特許第6232809号(P6232809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232809
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/08 20140101AFI20171113BHJP
   E05B 81/46 20140101ALI20171113BHJP
【FI】
   E05B79/08
   E05B81/46
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-159594(P2013-159594)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31009(P2015-31009A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 頌子
(72)【発明者】
【氏名】小田 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悟
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−219510(JP,A)
【文献】 米国特許第6032760(US,A)
【文献】 実開平4−16268(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動により第1方向に回動する回動部材と、
前記回動部材の回動軸が設けられた保持部材と、
前記保持部材に保持されて前記第1方向に捩じられることにより前記回動部材を第2方向に回動させることが可能な付勢力を発生するトーションスプリングと、を備え、
前記保持部材は、径方向内側に前記回動部材の回動軸を有して前記トーションスプリングのコイル部を収容するコイル収容部と、前記トーションスプリングの第1端部が係止される係止部と、を備えるとともに、
前記回動部材は、前記トーションスプリングの第2端部が係止される係止突部を備え、
前記コイル収容部の周縁部分には、前記回動部材が回動することにより前記コイル部の径方向外側を周方向移動する前記係止突部に対して当接可能な当接突部が設けられるものであって、
前記当接突部は、
前記第2方向における前記係止突部の周方向移動を規制する規制面と、
前記第1方向に前記当接突部を乗り越える前記係止突部の周方向移動を案内可能な傾斜面と、を備え
前記トーションスプリングは、非捩り状態にある場合においては前記第2端部が前記当接突部よりも前記第2方向側に配置されるとともに、前記回動部材が前記第1方向に回動することにより、前記第2端部よりも前記第2方向側から前記第1方向に向かって周方向移動する係止突部に対して前記第2端部が係止されるように構成されるアクチュエータ装置。
【請求項2】
請求項に記載のアクチュエータ装置において、
前記第2端部は、前記第2方向に折り曲げられた鈎形状を有すること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを駆動源とするアクチュエータ装置には、そのモータ駆動により回動する回動部材に捩じられることによって当該回動部材を反モータ駆動方向に回動させることが可能な付勢力を発生するトーションスプリングを備えたものがある。例えば、特許文献1に記載のアクチュエータ装置は、カム面を有するカム体と、そのカム面に対する当接部を有して回動可能に支持されたレバー部材とを備えている。また、このアクチュエータ装置においては、そのカム体が、モータ駆動により回動する回動部材(ウォームギヤに噛合するホイールギヤ)となっている。そして、そのカム面に設定されたカムプロフィールに基づいて、レバー部材が回動する構成となっている。
【0003】
また、この従来例において、トーションスプリングは、その回動部材の回動軸が設けられた保持部材によって保持されている。具体的には、この保持部材には、径方向内側に回動部材の回動軸を有してトーションスプリングのコイル部を収容するコイル収容部と、そのトーションスプリングの第1端部が係止される係止部と、が設けられている。また、トーションスプリングの第2端部は、回動部材に設けられた係止突部に係止されている。尚、この係止突部は、カム面の裏側に形成されている。そして、コイル収容部の周縁部には、その回動部材の回動によりコイル部の径方向外側を周方向移動する係止突部に対して当接可能な当接突部が設けられている。
【0004】
