特許第6232880号(P6232880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232880有機ELパネルの製造装置及び有機ELパネルの製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232880
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】有機ELパネルの製造装置及び有機ELパネルの製造方法。
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20171113BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H05B33/10ZIT
   H05B33/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-199958(P2013-199958)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-69698(P2015-69698A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 智宏
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−322612(JP,A)
【文献】 特開2009−152357(JP,A)
【文献】 特開2001−223077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極が形成された支持基板に少なくとも有機発光層を含む機能層と第2電極とを形成する有機ELパネルの製造装置であって、
前記支持基板の前記第1電極の膜厚を測定し、前記第1電極の膜厚に基づいて前記支持基板に複数のランク情報のいずれかを設定する膜厚測定装置と、
前記支持基板に前記機能層と前記第2電極とを形成する工程を行い、また、前記工程を行う際に、前記膜厚測定装置で設定される前記ランク情報を受信して前記ランク情報に基づいて前記機能層の少なくとも1層の膜厚条件を補正する成膜装置と、
前記膜厚測定装置と前記成膜装置との間に設置され、前記膜厚測定装置から搬送される複数の前記支持基板を保管し、保管された複数の前記支持基板を順次前記成膜装置に向けて搬送する基板保管装置と、を備え
前記基板保管装置は、前記膜厚測定装置から搬送される前記支持基板の前記ランク情報を受信し、前記ランク情報毎に前記支持基板の枚数を計数し、前記支持基板を前記成膜装置に向けて搬送する際に、搬送する前記支持基板の前記ランク情報を前記成膜装置に向けて送信するとともに、最も枚数が多いランク情報が設定された支持基板を続けて前記成膜装置に向けて搬送する、
ことを特徴とする有機ELパネルの製造装置。
【請求項2】
前記機能層として前記第1電極と前記有機発光層が発する光の波長に対する光学定数nが同一あるいは近似する層を含み、
前記成膜装置は、前記工程を行う際に、前記ランク情報に基づいて前記層の膜厚条件を補正することを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネルの製造装置。
【請求項3】
前記層は、前記第1電極と前記有機発光層との間に形成される正孔注入層及び/あるいは正孔輸送層であることを特徴とする請求項に記載の有機ELパネルの製造装置。
【請求項4】
第1電極が形成された支持基板に少なくとも有機発光層を含む機能層と第2電極とを形成する有機ELパネルの製造方法であって、
膜厚測定装置において、前記支持基板の前記第1電極の膜厚を測定し、前記第1電極の膜厚に基づいて前記支持基板に複数のランク情報のいずれかを設定し、前記ランク情報の設定後、前記支持基板を基板保管装置に搬送し、
前記基板保管装置において、前記膜厚測定装置から搬送される複数の前記支持基板を保管し、保管された複数の前記支持基板を順次成膜装置に向けて搬送し、
前記基板保管装置において、前記支持基板を保管する際に、前記膜厚測定装置から搬送される前記支持基板の前記ランク情報を受信し、前記ランク情報毎に前記支持基板の枚数を計数し、前記支持基板を前記成膜装置に向けて搬送する際に、搬送する前記支持基板の前記ランク情報を前記成膜装置に向けて送信するとともに、最も枚数が多いランク情報が設定された支持基板を続けて前記成膜装置に向けて搬送し、
前記成膜装置において、前記支持基板に前記機能層と前記第2電極とを形成する工程を行うに際し、前記ランク情報に基づいて前記機能層の少なくとも1層の膜厚条件を補正する
ことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極により有機発光層が挟持された有機エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence;EL)素子を備えた有機ELパネルの製造装置及び有機ELパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自発光素子であるためバックライト照明が不要であること、視野角が広く、大型の表示パネルに適すること等から有機EL素子を用いた有機ELパネルが近年注目されている。
このような有機ELパネルは、例えば、ガラス材料からなる支持基板の所定箇所に、所定パターンの陽極である透明電極(第1電極)を形成し、この透明電極上に絶縁層,正孔注入層,正孔輸送層,有機発光層,電子輸送層,電子注入層などを順次積層して機能層を形成し、前記機能層上に陰極である背面電極(第2電極)を積層形成して有機EL素子を得て、この有機EL素子を封止基板によって気密的に覆うことで得られるものである。
【0003】
かかる有機ELパネルの製造装置として、有機EL素子を構成する各部(正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,電子注入層,背面電極)に対応する複数の蒸着室を有する蒸着装置に透明電極及び絶縁層が予め形成された支持基板を投入し、この蒸着装置に備えられる各蒸着室を制御するコントロール装置によって設定される蒸着温度及び各層の膜厚等の生産条件に基づいて、支持基板上に有機EL素子を形成するとともに、有機EL素子が形成される支持基板を封止装置内に投入し、有機EL素子を覆うように支持基板と前記封止基板とを接合することで有機ELパネルを得るものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−27213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような有機ELパネルの製造においては、所望の発光色(色度)を得るために有機EL素子の総膜厚(第1電極〜第2電極までの各部の合計膜厚)が定められる。