(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  (A)酸解離性基を有するポリマーブロック(I)と、アルカリ解離性基を有するポリマーブロック(II)と、を少なくとも含有し、前記ポリマーブロック(I)、前記ポリマーブロック(II)、又はそれらの両方に撥水性付与部を有するブロック共重合体であって、
  前記ポリマーブロック(II)は、構成するモノマーとしてアクリレート系モノマーを用いる場合、該アクリレート系モノマー内にエステル結合が2以上存在し、(メタ)アクリル酸に由来するエステル結合とは異なるエステル結合におけるカルボン酸に由来する基側に電子求引性基を有するブロック共重合体、
  及び
  (B)酸発生体
  を含有する感放射線性樹脂組成物。
  前記(A)ブロック共重合体は、前記ポリマーブロック(I)−前記ポリマーブロック(II)のジブロック共重合体である請求項1〜5の何れか1項記載の感放射線性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
  以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明が、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
 
【0018】
[感放射線性樹脂組成物]
  本発明に係る感放射線性樹脂組成物は、「(A)ブロック共重合体」、及び「(B)酸発生体」を少なくとも含有する。また、当該感放射線性樹脂組成物は、(C)酸解離性基含有重合体(以下、「(C)重合体」ともいう。)、(D)酸拡散制御体、及び(E)溶媒を含有することが好ましい。さらに、当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。
  以下、本発明に係る感放射線性樹脂組成物における各構成成分について説明する。
 
【0019】
  <(A)ブロック共重合体>
  〔(A)ブロック共重合体の構成〕
  (A)ブロック共重合体は、酸解離性基を有するポリマーブロック(I)と、アルカリ解離性基を有するポリマーブロック(II)とを少なくとも含有し、ポリマーブロック(I)、ポリマーブロック(II)、又はそれらの両方に撥水性付与部を有する。
  ここで、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基等の極性基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。なお、この「酸」としては、露光により、後述する「(B)酸発生体」から発生した酸を用いることができる。
  また、「アルカリ解離性基」とは、例えばカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基等の極性基の水素原子を置換する基であって、アルカリの存在下(例えば、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液中)で解離する基をいう。
 
【0020】
  アルカリ解離性基についてさらに述べる。一般に、アクリル酸エステル類におけるエステル結合は、リソグラフィープロセスで用いられる現像液のアルカリ性では解離しないか、極めて解離し難い。そのため、アルカリ解離性基を有する構造単位を構成するモノマーとしてアクリレート系モノマーを用いる場合、アルカリ解離性基のアルカリ現像液による解離性の観点から、当該モノマー内にエステル結合が2以上存在することが好ましい。
  アクリレート系モノマー内にエステル結合が2以上存在する場合でも、単なるエステル結合は上記現像液では容易には解離しないため、解離し易くするためにはエステル結合の何れかに、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基等の電子求引性基を有することが好ましい。
  また、上記エステル結合におけるアルコールに由来する基側よりも、上記エステル結合におけるカルボン酸に由来する基側に上記電子求引性基を導入することが、解離性への寄与度が高い点で好ましい。
 
【0021】
  本発明に係る感放射線性樹脂組成物に含有する(A)ブロック共重合体は、酸解離性基を有するポリマーブロック(I)と、アルカリ解離性基を有するポリマーブロック(II)と、を含有するブロック共重合体であることを特徴とする。
  従来技術においては、その合成の簡便さなどから、感放射線性樹脂組成物に含有させる重合体は、そのほとんどがランダム共重合体であった。そして、その性質のためには、共重合体に用いるモノマーの種類や配合比などを工夫する方法が一般的であった。
  しかし、本願発明者らは、従来技術から発想を転換し、共重合体を構成するモノマーの配列構造が現像欠陥の軽減に寄与することを見出し、従来の感放射線性樹脂組成物を用いた場合に比べ、より良好なレジストパターンを形成することに成功した。以下、図面を用いて、詳細に説明する。
 
【0022】
  図1は、本発明に係る感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜1中の(A)ブロック共重合体の状態を模式的に示す概念図である。後述する通り、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜1中において、(A)ブロック共重合体は、レジスト膜1の表面11側に偏在する。そして、(A)ブロック共重合体は、酸解離性基を含む構造単位(A1)が連続してなるポリマーブロック(I)と、アルカリ解離性基を含む構造単位(A2)が連続してなるポリマーブロック(II)とを含んで構成される。レジスト膜1の表面11側に偏在した(A)ブロック共重合体は、ポリマー鎖間の相互作用により、
図1に示すように複数のポリマーブロック(I)同士、複数のポリマーブロック(II)同士が互いに近接し、ポリマーブロック(II)を表面側に向けた状態で配向し易くなる。これにより、液浸露光の際には液浸露光用液体への耐性が向上し、アルカリ現像液を用いた現像時には現像液反応性が向上する。その結果、現像後のレジスト膜1に生じる現像欠陥を抑制し、良好なレジストパターンの形成が可能になる。
 
【0023】
  また、本発明に係る感放射線性樹脂組成物は、これに含有させる(A)ブロック共重合体を構成するモノマーの配列構造によって現像欠陥を低減させるものである。そのため、用いるモノマーの種類は、酸解離性基を含む構造単位(A1)及びアルカリ解離性基を含む構造単位(A2)であれば、その具体的な構造に変更を加えることなく、十分に現像欠陥を低減させることができる。
 
【0024】
  また、(A)ブロック共重合体は、ポリマーブロック(I)及び/又はポリマーブロック(II)に撥水性付与部を有する。この撥水性付与部は、ポリマーブロック(I)及び/又はポリマーブロック(II)の分子鎖中に含まれて、(A)ブロック共重合体に撥水性的作用をもたらす原子又は基をいう。このような撥水性付与部には、フッ素原子及び/又はケイ素原子が含まれることが好ましく、フッ素原子が含まれることがより好ましい。
 
【0025】
  (A)ブロック共重合体のポリマーブロック(I)及び/又はポリマーブロック(II)に撥水性付与部を有することで、その(A)ブロック共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成した際に、当該レジスト膜の表面側に、(A)ブロック共重合体の分布を高めることができると考えられる。そして、(A)ブロック共重合体が、レジスト膜の表面側に偏在化されることにより、レジスト膜の表面側に撥水的性質を生じさせることが可能になると考えられる。
 
【0026】
  撥水性付与部は、(A)ブロック共重合体において、少なくともポリマーブロック(II)に有していることが好ましい。ポリマーブロック(II)に撥水性付与部を有することで、レジスト膜を形成した際に、ポリマーブロック(II)がレジスト膜の表面側に向き易くなると考えられる。そしてポリマーブロック(II)がレジスト膜の表面側に向くように配向することにより、レジスト膜の表面側に撥水性的性質が出現し易くなると考えられる。
  その結果、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等の液浸露光用液体への溶出を抑制することが可能となり、さらに、レジスト被膜と液浸露光用液体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となると考えられる。また、レジスト膜の撥水性が高くウォーターマーク等の液浸露光用液体由来の現像欠陥の発生を抑制できると考えられる。
  このように、ポリマーブロック(II)に撥水性付与部を有する(A)ブロック共重合体を用いることで、レジスト膜の現像欠陥の抑制効果、及び良好なレジストパターンの形成に寄与することができる。よって、レジスト膜と液浸露光用液体とを遮断することを目的とした上層膜を別途設ける必要がなく、本発明に係る感放射線性樹脂組成物は液浸露光法に好適に用いられる。
 
【0027】
  なお、撥水性付与部は、ポリマーブロック(I)に含まれていてもよく、ポリマーブロック(I)及び(II)の両方に含まれていてもよい。撥水性付与部がポリマーブロック(I)及び(II)の両方に含まれている場合、撥水性付与部は、ポリマーブロック(I)よりもポリマーブロック(II)に多く含まれていることが好ましい。これにより、ポリマーブロック(II)がレジスト膜の表面側に向き易くなると考えられる。
  また、撥水性付与部は、後述する(C)重合体に含まれていてもよいが、この場合、撥水性付与部は、(C)重合体よりも(A)ブロック共重合体に多く含まれていることが好ましい。これにより、レジスト膜の表面側に(A)ブロック共重合体の分布を高めることができると考えられる。
 
【0028】
  撥水性付与部にフッ素原子が含まれる場合、そのフッ素原子は、ポリマーブロック(II)におけるアルカリ解離性基を含む構造単位(A2)に存在することが好ましく、アルカリ現像液で解離する結合の近辺に存在することがより好ましい。そのアルカリ現像液で解離する結合の近辺としては、例えば、後述するように構造単位(A2)にエステル結合を有する場合、そのエステル結合のカルボニル炭素のα位及びβ位、並びにそのエステル結合のアルコールに由来する基側のα位及びβ位が挙げられる。このような位置にフッ素原子を有することで、その電子求引性に起因して、アルカリ現像液により、解離し易いアルカリ解離性基をもたらすことが可能となる。
 
