(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232849
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20171113BHJP
H01M 2/18 20060101ALI20171113BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20171113BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20171113BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20171113BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20171113BHJP
H01M 2/34 20060101ALI20171113BHJP
H01G 11/22 20130101ALI20171113BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20171113BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/04 Z
H01M2/18 Z
H01M10/0587
H01M10/0585
H01M6/02 Z
H01M4/02 Z
H01M2/34 B
H01G11/22
H01G11/52
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-178083(P2013-178083)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-82193(P2014-82193A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-213010(P2012-213010)
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】山根 久幸
(72)【発明者】
【氏名】植木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】小俵 敦史
【審査官】
冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−216399(JP,A)
【文献】
特開2011−165481(JP,A)
【文献】
特開2003−092100(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0003190(US,A1)
【文献】
特開2011−216403(JP,A)
【文献】
特開2011−210500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/22
H01G 11/52
H01M 2/18
H01M 2/34
H01M 4/02
H01M 6/02
H01M 10/0585
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極金属箔に正極活物質層を設けた正極シートと、負極金属箔に負極活物質層を設けた負極シートと、第1及び第2のセパレータとを、前記正極シートと前記負極シートとの間に前記第1又は第2のセパレータが介在するように重ね合わせて巻回してなる電極体を備え、
前記電極体は、
前記正極シート及び前記負極シートの少なくとも一方を前記第1及び第2のセパレータで包むように、前記第1のセパレータと前記第2のセパレータとを接合した接合部と、
前記接合部よりも外側に形成された、前記第1のセパレータと前記第2のセパレータが互いに分離している分離部と
を備える蓄電素子。
【請求項2】
前記正極シートは、帯状の前記正極金属箔の幅方向の一端に前記正極金属箔が露出した正極のリードが形成されるように、前記正極金属箔の両面に前記正極活物質層を設けてなり、
前記負極シートは、帯状の前記負極金属箔の幅方向の一端に前記負極金属箔が露出した負極のリードが形成されるように、前記負極金属箔の両面に前記負極活物質を設けてなり、
前記第1及び第2のセパレータは帯状であり、
前記電極体は、前記正極及び負極のリードがそれぞれ前記第1及び第2のセパレータの幅方向の両端のいずれか一方から突出するように、前記正極シート、前記負極シート、第1のセパレータ、及び第2のセパレータを重ね合わせて巻回してなり、
前記接合部は、前記正極シート及び前記負極シートの少なくとも一方について前記リードとは反対側の幅方向の一端を前記第1及び第2のセパレータで包むように、前記第1及び第2のセパレータを前記幅方向の一端側で接合してなり、