しかしながら、支持基板に予め形成される第1電極は、基板毎にその膜厚に数十nm程度の範囲でバラツキがあり、蒸着装置において第1電極以外の各部の膜厚を均一に制御しても基板毎に有機EL素子の総膜厚が異なり、所望の発光色が得られない場合があるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、第1電極の膜厚のバラツキにかかわらず、所望の発光色の有機ELパネルを得ることが可能な有機ELパネルの製造装置及び有機ELパネルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の有機ELパネルの製造装置は、第1電極が形成された支持基板に少なくとも有機発光層を含む機能層と第2電極とを形成する有機ELパネルの製造装置であって、前記支持基板の前記第1電極の膜厚を測定し、前記第1電極の膜厚に基づいて前記支持基板に複数のランク情報のいずれかを設定する膜厚測定装置と、前記支持基板に前記機能層と前記第2電極とを形成する工程を行い、また、前記工程を行う際に、前記膜厚測定装置で設定される前記ランク情報を受信して前記ランク情報に基づいて前記機能層の少なくとも1層の膜厚条件を補正する成膜装置と、前記膜厚測定装置と前記成膜装置との間に設置され、前記膜厚測定装置から搬送される複数の前記支持基板を保管し、保管された複数の前記支持基板を順次前記成膜装置に向けて搬送する基板保管装置と、を備え、前記基板保管装置は、前記膜厚測定装置から搬送される前記支持基板の前記ランク情報を受信し、前記ランク情報毎に前記支持基板の枚数を計数し、前記支持基板を前記成膜装置に向けて搬送する際に、搬送する前記支持基板の前記ランク情報を前記成膜装置に向けて送信するとともに、最も枚数が多いランク情報が設定された支持基板を続けて前記成膜装置に向けて搬送する、ことを特徴とする。
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の有機ELパネルの製造方法は、第1電極が形成された支持基板に少なくとも有機発光層を含む機能層と第2電極とを形成する有機ELパネルの製造方法であって、膜厚測定装置において、前記支持基板の前記第1電極の膜厚を測定し、前記第1電極の膜厚に基づいて前記支持基板に複数のランク情報のいずれかを設定し、前記ランク情報の設定後、前記支持基板を基板保管装置に搬送し、前記基板保管装置において、前記膜厚測定装置から搬送される複数の前記支持基板を保管し、保管された複数の前記支持基板を順次成膜装置に向けて搬送し、前記基板保管装置において、前記支持基板を保管する際に、前記膜厚測定装置から搬送される前記支持基板の前記ランク情報を受信し、前記ランク情報毎に前記支持基板の枚数を計数し、前記支持基板を前記成膜装置に向けて搬送する際に、搬送する前記支持基板の前記ランク情報を前記成膜装置に向けて送信するとともに、最も枚数が多いランク情報が設定された支持基板を続けて前記成膜装置に向けて搬送し、前記成膜装置において、前記支持基板に前記機能層と前記第2電極とを形成する工程を行うに際し、前記ランク情報に基づいて前記機能層の少なくとも1層の膜厚条件を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれは、第1電極の膜厚のバラツキにかかわらず、所望の発光色の有機ELパネルを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る有機ELパネルの製造装置を示すブロック図である。
図2】同上実施形態に係る有機ELパネルの製造装置を示す概観図である。
図3】同上実施形態に係る蒸着装置における蒸着室を説明する図である。
図4】同上実施形態に係る封止装置における封止室を説明する図である。
図5】同上実施形態に係る膜厚測定装置及び支持基板保管装置を示すブロック図である。
図6】同上実施形態に係る支持基板保管装置における保管棚を示す図である。
図7】同上実施形態に係る有機ELパネルを説明する図である。
図8】同上実施形態に係る支持基板保管装置のタッチパネルの表示例を示す図である。
図9】同上実施形態に係る有機ELパネルの製造工程を説明する図である。
図10】同上実施形態に係る支持基板の払い出し工程を説明する図である。
図11】同上実施形態及び比較例における支持基板の払い出し順と正孔注入層の膜厚条件変更の有無との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき説明する。
【0012】
図1及び図2は、本発明の実施形態である有機ELパネルの製造装置を示すものである。係る有機ELパネルの製造装置は、蒸着装置Aと、封止装置Bと、コントロール装置Cと、ライン端末Dと、膜厚測定装置Eと、支持基板保管装置(基板保管装置)Fと、支持基板投入装置Gと、接着剤塗布装置Hと、封止基板投入装置Jと、取出装置Kと、から構成されている。
【0013】
蒸着装置Aは、第1,第2ブロックA1,A2を有しており、各ブロックA1,A2内は真空状態が確保されている。第1ブロックA1は、プラズマ処理工程を行う前処理室A11と、正孔注入層形成工程を行う第1蒸着室A12と、正孔輸送層形成工程を行う第2蒸着室A13と、第1発光層(有機発光層)形成工程を行う第3蒸着室A14と、第2発光層(有機発光層)形成工程を行う第4蒸着室A15と、第1ブロックA1の各蒸着室A12〜A15における有機ELパネルの表示形態に応じた蒸着マスク(機種毎の蒸着マスク)を保管する第1蒸着マスク保管室(第1のストック部)A16と、支持基板投入装置Gに接続され、支持基板を蒸着装置A内に投入するための投入室A17と、を有している。前述した各部屋間の支持基板の搬送には、サーボモータ等の駆動手段によって回転可能に設けられ、各部屋の奥行き方向及び高さ方向に移動可能な搬送ロボット(交換装置)A18が用いられる。また各蒸着室A12〜A15,前処理室A11及び第1蒸着マスク保管室A16には、メンテナンスを行うための開閉扉A19がそれぞれ設けられている。
【0014】
蒸着装置Aの第2ブロックA2は、第3発光層(有機発光層)形成工程を行う第5蒸着室A21と、第4発光層(有機発光層)形成工程を行う第6蒸着室A22と、電子輸送層形成工程を行う第8蒸着室A23と、電子注入層形成工程を行う第7蒸着室A24と、背面電極(第2電極)形成工程を行う第9蒸着室A25と、第2ブロックA2の各蒸着室A21〜A25における有機ELパネルの機種に応じた蒸着マスク(機種毎の蒸着マスク)を保管する第2蒸着マスク保管室(第1のストック部)A26と、を有している。前述した各部屋間の支持基板の搬送には、サーボモータ等の駆動手段によって回転可能に設けられ、各部屋の奥行き方向及び高さ方向に移動可能な搬送ロボット(交換装置)A27が用いられる。また各蒸着室A21〜A25及び第2蒸着マスク保管室A26には、メンテナンスを行うための開閉扉A28がそれぞれ設けられている。
【0015】
また、蒸着装置Aの第1,第2ブロックA1,A2間には、各ブロックA1,A2を接続する第1受渡室Mが設けられている。第1受渡室Mは、第1ブロックA1側及び第2ブロックA2側にそれぞれ設けられるシャッター機構と、各シャッター機構間に設けられ、後述する支持基板を第1ブロックA1側から第2ブロックA2側へと搬送するスライド機構と、を有し、各ブロックA1,A2にそれぞれ設けられる搬送ロボットA18,A27によって前記支持基板の受け渡しがなされる。