【0029】
  ポリマーブロック(II)にフッ素原子を有する場合、ポリマーブロック(II)中のフッ素原子含有率は、(A)ブロック共重合体全量を100質量%として、25〜45質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましく、15〜35質量%がさらに好ましい。
  ポリマーブロック(I)にフッ素原子を有する場合、ポリマーブロック(I)中のフッ素原子含有率は、(A)ブロック共重合体全量を100質量%として、0質量%を超えて30質量%以下が好ましく、0質量%を超えて10質量%以下がより好ましく、0質量%を超えて5質量%以下がさらに好ましい。
  なお、フッ素原子は、ポリマーブロック(I)よりもポリマーブロック(II)に多く含まれていることが好ましい。
 
【0030】
  (A)ブロック共重合体におけるポリマーブロック(I)の含有量は、5〜50モル%が好ましく、10〜45モル%がより好ましく、15〜40モル%がさらに好ましい。
  (A)ブロック共重合体におけるポリマーブロック(II)の含有量は、50〜95モル%が好ましく、55〜90モル%がより好ましく、60〜85モル%がさらに好ましい。
 
【0031】
  (A)ブロック共重合体におけるポリマーブロック(I)及びポリマーブロック(II)を構成する骨格としては、後述の(C)重合体と同様に、「主鎖にノルボルナン環等の脂環式骨格を有する重合体」、「主鎖にノルボルナン環及び無水マレイン酸誘導体を有する重合体」、「主鎖にノルボルナン環と(メタ)アクリレートに由来する骨格が混在する重合体」、「主鎖にノルボルナン環と無水マレイン酸誘導体と(メタ)アクリレートに由来する骨格が混在する重合体」、及び「主鎖に(メタ)アクリレートに由来する骨格を有する重合体」等がある。
  これらの中でも、ポリマーブロック(I)及び(II)を構成する骨格は、「(メタ)アクリレートに由来する骨格を有する重合体」であることが好ましく、「主鎖に(メタ)アクリレートに由来する骨格を有する重合体」であることがより好ましい。このように、(A)ブロック共重合体は、(メタ)アクリレートに由来する骨格を有することが好ましい。
 
【0032】
  (A)ブロック共重合体を構成するポリマーブロック(I)とポリマーブロック(II)との配列は、特に限定されない。ポリマーブロック(I)とポリマーブロック(II)との配列は、例えば、(I)−(II)のジブロック共重合体、(I)−(II)−(I)又は(II)−(I)−(II)のトリブロック共重合体、(I)−(II)−(I)−(II)又は(II)−(I)−(II)−(I)のテトラブロック共重合体、(I)−(II)−(I)−(II)−(I)又は(II)−(I)−(II)−(I)−(II)のペンタブロック共重合体などが挙げられる。また、(A)ブロック共重合体は、ポリマーブロック(I)及び(II)が6つ以上配列されたマルチブロック共重合体であってもよい。
  (A)ブロック共重合体のポリマーブロック(I)とポリマーブロック(II)との配列としては、(I)−(II)のジブロック共重合体、(II)−(I)−(II)のトリブロック共重合体が好ましい。このような(A)ブロック共重合体とすることで、ポリマーブロック(II)がレジスト膜の表面側へ向き易くなると考えられる。また、製造工程等も考慮すると、(A)ブロック共重合体は、ポリマーブロック(I)−ポリマーブロック(II)のジブロック共重合体であることがより好ましい。
 
【0033】
  次に、(A)ブロック共重合体における各ポリマーブロックの構造単位について、より具体的に説明する。
 
【0034】
  〔ポリマーブロック(I)〕
  〔構造単位(A1)〕
  (A)ブロック共重合体におけるポリマーブロック(I)は、酸解離性基を含む構造単位(A1)を繰り返し連続して有する。ポリマーブロック(I)は、構造単位(A1)のみから構成されていてもよい。
  構造単位(A1)としては、酸解離性基を含む構造単位であればよく、その酸解離性基の構造、位置、数等は特に限定されない。
  構造単位(A1)としては、下記式(1)で表される構造単位(A1−1)が好ましい。
 
【0036】
  構造単位(A1)として構造単位(A1−1)を有することで、酸解離性基の解離容易性が高まり、その結果、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンのパターン形状がより良好になる。また、構造単位(A1−1)を有するポリマーブロック(I)は、比較的容易に合成することができる。
 
【0037】
  上記式(1)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基であり、この鎖状炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子で置換されていてもよい。
  上記式(1)中のYは、下記式(Y−1)で表される酸解離性基である。
 
【0039】
  上記式(Y−1)中、R
p1は、炭素数1〜5の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
  上記式(Y−1)中、R
p2及びR
p3は、それぞれ独立して炭素数1〜5の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基、又はR
p2及びR
p3が互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に形成する炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基を表す。
 
【0040】
  上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、1価の飽和鎖状炭化水素基及び不飽和鎖状炭化水素基等が挙げられる。この1価の鎖状炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
  また、上記R
1で表される鎖状炭化水素基の水素原子を置換するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
  上記R
1としては、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基が好ましく、メチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
 
【0041】
  上記式(Y−1)におけるR
p1、R
p2及びR
p3で表される炭素数1〜5の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、1価の飽和鎖状炭化水素基及び不飽和鎖状炭化水素基等が挙げられる。この1価の鎖状炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
  上記R
p1、R
p2及びR
p3としては、1価の飽和鎖状炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基が好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ペンチル基がより好ましい。
 
【0042】
  上記式(Y−1)におけるR
p1、R
p2及びR
p3で表される炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、1価の単環式飽和環状炭化水素基、単環式不飽和環状炭化水素基、多環式飽和環状炭化水素基、及び多環式不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。
  1価の単環式飽和環状炭化水素基の具体例としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。
  1価の単環式不飽和環状炭化水素基の具体例としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等が挙げられる。
  1価の多環式飽和環状炭化水素基の具体例としては、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等が挙げられる。
  1価の多環式不飽和環状炭化水素基の具体例としては、ノルボルネニル基、及びトリシクロデセニル基等が挙げられる。
  これらの中で、1価の単環式飽和環状炭化水素基、1価の多環式飽和環状炭化水素基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基がより好ましく、シクロヘキシル基、アダマンチル基がさらに好ましい。
 
【0043】
  上記R
p2及びR
p3が互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に形成する2価の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、2価の単環式飽和環状炭化水素基、単環式不飽和環状炭化水素基、多環式飽和環状炭化水素基、及び多環式不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。
  2価の単環式飽和環状炭化水素基の具体例としては、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、及びシクロオクタンジイル基等が挙げられる。
  2価の単環式不飽和環状炭化水素基の具体例としては、シクロブテンジイル基、シクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基等が挙げられる。
  2価の多環式飽和環状炭化水素基の具体例としては、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、トリシクロデカンジイル基、及びテトラシクロドデカンジイル基等が挙げられる。
  2価の多環式不飽和環状炭化水素基の具体例としては、ノルボルネンジイル基、トリシクロデセンジイル基、及びテトラシクロドデセンジイル基等が挙げられる。
  これらの中では、2価の単環式飽和環状炭化水素基、2価の多環式飽和環状炭化水素基が好ましく、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基がより好ましく、シクロペンタンジイル基、アダマンタンジイル基がさらに好ましい。
 
【0044】
  以上説明した構造単位(A1−1)の具体例としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−4)で表される構造単位等が挙げられる。
 
【0046】
  上記式(1−1)〜(1−4)中、R
1は、上記式(1)と同義であり、R
p1、R
p2及びR
p3は、上記式(Y−1)と同義である。上記式(1−1)及び(1−4)中のn
pは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
 
【0047】
  上記式(1−1)〜(1−4)で表される構造単位の具体例としては、例えば、下記式(化6及び化7)で表される構造単位等が挙げられる。
 
【0050】
  上記構造単位(A1−1)として挙げられる具体例の構造単位の中で、酸解離性基の解離容易性がより高まり、感放射線性樹脂組成物から得られるレジストパターンのパターン形状がより良好になる観点から、上記式(1−1)で表される構造単位、及び上記式(1−2)で表される構造単位が好ましい。また同様に、上記構造単位(A1−1)としては、1−アルキル置換−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましく、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、1−イソプロピル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、1−n−ペンチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
 
【0051】
  (構造単位(A1)の含有割合)
  (A)ブロック共重合体中の構造単位(A1)の含有割合としては、(A)ブロック共重合体を構成する全構造単位に対して、2.5〜50モル%が好ましく、7〜45モル%がより好ましく、8〜40モル%がさらに好ましい。
  また、ポリマーブロック(I)中の構造単位(A1)の含有割合としては、ポリマーブロック(I)を構成する全構造単位に対して、50〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましい。構造単位(A1)を上述の含有割合とすることにより、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンの現像欠陥をより低減することが可能となる。
 
