(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体メサは、第1クラッド層と、第2クラッド層と、前記第1及び第2クラッド層に挟まれたコア層と、を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の半導体光素子。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による半導体光素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る半導体光素子の一例である集積型受光素子を示す図である。集積型受光素子1は、例えば位相変調通信方式において受信器として用いられるものであり、位相変調された信号光を復調して電気信号に変換する。
【0021】
集積型受光素子1は、入力導波路部2と、コヒーレントミキサ3と、光導波路部4と、受光部5と、を備えている。これら集積型受光素子1を構成する部分は、一の半導体基板上に集積されている。
【0022】
入力導波路部2は、集積型受光素子1の外部から入射された光をコヒーレントミキサ3に導波する。入力導波路部2は、信号光Sを導波する導波路2aと、局所発振光Lを導波する導波路2bとを含む。導波路2a,2bは、集積型受光素子1の端部1aから導波路軸の軸方向Hに沿って延び、コヒーレントミキサ3に光学的に接続されている。
【0023】
コヒーレントミキサ3では、信号光Sと局所発振光Lとの位相差に応じて、光導波路部4に接続された光出力ポート及び光強度が変化する。このため、位相として情報が重畳された光が、光強度として情報が重畳された光に変換される。この光強度として情報が重畳された光は受光部5で受光される。コヒーレントミキサ3は、例えば、多モ―ド干渉型(MMI)の90度ハイブリッドミキサである。コヒーレントミキサ3で復調された光は、光導波路部4を介して受光部5に導波される。
【0024】
受光部5は、情報が光強度に変換された信号光を受光して電気信号に変換する。受光部5は、複数のフォトダイオード5aを有している。本実施形態の集積型受光素子1は、4つのフォトダイオード5aを有している。
【0025】
図2及び
図3を参照して、フォトダイオード5a及び光導波路部4について詳細に説明する。
図2は、本実施形態の集積型受光素子1の一部(
図1の領域R)を拡大して示す図である。
図3は、本実施形態の光導波路部4及びフォトダイオード5aのそれぞれの断面を示す図である。
【0026】
図3の(a)部は、
図2のIIIa−IIIaに沿ったフォトダイオオ―ド5aの断面を示す図である。フォトダイオード5aは、半導体基板11上に設けられた複数の半導体層からなる積層部12を含む。積層部12の幅W1は、4〜15μmであり、本実施形態では12μmである。半導体基板11上には、下部クラッド層12aが設けられ、下部クラッド層12a上には光吸収層12bが設けられている。光吸収層12b上には上部クラッド層12cが設けられ、上部クラッド層12c上にはコンタクト層12dが設けられている。光吸収層12bは、後述する埋め込み型導波路部のコア層とバットジョイントされている。
【0027】
本実施形態では、半導体基板11は、InP等のIII―V族化合物半導体からなる。下部クラッド層12aは、n型InP等のIII―V族化合物半導体からなる。下部クラッド層12aの厚さは、0.1〜2.0μmであり、本実施形態では1.2μmである。光吸収層12bは、i型InGaAs等のIII―V族化合物半導体からなる。光吸収層12bの厚さは、0.2〜0.7μmであり、本実施形態では0.5μmである。上部クラッド層12cは、p型InP等のIII―V族化合物半導体からなる。上部クラッド層12cの厚さは、0.3〜1.5μmであり、本実施形態では0.7μmである。コンタクト層12dは、p型InGaAs等のIII―V族化合物半導体からなる。コンタクト層12dの厚さは、0.1〜0.5μmであり、本実施形態では0.3μmである。
【0028】
積層部12の側面12s上と下部クラッド層12aを含む半導体層13の上面13pには、パッシベーション膜14が設けられている。このパッシベーション膜14は、フォトダイオード5aの暗電流を低減する為に設けられている。パッシベーション膜14は半導体からなる膜であり、例えばi型InP等のIII―V族化合物半導体である。パッシベーション膜14の厚さは、0.1〜2.0μmであり、本実施形態では0.3μmである。
【0029】