【0016】
ここで、図3を用いて、蒸着装置Aの第1,第2ブロックA1,A2に配設されている各蒸着室(A12〜A15,A21〜A25)について説明する。蒸着室は、排気ポート1を介して図示しない真空ポンプで高真空に排気された真空室2を有している。真空室2の下側には、蒸着材料3を収納するルツボ(クヌンセンセル)4が配設されており、このルツボ4には、加熱コイル5が捲回されるとともに、加熱コイル5による加熱温度を正確にルツボ4に伝達するための熱遮蔽板6がルツボ4及び加熱コイル5の外側を覆うように配設される。またルツボ4には、ルツボ4の温度を検出するための熱電対等からなる温度センサ7が設けられている。温度センサ7は、後述する生産管理情報に基づいて各蒸着室の蒸着温度制御を行うためのコントロール装置Cへ蒸着温度データを出力するもので、コントロール装置Cは、前記生産管理情報に基づく蒸着温度になるように加熱コイル5に対してフィードバック制御(電流量調整)を行い、ルツボ4の温度を前記生産管理情報に基づく適正温度になるように制御するものである。
【0017】
一方、真空室2の上側には、ガラス材料からなる透光性基板であり、正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,電子注入層及び背面電極を形成するための支持基板101を備えた基板ホルダー8と、支持基板101に所定の蒸着パターンを形成するための蒸着マスク9を備えたマスクホルダー10とを、ルツボ4が配設される蒸着源に対し位置決め保持するための保持機構11が備えられている。
【0018】
また、真空室2内において、ルツボ4と支持基板101との間には、成膜される各層の膜厚を制御するシャッター12と、膜厚を測定する膜厚計13とが配設される。従ってコントロール装置Cは、成膜領域14を膜厚計13によって測定し、この膜厚計13によって得られた成膜データに基づいて所定の演算を行い、この演算結果から支持基板101に形成される各層の膜厚を算出するとともに、シャッター12を動作(シャッター12の開閉動作)させることで各層の膜厚を管理する。
【0019】
封止装置Bは、封止基板と支持基板101とを紫外線硬化型接着剤(以下、UV硬化型接着剤という)を介し接合するため、両基板を重ね合わせた状態で紫外線を照射する封止室B1と、有機ELパネルの機種に応じて紫外線照射マスク(以下、UV照射マスクという)を保管するUV照射マスク保管室(第2のストック部)B2と、封止基板を封止装置B内に投入するための投入部B3と、封止室B1を経て得られた有機ELパネルを外部に搬出する取出装置Kと接続される排出部B4と、接着剤塗布装置Hと投入室B3との間に設けられ、封止基板に吸着剤を塗布する吸着剤塗布室B5と、を有する。封止装置B内は窒素によって満たされている。また、前述した各部屋間の封止基板の搬送には、サーボモータ等の駆動手段によって回転可能に設けられ、各部屋の奥行き方向及び高さ方向に移動可能な搬送ロボット(交換装置)B6が用いられる。また、封止室B1及びUV照射マスク保管室B2には、メンテナンス用の開閉扉B7がそれぞれ設けられている。
【0020】
ここで、図4を用いて、封止装置Bに備えられる封止室B1について説明する。封止室B1は、排気ポート20を介して図示しない真空ポンプで室内が略真空状態になるように排気され、窒素導入口21から窒素が導入されることで、酸素の濃度が100ppm以下及び露点が−70℃以下の窒素室22が設けられている。窒素室22の略中央には、支持基板101上に形成される有機EL素子を気密的に覆うためのガラス材料からなる封止基板111を乗せるための載置台23をシリンダー等の駆動手段によって上下方向に移動させる昇降機構24が設けられている。また、昇降機構24の載置台23上に、ゴム等の弾性部材25が配設され、この弾性部材25上に封止基板111が配置される。
【0021】
一方、真空室22の上側には、支持基板101と封止基板111とをUV硬化型接着剤を介して接合させるため、紫外線を照射するための紫外線照射装置(以下、UV照射装置という)26が配設されている。また、UV照射装置26の下方には、マスクホルダー27を介して配設されるUV照射マスク28と基板ホルダー8を介して配設される支持基板101(有機EL素子が形成された状態の支持基板101)とを保持するための保持機構29が設けられている。
【0022】
かかる封止室B1は、昇降機構24によって封止基板111を上昇させ、支持基板101に対し所定の圧力を付与した状態で封止基板111を当接させた後、UV照射装置26からの紫外線をUV照射マスク28を介してUV硬化型接着剤の塗布位置に照射させることで、両基板を気密性良く封止するものである。
【0023】
蒸着装置Aの第2ブロックA2と封止装置Bとの間には、両装置A,B間を接続する第2受渡室Nが設けられている。第2受渡室Nは、蒸着装置A側及び封止装置B側にそれぞれ設けられるシャッター機構と、各シャッター機構間に設けられ、支持基板101を蒸着装置Aから封止装置B側へと搬送するスライド機構と、を有し、両装置A,Bにそれぞれ設けられる搬送ロボットA27,B6によって支持基板101の受け渡しがなされる。
【0024】
コントロール装置Cは、蒸着装置A及び封止装置Bを制御するものである。コントロール装置Cは、蒸着装置Aの第1ブロックA1の前処理室A11のプラズマ処理に伴う制御、第1ブロックA1の各蒸着室A12〜A15及び第2ブロックA2の各蒸着室A21〜A25における蒸着温度調整及び成膜の膜厚調整、生産管理情報に応じて決定される搬送ルートに伴う各搬送ロボットA18,A27,B6の駆動制御、封止装置Bの封止室B1における封止処理等を行わせるものであり、蒸着装置A及び封止装置Bにおける駆動系全般の制御を行う制御手段である。コントロール装置Cは、蒸着装置Aとともに本発明の成膜装置として機能する。
【0025】
ライン端末Dは、蒸着装置Aの各蒸着室A12〜A15及びA21〜A25における蒸着温度(各蒸着室のルツボの温度),有機EL素子を構成する各層の膜厚及び有機EL素子の発光層の種類(材料),蒸着マスクの種類及びUV照射マスクの種類等の蒸着に関する生産条件、生産数量、支持基板101及び封止基板111のロット毎の投入枚数等を含む生産管理情報を有機ELパネルの形状や発光パターン等によって分類される機種毎に設定するとともに、前記機種毎に前記生産管理情報を記憶するものである。ライン端末Dは、パーソナルコンピュータやプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller;PLC)等によって構成されている。また、ライン端末Dは、前記生産管理情報を設定及び表示する設定手段及び表示手段として、例えばタッチパネル(図示しない)が備えられている。
【0026】