【0052】
  〔ポリマーブロック(II)〕
  〔構造単位(A2)〕
  (A)ブロック共重合体におけるポリマーブロック(II)は、アルカリ解離性基を含む構造単位(A2)を繰り返し連続して有する。ポリマーブロック(II)は、構造単位(A2)のみから構成されていてもよい。また、ポリマーブロック(II)に前述の撥水性付与部を有する場合、撥水性付与部は、構造単位(A2)に含まれていてもよく、他の構造単位に含まれていてもよい。
 
【0053】
  構造単位(A2)におけるアルカリ解離性基としては、そのような性質を有する基である限り特に限定されない。このアルカリ解離性基が、極性基としてのカルボキシ基、ヒドロキシ基及びスルホ基の水素原子を置換した構造を挙げることができる。このようなアルカリ解離性基を有する構造として、ポリマーブロック(II)は、下記式(f−a)で表される構造、下記式(f−b)で表される構造、及び下記式(f−c)で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を有することが好ましい。
  下記式(f−a)で表される構造は、極性基がカルボキシ基であり、アルカリ解離性基がR
Aである場合を表す。
  下記式(f−b)で表される構造は、極性基がヒドロキシ基であり、アルカリ解離性基が−C(=O)R
Bである場合を表す。
  下記式(f−c)で表される構造は、極性基がスルホ基であり、アルカリ解離性基が−N=CR
CR
Dである場合を表す。
 
【0055】
  上記式(f−a)、(f−b)及び(f−c)中、R
A、R
B、R
C及びR
Dは、それぞれ独立して1価の炭化水素基であって、この炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいものである。
  炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい「1価の炭化水素基」としては、例えば1価の鎖状炭化水素基、1価の脂肪族環状炭化水素基、及び1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。また、「置換されていてもよい」とは、当該炭化水素基における一部又は全部の水素原子が、水素原子以外の他の原子又は基に置換されて、置換基を有していてもよいことをいう。この置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基並びにアシルオキシ基等が挙げられる。これらの置換基の中では、フッ素原子が好ましい。
 
【0056】
  上記アルカリ解離性基としては、フッ素原子を有する基が好ましい。フッ素原子を有するアルカリ解離性基は、フッ素原子の電子求引性に起因して解離性が高くなっている。そのような(A)ブロック共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物によれば、アルカリ現像時において、このアルカリ解離性基の解離反応速度が高まると考えられる。そして、アルカリ解離性基の解離後においては、(A)ブロック共重合体のフッ素原子含有率が低下し、レジスト膜表面の親水性がより高まるので、現像欠陥の発生がより抑制されると考えられる。
 
【0057】
  上記フッ素原子を有する基としては、例えば、フッ素原子を有する鎖状炭化水素基、フッ素原子を有する脂肪族環状炭化水素基、フッ素原子を有する芳香族炭化水素基等が好ましい。これらのフッ素原子を有する基をアルカリ解離性基とするとアルカリ現像液によりそれが解離し易くなると考えられる。
 
【0058】
  ポリマーブロック(II)は、ポリマーブロック(II)を形成する構造単位(A2)として、下記式(2)で表される構造単位(A2−i)を有することが好ましい。構造単位(A2−i)が連続してなるポリマーブロック(II)を有する(A)ブロック共重合体は、この構造単位(A2−i)を与える単量体を用いることにより、容易に合成することができる。
 
【0060】
  上記式(2)中、R
2は、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基である。この鎖状炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子で置換されていてもよい。上記式(2)中、Eは単結合又は(n+1)価の基であり、Rfは1価の鎖状炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基である。この鎖状炭化水素基及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。上記式(2)中、nは1〜3の整数である。但し、nが2又は3の場合、複数のRfは同一でも異なっていてもよい。
 
【0061】
  上記R
2で表される1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、前述のポリマーブロック(I)の説明で用いられた式(1)のR
1で表される1価の鎖状炭化水素基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
 
【0062】
  上記R
2で表されるハロゲン原子で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば、前述のポリマーブロック(I)の説明で挙げた上記式(1)のR
1で表されるハロゲン原子で置換された鎖状炭化水素基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
  上記R
2としては、これらの中で、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基が好ましく、メチル基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
 
【0063】
  上記Eで表される2〜4価の基としては、炭化水素から2〜4個の水素原子を除いた炭化水素基等が挙げられる。この炭化水素としては、例えば、直鎖状又は分岐状の鎖状飽和炭化水素、直鎖状又は分岐状の鎖状不飽和炭化水素、単環式飽和炭化水素、単環式不飽和炭化水素、多環式飽和炭化水素、多環式不飽和炭化水素及び芳香族炭化水素が挙げられる。
  直鎖状又は分岐状の鎖状飽和炭化水素の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ヘキサデカン、及びイコサン等が挙げられる。
  直鎖状又は分岐状の鎖状不飽和炭化水素の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、テトラデセン、プロピン、ヘキシン、ブタジエン、ヘキサジエン、デカジエン、ヘキサジイン、及びデカジイン等が挙げられる。
  単環式飽和炭化水素の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、及びシクロデカン等が挙げられる。
  単環式不飽和炭化水素の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデシン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロデカジエン、及びシクロデカジイン等が挙げられる。
  多環式飽和炭化水素の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン(アダマンタン)、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン等が挙げられる。
  多環式不飽和炭化水素の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン、ビシクロ[2.2.2]オクテン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デセン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デセン、及びテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン等が挙げられる。
  芳香族炭化水素の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クメン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、及びデュレン等が挙げられる。
  これらの中で、炭素数1〜8の直鎖状及び分岐状の鎖状飽和炭化水素、炭素数5〜10の単環式飽和炭化水素、炭素数7〜12の多環式飽和炭化水素、炭素数2〜6の鎖状不飽和炭化水素、又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素から、それぞれ2〜4個の水素原子を除いた炭化水素基が好ましい。
 
【0064】
  上記Eは、その末端又は末端でない位置に、例えばエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基、イミノ基、及びチオエーテル基等を含んでいてもよく、また、これらの基を含むラクトン環等の複素環が形成されていてもよい。
 
【0065】
  上記Eは、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;−R
P1、−R
P2−O−R
P1、−R
P2−CO−R
P1、−R
P2−CO−OR
P1、−R
P2−O−CO−R
P1、−R
P2−OH、−R
P2−CN又は−R
P2−COOH等が挙げられる。但し、上記R
P1は、炭素数1〜10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基、又は炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基である。上記R
P2は単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基、又は炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R
P1及びR
P2における鎖状飽和炭化水素基、脂肪族環状飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。
 
【0066】
  上記Eとしては、例えば、下記式(E−1)及び(E−2)で表される2〜4価の基等が挙げられる。
 
【0069】
  上記式(E−1)及び(E−2)中、R
xは、(n+1)価の炭化水素基又はラクトン含有基である。R
yは、単結合又は2価の炭化水素基である。Qは、単結合、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基、イミノ基、又はチオエーテル基である。nは1〜3の整数である。*は、上記式(2)におけるカルボニル炭素との結合部位を示す。上記式(E−1)中、nが2又は3の場合、複数のQ及びR
yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
 
【0070】
  上記R
xで表される(n+1)価の炭化水素基としては、例えば、上記の基Eにおいて例示した(n+1)価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
  上記R
xで表される(n+1)価のラクトン含有基としては、例えば、ブチロラクトン等の単環のラクトン、及びノルボルナンラクトン等の多環のラクトン等から、(n+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
 
【0071】
  上記R
yで表される2価の炭化水素基としては、上記の基Eにおいて例示した(n+1)価の炭化水素基のnが1の場合である2価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
 
【0072】
  上記Qとしては、上記構造単位(A2)を与える単量体の合成容易性の観点から、エーテル基、カルボニル基、又はエステル基であるのが好ましい。
 
【0073】
  上記式(E−1)で表される基Eとしては、例えば、下記式(E−1−1)〜(E−1−6)で表される基等が挙げられる。
 
【0075】
  上記式(E−1−1)〜(E−1−6)中、*は、上記式(E−1)と同義である。
 
【0076】
  上記式(E−1−1)〜(E−1−6)の中では、得られるレジスト膜のエッチング耐性の観点から、上記式(E−1−1)で表される基、上記式(E−1−2)で表される基が好ましい。
 