積層部12の上面12pと、積層部12の側面12s上のパッシベーション膜14上と、半導体層13の上面13p上のパッシベーション膜14上と、には絶縁層16が設けられている。絶縁層16は、SiO2等の絶縁性を有する材料からなる。絶縁層16の厚さは、0.1〜1.0μmであり、本実施形態では0.5μmである。
【0030】
積層部12上の絶縁層16には、開口16aが設けられている。開口16aからは、積層部12の上面12pであるコンタクト層12dの上面が露出している。この開口16aには、コンタクト層12dと電気的に接続されたp側電極17が設けられている。
【0031】
半導体層13上のパッシベーション膜14及び絶縁層16には、開口16bが設けられている。開口16bからは、半導体層13の上面13pが露出している。この開口16bには、半導体層13と電気的に接続されたn側電極18が配置されている。
【0032】
図1を参照すると、光導波路部4は、一端がコヒーレントミキサ3に接続され、他端がフォトダイオード5aに接続されている。光導波路部4は、コヒーレントミキサ3に接続されたハイメサ型導波路部21と、フォトダイオード5aに接続された埋め込み型導波路部22とを有している。
【0033】
図3の(b)部は、
図2のIIIb−IIIb線に沿った断面を示す。ハイメサ型導波路部21は、下部クラッド層24a(第1クラッド層)とコア層24bと上部クラッド層24c(第2クラッド層)とからなる半導体メサ24を含む。半導体メサ24は、側面24s及び上面24pが絶縁層16に覆われている。半導体メサ24は、2.5μmの幅W2aと、2.3μmの高さH2を有し、半導体層26上に設けられている。半導体層26は、例えばi型InPであるIII―V族化合物半導体からなる。下部クラッド層24a及び上部クラッド層24cは、例えばi型のInPであるIII―V族化合物半導体からなる。コア層24bは、例えばi型のInGaAsPであるIII―V族化合物半導体からなる。
【0034】
図3の(c)部は、
図2のIIIc−IIIc線に沿った断面を示す。埋め込み型導波路部22は、ハイメサ型導波路部21と同様の構成を有する半導体メサ24を含む。埋め込み型導波路部22の半導体メサ24は、側面24s上にパッシベーション膜14が設けられている。このパッシベーション膜14は、i型InPからなる半導体膜であり、半導体メサ24における半導体積層と近い屈折率を有している。このため、パッシベーション膜14は、埋め込み型導波路部22において光学的に導波路として機能する。そして、半導体メサ24の上面24pと、パッシベーション膜14上とに、絶縁層16が設けられている。
【0035】
上述したように、ハイメサ型導波路部21では、半導体メサ24の側面24sにはパッシベーション膜14が設けられておらず、半導体メサ24の側面24sはパッシベーション膜14から露出している。一方、埋め込み型導波路部22では、半導体メサ24の側面24sにパッシベーション膜14が設けられている。従って、埋め込み型導波路部22の幅W6は、絶縁層16を含むハイメサ型導波路部21の幅W2bに対して、パッシベーション膜14の厚さだけ拡大している。例えば、
図2を参照すると、接続部27では、ハイメサ型導波路部21の幅に対して埋め込み型導波路部22の幅が大きくなっている。
【0036】
ハイメサ型導波路部21及び埋め込み型導波路部22について更に詳細に説明する。
図2を参照すると、光導波路部4は、第1導波路部31、第2導波路部32、中間導波路部33(第5導波路部)、第3導波路部34、第4導波路部36を有し、コヒーレントミキサ3からフォトダイオード5aに向かう導波路軸の軸方向Hに沿って、この順に設けられている。
【0037】
第1導波路部31は、軸方向Hに沿って一定の幅W2bを有している。
図2の(b)部に示すように、第1導波路部31では、半導体メサ24の側面24s上にはパッシベーション膜14が設けられることなく、側面24s上に直接に絶縁層16が設けられている。
【0038】
第2導波路部32は、軸方向Hに沿って幅の両側に拡大する順テ―パ状の形状を有している。本実施形態では、軸方向Hに沿った傾きが一定であるテ―パ形状を有している。第2導波路部32の長さL1は、10〜500μmであり、本実施形態では長さL1は50μmである。
【0039】
第2導波路部32の一端32aは、第1導波路部31と接続されているので、一端32aの幅は、第1導波路部31の幅W2bと同じである。本実施形態では、第2導波路部32の一端32aの幅は、2.5μmである。第2導波路部の他端32bは、中間導波路部33と光学的に結合されているので、中間導波路部33の幅W5と同じである。本実施形態では、中間導波路部33の幅W5は、4.5μmである。
