(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像から前記対象の位置を特定するための位置特定マークを少なくとも2つ以上検出し、検出した当該位置特定マークの位置に基づいて、前記格子パターンの向きが前記画像の画素の配列方向と一致するように前記画像を回転させる画像回転部をさらに備え、
前記マスク処理部は、前記画像回転部により回転処理された前記画像に含まれる前記所定領域に対してマスク処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の形状解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、本発明をタイヤの形状の解析に用いる場合を例にして、本発明を実施する一実施の形態について説明する。
【0012】
なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、以下に説明する実施形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、以下に説明する実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1にかかる形状解析システムを示す構成図である。
図2は、実施形態1にかかる形状解析装置の機能構成を示すブロック図である。これらの図において、
図1は、形状解析システムの全体構成を模式的に示し、
図2は、形状解析装置が有する主たる機能を示している。
【0014】
この形状解析システム1は、所定条件を入力したときのタイヤ形状の変化やタイヤ表面歪みの変化を測定することにより、タイヤの挙動解析(タイヤの応答性評価)等を行うシステムに適用される。形状解析システム1は、タイヤ試験機2と、撮影装置3と、形状解析装置100とを備える(
図1参照)。
【0015】
タイヤ試験機2は、試験タイヤに試験条件を付与する装置であり、例えば、ドラム式タイヤ試験機、ベルト式タイヤ試験機などにより構成される。
図1の構成では、タイヤ試験機2が、ドラム式タイヤ試験機であり、支持装置21と、駆動装置22とを有する。支持装置21は、試験用タイヤ10を回転可能に支持する装置であり、試験用タイヤ10を装着するリム211を有する。駆動装置22は、試験用タイヤ10に駆動力を付与する装置であり、回転ドラム221と、回転ドラム221を駆動するモータ222と、モータ222を駆動制御するモータ制御装置223とから構成される。
【0016】
このタイヤ試験機2では、支持装置21が、試験用タイヤ10をリム211に装着して支持し、試験用タイヤ10を駆動装置22の回転ドラム221に押圧して試験用タイヤ10に荷重を付与する。また、支持装置21が、リム211を変位させて試験用タイヤ10と回転ドラム221との位置関係を調整することにより、試験用タイヤ10にスリップ角およびアングル角などを付与する。また、駆動装置22が、モータ制御装置223によりモータ222を駆動して回転ドラム221を回転させることにより、試験用タイヤ10に回転速度を付与する。これにより、車両走行時におけるタイヤの転動状態が、回転ドラム221の周面を路面として再現される。また、支持装置21および駆動装置22が、上記の荷重、回転速度、スリップ角、アングル角などを調整することにより、試験条件を変更できる。
図1に示す例では、試験用タイヤ10のタイヤ周上に複数の解析用格子面SA(SA#1〜SA#n)が円状に付されている。解析用格子面SAは、ほぼ同一形状のマークが周期性をもって格子状に配置される格子パターンを有するシートである。例えば、解析用格子面SAは、所定の間隔でマトリクス状に配列された所定のサイズの複数のマークを有する。マークの形状、サイズ、および間隔は、特に限定されるものではない。また、マークの形状は、例えば、円形、正方形、長方形、三角形、星形などの任意の形状を用いることができる。
【0017】
撮影装置3は、一対のカメラ31と、一対の照明用ランプ32とを有する。カメラ31は、試験用タイヤ10を撮影する手段であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ31は、例えば、高速度カメラである。また、一対のカメラ31が、試験用タイヤ10を相互に異なる方向から撮影できる位置に配置される。これらのカメラ31は、試験用タイヤ10を左右方向から同時に撮影して、タイヤ画像(試験用タイヤ10のデジタル画像データ)を生成する。照明用ランプ32は、カメラ31の撮影範囲を照らすランプであり、例えば、ハロゲンランプにより構成される。これらの照明用ランプ32は、常時点灯タイプであっても良いし、フラッシュ点灯タイプであっても良い。
【0018】
形状解析装置100は、所定の解析プログラムを読み込んで実行することにより、撮影装置3により撮影されるタイヤ画像を画像処理して形状解析処理を行うPC(Personal Computer)などである(
図2参照)。形状解析装置100は、マークが格子状に配置された格子パターンを付された対象を撮影したデジタル画像(タイヤ画像)に基づいて、対象の形状を解析する。