【0077】
  また、上記式(E−2)で表される(n+1)価の基Eとしては、例えば、下記式(E−2−1)〜(E−2−6)で表される基等が挙げられる。
 
【0079】
  上記式(E−2−1)〜(E−2−6)中、*は上記式(E−2)と同義である。
 
【0080】
  上記式(E−2−1)〜(E−2−6)の中でも、上記式(2)で表される構造単位(A2−i)のアルカリ解離性基が解離し易くなる観点から、上記式(E−2−1)〜(E−2−4)でそれぞれ表される基が好ましい。
 
【0081】
  上記式(2)における上記Rfで表される1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、及びオクタデシル基等が挙げられる。
 
【0082】
  上記Rfで表される1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のアリール基、並びにベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられる。
 
【0083】
  上記Rfで表される、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−i−プロピル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−n−ブチル基、及びパーフルオロ−n−ブチル基等が挙げられる。
 
【0084】
  上記Rfで表される、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、トリ(トリフルオロメチル)フェニル基、フルオロナフチル基、及びトリフルオロメチルナフチル基等が挙げられる。
 
【0085】
  上記式(2)で表される構造単位(A2−i)としては、下記式(2−1)〜(2−4)でそれぞれ表される構造単位(以下、それぞれ「構造単位(A2−1)〜(A2−4)」ともいう。)が好ましい。構造単位(A2−i)が構造単位(A2−1)〜(A2−4)のいずれかであると、これらの構造単位を与える単量体の共重合性が高いので、これらの構造単位の(A)ブロック共重合体中の含有割合を高くすることができる。その結果、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜表面の現像後の親水性をより高めることができ、その結果、現像欠陥のより少ないレジストパターンを形成することができる。
 
【0090】
  〔構造単位(A2−1)〕
  構造単位(A2−1)を表す上記式(2−1)中、R
2及びRfは、上記式(2)と同義である。R
aは、2価の鎖状炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基である。この鎖状炭化水素基及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Xは、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されている2価の炭化水素基である。
 
【0091】
  上記R
aで表される2価の鎖状炭化水素基としては、上記式(2)の基Eにおいて2価の鎖状炭化水素基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
  また、上記R
aで表される2価の芳香族炭化水素基としては、上記式(2)の基Eにおいて2価の芳香族炭化水素基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
 
【0092】
  上記式(2−1)中、上記Xで表される少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されている2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基等において、これらの炭化水素基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
  上記炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基としては、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基がより好ましい。
  上記炭素数3〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基としては、単環式飽和炭化水素基が好ましく、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基が好ましい。
  上記炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ベンジレン基、フェネチレン基が好ましい。
 
【0093】
  なお、上記式(2−1)中、上記Xとしては、カルボニル基に結合する側の末端の炭素原子、すなわち、上記式(2−1)におけるCOORfが結合している炭素原子にフッ素原子又はフッ素原子を有する炭素原子が結合していることが好ましく、この炭素原子に、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基が結合していることがより好ましい。上記Xがこのような構造を取ることで、(A)ブロック共重合体の現像液に対する反応性を向上させることができる。
 
【0094】
  上記式(2−1)中の上記Xとしては、例えば、下記式(X−1)〜(X−6)で表される基等が挙げられる。
 
【0096】
  上記Xとしては、これらの中でも、上記式(X−2)で表される基、上記式(X−3)で表される基が好ましく、上記式(X−2)で表される基がより好ましい。
 
【0097】
  上記Rfとしては、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、フッ素原子を有していてもよい1価の鎖状炭化水素基(以下、これらの基を「Rf
3」で表す。)が好ましい。すなわち、構造単位(A2−1)としては、下記式(2−1−1)で表される構造単位(A2−1−1)が好ましい。
 
【0099】
  上記式(2−1−1)中、R
2、R
a及びXは、上記式(2−1)と同義である。Rf
3は、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、又はフッ素原子を有していてもよい1価の鎖状炭化水素基である。
 
【0100】
  上記Rf
3で表される1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びトリル基等のアリール基、並びに、ベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
 
【0101】
  上記Rf
3で表される1価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば上記式(2)の基Eが有していてもよい置換基の例等が挙げられる。その中でも、ハロゲン原子又はR
P1が好ましく、フッ素原子、又は水素原子の一部若しくは全部が置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましい。Rf
3が1価の芳香族炭化水素基の場合、上記置換基を1〜5個有していることが好ましく、1〜3個有していることがより好ましく、1〜2個有していることがさらに好ましい。
 
【0102】
  上記Rf
3で表される1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
 
【0103】
  上記Rf
3で表されるフッ素原子を有する1価の鎖状炭化水素基としては、上記1価の鎖状炭化水素基の有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子に置換した基等が挙げられる。これらの中でも、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−i−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−i−ブチル基、パーフルオロ−t−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基が好ましい。
 
【0104】
  上記Rf
3で表される基としては、下記式(Rf
3−a)〜(Rf
3−f)で表される基が好ましく、下記式(Rf
3−a)〜(Rf
3−c)で表される基がより好ましい。
 
【0106】
  上記式(Rf
3−a)〜(Rf
3−c)中、Rf
31は、それぞれ独立して、フッ素原子を有していてもよい1価の鎖状炭化水素基である。R
S11は、それぞれ独立して、置換基である。n
f1は、それぞれ独立して、0又は1である。n
f11は、1〜(5+2n
f1)の整数である。n
f12は、0〜(5+2n
f1)の整数である。但し、n
f11+n
f12≦5+2n
f1の条件を満たす。n
f13は、0〜(5+2n
f1)の整数である。
 
【0107】
  上記式(Rf
3−e)及び(Rf
3−f)中、R
41は、それぞれ独立して、置換基である。m1は、0〜5の整数である。m2は、0〜4の整数である。
 
【0108】
  上記Rf
31で表されるフッ素原子を有していてもよい1価の鎖状炭化水素基としては例えば、上記Rf
3のフッ素原子を有していてもよい1価の鎖状炭化水素基として例示したものと同じ基等が挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−i−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−i−ブチル基、パーフルオロ−t−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
 
【0109】
  上記R
S11で表される置換基としては、例えば、−R
S1’、−R
S2’−O−R
S1’、−R
S2’−CO−R
S1’、−R
S2’−CO−OR
S1’、−R
S2’−O−CO−R
S1’、−R
S2’−CN等が挙げられる。
  上記R
S1’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。上記R
S2’は単結合、炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、又は炭素数6〜30のアリーレン基である。これらの中でも、−R
S1’、−R
S2’−O−R
S1’、−R
S2’−CO−R
S1’、−R
S2’−CO−OR
S1’、−R
S2’−O−CO−R
S1’が好ましく、−R
S1’がより好ましい。
 
【0110】
  上記式(Rf
3−e)及び(Rf
3−f)中、R
41で表される置換基としては、例えば−R
Q1、−R
Q2−O−R
Q1、−R
Q2−CO−R
Q1、−R
Q2−CO−OR
Q1、−R
Q2−O−CO−R
Q1、−R
Q2−OH、−R
Q2−CN、及び−R
Q2−COOH等が挙げられる。
  上記R
Q1は、炭素数1〜10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基、又は炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基である。上記R
Q2は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基、又は炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基である。但し、上記R
Q1及びR
Q2における水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。
 
【0111】
  上記式(2−1)で表される構造単位(A2−1)は、より具体的には、下記式(2−1a)〜(2−1e)で表される構造単位が好ましい。構造単位(A2−1)がこれら特定の構造単位であることで、その電子求引性の高さに起因して、アルカリ現像における加水分解の反応速度が一段と向上し、アルカリ現像後のレジスト膜表面の親水性がさらに高まり、その結果、現像欠陥がさらに少ないレジストパターンが得られる。
 
【0113】
  上記式(2−1a)〜(2−1e)中、R
2、R
a及びR
f3は、上記式(2−1)と同義である。
 
【0114】
  上記式(2−1a)〜(2−1e)で表される構造単位としては、例えば、下記式(化22及び化23)で表される構造単位等が挙げられる。
 
【0117】
  上記式(化22及び化23)中、R
2及びRf
3は、上記式(2−1−1)と同義である。
 
【0118】
  さらに、構造単位(A2−1)としては、例えば、下記式(化24)で表される構造単位等も挙げられる。
 
【0120】
  上記式中、R
2及びRf
3は、上記式(2−1−1)と同義である。
 
【0121】
  構造単位(A2−1)としては、これらの中でも、1位にCOORf
3基が結合した1,1−ジフルオロ−2−ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましい。また、Rf
3基としては、1価の鎖状炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、トリフルオロメチル置換フェニル基がより好ましい。
 
【0122】
  〔構造単位(A2−2)〕
  前述した構造単位(A2−2)は、上記式(2−2)で表される構造単位である。
 
【0123】
  上記式(2−2)中、R
2及びRfは、上記式(2)と同義である。
  上記式(2−2)におけるR
bは、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂肪族環状炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基であり、これらの炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
 
