(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.第1の実施形態:
2.第2の実施形態:
3.第3の実施形態:
4.各種変形例:
【0019】
1.第1の実施形態:
図1は、本実施形態にかかるハードウェア構成およびソフトウェア構成を概略的に示している。
図2は、印刷ヘッド20の吐出孔面22(ノズル21の開口が形成された面)におけるCMYK毎の各ノズル列の一部と、このノズル列によって被印刷物に印刷されるドットを例示している。
図1では、パーソナルコンピューター(PC)40と、プリンター10とを示している。プリンター10はインクジェットプリンターに該当する。PC40及びプリンター10を含むシステムを、印刷装置と捉えてもよい。プリンター10は、印刷処理を制御するための制御ユニット11を有する。制御ユニット11では、CPU12が、ROM14等のメモリーに記憶されたプログラムデータ14aをRAM13に展開してOSの下でプログラムデータ14aに従った演算を行なうことにより、自機を制御するためのファームウェアが実行される。ファームウェアは、印刷制御部17等の機能をCPU12に実行させるためのプログラムである。
また、印刷制御部17は、位置判定部17a、分版処理部17b、ハーフトーン処理部17c、画像変更部17d、吐出制御部17e等の各機能を有する。これら各機能については後述する。
【0020】
印刷制御部17は、例えば、PC40や、プリンター10に外部より挿入された記憶メディア等から指定画像データを入力し、指定画像データからハーフトーンを生成する。そして、当該ハーフトーンに基づいた印刷を実現することができる。プリンター10の外部より挿入された記憶メディアとは、例えばメモリーカードMCであり、メモリーカードMCは、プリンター10の筺体に形成されたスロット部19に挿入される。また、印刷制御部17は、プリンター10に有線あるいは無線により接続されたスキャナー、デジタルスチルカメラ、携帯端末、さらにはネットワーク経由で接続されたサーバー等、種々の外部機器から指定画像データを入力することもできる。
【0021】
ここで、画像(image)とは、人間の目に見える写真、絵、イラスト、図、文字などで、オリジナルの形、色、遠近感を適切に表現するもののことである。また、画像データとは、画像を表現するデジタルデータを意味する。画像データに該当するものとして、ベクトルデータやビットマップ画像等が挙げられる。ベクトルデータ(vector data)とは、直線、円、円弧などの幾何学的図形を表現する命令及びパラメーターのセットとして保存される画像データをいう。ビットマップ画像(bit−mapped image)とは、画素(pixel)の配列によって記述される画像データである。画素とは、色又は輝度を独立に割り当てることができる、画像を構成する最小要素のことである。以下では特に、ユーザーがプリンター10に印刷させるために任意に指定した画像を表現する画像データを、指定画像データと呼ぶ。
【0022】
プリンター10は、複数種類のインク毎のインクカートリッジ23を搭載している。
図1の例では、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクに対応したインクカートリッジ23が搭載されている。ただし、プリンター10が使用する液体の具体的な種類や数は上述したものに限られず、例えば、ライトシアン、ライトマゼンダ、オレンジ、グリーン、グレー、ライトグレー、ホワイト、メタリックインク、プレコート液…等、種々のインクや液体を使用可能である。また、プリンター10は、各インクカートリッジ23から供給されるインクを多数のノズル21から吐出(噴射)する印刷ヘッド20を備える。また、インクカートリッジ23に含まれるインクは、顔料インクであってもよいし、染料インクであってもよい。また、これらを混合したものであってもよい。
【0023】
この第1の実施形態における印刷ヘッド20は、長尺形状をしたラインプリンター用ヘッドである。従って、プリンター10は、ラインインクジェットプリンターである。印刷ヘッド20は、例えば、プリンター10内の所定位置に固定されている。印刷ヘッド20では、被印刷物が動かされる方向(送り方向)と交わる(交差する)方向が長手方向であり、長手方向に複数のノズル21をつらねたノズル列を備える。当該長手方向は、ノズル列方向と表現することもできる。ここで、“交差”とは直交の意である。ただし、本明細書で言う直交とは、厳密な角度(90°)のみを意味するのではなく、製品の品質上許容される程度の角度の誤差を含む意味である。ノズル列は、上記長手方向における被印刷物の幅のうちの少なくとも被印刷物上の印刷可能な領域の幅に対応した長さを有する。また、ノズル列は、プリンター10が使用するインク種類毎に設けられている。
【0024】
被印刷物(print substrate)とは、印刷画像を保持する素材のことである。形状は長方形のものが一般的であるが、円形(例えばCD−ROM、DVD等の光ディスク)、三角形、四角形、多角形などがあり、少なくとも、日本工業規格「JIS P0001:1998 紙・板紙及びパルプ用語」に記載の紙・板紙の品種及び加工製品のすべてを含む。
【0025】
印刷制御部17は、上記ハーフトーンに基づいて、印刷ヘッド20や搬送機構16等を駆動するための駆動信号を生成する。印刷ヘッド20は、被印刷物に対してインクを吐出するものである。
図2に示すように、印刷ヘッド20のCMYK毎の各ノズル列は、上記送り方向に沿って並列している。CMYK毎の各ノズル列における上記長手方向のノズル密度(ノズル数/インチ)は、印刷ヘッド20の上記長手方向の印刷解像度(dpi)に等しい。そのため、印刷ヘッド20は、各色のノズル列からインクを吐出することで、被印刷物に対してC、M、Y、Kのドットが重ねあわされ、所望の画像を印刷する。
【0026】
図2の下側では、便宜上、Kのノズル列におけるドットを示している。ノズル列の内、ノズル(第1ノズル)21aはインクの吐出が不良となる不良ノズルである。ここで、ノズル21aに対して、送り方向に交差する方向(長手方向)において、隣り合うノズル21b、21bを第2ノズルとする。また、第2ノズル21bに対して長手方向に隣り合うノズル21c、21cを第3ノズルとする。
そして、符号30は、被印刷物に対してドットが形成される画像部を示している。画像部30は、第1ノズル21aによりドットが形成される画像部GP1、第2ノズル21bによりドットが形成される画像部GP2、第3ノズル21cによりドットが形成される画像部GP3と、を含む。上記のように、第1ノズル21aは不良ノズルであるため、画像部GP1にはドットが形成されておらず、被印刷物の表面の色が露出した、いわゆるドット抜けが生じている。このドット抜けは、被印刷物の送り方向に沿って、被印刷物に連続して形成されている。
【0027】
