(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記模様領域は、前記サイドウォール部のタイヤ径方向の最内端部からの距離がタイヤ径方向にタイヤ断面高さの30%〜80%の距離にある領域に設けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空気入りタイヤの軽量化、低転がり抵抗化を達成するために、サイドウォールのゴムの厚さ(以下、サイドゲージともいう)を薄くすることが行われている。しかし、サイドゲージを薄くすると、サイドウォール表面に凹凸ができる外観不良が高い確率で発生する傾向がある。この外観不良は、タイヤの耐久性や他の運動性能では悪影響を与えないものであるが、ユーザに、タイヤの耐久性や他の運動性能が低い不良品ではないか、との心配を与える。具体的には、タイヤ製造時の成型工程において、シート状のカーカス部材がタイヤ成型ドラム上で一周巻き回され、カーカス部材の巻き始め端と巻き終わり端とが一部重なってジョイントされる。このため、重なった部分の厚さが厚くなって、この部分が最終的なタイヤにおいてサイドウォール表面に凹凸となって現れる。特に、カーカス部材が1枚用いられるラジアルタイヤでは、この凹凸が顕著に目立つ。
【0006】
サイドウォール表面に複数の凹部が設けられた上述の空気入りタイヤでは、複数の凹部を設けることにより、上述したようなタイヤ構造等に起因する凹凸はサイドウォール表面において目立ちにくくなるが、この凹凸は、より一層目立ちにくいことが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、タイヤ転動時の空気抵抗を低減するとともに、タイヤ構造等に起因する凹凸をサイドウォール表面において目立ちにくくすることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤである。前記サイドウォール部は複数のディンプル状の凹部が形成された模様領域を有し、
前記複数の凹部は、タイヤの側面視において、タイヤの回転中心O1を中心とするn個(nは4以上の自然数)の異なる半径の円のいずれかの円周上に間隔を空けて設けられ、
前記n個の円の半径を小さい順にR1、R2、…、Rnとしたとき、Rnの隣接二項間の差Dk=Rk+1−Rk(kは自然数、1<k≦n−1)はkの増加とともに連続的に又は段階的に増加又は減少する。
前記複数の凹部の縁は円形状で、前記縁から延びる底面は球面形状であり、
前記複数の凹部のうち一部の凹部において、前記円形状の直径は互いに異なるが、前記複数の凹部の最大深さは前記直径に拠らず一定である。
前記複数の凹部の直径は、前記複数の凹部が設けられる同一の円の円周上で一定であり、
前記凹部の大きさは、複数の前記円のうち、タイヤ径方向の最外部と最内部の2つの円の円周上に設けられた前記凹部の大きさから、前記最外部から前記最内部に向かって及び前記最内部から前記最外部に向かって大きくなる、あるいは、前記最外部から前記最内部に向かって及び前記最内部から前記最外部に向かって小さくなり、前記最外部と前記最内部の2つの円の間に位置する1つの円の円周上に設けられた前記凹部の大きさは、複数の前記凹部の中で最大あるいは最小である。
【0009】
D
kの最大値をD
max、最小値をD
minとするとき、4.0≦D
max/D
min≦10.0であることが好ましい。
【0012】
前記凹部の円相当径は、1.0〜5.0mmであることが好ましい。前記凹部の深さは、0.3〜1.5mmであることが好ましい。
【0013】
前記模様領域の前記複数の凹部が形成された部分以外の部分には、一方向に延びる複数の線状の谷部が設けられてセレーション加工が施されていることが好ましい。
前記セレーション加工が施された部分の面積に対する前記複数の凹部の総面積の割合が25%〜60%であることが好ましい。
【0014】
前記模様領域は、前記サイドウォール部のタイヤ径方向の最内端部
からの距離がタイヤ径方向にタイヤ断面高さの30%〜80%の距離
にある領域に設けられていることが好ましい。
【0015】
前記サイドウォール部は、サイドウォール表面に平滑面からなる無装飾領域をタイヤ周方向の少なくとも2箇所に有し、
前記各無装飾領域のタイヤ周方向の両端部とタイヤ回転中心O
1とを結ぶ2直線のなす角の総和をωとするとき、0.4≦(2π−ω)/2π≦0.8であることが好ましい。
【0016】