また、ライン端末Dは、コントロール装置Cと、支持基板保管装置Fと、支持基板投入装置Gと、接着剤塗布装置Hと、封止基板投入装置Jとにネットワーク接続され、コントロール装置Cには、前記機種及び前記生産管理情報に関するデータを転送し、支持基板保管装置F,支持基板投入装置G,接着剤塗布装置H及び封止基板投入装置Jには、前記機種及び生産数量に関するデータを転送する。
【0027】
膜厚測定装置Eは、上流側の図示しない洗浄装置による洗浄工程を終えた支持基板101(透明電極及び絶縁層が形成された支持基板101)が搬送され、支持基板101における透明電極の膜厚を測定するものである。膜厚測定装置Eは、図5に示すように、例えばフィルメトリクス社製の光学系の膜厚測定器E1と、PLCやパーソナルコンピュータからなる制御手段E2と、ハードディスクやバックアップRAM等の記憶手段E3と、を備える。制御手段E2は、膜厚測定装置Eに支持基板101が搬送されると、膜厚測定器E1を動作させて支持基板101に形成された透明電極の膜厚を測定し、その膜厚測定結果から複数のランク情報のいずれかを支持基板101に設定する。ここで、ランク情報とは、膜厚の値に対応付けられて複数設けられるランクであって、例えば膜厚の値とランクとが対応付けられたデータテーブルとして記憶手段E3に記憶されている。膜厚測定装置Eは、支持基板101の透明電極の膜厚測定後、支持基板101を支持基板保管装置Fに搬送する。膜厚測定装置Eと支持基板保管装置Fとの間の搬送は、コンベア等の搬送手段が用いられる。また、膜厚測定装置Eは、下流側である支持基板保管装置Fとネットワーク接続され、支持基板101を搬送する際に搬送する支持基板101の前記ランク情報を支持基板保管装置Fに送信する。
【0028】
支持基板保管装置Fは、膜厚測定装置E(上流側)と蒸着装置A(下流側)との間に配置されるものであって、膜厚測定装置Eから搬送される複数の支持基板101を受け入れて保管し、保管された複数の支持基板101を支持基板投入装置Gに払い出して順次蒸着装置Aに搬送するものである。なお、支持基板保管装置Fと支持基板投入装置Gの間の搬送には、コンベア等の搬送手段が用いられる。支持基板保管装置Fと支持基板投入装置Gとの間には必要に応じてさらに、UV/O洗浄工程を行う装置や支持基板101の脱水加熱処理を行う装置など他の装置が配置されてもよい。支持基板保管装置Fは、図6に示す複数の支持基板101を保管可能な複数の棚30を有する保管棚F1を備える。また、支持基板保管装置Fは、図5に示すように、PLCやパーソナルコンピュータからなる制御手段F2と、膜厚測定装置Eから搬送された支持基板101を受け取って保管棚F1の各棚30に順に配置し、また、保管棚F1の各棚30に配置した支持基板101を支持基板投入装置Gに受け渡す搬送ロボットF3と、ハードディスクやバックアップRAM等の記憶手段F4と、支持基板保管装置Fの各種設定や設定の表示を行う設定手段及び表示手段であるタッチパネルF5と、を備える。なお、搬送ロボットF3は、サーボモータ等の駆動手段によって膜厚測定装置E,支持基板投入装置Gあるいは保管棚F1に向けて回転可能に設けられ、保管棚F1の各棚30の奥行き方向及び高さ方向に移動可能なものである。
【0029】
支持基板投入装置Gは、支持基板保管装置Fから搬送された支持基板101を蒸着装置Aに投入するものであり、支持基板101をコンベア等の搬送手段を介して徐々に真空雰囲気にするための複数のブロック(部屋)を有するとともに、蒸着装置Aの第1ブロックA1における投入部A17に接続される。
【0030】
支持基板投入装置Gは、投入される支持基板101が機種に対応する適正なる支持基板であるか否かを判定する誤投入判定機能を有している。前記誤投入判定機能は、例えば予め支持基板101に形成される所定の判定パターンをCCDカメラを用いて2次元判定処理を行うことで投入される支持基板101が適正なる支持基板であるか否かを判定し、誤投入である場合に支持基板投入装置Gによる基板投入動作を停止し、誤投入の警報を発して製造ラインの作業者に知らせるものである。
【0031】
封止基板投入装置Jは、洗浄工程後の封止基板111を接着剤塗布装置Hに投入するものである。
【0032】
封止基板投入装置Jは、投入される封止基板111が機種に対応する適正な封止基板111であるか否かを判定する誤投入判定機能を有している。前記誤投入判定機能は、例えば予め封止基板111に形成される所定の判定パターンのコード信号を透過型のラインセンサを用いて判定することで投入される封止基板111が適正な封止基板であるか否かを判定し、誤投入である場合に封止基板投入装置Jによる基板投入動作を停止し、誤投入の警報を発して製造ラインの作業者に知らせるものである。
【0033】
接着剤塗布装置Hは、封止基板111にUV硬化型接着剤を塗布するものである。接着剤塗布装置Hは、例えばX−Y−Z方向に移動可能なロボットにディスペンサが取り付けられてなる。接着剤塗布装置Hは、有機ELパネルの機種に対応する塗布パターンを選定し、この塗布パターンによって前記接着剤を封止基板111の支持基板101との接合面に塗布する。
【0034】
取出装置Kは、封止装置Bの排出部B4に接続され、コンベア等の搬送手段によって封止工程後の有機ELパネルを取り出すものである。
【0035】
以上の各部によって有機ELパネルの製造装置が構成されている。
【0036】
次に、図7から図10を用いて、本製造装置による有機ELパネルの製造方法を説明する。
【0037】
(支持基板の受け入れ)
有機ELパネルの製造に先立って、本製造装置は、支持基板保管装置Fへの支持基板101の受け入れを行う。
【0038】
支持基板101には、スパッタリング法によってITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料を形成した後、所定パターンになるようにパターニング処理することで陽極である透明電極102が形成され(図7(a))、次にスピンコート等の手段によって絶縁材料を層状に形成し、この絶縁材料を前記所定パターンに沿うようにパターニング処理することで絶縁層103が形成される(図7(b))。透明電極102及び絶縁層103は、本製造装置とは別工程によって予め形成される。なお、図7で示される支持基板101は、複数の有機ELパネルを得るためのマルチ取り基板である。
【0039】
まず、膜厚測定装置Eは、洗浄工程が終了した支持基板101が搬送されると膜厚測定器E1にて透明電極102の膜厚測定を行い、この膜厚測定の結果に基づいて制御手段E2によって支持基板101に前記ランク情報を設定する。前記ランク情報の設定後、支持基板101は支持基板保管装置Fに搬送される。
【0040】
次に、支持基板保管装置Fは、膜厚測定装置Eから支持基板101が搬送されると、搬送ロボットF3によって支持基板101を保管棚F1の棚30に配置(保管)する。
【0041】