前記分離部は前記接合部よりも幅方向の外側に形成されている、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記接合部は、前記正極シートの前記リードとは反対側の幅方向の一端を前記第1及び第2のセパレータで包むように形成されている、請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記接合部は前記第1及び第2のセパレータを熱溶着することで形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記接合部は前記第1及び第2のセパレータを圧着することで形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記電極体は、前記接合部を設けることで前記第1及び第2のセパレータで包まれた前記正極シート及び前記負極シートの少なくとも一方の一端の端面に設けられた保護層を備える、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記保護層は絶縁性材料からなる、請求項6に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池を含む電池及びキャパシタのような蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池を含む電池及びキャパシタのような蓄電素子が備える電極体には、いずれも帯状である正極シート、負極シート、及び2枚のセパレータを重ね合わせて巻回した構造のものがある。正極シート及び負極シートの両面には活物質層が設けられ、幅方向の一端には活物質層が形成されず金属箔が露出するリードが設けられている。正極シートと負極シートとの間にはセパレータが介在している。リードはセパレータの幅方向の両端のいずれか一方から突出している。
【0003】
特許文献1に開示された二次電池が備える電極体は、正極シート及び/又は負極シートのリードとは反対側の幅方向の一端に、2枚のセパレータを接合した接合部を備える。接合部は、例えば巻回時に2枚のセパレータをヒートローラで熱融着することで形成される。接合部を設けることで、正極シート及び/又は負極シートのリードとは反対側の一端が2枚のセパレータで包まれ、この部分への異物の接触が防止される。異物には、例えば正極シート及び/又は負極シートのリードを集電体に超音波溶接する際に発生した金属片がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−216399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2枚のセパレータを接合した接合部はセパレータの幅方向の端部の最も外側に位置しているため、振動や衝撃等で接合部がリードや集電板に直接接触して接合部の接合強度が低下し、接合部で2枚のセパレータが分離する(接合が外れる)おそれがある。接合部で2枚のセパレータが分離すると、正極シート及び/又は負極シートを異物の接触から保護する機能が失われるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1には、セパレータの接合部を設けること以外に、正極シート及び/又は負極シートを異物の接触から保護するための手段は教示されていない。
【0007】
以上の理由より、特許文献1に開示された電極体では、正極シート及び/又は負極シートへの異物の接触を確実に防止することは困難である。
【0008】
本発明は、蓄電素子の電極体が備える正極シート及び/又は負極シートへの異物の接触を確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、正極金属箔に正極活物質層を設けた正極シートと、負極金属箔に負極活性物質層を設けた負極シートと、第1及び第2のセパレータとを、前記正極シートと前記負極シートとの間に前記第1又は第2のセパレータが介在するように重ね合わせて巻
回してなる電極体を備え、前記電極体は、前記正極シート及び前記負極シートの少なくとも一方を前記第1及び第2のセパレータで包むように、前記第1のセパレータと前記第2のセパレータとを接合した接合部と、前記接合部よりも外側に形成された、前記第1のセパレータと前記第2のセパレータが互いに分離している分離部とを備える蓄電素子を提供する。
【0010】
