(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施の形態を列記して説明する。
【0014】
本発明者らは、ナノ多結晶ダイヤモンドを電子放出源として広く、また好適に用いることを目的に、ナノ多結晶ダイヤモンドの改良について検討した。
【0015】
具体的には、上述のナノ多結晶ダイヤモンドにおける電子放出機能を高めるべく、15族元素のドープ量を種々変化させた。しかし、ナノ多結晶ダイヤモンドにおける15族元素のドープ量を1×10
14〜1×10
20/cm
3程度の範囲で変化させても、電子銃から得られるエミッション電流に大きな変化は見られなかった。他にも、このナノ多結晶ダイヤモンドについて種々の検討を行ったが、やはり、電子銃から得られるエミッション電流に目的とするほどの大きな変化は見られなかった。
【0016】
そこで、本発明者らは、ブレイクスルーを図るべく、16族元素に着目した。16族元素は、業界内においてダイヤモンドへの十分なドープが不可能であると広く認識されている元素であり、実際、上記従来のCVD法によるダイヤモンドの製造では、電子放出源として加工可能なある程度の厚みを有する、すなわち薄層でないダイヤモンドであって、16族元素が均一かつ十分にドープされたダイヤモンドを得ることは困難である。このため、ダイヤモンドに対し、電子放出源としての機能を有するほどの高い濃度で16族元素をドープするような検討は、通常実行されない。
【0017】
上記常識に反し、本発明者らが16族元素を用いた検討を実行に移したところ、16族元素を従来と比して極めて高い濃度でナノ単結晶ダイヤモンドにドープできることを確認した。さらに、そのナノ単結晶ダイヤモンドを用いて検討を重ねることにより、高い電子放出機能を発揮できることを知見し、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、本発明は、炭素と、炭素により構成される結晶構造内にドープされた異種元素と、を含み、異種元素は、酸素以外の16族元素からなる群より選択される1種以上であり、異種元素の原子濃度は、1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満である、ナノ多結晶ダイヤモンドである。本発明のナノ多結晶ダイヤモンドは高い電子放出機能を有し、もって電子放出源として利用することができる。
【0019】
また、上記ナノ多結晶ダイヤモンドにおいて、ナノ多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶の粒径は500nm以下であることが好ましい。これにより、ナノ多結晶ダイヤモンドはより高い硬度を有することができるため、衝撃に対する高い耐久性を有し、もって、電子放出源としてのより高い特性を有することができる。
【0020】
また、上記ナノ多結晶ダイヤモンドにおいて、異種元素は硫黄であることが好ましい。これにより、ナノ多結晶ダイヤモンドはさらに耐酸化性を有し、もって、電子放出源としてのさらに高い特性を有することができる。
【0021】
また、上記ナノ多結晶ダイヤモンドは、電子銃の電子放出源に用いられることが好ましい。この場合、電子放出源としての高い特性を十分に発揮することができる。
【0022】
また、本発明は、上記ナノ多結晶ダイヤモンドを備える電子銃である。本発明の電子銃は、電子放出源としての高い特性を有する電子放出源を備えるため、電子銃としての高い性能を発揮することができる。
【0023】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係るナノ多結晶ダイヤモンドおよびこれを備える電子銃についてさらに詳細に説明する。
【0024】
<ナノ多結晶ダイヤモンド>
本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、炭素と、炭素により構成される結晶構造内にドープされた異種元素と、を含み、異種元素は、酸素以外の16族元素からなる群より選択される1種以上であり、異種元素の原子濃度は、1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満である。
【0025】
本明細書において、「ナノ多結晶ダイヤモンド」とは、多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンドの粒径、すなわち多結晶ダイヤモンドを構成する結晶単位の粒径がナノサイズである多結晶ダイヤモンドをいう。ナノサイズの単結晶ダイヤモンドとは、すなわち、1μm未満の粒径を有する単結晶ダイヤモンドの粒子である。なお、単結晶ダイヤモンドの「粒径」とは、粒子の最も長い径(長径)を意味し、本明細書において、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて測定された値を「粒径」として記載する。
【0026】