即ち、このような構成とすることで、モータ駆動を停止した後は、そのトーションスプリングの付勢力に基づいて、反モータ駆動方向に回動部材が回動する。また、その回動部材に設けられた係止突部が保持部材側の当接突部に当接することで回動部材の回動が規制される。そして、これにより、安定的に、その回動部材が初期位置に復帰するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−219510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような構成を有するアクチュエータ装置において、トーションスプリング及び回動部材を保持部材に組み付ける際には、その回動部材の係止突部が保持部材側の当接突部に一致した周方向位置にあることが望ましい。即ち、このような位置関係にあることで、その当接突部上に配置された係止突部をモータ駆動方向に摺動させるだけで、第2端部が係止された係止突部を当接突部に係止して、そのトーションスプリングに捩りが加えられた状態で回動部材を初期位置に配置することができる。そして、これにより、その組み付け作業の容易化を図ることができる。
【0007】
しかしながら、上記のような容易な組み付けを可能とするためには、そのトーションスプリングについて高精度の品質管理が必要になる。即ち、トーションスプリングが非捩り状態にある場合において、その第2端部の周方向位置が当接突部と一致しなければ、当該第2端部が係止される係止突部についてもまた、その周方向位置を当接突部に一致させることができない。その結果、その第2端部が係止突部から外れないように保持しつつ、当接突部を乗り越えて係止突部及び第2端部をモータ駆動方向に周方向移動させなければならなくなる。そして、これにより、その組付け作業が煩雑化するという問題があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構成にて、容易且つ確実に、その回動部材及びトーションスプリングを組み付けることのできるアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するアクチュエータ装置は、モータ駆動により第1方向に回動する回動部材と、前記回動部材の回動軸が設けられた保持部材と、前記保持部材に保持されて前記第1方向に捩じられることにより前記回動部材を第2方向に回動させることが可能な付勢力を発生するトーションスプリングと、を備え、前記保持部材は、径方向内側に前記回動部材の回動軸を有して前記トーションスプリングのコイル部を収容するコイル収容部と、前記トーションスプリングの第1端部が係止される係止部と、を備えるとともに、前記回動部材は、前記トーションスプリングの第2端部が係止される係止突部を備え、前記コイル収容部の周縁部分には、前記回動部材が回動することにより前記コイル部の径方向外側を周方向移動する前記係止突部に対して当接可能な当接突部が設けられるものであって、前記当接突部は、前記第2方向における前記係止突部の周方向移動を規制する規制面と、前記第1方向に前記当接突部を乗り越える前記係止突部の周方向移動を案内可能な傾斜面と、を備え、前記トーションスプリングは、非捩り状態にある場合においては前記第2端部が前記当接突部よりも前記第2方向側に配置されるとともに、前記回動部材が前記第1方向に回動することにより、前記第2端部よりも前記第2方向側から前記第1方向に向かって周方向移動する係止突部に対して前記第2端部が係止されるように構成されることが好ましい。
【0010】
即ち、モータ駆動により回動部材を第1方向に回動させることでトーションスプリングが捩じられる。これにより、モータ駆動の停止後は、その第1方向に捩じられたトーションスプリングの付勢力に基づいて回動部材が第2方向に回動する。そして、このとき、コイル部の径方向外側を周方向移動する係止突部が当接突部の規制面に当接し、当該当接突部に係止されることにより、その回動部材が初期位置に復帰する。
【0011】
また、回動部材及びトーションスプリングの組み付け時には、その当接突部を乗り越えるかたちで係止突部を第1方向に移動させる。そして、そのトーションスプリングの端部(第2端部)が係止された係止突部を当接突部に係止して、トーションスプリングに捩りが加えられた状態で回動部材を初期位置に配置する。
【0012】