また、印刷ヘッド20は、ドットあたりのインク量が互いに異なる(小ドット、中ドット、大ドット)複数サイズのドットを吐出可能である。本実施形態では、プリンター10は通常の印刷処理においてはドットサイズが中ドット(第1のサイズ)のドットを印刷する。また、プリンター10は、後述するドットサイズ変更処理において、ドットサイズを大ドット(第2のサイズ)又は小ドット(第3のサイズ)に変更することができる。
【0028】
なお、CMYK毎の各ノズル列は、上記長手方向に沿ってノズル21が並んだ一列のノズル列のみで構成されてもよいし、平行であって且つ上記長手方向に所定ピッチずれた複数のノズル列で構成(いわゆる千鳥状に構成)されてもよい。
【0029】
また、印刷ヘッド20の各色のノズル列は、所定ノズル21を備えるヘッド31が組み合わさって構成されている。
図3は、ヘッド31の内部を説明する断面図である。ヘッド31は、
図3(a)に示すように、ケース32と、流路ユニット33と、圧力発生素子34とを有する。ケース32は、圧力発生素子などを収容して固定するための部材であり、例えばエポキシ樹脂等の非導電性の樹脂材によって作製される。
図3(b)に示すように、印刷ヘッド20は、このようなヘッド31が流路ユニット33に形成されたノズル21を同じ面に向けて配置されることで、構成されている。
【0030】
流路ユニット33は、流路形成基板33aと、ノズルプレート33bと、振動板33cとを有する。流路形成基板33aにおける一方の表面にはノズルプレート33bが接合され、他方の表面には振動板33cが接合されている。流路形成基板33aには、圧力室331、インク供給路332、及び、共通インク室333となる空部や溝が形成されている。この流路形成基板33aは、例えばシリコン基板によって作製されている。ノズルプレート33bには、複数のノズル21が設けられている。このノズルプレート33bは、導電性を有する板状の部材、例えば薄手の金属板によって作製されている。また、ノズルプレート33bは、グランド線に接続されてグランド電位になっている。
【0031】
圧力発生素子34は、電気機械変換素子の一例であり、駆動信号COMが印加されると長手方向に伸縮し、圧力室331内の液体に圧力変化を与える。この圧力変化を利用して、ノズル21からインク滴を吐出させることができる。圧力発生素子34は、例えば、周知の圧電素子により構成される。なお、振動板33cや接着層等が介在していることで、圧力発生素子34とノズルプレート33bとは電気的に絶縁された状態になっている。
【0032】
ヘッド内検出ユニット18は、圧力発生素子34に生じる残留振動をもとに、不良ノズルの位置を検出する。
図4は、ヘッド内検出ユニット18の構成の説明図である。また、
図5は、不良ノズルを検出する原理を説明する図である。
図4に示すように、ヘッド内検出ユニット18は、増幅部701と、パルス幅検出部702とを有する。
【0033】
ヘッド内検出ユニット18が不良ノズルを検出する原理を説明する。印刷制御部17から出力される駆動信号COMが、対応する圧力発生素子34に印加されると、当該圧力発生素子34と接する振動板33cが振動する。その振動板33cの振動はすぐに停止せず残留振動が生じる。このため、圧力発生素子34が残留振動に応じて振動して信号(逆起電圧、
図5(a))を出力する。
図5(a)は、圧力発生素子34が残留振動に応じて出力する信号を示す図である。周波数特性はヘッド内のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なるため、そのインク状態それぞれに対応する固有の電圧波形(振動パターン)が出力されることになる。そのため、圧力発生素子34からの信号がヘッド内検出ユニット18の増幅部701に入力すると、この信号に含まれる低周波成分をコンデンサC1と抵抗R1からなる高域通過フィルターによって除去し、オペアンプ701aにより所定の増幅率で増幅する。
【0034】
図5(b)は、オペアンプ701aの出力をコンデンサC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させた後の信号、及び基準電圧Vrefを示す図である。次に、オペアンプ701aの出力をコンデンサC2と抵抗R4からなる高域通過フィルターに通過させることにより、基準電圧Vrefを中心に上下に振動する信号に変換する。すなわち、これらはコンパレーター701bに入力される信号である。
【0035】
図5(c)は、コンパレーター701bからの出力信号を示す図である。すなわち、パルス幅検出部702に入力される信号である。そして、コンパレーター701bによって基準電圧Vrefと比較し、基準電圧Vrefより高いか否かによって信号を2値化する。以下、このように2値化された信号をパルスとも記載する。
【0036】
パルス幅検出部702は、
図5(c)に示されるパルスが入力されると、パルスの立ち上がりでカウント値をリセットし、その後のクロック信号毎にカウント値をインクリメントし、次のパルスの立ち上がりでのカウント値を印刷制御部17に出力する。印刷制御部17は、パルス幅検出部702の出力するカウント値に基づいて、すなわち、ヘッド内検出ユニット18から出力される検知結果に基づいて、圧力発生素子34の出力する信号の周期を検出することができる。この処理を各ノズルに対応する圧力発生素子34について順次行っていけば、各圧力発生素子34の周波数特性を検出することができる。このようにして検出された周波数特性は、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)によって異なる。すなわち、残留振動の振動パターンが、ヘッド31の内部のインク状態(正常、気泡の混入、インクの増粘、紙粉の密着)に応じて異なる。
【0037】
以上のように、ヘッド内検出ユニット18が残留振動に応じた周波数特性を有する振動パターンを出力することにより、印刷制御部17は、ヘッド内のインク状態(正常であるのか、又は、ヘッド内に気泡が混入したことによる異常が生じているのか、又は、インクの増粘により異常が生じているのか、又は、紙粉等の異物がノズルNzに密着して異常が生じているのか)を特定することができる。即ち、ノズル21毎にヘッド内検出ユニット18を接続することで、ヘッド内検出ユニット18は、各ノズルの状態を位置情報として把握することができる。
【0038】
搬送機構16は、モーター(不図示)やローラー(不図示)等を備え、印刷制御部17に駆動制御されることにより、上記送り方向に沿って被印刷物を搬送する。印刷ヘッド20の各ノズル21からインクが吐出されると、搬送中の被印刷物にドットが付着し、これにより上記ハーフトーンに基づいて画像が被印刷物上に再現される。
【0039】
プリンター10は、さらに操作パネル15を備える。操作パネル15は、表示部(例えば液晶パネル)や、表示部内に形成されるタッチパネルや、各種ボタンやキーを含み、ユーザーからの入力を受け付けたり、必要なユーザーインターフェイス(UI)画面を表示部に表示したりする。
【0040】
図6は、上述した構成下で行われる画像を印刷するための印刷制御処理をフローチャートにより示している。