【0124】
  上記R
bで表される置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基、2価の脂肪族環状炭化水素基、及び2価の芳香族炭化水素基としては、上記式(2)において2価の基Eとして例示したものと同様の基等が挙げられる。
 
【0125】
  上記R
bとしては、1,2−エタンジイル基、2,6−ノルボルナンラクトンジイル基、フェニレンオキシメチレン基が好ましい。
 
【0126】
  上記Rfとしては、フッ素原子を有する1価の鎖状炭化水素基が好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−i−プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基が好ましい。
 
【0127】
  〔構造単位(A2−3)〕
  前述した構造単位(A2−3)は、上記式(2−3)で表される構造単位である。
 
【0128】
  上記式(2−3)中、R
2は、上記式(2)と同義である。R
0は、1価の芳香族炭化水素基である。この芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。R
cは、メチレン基、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CH
2CH
2−、又は酸素原子である。R
dは、水素原子又は1価の有機基である。
  なお、本明細書において、「有機基」とは、少なくとも1つの炭素原子を含む基をいう。
 
【0129】
  上記R
0で表される1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、これらアリール基及びアラルキル基が有する水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている基等が挙げられる。この置換基としては、例えば、上記式(2)の基Eが有していてもよい置換基の例等が挙げられる。上記置換基の中でもハロゲン原子又はR
P1が好ましく、フッ素原子、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい炭素数1〜10の1価の鎖状飽和炭化水素基がより好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。R
0が有する置換基の数としては、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましく、1〜2個がさらに好ましい。
 
【0130】
  R
0としては、上記構造単位(A2−1)における式(Rf
3−c)、(Rf
3−d)でそれぞれ表される基が好ましい。
 
【0131】
  〔構造単位(A2−4)〕
  前述した構造単位(A2−4)は、上記式(2−4)で表される構造単位である。
 
【0132】
  上記式(2−4)中、Rfは、上記式(2)と同義である。R
2’は少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されている炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基である。
 
【0133】
  上記R
2’で表される少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されている1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、フルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、フルオロブチル基、トリフルオロブチル基、及びノナフルオロブチル基等が挙げられる。
 
【0134】
  上記Rfで表されるフッ素原子を有していてもよい1価の鎖状炭化水素基としては、上記式(2)のRfとして例示したものと同様の基等が挙げられる。
  また、上記Rfで表されるフッ素原子を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基としては、上記式(2)のRfとして例示したものと同様の基等が挙げられる。
 
【0135】
  (構造単位(A2)の含有割合)
  (A)ブロック共重合体における構造単位(A2)の含有割合としては、(A)ブロック共重合体を構成する全構造単位に対して50〜95モル%が好ましく、55〜90モル%がより好ましく、60〜85モル%がさらに好ましい。このような含有割合とすることによって、液浸露光時におけるレジスト表面のより高い疎水性と、現像後のレジスト表面のより高い親水性とを両立できる。
  また、ポリマーブロック(II)中の構造単位(A2)の含有割合は、ポリマーブロック(II)を構成する全構造単位に対して、20〜100モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、40〜60モル%がさらに好ましい。
 
【0136】
  (A)ブロック共重合体は、前述の構造単位(A1)が連続してなるポリマーブロック(I)と、構造単位(A2)が連続してなるポリマーブロック(II)を有していれば、他の構造単位を有していてもよい。
  例えば、(A)ブロック共重合体は、アルカリ現像液により(A)ブロック共重合体の極性が変化する構造単位、(A)ブロック共重合体のアルカリ現像液への溶解性を高める作用をもたらす構造単位を有していてもよい。
  (A)ブロック共重合体は、フッ素原子を与える構造単位として、後述する構造単位(A3)及び構造単位(A4)を有していてもよく、また、これらの構造単位(A3)及び(A4)以外に他の構造単位を有していてもよい。なお、この場合、構造単位(A3)及び(A4)等の他の構造単位は、ポリマーブロック(I)及びポリマーブロック(II)の何れか又は両方に含まれていてもよい。
 
【0137】
  〔構造単位(A3)〕
  (A)ブロック共重合体が有していてもよい構造単位(A3)は、下記式(3)で表される。
 
【0139】
  上記式(3)中、R
3は、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基である。この鎖状炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はハロゲン原子で置換されていてもよい。
  上記式(3)中、Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。
  上記式(3)中、R
4は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
 
【0140】
  上記R
3で表される1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、上記式(2)のR
2として例示したものと同様の基等が挙げられる。
 
【0141】
  上記R
4で表される少なくとも1個のフッ素原子を有する鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−i−プロピル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−i−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−i−ブチル基、パーフルオロ−t−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、及びパーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
 
【0142】
  上記R
4で表される少なくとも1個のフッ素原子を有する脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、及びフルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
 
【0143】
  上記構造単位(A3)を与える単量体としては、例えばトリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロ−n−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロ−i−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロ−n−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロ−i−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロ−t−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアダマンチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロイソボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロトリシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル、及びフルオロテトラシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
 
【0144】
  (構造単位(A3)の含有割合)
  (A)ブロック共重合体における構造単位(A3)の含有割合としては、(A)ブロック共重合体を構成する全構造単位に対して、5〜40モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。このような含有割合にすることによって液浸露光時におけるレジスト膜表面のより高い疎水性を発現させることができる。
  また、構造単位(A3)がポリマーブロック(II)に含まれている場合、ポリマーブロック(II)中の構造単位(A3)の含有割合は、ポリマーブロック(II)を構成する全構造単位に対して、50〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましい。
 
【0145】
  〔構造単位(A4)〕
  (A)ブロック共重合体が有していてもよい構造単位(A4)は、下記式(4)で表される。
 
【0147】
  上記式(4)中、R
5は、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基であり、この炭素数1〜4の1価の鎖状炭化水素基が少なくとも1個のハロゲン原子を有していてもよい。
  上記式(4)におけるR
6は、炭素数1〜20の(m+1)価の炭化水素基であり、R
6のR
7側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−、又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。但し、R’は、水素原子又は1価の有機基である。
  上記式(4)におけるR
7は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基、又は炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基である。
  上記式(4)におけるX
2は、単結合、又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。
  上記式(4)におけるAは、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*、又は−SO
2−O−*である。但し、R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R
8に結合する部位を示す。
  上記式(4)におけるR
8は、水素原子又はアルカリ解離性基でない1価の有機基である。mは、1〜3の整数である。但し、mが2又は3の場合、複数のR
7、X
2、A及びR
8はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
 
【0148】
  上記R
8が水素原子である場合には、(A)ブロック共重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
 
【0149】
  上記R
8として表される1価の有機基としては、例えば、炭素数3〜20の酸解離性基等が挙げられる。
 
【0150】
  上記R
8が酸解離性基の場合、構造単位(A4)は、酸の作用によって極性基を生じることとなる。従って、上記R
8が酸解離性基の場合には、後述するレジストパターン形成方法における液浸露光工程において露光された部分のアルカリ現像液に対する溶解性を高められる点で好ましい。
 
【0151】
  上記R
8で表される酸解離性基としては、例えば、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基、アルコキシ置換メチル基、及びアルキルスルファニル置換メチル基等が挙げられる。
  なお、アルコキシ置換メチル基におけるアルコキシ基(置換基)としては、例えば炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。また、アルキルスルファニル置換メチル基におけるアルキル基(置換基)としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
  また酸解離性基としては、上述の構造単位(A1−1)の説明で述べた式(Y−1)で表される基等も挙げられる。これらの中でも、上記式(4)におけるAが酸素原子又は−NR’’−の場合は、t−ブトキシカルボニル基又はアルコキシ置換メチル基が好ましい。また、上記式(4)におけるAが−CO−O−の場合、ポリマーブロック(I)の構造単位(A1−1)で例示した式(Y−1)で表される基が好ましい。
 
【0152】
  上記X
2で表される少なくとも1個のフッ素原子を有する2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、上記式(2−1)におけるXの例として挙げた上記式(X−1)〜(X−6)で表される基等が挙げられる。
 
【0153】
  上記X
2としては、上記Aが酸素原子の場合は、上記式(X−1)で表される基が好ましい。また、上記Aが−CO−O−の場合は、上記式(X−2)〜(X−6)で表される基が好ましく、上記式(X−3)で表される基であることがより好ましい。
 
【0154】
  上記構造単位(A4)としては、例えば、下記式(4−1a)〜(4−1c)で表される構造単位等が挙げられる。
 
【0156】
  上記式(4−1a)〜(4−1c)中、R
6’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R
5、X
2、R
8及びmは、上記式(4)と同義である。
 