具体的な一態様では、前記正極シートは、帯状の前記正極金属箔の幅方向の一端に前記正極金属箔が露出した正極のリードが形成されるように、前記正極金属箔の両面に前記正極活物質層を設けてなり、前記負極シートは、帯状の前記負極金属箔の幅方向の一端に前記負極金属箔が露出した負極のリードが形成されるように、前記負極金属箔の両面に前記負極活物質を設けてなり、前記第1及び第2のセパレータは帯状であり、前記電極体は、前記正極及び負極のリードがそれぞれ前記第1及び第2のセパレータの幅方向の両端のいずれか一方から突出するように、前記正極シート、前記負極シート、第1のセパレータ、及び第2のセパレータを重ね合わせて巻回してなり、前記接合部は、前記正極シート及び前記負極シートの少なくとも一方について前記リードとは反対側の幅方向の一端を前記第1及び第2のセパレータで包むように、前記第1及び第2のセパレータを前記幅方向の一端側で接合してなり、前記分離部は前記接合部よりも幅方向の外側に形成されている。
【0011】
第1及び第2のセパレータを接合した接合部を設けることで、正極シート及び/又は負極シートの一端が2枚のセパレータで包まれ、この部分への異物の接触が防止される。異物には、例えば正極シート及び/又は負極シートを集電体に超音波溶接する際に発生した金属片がある。
【0012】
接合部の外側に、第1及び第2のセパレータが互いに接合されていない分離部が設けられている。分離部が存在することで、分離部が緩衝材の役割を果たすため、振動・衝撃等で接合部が正極シート及び/又は負極シートや集電板に直接接触して接合部の接合強度が低下することを防止できる。よって、接合強度低下によって接合部で2枚のセパレータが分離するのを防止できるので、正極シート及び/又は負極シートへの異物の接触を確実に防止できる。
【0013】
接合部は、第1及び第2のセパレータを熱溶着又は圧着することで形成できる。
【0014】
前記電極体は、前記接合部を設けることで前記第1及び第2のセパレータで包まれた前記正極シート及び前記負極シートの少なくとも一方の一端の端面に設けられた保護層を備えてもよい。
【0015】
保護層を設けることで、正極シート及び/又は負極シートへの異物の接触をより確実に保護できる。
【0016】
保護層は、アルミナのような絶縁性材料からなるものでもよい。これにより、金属箔の破片のような金属製の異物が接触することによる正極シート及び/又は負極シートの金属箔の電気化学的な損傷を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2枚のセパレータを接合した接合部の外側にこれらのセパレータが互いに分離された分離部を設け、それによって接合部における2枚のセパレータの接合強度を安定させることで、正極シート及び/又は負極シートへの異物の接触を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る非水電解質二次電池の分解斜視図。
【
図2】発電要素の模式的な断面図(
図1のII−II線)。
【
図4】発電要素の製造装置の熱融着部の模式的な斜視図。
【
図5A】比較例の場合の蛇行時の接合部を示す模式的な平面図。
【
図5B】実施形態の蛇行時の接合部を示す模式的な平面図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る非水電解質二次電池が備える発電要素の模式的な断面図。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る非水電解質二次電池が備える発電要素の模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る非水電解質二次電池(以下、単に電池という)1を示す。電池1は、上端が開口した容器2と、容器2の開口を閉鎖する蓋体3とで構成されたケーシング4を備える。ケーシング4の内部には、電極体5が収容されている。また、ケーシング4内に蓋体3に形成された注液口3aを介して電解液が充填されている。
【0021】
図2を併せて参照すると、電極体5は後に詳述する正極及び負極リード17,23を備え、これらのリード17,23は、それぞれ正極及び負極の集電体6A,6Bの脚部6aに電気的に接続されている。正極及び負極の集電体6A,6Bは、蓋体3から外部に突出するボルト状の接続部7aを有する正極及び負極の外部端子7A,7Bにそれぞれ電気的に接続されている。集電体6A,6Bと蓋体3の下面との間に下パッキン8が介装され、外部端子7A,7Bと蓋体3の上面との間には上パッキン9が介装されている。
【0022】
電極体5は、いずれも一定幅の長尺な帯状である正極シート11、負極シート12、及び微多孔性樹脂シートからなる2枚のセパレータ13,14を重ね合わせ、高扁平率の楕円筒状に巻回したものである。正極シート11の一つの層と、それに隣接する負極シート12の一つの層との間には、2枚のセパレータ13,14のうちの一方が介在している。
【0023】