【0040】
第2導波路部32は、軸方向Hに配列された第1領域32fと第2領域32sとを有している。第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)は、0.4以上0.6以下に設定されている。本実施形態では、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)は0.5に設定されている。
【0041】
第1領域32fにおける半導体メサ24の側面24s上は、パッシベーション膜14が設けられることなく、側面24s上に直接に絶縁層16が設けられている。一方、第2領域32sにおける半導体メサ24の側面24s上には、半導体メサ24の側面24s上にパッシベーション膜14が設けられている。従って、第1領域32fと第2領域32sとの接続部27では、パッシベーション膜14の厚さ分だけ、幅が大きくなっている。
【0042】
この第1領域32fのための半導体メサ24と、第2領域32sのための半導体メサ24とは、同一の半導体メサ24である。従って、半導体メサ24は、接続部27において別々の構成を有する半導体メサ同士が接続されているものではない。本実施形態の接続部27とは、半導体メサ24においてパッシベーション膜14が設けられていない第1領域32fと、パッシベーション膜14が設けられた第2領域32sとの境界を示すものである。接続部27の意味は、以下の説明において同様である。
【0043】
中間導波路部33は、第2導波路部32と第3導波路部34との間に設けられた、一定の幅W5を有する部分である。本実施形態では、中間導波路部33は、幅W5が4.5μmであり、長さL5が5μmである。
【0044】
第3導波路部34は、軸方向Hに沿って幅が縮小する逆テ―パ状の形状を有している。第3導波路部34の長さL6は、5〜400μmであり、本実施形態では長さL6は25μmである。
【0045】
第3導波路部34の長さL6は、第2導波路部32の長さL1に対して1/5〜1に設定され、本実施形態では1/2に設定されている。すなわち、第2導波路部32の長さL1は、第3導波路部34の長さL6の2倍に設定されている。
【0046】
第3導波路部34の一端34aは中間導波路部33と接続されているので、一端34aの幅は中間導波路部33の幅W5と同じである。本実施形態では、中間導波路部33の一端の幅は、4.5μmである。第3導波路部の他端34bは、第4導波路部36と接続されているので第4導波路部36の幅W6と同じである。第3導波路部34は、
図3の(c)部に示すように、半導体メサ24の側面24s上にパッシベーション膜14が設けられている。
【0047】
第4導波路部36は、軸方向Hに沿って一定の幅を有している。第4導波路部36の幅W6は、1.5〜8μmであり、本実施形態の第4導波路部36の幅W6は、3.1μmである。第4導波路部36では、導波路としての半導体メサ24の幅は第1導波路部31の半導体メサ24の幅W2aと同じである。従って、第4導波路部36の幅W6は、半導体メサ24の両側側面24sに設けられたパッシベーション膜14の厚さ14t分だけ、第1導波路部31の幅W2bより大きくなっている。すなわち、第1導波路部31の幅W2aの2.5μmに対して、膜厚14tが0.3μmであるパッシベーション膜14が両側側面24sに設けられた分(0.3μm×2=0.6μm)だけ、第1導波路部31の幅W2bより大きくなっている。
【0048】
ハイメサ型導波路部21は、パッシベーション膜14から半導体メサの側面24sが露出した導波路である。従って、ハイメサ型導波路部21は、第1導波路部31と第2導波路部32の第1領域32fとを含む。一方、埋め込み型導波路部22は、半導体メサ24の側面24s上にパッシベーション膜14が設けられた導波路である。従って、埋め込み型導波路部22は、第2導波路部32の第2領域、中間導波路部33、第3導波路部34、及び第4導波路部36を含む。
【0049】
上述した集積型受光素子1の製造方法について、
図4〜
図7を参照しつつ説明する。はじめに、受光部5を形成する。SiをドープしたInP基板である半導体基板11上に、下部クラッド層のためのn型InPからなる半導体層37を成長する。この半導体層37は、厚さが1.2μmであり、キャリア濃度が5×10
18cm