前記サイドウォール部に用いられるゴム部材のJISに準拠する硬度が45〜60であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記空気入りタイヤによれば、タイヤ転動時の空気抵抗を低減するとともに、タイヤ構造等に起因する凹凸をサイドウォール表面において目立ち難くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)について詳細に説明する。
以下に説明する本実施形態の空気入りタイヤは、例えば、乗用車用タイヤに適用するが、小型トラック用タイヤあるいはバス・トラック用タイヤに適用することもできる。以下説明する本実施形態の空気入りタイヤは乗用車用タイヤである。
以下の説明において、タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤセンターラインCLから離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤセンターラインCLに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
【0020】
(タイヤ構造)
図1は、本実施形態のタイヤ10のプロファイル断面図を示す。タイヤ10は、トレッドパターンを有するトレッド部10Tと、一対のビード部10Bと、トレッド部10Tの両側に設けられ、一対のビード部10Bとトレッド部10Tに接続される一対のサイド部10Sと、を備える。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナーゴム部材26と、を主に有する。
【0021】
カーカスプライ層12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材で構成されている。カーカスプライ材は、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側まで延びている。カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト層14が設けられている。ベルト層14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材であり、下層のベルト材14aが上層のベルト材14bに比べてタイヤ幅方向の幅が長い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
【0022】
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられ、トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されてサイド部を形成している。サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ層12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカスプライ層12の巻きまわした部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、空気漏れを抑制するインナーライナーゴム部材26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側からベルト層14を覆う、有機繊維をゴムで被覆した2層のベルトカバー層30を備える。さらに、タイヤ10は、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカス層12とビードフィラーゴム部材22との間にビード補強材を備えてもよい。
本実施形態のタイヤ10のタイヤ構造は上記構造に限定されず、公知の構造や新規の構造であってもよい。また、本実施形態のタイヤ10のトレッドパターンは、特に限定されない。
【0023】
(サイドウォールのパターン)
図2は、サイド部10Sの表面を示した図である。
サイド部10Sは、サイドウォール表面に、情報表示領域32と、模様領域34と、無装飾領域36と、を有する。このようなサイド部10Sのサイドウォールパターンは、空気入りタイヤの両方の側面に設けられるが、一方の側面にのみ設けられてもよい。一方の側面にのみ設ける場合、タイヤ10の、車両に装着されたときに車両外側を向く面に、本実施形態の模様領域34を設けることが好ましい。
【0024】