【0157】
  構造単位(A4)を与える単量体としては、例えば、下記式(4m−1)〜(4m−5)で表される化合物等が挙げられる。
 
【0159】
  上記式(4m−1)〜(4m−5)中、R
5及びR
8は、上記式(4)と同義である。
 
【0160】
  (構造単位(A4)の含有割合)
  上記(A)ブロック共重合体における構造単位(A4)の含有割合としては、(A)ブロック共重合体を構成する全構造単位に対して、2.5〜20モル%が好ましく、3.5〜15モル%がより好ましい。このような含有割合とすることによって、感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜の表面は、アルカリ現像後においてより高い親水性を発揮することができる。
  また、構造単位(A4)がポリマーブロック(II)に含まれている場合、ポリマーブロック(II)中の構造単位(A4)の含有割合は、ポリマーブロック(II)を構成する全構造単位に対して、5〜20モル%が好ましく、5〜15モル%がより好ましく、5〜10モル%がさらに好ましい。
 
【0161】
  〔その他の構造単位〕
  (A)ブロック共重合体は、前述の任意に有していてもよい構造単位(A3)及び(A4)以外にも、例えば、アルカリ可溶性付与基を有する構造単位(以下、「構造単位(A5)」ともいう)、後述の(C)重合体において説明するラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(A6)等のその他の構造単位を有していてもよい。
  (A)ブロック共重合体は、構造単位(A5)や構造単位(A6)を有することにより、現像液に対する親和性を向上させ得る。
 
【0162】
  構造単位(A5)において、その構造単位(A5)にアルカリ可溶性の作用を付与するアルカリ可溶性付与基としては、酸解離定数pKaが4〜11の水素原子を有する官能基であることが好ましい。このような官能基を有する構造単位(A5)を含む(A)ブロック共重合体により、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性が向上すると考えられる。このような官能基としては、例えば、下記式(5s−1)及び(5s−2)で表される官能基等が挙げられる。
 
【0164】
  上記式(5s−1)中、R
9は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜10の炭化水素基である。
  上記R
9で表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭化水素基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。
 
【0165】
  構造単位(A5)としては、例えば、(メタ)アクリル酸由来の構造単位、国際公開第2009/041270号の[0018]〜[0024]段落に記載の構造単位等が挙げられる。
 
【0166】
  構造単位(A5)のうち、カルボキシ基を有する構造単位としては、6−カルボキシ−2−ノルボルナンラクトニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましい。
 
【0167】
  上記構造単位(A6)としては、例えば、前述の構造単位(A2)として例示したものと同様の構造単位等が挙げられる。これらの中で、ノルボルナンラクトン含有基を含む構造単位が好ましく、6−ブチロラクトニルオキシカルボニルノルボルナンラクトニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
 
【0168】
  (他の構造単位の含有割合)
  (A)ブロック共重合体における構造単位(A5)及び(A6)等の「その他の構造単位」の含有割合としては、(A)ブロック共重合体を構成する全構造単位に対して、通常、10モル%以下であり、2〜8モル%が好ましく、3〜5モル%がより好ましい。このような含有割合とすることによって、液浸露光時における撥水性の確保と現像時における現像液への親和性向上をバランス良く達成することができる。
  また、当該「その他の構造単位」がポリマーブロック(II)に含まれている場合、ポリマーブロック(II)中の「その他の構造単位」の含有割合は、ポリマーブロック(II)を構成する全構造単位に対して、5〜20モル%が好ましく、5〜15モル%がより好ましく、5〜10モル%がさらに好ましい。
 
【0169】
  ((A)ブロック共重合体の合成方法)
  (A)ブロック共重合体は、例えば、一方のポリマーブロック(ポリマーブロック(I)及び(II)の何れか一方)を構成するモノマーを重合し、その重合反応が完了した後、続けて、他方のポリマーブロック(ポリマーブロック(I)及び(II)の何れか他方)を構成するモノマーを投入し、重合を行うことで合成することができる。なお、重合反応が完了したかどうかは、例えば重合溶液をガスクロマトグラフィーで分析することで確認することができる。
 
【0170】
  (A)ブロック共重合体の重合方法は特に限定されるものではなく、例えばアニオン重合、ラジカル重合等の重合方法で行うことができる。また、重合反応の進み方は、リビング重合が好ましい。
  (A)ブロック共重合体の重合方法は、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合等が好ましく、リビングラジカル重合として、可逆的不可開裂連鎖(RAFT)重合が好ましい。
 
【0171】
  (A)ブロック共重合体の合成をアニオン重合にて行う場合のアニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム及びt−ブチルリチウム等のアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタン等のアルキレンジリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、リチウムナフタレン、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、n−ブチルマグネシウム、n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、並びにステアリン酸バリウム等を挙げることができる。
 
【0172】
  (A)ブロック共重合体の合成をラジカル重合にて行う場合のラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系ラジカル重合開始剤、及び過酸化物系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
  アゾ系ラジカル重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及びジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
  過酸化物系ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、及びクメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
  これらの中で、アゾ系ラジカル重合開始剤が好ましく、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートがより好ましく、AIBNがさらに好ましい。これらのラジカル開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
 
【0173】
  (A)ブロック共重合体の合成をRAFT重合にて行う場合、連鎖移動剤としては、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボナート、及びキサンタート等のチオカルボニルチオ化合物が挙げられる。
  この連鎖移動剤の具体例としては、ビス(n−オクチルメルカプト−チオカルボニル)ジスルフィド、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカーボネート、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、シアノメチルドデシルトリチオカーボネート、及び2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオネート等が挙げられる。
 
【0174】
  (A)ブロック共重合体の重合に使用される溶媒としては、例えば、アルカン類、シクロアルカン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、飽和カルボン酸エステル類、ケトン類、エーテル類、及びアルコール類等が挙げられる。
  アルカン類の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、及びn−デカン等が挙げられる。
  シクロアルカン類の具体例としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、及びノルボルナン等が挙げられる。
  芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、及びクメン等が挙げられる。
  ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、及びクロロベンゼン等が挙げられる。
  飽和カルボン酸エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
  ケトン類の具体例としては、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、及び2−ヘプタノン等が挙げられる。
  エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、及びジエトキシエタン類等が挙げられる。
  アルコール類等の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、及び4−メチル−2−ペンタノール等が挙げられる。
  上記溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
 
【0175】
  (A)ブロック共重合体の重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
 
【0176】
  (A)ブロック共重合体のMwとしては、1000以上30000以下であることが好ましい。(A)ブロック共重合体のMwを上記特定範囲とすることで、現像欠陥が少なく、かつ良好なパターン形状を有するレジストパターンを形成できる感放射線性樹脂組成物が得易くなる。
  (A)ブロック共重合体のMwの下限としては、1000が好ましく、2000がより好ましく、2500がさらに好ましい。一方、(A)ブロック共重合体のMwの上限としては、30000が好ましく、25000がより好ましく、20000がさらに好ましい。
  また、(A)ブロック共重合体のMwとポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、1.0〜2.5が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。
 
【0177】
  なお、本明細書において、重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件により測定された値である。
  (GPCによる測定条件)
  ・GPCカラム:東ソー製、G2000HXL  2本、G3000HXL  1本、G4000HXL  1本
  ・カラム温度:40℃
  ・溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製)
  ・流速:1.0mL/分
  ・試料濃度:1.0質量%
  ・試料注入量:100μL
  ・検出器:示差屈折計
  ・標準物質:単分散ポリスチレン
 
【0178】
  (A)ブロック共重合体の合成方法として、より具体的な好ましい一例を挙げると、後述する実施例で説明されるような合成方法のほか、次の合成方法も挙げられる。
  前述のポリマーブロック(I)を構成する単量体を、前述の「(A)ブロック共重合体の重合に使用される溶媒」に溶解させ、そこに連鎖移動剤を加え、前述の時間範囲にて前述の温度範囲で加熱する。
  そこへ重合開始剤と溶媒の混合液を所定時間(例えば3〜12時間)かけて添加する。
  次に、その中に、ポリマーブロック(II)を構成する単量体、重合開始剤、及び溶媒の混合溶液を所定時間(例えば3〜12時間)かけて添加する。重合終了後、重合溶液を例えば30℃以下に冷却して溶媒中に投入し、固形分を析出させ、デカンテーション、洗浄、及び濃縮等の作業を経て、(A)ブロック共重合体を得ることができる。
 