上記構成によれば、このとき、当接突部に設けられた傾斜面に案内されることで、円滑に、その係止突部が当接突部を乗り越えることができる。これにより、トーションスプリングが非捩り状態にある場合において、トーションスプリングの端部位置が当接突部の周方向位置に一致していなくとも、容易に、そのトーションスプリングに第1方向の捩りを加えつつ、当該トーションスプリングの端部が係止された係止突部を当接突部に係止して、回動部材を初期位置に配置することができる。また、併せて、その係止突部が当接突部を乗り越える際、トーションスプリングの端部が係止突部から脱離することを抑制することができる。その結果、簡素な構成にて、容易且つ確実に、その回動部材及びトーションスプリングを組み付けることができる。そして、そのトーションスプリングの品質管理に要求される精度が緩和されることによって、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
上記構成によれば、厳密な位置合わせを行うことなく、容易に、トーションスプリングの端部(第2端部)を係止突部に係止することができる。また、一連の動作において、そのトーションスプリングの端部が係止された係止突部を当接突部に係止して、回動部材を初期位置に配置することができる。その結果、より一層、その回動部材及びトーションスプリングの組み付け作業を容易化することができる。
【0015】
上記課題を解決するアクチュエータ装置は、前記第2端部は、前記第2方向に折り曲げられた鈎形状を有することが好ましい。
上記構成によれば、より確実に、その係止突部に対してトーションスプリングの端部(第2端部)を係止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡素な構成にて、容易且つ確実に、その回動部材及びトーションスプリングを組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アクチュエータ装置の平面図。
図2】アクチュエータ装置の平面図(第2保持部材非組み付け状態)。
図3】アクチュエータ装置の分解斜視図。
図4】トーションスプリング近傍の斜視図(初期位置)。
図5】トーションスプリング近傍の斜視図(第2端部係止前)。
図6】トーションスプリング近傍の斜視図(第2端部係止)。
図7】トーションスプリング近傍の斜視図(当接突部乗り越え前)。
図8】トーションスプリング近傍の斜視図(傾斜面当接)。
図9】トーションスプリング近傍の斜視図(当接突部乗り越え)。
図10】当接突部近傍の拡大図。
図11】(a)(b)カム体としてのホイールギヤ及びレバー部材の動作説明図。
図12】(a)(b)アクチュエータ装置及びロック機構の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、アクチュエータ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1図3に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、扁平略箱状をなすケース2を備えている。そして、駆動源となるモータ3及び減速機4は、このケース2内に収容されている。
【0019】
詳述すると、本実施形態のケース2は、開口部5aを有する第1保持部材5と、その第1保持部材5の開口部5aを閉塞する第2保持部材6と、を組み付けることにより形成されている。
【0020】
本実施形態では、第1保持部材5には、モータ保持部7が形成されている。そして、モータ3は、このモータ保持部7に保持されることにより、そのモータ軸3aが第1保持部材5の開口方向(図2中、紙面に直交する方向)に略直交する態様でケース2内に収容されている。
【0021】
また、本実施形態の減速機4は、モータ軸3aと一体に回転するウォームギヤ8と、当該ウォームギヤ8に噛合するホイールギヤ10とにより構成されている。即ち、本実施形態では、減速機4には、周知のウォーム&ホイールが採用されている。そして、第1保持部材5には、そのホイールギヤ10を回動自在に収容するホイール収容部11が設けられている。
【0022】
具体的には、本実施形態のホイール収容部11は、第1保持部材5と開口方向が一致する略円筒状に形成されている。また、このホイール収容部11の中央部には、その開口方向に延びる回動軸12が設けられている。そして、ホイールギヤ10は、この回動軸12に軸支された状態でホイール収容部11内に収容されている。
【0023】
また、図3及び図4に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、モータ駆動により回動するホイールギヤ10に捩じられて当該ホイールギヤ10を反モータ駆動方向に回動させることが可能な付勢力を発生するトーションスプリング20を備えている。
【0024】
