(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の配線接続構造では、W−Ti系の拡散防止膜103が保護膜102の開口部102aの内壁に沿って薄く形成されており、当該開口部102a内において拡散防止膜103に屈曲部103aが形成される。この場合、例えば、保護膜102の線膨張係数が、Al電極101、Au電極104、拡散防止膜103の線膨張係数と異なると、温度変化時に開口部102a内の拡散防止膜103が保護膜102に押されて、屈曲部103aで拡散防止膜103が破断するおそれがある。そうすると、拡散防止膜103の破断箇所でAl電極101とAu電極104とが接触し、当該破断箇所から両電極101,104の相互拡散が進行するため、両電極101,104間の接続界面における抵抗値の上昇、接続強度の低下および電極消失の問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、Auで形成された配線電極と、Auとは異なる金属で形成された配線電極とを接続する場合に、両配線電極間の相互拡散を確実に防止することができる配線接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の配線接続構造は、半導体基板の一方主面に設けられた第1の配線層と、前記第1の配線層上に形成された導電性の拡散防止膜を有する第2の配線層と、前記第2の配線層上に一方の開口が配置されるビア孔を有し、前記半導体基板の一方主面、前記第1の配線層および前記第2の配線層を被覆する樹脂層と、前記樹脂層に積層された配線電極膜を有する第3の配線層とを備え、前記第1の配線層は、Auから成る第1金
属で形成されるとともに、前記第3の配線層の前記配線電極膜は、
CuまたはAlのいずれかから成る第2金
属で形成され、前記第3の配線層は、前記ビア孔に覗く前記第2の配線層に接続されることを特徴としている。
【0009】
この場合、第1の配線層上に導電性の拡散防止膜を有する第2の配線層が形成されて、樹脂層に設けられたビア孔の一方の開口が第2の配線層上に配置される。すなわち、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散を防止するための第2の配線層が、第1の配線層上に形成されることで、従来の配線接続構造の拡散防止膜のように、ビア孔の内壁に沿って薄く形成されることにより生じる屈曲部が形成されずに第2の配線層が平板状に形成される。このように、第2の配線層を屈曲部がない構造にすることで、線膨張係数の違いにより、温度変化時に第2の配線層が樹脂層から応力を受けた場合や、樹脂層が吸湿により膨張して第2の配線層が樹脂層から応力を受けた場合であっても、第2の配線層が破断するのを防止することができる。
【0010】
また
、Cu
またはA
lのいずれかから成る第2金
属で形成された第3の配線層が、樹脂層のビア孔に覗く第2の配線層に接続されることで、第3の配線層が第2の配線層を介して第1金属および第2金属のうちの一方で形成された配線電極膜を有する第1の配線層に接続される。そのため、第2の配線層が破断すると、破断箇所で接触した第1の配線層と第3の配線層との間で相互拡散が進行し、接続部の電気抵抗の増加、接続強度の低下、並びに配線電極層の消失が生じるおそれがある。しかしながら、この構成によると、第2の配線層の破断を防止することができるため、第2の配線層が有する拡散防止膜により、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散を確実に防止することができる。
また、前記第2の配線層は、前記第1の配線層の表面に沿って形成されている。また、前記第2の配線層は、前記ビア孔に覗く第1の部分、および、前記第1の部分以外の第2の部分のいずれもが、前記第1の配線層の表面に沿って形成されている。この場合、線膨張係数の違いから、温度変化時に第2の配線層が樹脂層から応力を受けた場合であっても、第2の配線層が破断するのを防止することができる。
【0011】
また、前記第2の配線層の前記拡散防止膜は、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれかにより形成されていてもよい。Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれも、第1の配線層を形成するAu電極と、Cu
またはA
lのいずれかにより形成された第3の配線層の配線電極膜との間の相互拡散および合金の生成を阻止する機能を有するため、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散を防止する拡散防止膜を形成する材料として好適である。