また、本明細書において、「結晶構造内にドープされた異種元素」とは、異種元素が、炭素同士が共有結合することによって構成されるダイヤモンドの結晶構造において、一部の炭素と置換された状態、換言すれば、結晶構造を構成する炭素と共有結合した状態で存在しており、原子レベルで結晶構造内に分散されている状態をいう。このような状態の異種元素は、結晶構造内でクラスター化した異種元素とは異なる。
【0027】
すなわち、「結晶構造内でクラスター化した異種元素」とは、異種元素である複数の原子が凝集した形態で結晶構造内に存在する。したがって、たとえば、ナノ多結晶ダイヤモンドがその結晶構造内にクラスター化した異種元素を含む場合、異種元素が結晶構造内に不均一に存在することになり、ナノ多結晶ダイヤモンドの均質性を低下させるとともに、結晶構造に大きな歪みをもたらし、結果的にナノ多結晶ダイヤモンドの硬度を低下させてしまう。
【0028】
これに対し、「結晶構造内にドープされた異種元素」は上述のように原子レベルで結晶構造内に分散されているため、「結晶構造内にドープされた異種元素」を含むナノ多結晶ダイヤモンドは、「結晶構造内でクラスター化した異種元素」を含むナノ多結晶ダイヤモンドと比して均質性の低下が抑制される。
【0029】
ナノ多結晶ダイヤモンドにおいて、異種元素が含まれるかどうかおよびその含有率(原子濃度)は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分析によって測定することができる。また、ナノ多結晶ダイヤモンドに異種元素が含まれる場合に、異種元素が原子レベルで結晶構造内に分散されているかどうかは、たとえば、(1)ナノ多結晶ダイヤモンド中に異種元素の結晶相が存在するかどうかを観察することによって、(2)ナノ多結晶ダイヤモンドにおける異種元素の原子濃度分布を測定することによって、(3)ナノ多結晶ダイヤモンドの導電性の有無を測定することによって、また、上記(1)〜(3)を適宜組み合わせることによって確認することができる。
【0030】
上記(1)に関し、原子レベルで結晶構造内に分散されている異種元素は、ダイヤモンドと異なる結晶相を構成しないため、異種元素の結晶相は観察されない。これに対し、クラスター化して存在する異種元素は、ダイヤモンドと異なる結晶相を構成するため、異種元素由来の上記結晶相が観察される。このような結晶相の有無は、たとえば、X線回折によって観察することができ、また、結晶相の大きさによっては、目視によっても観察することができる。
【0031】
上記(2)に関し、異種元素が原子レベルで結晶構造内に分散されている場合、クラスター化した状態で存在している場合と比して、異種元素の原子濃度分布は均一となる。このような原子濃度分布は、たとえば、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)によって測定することができる。結晶構造中の任意の2点において測定される異種元素の原子濃度差が所定の値以下である場合に、異種元素の原子濃度分布が均一であるとみなすことができ、異種元素は、原子レベルで結晶構造内に分散されている状態であり、クラスター化している状態ではないとみなすことができる。
【0032】
上記(3)に関し、ナノ多結晶ダイヤモンドに対し、X線回折によって異種元素の結晶相、グラファイトの結晶相の有無を確認し、さらに、ナノ多結晶ダイヤモンドの電気抵抗率(Ω・cm)を測定して導電性を確認する。いずれの結晶相も確認されず、かつ抵抗値が所定値以下である場合に、異種元素が原子レベルで結晶構造内に分散されているとみなすことができる。なお、本明細書において、電気抵抗率とは、JIS C2141に準じて測定される値とする。
【0033】
本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは高い電子放出機能を有するため、電子放出源として利用することができる。「電子放出機能」に関し、このナノ多結晶ダイヤモンドを電子銃の電子放出源として用いた場合に、電子銃から取り出されるエミッション電流が大きいほど、電子放出機能が高いとみなすことができる。本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドが高い電子放出機能を有する理由は明確ではないが、種々の検討結果を踏まえ、本発明者らは以下のように推察する。
【0034】
本発明者らは、15族元素をドープしたナノ多結晶ダイヤモンドと、16族元素をドープしたナノ多結晶ダイヤモンドを作製し、それぞれの電気抵抗率(Ω・cm)を測定したところ、各原子濃度が同程度であるにも関わらず、16族元素をドープしたナノ多結晶ダイヤモンドの電気抵抗率のほうが極めて低いことを確認した。この結果から、ナノ多結晶ダイヤモンド内において、15族元素由来の原子より、16族元素由来の原子のほうが電子を放出し易く、また電子にとって動き易いために、エミッション電流が3倍以上にまで高まるものと考えられる。
【0035】
さらに、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは後述する直接変換を利用することによって作製されるが、この方法によれば、ナノ多結晶ダイヤモンドにおける炭素の結晶構造内に、1×10
14/cm