この際、支持基板保管装置Fの制御手段F2は、膜厚測定装置Eから受け入れた支持基板101の前記ランク情報を受信し、受け入れ順番号とロット情報(ランク情報とともに膜厚測定装置Eから送信される)と支持基板101の有無情報と前記ランク情報とを対応付けて記憶手段F4に保存する。また、制御手段F2は、前記ランク情報毎に受け入れた支持基板101の枚数を計数し記憶手段F4に保存する。また、制御手段2は、これらの情報をタッチパネルF5に表示する。図8は、タッチパネルF5における表示の一例を示すものである。図8においては、前記受け入れ順番号(No)と製造単位である前記ロット情報と支持基板101の有無情報(支持基板101が受け入れ順番号に対応する棚30にある場合は「○」で示し、ない場合は「×」で示す)と前記ランク情報とが一覧表で表示され、また、保管棚F1に受け入れた支持基板101のうち最も枚数が多いランク情報(以下、最大ランク情報)が表示されている。
【0042】
支持基板保管装置Fによる支持基板101の受け入れは、支持基板101の保管枚数が予め設定される枚数(例えば1ロットにおける投入枚数)に達するまで繰り返し実行される。
【0043】
(有機ELパネルの製造)
図9に示すように、まず、作業者は、ライン端末Dにおいて、本製造装置によって製造される(流動予定である)有機ELパネルの前記生産管理情報を設定する(ステップS1)。
【0044】
ここで、前記生産管理情報は、有機ELパネルの形状や発光パターン等によって分類される機種毎に設定され前記機種毎にライン端末Dが有するハードディスクやバックアップRAM等の記憶装置(図示しない)に記憶される。したがって、次に製造される有機ELパネルの機種が前回と同機種の場合は、ライン端末Dで新たに設定することなく前記記憶装置から前記機種に応じた生産管理情報が読み出されることになる。また、前記生産管理情報のバックアップ手段としては、例えば書換型光磁気ディスク(MO)等が用いられる。
【0045】
前記生産管理情報の生産条件において、有機EL素子を構成する各層の膜厚は、図3で示すように各蒸着室のシャッター12の開閉タイミングによって管理される。また前記生産条件によって発光層の材料が選定されると、蒸着装置Aにおける第3,第4,第5,第6蒸着室A14,A15,A21,A22の何れかの蒸着室が選択され、支持基板101の搬送ルートが決定される。本実施形態における製造装置は、発光層を形成する工程が4種類(第3,第4,第5,第6蒸着室A14,A15,A21,A22)用意され、それぞれの発光層形成工程における発光層の種類は異なる。また、発光層以外の各層については、蒸着温度及び膜厚調整は可能であるが、機種が異なる場合であっても各層を構成する材料は共通であるものとする。
【0046】
前記生産管理情報が設定されたライン端末Dは、本製造装置によって有機ELパネルの製造を開始させるべくスタート指令(スタートスイッチの入力)が入力されると、コントロール装置Cに対し、前記機種及び前記生産管理情報に関するデータと前記機種に応じた段取り換え指令とを出力し、また、支持基板払い出し工程を実行する支持基板保管装置Fに投入枚数の切り換え指令を出力し、また、支持基板投入工程を実行する支持基板投入装置G,UV接着剤塗布工程を実行する接着剤塗布装置H,及び封止基板投入工程を実行する封止基板投入装置Jに前記機種及び投入枚数の切り換え指令を出力する。なお、前記スタート指令は、所定の開始時刻に有機ELパネルの製造を開始させるものであってもよい。
【0047】
前記段取り換え指令を受けたコントロール装置Cは、蒸着装置Aにおける第1,第2ブロックA1,A2の搬送ルートに位置する各蒸着室に配設されている蒸着マスク9を機種(例えば、0001なる機種)に応じた蒸着マスク9に交換させるべく各搬送ロボットA18,A27を動作させる(ステップS2)。蒸着装置Aの第1,第2ブロックA1,A2の第1,第2蒸着マスク保管室A16,A26に保管されている蒸着マスク9は、マスクホルダー10に取り付けられた状態で保管されている。よって各搬送ロボットA18,A27による蒸着マスクの交換は、マスクホルダー10を含んだ交換となる。
【0048】
また、コントロール装置Cは、封止装置Bにおける封止室B1に配設されているUV照射マスク28から前記機種(0001)に応じたUV照射マスク28に交換させるべく搬送ロボットB6を動作させる(ステップS2)。封止装置BのUV照射マスク保管室B2に保管されているUV照射マスク28は、マスクホルダー27に取り付けられた状態で保管されている。よって各搬送ロボットB6によるUV照射マスクの交換は、マスクホルダー27を含んだ交換となる。
【0049】
なお、封止装置BにおけるUV照射マスク28の交換にあっては、搬送ロボットB6による交換作業が段取り換えの作業効率を向上させる上で効果的であるが、製造ラインにおける作業者による交換であっても良い。この場合、封止装置Bに段取り換えであることを知らせるための表示装置やランプ,ブザー等の報知手段を用意し、前記報知手段を動作させることで作業者に対して段取り換えであることを認識可能とするとともに、UV照射マスクを窒素雰囲気中にて保管し、同雰囲気中にて作業者によるUV照射マスク28を交換することが可能なチャンバー(マスク交換室)を封止室B1に連結可能な状態とすることで生産効率を低下させることのない段取り換えを行うことが可能となる。
【0050】
次に、ライン端末Dにより投入枚数の切り換え指令を受けた支持基板保管装置Fは、ライン端末Dから受信した投入枚数に応じた支持基板101の払い出しを開始する(払い出し工程;ステップS3)。
【0051】
図10は、支持基板保管装置Fによる前記払い出し工程の処理を示すものである。支持基板保管装置Fの制御手段F2は、まず、支持基板101の受け入れに際して計数した前記各ランク情報毎の支持基板101の枚数を比較して前記最大ランク情報を抽出する(ステップS21)。次に、制御手段F2は前記最大ランク情報が設定された支持基板101を受け入れ順番号が小さいものから順に支持基板投入装置Gへ払い出す(ステップS22)。払い出しに際しては、払い出し対象となった受け入れ順番号に対応する棚30から搬送ロボットF3によって支持基板101を取り出し、支持基板投入装置Gに受け渡す。また、払い出しの際、制御手段F2は払い出す支持基板101の前記ランク情報を支持基板投入装置Gに送信する。次に、制御手段F2は、前記最大ランク情報が設定された支持基板101が全て払い出されたか否かを判定し(ステップS23)、前記最大ランク情報が設定された支持基板101が全て払い出されていないと判定される場合は(ステップS23;No)、ステップS22に戻って前記最大ランク情報が設定された支持基板101の払い出しを繰り返し行う。また、制御手段F2は、前記最大ランク情報が設定された支持基板101が全て払い出されたと判定される場合は(ステップS23;Yes)、ステップS21に戻って新たな最大ランク情報の抽出を行う。したがって、この場合は次に枚数の多い前記ランク情報が新たな最大ランク情報として抽出され、新たな最大ランク情報が設定された支持基板101が順次払い出される。制御手段F2は、支持基板101の払い出し枚数がライン端末Dから受信した投入枚数に達するまで繰り返しステップS21からS23の処理を実行する。このように支持基板101の払い出しを行うことの効果については後で述べる。