【0179】
  ((A)ブロック共重合体の含有割合)
  本発明に係る感放射線性樹脂組成物における(A)ブロック共重合体の含有量は特に限定されない。
  例えば、(A)ブロック共重合体の含有量は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対して50質量%以上となるような主成分として用いることも可能である。(A)ブロック共重合体を感放射線性樹脂組成物の全固形分に対する主成分として用いる場合、(A)ブロック共重合体の含有量は、例えば、当該全固形分に対して50質量%以上100質量%未満とすることが可能である。
  また、(A)ブロック共重合体は、後述の(C)酸解離性基含有重合体と組み合わせて用いられることが好ましい。感放射線性樹脂組成物の全固形分に対する主成分として、後述の(C)重合体等の(A)ブロック共重合体以外の他の重合体を用いる場合、(A)ブロック共重合体を添加剤として用いることができる。(A)ブロック共重合体が添加剤として用いられる場合、(A)ブロック共重合体の含有量は、感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%がさらに好ましい。(A)ブロック共重合体が(C)重合体と組み合わせて用いられる場合には、(A)ブロック共重合体の含有量は、(C)重合体100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。(A)ブロック共重合体の含有量を上記範囲とすることで、現像欠陥が少なくかつ良好なパターン形状を有するレジストパターンを形成できる感放射線性樹脂組成物が得易くなる。
 
【0180】
  <(B)酸発生体>
  感放射線性樹脂組成物は、露光により酸を発生する性質を有する(B)酸発生体を含有する。(B)酸発生体により発生した酸により、露光領域においては、前述の(A)ブロック共重合体及び後述する(C)重合体の酸解離性基が解離し、カルボキシ基等の極性基が生成するため、それら重合体は現像液に可溶となる。当該感放射線性樹脂組成物における(B)酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、「(B)酸発生剤」ともいう。)でも、酸発生基として、(A)ブロック共重合体や(C)重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
 
【0181】
  (B)酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、及びジアゾケトン化合物等が挙げられる。
  上記オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
  これらの(B)酸発生剤の具体例としては、特開2013−68914号公報の[0199]〜[0202]段落に記載の化合物等が挙げられる。
 
【0182】
  上記(B)酸発生剤の中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムアダマンチル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネートがさらに好ましい。
  なお、(B)酸発生体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 
【0183】
  ((B)酸発生体の含有割合)
  当該感放射線性樹脂組成物における(B)酸発生体の含有量としては、(B)酸発生体が(B)酸発生剤の場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性を確保する観点から、当該組成物中の全固形分に対して、0.1〜20質量%が好ましい。また、当該組成物が(C)重合体を含有する場合、(B)酸発生体の含有量は、(C)重合体100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましい。(B)酸発生体の含有量がかかる範囲であれば、感度及び現像性を高め易く、また、露光光に対する透明性が低下し難く、矩形のレジストパターンが得られ易くなる。
 
【0184】
  <(C)酸解離性基含有重合体>
  (C)酸解離性基含有重合体は、酸解離性基を含む構造単位(C1)を有する重合体である。ただし、前述の(A)ブロック共重合体に該当するものは(C)重合体から除かれる。(C)重合体は、本発明に係る感放射線性樹脂組成物におけるレジストパターンを形成する全重合体に対して、50質量%以上を占める主成分として好適に用いられる。
 
【0185】
  (C)重合体としては、酸解離性基が保護基の役割を担うことで酸の作用前はアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性であり、酸の作用により酸解離性基(保護基)が解離(脱離)すると、アルカリ可溶性となる重合体を用いることが好ましい。このような(C)重合体とすることで、露光された領域(露光領域)と、露光されていない領域(未露光領域)とで、アルカリ現像液に対する溶解し易さの差(溶解コントラスト)が顕著に生じ、良好なレジストパターンの形成に寄与することができる。
 
【0186】
  上記「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、(C)重合体を含有する感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト膜に代えて(C)重合体のみを用いた膜厚100nmの被膜を現像した場合に、被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質をいう。なお、本発明に係る感放射線性樹脂組成物は、このような(C)重合体を1種単独で又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。
 
【0187】
  (C)酸解離性基含有重合体としては、例えば、ノルボルネン誘導体等を重合して得られる「主鎖にノルボルナン環等の脂環式骨格を有する重合体」、ノルボルネン誘導体と無水マレイン酸を共重合して得られる「主鎖にノルボルナン環及び無水マレイン酸誘導体を有する重合体」、ノルボルネン誘導体と(メタ)アクリレート化合物を共重合して得られる「主鎖にノルボルナン環と(メタ)アクリレートに由来する骨格が混在する重合体」、ノルボルネン誘導体と無水マレイン酸と(メタ)アクリレート化合物を共重合して得られる「主鎖にノルボルナン環と無水マレイン酸誘導体と(メタ)アクリレートに由来する骨格が混在する重合体」、(メタ)アクリレート化合物を重合して得られる「主鎖に(メタ)アクリレートに由来する骨格を有する重合体」等がある。これらの中でも、(C)重合体としては、「(メタ)アクリレートに由来する骨格を有する重合体」であることが好ましく、「主鎖に(メタ)アクリレートに由来する骨格を有する重合体」であることがより好ましい。
  なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの両方を含む意である。
 
【0188】
  (C)重合体は、酸解離性基を含む構造単位(C1)以外に、構造単位として、ラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(C2)、極性基を含む構造単位(C3)をさらに有することができる。以下、(C)重合体が有する各構造単位について説明する。
 
【0189】
  〔構造単位(C1)〕
  酸解離性基を含む構造単位(C1)は、前述の(A)ブロック共重合体における「構造単位(A1)」と同様に説明されるものであるため、重複する説明を省略する。
  この(C)重合体における構造単位(C1)としては、酸解離性基の解離容易性がより高まり、感放射線性樹脂組成物から得られるレジストパターンのパターン形状がより良好になる観点から、上記式(1−1)で表される構造単位、及び上記式(1−2)で表される構造単位が好ましい。また同様に、1−アルキル置換−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル置換−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましく、1−メチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−イソプロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
 
【0190】
  (C)重合体における構造単位(C1)の含有割合としては、(C)重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜80モル%が好ましく、30モル%〜70モル%がより好ましく、40モル%〜60モル%がさらに好ましい。構造単位(C1)の含有割合を上記範囲とすることで、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンのパターン形状がさらに良好になる。
 
【0191】
  〔構造単位(C2)〕
  (C)酸解離性基含有重合体には、前述の構造単位(C1)以外に、さらに、ラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(C2)を有することが好ましい。
  (C)重合体は、構造単位(C2)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
 
【0192】
  (C)重合体がラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(C2)を有することで、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜の基板への密着性の向上に寄与することができる。
  ここで、ラクトン含有基とは、−O−C(O)−構造を含む一つの環(ラクトン環)を含有する環式基を表す。また、環状カーボネート含有基とは、−O−C(O)−O−で表される結合を含む一つの環(環状カーボネート環)を含有する環式基を表す。ラクトン環又は環状カーボネート環を1つめの環として数え、ラクトン環又は環状カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
 
【0193】
  構造単位(C2)としては、例えば、下記式(化30及び化31)で表される構造単位等が挙げられる。
 
【0196】
  上記式(化30及び化31)におけるR
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。
 
【0197】
  これらの中で、構造単位(C2)としては、ノルボルナンラクトニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましい。
 
【0198】
  上記構造単位(C2)を与える単量体は、例えば、下記式(L−1)等で表される。
 
【0200】
  上記式(L−1)中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。R
L2は、単結合又は2価の基である。R
L3は、ラクトン含有基又は環状カーボネート含有基である。
 
【0201】
  上記R
L2で表される2価の基としては、例えば、炭素数1〜20の2価の直鎖状又は分岐状の炭化水素基等が挙げられる。
 
【0202】
  上記R
L3で表されるラクトン含有基としては、例えば、下記式(L3−1)〜(L3−6)で表される基等が挙げられる。また、上記R
L3で表される環状カーボネート含有基としては、例えば、(L3−7)及び(L3−8)で表される基等が挙げられる。
 
【0204】
  上記式(L3−1)及び(L3−4)中、R
Lc1は酸素原子又はメチレン基である。
  上記式(L3−3)中、R
Lc2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
  上記式(L3−1)及び(L3−2)中、n
Lc1は、0又は1である。
  上記式(L3−3)中、n
Lc2は、0〜3の整数である。
  上記式(L3−7)中、n
c1は、0〜2の整数である。
  上記式(L3−8)中、n
c2〜
c5は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。
  上記式(L3−1)〜(L3−8)において、*は、上記式(L−1)のR
L2に結合する部位を示す。なお、上記式(L3−1)〜(L3−8)で表される基は置換基を有していてもよい。
 
【0205】
  上記構造単位(C2)を与える単量体としては、上記式(L−1)における上記R
L3で表されるラクトン含有基が、上記式(L3−1)で表される基であることが好ましく、上記式(L3−1)におけるR
Lc1がメチレン基であり、かつn
Lc1が0である単量体がより好ましい。
 
【0206】
  (C)重合体における構造単位(C2)の含有割合としては、(C)重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜60モル%が好ましく、25モル%〜55モル%がより好ましく、30モル%〜50モル%がさらに好ましい。構造単位(C2)の(C)重合体中の含有割合を上記範囲とすることで、本発明に係る感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性を向上させることが可能となる。
 