【0019】
図2に示すように、形状解析装置100は、記憶部110と、制御部120と、表示部130と、操作部140とを備える。
【0020】
記憶部110は、制御部120による各種処理に必要なデータ及びプログラムを記憶する。記憶部110は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置およびフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)、又はRAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成される。
【0021】
記憶部110は、解析範囲決定プログラム110a、形状解析プログラム110b、及び画像データ110cを記憶する。
【0022】
解析範囲決定プログラム110aは、撮影装置3により撮影されたタイヤ画像の画像データ110cから解析範囲を決定するための機能を提供する。形状解析プログラム110bは、タイヤ画像を画像処理して形状解析処理を行うための機能を提供する。画像データ110cは、試験用タイヤ10のデジタル画像データである。
【0023】
制御部120は、記憶部110に記憶されているデータ及びプログラムに基づいて各種処理を実行する。制御部120は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置である。
【0024】
制御部120は、解析範囲決定部121及び形状解析部122を有する。解析範囲決定部121は、記憶部110に記憶されている解析範囲決定プログラム110aを読み込んで実行することにより、撮影装置3により撮影されたタイヤ画像の画像データを記憶部110から読み込んで、読み込んだ画像データから解析範囲を決定するための処理を実現する。形状解析部122は、記憶部110に記憶されている形状解析プログラム110bを読み込んで実行することにより、タイヤ画像を画像処理して形状解析処理を実現する。
【0025】
以下、
図3及び
図4を用いて、制御部120により実行される処理について説明する。
図3は、解析範囲決定部の機能構成を示すブロック図である。
図4は、制御部により実行される処理を説明するための図である。
【0026】
図3に示すように、解析範囲決定部121は、フーリエ変換処理部121aと、フィルタリング処理部121bと、逆フーリエ変換処理部121cと、パワースペクトル算出部121dと、閾値設定部121eと、解析範囲抽出部121fとを有する。解析範囲決定部121は、以下に説明するように、主にフィルタリング処理部121bの機能によって、試験用タイヤ10に付された格子パターンの向きが、形状解析部122による形状解析を効率的に実行可能な方向に一致する領域をタイヤ画像の画像データから抽出して解析範囲に決定する。
【0027】
具体的には、
図4に示すように、フーリエ変換処理部121aは、記憶部110に記憶されている画像データ110cから処理対象となる画像データD1を読み込む(ステップS1)。続いて、フーリエ変換処理部121aは、画像データD1において処理領域PAの切り出しを検出すると、処理領域PAに対応する画像データD2を取得し(ステップS2)、取得した画像データD2についてフーリエ変換処理を実行する(ステップS3)。
【0028】
続いて、フィルタリング処理部121bは、フーリエ変換処理部121aによる処理データD3から、特定の周波数成分に対応する領域を抽出するフィルタリング処理を実行する(ステップS4〜ステップS5)。具体的には、フィルタリング処理部121bは、所定方向に複数配置されるマークによって構成されるマークの列が一定の間隔で隣り合うことによって生み出されるある規則的な周波数成分に対応する領域を、格子パターンが水平格子をなす領域として処理データD3から抽出する。例えば、フィルタリング処理部121bは、処理データD3に含まれる領域A1〜領域A4の中から、領域A4を格子パターンの水平方向の周波数成分に対応する領域として抽出する。
【0029】
続いて、逆フーリエ変換処理部121cは、フィルタリング処理部121bによる処理データD4を逆フーリエ変換し、パワースペクトル算出部121dは、逆フーリエ変換処理部121cによる処理結果に基づいて、上記画像データを構成する画素ごとのパワースペクトルの計算結果D5を出力する(ステップS6)。
【0030】
続いて、閾値設定部121eは、パワースペクトル算出部121dによる画素ごとのパワースペクトルに対して閾値を設定し(ステップS7)、解析範囲抽出部121fは、閾値設定部121eによる閾値の設定結果に対して膨張処理及び収縮処理を行うことで、形状解析部122による形状解析を実行するための解析範囲を抽出する(ステップS8)。形状解析部122は、解析範囲抽出部121fにより解析範囲が抽出されたデータD6に基づいて形状解析処理を実行し、解析結果D7を出力する(ステップS9)。
【0031】
以下、
図5〜
図8を用いて、上記フィルタリング処理部121bの処理について説明する。
図5〜