正極シート11は、帯状の正極金属箔15と、この正極金属箔15の両面に形成された正極活物質層16とを備える。正極シート11の幅方向の一方(
図2において右側)の端部11aでは、正極活物質層16が側縁11cまで設けられている。正極シート11の幅方向の他方(
図2において左側)の端部11b付近には、正極活物質層16を設けずに正極金属箔15を露出させた正極リード17が設けられている。
【0024】
負極シート12は帯状の負極金属箔21と、この負極金属箔21の両面に形成された負極活物質層22とを備える。負極シート12の幅方向の一方側(
図2において左側)の端部12bでは、負極活物質層22が側縁12cまで設けられているが、負極シート12の幅方向の他方(
図2において右側)の端部12a付近には、負極活物質層22を設けずに負極金属箔21を露出させた負極リード23が設けられている。
【0025】
2枚のセパレータ13,14は、幅方向の一方の端部13a,14a(
図2において右側の端部)の位置と、他方の端部13b,14b(図において左側の端部)の位置とが、いずれも揃えられている。正極シート11と負極シート12は、正極リード17と負極リード23が2枚のセパレータ13,14の幅方向の端部13a〜14bの一方から突出するように、セパレータ13,14に対して幅方向の位置をずらしている。正極シート11については、正極リード17を設けた端部11bがセパレータ13,14の
図2において左側の端部13b,14bから突出し、正極リード17とは反対側の端部11aはセパレータ13,14の
図2において右側の端部13a,14aよりも幅方向の内側に位置している。負極シート12については、負極リード23を設けた端部12aがセパレータ13,14の
図2において右側の端部13a,14aから突出し、負極リード23とは反対側の端部12bはセパレータ13,14の
図2において左側の端部13b,14bよりも幅方向の内側に位置している。
【0026】
図1に示すように、セパレータ13,14から突出する正極リード17と負極リード23はクリップ24を介して集電体6A,6Bの脚部6aに接続されている。例えば、リード17,23とクリップ24が超音波溶接され、クリップ24と集電体6A,6Bの脚部6aが超音波溶接される。
【0027】
セパレータ13,14の一方(
図2において右側)の端部13a,14aでは、これらのセパレータ13,14を互いに接合した接合部26を設けている。接合部26は、概ね一定の幅W1(
図4参照)で正極及び負極電極シート11,12とセパレータ13,14の巻回方向(セパレータ13,14の長手方向)に連続して設けられている。本実施形態では、2枚のセパレータ13,14を熱溶着することで接合部26を形成している。2枚のセパレータ13,14を機械的に圧着することでも接合部26を形成できる。接合部26を設けたことで、正極シート11の端部11a(正極リード17とは反対側の端部)はセパレータ13,14で包まれている。
【0028】
正極シート11の端部11aをセパレータ13,14で包むことで、この部分への異物の接触が防止される。異物には、例えば負極シート12の負極リード23をクリップ24に超音波溶接する際に発生する金属片がある。正極シート11の正極金属箔15がアルミニウム製で負極シート12の負極金属箔21が銅製の場合がある。負極シート12の負極リード23、つまり負極金属箔21をクリップ24に超音波溶接する際に銅片が発生し、この銅片が正極シート11と接触すると、銅片が電気化学的に溶解し、イオンとなった銅が負極シート上に到達すると、負極シート上に銅が析出し、析出した銅がセパレータを突き破って正極と通電して微小な電流が流れ、電池電圧が低下する。セパレータ13,14の接合部26を設けてアルミニウム製の正極金属箔15を備える正極シート11を覆うことで、銅片が正極シートに接触して電気化学的に溶解することを防止できる。
【0029】
接合部26はセパレータ13,14の端部13a,14aの幅方向最も外側、すなわちセパレータ13,14の
図2において右側の側縁13c,14cまで設けられているのではない。接合部26からセパレータ13,14の側縁13c,14cとの間には、概ね一定幅W2(
図4参照)でセパレータ13,14を接合せずに互いに分離させている分離部27を設けている。分離部27が存在することで、分離部27が緩衝材の役割を果たすため、振動等で接合部26が正極シート11や集電体6Aに直接接触して接合部26の接合強度が低下することを防止できる。よって、接合強度低下によって接合部26で2枚のセパレータ13,14が分離するのを防止できるので、正極シート11への異物の接触を確実に防止できる。なお、分離部27は、
図2のように側縁13c,14cが接合部26から外側に向かって広がるように設けられていてもよいし、側縁13c,14cが重なるように設けられてもよい。