−3である。半導体層37上に、光吸収層のためのi型InGaAsからなる半導体層38を成長する。この半導体層38は、厚さが0.5μmである。半導体層38上に、上部クラッド層のためのp型InPからなる半導体層39を成長する。この半導体層39は、厚さが0.7μmであり、キャリア濃度が7×10
17cm
−3である。半導体層39上に、コンタクト層のためのp型InGaAsからなる半導体層40を成長する。この半導体層40は、厚さが0.3μmであり、キャリア濃度が1×10
19cm
−3である。
【0050】
次に、
図4の(a)部及び(b)部に示すように、受光部5を形成する領域Aを除いて、半導体基板11が露出するまで半導体層37,38,39,40をエッチングする。受光部5を形成する領域Aは、軸方向Hに沿った長さL7が15μmである。
【0051】
次に、
図5の(a)部及び(b)部に示すように、光導波路部4のための半導体積層46を成長する。まず、受光部5にマスクを形成する。次に、半導体基板11上に下部クラッド層24aのためのi型InPからなる半導体層42を成長する。この半導体層42は、厚さが1.2μmである。半導体層42上に、コア層24bのためのi型InGaAsPからなる半導体層43を成長する。この半導体層43は、厚さが0.5μmである。半導体層43上に、上部クラッド層24cのためのi型InPからなる半導体層44を成長する。この半導体層44は、厚さが1μmである。この半導体積層46の成長により、光吸収層12bのための半導体層38と、コア層24bのための半導体層43とがバットジョイントされる。
【0052】
続いて、
図6の(a)部及び(c)部に示すように、受光部5のための半導体積層41をエッチングしてフォトダイオード5aのための半導体メサである積層部12を形成する。1つのフォトダイオード5aを構成する半導体メサは、幅W1が12μmであり、軸方向Hに沿った長さL7が15μmであり、高さH1が2.3μmである。
【0053】
また、光導波路部4のための半導体積層46を、エッチングして光導波路部4のための半導体メサ24を形成する。この半導体メサ24は、幅W2aが2.5μmに形成され、高さH2が2.3μmである。エッチングには、ドライエッチング法を用いることができる。
【0054】
次に、
図7に示すように、光導波路部4をマスクで保護して、フォトダイオード5aの近傍にInPからなる埋め込み層47を成長する。このパッシベーション膜14のための埋め込み層47は、厚さが0.3μmである。続いて、光導波路部4上及びフォトダイオード5a上に絶縁層16を形成する。最後に、半導体メサ24上の絶縁層16に開口16aを形成し、該開口16aにp側電極17を設ける。そして、半導体基板11上の絶縁層16に開口16bを形成し、該開口16bにn側電極18を形成する。以上の工程により、集積型受光素子1が製造される。
【0055】
ここで、集積型受光素子100について説明する。
図8は、集積型受光素子100のハイメサ型導波路部101と埋め込み型導波路部102との接続部103を拡大して示す図である。埋め込み型導波路部102の側面には、パッシベーション膜14が設けられている。
【0056】
図8に示すように、集積型受光素子100は、ハイメサ型導波路部101が一定の幅W7を有し、埋め込み型導波路部102が一定の幅W8を有している。ここで、ハイメサ型導波路部101のための半導体メサの幅と、埋め込み型導波路部102のための半導体メサの幅とは同一である。従って、埋め込み型導波路部102の幅W8が、埋め込み型導波路部102の側面に設けられたパッシベーション膜の厚さ分だけ、ハイメサ型導波路部101の幅W7に比べて大きくなっている。その他の構成は、集積型受光素子1と同様である。
【0057】
集積型受光素子100について、ハイメサ型導波路部101と埋め込み型導波路部102における光の強度変化を計算により求めた。光強度の揺れは、2次元ビ―ム伝搬法(2D−BPM法)を用いた。この計算に用いた解析モデルであるハイメサ型導波路部101と埋め込み型導波路部102には、以下のパラメータを設定した。
入射される光の波長 1.55μm。
半導体メサの第1クラッド層の厚さ、 0.8μm。
半導体メサの第1クラッド層の屈折率、 3.1694。
半導体メサの第2クラッド層の厚さ、 1.0μm。
半導体メサの第2クラッド層の屈折率、 3.1694。
半導体メサのコア層の厚さ、 0.5μm。
半導体メサのコア層の屈折率、 3.2406。
半導体メサの幅、 2.5μm。
パッシベーション膜の厚さ、 0.3μm。