3以上という高い濃度で16族元素をドープすることができる。16族元素がこのような高い濃度でドープされていることにより、ナノ多結晶ダイヤモンドは高い電子放出機能を有することができる。また、16族元素は15族元素と比して最外核に有する電子の数が1つ多いことも、高い電子放出機能に寄与しているものと考えられる。
【0036】
なお、これまでのダイヤモンド製造方法ではダイヤモンドの結晶構造中に16族元素をドープすることが難しく、ましてや、1×10
14/cm
3以上というような高濃度でのドープは実現できていなかった。そして、この理由として、これまでその原子の大きさが原因であると考えられていたが、本発明を完成するにあたり、CVD法によって16族元素がドープされた黒鉛を作製し、この黒鉛を直接変換することによって製造されるナノ多結晶ダイヤモンド中であれば、16族元素を均一にドープできることを知見した。この結果から、CVD法によって16族元素のドープが困難であることの理由は他にある可能性が推察される。
【0037】
また、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、上述の高い電子放出機能を長くかつ安定的に維持することができるため、電子放出源としての高い特性を有することができる。この特性により、電子放出源としての安定的な利用が可能となる。特に、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドにおける16族元素の原子濃度は、1×10
17/cm
3を超えることが好ましく、この場合、電子放出源としてのより高い特性を有することができる。
【0038】
さらに、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは高い硬度を有することができる。高い硬度を有することにより、それ自身の破損を抑制することができるため、そのハンドリングが簡便となり、また、種々の衝撃が加えられる電子放出源として利用した場合であっても、電子放出源自身の破損を抑制することができ、もって、長い使用寿命を有することができる。
【0039】
本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドが高い硬度を有する理由としては、多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンドがナノサイズであること以外に、(1)異種元素が炭素の結晶構造内にドープされていること、(2)異種元素の濃度が1×10
20/cm
3未満であることが関係しているものと考えられる。
【0040】
上記(1)に関し、上述のように、クラスター化した状態の異種元素は、結晶構造内に不均一に存在することになるため、ナノ多結晶ダイヤモンドの均質性を低下させるとともに、結晶構造に大きな歪みをもたらし、結果的にナノ多結晶ダイヤモンドの硬度を低下させてしまう。これに対し、ドープされた異種元素は、クラスター化した状態の異種元素と比して結晶構造内に均一に存在することができるため、ナノ多結晶ダイヤモンドの均質性の低下を抑制することができ、結果的にナノ多結晶ダイヤモンドの高い硬度を維持することができる。
【0041】
このため、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、好ましくはクラスター化した異種元素を含まない。これにより、ナノ多結晶ダイヤモンド中に存在する異種元素は全てドープされることとなり、全てが電子放出機能に寄与することができる。また、結晶構造に歪みをもたらすこともないため、ナノ多結晶ダイヤモンドの高い硬度も十分に維持することができる。また、クラスター化した状態の異種元素は電子放出機能に寄与しないだけでなく、それ自身の耐熱性が低いために、これを含むナノ多結晶ダイヤモンドは、これを含まないナノ多結晶ダイヤモンドよりも耐熱性が低下すると考えられる。
【0042】
また、上記(2)に関し、異種元素の原子濃度が高くなりすぎると、ナノ多結晶ダイヤモンドの硬度が低下する恐れがあるが、異種元素が1×10
20/cm
3未満の濃度で存在することにより、ナノ多結晶ダイヤモンドの高い硬度を維持することができる。なお、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドにおいては、異種元素は含有率によらず均一に分散されているので、ナノ多結晶ダイヤモンドにおいて局所的な特性のばらつきが生じることを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶の粒径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。この場合、高い硬度を維持しつつ、ナノ多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶の粒径のばらつきをより小さくすることができるため、より均質なナノ多結晶ダイヤモンドを提供することができ、もって電子放出源としての特性もまた、均質に有することができる。
【0044】