即ち、本実施形態のアクチュエータ装置1において、回動部材としてのホイールギヤ10は、モータ3の駆動力に基づいて一方向に回動する。また、そのモータ駆動方向を「第1方向(図4中、時計回り方向)」とした場合、トーションスプリング20は、当該第1方向に捩じられることにより、その反モータ駆動方向となる「第2方向(図4中、反時計回り方向)」にホイールギヤ10を回動させるような付勢力を発生する。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、このトーションスプリング20の付勢力に基づいて、そのモータ駆動により回動したホイールギヤ10を初期位置P0に復帰させる構成となっている。
【0025】
詳述すると、本実施形態の第1保持部材5は、上記のようにホイール収容部11の中心部に設けられた回動軸12の基端側にトーションスプリング20のコイル部20cを収容するコイル収容部21を有している。本実施形態では、このコイル収容部21は、そのホイールギヤ10の回動軸12を同心円状に包囲する溝形状を有している。即ち、トーションスプリング20は、ホイール収容部11と同一方向に開口する略円環溝状のコイル収容部21に対し、そのコイル部20cを軸線方向から挿入する態様で第1保持部材5に取着される。そして、トーションスプリング20は、これにより、そのコイル部20cの径方向内側にホイールギヤ10の回動軸12が配置された状態で第1保持部材5に保持されるようになっている。
【0026】
また、図4に示すように、本実施形態の第1保持部材5は、トーションスプリング20の第1端部20aが係止される係止部23を備えている。具体的には、上記コイル収容部21の周縁部を構成する周壁部24には、そのコイル収容部21と同一方向(同図中、上側)に開口するスリット状の切欠き23aが形成されている。即ち、トーションスプリング20は、そのコイル部20cがコイル収容部21内に挿入される際、この切欠き23a内に第1端部20aが挿入されるようになっている。そして、本実施形態では、これにより、その切欠き23aが係止部23として機能する構成となっている。
【0027】
一方、図3及び図4に示すように、本実施形態のホイールギヤ10は、ホイール収容部11に設けられた回動軸12に軸支されることにより、当該回動軸12の基端側(図4中、下側)に保持されたトーションスプリング20に対し、その軸線方向において対向する位置に配置される。そして、そのトーションスプリング20との対向面には、当該トーションスプリング20の第2端部20bが係止される係止突部25が設けられている。
【0028】
本実施形態では、この係止突部25は、上記のようにコイル収容部21の周縁部を構成する周壁部24に対向する径方向位置(ホイールギヤ10の周縁部分)に形成されている。また、周壁部24には、ホイールギヤ10側に向かって突出する当接突部30が形成されている。即ち、係止突部25は、ホイールギヤ10が回動することにより、そのコイル収容部21に収容されたコイル部20cの径方向外側を周方向移動する。そして、当接突部30は、その周方向移動する係止突部25に対して当接可能な位置に設けられている。
【0029】
さらに詳述すると、図4に示すように、本実施形態の当接突部30は、上記第2方向に周方向移動する係止突部25に当接することにより当該第2方向における係止突部25の周方向移動を規制する規制面31を備えている。そして、本実施形態では、これにより、その回動部材を構成するホイールギヤ10の初期位置P0が規定されている。
【0030】
即ち、本実施形態のアクチュエータ装置1において、ホイールギヤ10は、非モータ駆動時、その係止突部25が当接突部30の規制面31に当接する位置に配置されている。そして、係止突部25は、モータ駆動によりホイールギヤ10が回動することによって、そのコイル収容部21の周縁部に形成された周壁部24に沿うように、第1方向に周方向移動する。
【0031】
また、このとき、トーションスプリング20は、ホイールギヤ10に捩じられることにより、当該ホイールギヤ10を第2方向に回動させることが可能な付勢力を発生する。尚、本実施形態のトーションスプリング20は、このように第1方向の捩りが加えられることによって、そのコイル部20cが巻き締められるように弾性変形する。そして、モータ駆動の停止後は、このトーションスプリング20の付勢力に基づいて、ホイールギヤ10が初期位置P0に復帰するようになっている。
【0032】