図8は、フィルタリング処理について説明するための図である。なお、
図5〜
図8は、フィルタリング処理部の処理について説明するための概念的なものであり、実際の処理における画像データとは、マークの配置および格子パターンの方向などが必ずしも一致するものではない。また、以下の
図5〜
図8の説明において、格子パターンを構成する複数のマークが、
図5〜
図8に示すX軸及びY軸の方向と略平行な方向に並んで配置される場合の格子パターンを水平格子と表記し、それ以外の方向にマークが並んで配置される場合の格子パターンを斜め格子と表記する。
【0032】
図5は、試験用タイヤと試験用タイヤに付された格子パターンを概念的に示している。例えば、タイヤ画像の画像データから処理領域として、
図5に示す処理領域PAが切り出された場合に、処理領域PAに含まれる領域C1〜C3において、マークM1が格子状に配置された格子パターンが形成する周波数成分について、
図6〜
図8を用いて順に説明する。
【0033】
図6は、
図5に示す領域C1における格子パターンを拡大して示している。
図6に示すように、領域C1では、第1の方向(例えば、
図6に示すY軸の方向に略平行な方向)に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列が、第2の方向(例えば、
図6に示すX軸の方向に略平行な方向)におおよそ一定の間隔で隣り合って存在する。つまり、試験用タイヤ10の表面が滑らかな曲面であっても、また、試験用タイヤ10に荷重が作用していても、マークM1の列が第2の方向に隣り合う間隔には影響がない。このため、マークM1の列が、第2の方向におおよそ一定の間隔で隣り合って存在する領域C1には、ある規則的な周波数成分が生み出される。そこで、フィルタリング処理部121bは、マークM1の列が第2の方向におおよそ一定の間隔T1で隣り合うことによって生み出されるある規則的な周波数成分に対応する領域を、格子パターンが水平格子をなす領域(
図4に示す領域A4)として処理領域PAから抽出する。
【0034】
図7は、
図5に示す領域C2における格子パターンを拡大して示している。
図7に示すように、領域C2では、第1の方向(例えば、
図6に示すY軸の方向に略平行な方向)に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列が、第2の方向(例えば、
図6に示すX軸の方向に略平行な方向)に異なる間隔で隣り合って存在する。つまり、領域C2では、格子パターンが斜め格子を形成するので、第1の方向に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列の隣り合う間隔が不規則になる。このため、マークM1の列が、第2の方向に異なる間隔で隣り合って存在する領域C2には、規則的ではない周波数成分が生み出される。フィルタリング処理部121bは、マークM1の列が第2の方向に異なる間隔で隣り合うことによって生み出されるある不規則な周波数成分に対応する領域を、格子パターンが斜め格子をなす領域の一部(
図4に示す領域A3、A90。領域A3は領域A90に比べて長い間隔に対応する周波数領域である。)として処理領域PAから抽出する。また、領域C2では、第3の方向(例えば、
図7に示すα1軸の方向に略平行な方向)に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列が、第4の方向(例えば、
図7に示すα2軸の方向に略平行な方向)におおよそ一定の間隔で隣り合って存在することになる。このため、マークM1の列が、第4の方向におおよそ一定の間隔で隣り合って存在する領域C2には、ある規則的な周波数成分が生み出される。フィルタリング処理部121bは、マークM1の列が第4の方向におおよそ一定の間隔で隣り合うことによって生み出されるある規則的な周波数成分に対応する領域を、格子パターンが斜め格子をなす領域の一部(
図4に示す領域A2)として処理領域PAから抽出する。更にショルダー部に凹凸がある場合、その部分に形成されたマークM1の列が第4の方向に比較的短い間隔で存在することがあり、これらの列により生み出される周波数成分は
図4に示す周波数領域A91に含まれている。
【0035】
図8は、
図5に示す領域C3における格子パターンを拡大して示している。
図8に示すように、領域C3では、上記領域C2と同様に、第1の方向(例えば、
図6に示すY軸の方向に略平行な方向)に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列が、第2の方向(例えば、
図6に示すX軸の方向に略平行な方向)に異なる間隔で隣り合って存在する。つまり、領域C3では、格子パターンが斜め格子を形成するので、第1の方向に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列の隣り合う間隔が不規則になる。このため、マークM1の列が、第2の方向に異なる間隔で隣り合って存在する領域C3には、規則的ではない周波数成分が生み出される。フィルタリング処理部121bは、マークM1の列が第2の方向に異なる間隔で隣り合うことによって生み出されるある不規則な周波数成分に対応する領域を、領域C2と同様に、格子パターンが斜め格子をなす領域の一部(