また、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、後述するナノ多結晶ダイヤモンドの製造方法により製造することができ、この製造方法によれば、単結晶の粒子間に結合剤を介在させることなく、粒子同士を強固に結合させることができる。このようなナノ多結晶ダイヤモンドは、結合剤により粒子同士を結合させた場合と比して、高い硬度を有することができる。したがって、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、結合剤を含有しないことが好ましい。
【0045】
また、後述する製造方法によれば、不可避不純物の混入量が十分に低いナノ多結晶ダイヤモンドを製造することができる。具体的には、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドにおいて、不可避不純物である各元素の各々の含有率を0.01質量%以下とすることができる。不可避不純物である各元素の各々の含有率が0.01質量%以下であることにより、単結晶粒界でのすべりを抑制することができ、単結晶粒同士の結合をより強固にすることができるため、ナノ多結晶ダイヤモンドの硬度をさらに高めることができる。
【0046】
また、不純物、特に水素(H)は、電子を強く捕捉してしまうため、電子放出機能を低減させる要因の一つとなるため、不純物の各含有率が低いことにより、このような電子放出機能を低減させる要因を除去することができる。したがって、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドにおいて、不可避不純物である各元素の各々の含有率は、0.01質量%以下であることが好ましい。なお、不可避不純物とは、Cおよび意図した異種元素以外の元素を意味し、上記水素の他、酸素(O)、シリコン(Si)、遷移金属などを挙げることができる。
【0047】
また、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドにおいて、異種元素は硫黄(S)であることが好ましい。この場合、ナノ多結晶ダイヤモンドは高い電子放出機能に加え、さらに高い耐酸化性を有することができる。一般的に、ダイヤモンドは耐酸化性が低く、大気中においては600℃程度で酸化される傾向にある。電子銃の電子放出源は、電子放出による発熱、加熱による高温環境下に曝されるため、ダイヤモンドを電子銃の電子放出源として利用する場合、その酸化を防ぐため、電子放出源の環境条件を高い真空度(圧力)、たとえば、10
-3Pa未満に維持する必要がある。
【0048】
これに対し、異種元素として硫黄を含むナノ多結晶ダイヤモンドは高い耐酸化性を有するため、低真空度、たとえば10
-3Pa以上という環境下での電子放出源としての利用が可能となる。本発明者らは、種々の検討により、硫黄を含むナノ多結晶ダイヤモンドを電子銃の電子放出源として利用する場合、10-2Paといった低真空度での利用が可能であることを確認している。なお、硫黄を含むナノ多結晶ダイヤモンド耐酸化性が高まる理由は明確ではないが、ナノ多結晶ダイヤモンドの表面に硫黄の酸化膜ができ、これが保護膜として機能している可能性が考えられる。
【0049】
また、本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、高い硬度、高い電子放出機能を有し、また、高い電子放出機能を長く維持することができるため、電子銃の電子放出源に好適に用いることができる。
【0050】
<電子銃>
本実施形態の電子銃は、電子放出源として上述のナノ多結晶ダイヤモンドを備える電子銃である。電子銃の構成は特に制限されず、少なくとも、電子放出源から電子の放出が可能な構成であればよく、熱電子放出型でも、電界放出型でもよい。また、電子放出源としてナノ多結晶ダイヤモンドを利用する際には、その形状を適宜加工する必要があるが、異種元素がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドは導電性を有するために放電加工が可能であることから、効率的な加工および精密な加工が可能である。
【0051】
本実施形態の電子銃によれば、電子放出源は高い硬度と高い電子放出機能を有するため、電子銃としての高い特性を有することができ、もって、高い性能を有することができる。また、電子放出源は上記に加え、さらに高い電子放出機能を長く維持することができるため、電子銃としての安定的な長期利用が可能となる。
【0052】
<ナノ多結晶ダイヤモンドの製造方法>
本実施形態のナノ多結晶ダイヤモンドは、たとえば、以下のようにして製造することができる。下記製造方法に関し、
図1および
図2を用いながら各工程について説明する。
【0053】
(準備工程)
本工程は、黒鉛を準備する工程であり、これにより、
図1に示すように、炭素と、炭素により構成される結晶構造内にドープされた異種元素とを含む黒鉛1を基材2上に作製する。作製された黒鉛1は後述する変換工程によってナノ多結晶ダイヤモンドへと変換され、黒鉛1における単結晶の粒径および黒鉛1における異種元素の原子濃度はナノ多結晶ダイヤモンドに関係する。したがって、黒鉛1は、黒鉛を構成する単結晶の粒径が10μm以下、より好ましくは5nm以下であり、黒鉛における異種元素の原子濃度が1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満、より好ましくは1×10