【0012】
また、前記第3の配線層が、前記配線電極膜と、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれかにより形成された密着膜とを有する多層構造で形成されていてもよい
。Cu
またはA
lのいずれも樹脂層との密着性が低いため、第3の配線層を
、Cu
またはA
lのいずれかにより形成された配線電極膜のみで構成すると、第3の配線層が樹脂層から剥がれるおそれがある。そこで、例えば、第3の配線層において、樹脂層に接する部分を樹脂層との密着性の優れたTi、Cr、Ni−Cr合金のいずれかにより形成された密着膜と、この密着膜に積層された配線電極膜とで構成される多層構造とすることで、第3の配線層の樹脂層からの剥がれを防止することができる。
【0013】
また、上記した配線接続構造を誘電体薄膜キャパシタに用いてもよい。この場合、第1の配線層と第3の配線層との間に介在する第2の配線層の破断の防止により、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散を確実に防止することができるため、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散に起因する寄生抵抗の増大が生じず、等価直列抵抗(ESR)が小さい誘電体薄膜キャパシタを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配線接続構造によれば、第1の配線層上に導電性の拡散防止膜を有する第2の配線層が形成されて、樹脂層に設けられたビア孔の一方の開口が第2の配線層上に配置される。すなわち、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散を防止するための第2の配線層が、第1の配線層上に形成されることで、従来の配線接続構造の拡散防止膜のように、ビア孔の内壁に沿って薄く形成されることにより生じる屈曲部が形成されずに第2の配線層が平板状に形成される。このように、第2の配線層に屈曲部が形成されない構造にすることで、線膨張係数の違いにより、温度変化時に第2の配線層が樹脂層から応力を受けた場合であっても、第2の配線層が破断するのを防止することができる。
【0015】
また、第3の配線層が樹脂層のビア孔に覗く第2の配線層に接続されることで、第3の配線層が第2の配線層を介して第1の配線層に接続されるため、第2の配線層が破断すると、破断箇所で接触した第1の配線層と第3の配線層との間で相互拡散が進行し、これにより、接続部の電気抵抗の増加、接続強度の低下、並びに配線電極層の消失が生じるおそれがある。しかしながら、この構成によると、第2の配線層の破断を防止することができるため、第2の配線層が有する拡散防止膜により、第1の配線層と第3の配線層との間の相互拡散を確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態にかかる配線接続構造を有する電子部品の一例である誘電体薄膜キャパシタ1ついて、
図1および
図2を参照して説明する。なお、
図1は第1実施形態にかかる配線接続構造を有する誘電体薄膜キャパシタの概略断面図、
図2は
図1のA領域の拡大図であり、誘電体薄膜キャパシタの配線接続構造を示す。
【0018】
この実施形態にかかる配線接続構造を有する誘電体薄膜キャパシタ1は、フォトダイオードに搭載されるものである。以下に、この誘電体薄膜キャパシタ1の製造方法の概略について、
図1を参照して説明する。
【0019】
まず、低抵抗のP型半導体基板2を用意し、該半導体基板2の一方主面上に、熱酸化法によりSiO
2からなる拡散防止層3を形成する。拡散防止層3の厚みは、例えば700nmとする。
【0020】
次に、拡散防止層3上に、チタン酸バリウムストロンチウム((Br,Sr)TiO
3;以下「BST」という)からなる密着層4、Ptからなる下部電極層5、BSTからなる誘電体層6、Ptからなる中間電極層7、BSTからなる誘電体層8、Ptからなる上部電極層9、BSTからなる保護層10を順に形成する。なお、層数はこれには限定されず、中間層7と誘電体層8とを省略して層数を減らしてもよく、逆に中間層7と誘電体層8とを更に追加して層数を増やしてもよい。
【0021】
密着層4は、例えば、拡散防止層3上に、Ba:Sr:Ti=7:3:10のモル比からなるMOD(Metal Organic Decomposition;有機金属分解)原料をスピンコートし、乾燥させた後に、酸素雰囲気中、650℃で30分間、高温昇温熱処理を行うことにより形成する。密着層4の厚みは、例えば50nmとする。