ここで、本実施形態では、トーションスプリング20には、その第1保持部材5に組み付けられた状態において、予め第1方向の捩りが加えられている。つまり、初期位置P0において、係止突部25は、そのトーションスプリング20が発生する付勢力に基づいて、当接突部30の規制面31に押し当てられた状態となっている。そして、本実施形態では、これにより、確実に、そのホイールギヤ10が初期位置P0まで復帰するように構成されている。
【0033】
詳述すると、図5及び図6に示すように、本実施形態のトーションスプリング20は、第1保持部材5に対する組み付け時、非捩り状態にある場合においては、その第2端部20bが当接突部30よりも第2方向側に配置されるように構成されている。また、ホイールギヤ10の係止突部25は、第2端部20bよりも第2方向側に配置される。そして、本実施形態では、これにより、ホイールギヤ10が第1方向に回動することで、その第2端部20bよりも第2方向側から第1方向に向かって周方向移動する係止突部25に対してトーションスプリング20の第2端部20bが係止されるようになっている。
【0034】
具体的には、トーションスプリング20の第2端部20bは、第2方向側に折り曲げられた鈎形状(略J字型)を有している。また、係止突部25の第1方向端25aは、その第2端部20bの鈎形状に対応する先細り形状(断面略半円形状)を有している。そして、本実施形態では、これにより、確実に、その係止突部25に対してトーションスプリング20の第2端部20bが係止されるように構成されている。
【0035】
また、図7図9に示すように、本実施形態では、この状態から更にホイールギヤ10が第1方向に回動することによって、その係止突部25が第2端部20bと一体に当接突部30を乗り越えて第1方向に周方向移動する。そして、図4に示すように、ホイールギヤ10は、これによりトーションスプリング20が発生する第2方向の付勢力に基づいて、その係止突部25が当接突部30の規制面31に当接する初期位置P0に配置されるようになっている。
【0036】
さらに詳述すると、図8及び図10に示すように、本実施形態の当接突部30は、第1方向に周方向移動する係止突部25に当接することにより、その第1方向に当接突部30を乗り越える係止突部25の周方向移動を案内可能な傾斜面32を備えている。
【0037】
具体的には、この傾斜面32は、当該傾斜面32に当接した係止突部25を上記回動軸12の軸線方向、先端側(各図中、上側)に押圧する(押し上げる)ように構成されている。これにより、係止突部25は、その傾斜面32上を摺動する態様で第1方向に移動する。そして、本実施形態では、これにより、円滑に係止突部25が当接突部30を乗り越えられるようにすることで、その組み付け作業の容易化が図られている。
【0038】
また、図2及び図3に示すように、本実施形態のホイールギヤ10は、その第1保持部材5の開口部5a側(図2中、紙面直交方向手前側)に位置する面が、螺旋状のカム山33aを有したカム面33となっている。また、第1保持部材5には、上記ホイールギヤ10の回動軸12に平行する支持軸34が設けられている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、このカム面33に当接する当接部35aを有して回動可能に支持軸34に支持されたレバー部材35を備えている。
【0039】
図11(a)(b)に示すように、このレバー部材35は、その回動中心となる支持軸34を挟んで反対方向に延びる第1レバー部36及び第2レバー部37を有している。また、このレバー部材35は、回動中心となる支持軸34を基端として、第1レバー部36と略直交する方向に延びる第3レバー部38を有している。そして、本実施形態では、この第3レバー部38の先端部分が、上記ホイールギヤ10のカム面33に対する当接部35aとなっている。
【0040】
詳述すると、本実施形態のレバー部材35は、図示しない付勢部材に付勢されることより、上記カム面33のカム山33aに対し、その当接部35aが径方向外側から当接するように構成されている。また、カム面33は、そのカム山33aの螺旋形状に基づいて、当該カム山33aに当接するレバー部材35の当接部35aがカム面33上を径方向移動するように構成されている。そして、本実施形態のレバー部材35は、これにより、そのカム面33に規定されたカムプロフィールに基づいて回動するように構成されている。
【0041】
具体的には、本実施形態では、カム体としてのホイールギヤ10は、第1方向に回動することにより、そのカム面33に当接するレバー部材35の当接部35aが径方向外側に向かって移動するように構成されている。そして、本実施形態のレバー部材35は、これにより、同図中、時計回り方向に回動するように構成されている。
【0042】