18/cm
3以上1×10
20/cm
3以下となるように作製される。このような黒鉛1は、たとえば、以下のCVD法を用いることにより基材2上に形成することができる。
【0054】
(CVD法)
まず、真空チャンバ内に、その主面上に黒鉛を気相成長させるための基材2を配置する。基材2の材料としては、1500℃〜3000℃程度の温度に耐え得る材料であれば、いかなる金属、無機セラミック材料、炭素材料を用いてもよい。ただし、ナノ多結晶ダイヤモンドの原材料となる黒鉛に混入する不純物を低減するという観点から、また、所望の結晶構造の黒鉛を作製する観点から、少なくとも基材の主面は黒鉛である。
【0055】
次に、真空チャンバ内に配置された基材2を1500℃以上3000℃以下程度の温度で加熱する。加熱方法としては公知の方法を採用することができ、たとえば、基材2を直接あるいは間接的に加熱可能なヒータを真空チャンバに設置する方法が挙げられる。
【0056】
次に、真空チャンバ内に、炭化水素ガスと、異種元素を含むガスとを導入する。このとき、真空チャンバ内の真空度(圧力)を大気圧以下にする。これにより、炭化水素ガスと異種元素を含むガスとを、真空チャンバ内で均一に混合させることができる。
【0057】
炭化水素ガスとしては、エタン、ブタン、メタンなどを用いることができ、分子量が小さく取り扱いが容易という観点から、メタンを用いることが好ましい。また、異種元素を含むガスとしては、異種元素の水素化物からなるガス、異種元素を含む炭化水素ガス、異種元素を含むハロゲン化物ガスを用いることが好ましい。異種元素の水素化物からなるガスを用いた場合、当該ガスを高温中で容易に分解することができるため、効率的に異種元素を基材上に供給することができる。また、異種元素を含む炭化水素ガスを用いた場合、既に炭素と結合した状態の異種元素を基材上に供給することができるため、より効率的に異種元素を黒鉛中にドープさせることができる。また、異種元素を含むハロゲン化物ガスを用いた場合、異種元素以外の元素であるハロゲンを混入させることなく、異種元素を含むグラファイトを合成することができる。
【0058】
たとえば、異種元素としてSをドープさせる場合には、硫化水素(H
2S)、硫化ジメチル(C
2H
6S)などを用いることが好ましく、Seをドープさせる場合には、セレン化水素(H
2Se)、セレン化ジメチル(C
2H
6Se)などを用いることが好ましく、Teをドープさせる場合には、テルル化水素(H
2Te)、テルル化ジメチル(C
2H
6Te)などを用いることが好ましく、Poをドープさせる場合には、ポロニウム化水素(H
2Po)、ポロニウム化ジメチル(C
2H
6Po)などを用いることが好ましい。
【0059】
そして、混合されたガスを1500℃以上の温度で熱分解することにより、基材の主面上に、炭素と、炭素により構成される結晶構造内にドープされた異種元素とを含む黒鉛、換言すれば、16族元素が原子レベルで結晶構造内に分散して存在する黒鉛1が形成される。
【0060】
上記CVD法において、黒鉛1に含まれる単結晶の粒径を10μm以下にするために、基材2の表面の素材に関し、粒径が10μm以下の単結晶の粒子からなる多結晶体、または粒径が10μm以下の炭素の微粒子からなる焼結体とする。単結晶の粒径を10μm以下にすることにより、直接変換により製造されるナノ多結晶ダイヤモンドにおける単結晶の粒径を1μm未満に抑えることができる。また、黒鉛1に含まれる単結晶の粒径を10nm以上700nm以下に調製することにより、ナノ多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶の粒径を10nm以上500nm以下にすることができる。なお、黒鉛1の構成は、単結晶を一部に含み、他の部分がアモルファス、不定形、カーボンナノチューブ、フラーレンといった状態である構成でもよく、単結晶から構成される多結晶であってもよい。より粒径が均一なナノ多結晶ダイヤモンドを得るためには、上記各状態のうちの1つ以上の状態がランダムに配置された構成、または入り組んだ構成の黒鉛1を形成することが好ましい。
【0061】
また、上記CVD法において、黒鉛1における異種元素の原子濃度を1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満にするために、炭化水素ガスと異種元素を含む各ガスとの混合割合を調製する。具体的には、炭化水素ガスに対する異種元素を含むガスの混合割合を大きくすることにより、黒鉛1における異種元素の原子濃度を大きくすることができる。また、異種元素を含むガスの種類を変えることによっても、異種元素の原子濃度を調製することができる。黒鉛1における異種元素の原子濃度を1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満にすることにより、ナノ多結晶ダイヤモンドにおける異種元素の原子濃度を1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満にすることができる。
