ず、セカンダリインジェクタ204は♯1及び♯4のものの基部が車幅方向中央側へ偏倚し、且つその噴射口がスロットルボディ123を指向するように、該セカンダリインジェクタ204及びこれに相対するエアファンネル207が傾斜配置される。
このような傾斜配置により、エアクリーナ10及び車体フレーム101の上部横幅を狭くでき、これらの部材において上部を絞った形態を有効に実現することができる。これにより特に車体の左右方向をコンパクトにし、ライダー乗車時の自由度を向上することができる。
【0057】
また、前述したように気筒間ピッチPとスロットルボディ123の配設ピッチが同一になるので、吸気経路が短く直線状となる。これによりエンジンのレスポンス並びに出力を犠牲にすることなく、むしろ向上しつつ車体フレーム101の横幅を効果的に詰めることができる。このように車両の横幅が狭くなることで空力性能を向上することができる。
【0058】
また、セカンダリインジェクタ204はセカンダリデリバリパイプ206を介して、パイプ支柱205をエアクリーナ底板23に締め付けて固定している。
このような取付構造とすることで、エアクリーナ本体11の上面の開口部11bを介して上方からアクセスし、セカンダリインジェクタ204及びセカンダリデリバリパイプ206の取付作業が可能となる。これによりエアクリーナ上蓋12に関係なく取付作業ができるので、メンテナンス性や作業性に極めて優れている。
【0059】
また、本実施形態の燃料供給系の主要な構成部材として燃料ポンプ202、プライマリインジェクタ203、プライマリデリバリパイプ208、セカンダリインジェクタ204及びセカンダリデリバリパイプ206等を含み、それらは第1の燃料供給管209、第2の燃料供給管210及び燃料帰還管211により相互に接続される。
【0060】
狭小スペース内に多数の部材もしくは部品を備えるが、少スペース中で組付性及びメンテナンス性を考慮した配管構造となっている。
この場合、気筒毎に備えた複数のインジェクタのうちプライマリインジェクタ203を低回転、低負荷時用とし、セカンダリインジェクタ204を高回転、高負荷時用とする。これら2種類のインジェクタをそれぞれ細かく制御することにより、適切なタイミングで適切な流量の燃料噴射が行なわれ、エンジン出力性能等を有効に向上することができる。
【0061】
また、第2の燃料供給管210はエアクリーナ10の外部から内部に挿通されるが、この場合、燃料供給管210Bはエアクリーナ10の内部で配管される。
組付けに際してエアクリーナ本体11の上面の開口部11bを介して上方からアクセスし、燃料供給管210Bまわりの配管作業を行い、エアクリーナ上蓋12で密閉する。これによりエアクリーナ10とセカンダリインジェクタ204の所謂、部組が可能となり、メンテナンス性及び作業性がよい。
【0062】
また、第1の燃料供給管209は、ジョイントクランプ212を介して分離及び接続可能であり、燃料帰還管211はジョイント214に上方から差し込んで接続される。
燃料タンク201側に搭載された燃料ポンプ202は、第1の燃料供給管209及び燃料帰還管211をそれぞれジョイントクランプ212及びジョイント214から外すことで、エアクリーナ10側の部品と分離できる。これにより燃料タンク201のみを、エアクリーナ10を取り外すことなく車体フレーム101から脱着でき、即ちこの点でもメンテナンス性及び組付性等の向上を図ることができる。
【0063】
また、第1の燃料供給管209は、燃料ポンプ202の吐出口から一旦左側方向へ出て上方へ配管され、エアクリーナ10の後方上面を通って左方から右方に配管されて後、エアクリーナ10の後部側面を通ってプライマリデリバリパイプ208に接続される。
エアクリーナ10の後面において略一平面上で配管できるので、燃料タンク201との近接配置が可能となり、双方の容量確保に貢献する。
【0064】
更に、第1の燃料供給管209及びジョイントクランプ212をエアクリーナ上蓋12の凹部12aに収容配置し、それらが直線Zよりも下方に配管される。
このようにエアクリーナ10及び燃料タンク201の双方に対して上方へ突出しないように配管することで、それらの上面を覆うタンクカバー
118の上面形状が平坦で上方に突出しない。これによりライディングポジションを低く抑えることができ、乗車時における上体移動を円滑に行うことができ、走行性能が向上する。
【0065】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
プライマリデリバリパイプ208及びセカンダリデリバリパイプ206の一端側及び他端側は左右の関係を上記実施形態とは逆にしてもよい。
上記実施形態において、エンジンユニット116は4気筒以外の多気筒エンジン、即ち例えば並列6気筒であっても同様に適用可能である。その場合、6つのスロットルボディ123等は、♯1及び♯2の組と♯3及び♯4の組と♯5及び♯6の組に3分割することが可能である。