パッシベーション膜の屈折率、 3.1694。
【0058】
半導体メサの幅が2.5μmであるので、ハイメサ型導波路部101の幅W7は2.5μmである。また、パッシベーション膜14の厚さが0.3μmであるので、埋め込み型導波路部102の幅W8は3.1μm(=2.5μm+0.3μm×2)である。
【0059】
図9は、軸方向Hに沿ったハイメサ型導波路部101及び埋め込み型導波路部102における光強度を示す。この
図9の縦軸は、ハイメサ型導波路部101に入射された光の光強度を用いて規格化した値である。
【0060】
図9を参照すると、ハイメサ型導波路部101と埋め込み型導波路部102との接続部103を示す参照符号P1までは、光強度は一定である。そして、接続部103を通過した後に、光強度の揺れが生じている。集積型受光素子100では、光強度の最大値から最小値までの揺れ幅S1が、19.8%であることがわかった。
【0061】
続いて、集積型受光素子1について、ハイメサ型導波路部21と埋め込み型導波路部22における光の強度変化を計算により求めた。光強度の揺れは、集積型受光素子100の評価と同様に、2次元ビ―ム伝搬法(2D−BPM法)を用いた。この計算に用いた解析モデルであるハイメサ型導波路部21と埋め込み型導波路部22には、以下のパラメータを設定した。
入射される光の波長 1.55μm。
半導体メサの第1クラッド層の厚さ、 0.8μm。
半導体メサの第1クラッド層の屈折率、 3.1694。
半導体メサの第2クラッド層の厚さ、 1.5μm。
半導体メサの第2クラッド層の屈折率、 3.1694。
半導体メサのコア層の厚さ、 0.5μm。
半導体メサのコア層の屈折率、 3.2406。
半導体メサの幅 2.5μm。
パッシベーション膜の厚さ、 0.3μm。
パッシベーション膜の屈折率、 3.1694。
第2導波路部32の長さL1、 50μm。
中間導波路部33の長さL5、 5μm。
第3導波路部34の長さL6、 25μm。
なお、半導体メサ24の幅が2.5μmであるので、第1導波路部31の幅W2bは2.5μmである。また、パッシベーション膜14の厚さが0.3μmであるので、第4導波路部36の幅W6は3.1μm(=2.5μm+0.3μm×2)である。
【0062】
そして、
図10の(a)部〜(e)部に示すように、接続部27の位置を変化させて、光強度の揺れを評価した。すなわち、第2導波路部32の長さL1を50μmに固定し、その長さL1に占める第1領域32fの長さL2を変化させた。
【0063】
この評価では、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.2(
図10の(a)部),0.4(同図の(b)部),0.5(同図の(c)部),0.6(同図の(d)部),0.8(同図の(e)部)に設定し、それぞれの値において、評価を行った。
【0064】
図11〜
図13は、軸方向Hに沿った導波路部3の幅中心の光強度の変動を示す。この図の縦軸は、第1導波路部31に入射された光の光強度を用いて規格化した値である。また、参照符号P1は接続部27の位置を示す。さらに、参照符号Z1は第1導波路部31に対応し、参照符号Z2は第2導波路部32の第1領域32fに対応し、参照符号Z3は第2導波路部32の第2領域32sに対応する。参照符号Z4は中間導波路部33に対応し、参照符号Z5は第3導波路部34に対応し、参照符号Z6は第4導波路部36に対応する。
【0065】
図11の(a)部は、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.2として計算した結果である。
図11の(a)部を参照すると、第1導波路部31(参照符号Z1)を導波する間は光強度が一定である。そして、第2導波路部32及び中間導波路部33を導波する間(参照符号Z2〜参照符号Z4)に、光強度は0.62程度まで変化する。そして、第3導波路部34(参照符号Z5)を導波する間に1に近づくが、第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じている。第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.2とした場合には、揺れの幅S2は最大28%であることがわかった。
【0066】