【0062】
本工程において、上記CVD法を用いることにより、基材2上に、炭素と、炭素により構成される結晶構造内にドープされた異種元素とを含む黒鉛1であって、該黒鉛1に含まれる単結晶の粒径が10μm以下であり、異種元素の原子濃度が1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満である黒鉛1が形成される。換言すれば、16族元素(酸素以外)が1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満の原子濃度で結晶構造内に原子レベルで分散して存在し、かつ単結晶の粒径が10μm以下である黒鉛1が、基材2上に気相成長される。
【0063】
また、本工程で準備される黒鉛に関し、厚み方向および面内方向のいずれにおいても、異種元素が均一にドープされていること、すなわち、黒鉛中における異種元素の原子濃度分布が均一であることが好ましい。黒鉛中に均一に異種元素がドープされていることにより、後述する変換工程によって製造されるナノ多結晶ダイヤモンドにおける異種元素の分布を均一にすることができる。
【0064】
異種元素の各原子濃度分布を均一にするためには、炭化水素ガスと、異種元素を含むガスとを同時に真空チャンバ内に導入することが好ましい。これにより、各ガスを容易に均一に混合することができ、異種元素が均一にドープされた黒鉛を効率的に基材上に形成することができる。また、各ガスは、基材の主面の真上方向から基材の主面に向けて供給してもよく、基材の主面に対して斜め方向あるいは水平方向から基材に向けて供給してもよい。より効率的に、かつより均一に異種元素をドープするという観点からは、基材の主面の真上方向から基材の主面に向けて供給することが好ましい。また、さらに効率的に、かつさらに均一に異種元素をドープすべく、真空チャンバ内に、炭化水素ガスおよび異種元素を含むガスを基材の主面上に導く案内部材を設けてもよい。
【0065】
また、本工程で準備される黒鉛に関し、その密度は、好ましくは0.8g/cm
3以上2.2g/cm
3以下であり、より好ましくは1.4g/cm
3以上2.1g/cm
3以下である。黒鉛の密度が0.8g/cm
3以上の場合、後述する変換工程において、黒鉛がナノ多結晶ダイヤモンドに直接変換されるときの体積の変化を十分に小さくすることができるため、製造されるナノ多結晶ダイヤモンドに割れが発生する確率を抑制することができ、また、装置内の環境の変化を抑制することができ、結果的に、製造歩留まりを向上させることができる。特に、本発明者らは、各種実験を行うことにより、準備される黒鉛の密度が、0.8g/cm
3以上2.2g/cm
3以下の場合に、黒鉛の密度がこの範囲外の場合と比して、製造されるナノ多結晶ダイヤモンドに割れが発生する確率を1/2以下にできることを確認している。
【0066】
黒鉛の密度は、たとえば、黒鉛を基材の主面上に成長させる際の温度(℃)、各ガスの導入速度(sccm)によって調製することができる。具体的には、温度を高くすることにより、また、炭化水素の導入速度を速めることにより、黒鉛の密度を大きくすることができる。
【0067】
また、本工程で準備される黒鉛に関し、不可避不純物の含有量が低いことが好ましく、具体的には、不可避不純物である各元素の各々の含有率が0.01質量%以下であることが好ましい。これは、黒鉛における不可避不純物の含有量が、製造されるナノ多結晶ダイヤモンドに引き継がれるためである。また、不可避不純物の濃度を低く抑えることにより、不可避不純物の存在に起因する粒成長を抑制することができるため、黒鉛中により均一な大きさの単結晶を含有させることができる。なお、SIMS分析、ICP分析など、黒鉛中の不可避不純物の含有量を測定可能な分析に用いられる分析装置は、一般的に、検出限界が0.01質量%であるため、含有率が0.01質量%以下の元素は、上記分析装置において検出されないことになる。
【0068】
黒鉛への不可避不純物の混入は、ガスを熱分解する際の真空チャンバ内の真空度を比較的高く設定することによって抑制することができる。具体的には、本発明者らは、真空チャンバ内の圧力を13kPa以上40kPa以下に維持することにより、不可避不純物である各元素の各々の含有率を0.01質量%以下に制御できることを知見している。
【0069】
なお、上記CVD法では、基材を加熱した後に、真空チャンバ内に混合ガスを導入する方法について説明したが、混合ガスを導入した後に、基材を加熱する方法を用いてもよく、同時に行ってもよい。
【0070】
(変換工程)
本工程は、準備工程で形成された黒鉛を焼結させてナノ多結晶ダイヤモンドに直接変換させる工程であり、これにより、
図2に示すように、ナノ多結晶ダイヤモンド3を、基材2上に作製する。
【0071】
具体的には、まず、
図1に示す基材2上の黒鉛1を、高温高圧装置に配置する。高温高圧装置とは、装置内部に黒鉛を配置することができ、かつ、該内部を上記のような条件下に制御可能な装置であればよく、たとえば、CVD法に用いる真空チャンバを用いることができる。