情報表示領域32は、ビード部10Bに沿って模様領域34のタイヤ径方向内側に隣接して設けられている。情報表示領域32には、タイヤサイズ、型番、製造国等の情報が記される。
無装飾領域36は、谷部50の設けられていない平滑面からなり、サイド部10Sの周上に模様領域34と隣接するように設けられている。無装飾領域36は、タイヤ周方向の少なくとも2箇所に設けることが好ましい。なお、無装飾領域36に、タイヤの呼び名、タイヤ製造メーカの商標等の標章を表示してもよい。
無装飾領域36はタイヤ径方向に一定の幅を有する。無装飾領域36のタイヤ周方向の長さは、タイヤ径方向外側に向かって増加するように設けられている。ここで、
図2に示すように、各無装飾領域36のタイヤ径方向外周側の円弧の両端とタイヤ回転中心O
1とを結ぶ2直線とのなす角をω
1、ω
2、各無装飾領域36のタイヤ径方向内周側の円弧の両端とタイヤ回転中心とを結ぶ2直線とのなす角をω
1’、ω
2’とするとき、ω
1>ω
1’かつω
2>ω
2’であることが好ましい。
ここで、ω
1、ω
2の総和をωとするとき、0.4≦(2π−ω)/2π≦0.8であることが好ましい。この範囲であれば、模様領域34がタイヤ構造等に起因する凹凸をサイドウォール10S表面において目立たせなくする効果を確保することができる。
【0025】
模様領域34は、情報表示領域32のタイヤ径方向外側に隣接して、サイド部10Sを一周するように設けられている。模様領域34は、タイヤ周方向の無装飾領域36が設けられる位置で、タイヤ径方向の幅が狭くなっている。
模様領域34は、サイドウォール部のタイヤ径方向の最内端部からタイヤ径方向にタイヤ断面高さHの30%〜80%の距離の領域に設けられていることが、見る人の視線を凹部60の間隔の変化によるサイドのパターンに引き付ける点で、好ましい。ここで、タイヤ断面高さHとは、
図1に示すように、タイヤのビード部10Bの最もタイヤ径方向内側の端部からタイヤ回転中心からの距離が最大となる径方向位置までのタイヤ径方向の距離である。
模様領域34は、タイヤ最大幅位置を含む。タイヤ最大幅位置とは、タイヤ幅方向におけるタイヤ幅が最大となるタイヤ径方向の位置をいう。タイヤ幅は、具体的には、JATMA,ETRTOあるいはTRAで定められたリムに装着し、定められた空気圧を充填することで得られる両側のサイド部間の最大幅をいう。
【0026】
図3は、サイド部10Sのサイドウォール表面の模様領域34の一部を拡大した拡大図である。模様領域34には、複数の線状の谷部50と、複数の凹部(
図2中の○の部分)60と、が設けられている。
複数の谷部50の延在する方向はいずれの方向でもよいが、模様領域34の凹部60内を除く領域に、タイヤ径方向に放射状に延在するように設けられていることが好ましい。谷部50が設けられることにより、互いに隣接する谷部50の間にリッジ52が形成され、谷部50とリッジ52とによりセレーション模様が形成される。谷部50およびリッジ52は、例えば、加硫金型の表面にセレーション加工により凹凸を形成しておき、加硫時にタイヤを加硫金型内で加圧硬化させることで、タイヤ10のサイドウォール10S表面の模様領域34に形成することができる。
【0027】
模様領域34にセレーション加工を施す場合、セレーション加工が施された部分の面積に対する複数の凹部60の総面積の割合が25%〜60%であることが空気抵抗の低減の点で好ましい。上記面積比が25%未満である場合、空気抵抗が低減できず、さらに、凹部60が疎になり過ぎて、模様領域34のパターンは見る人の視線を引き付け難くなり、サイドウォール表面に実際に現れる凹凸は認識され易い。上記面積比が60%を超える場合、空気抵抗が低減できない。上記面積比は、30〜45%であることがより好ましい。
【0028】
凹部60は球面状にくぼんだディンプル形状であり、凹部60の輪郭は円形状である。複数の凹部60は、タイヤ周方向に沿って、タイヤ回転中心O
1を中心とするn個(nは4以上の自然数)の異なる半径の同心円の円周上に間隔を空けて周方向に等間隔に設けられている。ここで、「等間隔」とは、凹部60の中心間の距離(中心間隔)が等間隔であることをいう。なお、凹部60が円形でなければ、凹部60の重心間の距離が等間隔であることをいう。
なお、
図2および
図3では、n=11である。ここで、
図2および
図3において、n個の同心円の半径を小さい順にR
1、R
2、…、R
nとしたとき、R
nの隣接二項間の差D
k=R
k+1−R
k(kは自然数、1<k≦n−1)はkの増加とともに連続的に又は段階的に増加している。すなわち、