図11の(b)部は、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.4として計算した結果である。第2導波路部32及び中間導波路部33を導波する間(参照符号Z2〜参照符号Z4)に、光強度が0.6程度まで変化した後に、第3導波路部34を導波する間(参照符号Z5)に1に近づく。そして、第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じているが、揺れの幅S3は最大14.6%であることがわかった。
【0067】
図12の(a)部は、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.5として計算した結果である。第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じているが、その揺れの幅S4は最大5.1%であることがわかった。
【0068】
図12の(b)部は、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.6として計算した結果である。第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じているが、その揺れの幅S5は最大16.9%であることがわかった。
【0069】
図13は、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)を0.8として計算した結果である。第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じ、その揺れの幅S6は最大25.5%であることがわかった。
【0070】
続いて、第2導波路部32の長さL1が光強度の揺れに及ぼす影響を評価した。ここでは、各導波路部の幅は一定とした。そのため、一定の幅を有するテーパの長さを変化させることは、テーパの傾きを変化させることと同じ意味である。
【0071】
この計算に用いた解析モデルであるハイメサ型導波路部101と埋め込み型導波路部102には、上述した集積型受光素子1の評価に用いた解析モデルのパラメータと同様である。そして、
図14に示すように、第2導波路部32の長さL1の1.25倍(62.5μm=50μm×1.25)の長さを有する第2導波路部32Aと、第2導波路部32の長さL1の1.5倍の長さ(75μm=50μm×1.5)を有する第2導波路部32Bと、について計算を行った。なお、第2導波路部32A,32Bの長さL1A,L1Bに対する第1領域32fA,32fBの長さL1A,L1Bの比(L2A/L1A,L2B/L1B)は0.5に設定した。
【0072】
図15の(a)部を参照すると、第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じているが、その揺れ幅S8は最大10.1%であることがわかった。
【0073】
図15の(b)部を参照すると、第4導波路部36(参照符号Z6)では光強度の揺れが生じているが、その揺れ幅S8は最大11.2%であることがわかった。
【0074】
図16は、集積型受光素子における光強度の揺れを示す図である。
図16において、光強度は導波路内の中心軸上の値を示す。
図16の(a)部を参照すると、実施例に係る集積型受光素子における光強度の揺れが示されている。この集積型受光素子では、第2導波路部32の長さL1は50μmであり、第1領域32fの長さL2は25μmである。また、第2導波路部32の一端32aの幅は2.5μmであり、第2導波路部32の他端32bの幅は7.4μmである。この実施例において、第2導波路部32の長さL1と第2導波路部32の他端32bの幅(簡便のためにW5として参照する)との比率(W5/L1)を指標Fとして参照する。第2導波路部32の他端32bの幅が7.4μm(W5/L1=0.148)である集積型受光素子では、
図16の(a)部に示されるように光強度の揺らぎは5%に抑制されており、また損失が約0.5dBである。
【0075】
図16の(b)部を参照すると、別の集積型受光素子における光強度の揺れが示されている。この集積型受光素子では、第2導波路部32の長さL1は50μmであり、第1領域32fの長さL2は25μmである。また、第2導波路部32は、第1導波路部31に接続された一端32aと、該一端32aの反対側に設けられた他端32bとを有する。第2導波路部32の一端32aにおける幅は第2導波路部32の他端32bにおける幅より大きい。第2導波路部32の一端32aの幅は2.5μmであり、第2導波路部32の他端32bの幅は10μmである。上記の指標Fを用いて標記すると、第2導波路部32の他端32bの幅が10μmであるから、この実施例の指標Fは0.2である。この指標値の集積型受光素子では、