【0022】
下部電極層5は、例えば、Ptをスパッタ法により成膜することにより形成する。下部電極層5の厚みは、例えば200nmとする。
【0023】
誘電体層6は、例えば、Ba:Sr:Ti=7:3:10のモル比からなるMOD原料をスピンコートし、乾燥させた後に、酸素雰囲気中、650℃で10分間、高温昇温熱処理を行うことにより形成する。誘電体層6の厚みは、例えば100nmとする。
【0024】
中間電極層7は、下部電極層5と同じ形成方法で同じ厚みに形成する。
【0025】
誘電体層8は、誘電体層6と同じ形成方法で、同じ厚みに形成する。
【0026】
上部電極層9は、下部電極層5や中間電極層7と同じ形成方法で、同じ厚みに形成する。
【0027】
保護層10は、例えば、Ba:Sr:Ti=7:3:10のモル比からなるMOD原料をスピンコートし、乾燥させた後に、酸素雰囲気中、650℃で60分間、高温昇温熱処理を行うことにより形成する。保護層10の厚みは、例えば100nmとする。
【0028】
次に、フォトリソプロセスとイオンミリング法を用いて保護層10と上部電極層9とを加工する。続いて、同じくフォトリソプロセスとイオンミリング法を用いて誘電体層8と中間電極層7とを加工する。更に続いて、同じくフォトリソプロセスとイオンミリング法を用いて誘電体層6と下部電極層5と密着層4を加工する。この結果、半導体基板2上に形成された拡散防止層3上に、キャパシタ部11が形成される。
【0029】
続いて、キャパシタ部11のBSTからなる誘電体層6,8の結晶性を高め、誘電率を向上させるために、酸素雰囲気中、850℃で30分間、熱処理を行う。
【0030】
次に、キャパシタ部11が形成された半導体基板2の拡散防止層3上に、同じくSiO
2からなる無機絶縁層12を形成する。無機絶縁層12は、保護層と絶縁層の機能を有する。無機絶縁層12は、例えば、スパッタ法により形成し、その厚みを、1000nmとする。
【0031】
続いて、無機絶縁層12上に、感光性のPBO(ポジベンゾオキサゾール)を塗布、露光、現像し、例えば、窒素雰囲気中、320℃で硬化し、所望のパターン形状からなる第1の有機絶縁層13を形成する。第1の有機絶縁層13の厚みは、例えば6000nmとする。
【0032】
次に、上記した所望のパターン形状に形成された第1の有機絶縁層13をマスクとして、RIE(反応性イオンエッチング)法を用いて、無機絶縁層12と拡散防止層3とを加工し、半導体基板2に至る開口部14aを形成する。また、キャパシタ部11部分の無機絶縁層12と誘電体層6とを加工し、下部電極層5に至る開口部14bを形成する。更に、キャパシタ部11部分の無機絶縁層12と保護層10とを加工し、上部電極層9に至る開口部14cを形成する。
【0033】
次に、無機絶縁層12および第1の有機絶縁層13上に、Cu/Ti層からなる第1の引き出し電極層15を形成する。第1の引き出し電極層15は、第1の有機絶縁層13、無機絶縁層12、誘電体層6を貫通して形成された開口部14b内にも形成され、キャパシタ部11の下部電極層5と接続している。また、別の第1の引き出し電極層15は、第1の有機絶縁層13、無機絶縁層12、保護層10を貫通して形成された開口部14c内にも形成され、キャパシタ部11の上部電極層9と接続している。具体的には、第1の引き出し電極層15は、例えば、スパッタ装置で、100nmのTi層、1000nmのCu層の積層構造を形成し、フォトリソプロセスとウェットエッチングにより、所望のパターン形状に形成する。なお、
図1では、見やすくするため、下層のTi層と上層のCu層を1層で示している。
【0034】
次に、開口部14aの底面にリフトオフ法を用いて、300nmのAuからなる第1の配線層16を形成する。
【0035】
次に、第1の引き出し電極層15及び第1の有機絶縁層13上に、感光性のPBOを塗布、露光、現像し、所望のパターン形状からなる第2の有機絶縁層17(本発明の「樹脂層」に相当)を形成する。第2の有機絶縁層17には、該第2の有機絶縁層17を貫通して、第1の配線層16に至る開口部18aと、第1の引き出し電極層15に至る開口部18bと、同じく第1の引き出し電極層15に至る開口部18cとが形成されている。第2の有機絶縁層17の厚みは、例えば6000nmとする。
【0036】
次に、第2の有機樹脂層17上に、Cuからなる第3の配線層19を形成する。第3の配線層19は、第2の有機絶縁層17を貫通して形成された開口部18b、18c内にも形成され、第1の引き出し電極層15と接続している。また、第3の配線層19は、開口部18a内にも形成され、後述する第2の配線層20を介して、第1の配線層16に接続している。具体的には、第3の配線層19は、例えば、スパッタ装置で、1000nmのCuからなる配線電極膜19aを形成し、フォトリソプロセスとウェットエッチングにより、所望のパターン形状に形成する。なお、本発明の第1実施形態にかかる配線接続構造である、第1、第2、第3の配線電極16,20,19の接続構造については、その製造方法も含めて後に詳述する。