図4に示す領域A3、A90。領域A3は領域A90に比べて長い間隔に対応する周波数領域である。)として処理領域PAから抽出する。また、領域C3では、上記領域C2と同様に、第5の方向(例えば、
図8に示すβ1軸の方向に略平行な方向)に複数配置されるマークM1によって構成されるマークM1の列が、第6の方向(例えば、
図8に示すβ2軸の方向に略平行な方向)におおよそ一定の間隔で隣り合って存在することになる。このため、マークM1の列が、第6の方向におおよそ一定の間隔で隣り合って存在する領域C3には、ある規則的な周波数成分が生み出される。フィルタリング処理部121bは、マークM1の列が第6の方向におおよそ一定の間隔で隣り合うことによって生み出されるある規則的な周波数成分に対応する領域を、領域C2と同様に、格子パターンが斜め格子をなす領域の一部(
図4に示す領域A1)として処理領域PAから抽出する。更にショルダー部に凹凸がある場合、その部分に形成されたマークM1の列が第6の方向に比較的短い間隔で存在することがあり、これらの列により生み出される周波数成分は
図4に示す周波数領域A92に含まれている。
【0036】
フィルタリング処理部121bは、格子パターンが水平格子をなす領域A4(
図4)を処理領域PAから抽出する場合には、例えば、領域A1および領域A4の各重心を結んだ直線の中点から、領域A2および領域A4の各重心を結んだ直線の中点までの距離に対応する範囲を縦方向(Y軸方向)の範囲とし、領域A3および領域A4の各重心を結んだ直線の中点から、領域A1(もしくは領域A2)および領域A4の各重心を結んだ直線の中点までの距離に対応する範囲を横方向(X軸方向)の範囲とする矩形領域(
図4)を抽出する。あるいは、フィルタリング処理部121bは、領域A1〜領域A4について、フーリエ変換により得られる1次調和波のパワースペクトルのピークをそれぞれ求め、領域A1および領域A4の各ピークを結ぶ直線の中点と、領域A2および領域A4の各ピークを結ぶ直線の中点と結んだ距離に対応する範囲を縦方向(Y軸方向)の範囲とし、領域A3および領域A4の各ピークを結ぶ直線の中点と、領域A1(もしくは領域A2)および領域A4の各ピークを結ぶ直線の中点とを結んだ距離に対応する範囲を横方向(X軸方向)の範囲とする矩形領域(
図4)を抽出してもよい。
【0037】
フィルタリング処理部121bは、タイヤ画像の画像データから切り出された処理領域に含まれる格子パターンが、試験用タイヤ10の接地直下、もしくは接地対向側にある場合には、上記
図5〜
図8に示す方法により、格子パターンが水平格子をなす領域を処理領域から抽出する。例えば、処理領域に含まれる格子パターンが、試験用タイヤ10の接地直下から左側90度の位置、もしくは右側90度の位置にある場合にも、上記
図5〜
図8に示す方法と同様の方法により、格子パターンが水平格子をなす領域を処理領域から抽出できる。
図9は、制御部により実行される他の処理を説明するための図である。
【0038】
図9に示すように、フーリエ変換処理部121aは、記憶部110に記憶されている画像データ110cから処理対象となる画像データD11を読み込む(ステップS11)。続いて、フーリエ変換処理部121aは、画像データD11において処理領域PAの切り出しを検出すると、処理領域PAに対応する画像データD12を取得し(ステップS12)、取得した画像データD12についてフーリエ変換処理を実行する(ステップS13)。続いて、フィルタリング処理部121bは、フーリエ変換処理部121aによる処理データD13から、特定の周波数成分に対応する領域を抽出するフィルタリング処理を実行する。例えば、処理領域PAに対応する画像データD12では、試験用タイヤ10の荷重方向(
図1参照)に垂直な方向に複数配置されるマークによって構成されるマークの列が、試験用タイヤ10の荷重方向に略平行な方向に一定の間隔で隣り合って存在する。つまり、処理領域PAに対応する画像データD12が試験用タイヤ10の接地直下から左側90度の位置のものである場合、試験用タイヤ10の表面が滑らかな曲面であっても、また、試験用タイヤ10に荷重が作用していても、マークM1の列が試験用タイヤ10の荷重方向(
図1参照)に隣り合う間隔には影響がない。このため、マークM1の列が、試験用タイヤ10の荷重方向におおよそ一定の間隔で隣り合って存在する領域には、ある規則的な周波数成分が生み出される。そこで、フィルタリング処理部121bは、マークM1の列が試験用タイヤ10の荷重方向(
図1参照)におおよそ一定の間隔で隣り合うことによって生み出されるある規則的な周波数成分に対応する領域を、格子パターンが水平格子をなす領域(
図9に示す領域A5)として処理領域PAから抽出する。
【0039】