図16の(b)部に示されるように光強度の揺らぎは25%程度の大きさであり、また損失が約1.0dBに増加する。
【0076】
これらのシミュレーション実験によれば、(第2導波路部32の他端部32bにおける幅)/(第2導波路部32の長さ)である指標Fが0.148以下であることが好ましい。上記の実施例に加えて他の検討結果も考慮するとき、指標Fが0.015以上であることが好ましく、また0.15以下であってもよい。さらに、第2導波路部32の他端32bの幅は例えば15μm以下であることが好ましい。
【0077】
上記のようにいくつかの実施例を参照しながら、本実施の形態を説明してきた。これらの実施例では、第1導波路部31はシングルモード導波路であることができ、第4導波路部36はシングルモード導波路であることができる。また、実施例では、第2導波路部32の長さL1は、第3導波路部34の長さL6より長い。中間導波路部33の長さL5は第3導波路部34の長さL6より短い。第1導波路部31、第2導波路部32、中間導波路部33、第3導波路部34及び第4導波路部36の配列において、隣接する導波路部の接続で両側の導波路部幅の値が連続的になるように、光導波路部4が構成される。一方、第2導波路部32の両側面においては、パッシベーション膜14が終端することに起因して第1領域32fと第2領域32sとの境界に段差が形成される。一対のテーパー導波路を用いない光導波路では、発明者の知見によれば、導波路側面上の、パッシベーション膜端(膜14の端)に起因した段差は下流側の光導波路を伝搬する光に光強度の揺れを引き起こす。しかしながら、本実施形態によれば、
図8に示されたテーパ無し導波路の実験例において光強度の揺れ(
図9参照)が19.8%であることから、
図11〜
図13に示された実施例によれば、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)が0.34以上であり0.63以下であることができる。第2導波路部32の長さL1に対する第1領域32fの長さL2の比(L2/L1)が上記の下限値以上であるとき第1領域32fの導波路幅が狭い状態で第2領域32sへ遷移し光が急激に横方向に広がって揺れる、という現象が抑制されるため、光強度の揺れが低減される。また、比(L2/L1)が上記の上限値以下であるとき第2領域32sで発生する横方向への広がりによる揺れが、伝播中に十分に低減される長さを有するので、光強度の揺れが低減される。
【0078】
図11〜
図13を参照すると、本実施例におけるモデルのある導波路領域において光強度が例えば0.7程度にまで低くなっている。このように低い光強度、これを極小値と呼び替えるとすると、光強度の極小値の位置は導波路の長さに係る比(L2/L1)に応じて異なる。第2導波路部32から中間導波路部33までの導波路部分、より具体的には第2領域32s又は中間導波路部33に、光強度に関する少なくとも一つの極小値(好ましくは最小値)が位置するような導波路の長さに係る比(L2/L1)を有する第2導波路部32は、多くの場合に、光強度の揺れを低減できる。
【0079】
中間導波路部33は、第1導波路部31の導波路幅より広い幅を有する導波路であり、また第4導波路部36の導波路幅より広い幅を有する導波路である。中間導波路部33の長さは、例えば1μm以上であり、また30μm以下であることができる。中間導波路部33は例えばマルチモード導波路であることができる。
【0080】
本実施形態では中間導波路部33を含む構造を示す実施例を説明しているけれども、上記の実施例に加えて他の検討結果も考慮するとき、第2導波路部32の他端32bが、中間導波路部33を介することなく、第3導波路部34の一端34aに接続されていることができる。第2導波路部32と第3導波路部34の一端34aとの直接の接続においても、集積型受光素子において光損失の増加を抑えながら光強度の揺れを低減できる。
【0081】
ところで、フォトダイオード5aでは、光吸収層12bと埋め込み型導波路部22のコア層24bとの境界面において、最も多くの光が吸収されてキャリアが生成される。そして、光の吸収は、進行軸方向H1に対して指数関数的に減少する。
【0082】