【0037】
次に、フォトリソプロセスによりレジストを形成して、第3の配線層19の配線電極膜19a上に、めっきにより、200nmの下層Ni、100nmの上層Auの2層構造からなる外部電極21を形成する。
【0038】
次に、外部電極21の表面を外部に露出させた状態で、第3の配線層19の配線電極膜19aおよび第2の有機絶縁層17上に、PBOからなる第3の有機絶縁層22を形成する。具体的には、第2の有機絶縁層17上に感光性のPBOを塗布、露光、現像し、例えば、窒素雰囲気中、320℃で硬化し、所望のパターン形状からなる第3の有機絶縁層22を形成する。
【0039】
最後に、半導体基板2の他方主面に、裏面電極23を形成して誘電体薄膜キャパシタ1を製造する。なお、裏面電極23は、例えば蒸着により形成された300nmのAu層からなる。
【0040】
(配線接続構造)
次に、
図1のA領域に示す第1の配線層16と第3の配線層19との接続配線構造について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0041】
この実施形態では、上記したように、第1の配線層16がAu(本発明の「第1金属」に相当)で形成されるとともに、第3の配線層19の配線電極膜19aがCuにより形成されている。ところで、AuとCuは相互拡散係数が高いため、第1の配線層16と第3の配線層19とを直接接続すると、その接続界面でAuとCuとが相互拡散してAuとCuとの合金が生成し、この合金により、前記接続界面で電気抵抗が上昇したり、接続強度が低下したりする。また、誘電体薄膜キャパシタ1においては、この合金の生成によりESRが増大したり、所望の容量が得られにくくなるため好ましくない。そこで、この実施形態では、第1の配線層16と第3の配線層19との間の配線接続構造に関し、両配線層16,19の相互拡散を防止することで、誘電体薄膜キャパシタ1のESR特性や容量特性などを高精度に設計することができるように構成されている。
【0042】
この配線接続構造は、
図2に示すように、半導体基板2の一方主面上にTi、Cr、Ni−Cr合金のいずれか(この実施形態ではTi)により形成された導電性の基板側密着層24と、該基板側密着層24上に形成された第1の配線層16と、該第1の配線層16上に形成された第2の配線層20と、該第2の配線層20上に一方の開口が配置される開口部18a(本発明の「ビア孔」に相当)を有し、半導体基板2の一方主面、第1の配線層16および第2の配線層20を被覆する第2の有機絶縁層17と、第2の有機絶縁層17に積層された第3の配線層19とを備え、第1の配線層16が第2の配線層20を介して第3の配線層19に接続される構造である。
【0043】
具体的には、半導体基板2の一方主面に形成された基板側密着層24は、半導体基板2と第1の配線層16の密着強度を向上する層として機能する。
【0044】
また、第1の配線層16上に形成された第2の配線層20は、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれか(この実施形態ではTi)により形成された導電性の拡散防止膜20aからなり、この実施形態では、拡散防止膜20aが第1の配線層16からはみ出さずに、平面視で第1の配線層16に収まる範囲内に形成されている。このとき、第2の配線層20の拡散防止膜20aは、第1の配線層16上に形成されることで平板状になるため、
図7に示す従来の配線接続構造の拡散防止膜103のような屈曲部103aが形成されない。なお、拡散防止膜20aは、第1の配線層16と第3の配線層19との間の相互拡散を防止する膜として機能する。また、第3の配線層19の配線電極膜19aを、A
l(Cu、A
lが本発明の「第2金属」に相当)で形成してもよく、この場合も、拡散防止膜20aは、第1の配線層16のAuと、A
lとの相互拡散を防止する膜として機能する。なお、拡散防止膜20aは、必ずしも、平面視で第1の配線層16に収まる範囲内に形成する必要はなく、第1の配線層16および基板側密着層24を被覆するように、半導体基板2に跨って形成されていてもよい。
【0045】