形状解析部122は、解析範囲決定部121により決定された解析範囲について形状解析処理を実行する。形状解析部122は、例えば、解析範囲のタイヤの形状を算出するために、例えば、サンプリングモアレ法を用いる。サンプリングモアレ法は、デジタル画像からモアレ縞を生成して対象の三次元形状を算出する数学的手法である。サンプリングモアレ法は、高精度な形状解析を行い得るメリットを有する。サンプリングモアレ法では、デジタル画像からモアレ縞を生成する際に用いる間引き数が格子ピッチに最も近い整数である場合に最も精度が高くなる。一方、格子ピッチにバラツキがある場合には、サンプリングモアレ法による形状解析の精度が低下することがある。すなわち、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが斜め格子をなす領域は、格子ピッチにバラツキが生じるので、サンプリングモアレ法による形状解析を行う場合に適した処理領域とはいえず、形状解析の精度を低下させる恐れがある。そこで、実施形態1では、解析範囲決定部121により、試験用タイヤ10に付された格子パターンが水平格子をなす領域を、解析範囲として画像データから予め抽出することにより、サンプリングモアレ法による形状解析の精度を確保することができる。また、実施形態1では、試験用タイヤ10に付された格子パターンが斜め格子をなす領域について形状解析処理を行わないので、効率的な形状解析処理を実現することができ、試験用タイヤ10の形状の解析時間を短くすることができる。
【0040】
表示部130は、制御部120における形状の解析結果を示す画像を表示する。表示部130は、ディスプレイ、モニタ等の表示デバイスを含んで構成される。
【0041】
操作部140は、利用者の各種操作入力を受け付ける。操作部140は、例えば、形状解析処理に関する各種設定操作および入力操作を受け付ける。操作部140は、キーボード、マウス等の入力デバイスを含んで構成される。
【0042】
図10を用いて、実施形態1にかかる制御部120により実行される処理の流れを説明する。
図10は、実施形態1にかかる制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図10に示す処理は、制御部120が有する解析範囲決定部121及び形状解析部122が、記憶部110から解析範囲決定プログラム110a及び形状解析プログラム110bをそれぞれ読み込んで実行することにより実現される。
【0043】
図10に示すように、フーリエ変換処理部121aは、記憶部110に記憶されている画像データ110cから処理対象となる試験用タイヤ10の画像を取り込む(ステップS101)。続いて、フーリエ変換処理部121aは、ステップS101にて取り込んだ画像において処理領域PAの切り出しを検出すると、処理領域PAに対応する画像についてフーリエ変換処理を実行する(ステップS102)。
【0044】
続いて、フィルタリング処理部121bは、フーリエ変換処理部121aによる処理データから、特定の周波数成分に対応する領域を抽出するフィルタリング処理を実行する(ステップS103)。具体的には、フィルタリング処理部121bは、所定方向に複数配置されるマークによって構成されるマークの列が一定の間隔で隣り合うことによって生み出されるある規則的な周波数成分に対応する領域を、格子パターンが水平格子をなす領域として処理データから抽出する(
図4、
図6参照)。
【0045】
続いて、逆フーリエ変換処理部121cは、フィルタリング処理部121bによる処理データを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換処理を実行する(ステップS104)。続いて、パワースペクトル算出部121dは、逆フーリエ変換処理部121cによる処理データから画素ごとのパワースペクトルを算出する(ステップS105)。
【0046】
続いて、閾値設定部121eは、パワースペクトル算出部121dによる画素ごとのパワースペクトルに対して閾値を設定する(ステップS106)。続いて、解析範囲抽出部121fは、閾値設定部121eによる閾値の設定結果に対して膨張処理及び収縮処理を行うことで、形状解析部122による形状解析を実行するための解析範囲を抽出する(ステップS107)。形状解析部122は、解析範囲抽出部121fにより抽出された解析範囲に基づいて形状解析処理を実行し、試験用タイヤ10の形状を算出する(ステップS108)。
【0047】
上述してきたように、実施形態1にかかる形状解析装置100は、試験用タイヤ10の画像から、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが水平格子をなす領域を、試験用タイヤ10の形状解析処理を行うための解析範囲として予め抽出する。
図11は、格子パターンが水平格子をなす領域の例を示す図である。