図7は、プリンター10により処理が行われる画像データを示している。なお、
図7では、便宜上、第1ノズル21a(不良ノズル)が印刷を行う画素を含むデータの一部のみを示している。
【0041】
ステップS1では、印刷制御部17は、操作パネル15を介してユーザーから画像の印刷指示を受け付けると、指定画像データを取得する。指定画像データの取得は、印刷制御部17がPC40や記憶メディアや外部機器等の任意の情報源から取得する。
これ以外にも、ユーザーは、外部からプリンター10を遠隔操作可能な携帯端末等を操作することにより画像の印刷指示を行うことも可能である。またユーザーは、印刷部数、用紙サイズ、上記送り方向の印刷解像度等といった各種印刷条件も印刷指示と併せてプリンター10に対して指示可能である。
【0042】
ステップS2では、分版処理部17bは、入力画像に対して分版処理を行なう。つまり、指定画像データの表色系をプリンター10が使用するインク表色系に変換する。例えば、上述したように指定画像データが各画素の色をRGB値で表現する場合、画素毎にRGB値をCMYK毎の階調値(CMYK値)に変換することによりインク量データを得る。このような色変換処理は、任意の色変換ルックアップテーブルを参照することにより実行可能である。
図7(a)では、指定画像データの画素はCMYKの色毎に0から255(256階調)のいずれかで表現されている。
【0043】
ステップS3では、ハーフトーン処理部17cは、分版処理後の指定画像データに対してハーフトーン処理を施す。ハーフトーン処理の具体的手法は特に問わない。本実施形態では、ハーフトーン処理部17cは、所定のメモリー(例えばROM14)に予め格納されたディザマスクを用いたディザリングによりハーフトーン処理を実行する。このディザリングでは、ディザマスクに記録された各閾値と、指定画像データの各画素の階調値とが比較され、階調値が閾値以上の画素に対して、ドットの形成(ドットオン)を示す値が設定される。これ以外にも、誤差拡散法によりハーフトーン処理を実行してもよい。
そのため、ハーフトーン処理により、画素毎にドットの形成(ドットオン)又はドットの非形成(ドットオフ)を規定したハーフトーンが生成される。
図7(b)では、「2」が付与された画素がドットが形成される画素であり、「0」が付与された画素がドットが形成されない画素である。C、M、Y、Kの4色のインク量データで構成される場合、各色に応じたハーフトーンが生成される。
【0044】
ステップS4では、位置判定部17aは、ヘッド内検出ユニット18から供給される位置情報に基づいて、不良ノズル(第1ノズル)21aにより印刷が行われるハーフトーンの画素の位置を判定する。以下、第1ノズル21aにより印刷が行われる画素を単に、欠損画素P1とも記載する。
印刷ヘッド20がラインヘッドである場合、欠損画素の位置は、印刷ヘッド20内での不良ノズルの長手方向での配列順序と、ハーフトーンにおけるx方向での画素数との関係をもとに判定することができる。なお、
図7(b)では、欠損画素P1がy方向に配列している。
【0045】
ステップS5では、画像変更部17dは、ハーフトーンに含まれるドットに対してドットサイズを変更するドットサイズ変更処理を行なう。このドットサイズ変更処理では、一例として、2値(2、0)で構成されたハーフトーンを、大ドット(3)、中ドット(2)、小ドット(1)、ドット無し(0)から成る4値のハーフトーンに変更する。また、画像変更部17dは、第2ノズル21bから印刷されるべきドットを画像データで定まるドットサイズから大きく変更する。そして、画像変更部17dは、第3ノズル21cから印刷すべきドットを第2ノズル21bから印刷する変更後のドットよりサイズを小さく変更する。一例として、画像変更部17dは、第2ノズル21bで印刷される画素に対して、ドットを大ドットに変更する。また、第3ノズル21cで印刷される画素に対して、ドットを小ドットに変更する。
【0046】
図8は、
図6のステップS5において実行される処理を詳細に示すフローチャートである。また、
図9は、ドットサイズ変更を説明する図である。また、
図10は、ドットサイズ変更により変換されるハーフトーンを説明する図である。
【0047】
ステップS51では、画像変更部17dは、ハーフトーンに対して、ステップS4で判断された欠損画素P1を含む所定範囲の画素を参照する。
図9(a)では、画像変更部17dは、欠損画素の画素P1を含む15個(5×3)の画素を一度に参照している。以下、画像変更部17dにより一度に参照される画素を参照画素(所定領域)とも記載する。
【0048】
ステップS52では、画像変更部17dは、参照画素のDuty値を算出する。この第1の実施形態でのDuty値とは、単位面積における濃度を取得するものであり、参照画素に含まれる単色のドットの数に対応する。即ち、本発明のインク打ち込み量に相当する。本実施形態では、
図9(b)に示すように、5×3の参照画素の中で全ての画素がドット(2)となる場合は、Duty値を100%とする。また、
図9(c)に示すように、5×3の参照画素の中で9個の画素がドット(2)となる場合は、Duty値を60%となる。
無論、プリンター10が大ドット、中ドット、小ドットを印刷する場合、参照画素の全ての画素が大ドットとなる場合をDuty値が100%とするものであってもよい。
【0049】
そして、Duty値が所定閾値T1以上である場合(ステップS53:YES)、画像変更部17dは、ドットサイズを変更する頻度(以下、ドットサイズの変更頻度とも記載する)を高くして処理を行なう(ステップS54、S55)。即ち、Duty値が閾値T1以上である場合、被印刷物の該当画像部の濃度も高くなるため、ドット欠損も視認され易くなる。このような場合に、ドットサイズの変更頻度を高くし、ドット欠損の抑制を優先する。
【0050】
そのため、ステップS54では、画像変更部17dは、ハーフトーンにおける欠損画素P1に対して近傍1画素目の画素を大ドットに変更する。ここで、近傍1画素目とは、欠損画素P1に対してx方向に1画素分隣接する画素である。以下、このような画素を第2画素P2とも記載する。
図10では、第2画素P2は第1画素P1のx方向の両端にそれぞれ位置している。また、参照画素に含まれる第2画素P2の内、大ドットに変更する数は、後述するステップS56で変更する数に比べて多くする。例えば、参照画素に含まれる第2画素において、中ドット(2)となっている画素の全てを大ドット(3)に変更する。
図10では、ハッチングを付した画素が、ドットサイズが変換された画素である。
【0051】
ステップS55では、画像変更部17dは、欠損画素P1の近傍2画素目の画素を小ドットに変更する。ここで、近傍2画素目とは、欠損画素P1に対してx方向に2画素分隣に位置する画素である。以下、このような画素を第3画素P3とも記載する。