また、この実施形態における第2の有機絶縁層17に形成された開口部18aは、その一方の開口である下側開口18a1が、拡散防止膜20a上に配置される。すなわち、開口部18aの下側開口18a1は、その輪郭が平面視で拡散防止膜20aに収まる範囲内に形成される。また、開口部18aの他方の開口である上側開口18a2は、その径が下側開口18a1の径よりも大きく形成されており、第2の有機絶縁層17の開口部18aが紙面下側に向けて先細りのテーパ状に形成され、この開口部18aにより、拡散防止膜20aの一部が露出している。なお、開口部18aの下側開口18a1の径は、平面視で拡散防止膜20aに収まる範囲内であれば、適宜、変更可能である。
【0046】
第3の配線層19の配線電極膜19aは、第2の有機絶縁層17の開口部18aに覗く拡散防止膜20aに接続される。このとき、開口部18a内の配線電極膜19aは、
図2に示すように、当該開口部18aの内壁および開口部18aから露出した拡散防止膜20aに沿うように屈曲形成される。そして、配線電極膜19aの上面が第3の有機絶縁層22により被覆される。
【0047】
このように構成された配線接続構造では、拡散防止膜20aが、従来の構造の拡散防止膜103のような屈曲部103aがない平板状に形成されるため、線膨張係数の違いから、温度変化時に拡散防止膜20aが第2の有機絶縁層17から応力を受けた場合であっても、拡散防止膜20aが破断(例えば、
図7の拡散防止膜103の屈曲部103aでの破断)するのを防止することができる。
【0048】
(配線接続構造の製造方法)
次に、上記した配線接続構造の製造方法について、
図3および
図4を参照して説明する。なお、
図3および
図4それぞれは、この配線接続構造の製造方法を説明するための図であり、
図3(a)〜(f)はその各工程、
図4(a)および(b)は
図3(f)に続く各工程を示す。
【0049】
まず、
図3(a)に示すように、Siを主成分とする低抵抗の半導体基板2を用意して、該半導体基板2の一方主面の所定領域(基板側密着層24および第1の配線層16の形成領域)が露出するように開口したリフトオフ用レジストパターン25aをフォトリソグラフィ技術などを用いて形成する。
【0050】
次に、
図3(b)に示すように、リフトオフ用レジストパターン25aの上側に、真空蒸着法によりTi電極を成膜し、その後、同じく真空蒸着法によりこのTi電極上にAu電極を成膜する。
【0051】
次に、
図3(c)に示すように、リフトオフ用レジストパターン25aを除去することで、リフトオフにより、Ti電極からなる基板側密着層24およびAu電極からなる第1の配線層16を形成する。
【0052】
次に、
図3(d)に示すように、半導体基板2の一方主面、基板側密着層24および第1の配線層16を被覆するようにリフトオフ用レジストパターン25bをフォトリソフラフィ技術などを用いて形成する。このとき、リフトオフ用レジストパターン25bに、平面視(上面視)で第1の配線層16の上面(基板側密着層24との対向面の反対面)に収まる範囲内で開口部25b1を形成する。なお、第2の配線層20を第1の配線層16の上面の範囲を超えて形成する場合は、第1の配線層16の上面の全体が露出するように、開口部25b1の径を広げて形成するとよい。
【0053】
次に、
図3(e)に示すように、
図3(b)および(c)と同じ要領で、真空蒸着法によりTi電極を成膜して、リフトオフにより、Ti電極からなる第2の配線層20の拡散防止膜20aを形成する。このとき、拡散防止膜20aの膜厚を80nm程度に形成する。
【0054】
次に、
図3(f)に示すように、半導体基板2、基板側密着層24、第1の配線層16、拡散防止膜20aを被覆する第2の有機絶縁層17を形成する。このとき、第2の有機絶縁層17に、その一方の開口である下側開口18a1が拡散防止膜20a上に配置された開口部18aをフォトリソグラフィ技術などを用いて形成する。なお、第2の有機絶縁層17を形成する材料としてPBO樹脂を使用する。また第2の有機絶縁層17形成時の硬化処理は、例えば、320℃、30分の環境下で行う。
【0055】
このように形成された第2の有機絶縁層17の開口部18aは、他方の開口である上側開口18a2の径が、下側開口18a1の径よりも大きく形成されることで、紙面下側に向かうに連れて先細りしたテーパ状に形成される。そして、拡散防止膜20aは、その上面(第1の配線層16との対向面の反対面)の周縁が第2の有機絶縁層17により被覆された状態で、残りの部分が第2の有機絶縁層17から露出する。
【0056】
次に、
図4(a)に示すように、スパッタ法により、第2の有機絶縁層17の上面の全面(開口部18a内を含む)に渡ってCu電極を成膜し、フォトリソグラフィ技術を用いて、第3の配線層19を形成する配線電極膜19aのパターンニングを行う。このとき、Cu電極の膜厚を1000nm程度に形成する。このように配線電極膜19aを形成することで、第3の配線層19(配線電極膜19a)が、第2の有機絶縁層17の開口部18aに覗く第2の配線層20(拡散防止膜20a)に接続される。