【0072】
そして、この黒鉛1を、1500℃〜2500℃、および7GPa〜30GPaという高温高圧件下に曝す。これにより、黒鉛1は瞬間的に焼結され、
図2に示すように、ナノ多結晶ダイヤモンド3へと変換される。この場合、ナノ多結晶ダイヤモンド3の形状は、わずかな体積変化を除き、黒鉛1の形状を引き継ぐことになる。なお、黒鉛1から基材2を取り除いた後に、黒鉛1のみを高温高圧条件下に曝してもよく、この場合にも、製造されるナノ多結晶ダイヤモンドは、基本的に黒鉛1の形状を引き継ぐことになる。
【0073】
本工程において、焼結助剤、触媒、結合剤などの添加剤を用いないことが好ましい。本工程によれば、添加剤を用いなくても、単結晶が強固に結合したナノ多結晶ダイヤモンドを製造することができ、添加剤を用いないことにより添加剤を用いた場合と比してより高い硬度のナノ多結晶ダイヤモンドを製造することができる。
【0074】
以上詳述した製造方法によれば、上述の特徴を有するナノ多結晶ダイヤモンド、すなわち、炭素と、炭素により構成される結晶構造内にドープされた異種元素と、を含み、異種元素は、酸素以外の16族元素からなる群より選択される1種以上であり、異種元素の原子濃度は、1×10
14/cm
3以上1×10
20/cm
3未満である、ナノ多結晶ダイヤモンドを製造することができる。
【0075】
また、上記製造方法によれば、異種元素は黒鉛中に均一に分散するため、黒鉛からダイヤモンドに直接変換する際に、ダイヤモンドの結晶粒が局所的に異常成長するのを効果的に抑制することができる。これにより、ナノ多結晶ダイヤモンドを構成する単結晶の粒径をより均一にすることができ、結果的に、上記特徴を均一に有する、均質なナノ多結晶ダイヤモンドを製造することができる。また、製造されたナノ多結晶ダイヤモンドを所望の形状に加工することによって、電子放出源としてのナノ多結晶ダイヤモンドを作製することができる。
【実施例】
【0076】
<電子放出特性について>
実施例1および2において、以下に詳述するように、CVD法で黒鉛を作製し、得られた黒鉛に関して、以下の方法により単結晶の粒径の測定、密度の測定、および異種元素の含有率の測定を行った。その後、当該黒鉛を直接変換してナノ多結晶ダイヤモンドを作成し、得られたナノ多結晶ダイヤモンドに関して、以下の方法により単結晶の粒径の測定、X線回折スペクトルの測定、ヌープ硬度の測定、電気抵抗率の測定を行った。また、得られたナノ多結晶ダイヤモンドを放電加工により加工し、これを電子銃の電子放出源に用いて電子放出特性を測定した。
【0077】
(密度の測定)
アルキメデス法を用いて黒鉛の密度を測定した。
【0078】
(単結晶の粒径の測定)
電子顕微鏡を用いて得たSEM像における各単結晶の粒径を実測した。
【0079】
(異種元素の含有率の測定)
ICP−MS分析装置を用いて、各元素の含有率を測定した。
【0080】
(X線回折測定)
X線回折装置により、X線回折スペクトルを得た。
【0081】
(ヌープ硬度の測定)
マイクロヌープ硬度計により、測定荷重を4.9Nとしてヌープ硬度を測定した。
【0082】
(電気抵抗率の測定)
抵抗率測定器により、温度20℃での電気抵抗率を測定した。
【0083】
(エミッション電流の測定)
製造されたナノ多結晶ダイヤモンドを直径6μm、長さ25μmの円柱形状に加工し、さらにその一端を先細形状(針状)に加工し、これを電子放出源として電子線描画装置にセットした。そして、電子放出源温度800℃、引き出し電圧5kV、加速電圧20kVの条件で上記装置を動作させ、エミッション電流の値を測定した。
【0084】
(実施例1)
まず、真空チャンバ内に、単結晶のダイヤモンドからなる基材を配置した。次に、真空チャンバ内の基材を1900℃で加熱し、そして、真空チャンバ内の真空度を13kPaとして、真空チャンバ内にメタンガスを100sccm、硫化水素ガスを50sccmで供給しこれを6時間継続した。これにより、基材の主面上に約2000μmの厚みを有する、硫黄がドープされた黒鉛が形成された。
【0085】
形成された黒鉛は、密度が2.0g/cm
3であり、単結晶の粒径が各々100nm〜10μmであり、硫黄の原子濃度は3×10
19/cm
3(0.06質量%)であった。
【0086】
次に、形成された基材上の黒鉛を、2200℃、15GPaの高温高圧環境下に曝すことにより、黒鉛をダイヤモンドに直接変換し、硫黄がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドを製造した。
【0087】
製造されたナノ多結晶ダイヤモンドは、単結晶の粒径が各々10〜100nmであり、X線回折スペクトルにおいてダイヤモンドの単結晶以外の結晶相は観察されず、ヌープ硬度が120GPaであった。また、ナノ多結晶ダイヤモンドから3mm×1mm(厚さ1mm)の大きさの基板を切り出し、この電気抵抗率を測定したところ、その値は1kΩ・cmあった。
【0088】