図11に示すように、例えば、試験用タイヤ10の画像データD1における接地直下の領域PA1、接地対向側の領域PA2、接地直下から左側90度の位置に対応する領域PA3、および接地直下から右側90度の位置に対応する領域PA4は、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが水平格子をなすので、形状解析装置100は、領域PA1〜PA4を試験用タイヤ10の形状解析処理を行うための解析範囲として予め抽出することができる。そして、形状解析装置100は、これらの領域PA1〜PA4について形状解析処理を実行する。このようなことから、実施形態1によれば、試験用タイヤ10に付された格子パターンが斜め格子をなす領域について余計な形状解析処理を行わないので、効率的な形状解析処理を実現することができ、試験用タイヤ10の形状の解析時間を短くすることができる。
【0048】
(実施形態2)
上記の実施形態1において、解析範囲決定部121による処理を実行する前に、タイヤ画像の画像データに対して、解析範囲決定部121による処理を行わない領域を設定するマスク処理を実行してもよい。以下の実施形態2では、このマスク処理について説明する。
【0049】
図12は、実施形態2にかかる形状解析装置の機能構成を示すブロック図である。
図12に示すように、実施形態2にかかる形状解析装置100は、記憶部110がマスク処理プログラム110dを記憶する点、制御部120がマスク処理部123を有する点が、実施形態1とは異なる。
【0050】
マスク処理プログラム110dは、タイヤ画像の画像データに対して、解析範囲決定部121による処理を行わない所定領域を設定するマスク処理を実現するための機能を提供する。マスク処理部123は、マスク処理プログラム110dを読み込んで実行することにより、タイヤ画像の画像データに対して、解析範囲決定部121による処理を行わない所定領域を設定するマスク処理を実現する。
【0051】
以下、
図13及び
図14を用いて、マスク処理部123により実行されるマスク処理について説明する。
図13及び
図14は、マスク処理について説明するための図である。
【0052】
図13に示すように、リム211に対して、複数のマークmpが設けられる。マークmpは、解析用格子面SA(SA#1〜SA#n)のタイヤ周方向の位置を特定するためのマークであり、解析用格子面SAと同数設けられる。マークmpは、
図13に示す例では、例えば、1対の円形の図形で構成され、解析用格子面SA(SA#1〜SA#n)の周方向幅の中心線γ上に配置されている。中心線γは、試験用タイヤ10の回転軸を通り、試験用タイヤ10の接地面に垂直な直線に一致する。マークmpは、例えば、タイヤ画像においてリム211との輝度差が十分に確保されており、例えば、2値化処理などにより位置を検出可能である。
【0053】
マスク処理部123は、
図13に示すマークmpをタイヤ画像から検出することにより、マスク処理を実行する。マスク処理部123は、タイヤ画像の画像データP1からマークmpの位置を検出する。続いて、マスク処理部123は、例えば、マークmpの位置に基づいて、試験用タイヤ10の接地直下に位置する格子パターンを含む領域をタイヤ画像に設定する。例えば、マスク処理部123は、
図14に示すマークmpxを構成するタイヤ周方向側の円の位置座標と、
図14に示すマークmpyを構成するタイヤ周方向側の円の位置座標とに基づいて、
図14に示す直線L1〜L4に囲まれた領域NMAを設定する。特に直線L3は、マークmpxとマークmpyの各縦方向位置座標の平均位置を通る水平線として設定してもよい。もしくはマークmpxの縦方向位置座標を通る水平線、またはマークmpyの縦方向位置座標を通る水平線として設定してもよい。
図14では一対の円として求めた位置座標を通る直線L3で領域NMAを設定しているが、円単体としての位置座標を用いて領域NMAを設定してもよい。また円は、どの円を選んでもよい。続いて、マスク処理部123は、タイヤ画像のうち、領域NMA以外の全領域に対してマスクをかける。これにより、マスク処理部123によりマスクされなかった領域NMAのみが、続いて、解析範囲決定部121により処理される。
【0054】
図15を用いて、実施形態2にかかる制御部120により実行される処理の流れを説明する。
図15は、実施形態2にかかる制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図15に示す処理は、制御部120が有するマスク処理部123、解析範囲決定部121及び形状解析部122が、記憶部110からマスク処理プログラム110d、解析範囲決定プログラム110a及び形状解析プログラム110bをそれぞれ読み込んで実行することにより実現される。
図15に示す処理は、ステップS202の処理手順を有する点が実施形態1とは異なる。
【0055】
図15に示すように、マスク処理部123は、記憶部110に記憶されている画像データ110cから処理対象となる試験用タイヤ10の画像を取り込む(ステップS201)。続いて、マスク処理部123は、解析範囲決定部121による処理を行わない所定領域を設定するマスク処理を実行する(ステップS202)。
【0056】
続いて、フーリエ変換処理部121aは、ステップS202においてマスク処理された領域以外の領域について、フーリエ変換処理を実行する(ステップS203)。続いて、フィルタリング処理部121bは、フーリエ変換処理部121aによる処理データから、特定の周波数成分に対応する領域を抽出するフィルタリング処理を実行する(ステップS204)。