一方、ホイールギヤ10が第2方向に回動することにより、上記当接部35aは、径方向内側に向かって移動する。そして、本実施形態のレバー部材35は、これにより、同図中、反時計回り方向に回動するように構成されている。
【0043】
さらに詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、このレバー部材35の一部分がケース2の外側に配置されるように構成されている。具体的には、本実施形態のケース2は、図1に示されるように、その第1保持部材5及び第2保持部材6が組み付けられた状態において、上記支持軸34の軸線に対して交差する方向に位置する側面部分に開口部39を有している。そして、レバー部材35は、この開口部39を介することにより、その第1レバー部36の先端36aがケース2の外部に配置されるようになっている。
【0044】
図12(a)(b)に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、レバー部材35、詳しくは、その先端36aがケース2の外部に突出する第1レバー部36を出力部40として、ロック機構41を駆動する。
【0045】
具体的には、このロック機構41は、周面にストライカ42が係合する溝部43を有して回動可能に設けられたラッチ44と、このラッチ44に係合することにより当該ラッチ44の回動を規制してストライカ42との間の係合状態を保持することが可能なポール45と、を備えている。そして、アクチュエータ装置1は、その出力部40を構成するレバー部材35の第1レバー部36によって、ポール45のレバー部45aを押圧し、当該ポール45を回動させることにより、その第1ロック部材としてのラッチ44と第2ロック部材としてのポール45との係合状態を解除することが可能となっている。
【0046】
次に、上記のように構成されたアクチュエータ装置1の作用について説明する。
即ち、モータ駆動によりホイールギヤ10が第1方向に回動することで、当該ホイールギヤ10に連動してレバー部材35が回動する(図11(b)参照、同図中、時計回り方向)。本実施形態のアクチュエータ装置1は、このとき、そのケース2から突出した第1レバー部36(の先端36a)がポール45のレバー部45aを押圧して、その係合突部46がラッチ44から離間する方向にポール45を回動させる位置に配置される(図12(b)参照、同図中、反時計回り方向)。そして、これにより、ラッチ44とポール45との係合状態が解除されることでラッチ44の回動が許容され、その溝部43からストライカ42が脱離可能となることにより、ロック機構41がアンロック状態に移行する。
【0047】
また、モータ駆動の停止後は、トーションスプリング20の付勢力に基づいてホイールギヤ10が第2方向に回動する。そして、これによりホイールギヤ10が初期位置P0に復帰することで、当該ホイールギヤ10に連動するレバー部材35もまた、その第1レバー部36がポール45のレバー部45aを押圧可能な位置に復帰する(図11(a)及び図12(a)参照)。
【0048】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)トーションスプリング20は、その第1端部20aが第1保持部材5に設けられた係止部23に係止され、その第2端部20bが回動部材としてのホイールギヤ10に設けられた係止突部25に係止される。また、そのトーションスプリング20のコイル部20cを収容するコイル収容部21の周縁部分(周壁部24)には、ホイールギヤ10が回動することによりコイル部20cの径方向外側を周方向移動する係止突部25に対して当接可能な当接突部30が設けられる。そして、当接突部30は、第2方向における係止突部25の周方向移動を規制する規制面31と、第1方向に当接突部30を乗り越える係止突部25の周方向移動を案内可能な傾斜面32と、を備える。
【0049】
即ち、モータ駆動によりホイールギヤ10を第1方向に回動させることでトーションスプリング20が捩じられる。これにより、モータ駆動の停止後は、その第1方向に捩じられたトーションスプリング20の付勢力に基づいてホイールギヤ10が第2方向に回動する。そして、このとき、コイル部20cの径方向外側を周方向移動する係止突部25が当接突部30の規制面31に当接し、当該当接突部30に係止されることにより、ホイールギヤ10が初期位置P0に復帰する。
【0050】
また、ホイールギヤ10及びトーションスプリング20の組み付け時には、その当接突部30を乗り越えるかたちで係止突部25を第1方向に移動させる。そして、その第2端部20bが係止された係止突部25を当接突部30に係止することにより、トーションスプリング20に捩りが加えられた状態でホイールギヤ10を初期位置P0に配置する。