図10では、第3画素P3は第2画素P2に対してx方向での欠損画素P1とは反対側に位置している。また、参照画素に含まれる第3画素P3の内、小ドットに変更する数は、後述するステップS57で変更する数に比べて多くする。例えば、参照画素に含まれる第3画素P3において、中ドット(2)となっている画素の全てを小ドット(1)に変更する。なお、ドットサイズを変更する画素の位置を欠損画素の近傍1画素目と2画素目とすることは一例に過ぎない。
【0052】
一方、Duty値が所定閾値T1未満である場合(ステップS53:NO)、
図10(b)に示すように、画像変更部17dは、ドットサイズの変更頻度を少なくしてドットサイズ変更処理を行なう(ステップS56、S57)。即ち、Duty値が低い場合、被印刷物の該当画像部の濃度も低くなるため、ドット欠損も目に付きにくくなる。また、大ドットを発生させ過ぎると粒状性が悪化し画質が劣化する。そのため、ドットサイズの変更頻度を低くし、ドット抜け以外の画質劣化を抑制している。
【0053】
そのため、ステップS56では、画像変更部17dは、欠損画素P1に対して近傍1画素目の画素(第2画素P2)のドットを大ドットに変更する。ここで、ステップS54との違いは、大ドットに変換される第2画素P2の数が少なくなることである。例えば、参照画素に含まれる第2画素において、中ドット(2)となっている画素の半数以下を大ドット(3)に変更する。
【0054】
ステップS57では、画像変更部17dは、ハーフトーンにおける欠損画素P1に対して近傍2画素目の画素(第3画素P3)のドットを小ドットに変更する。ステップS55同様、小ドットに変更する画素の数は、ステップS54に比べて少なくなる。なお、ステップS54、S56を通じて、小ドットは、大ドットに比べて画像に与える影響が小さいため、小ドットに変更する頻度はDuty値に係わらず一定としてもよい。
【0055】
また、第2画素P2を大ドットとする位置や、第3画素P3を小ドットとする位置を、ハーフトーン処理で用いたディザマスクの閾値を用いて判断するものであってもよい。
図11は、ドットサイズを変更する画素の選択を説明する図である。
図11(a)は、参照画素に適用されるディザマスクを示している。
図11(a)では、各閾値を識別するために、(e1、f1)から(e5、f3)までの値を付している。ここで、e1〜e5は、x方向に対応する座標である。f1〜f3は、y方向に対応する座標である。また、
図11(b)は、ドットサイズが変換されたハーフトーンを示す。
図11(a)に示す各ディザマスクの閾値の内、ハッチングを付した閾値は、画素の階調値と比べて小さい値、(即ち、ハーフトーン処理において、ドットを「オン」に示す箇所)を示している。
【0056】
例えば、ステップS57において、画像変更部17dは、ドットを「オン」にした第3画素P3に対応するディザマスクの閾値の内、高い閾値に対応する第3画素P3を小ドットとする。
図11(a)では、画像変更部17dは、閾値(e1、f2)(85)、閾値(e5、f1)(95)を高い閾値として判断する。そのため、
図11(b)に示すように、ディザマスクの閾値(e5、f1)、閾値(e1、f2)に対応する第3画素P3の値が、小ドットを示す「1」に変更されている。
また、ステップS56において、大ドットとする第2画素P2の位置を、第2画素P2を「オン」とした閾値のうち、閾値が小さいものを適用するものであってもよい。
そのため、参照画素のDuty値に応じて、大ドット又は小ドットを設定する画素の位置や数を変化させるつど、ディザマスクを予め用意しておくことで、ディザマスクを用いて、ドットサイズの変更頻度をDuty値に応じて変化させることができる。
これ以外にも、ドットサイズを変更する画素の選択はランダムに行うものであってもよい。
【0057】
以下、ステップS58において、欠損画素P1を含む全ての参照画素が参照されていない場合(ステップS58:NO)、参照画素を移動する(ステップS59)。一方、ハーフトーンの全ての画素が参照されている場合(ステップS58:YES)、ステップS6に進む。
【0058】
図6に戻り、ステップS6では、吐出制御部17eは、ドットサイズを変更後のハーフトーンを印刷ヘッド20に転送すべき順に並べ替える処理を行う。当該並べ替えの処理によれば、ハーフトーンに規定された各ドットは、その画素位置およびインク種類に応じて、いずれのノズル列のいずれのノズル21によって、どのタイミングで形成されるかが確定される。かかる並べ替えの処理後のラスターデータ(ハーフトーンの一例)を、吐出制御部17eは印刷ヘッド20に順次送信することにより、各ノズル21からのドットの吐出を実行させる。これによりハーフトーンに基づいて画像が被印刷物上に再現される。
なお、上記ベクトルデータの状態からハーフトーンへ変更するまでの工程(ラスタライズ処理、色変換処理およびハーフトーン処理)を、ハーフトーン処理部17cが担当するとしてもよい。
【0059】
図12は、プリンター10により印刷されるドットを示す図である。この
図12においても、ノズル21aは、インクの吐出が不良となる不良ノズルである。また、
図12(a)は、本発明のドットサイズ変更を行った場合のドットを示している。また、
図12(b)は、第4ノズル21dから吐出されるインクにより、中ドットのドットが記録される場合を示している。
【0060】
図12(a)(b)を通して、不良ノズル21aからのインクの吐出が正常に行われないため、画像部GP1においてドット抜けが生じている。また、
図12(a)(b)を通して、ドット抜けが生じている画像部GP1の長手方向で隣接するドットを大ドットとすることで、ドットの印刷位置を画像部GP1まではみ出させている。その結果、画像部GP1におけるドット抜けが目に付き難くなっている。
【0061】
これに対して、
図12(b)では、画像部GP2が長手方向で隣接する画像部GP3側にまで浸食しているため、ドットが重なる部分と重ならない部分で濃度ムラが発生している。
一方で、
図12(a)では、画像部GP3のドットを小さくすることで、画像部GP2と画像部GP3との境界付近で、ドットが重なることを抑制している。そのため、画像部GP1により生じるドット抜けを画像部GP2で形成するドットで目立たなくするとともに、画像部GP2と画像部GP3との間で生じる濃度ムラを低減することができる。その結果、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0062】
2.第2の実施形態:
この第2の実施形態では、画像の色濃度に応じて、ドットのサイズの変更と濃度補正とを切り替える構成が第1の実施形態に比べて異なる。色濃度が低い淡い階調表現等の画像の場合、ドットのサイズを大きくすると、ドットが視認され易くなり、いわゆる粒状性が悪化する。そのため、このような画像に対しては、ドットのサイズを変更するのではなく、濃度補正を行うことで、ドット抜けを目立たなくする。
なお、この第2の実施形態においても、不良ノズルにより印刷が行われる指定画像データにおける画素を欠損画素P1とし、指定画像データにおける欠損画素P1の近傍1画素目を、第2画素P2とも記載する。同様に、指定画像データにおける欠損画素P1の近傍2画素目を、第3画素P3とも記載する。