【0052】
次に、ライン端末Dにより前記機種及び投入枚数の切り換え指令を受けた支持基板投入装置G,接着剤塗布装置H及び封止基板投入装置Jは、前記機種(0001)に応じた支持基板101及び封止基板111の投入を開始する(各基板投入工程;ステップS4)。支持基板投入装置Gは、前記各基板投入工程において支持基板保管装置Fから搬送された支持基板101を蒸着装置Aの投入室A17に搬送する。この際、支持基板投入装置Gを制御するPLCやマイクロコンピュータ等の制御手段は、支持基板保管装置Fから搬送される支持基板101の前記ランク情報を受信し、前記ランク情報を蒸着装置Aに送信する。また、封止基板投入装置Jは、前記各基板投入工程において洗浄工程後の封止基板111を接着剤塗布装置Hに搬送する。
【0053】
なお、支持基板投入装置G及び封止基板投入装置Jでは、投入される支持基板101及び封止基板111が前記機種(0001)に伴う適正な支持基板101及び封止基板111であるか否かを判定する誤投入判定が行われる。前記誤投入判定によって、適正でない支持基板101及び封止基板111が検出された場合は、支持基板投入装置G及び封止基板投入装置Jを停止し、支持基板投入装置G及び封止基板投入装置Jに備えられるランプやブザー等の報知手段を動作させて誤投入の警報を発して作業者に知らせる。なお、この判定は、各装置G,Jをそれぞれ制御する制御手段によって判定される。
【0054】
支持基板投入装置Gにより投入される支持基板101は、蒸着装置Aの投入室A17に供給される。投入室A17は、シャッター機構によって複数の部屋に分割されるとともに、支持基板投入装置G側から蒸着装置A側に向かう各部屋毎に高真空が確保される。なお、投入室A17の各部屋間の搬送は、コンベア等の搬送手段が用いられている。
【0055】
また、蒸着装置Aに送信された前記ランク情報は、蒸着装置Aを介してコントロール装置Cに送信される。前記ランク情報を受信したコントロール装置Cは、機能層を構成する各層のうち、ライン端末Dから受信した前記生産管理情報による正孔注入層の膜厚条件(膜厚の値)を前記ランク情報に応じて補正する(ステップS5)。具体的には、正孔注入層の材料に透明電極102と発光層が発する光の波長に対する光学定数n(屈折率)が同一あるいは近似する材料を用い、透明電極102と正孔注入層との合計膜厚が略一定の値となるように正孔注入層の膜厚を補正する(透明電極102の膜厚が基準値より厚い場合は前記正孔注入層の膜厚がその変化分に合わせて薄くなり、透明電極102の膜厚が基準値より薄い場合は前記正孔注入層の膜厚がその変化分に合わせて厚くなる)。例えば、透明電極102がITOであり、発光層が波長600nmの光を主に発する場合、透明電極102は波長600nmに対する光学定数n=1.70〜1.89である。これに対し、正孔注入層として波長600nmに対する光学定数n=1.71〜1.90程度である正孔輸送性材料(例えばアミン系化合物)を用いる。これにより、後述する正孔注入層形成工程においては、前記ランク情報に応じて補正された膜厚条件に基づいて蒸着装置Aの第1ブロックA1の第1蒸着室A1で形成される正孔注入層の膜厚調整が行われることとなる。なお、正孔注入層の膜厚の補正値は、例えば前記ランク情報と対応付けられたデータデーブルとしてコントロール装置Cに備えられるハードディスクやバックアップRAM等の記憶手段に予め記憶される。また、ライン端末から受信した前記生産管理情報と補正された正孔注入層の膜厚条件とは前記記憶手段に記憶される。なお、前記ランク情報は支持基板投入装置Gからコントロール装置Cに直接送信されてもよい。
【0056】
蒸着装置Aに投入された支持基板101は、搬送ロボットA18によって前処理室A11に搬送され、前処理室A11においてプラズマ処理が行われる(プラズマ処理工程;ステップS6)。
【0057】
前記プラズマ処理工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA18によって前処理室A11から第1蒸着室A12に搬送され、第1蒸着室A12において、支持基板101の透明電極102上に正孔注入層が形成される(正孔注入層形成工程;ステップS7)。前記正孔注入層は、前述した正孔輸送性材料を前記機種(0001)に対応して配設された蒸着マスク9の所定のパターンに応じて層状に形成してなる。前述のように、前記正孔注入層形成工程において形成される前記正孔注入層の膜厚は、前記ランク情報に基づいて補正された値となる。これによって、支持基板101に本製造装置とは別工程で形成される透明電極102の膜厚が基板によって異なる場合であっても、透明電極102と発光層が発する光の波長に対する光学定数nが同一あるいは近似する各層(本実施形態では透明電極102及び前記正孔注入層)の合計膜厚を略一定の値(完全に一定であるほか、色度に変化が生じない程度の差がある場合を含む)として有機EL素子の発光色(色度)のバラツキを抑制することができる。なお、透明電極102と発光層が発する光の波長に対する光学定数nが同一あるいは近似する各層の合計膜厚を略一定の値とするために、正孔輸送層の材料に前記正孔注入層と同様の透明電極102と発光層が発する光の波長に対する光学定数n(屈折率)が同一あるいは近似する正孔輸送性材料を用い、前記ランク情報に応じて正孔輸送層あるいは前記正孔注入層及び正孔輸送層の膜厚条件を補正してもよい。
【0058】
前記正孔注入層形成工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA18によって第1蒸着室A12から第2蒸着室A13に搬送され、第2蒸着室A13において、前記正孔注入層上に正孔輸送層が形成される(正孔輸送層形成工程;ステップS8)。前記正孔輸送層は、アミン系化合物などの正孔輸送性材料を前記機種(0001)に対応して配設される蒸着マスク9の所定のパターンに応じて層状に形成してなる。
【0059】
前記正孔輸送層形成工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA18によって第2蒸着室A13から前記搬送ルートに沿った発光層の蒸着室である第3,第4,第5,第6蒸着室A14,A15,A21,A22の何れかの蒸着室に搬送され、搬送された蒸着室において、前記正孔注入層上に発光層(有機発光層)が形成される(発光層形成工程;ステップS9)。前記発光層は、有機材料である発光ドーパントとホスト材料とを共蒸着によって前記機種(0001)に対応して配設される蒸着マスク9の所定のパターンに応じて層状に形成してなる。
【0060】
なお、第3,第4蒸着室A14,A15において前記発光層形成工程を行う場合は、支持基板101は、蒸着装置Aの第1ブロックA1内における搬送ロボットA18によって第2蒸着室A13から第4蒸着室A14または第5蒸着室A15へ搬送される。また、第5,第6蒸着室A21,A22において前記発光層形成工程を行う場合は、支持基板101は、蒸着装置Aの第1ブロックA1内における搬送ロボットA18によって第2蒸着室A13から第1受渡室Mへ搬送され、第1受渡室Mによって蒸着装置Aの第2ブロックA2に移し替えられ、第2ブロックA2内における搬送ロボットA27によって第5,第6蒸着室A21,A22の何れかの蒸着室に搬送されることになる。