【0051】
上記構成によれば、このとき、当接突部30に設けられた傾斜面32に案内されることで、円滑に、その係止突部25が当接突部30を乗り越えることができる。これにより、トーションスプリング20が非捩り状態にある場合において、第2端部20bの周方向位置が当接突部30に一致していなくとも、容易に、トーションスプリング20に第1方向の捩りを加えつつ、その第2端部20bが係止された係止突部25を当接突部30に係止して、ホイールギヤ10を初期位置P0に配置することができる。また、併せて、その係止突部25が当接突部30を乗り越える際、その係止突部25に係止された第2端部20bの脱離を抑制することができる。その結果、簡素な構成にて、容易且つ確実に、そのホイールギヤ10及びトーションスプリング20を組み付けることができる。そして、そのトーションスプリング20の品質管理に要求される精度が緩和されることによって、製造コストの低減を図ることができる。
【0052】
(2)第1保持部材5に対する組み付け時、トーションスプリング20は、非捩り状態にある場合においては、その第2端部20bが当接突部30よりも第2方向側に配置される。また、ホイールギヤ10の係止突部25は、第2端部20bよりも第2方向側に配置される。そして、トーションスプリング20は、ホイールギヤ10が第1方向に回動することにより、その第2端部20bよりも第2方向側から第1方向に向かって周方向移動する係止突部25に対して第2端部20bが係止されるように構成される。
【0053】
上記構成によれば、厳密な位置合わせを行うことなく、容易に、トーションスプリング20の第2端部20bを係止突部25に係止することができる。また、その一連の動作において、トーションスプリング20の第2端部20bが係止された係止突部25を当接突部30に係止して、ホイールギヤ10を初期位置P0に配置することができる。その結果、より一層、そのホイールギヤ10及びトーションスプリング20の組み付け作業を容易化することができる。
【0054】
(3)トーションスプリング20の第2端部20bは、第2方向に折り曲げられた鈎形状を有する。そして、係止突部25の第1方向端25aは、その第2端部20bの鈎形状に対応する先細り形状を有する。
【0055】
上記構成によれば、より確実に、その係止突部25に対してトーションスプリング20の第2端部20bを係止することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、減速機(ウォーム&ホイール)4のホイールギヤ10をトーションスプリング20の付勢力に基づき第2方向に回動する回動部材としたが、この回動部材については任意に変更してもよい。例えば、減速機構とは独立に設けられたカム体や出力部材をカム体としてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、アクチュエータ装置1は、カム体としてのホイールギヤ10に連動して回動するレバー部材35(の第1レバー部36)を出力部40としてロック機構41を駆動することとした。しかし、これに限らず、その駆動対象は、任意に変更してもよい。そして、ロック機構41を駆動する場合についてもまた、そのロック機構41の構成、及び駆動態様は、どのようなものであってもよい。
【0058】
・上記実施形態では、ケース2は、第1保持部材5及び第2保持部材6を組み付けることにより形成される。そして、回動部材としてのホイールギヤ10及びトーションスプリング20は、その第1保持部材5に保持されることによりケース2内に収容されることとした。しかし、これに限らず、その保持部材の構成については、任意に変更してもよい。例えば、その回動部材やトーションスプリング20等が外部に露出した構成であってもよい。また、ケース2が1つ又は3つ以上の保持部材から形成されるものであってもよい。そして、回動部材及びトーションスプリングは、その何れの保持部材に保持されてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、コイル収容部21は、円環溝状に形成されることとしたが、その形状は、任意に変更してもよい。例えば、円筒状であってもよい。そして、そのコイル部20cの径方向外側となる位置に周壁部24を有しない構成であってもよい。
【0060】