【0063】
図13は、第2の実施形態に係る印刷処理を説明する図である。また、
図14は、第2の実施形態に係る印刷処理を説明するフローチャートである。
ステップS11では、印刷制御部17は、操作パネル15を介してユーザーから画像の印刷指示を受け付け、印刷指示に応じて任意の情報源から指定画像データを取得する。
ステップS12では、分版処理部17bは、入力画像に対して分版処理を行なう。つまり、指定画像データの表色系をプリンター10が使用するインク表色系に変更する。
【0064】
ステップS13では、位置判定部17aは、ヘッド内検出ユニット18から供給される位置情報に基づいて、指定画像データ(即ち、ハーフトーン前の画像データ)に対して、参照画素に欠損画素P1が含まれているか否かを判断する。即ち、このステップにおいては、位置判定部17aは、階調値により規定された指定画像データに対して欠損画素P1の位置を特定する。ハーフトーン処理の前後で、指定画像データの画素数とハーフトーンの画素数が同じであれば、位置判定部17aは、ノズル列内での不良ノズル21aの位置に応じて、欠損画素P1の位置を特定する。
一方、ハーフトーン処理の前後で、指定画像データの画素数とハーフトーンの画素数が異なる場合は、位置判定部17aは、ノズル列内での不良ノズル21aの位置と、変換される画素数の関係とに応じて、欠損画素P1の位置を特定する。
【0065】
参照画素(以下に示す5×3の画素群)に欠損画素P1が含まれていない場合(ステップS13:NO)、ステップS20に進み、ハーフトーン処理部17cは、参照画素に対応する画素をハーフトーン処理する。そして、指定画像データを構成する全ての画素を参照していない場合(ステップS21:NO)、ステップS22に進み、参照画素を変更する。そして、ステップS13に戻る。
【0066】
一方、参照画素に欠損画素P1が含まれている場合(ステップS13:YES)、ステップS14では、画像変更部17dは、欠損画素P1を含む参照画素のDuty値を取得する。ここでは、Duty値は、指定画像データにおける単位面積における濃度を取得するものであり、参照画素に含まれる単色のドットの階調値に応じて算出される。例えば、参照画素を構成する全ての画素の階調値が255である場合をDuty値100%とし、参照画素を構成する全ての画素の階調値が0である場合をDuty値0%とする。そして、各画素の階調値の組合せに応じて、0%から100%の間で階調値が変化する。
【0067】
参照画素のDuty値が閾値T2以上である場合(ステップS15:YES)、ステップS16では、ハーフトーン処理部17cは、指定画像データに対してハーフトーン処理を施す。閾値T2は、参照画素の濃度が淡い場合を想定した値である。例えば、そのDuty値(濃度)を25%としている。
【0068】
そして、ステップS17では、画像変更部17dは、ハーフトーンに含まれるドットに対してドットサイズを変更するドットサイズ変更処理を行なう。このドットサイズ変更処理では、2値(2、0)で構成されたハーフトーンを、大ドット(3)、中ドット(2)、小ドット(1)、ドット無し(0)から成る4値のハーフトーンに変更する。また、このとき、画像変更部17dは、欠損画素P1の近傍の画素である画素P2に対して、ドットを大ドットに変更する。また、第2画素P2の近傍の画素である第3画素P3に対して、ドットを小ドットに変更する。
【0069】
一方、参照画素の濃度が閾値T2未満であるが(ステップS15:NO)、閾値T3以上である場合(ステップS18:YES)、ステップS19では、画像変更部17dは、参照画素に対して濃度補正処理を行なう。濃度補正処理は、欠損画素P1近傍の第2画素P2に対して濃度を増加させるよう補正し、第2画素P2の近傍の第3画素P3に対して濃度を減少させるよう補正を行う。そのため、
図13に示すように、ドット抜けが生じる画像部GP1の近傍の画像部GP2の濃度を濃くすることで、ドット抜けを目立たなくする。又、濃度が濃くなった画像部GP2の近傍の画像部GP3の濃度を低くすることで、濃度ムラを低減し、画質劣化を抑制している。
【0070】
図15は、ステップS19において実行される処理を詳細に示すフローチャートである。また、
図16、17は、濃度補正処理を説明する図である。
図16(a)は、濃度補正の概念を説明する図である。この濃度補正では、欠損画素P1でのドット抜けにより生じる明度変化を誤差とし、この誤差を周囲の画素(P2、P3)に反映させることで、欠損画素P1を含む参照画素の濃度を補正している。
【0071】
まず、ステップS191では、画像変更部17dは、指定画像データに対して欠損画素P1を含む参照画素の階調値を参照する。この第2の実施形態では、一例として、欠損画素P1を含む5×3の画素を参照画素としている。
【0072】
ステップS192では、画像変更部17dは、参照画素に含まれる各画素の階調値を明度に変更する。階調値から明度への変換方法としては、予め、階調値と明度との対応関係を記録したルックアップテーブルを記録しておき、画像変更部17dが、これを参照するものであってもよい。これ以外にも、周知の変換式を用いて、画像変更部17dが、階調値から明度へ変換を行うものであってもよい。一般的には、階調値が高くなるに従い、明度は低くなる。
【0073】
ステップS193、S194では、画像変更部17dは、欠損画素P1の近傍の第2画素P2に対して第1の濃度補正を行なう。この第1の濃度補正では、第2画素P2の明度を欠損画素P1の明度変化(誤差)に基づいて低減することで、結果として第2画素P2の濃度を増加させている。
まず、ステップS193では、画像変更部17dは、欠損画素P1と第2画素P2との明度を補正するための補正値である平均明度補正値Abv1を算出する。ここで、平均明度補正値Abv1とは、欠損画素P1の近傍の2つの第2画素P2に反映されるドット抜けにより生じる平均明度の差(誤差)を示している。
【0074】
図16(b)は、平均明度補正値Abv1の算出方法を示している。
図16(b)では、参照画素に含まれる各画素の位置を、x方向及びy方向の座標を用いて特定している。
図16(b)では、参照画素に含まれる各画素のx方向の位置をx=Xh(h:1〜m)を用いて識別し、y方向の位置をy=Yj(j:1〜n)を用いて識別している。mは参照画素のx方向に配列する画素の数であり、
図16(b)では、5である。また、nは、参照画素のy方向に配列する画素の数であり、
図16(b)では、3である。以下、(X3、Yj)と記載するときは、参照画素に含まれる位置(X3、Y1)、(X3、Y2)、(X3、Y3)の各欠損画素P1を示すものとする。また、(X2、Yj)と記載するときは、参照画素に含まれる位置(X2、Y1)、(X2、Y2)、(X2、Y3)の各第2画素P2を示すものとする。そして、(X4、Yj)と記載するときは、参照画素に含まれる位置(X4、Y1)、(X4、Y2)、(X4、Y3)の各第2画素P2を示すものとする。さらに、(X1、Yj)と記載するときは、参照画素に含まれる位置(X1、Y1)、(X1、Y2)、(X1、Y3)の第3画素P3を示すものとする。また、(X5、Yj)と記載するときは、参照画素に含まれる位置(X5、Y1)、(X5、Y2)、(X5、Y3)の第3画素P3を示すものとする。