【0030】
図3は電極体5の製造装置30の概念的な模式図である。製造装置30は、4個の供給ボビン31〜34を備える。供給ボビン31,32には、正極シート11と負極シート12がそれぞれコイル状に巻き付けられている。また、供給ボビン33,34には、セパレータ13,14がそれぞれコイル状に巻き付けられている。供給ボビン31〜34から巻き出された正極シート11、負極シート12、及び2枚のセパレータ13,14は、互いに重ね合わせられた状態で、回転する巻枠35によって巻き取られる。巻枠35に巻き取られることで、重ね合わせた正極シート11、負極シート12、及び2枚のセパレータ13,14を多数回巻回した楕円筒状の電極体5が得られる。
【0031】
製造装置30は熱融着部36を備える。
図4を併せて参照すると、熱融着部36では供給ボビン33,34から巻き出された2枚のセパレータ13,14が重ね合わせされ、これらの間に供給ボビン31から巻き出された正極シート11が配置されている。正極シート11の正極リード17側の端部11bは、セパレータ13,14の端部13b,14bから突出している。一方、正極シート11の正極リード17とは反対側の端部11aは、セパレータ13,14の端部13a,14aよりも幅方向の内側に位置している。熱融着部36は、端部13a,14a付近でセパレータ13,14を挟み込む一対のヒートローラ37A,37Bと、端部13b,14b付近でセパレータ13,14と正極シート11を挟み込む送りローラ38A,38Bを備える。ヒートローラ37A,37Bと送りローラ38A,38Bは、巻枠35に向けてセパレータ13,14と正極シート11を送る方向に回転する。熱融着部36におけるセパレータ13,14と正極シート11の送り方向を
図4において矢印Aで示す。
【0032】
ヒートローラ37A,37Bはセパレータ13,14の端部13a,14a側の側縁13c,14cよりも幅W2だけ内側に位置している。セパレータ13,14の端部13a,14aがヒートローラ37A,37B間を通過する際に、ヒートローラ37A,37Bによる加熱及び加圧によって、セパレータ13,14が部分的に互いに熱融着されて幅W1の接合部26が形成される。接合部26よりも幅方向外側の部分の熱圧着されていないセパレータ13,14が幅W2の分離部27となる。
【0033】
熱融着部36を通過して接合部26が形成されたセパレータ13,14と正極シート11に供給ボビン32から巻き出された負極シート12が重ね合わせされ、巻枠35で巻き取られる。
【0034】
前述のように接合部26は熱融着ではなく圧着によっても形成できる。圧着により接合部26を形成する場合、
図3及び
図4のヒートローラ37A,37Bに代えて例えばメカニカルギアである一対の圧着ローラを配置すればよい。圧着ローラによる加圧によって、セパレータ13,14に接合部26が形成される。また、接合部26は両面テープや糊剤によっても形成できる。熱融着の場合、熱によってセパレータが収縮し、セパレータに皺が発生する場合があるが、両面テープや糊剤の場合は皺の発生をなくすことができる。
【0035】
図5A及び
図5Bを参照して、分離部27の機能を説明する。
【0036】
図5Aは、ヒートローラ37A,37B(前述のように圧着により接合部26を形成する場合は圧着ローラ)の外側位置が、セパレータ13,14の端部13a,14a側の側縁13c,14cに位置している場合を示す。この場合、矢印Bで示すように、セパレータ13,14がヒートローラ37A,37Bに対して、幅方向、すなわち矢印Aで示す送り方向(巻枠35による巻回方向)に直交する方向に変位(蛇行)すると、接合部26のセパレータ13,14上での幅方向の位置がずれる。この幅方向の位置のずれのために接合部26がセパレータ13,14の側縁13c,14cからはみ出し、その結果、接合部26は幅W1から幅W1’に部分的に狭まる。接合部26の幅が狭まると、2枚のセパレータ13,14の接合強度が低下する。接合強度低下により接合部26で2枚のセパレータ13,14が分離すると、正極シート11の端部11aを異物の接触から保護する機能が失われる。
【0037】
一方、本実施形態ではセパレータ13,14の接合部26よりも幅方向の外側に分離部27を設けている。そのため、