【0057】
続いて、逆フーリエ変換処理部121cは、フィルタリング処理部121bによる処理データを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換処理を実行する(ステップS205)。続いて、パワースペクトル算出部121dは、逆フーリエ変換処理部121cによる処理データから画素ごとのパワースペクトルを算出する(ステップS206)。
【0058】
続いて、閾値設定部121eは、パワースペクトル算出部121dによる画素ごとのパワースペクトルに対して閾値を設定する(ステップS207)。続いて、解析範囲抽出部121fは、閾値設定部121eによる閾値の設定結果に対して膨張処理及び収縮処理を行うことで、形状解析部122による形状解析を実行するための解析範囲を抽出する(ステップS208)。形状解析部122は、解析範囲抽出部121fにより抽出された解析範囲に基づいて形状解析処理を実行し、試験用タイヤ10の形状を算出する(ステップS209)。
【0059】
実施形態2では、解析範囲決定部121による処理を行わない所定領域を設定するマスク処理を実行する。このため、実施形態2によれば、フィルタリング処理部121bによる処理範囲を明確化することができる。
【0060】
(実施形態3)
上記実施形態2において、タイヤ画像に含まれる斜め格子に対応する領域が水平格子となるように、タイヤ画像を回転させる処理を実行してもよい。以下の実施形態3では、この画像回転処理について説明する。
【0061】
図16は、実施形態3にかかる形状解析装置の機能構成を示すブロック図である。
図16に示すように、実施形態3にかかる形状解析装置100は、記憶部110が画像回転処理プログラム110eを記憶する点、制御部120が画像回転処理部124を有する点が、実施形態2とは異なる。
【0062】
画像回転処理プログラム110eは、タイヤ画像から試験用タイヤ10の周方向の位置を特定するために、上記マークmpを少なくとも2つ以上検出し、検出したマークmpの位置(方向)に基づいて、格子パターンの配列方向がタイヤ画像の画素の配列方向と一致するようにタイヤ画像を回転させるための機能を提供する。画像回転処理部124は、画像回転処理プログラム110eを読み込んで実行することにより、タイヤ画像から試験用タイヤ10の周方向の位置を特定するために、上記マークmpを少なくとも2つ以上検出し、検出したマークmpの位置(方向)に基づいて、格子パターンの配列方向がタイヤ画像の画素の配列方向と一致するようにタイヤ画像を回転させる画像回転処理を実現する。
【0063】
以下、
図17を用いて、画像回転処理部124により実行される画像回転処理について説明する。
図17は、画像回転処理について説明するための図である。
図17では、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SA#3に対応する領域(斜め格子をなす領域)の形状解析を実行するときの画像回転処理について説明する。なお、前提条件として、
図17に示す中心線γ1は、試験用タイヤ10の回転軸を通り、試験用タイヤ10の接地面に垂直な直線に一致する直線であり、中心線γ1の方向はタイヤの画像データP2の画素の配列方向に一致しているものとする。マークmpz1は、中心線γ1上に配置されているものとする。また、中心線γ2は、解析用格子面SA#3の周方向幅の中心線であり、試験用タイヤ10の回転軸を通り、マークmpz2を構成している一対の円の各重心を通る直線であるとする。
【0064】
画像回転処理部124は、タイヤ画像の画像データP2から、マークmpz1及び試験用タイヤ10に付された解析用格子面SA#3に対応するマークmpz2の位置を検出する。画像回転処理部124は、画像データP2を2値化処理し、形状特徴パラメータを表す円形度の閾値および占有面積の閾値を用いてマークmpzの位置を検出する。円形度は、数式4πS/L^2(S:白色画素の占有面積、L:白色部分の周長)により定義される。例えば、円形度の閾値が0.6に設定され、占有面積の閾値が300画素〜1000画素の範囲内に設定される。また、隣り合う検出点の中心間距離が、マークmpzを構成する円の図形の中心間距離(25[mm])の2倍未満(50[mm]未満)であれば、これらの検出点をマークmpzとして検出する。なお、画像回転処理部124は、パターンマッチングによってマークmpz1及びマークmpz2を検出してもよい。
【0065】
画像回転処理部124は、マークmpz1及びマークmpz2を検出すると、マークmpz1を構成する1対の円の図形のそれぞれの重心を通る直線を中心線γ1として算出し、マークmpz2を構成する1対の円の図形のそれぞれの重心を通る直線を中心線γ2として算出する。続いて、画像回転処理部124は、中心線γ1と中心線γ2がなす角度θを算出する。続いて、画像回転処理部124は、中心線γ1と中心線γ2がなす角度θを回転角として、画像データP2の中心位置を固定したまま、中心線γ2が中心線γ1に一致するまで時計回りに回転させる。