【0075】
平均明度補正値Abv1の算出方法としては、参照画素に含まれる欠損画素P1の明度を、ドット抜けによって明度が100(最大明度)となったと仮定した仮想の明度に変更する。
図16(b)の左上に示す参照画素では、
図16(b)の左下に示す参照画素と比べて、欠損画素P1の明度が100に置き換わっている。そして、このときの参照画素に含まれる欠損画素P1と第2画素P2との平均明度(補正係数a)を下記の式(1)を用いて算出する。
【数1】
明度ip1
(X3,Yj)は、ドット抜けによって明度が最大明度(
図16(b)では、100)となったと仮定した場合の位置(X3、Yj)の欠損画素P1の仮想の明度である。また、明度p2
(X2,Yj)は、参照画素に含まれる位置(X2、Yj)の第2画素P2の明度の値である。そして、明度p2
(X4,Yj)は、参照画素に含まれる位置(X4、Yj)の第2画素P2の明度の値である。
図16(b)では、jは1〜3の値を取る。
式(1)では、参照画素の各画素列に含まれる明度ip1
(X3,Yj)、明度p2
(X2,Yj)、明度p2
(X4,Yj)の平均明度を求め、各画素列での平均明度を平均化することで、補正係数aが求められる。例えば、明度ip1
(X3,Yj)の平均明度が100であり、明度p2
(X2,Yj)及び明度p2
(X4,Yj)の平均明度がそれぞれ50となる場合、式(1)に代入することで、補正係数aは、67((100+50+50)/3)となる。
【0076】
次に、5×3の参照画素に含まれる欠損画素P1の実際の明度と第2画素P2の明度との平均明度を補正係数bとして下記式(2)をもとに算出する。
【数2】
明度p1jは、参照画素内に含まれる位置(x3、yj)の各欠損画素P1の実際の明度である。
図16(b)の下図では、jは1〜3の値を取る。式(2)では、参照画素のそれぞれの画素列に含まれる明度p1
(X3,Yj)、明度p2
(X2,Yj)、明度p2
(X4,Yj)の平均明度を求め、各画素列の平均明度を平均化することで、補正係数bが求められる。
そのため、明度p1
(X3,Yj)の平均値が80であり、明度p2
(X2,Yj)の平均明度がそれぞれ50である場合、各値を式(2)に代入することで、補正係数aは、60((80+50+50)/3)となる。
【0077】
次に、補正係数aと補正係数bとを用いた下記式(3)より平均明度補正値Abv1を算出する。
【数3】
平均明度補正値Abv1は、補正の前後で変化する明度差を近傍の2つの第2画素P2に配分する補正値である。そのため、補正係数aが67であり、補正係数bが60である場合、各値を式(3)に代入することで、平均明度補正値Abv1は、10.5((67−60)×
3/
2)となる。
【0078】
図16(c)は、平均明度補正値Abv1を用いた第2画素P2の明度の補正を説明する図である。
ステップS194では、画像変更部17dは、平均明度補正値Abv1を用いて第2画素P2の明度を補正する(第1の明度補正)。例えば、下記に示す式(4)を用いて、第2画素P2の値を補正する。
【数4】
補正後の明度P♯2
(Xh,Yj)は、参照画素の位置(Xh、Yj)に位置する第2画素P2の補正後の明度である。なお、
図16では、hは、2又は4である。明度平均p2は、補正対象の第2画素p2が属する位置((X2、Yj)又は(X4、Yj))の明度の平均値である。この第1の明度補正は、参照画素に含まれる全ての第2画素P2の明度に対して適用される。
そのため、第2画素P2の明度が50、y方向に並ぶ3画素の明度平均が50、平均明度補正値Abvが10.5である場合、各値を式(4)に代入することで、補正後の明度p#2
(Xh,Yj)は、39.5(50−1×10.5)となる。
図16(c)では、参照画素の(X2、Yj)及び(X4、Yj)に位置する全ての第2画素P2の明度が、
図16(b)で示した50から39.5に補正されている。
【0079】
次に、ステップS195、S196では、画像変更部17dは、参照画素(5×3)に含まれる第2画素P2の近傍の第3画素P3に対して第2の濃度補正を行なう。
図17は、第2の濃度補正を説明する図である。この第2の濃度補正では、補正後の第2画素の明度変化に基づいて、第3画素P3の明度を増加することで、結果として第3画素P3の濃度を減少させている。
【0080】
ステップS195では、画像変更部17dは、第2の濃度補正を行うために用いられる平均明度補正値Abv2を算出する。ここで、平均明度補正値Abv2は、第1の濃度補正により生じた平均明度の差(誤差)を、第2画素P2の近傍の1つの第3画素P3に反映させるための値である。
【0081】
図17(a)は、平均明度補正値Abv2の算出方法を示している。
まず、参照画素の各画素列に含まれる補正後の第2画素P2の明度と、第3画素P3の明度との平均明度である補正係数cを下記式(5)及び式(6)を用いて算出する。
【数5】
【数6】
補正係数c(c1、c2)は、欠損画素P1に隣接するいずれかの第2画素P2における補正後の明度(p#2
(X2、Yj)、p♯2
(X4、Yj))と、各第2画素P2に隣接する第3画素P3の明度(p3
(X1、Yj)、p3
(X5、Yj))の平均明度を求め、各平均明度を平均化することで、補正係数cが求められる。
即ち、式(5)で算出される補正係数c1は、参照画素の位置(X2、Yj)の第2画素P2の補正後の明度p♯2
(X2、Yj)と、この第2画素P2に隣接する位置(X1、Yj)の第3画素明度p3
(X1、Yj)とをもとに算出される値である。また、式(6)で算出される補正係数c2は、参照画素の位置(X3、Yj)の第2画素P2の補正後の明度p♯2
(X3、Yj)と、この第2画素P2に隣接する位置(X5、Yj)の第3画素明度p3
(X5、Yj)とをもとに算出される値である。
例えば、補正後の第2画素P2の明度p#2の平均明度が39.5であり、第3画素の明度p3の平均明度が75である場合、各値を式(5)又は式(6)に代入することで、補正係数cは57.25((39.5+75)/2)となる。
【0082】
次に、参照画素の各画素列に含まれる、補正前の第2画素P2と、第3画素P3との平均明度を下記式(7)(8)を用いて補正係数d(d1、d2)として算出する。この補正係数dも、補正係数cと同様、第3画素P3のそれぞれの画素列に対して算出される。
【数7】
【数8】
式(7)で算出される補正係数d1は、参照画素の位置(X2、Yj)の第2画素P2の明度p2
(X2、Yj)と、この第2画素P2に隣接する位置(X1、Yj)の第3画素明度p3
(X1、Yj)とをもとに算出される値である。また、式(8)で算出される補正係数d2は、参照画素の位置(X4、Yj)の第2画素P2の明度p2
(X4、Yj)と、この第2画素P2に隣接する位置(X5、Yj)の第3画素明度p3