すなわち、光強度が高い光が、フォトダイオード5aに入射されると、埋め込み型導波路部22のコア層24bと接したフォトダイオード5aの光吸収層12b近傍においてキャリアが大量に生成される。フォトダイオード5aに印可されるバイアス電圧が高い場合には、キャリアが十分に取り出されるので界面近傍にキャリアを蓄積させることがない。しかし、バイアス電圧が低い場合には、キャリアを十分に取り出すことができず、界面近傍にキャリアが蓄積する。この界面に蓄積したキャリアは、集積型受光素子の外部から印可した電界を打ち消すので、特に、光強度が高く且つフォトダイオード5aに印可されるバイアス電圧が低い場合に、周波数応答性が劣化するという問題があった。
【0083】
図17は、フォトダイオード5aの周波数応答性を示している。
図17の(a)部は光強度が高い光がフォトダイオード5aに入射した場合の周波数応答性を示し、
図10の(b)部は光強度が低い光がフォトダイオード5aに入射した場合の周波数応答性を示している。この
図17の(a)部及び(b)部のグラフの横軸に示した周波数は、フォトダイオードに入射する信号光の変調周波数である。
【0084】
図17の(a)部において、グラフG1はフォトダイオード5aに印可したバイアス電圧が−2Vの場合の周波数応答性を示し、グラフG2はフォトダイオード5aに印可したバイアス電圧が−4Vの場合の周波数応答性を示し、グラフG3はフォトダイオード5aに印可したバイアス電圧が−6Vの時の周波数応答性を示す。グラフG1を参照すると、フォトダイオード5aに印可するバイアス電圧が−2Vのときには、周波数応答の帯域が劣化することがわかった。一方、グラフG2,G3を参照すると、バイアス電圧を−4V又は−6Vに設定した場合には、周波数応答の帯域が25GHz程度まで確保できていることがわかった。ここで、周波数応答の帯域とは、ゲインが−3dB低下する周波数帯域である。
【0085】
図17の(b)部において、グラフG4はフォトダイオード5aに印可したバイアス電圧が−2Vの場合の周波数応答性を示し、グラフG5はフォトダイオード5aに印可したバイアス電圧が−4Vの場合の周波数応答性を示し、グラフG6はフォトダイオード5aに印可したバイアス電圧が−6Vの時の周波数応答性を示す。グラフG4を参照すると、フォトダイオード5aに入射した光の光強度が低い場合には、生成されるキャリアの量が少ないので、バイアス電圧が−2Vといった低い電圧であっても周波数応答の帯域の劣化は低減されていることがわかった。
【0086】
ハイメサ型導波路部と埋め込み型導波路部との接続部を境に光強度の揺れが生じる。光強度の揺れを有する光がフォトダイオード5aに入射されたときには、光強度の揺れの最大値でフォトダイオード5aに光が入射するおそれがある。強い光強度を有する光が入射されると、フォトダイオード5aの周波数応答の帯域を劣化させる場合がある。
【0087】
また、光強度の揺れが生じると、フォトダイオード5aの周波数応答の帯域が光の波長に基づいて変動するおそれがある。さらに、フォトダイオード5aから接続部103までの距離が変化すると、高い光強度でフォトダイオード5aに光が入射される場合又は低い光強度でフォトダイオード5aに光が入射される場合が生じ得るので、フォトダイオード5aの周波数応答特性にばらつきが生じる場合がある。
【0088】
コヒーレントミキサ3からフォトダイオード5aに入射される光は、情報が光強度として重畳されている。従って、光強度の揺れや、光強度の揺れに起因するフォトダイオード5aの特性変化は、光に重畳された情報の品質を劣化させるおそれがある。このため、光強度の揺れを低減してフォトダイオード5aに光を入射させることができる光導波路が求められていた。
【0089】
そこで、本実施形態の集積型受光素子1は、導波路軸方向に沿って幅が拡大する第2導波路部32と、導波路軸方向に沿って幅が縮小する第3導波路部33と、を有している。そして、第2導波路部32の長さL1に対する第1領域L2の長さの比(L2/L1)が0.4以上0.6以下に設定されている。この第2導波路部32によれば接続部を通過した後の光の光強度の揺れを低減できる。
【0090】
その結果、本実施形態の集積型受光素子1によれば、互いに異なる構造を有する導波路の接続部27において生じる光強度の揺れを低減可能であり、フォトダイオード5aに対して安定した光強度を有する光を導波することができる。従って、光強度の揺れや、光強度の揺れに起因するフォトダイオード5aの特性変化を低減し、光に重畳された情報の品質劣化を抑制することができる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、受光部5のフォトダイオード5aにはコヒーレントミキサ3以外の光学素子であってもよい。