【0066】
続いて、画像回転処理部124により画像回転処理された画像データに対して、マスク処理部123によるマスク処理が実行され、マスク処理部123によりマスクされなかった領域のみが、解析範囲決定部121により処理される。
【0067】
図18を用いて、実施形態3にかかる制御部120により実行される処理の流れを説明する。
図18は、実施形態3にかかる制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
図18に示す処理は、制御部120が有する画像回転処理部124、マスク処理部123、解析範囲決定部121及び形状解析部122が、記憶部110から画像回転処理プログラム110e、マスク処理プログラム110d、解析範囲決定プログラム110a及び形状解析プログラム110bをそれぞれ読み込んで実行することにより実現される。
図18に示す処理は、ステップS302の処理手順を有する点が実施形態1とは異なる。
【0068】
図18に示すように、画像回転処理部124は、記憶部110に記憶されている画像データ110cから処理対象となる試験用タイヤ10の画像を取り込む(ステップS301)。続いて、画像回転処理部124は、画像回転処理を実行する(ステップS302)。例えば、画像回転処理部124は、試験用タイヤ10の画像において、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが斜め格子をなす領域の格子パターンの向きが、試験用タイヤ10の画像における画素の配列方向と一致するように画像を回転させる。
【0069】
続いて、マスク処理部123は、ステップS302において画像回転処理された試験用タイヤ10の画像に対して、解析範囲決定部121による処理を行わない所定領域を設定するマスク処理を実行する(ステップS303)。
【0070】
続いて、フーリエ変換処理部121aは、ステップS303においてマスク処理された領域以外の領域について、フーリエ変換処理を実行する(ステップS304)。続いて、フィルタリング処理部121bは、フーリエ変換処理部121aによる処理データから、特定の周波数成分に対応する領域を抽出するフィルタリング処理を実行する(ステップS305)。
【0071】
続いて、逆フーリエ変換処理部121cは、フィルタリング処理部121bによる処理データを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換処理を実行する(ステップS306)。続いて、パワースペクトル算出部121dは、逆フーリエ変換処理部121cによる処理データから画素ごとのパワースペクトルを算出する(ステップS307)。
【0072】
続いて、閾値設定部121eは、パワースペクトル算出部121dによる画素ごとのパワースペクトルに対して閾値を設定する(ステップS308)。続いて、解析範囲抽出部121fは、閾値設定部121eによる閾値の設定結果に対して膨張処理及び収縮処理を行うことで、形状解析部122による形状解析を実行するための解析範囲を抽出する(ステップS309)。形状解析部122は、解析範囲抽出部121fにより抽出された解析範囲に基づいて形状解析処理を実行し、試験用タイヤ10の形状を算出する(ステップS310)。
【0073】
試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが斜め格子をなす領域(例えば、
図11のPA1〜PA4以外の領域)は、サンプリングモアレ法による形状解析を行う場合に適した処理領域とはいえない。そこで、実施形態3では、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが斜め格子をなす領域の格子パターンの向きが、試験用タイヤ10の画像における画素の配列方向と一致するように画像を回転させる。これにより、格子ピッチのバラツキを抑えることができ、試験用タイヤ10に付された解析用格子面SAの格子パターンが斜め格子をなす領域についても、サンプリングモアレ法による形状解析を効率的に行うことができる。結果として、試験用タイヤ10の全体の形状を短時間で解析することが可能となる。
【0074】
上記の実施形態では、試験用タイヤ10のタイヤ周上に付された解析用格子面SAを含む画像に基づいて試験用タイヤ10の形状を解析する例について説明したが、形状を解析する対象は、これに限定されない。
【0075】
例えば、形状解析装置100は、リム211、またはリム211の端部に取り付けられる環状盤(図示せず)などに付された解析用格子面を含む画像に基づいてリム211の形状を解析してもよい。解析用格子面は、解析用格子面SA(
図1など参照)のように、ほぼ同一形状のマークが周期性をもって格子状に配置される格子パターンを有するシートであればよい。これにより、例えば、走行中におけるリム211の変形等を解析することができる。
【0076】
形状解析装置100は、タイヤ以外の各種の対象の形状の解析に適用することもできる。タイヤ以外の対象は、例えば、製品、部品、建造物を含むが、これらに限定されない。