(X5、Yj)とをもとに算出される値である。
例えば、第2画素P2の平均明度が50であり、第3画素P3の平均明度p3が75である場合、各値を式(7)又は(8)に代入することで、補正係数dは62.5((50+75)/2)となる。
【0083】
次に、補正係数cと補正係数dとを用いた下記式(9)(10)より平均明度補正値Abv2を算出する。
【数9】
【数10】
平均明度補正値Abv2
1は、位置(X1、Yj)の第3画素P3の明度に対して適用される補正値であり、c1とd1とに基づいて算出される。また、平均明度補正値Abv2
2は、位置(X5、Yj)の第3画素P3の明度に対して適用される補正値であり、c2とd2とに基づいて算出される。例えば、補正係数cが57.25であり、補正係数dが62.5である場合、平均明度補正値Abv2は、各値を式(9)又は(10)に代入することで、−10.5((57.25−62.5)×2)となる。
【0084】
図17(b)は、平均明度補正値Abv2を用いた第3画素P3の明度の補正を説明する図である。
ステップS196では、画像変更部17dは、こうして算出された平均明度補正値Abv2を用いて、第3画素P3の明度を補正する。下記式(11)(12)は、第3画素P3の明度を補正する式である。
【数11】
【数12】
明度平均p3
(X1、Yj)は、位置(X1、Yj)の第3画素の明度平均値である。また、明度平均p3
(X5、Yj)は、位置(X5、Yj)の第3画素の明度平均値である。例えば、第3画素P3の明度が75であり、平均明度補正値Abv2が−10.5である場合、各値を式(11)又は(12)に代入することで、補正後の第3画素P3の明度p#3は、85.5(75−1×(−10.5))となる。この第2の明度補正は、参照画素の該当する画素列に含まれる全ての第3画素P3に対して適用される。一例として示す
図17では、平均明度補正値Abv2
2が算出されており、位置(X5、Yj)の第3画素に適用される。平均明度補正値Abv2を、各画素列で算出し、式(11)(12)の補正を行うことで、
図17(b)で示すように、参照画素に含まれる全ての第3画素P3の明度が、
図17(a)で示した75から85.5に補正される。そのため、補正後の第2画素P2の明度の増加分が近傍の第3画素P3に反映され、第3画素P3の明度が高くなっている。
【0085】
そして、ステップS197では、参照画素に含まれる各画素の明度を階調値に逆変更する。
図17(c)は、各画素の値が明度から階調値に変更された参照画素を示す。各画素の明度を階調値に変換する方法は、ステップS192と同様、ルックアップテーブルや、周知の変換式を用いて行うことができる。
図17(c)では、第1の濃度補正と、第2の濃度補正により、欠損画素P1の近傍の第2画素P2の階調値は、127から154へ増加し、第2画素P2の近傍の第3画素P3の階調値は、75から50へ減少している。
【0086】
図14に戻り、ステップS20では、ハーフトーン処理部17cは、画像データに対してハーフトーン処理を施す。そして、指定画像データを構成する全ての画素を参照していない場合(ステップS21:NO)、ステップS22に進み、参照画素を変更する。そして、ステップS13に戻り、一連の処理を繰返す。
一方、指定画像データを構成する全ての画素を参照している場合(ステップS21:YES)、ステップS23では、吐出制御部17eは、ハーフトーンを印刷ヘッド20に転送すべき順に並べ替える処理を行う。かかる並べ替えの処理後のラスターデータ(ハーフトーンの一例)を、吐出制御部17eは印刷ヘッド20に順次送信することにより、各ノズル21からのドットの吐出を実行させる。これによりハーフトーンに基づいて画像が被印刷物上に再現される。
【0087】
一方、参照画素のDuty値が閾値T3未満である場合(ステップS18:NO)、画像変更部17dは、参照画素に対して濃度補正処理を行うことなく、ステップS20に進む。Duty値が閾値T3未満である場合、ドット抜けが視認し難いほど参照画素は淡い画像であるからである。そのため、ステップS20では、濃度補正が行われない指定画像データに基づいて、ハーフトーンが生成される。
【0088】
以上、説明したように、この第2の実施形態では、指定画像データの濃度に応じて、ドットのサイズ変更と、濃度補正とを切り替える。被印刷物に印刷される画像の色濃度がある値を下回ると、ドットサイズが大きくなることで粒状性が悪化することが想定される。そのため、上記のように構成されることで、大ドットの発生量を抑え、粒状性の悪化を抑制することができる。
【0089】
3.第3の実施形態:
プリンター10は、ラインプリンター用ヘッドとしての印刷ヘッド20を有することを前提としてこれまでの説明を行った。しかしプリンター10は、上記送り方向と交差する方向を走査軸方向として移動可能な印刷ヘッド20を有する、いわゆるシリアルプリンターであってもよい。
【0090】
図18は、シリアルプリンター用ヘッドとしての印刷ヘッド20を示す図である。
印刷ヘッド20では、C、M、Y、Kの各色のノズル列は、複数のノズル21を、送り方向にそれぞれ配列している。そのため、この第3の実施形態では、不良ノズル21aの近傍の第2ノズル21bは、不良ノズル21aに対して送り方向で隣り合う位置となる。また、第2ノズル21bの近傍の1画素目の第3ノズル21cは、第2ノズル21bに対して送り方向で隣り合う位置となる。
このような構成とすることで、シリアルプリンターにおいて、送り方向と公差する方向でのノズル抜けを目立ちにくくしつつ、画質を向上させることができる。
【0091】
4.各種変形例:
変形例1:
図19は、第1及び第2の実施形態の変形例を示す図である。
この変形例では、ドットサイズ変更処理において、第2ノズル21bにより形成されるドットを大ドットとするが、第3ノズル21cはドットを形成しない。即ち、ドット抜けが生じる画像部GP1の近傍の画像部GP2には大ドットが形成されるが、画像部GP3にはドットが形成されない。
かかる構成とすることで、上記した第1及び第2の実施形態と同様、ドット欠損を近傍の大ドットで目立たなくすることができる。又、画像部GP2と画像部GP3のドットが重ならないため、大ドットによって生じる濃度ムラを抑制することができる。
更に、ハーフトーンを大ドット、中ドット、ドット無しの3値によって構成できるため、2パターン(大ドット、中ドット)しか形成できない印刷ヘッド20においても、本発明を適用することができる。
また、画像部GP1は大ドットが形成されるようにしつつ、画像部GP3に対しては濃度が薄くなるよう濃度補正処理を行なうものであってもよい。
【0092】
変形例2:
位置判定部17aが取得する位置情報は、ヘッド内検出ユニット18から供給されるものに限定されない。例えば、ユーザーが操作パネル15を操作して吐出不良が生じているノズルの位置を位置情報として入力するものであってもよい。この場合、ユーザーは、例えば、C、M、Y、Kの各色のベタ画像をプリンター10に印刷させる。そして、ユーザーがこのベタ画像を観察し、ドット抜けが生じている画素列を判断する。こうして、判断された画素列をもとに、不良ノズルの位置を位置情報として、ユーザーが操作パネル15を操作してプリンター10に入力することで、プリンター10は不良ノズルの位置を判断することが可能となる。