図5Bに示すように、ヒートローラ37A,37B(前述のように圧着により接合部26を形成する場合は圧着ローラ)の外側位置がセパレータ13,14の端部13a,14a側の側縁13c,14cよりも幅W2だけ内側に位置している。そのため、セパレータ13,14がヒートローラ37A,37Bに対して、幅方向に変位して接合部26のセパレータ13,14上での位置が幅方向の位置がずれても、接合部26がセパレータ13,14の側縁13c,14cからはみ出さない。つまり、セパレータ13,14がヒートローラ37A,37Bに対して幅方向にずれても接合部26の幅W1は狭まらず一定に維持される。接合部26の狭幅化が生じず必要な幅W1が確実に維持されるので、接合部26の接合強度が部分的に低下することがなく、接合部26でのセパレータ13,14の分離を防止できる。接合部26でのセパレータ13,14の分離を防止できるので、正極シート11の端部11aへの異物の接触を確実に防止できる。
【0038】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る電池が備える電極体5を示す。この実施形態の電池の全体的な構造は、第1実施形態と同様である(
図1参照)。
【0039】
正極シート11の端部11a側の端面11cには保護層41が設けられている。本実施形態では、保護層41は絶縁性材料からなる。絶縁性材料の例としてはアルミナがある。例えばアルミナペーストを正極シート11の端面11cに塗布することで絶縁性を有する保護層41を設けることができる。
【0040】
保護層41を設けることで、仮に接合部26でセパレータ13,14が分離した場合でも、正極シート11の端面11cに異物が接触するのを確実に防止できる。例えば正極金属箔15がアルミニウム製で負極金属箔21が銅製である場合、絶縁性を有する保護層41を設けることが特に有効である。具体的には、仮に負極金属箔21の超音波溶接時に発生した銅片が接合部26のセパレータ13,14の分離が生じた部分を通過して正極シート11の端面11cに到達したとしても、保護層41の存在による短絡が生じず、アルミニウム製の正極金属箔15の溶解は生じない。
【0041】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態に係る電池が備える電極体5を示す。この実施形態の電池の全体的な構造は、第1実施形態と同様である(
図1参照)。
【0042】
本実施形態の電極体5は、正極シート11の正極リード17とは反対側の端部11aを包むように設けたセパレータ13,14の接合部26に加え、負極シート12の負極リード23とは反対側の端部12bを包むようにセパレータ13,14の接合部46を設けている。つまり、セパレータ13,14の端部13a,14aと端部13b,14bの両方に接合部26,46を設けている。接合部46の外側部には分離部47が設けられている。接合部46を設けてセパレータ13,14で包むことにより、負極シート12の端部12bへの異物の接触を防止できる。分離部27,47が存在することで、分離部27,47が緩衝材の役割を果たすため、振動等で接合部26,46が正極シート11、負極シート12、あるいは集電体6A,6Bに直接接触して接合部26,27の接合強度が低下することを防止できる。よって、接合強度低下によって接合部26,47で2枚のセパレータ13,14が分離するのを防止できるので、正極シート11及び負極シート12の両方について異物の接触を確実に防止できる。第2実施形態と同様の保護層41(
図6参照)を正極シート11の端面11c及び負極シート12の端面12cの両方又はいずれか一方に設けてもよい。
【0043】
前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。特に、非水電解質二次電池を例に本発明を説明したが、同様又は類似の構造の電極体を備える他の電池及びキャパシタに本発明を適用できる。例えば、金属箔に間隔を開けて複数の活物質層を設けた正極シート及び負極シートを備える電極体に対し、本発明を適用できる。また、金属箔の幅方向の全体に活物質層を設けた正極シート及び負極シートを備える電極体に対しも、本発明を適用できる。さらに、セパレータを介在させて正極シートと負極シートとを積層した構造の電極体に対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 電池
2 容器
3 蓋体
3a 注液口
4 ケーシング
5 電極体
6A,6B 集電体
6a 脚部
7A,7B 外部端子
7a 接続部
8 下パッキン
9 上パッキン
11 正極シート
11a,11b 端部
11c 側縁
12 負極シート
12a,12b 端部
12c 側縁
13,14 セパレータ
13a,14b 端部
13b,14b 端部
13c,14c 側縁
15 正極金属箔
16 正極活物質層
17 正極リード
21 負極金属箔
22 負極活物質層
23 負極リード
24 クリップ
26 接合部
27 分離部
30 製造装置
31,32,33,34 供給ボビン
35 巻枠
36 熱融着部
37A,37B ヒートローラ
38A,38B 送りローラ
41 保護層
46 接合部
47 分離部