・また、係止突部25が周壁部24上を摺動する構成としてもよい。これにより、その円滑な周方向移動を担保することができる。また、組み付け時には、非捩り状態にあるトーションスプリング20の第2端部20bを安定的に保持することができる。そして、これにより、その第2端部20bよりも第2方向側から第1方向に向かって周方向移動する係止突部25に対して、より確実に第2端部20bを係止することができる。
【0061】
・上記実施形態では、トーションスプリング20の第2端部20bは、第2方向側に折り曲げられた鈎形状(略J字型)を有し、係止突部25の第1方向端25aは、その第2端部20bの鈎形状に対応する先細り形状(断面略半円型)を有することとした。しかし、これに限らず、これらの形状は、任意に変更してもよい。
【0062】
・上記実施形態では、トーションスプリング20は、第1方向の捩りが加えられることによって、そのコイル部20cが巻き締められるように弾性変形することしたが、拡開する方向に弾性変形することで、その第2方向の付勢力を発生する構成であってもよい。
【0063】
・また、規制面31及び傾斜面32を有するものであれば、当接突部30の形状を変更してもよい。例えば、傾斜面32の傾斜角を調整する等によって、モータ駆動に基づきホイールギヤ10がトーションスプリング20の付勢力に抗して第1方向に回動することにより傾斜面32に係止突部25が当接した場合には、その当接突部30を乗り越えた第1方向における係止突部25の周方向移動を規制可能な構成としてもよい。
【0064】
即ち、トーションスプリング20が発生する第2方向の付勢力は、ホイールギヤ10が第1方向に大きく回動するほどに増大する。これを利用して、トーションスプリング20の付勢力によってモータトルクが弱められた状態では、ホイールギヤ10の係止突部25が乗り越えることができないように、その傾斜面32(の傾斜角)を設定する。そして、これにより、第1方向における係止突部25の周方向移動を規制することで、そのモータ駆動による第1方向の回動を制限するストッパーとして機能させることができる。
【0065】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記係止突部の第1方向端は、前記第2端部の鈎形状に対応する先細り形状を有すること、を特徴とするアクチュエータ装置。このような構成とすることで、より確実に、その係止突部に対してトーションスプリングの端部(第2端部)を係止することができる。
【0066】
(ロ)前記当接突部は、前記モータ駆動に基づき前記トーションスプリングの付勢力に抗して前記回動部材が前記第1方向に回動することにより前記傾斜面に前記係止突部が当接した場合には、前記当接突部を乗り越えた前記第1方向における前記係止突部の周方向移動を規制可能に構成されること、を特徴とするアクチュエータ装置。
【0067】
即ち、トーションスプリングが発生する第2方向の付勢力は、回動部材が第1方向に大きく回動するほどに増大する。そして、これを利用して、トーションスプリングの付勢力によってモータトルクが弱められた状態では回動部材の係止突部が当接突部を乗り越えることができないようにすることで、その当接突部を、モータ駆動による第1方向の回動を制限可能なストッパーとして機能させることができる。
【0068】
(ハ)前記回動部材は、カム面を有するカム体であり、前記係止突部は、前記カム面の裏側に形成されるものであって、前記カム面に対する当接部を有して回動可能に支持されたレバー部材を備えること、を特徴とするアクチュエータ装置。
【0069】
(ニ)前記レバー部材は、第1ロック部材に係合することにより該第1ロック部材の回動を規制する第2ロック部材を押圧して該第2ロック部材と前記第1ロック部材との係合を解除させるものであること、を特徴とするアクチュエータ装置。
【符号の説明】
【0070】
1…アクチュエータ装置、2…ケース、3…モータ、5…第1保持部材、8…ウォームギヤ、10…ホイールギヤ(回動部材及びカム体)、12…回動軸、14…カム面、20…トーションスプリング、20a…第1端部、20b…第2端部、20c…コイル部、21…コイル収容部、23…係止部、24…周壁部(周縁部分)、25…係止突部、25a…第1方向端、30…当接突部、31…規制面、P0…初期位置、32…傾斜面、33…カム面、33a…カム山、35…レバー部材、35a…当接部、36…第1レバー部、36a…先端(出力部)、38…第3レバー部(当接部)、40…出力部、41…ロック機構、42…ストライカ、43…溝部、44…ラッチ(第1ロック部材)、45…ポール(第2ロック部材)。
図1
図2
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