また、これを電子放出源とした場合のエミッション電流を測定したところ、得られたエミッション電流の値は470μAであり、さらに、このような高い値の電流を定常的に取り出すことができた。また、10回の放電を繰り返し行ったが、電子放出源が衝撃によって折れることはなかった。さらに、10回の放電後に再度エミッション電流の測定を50時間に亘って行ったところ、エミッション電流は150±10μAであり、その変化は少なく、安定的であることがわかった。
【0089】
(実施例2)
硫化水素ガスの代わりに硫化ジメチルガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、硫黄がドープされた黒鉛を形成した。形成された形成された黒鉛に関し、密度が2.0g/cm
3、粒径が100nm〜10μm、硫黄の原子濃度が2×10
20/cm
3(0.5質量%)であることが確認された。そして、実施例1と同様の方法により、形成された基材上の黒鉛をダイヤモンドに直接変換し、硫黄がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドを製造した。
【0090】
製造されたナノ多結晶ダイヤモンドは、単結晶の粒径が各々10〜100nmであり、X線回折スペクトルにおいてダイヤモンドの単結晶以外の結晶相は観察されず、ヌープ硬度が120GPaであった。また、ナノ多結晶ダイヤモンドから3mm×1mm(厚さ1mm)の大きさの基板を切り出し、この電気抵抗率を測定したところ、その値は10mΩ・cmであった。
【0091】
また、これを電子放出源とした場合のエミッション電流を測定したところ、得られたエミッション電流の値は850μAであり、さらに、このような高い値の電流を定常的に取り出すことができた。また、10回の放電を繰り返し行ったが、電子放出源が衝撃によって折れることはなかった。さらに、10回の放電後に再度エミッション電流の測定を50時間に亘って行ったところ、エミッション電流は850±10μAであり、その変化は少なく、安定的であることがわかった。
【0092】
(比較例1)
粒径2μm以下の黒鉛の粉末と硫黄の粉末とを混合し、該混合物を2000℃で焼成することにより、硫黄が固溶された固体炭素を作製した。この黒鉛中の硫黄の原子濃度は3×10
20/cm
3(0.5質量%)であった。この黒鉛を、2200℃、15GPaの高温高圧環境下に曝すことにより、硫黄を含有する多結晶ダイヤモンドを製造した。
【0093】
製造された多結晶ダイヤモンドについて、SEM観察により、単結晶の粒径が各々100μm〜500μmであって、粒径に大きなばらつきがあることが確認された。また、目視により、この多結晶ダイヤモンド中には、不透明な部分と透明な部分とが存在することが確認され、X線回折スペクトルにおいて、不透明な部分が硫黄による結晶相であり、透明な部分が炭素による結晶相であることが確認された。また、透明な部分のヌープ硬度は100GPaであり、不透明な部分のヌープ硬度が60GPaであった。
【0094】
また、ナノ多結晶ダイヤモンドから3mm×1mm(厚さ1mm)の大きさの基板を切り出し、この電気抵抗率を測定したところ、その値は800kΩ・cmであった。なお、これを電子放出源としてエミッション電流を測定しようとしたが、測定可能な程度に電流を流すことができなかった。
【0095】
<耐酸化性について>
異種元素がドープされていないナノ多結晶ダイヤモンドと、硫黄がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドとを製造し、これらの耐酸化性を観察した。
【0096】
(実施例3)
硫黄がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドに関し、実施例2と同様の方法により、硫黄がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドを製造した。そして、ナノ多結晶ダイヤモンドから3mm×1mm(厚さ1mm)の大きさの基板を2つ切り出し、それぞれを大気圧環境下で600℃および1000℃で1時間加熱した。
【0097】
基板を大気圧環境下において600℃で1時間加熱した後、その質量を測定したところ、加熱前後で質量の変化は見られなかった。また、基板を大気圧環境下において1000℃で1時間加熱した後、その質量を測定したところ、加熱前後で質量の変化は見られなかった。この結果から、硫黄がドープされたナノ多結晶ダイヤモンドが高い耐酸化性を有することが確認された。
【0098】
(比較例2)
異種元素がドープされていないナノ多結晶ダイヤモンドに関し、硫化ジメチルガスを導入しなかった以外は、実施例2と同様の方法により製造した。そして、ナノ多結晶ダイヤモンドから3mm×1mm(厚さ1mm)の大きさの基板を2つ切り出し、それぞれを大気圧環境下で600℃および1000℃で1時間加熱した。
【0099】
基板を大気圧環境下において600℃で1時間加熱した後、その質量を測定したところ、加熱前後で質量が10%減少していた。また、基板を大気圧環境下において1000℃で1時間加熱したところ、基板は燃焼に伴い消失した。
【0100】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。