D
1≦D
2≦D
3≦…≦D
n−1かつD
1<D
n−1
が成立している。
【0029】
ここで、D
kが連続的に増加するとは、kが増加すれば常にD
kが増加すること、すなわち、
D
1<D
2<D
3<…<D
n−1
が成立することをいう。
一方、D
kが段階的に増加とは、D
k=D
k+1となるkがある場合をいう。
例えば、
D
1=D
2<D
3=D
4<D
5=D
6<…<D
n−1
が成立してもよいし、
D
1=D
2=D
3<D
4=D
5=D
6<…<D
n−1
が成立してもよい。
このように凹部60同士の間隔がタイヤ径方向に変化することにより、サイドウォール表面を見る人は、タイヤ径方向で粗密を形成するように見える模様領域34の模様に目を奪われる。このため、カーカス部材における巻き始め端と巻き終わり端との重なり等のタイヤ構造に起因する凹凸はサイドウォール表面において目立ち難くなる。
【0030】
なお、D
kの最大値をD
max、最小値をD
minとするとき、4.0≦D
max/D
min≦10.0であることが好ましい。D
max/D
minが4.0未満であると、凹部60の密度の変化が不充分であり、凹凸を目立たせなくする効果が小さくなる。一方、D
max/D
minが10.0を超えると、D
max部分における凹部60同士の間隔が大きくなりすぎるため、凹部60によって凹凸を目立たせなくする効果が低減する。
また、本実施形態ではD
kがkの増加とともに連続的に又は段階的に増加する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、D
kがkの増加とともに連続的に又は段階的に減少してもよい。
【0031】
また、凹部60の輪郭形状は円形に限らず、楕円形状や、多角形形状(例えば矩形)に近い形状であってもよい。凹部60の円相当径(占有面積と同じ面積の円の直径)は、谷部50の間隔に対して大きい。ここで、凹部60の占有面積は、サイドウォール10Sの表面において凹部60が占める面積であり、凹部60の輪郭形状が円形であれば、円相当径はその直径に等しい。凹部60の円相当径は、例えば、1.0〜5.0mmである。凹部60の円相当径が1.0mmより小さいと、転動するタイヤ10を取り巻く空気の、凹部60による乱流が発生し難くなり、層流による空気抵抗の低減効果が小さくなり、走行する車両の燃費が悪化する。また、凹部60の円相当径が1.0mmより小さいと、加硫金型の加工が難しく、金型の精度が不足する他、各凹部60の視認性が悪くなり、サイドウォール10S表面の凹凸を目立たせない効果が低減する。一方、凹部60の円相当径が5.0mmよりも大きいと、凹部60が配置される同心円の半径R
nの隣接二項間の差D
kを充分に小さくすることができなくなる。また、各凹部60の視認性が悪くなり、タイヤ構造等に起因する凹凸をサイドウォール10S表面において目立たせない効果が低減する。
また、凹部60の円相当径は、隣接する谷部50同士の間隔の3〜10倍であることが好ましい。
1つの同心円上に配置される凹部60は、当該同心円と隣接する他の同心円に配置される凹部60と、タイヤ周方向に互い違いに配列されることが好ましいが、本発明はこれに限られない。
【0032】
本実施形態では、複数の凹部60は、いずれも同一の深さを有するが、必ずしも同一の深さである必要はない。また、本実施形態では、複数の谷部50はいずれも同一の深さを有するが、必ずしも同一の深さである必要はない。また、凹部60の深さが深い程、谷部50の溝深さを深くしてもよい。
凹部60のサイドウォール表面からの深さは、谷部50のサイドウォール表面からの深さよりも深いことが好ましい。具体的には、凹部の深さは、0.3〜1.5mmであることが好ましい。ここで、深さの基準となるサイドウォール表面とは、無装飾領域36の平滑面56をいう。凹部60の上記深さを谷部50の上記深さに比べて深くすることにより、加硫時にタイヤのサイドウォールと加硫金型表面との間に空気が溜まることにより生じる外観不良を効果的に低減でき、かつ、空気抵抗も効果的に低減することができる。
模様領域34のサイド部10Sのゴム材として硬度(JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠して、温度20℃にて、タイプAのデュロメータを用いて測定される硬度)45〜60のゴムを用いることができる。このような硬度のゴムを用いると、加硫時の空気溜りによる外観不良が発生しにくい。
【0033】
<変形例1>