【0057】
次に、
図4(b)に示すように、配線電極膜19aを被覆する第3の有機絶縁層22をフォトリソグラフィ技術などを用いて形成し、320℃、30分の環境下で第3の有機絶縁層22の樹脂を硬化させて本実施形態の配線接続構造を得る。このとき、第3の有機絶縁層22を形成する材料として、第2の有機絶縁層17と同じPBO樹脂を使用する。
【0058】
したがって、上記した実施形態によれば、第1の配線層16上に導電性の第2の配線層20の拡散防止膜20aが形成されて、第2の有機絶縁層17に設けられた開口部18aの一方の下側開口18a1が拡散防止膜20a上に配置される。すなわち、第1の配線層16と第3の配線層19の配線電極膜19aとの間の相互拡散を防止するための拡散防止膜20aが、第2の有機絶縁層17の形成前に、第1の配線層16上に形成されることで、
図7に示した従来の配線接続構造の拡散防止膜103のように、ビア孔(開口部102a)の内壁に沿って薄く形成されることにより生じる屈曲部103aが形成されずに拡散防止膜20aが平板状に形成される。このように、第2の配線層20の拡散防止膜20aに屈曲部がない構造にすることで、線膨張係数の違いにより、温度変化時に第2の配線層20が第2の有機絶縁層17から応力を受けた場合や、第2の有機絶縁層17が吸湿により膨張して第2の配線層20が第2の有機絶縁層17から応力を受けた場合であっても、第2の配線層20が破断するのを防止することができる。
【0059】
また、第3の配線層19の配線電極膜19aが第2の有機絶縁層17の開口部18aに覗く第2の配線層20の拡散防止膜20aに接続されることで、配線電極膜19aが拡散防止膜20aを介して第1の配線層16に接続されるため、拡散防止膜20aが破断すると、その破断箇所で第1の配線層16のAuと第3の配線層19の配線電極膜19aのCuとの間の相互拡散が進行して、接続部の電気抵抗の増加、接続強度の低下、並びに配線電極層の消失が生じるおそれがある。しかしながら、この実施形態にかかる配線接続構造によると、拡散防止膜20aを屈曲部のない平板状に形成することで、拡散防止膜20aの破断を防止することができるため、当該拡散防止膜20aにより、第1の配線層16と第3の配線層19の配線電極膜19aとの間の相互拡散を確実に防止することができる。
【0060】
また、第2の配線層20の拡散防止膜20aは、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいすれかで形成されるが、これらの金属または合金はいずれも、第1の配線層16を形成するAu電極と、Cu
またはA
lのいずれかにより形成された第3の配線層19の配線電極膜19aとの間の相互拡散および合金の生成を阻止する機能を有するため、第1の配線層16と第3の配線層19の配線電極膜19aとの間の相互拡散を防止する拡散防止膜に用いる材料として好適である。
【0061】
また、本実施形態にかかる配線接続構造を誘電体薄膜キャパシタ1に用いることで、第1の配線層16のAuと第3の配線層19の配線電極膜19aのCu(または、A
l)との間の相互拡散を確実に防止することができるため、第1の配線層16と第3の配線層19との間の相互拡散による寄生抵抗の増大が生じず、等価直列抵抗(ESR)が小さい誘電体薄膜キャパシタ1を提供することができる。
【0062】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態にかかる配線接続構造について、
図5を参照して説明する。なお、
図5はこの実施形態にかかる配線接続構造を説明するための図であり、第1実施形態にかかる配線接続構造を説明するために参照した
図2に対応する図である。
【0063】
この実施形態にかかる配線接続構造が、
図1および
図2を参照して説明した第1実施形態の配線接続構造と異なるところは、第3の配線層19が、第2の有機絶縁層17上(開口部18a内を含む)に積層された下側密着層19bと、該下側密着膜19b上に積層された配線電極膜19aと、該配線電極膜19a上に積層された上側密着膜19cとからなる多層構造で形成されている点である。その他の構成は、第1実施形態の配線接続構造と同じであるため、同一符号を付すことにより説明を省略する。なお、上側密着膜19cおよび下側密着膜19bそれぞれが、本発明における「密着膜」に相当する。
【0064】