かかる構成とすることで、ヘッド内検出ユニット18を備えないプリンター10においても、本発明を適用することができる。
更に、ヘッド内検出ユニット18が圧力発生素子34の残留振動を検出できない、サーマル型のプリンターにおいても、ドット抜けを目立たなくすることができる。
【0093】
変形例3:
上述した、ドットサイズの変更頻度は、インクの種別(顔料、染料)又は、被印刷物の種別に応じて設定するものであってもよい。一般に染料インクは、顔料インクに比べて、インクが被印刷物に滲み易いことが知られている。また、被印刷物の種別においても、ボール紙は、印刷用紙やコート紙に比べてインクが滲み易いことが知られている。そのため、プリンター10で使用するインクや被印刷物がドットの滲みを生じ易いものである場合、画像変更部17dは、大ドットにおけるドットサイズの変更頻度を低くする。ここで、プリンター10により使用するインクや用紙を画像変更部17dが判断する手法として、ユーザーが予めUI画面を通じて使用するインクや被印刷物の種類を入力し、入力結果を判断すればよい。
このように構成することで、ドット抜けを目立たなくしつつ、インクの滲みにより生じる画質の劣化を抑制することができる。
【0094】
変形例4:
これまでは各処理をプリンター10が実行する場合を例に説明を行なったが、当該処理の少なくとも一部がPC40側で行なわれるとしてもよい。例えば、プリンタードライバー41が、プログラムに従ってドットサイズが変換されたハーフトーンを生成し、このハーフトーンをプリンター10に出力する。そして、プリンター10は、このハーフトーンに応じた印刷を実行させるとしてもよい。
【0095】
また、本明細書においてプリンター10が使用する液体には、インク以外にも、水分や溶剤の蒸発によってその粘性が変化し得る液体や流体であれば、あらゆるものが該当する。 また、プリンター10が使用する被印刷物の具体例として、枚葉紙、ロール紙、板紙、紙、不織布、布、アイボリー、アスファルト紙、アート紙、色板紙、色上質紙、インクジェット用紙、印刷せんか紙、印刷用紙、印刷用紙A、印刷用紙B、印刷用紙C、印刷用紙D、インディアペーパー、薄葉印刷紙、薄葉和紙、裏カーボン紙、エアメールペーパー、衛生用紙、エンボス紙、OCR紙、オフセット紙、カード用厚紙、化学繊維紙、加工用紙、画仙紙、型紙、片つやクラフト紙、壁紙原紙、紙糸原紙、紙ひも原紙、感圧複写紙、感光紙、感熱紙、雁皮紙、缶用板紙、黄板紙、擬革紙、切符用紙、機能紙、キャストコート紙、京花紙、局紙、金属蒸着紙、金属はく紙、グラシン、グラビア用紙、クラフト紙、クラフト伸張紙、クラフトボール、クレープ紙、軽量コート紙、ケーブル用絶縁紙、化粧板用原紙、建材原紙、ケント紙、研磨原紙、合成紙、合成繊維紙、コート紙、コンデンサ紙、雑種紙、更紙、さらしクラフト紙、ジアゾ感光紙、紙管原紙、磁気記録用紙、紙器用板紙、辞典用紙、遮光紙、重袋用量更クラフト紙、純白ロール紙、証券用紙、障子紙、上質紙、情報用紙、食品容器原紙、書籍用紙、書道用紙、白板紙、白ボール、新聞巻取紙、吸取紙、水溶紙、図画用紙、筋入りクラフト紙、すの目紙、スピーカーコーン紙、静電記録用紙、生理用紙、紙綿用紙、積層板原紙、石こうボード原紙、接着紙原紙、セミ上質紙、セメント袋用紙、セラミックペーパー、ソリッドファイバーボード、ターフェルト原紙、ターポリン紙、耐アルカリ紙、耐火紙、耐酸紙、耐油紙、タオル用紙、壇紙、段ボール、段ボール原紙、地図用紙、チップボール、中質紙、中性紙、ちり紙、つや消しアート紙、ティーバック用紙、ティッシュペーパー、電気絶縁紙、典具帖、貼合紙、転写紙、トイレットペーパー、統計機カード用紙、謄写板原紙、塗工印刷用紙、塗工紙原紙、鳥の子、トレーシングペーパー、中しん原紙、ナプキン原紙、難燃紙、NIP用紙、荷札用紙、粘着紙、ノーカーボン紙、はく離紙、ハトロン紙、バライタ紙、パラフィン紙、ろう紙、バルカナイズドファイバー、半紙、PPC用紙、筆記用紙、微塗工印刷用紙、フォーム用紙、連続伝票紙、複写原紙、プレスボード、防湿紙、奉書紙、防水紙、防せい紙、放包装用紙、ボンド紙、マニラボール、美濃紙、書院紙、ミルクカートン原紙、模造紙、油紙、吉野紙、ライスペーパー、シガレットペーパー、ライナー、ライナ、硫酸紙、両更クラフト紙、ルーフィング原紙、ろ紙、和紙、ワニスペーパー、ワンプ、軽量紙、風乾紙、湿潤強力紙、無灰紙、無酸紙、無仕上紙又は板紙、二層紙又は板紙、三層紙又は板紙、多層紙又は板紙、無サイズ紙、サイズ紙、ウーブペーパー、木目紙又は板紙、マシン仕上げ紙又は板紙、マシン光沢仕上げ紙又は板紙、プレート光沢仕上げ紙又は板紙、摩擦光沢仕上げ紙又は板紙、カレンダ処理紙又は板紙、スーパーカレンダ処理紙、ラミン(紙又は板紙)、片面着色紙又は板紙、両面着色紙又は板紙、ツインワイヤ紙又は板紙、ラグペーパー、オールラグペーパー、機械パルプ紙又は板紙、混合わらパルプ紙又は板紙、水仕上げ紙又は板紙、チップボール、合わせチップボール、ミルボード、強光沢ミルボード、同質板紙、機械パルプ板紙、褐色機械パルプ板紙、褐色混合パルプ板紙、擬革板紙、石綿板紙、フェルトボード、タール褐色紙、ウオータリーフペーパー、表面サイズ紙、プレスパン、プレス用紙、しわ付き仕上げ紙、はり合わせアイボリー、ブレード塗工紙、ロール塗工紙、グラビア塗工紙、サイズプレス塗工紙、ブラッシュ塗工紙、エアナイフ塗工紙、押出塗工紙、ディップ塗工紙、カーテン塗工紙、ホットメルト塗工紙、溶剤塗工紙、エマルジョン塗工紙、バブル塗工紙、イミテーションアート紙、聖書用紙、ポスター用紙、包装用ティッシュ、原紙、カーボン原紙、ジアゾ感光紙原紙、写真用印画紙原紙、冷凍食品用紙原紙:直接接触紙用、冷凍食品用紙原紙:非接触紙用、安全紙、銀行券用紙、絶縁紙又は板紙、ラミネート絶縁体用紙、ケーブル用電気絶縁紙、靴底用板紙、織物紙管用紙、紋紙又は板紙、圧搾用板紙、製本用板紙、衣服箱用板紙、紙型用紙、記録用紙、クラフトライナー、検定済みライナー、クラフト張りライナー、古紙ライナー、封筒用紙、折畳み箱用板紙、塗工折壁み箱用板紙、さらしパルプ裏打ち折畳み箱用板紙、タイプライタ用紙、謄写版複写用紙、スピリット複写用紙、カレンダロール用紙、薬きょう用紙、波形加工用紙、波形加工紙、二層タール紙、強化二層タール紙、布張り紙又は板紙、布しん紙又は板紙、補強紙又は補強板紙、張合わせ板紙、カートンコンパクト、上張り、パルプ成型品、ウエットクレープ、検索カード、カーボン紙、マルチコピーフォーム用紙、裏カーボンフォーム用紙、ノーカーボンフォーム用紙、封筒、郵便はがき、絵入りはがき、郵便書簡、絵入り郵便書簡などがあげられ、とくに、機能紙には、植物繊維に限らず無機・有機・金属繊維など幅広い素材を用い、製紙及び加工の工程で高機能が付与され、主に情報・電子・医用などの先端分野の素材として用いられるものを含むが、これに限られるものではない。