模様領域34において、
図4〜
図8に示すように、タイヤ径方向に沿って複数の凹部60の大きさ(円相当径)が変化してもよい。すなわち、複数の凹部が設けられる同心円の半径R
nが大きいほど凹部60の円相当径が増加又は減少してもよい。ここで、複数の凹部60の円相当径は、凹部が設けられる同一の同心円で一定であることが好ましい。
【0034】
凹部60の円相当径は少なくとも3段階以上の変化があることが好ましい。凹部60の円相当径の変化は、連続的な変化、あるいは断続的な変化であってもよい。
例えば、半径R
nの同心円上の複数の凹部60の円相当径がd
nであるとき、
図4に示すように、d
1≦d
2≦d
3≦…≦d
nかつd
1<d
nが成立するようにしてもよい。すなわち、タイヤ径方向外側ほど凹部60の円相当径が大きくなるようにしてもよい。
また、
図5に示すように、d
1≧d
2≧d
3≧…≧d
nかつd
1>d
nが成立するようにしてもよい。すなわち、タイヤ径方向外側ほど凹部60の円相当径が小さくなるようにしてもよい。
【0035】
また、
図6に示すように、タイヤ径方向の最外部および最内部ほど凹部60の円相当径が小さく、最外部または最内部からタイヤ径方向の中間位置に向かって凹部60の円相当径が大きくなるようにしてもよい。また、
図7に示すように、タイヤ径方向の最外部および最内部ほど凹部60の円相当径が大きく、最外部または最内部からタイヤ径方向の中間位置に向かって凹部60の円相当径が小さくなるようにしてもよい。
また、
図8に示すように、タイヤ径方向に沿って凹部60の円相当径が周期的に変化してもよい。
【0036】
凹部60の最大深さは、円相当径の大きさに拠らず一定であることが好ましい。特に、凹部60が円形状であり、凹部60の底面が球面形状となって凹んでいる場合、凹部60の大きさに拠らず最大深さを一定とすることにより、最も大きい凹部60の縁近傍の底面の深さ方向の傾斜角度は、最も小さな凹部60の縁近傍の底面の深さ方向の傾斜角度に比べて小さくなるので、凹部60の底面の光の反射角度が凹部60の大きさによって異なる。このため、サイドウォール表面を見る人は、凹部60の大きさの変化の他に凹部60の反射特性によってもサイドウォールのパターンを認識できるので、見る人は、模様領域34の模様により一層目を奪われるため、タイヤ構造等に起因する凹凸は見過ごされ、サイドウォール10S表面において目立ちにくくなる。
【0037】
<変形例2>
模様領域34において、同一の同心円の円周上に配置される複数の凹部60は、
図9および
図10に示すように、タイヤ周方向に沿って円相当径が周期的に変化してもよい。ここで、凹部60の円相当径の変化の角周波数(一周あたりの周期の数)および変化の位相は、各凹部60が配置される複数の同心円において同一であることが好ましい。すなわち、
図9および
図10に示すように、タイヤ周方向に隣接する複数の凹部60の円相当径は変化しつつ、タイヤ径方向に隣接する複数の凹部60の円相当径は略同一であることが好ましい。
変形例1、2に示すように複数の凹部60の円相当径がタイヤ径方向またはタイヤ周方向に沿って周期的に大きさが変化することにより、サイドウォール表面を見る人は、
図9、
図10に示すように、タイヤ周方向で粗密を形成するように見える模様領域34の模様に目を奪われるため、タイヤ構造等に起因する凹凸はサイドウォール10S表面において目立ち難くなる。
【0038】
(実施例、従来例、比較例)
本実施形態の効果を調べるために、
図2に示すようなサイドウォールのパターンを有するタイヤを作製した。作製したタイヤのサイズは、195/65R15 91Hである。作製したタイヤについて、100人にタイヤから1m離れたところから見てもらい、タイヤのサイドウォール表面に実際に現れている凹凸(セレーション加工および凹部60による凹凸を除く)を視認したか否か(表面凹凸の視認性)を調べた。
【0039】
表面凹凸の視認性については、
・100人中95人以上の観察者(見る人)が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点110とし、
・100人中90人以上94人以下の観察者が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点108とし、
・100人中80人以上89人以下の観察者が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点106とし、