【0061】
前記発光層形成工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA18によって第3,第4蒸着室A14,A15の何れかの蒸着室から、もしくは搬送ロボットA27によって第5,第6蒸着室A21,A22の何れかの蒸着室から第7蒸着室A23に搬送され、第7蒸着室A23において、前記発光層上に電子輸送層が形成される(電子輸送層形成工程;ステップS10)。前記電子輸送層は、Alqなどの電子輸送性材料を前記機種(0001)に対応して配設される蒸着マスク9の所定のパターンに応じて層状に形成してなる。
【0062】
前記電子輸送層形成工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA27によって第7蒸着室A23から第8蒸着室A24に搬送され、第8蒸着室A24において、前記電子輸送層上に電子注入層が形成される(電子注入層形成工程;ステップS11)。前記電子注入層は、LiFなどを前記機種(0001)に対応して配設される蒸着マスク9の所定のパターンに応じて層状に形成してなる。これによって、透明電極102上に正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層及び電子注入層が順次積層形成された機能層104が得られることになる(図7(c))。
【0063】
前記電子注入層形成工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA27によって第8蒸着室A24から第9蒸着室A25に搬送され、第9蒸着室A25において、機能層104上に陰極である背面電極105が形成される(背面電極形成工程;ステップS12)。背面電極105は、前記機種(0001)に対応して配設される蒸着マスク9の所定のパターンに応じて形成される。これにより、一対の電極である透明電極102と背面電極105とで前記発光層を含む機能層104を狭持してなる有機EL素子106を複数有する、いわゆるマルチ取りに対応する支持基板101が得られる(図7(d))。
【0064】
前記背面電極形成工程終了後、支持基板101は搬送ロボットA27によって第2受渡室Nに搬送され、第2受渡室Nによって封止装置Bに移し替えられ、封止装置Bの搬送ロボットB6によって封止室B1に搬送されるとともに封止室B1の保持機構29に配設される。なお、基板ホルダー8を保持機構29に配設することで支持基板101が保持機構29に固定されることになる。
【0065】
一方、前記各基板投入工程を経て封止基板投入装置Jから供給される封止基板111は、次に接着剤塗布装置Hに搬送される。封止基板111は、成型,サンドブラスト及びエッチング処理等の適宜方法によって得られるもので、有機EL素子106を収納するための凹部形状の収納部112を複数有し、支持基板101と接合するために各収納部112の全周を取り巻くように接合部113が形成されている(図7(e))。
【0066】
封止基板111は、接着剤塗布装置Hによって接合部113にUV硬化型接着剤114が塗布される(UV接着剤塗布工程;ステップS13,図7(e))。
【0067】
封止基板111は、前記UV接着剤塗布工程終了後に、吸着剤塗布室B5にコンベア等の搬送手段によって搬送され、吸着剤塗布室B5に配設されるX−Y−Z方向に移動可能な塗布装置によって封止基板111の収納部112の底面に吸着剤115が塗布される(吸着剤塗布工程;ステップS14,図7(e))。接着剤塗布装置Hと吸着剤塗布室B5との間には、封止基板111に吸着剤115を塗布する環境を窒素雰囲気とするため、真空引きされ、かつ窒素が導入される置換室が設けられる。したがって、前記吸着剤塗布工程は窒素雰囲気中で行われることになる。
【0068】
前記吸着剤塗布工程終了後、封止基板111はコンベア等の搬送手段によって吸着剤塗布室B5から封止装置Bの投入室B3に搬送される。投入室B3は、シャッター機構によって複数の部屋に分割されており、各部屋は封止装置B側に向かうに連れて酸素濃度が100ppm以下及び露点が−70℃以下の窒素雰囲気になるように構成されている。
【0069】
さらに、封止基板111は、投入室B3から搬送ロボットB6によって封止室B1に搬送され、封止室B1の昇降機構24における載置台23上に搬送される。
【0070】
封止装置Bは、封止室B1内において支持基板101が保持機構29に配設され、かつ封止基板111が載置台23に配設されている状態で、封止基板111が支持基板101に対して所定の圧力を付与するように封止基板111が配設された載置台23を昇降機構24によって上昇させて両基板101,111を当接させる。さらに、封止装置Bは、両基板101,111を当接させた状態でUV照射装置26を動作させて紫外線をUV照射マスク28を介して接合部113に塗布されているUV接着剤114に所定時間照射することで、両基板101,111を気密的に接合させる(封止工程;ステップS15,図7(f))。そして、昇降機構24を下降させることで前記封止工程が終了する。
【0071】
前記封止工程終了後、支持基板101と封止基板111とを接合することで得られた有機ELパネル100は、封止室B1から排出部B4に搬送され、排出部B4に連結されている取出装置Kによって本製造装置の外部に排出される(有機ELパネル排出工程;ステップS16,図7(g))。以上で、一連の有機ELパネル100の製造工程が終了する。
【0072】
上記実施の形態で説明した有機ELパネル100の製造装置及び有機ELパネル100の製造方法によれば、透明電極102の膜厚のバラツキにかかわらず、所望の発光色の有機ELパネル100を得ることが可能となる。これは、以下の構成によって実現される。
【0073】
有機ELパネル100の製造装置は、透明電極102が形成された支持基板101に少なくとも有機発光層(発光層)を含む機能層104と背面電極105とを形成する有機ELパネル100の製造装置であって、支持基板101の透明電極102の膜厚を測定し、透明電極102の膜厚に基づいて支持基板101に複数のランク情報のいずれかを設定する膜厚測定装置Eと、支持基板101に機能層104と背面電極105とを形成する工程を行い、また、前記工程を行う際に、膜厚測定装置Eで設定される前記ランク情報を受信して前記ランク情報に基づいて機能層104の少なくとも1層の膜厚条件を補正する成膜装置(コントロール装置C及び蒸着装置A)と、を備えてなる。
【0074】
有機ELパネル100の製造方法は、透明電極102が形成された支持基板101に少なくとも有機発光層(発光層)を含む機能層104と背面電極105とを形成する有機ELパネル100の製造方法であって、支持基板101の透明電極102の膜厚を測定し、透明電極102の膜厚に基づいて支持基板101に複数のランク情報のいずれかを設定し、支持基板101に機能層104と背面電極105とを形成する工程を行うに際し、前記ランク情報に基づいて機能層104の少なくとも1層の膜厚条件を補正することを特徴とする。