この場合、上側、下側密着膜19b,19cそれぞれは、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれかで形成される。ところで、第1実施形態では、第3の配線層19の配線電極膜19aが、第2の有機絶縁層17および第3の有機絶縁層22に接触した状態で形成されているが、配線電極膜19aを形成するCu(または、A
l)は、第2、第3の有機絶縁層17,22を形成するPBO樹脂との密着性が比較的低いため、温度変化時に発生する内部応力などでPBO樹脂(第2、第3の有機絶縁層17,22)と配線電極膜19aの接触界面で剥離が生じる場合がある。これに対し、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれも、配線電極膜19aを形成する金属と比較して、第2、第3の有機絶縁層17,22を形成するPBO樹脂との密着性が高い。そこで、第3の配線層19の第2の有機絶縁層17に接触する部分に下側密着膜19bを配置するとともに、第3の有機絶縁層22に接触する部分に上側密着膜19cを配置することで、第3の配線層19と、第2または第3の有機絶縁層17,22の接触界面での剥離を防止することができる。
【0065】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態にかかる配線接続構造について、
図6を参照して説明する。なお、
図6はこの実施形態にかかる配線接続構造を説明するための図であり、第1実施形態にかかる配線接続構造を説明するために参照した
図2に対応する図である。
【0066】
この実施形態にかかる配線接続構造が、
図1および
図2を参照して説明した第1実施形態の配線接続構造と異なるところは、
図6に示すように、第2の配線層20が、拡散防止膜20aと、該拡散防止膜20a上に積層された酸化防止膜20bとの多層構造で形成されている点である。その他の構成は、第1実施形態の配線接続構造と同じであるため、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0067】
この場合、第2の配線層20の酸化防止膜20bがCuで形成される。ところで、第1実施形態の第2の配線層20は、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれかで形成された拡散防止膜20aのみの単層構造で形成されているが、Ti、Cr、Ni−Cr合金のいずれも、Cuと比較して酸化しやすい。したがって、例えば、第2の有機絶縁層17の硬化時の温度で、拡散防止膜20aにおける第2の有機絶縁層17の開口部18aから露出した部分が酸化する場合があり、このような場合には、拡散防止膜20aの酸化した部分で寄生抵抗成分が生じて、誘電体薄膜キャパシタ1の特性に影響を及ぼすおそれがある。
【0068】
そこで、拡散防止膜20aが第2の有機絶縁層17の開口部18aから露出しないように、拡散防止膜20aをCuからなる酸化防止膜20bで被覆することで、前記寄生抵抗成分が発生するのを防止することができる。
【0069】
なお、この実施形態では、第2の配線層20が、平面視(上面視)で第1の配線層16からはみ出さないように注意する必要がある。第2の配線層20が第1の配線層16からはみ出した状態で形成されると、該第1の配線層16の上面と半導体基板2の一方主面との段差により、第1の配線層16の周縁付近の第2の配線層20が不連続になり、第2の配線層20の酸化防止膜20bのCuと第1の配線層16のAuとが接触して、両金属間の相互拡散が生じるおそれがあるからである。
【0070】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、上記した第2実施形態の配線接続構造と第3実施形態の配線接続構造とを組み合わせてもかまわない。このようにすると、第3の配線層19と、第2および第3の有機絶縁層17,22との密着性を向上しつつ、第2の配線層20の拡散防止膜20aの酸化を防止することができる配線接続構造を提供することができる。
【0071】
また、上記した各実施形態では、第1の配線層16をAuにより形成し、第3の配線層19の配線電極膜19aをCu
またはA
lのいずれかにより形成した場合について説明したが、第1の配線層16を形成する金属および第3の配線層19の配線電極膜19aを形成する金属の関係は、逆であってもかまわない。すなわち、第1の配線層16を、Cu
またはA
lのいずれかにより形成し、第3の配線層19の配線電極膜19aをAuで形成するように構成してもかまわない。この場合も、各実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
また、本発明は、Au電極と、Cu
またはA
lのいずれかで形成される電極とを接続する種々の配線接続構造に適用することができる。