・100人中70人以上79人以下の観察者が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点104とし、
・100人中60人以上69人以下の観察者が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点102とし、
・100人中50人以上59人以下の観察者が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点100とし、
・100人中49人以下の観察者が実際に現れている凹凸を明確に認識できないとき、評点97とした。
【0040】
下記表1、表2に、実施例1〜10、従来例、比較例の仕様とその評価結果を示す。
実施例1、3、5、7、9では、凹部60が配置される隣接する同心円の半径の差D
kを段階的に増加させた。
実施例2、4、6、8、10では、凹部60が配置される隣接する同心円の半径の差D
kを連続的に増加させた。
従来例および比較例では、凹部60が配置される隣接する同心円の半径の差D
kを同一とした。
D
max/D
minは表1に示すとおりとした。
従来例および実施例1〜10では、模様領域の凹部60を形成する以外の部分にセレーション加工を施した。谷部50同士の間隔は1.0mmとした。比較例ではセレーション加工を行なわなかった。
凹部60の形状はいずれも真円形状の円形凹部であり、凹部60の底面は球面形状とした。凹部の直径の種類数、直径、深さの値は表1、表2に示すとおりとした。凹部60の直径の種類数が複数の場合、
図4に示すように、タイヤ径方向内側の凹部60ほど直径が小さく、タイヤ径方向外側に向かって凹部60の直径が増加するように配列した。
各無装飾領域のタイヤ周方向の両端部とタイヤ回転中心とを結ぶ2直線のなす角の総和をωとしたときの(2π−ω)/2πの値は表1、表2に示すとおりとした。なお、比較例では無装飾領域を設けなかった。
【0043】
上記表1に示す実施例1〜10、従来例、及び比較例の比較より、凹部60の間隔(凹部60が配置される隣接する同心円の半径の差D
k)を連続的又は段階的に変化させ、かつ、谷部50を設けた模様領域34を設けることにより、表面凹凸の視認性を抑制することができることがわかる。
実施例1〜実施例10の評価結果より、凹部60の大きさの種類が多いほど、タイヤ構造等に起因する凹凸のサイドウォール10S表面における視認性を抑制することができることがわかる。
以上より、本実施形態のタイヤ10では、タイヤ転動時の空気抵抗を低減させる凹部のパターンにより、タイヤ構造等に起因する凹凸をサイドウォール10S表面において目立ち難くすることができる、といえる。
【0044】
次に、凹部の直径の変化方向を変えて表面凹凸の視認性を評価した。
実施例11〜15では、いずれも凹部60のタイヤ径方向の間隔d
kが連続的に増加するように配列した。また、いずれも模様領域の凹部60を形成する以外の部分にセレーション加工を施した。谷部50同士の間隔は1.0mmとした。凹部直径の種類数、直径、深さはいずれも実施例6と同様とした。
実施例11では、
図5に示すような形態、すなわち、タイヤ径方向内側の凹部60ほど直径が大きく、タイヤ径方向外側に向かって凹部60の直径が減少するように配列した。
実施例12では、
図6に示すような形態、すなわち、タイヤ径方向内側および内側の凹部60の直径が小さく、タイヤ径方向の中間位置に向かって凹部60の直径が増加し、タイヤ径方向の中間位置で凹部60の直径が最大となるように配列した。
実施例13では、
図7に示すような形態、すなわち、タイヤ径方向内側および内側の凹部60の直径が大きく、タイヤ径方向の中間位置に向かって凹部60の直径が減少し、タイヤ径方向の中間位置で凹部60の直径が最小となるように配列した。
実施例14では、
図8に示すような形態、すなわち、凹部60の直径がタイヤ径方向に周期的に変動するように配列した。
実施例15では、
図9および
図10に示すような形態、すなわち、凹部60の直径がタイヤ周方向に周期的に変動するように配列した。
結果を表3に示す。
【0046】
上記表2に示すように、タイヤ径方向およびタイヤ周方向のいずれの方向に凹部60の直径を変化させた場合でも、タイヤ構造等に起因する凹凸のサイドウォール10S表面における視認性を抑制することができることがわかる。
【0047】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。