【0075】
また、有機ELパネル100は機能層104として透明電極102と前記有機発光層が発する光の波長に対する光学定数nが同一あるいは近似する層(正孔注入層及び/あるいは正孔輸送層)を含み、前記成膜装置は、前記工程を行う際に、前記ランク情報に基づいて前記層の膜厚条件を補正する。
これによれば、透明電極102と前記発光層が発する光の波長に対する光学定数nが同一あるいは近似する各層の合計膜厚を略一定とすることで有機EL素子106の光学特性を略等しくして、透明電極102の膜厚のバラツキにかかわらず、所望の発光色の有機ELパネル100を得ることが可能となる。
【0076】
なお、本発明においては前記ランク情報に応じて透明電極102と前記発光層が発する光の波長に対する光学定数nが異なる前記発光層、または前記発光層と背面電極105との間に形成される前記電子輸送層や前記電子注入層の膜厚条件を変更してもよい。この場合、光学特性の違いや、電子の移動量及び前記発光層内の発光位置など光学特性以外の発光色への影響が生じるため、膜厚条件の補正値は透明電極102の膜厚変化分とは一致せず、所望の発光色を得るために適宜透明電極102の膜厚変化に対応する膜厚条件の補正量を得て補正する必要がある。したがって、この場合は有機EL素子106の総膜厚が異なることがある。
【0077】
また、上記のように支持基板101に設定される前記ランク情報に基づいて、機能層104の少なくとも1層の膜厚条件を補正する場合、単に支持基板保管装置Fに受け入れた受け入れ順に支持基板101を蒸着装置Aに投入すると支持基板101の前記ランク情報がランダムに変更されるため、その都度成膜装置(コントロール装置C及び蒸着装置A)における膜厚条件の変更(補正)を行わなければならず、成膜装置の膜厚条件の変更処理動作の分だけ製造工程全体の作業時間が増加し、製造効率が低下するという問題がある。
【0078】
これに対し、上記実施の形態で説明した有機ELパネル100の製造装置及び有機ELパネル100の製造方法によれば、前記ランク情報に基づく成膜装置の膜厚条件の変更回数を低減させて、製造効率を向上させることができる。これは、以下の構成によって実現される。
【0079】
有機ELパネル100の製造装置は、膜厚測定装置Eと成膜装置(コントロール装置C及び蒸着装置A)との間に設置され、膜厚測定装置Eから搬送される複数の支持基板101を保管し、保管された複数の支持基板101を順次前記成膜装置に向けて搬送する支持基板保管装置Fを備え、支持基板保管装置Fは、膜厚測定装置Eから搬送される支持基板101の前記ランク情報を受信し、支持基板101を前記成膜装置に向けて搬送する際に、搬送する支持基板101の前記ランク情報を前記成膜装置に向けて送信するとともに、同じランク情報が設定された支持基板101を続けて前記成膜装置に搬送する。
また、支持基板保管装置Fは、前記ランク情報毎に支持基板101の枚数を計数し、最も枚数が多いランク情報(最大ランク情報)が設定された支持基板101を続けて前記成膜装置に向けて搬送する。
【0080】
有機ELパネル100の製造方法は、前記ランク情報が設定された複数の支持基板101に順次機能層104と背面電極105とを形成する工程を行うに際し、同じランク情報が設定された支持基板101に続けて前記工程を行う。
また、前記ランク情報毎に支持基板101の枚数を計数し、最も枚数が多いランク情報(最大ランク情報)が設定された支持基板101に続けて前記工程を行う。
【0081】
図11は、支持基板保管装置Fから支持基板101を払い出す際に、前記受け入れ順番号の小さいものから順に払い出した場合の比較例(図11(a))と、本実施形態における前記最大ランク情報が設定された支持基板101を続けて払い出した場合(図11(b))とにおける、コントロール装置Cでの前記正孔注入層の膜厚条件の変更回数を示したものである。なお、支持基板101の前記ランク情報と受け入れ順は両者の場合で同様であるものとし、前記ランク情報は1〜3の3つであり、支持基板101の受け入れ枚数及び払い出し枚数は10枚とする。また、払い出し初回の膜厚条件の補正は膜厚条件の変更回数に含まない。
【0082】
図11(a)に示すように、比較例のように受け入れ順に(前記受け入れ順番号が小さいものから)支持基板101を払い出す場合は、コントロール装置Cに送信される前記ランク情報がランダムとなるため、前記ランク情報に基づく前記正孔注入層の膜厚条件の変更回数が多くなる(図11(a)では8回)。これに対し、本実施形態のように同じランク情報(最大ランク情報)が設定された支持基板101を続けて払い出した場合は、最も枚数の多いランク情報「1」が設定される5枚の支持基板101が連続して払い出され、その後次に枚数の多いランク情報「3」が設定された3枚の支持基板101が連続して払い出され、その後次に枚数の多いランク情報「2」が設定された支持基板101が連続して払い出される。したがって、同じランク情報の送信が連続するため、前記ランク情報に基づく前記正孔注入層の膜厚条件の変更回数を最小限とすることができる(図11(b)では2回)。以上の結果からも、上記実施の形態で説明した有機ELパネル100の製造装置及び有機ELパネル100の製造方法によれば、前記ランク情報に基づく成膜装置の膜厚条件の変更回数を低減させて、製造効率を向上させることができることは明らかである。なお、本発明において、製造効率の低下が許容できる場合は比較例のように受け入れ順に支持基板101を払い出してもよい。
【0083】
また、本発明の実施の形態では、支持基板101側から光を取り出すいわゆるボトムエミッション型の有機ELパネルを例に挙げて説明したが、封止基板111側から光を取り出すいわゆるトップエミッション型の有機ELパネルの製造装置及び製造方法に本発明を適用しても良い。この場合、支持基板101上には第1電極として背面電極が本発明の製造装置とは別工程で形成され、本発明の製造装置で第2電極として透明電極が形成されることとなる。
【0084】
なお、以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0085】
A 蒸着装置
B 封止装置
C コントロール装置
D ライン端末
E 膜厚測定装置
E1 膜厚測定器
E2 制御手段
E3 記憶手段
F 支持基板保管装置(基板保管装置)
F1 保管棚
F2 制御手段
F3 搬送ロボット
F4 記憶手段
F5 タッチパネル
G 支持基板投入装置
H 接着剤塗布装置
J 封止基板投入装置
100 有機ELパネル
101 支持基板
102 透明電極(第1電極)
104 機能層
105 背面電極(第2電極)
106 有機EL素子
111 封止基板
図1
図2
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図11