【0207】
  〔構造単位(C3)〕
  (C)酸解離性基含有重合体は、前述の構造単位(C1)以外に、さらに、極性基を含む構造単位(C3)を有することが好ましい。ここでいう「極性基」とは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ケト基、スルホンアミド基、アミノ基、アミド基、及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種をいう。(C)重合体が構造単位(C3)を有することで、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜の基板への密着性の向上に寄与することができる。なお、(C)重合体は、極性基を含む構造単位(C3)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。
 
【0208】
  極性基を含む構造単位(C3)としては、例えば、下記式(化34)で表される構造単位等が挙げられる。
 
【0210】
  上記式(化34)中、R
a9は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。
  上記式(化34)中、構造単位(C3)としては、上記式(a2−15)で表される構造単位が好ましい。
 
【0211】
  (C)重合体において、構造単位(C3)の含有割合としては、(C)重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜20モル%が好ましく、5モル%〜10モル%がより好ましい。
 
【0212】
  ((C)重合体の合成方法)
  (C)重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
  (C)重合体の重合に使用されるラジカル重合開始剤は、前述の「(A)ブロック共重合体」の合成をラジカル重合にて行う場合のラジカル重合開始剤と同様に説明されるものである。
  また、(C)重合体の重合に使用される溶媒は、前述の「(A)ブロック共重合体」の重合に使用される溶媒と同様に説明されるものである。
 
【0213】
  (C)重合体を重合する際の反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
 
【0214】
  (C)重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、3000〜30000であることが好ましい。(C)重合体のMwを上記特定範囲とすることで、現像欠陥が少なくかつ良好なパターン形状を有するレジストパターンを形成できる感放射線性樹脂組成物が得易くなる。
  (C)重合体のMwの下限としては、3000が好ましく、4000がより好ましく、5000がさらに好ましい。一方、(C)重合体のMwの上限としては、30000が好ましく、25000がより好ましく、20000がさらに好ましい。
  (C)重合体のMwとポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常、1〜3であり、好ましくは1〜2である。
 
【0215】
  ((C)重合体の含有割合)
  本発明に係る感放射線性樹脂組成物における(C)重合体の含有量としては、当該組成物中の全固形分に対して、通常70質量%以上であり、80質量%以上が好ましい。
 
【0216】
  <(D)酸拡散制御体>
  前述の感放射線性樹脂組成物は、前述の(B)酸発生体と共に、(D)酸拡散制御体を含有することが好ましい。この(D)酸拡散制御体は、露光により、(B)酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を抑制し、未露光領域における好ましくない化学反応を抑制する作用が期待される成分である。
  当該感放射線性樹脂組成物は、(D)酸拡散制御体を含有することで、形成されるレジストパターンのパターン形状や寸法忠実度を向上させることが可能となる。当該感放射線性樹脂組成物における(D)酸拡散制御体の含有形態としては、低分子化合物である酸拡散制御体の形態(以下、適宜、「(D)酸拡散制御剤」ともいう)でも、(A)ブロック共重合体や(C)重合体等の重合体の一部として組み込まれた酸拡散制御基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
 
【0217】
  (D)酸拡散制御剤としては、例えば下記式(D1)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(d1)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(d2)」ともいう)、窒素原子を3個以上有する化合物(以下、「含窒素化合物(d3)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物、酸解離性基を有する含窒素化合物等が挙げられる。
 
【0219】
  上記式D1中、R
10〜R
12は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はシクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基の有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
 
【0220】
  含窒素化合物(d1)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類、並びにアニリン及びジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。これらの中では、芳香族アミン類が好ましく、ジイソプロピルアニリンがより好ましい。
  含窒素化合物(d2)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
  含窒素化合物(d3)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等が挙げられる。
 
【0221】
  アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
 
【0222】
  ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、及びトリブチルチオウレア等が挙げられる。
 
【0223】
  含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類の他、ピラジン、ピラゾール等が挙げられる。
 
【0224】
  酸解離性基を有する含窒素化合物としては、例えば、N−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N−(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、及びN−(t−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
 
【0225】
  感放射線性樹脂組成物における(D)酸拡散制御体の含有量としては、(D)酸拡散制御体が(D)酸拡散制御剤の場合、感放射線性樹脂組成物の感度を良好にする観点から、前述の(A)ブロック共重合体及び(C)重合体の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
 
【0226】
  <(E)溶媒>
  前述の感放射線性樹脂組成物は、通常、(E)溶媒を含有する。(E)溶媒は少なくとも前述の(A)ブロック共重合体及び(B)酸発生体、並びに所望により含有される(C)重合体、(D)酸拡散制御体、及び任意成分を溶解できれば特に限定されない。
  (E)溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
 
【0227】
  上記アルコール系溶媒としては、例えばモノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
  モノアルコール系溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及びジアセトンアルコール等が挙げられる。
  多価アルコール系溶媒の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。
  多価アルコール部分エーテル系溶媒の具体例としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアリールエーテル等が挙げられる。これらの「アルキレン」部位としては、炭素数が2又は3(エチレン又はプロピレン)であり、その繰り返し数が1又は2(モノアルキレン又はジアルキレン)のものが挙げられる。また、「アルキル」部位としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、「アリール」部位としては、炭素数6〜8のアリール基が挙げられる。多価アルコール部分エーテル系溶媒の具体例としては、3−メトキシブタノール等のアルコキシアルコール等も挙げられる。
 
【0228】
  上記エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、及びジフェニルエーテル等が挙げられる。
 
【0229】
  上記ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、及びアセトフェノン等が挙げられる。
 
【0230】
  アミド系溶媒の具体例としては、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
 
【0231】
  エステル系溶媒の具体例としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、及びγ−バレロラクトン、並びに、酢酸、アセト酢酸、乳酸、シュウ酸及びプロピオン酸等のカルボン酸と上記アルコール系溶媒とのエステル等が挙げられる。
 
【0232】
  炭化水素系溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
  上記脂肪族炭化水素系溶媒の具体例としては、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
  上記芳香族炭化水素系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、及びn−アミルナフタレン等が挙げられる。
 
【0233】
  上記(E)溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
  上記(E)溶媒のうち、溶解性又は分散性に優れ、また塗膜形成が容易である観点から、酢酸プロピレングリコールモノアルキルエーテル類及びケトン類からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、酢酸プロピレングリコールモノアルキルエーテル類及び環状ケトンからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましい。
 
【0234】
  <(F)その他添加剤>
  本発明に係る感放射線性樹脂組成物は、上記成分の他、必要に応じて、(F)その他添加剤として、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤、及び架橋剤等を含有することができる。(F)その他添加剤は、同一又は異なる種類の添加剤を1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
 
【0235】
  (偏在化促進剤)
  偏在化促進剤は、(A)ブロック共重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏析させる作用を有するものである。感放射線性樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることでウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させ、結果として(A)ブロック共重合体の含有量を従来よりも少なくすることができる。従って、LWR(Line  Width  Roughness)、現像欠陥、パターン倒れ耐性等のレジスト基本特性を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になる。
  このような偏在化促進剤としては、例えば、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物等が挙げられる。このような化合物としては、例えば、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、及び多価アルコール等が挙げられる。
 
【0236】
  上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、及びノルボルナンラクトン等が挙げられる。
  上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びビニレンカーボネート等が挙げられる。
  上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等が挙げられる。
  上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
 
【0237】
  感放射線性樹脂組成物における上記偏在化促進剤の含有量としては、前述の(A)ブロック共重合体及び(C)重合体の合計100質量部に対して、10〜500質量部が好ましく、30〜300質量部がより好ましい。
 
【0238】
  (界面活性剤)
  界面活性剤は、前述の感放射線性樹脂組成物の塗布性、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、及びポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
  感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、前述の(A)ブロック共重合体及び(C)重合体の合計100質量部に対して、通常、2質量部以下である。
 
【0239】
  (脂環式骨格含有化合物)
  脂環式骨格含有化合物は、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンのドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。
  脂環式骨格含有化合物としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;  デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;  リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;  3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。
  感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、前述の(A)ブロック共重合体及び(C)重合体の合計100質量部に対して、通常50質量部以下であり、30質量部以下が好ましい。
 
【0240】
  (増感剤)
  増感剤は、(B)酸発生体に吸収される露光光のエネルギー以外のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを例えばラジカルのような形で(B)酸発生体に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させることが可能となる。
  このような増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、及びフェノチアジン類等が挙げられる。
 
【0241】
  (架橋剤)
  感放射線性樹脂組成物をネガ型感放射線性樹脂組成物として用いる場合においては、当該組成物は、アルカリ現像液に可溶な重合体を酸の存在下で架橋しうる化合物(以下、「架橋剤」ともいう)を含有してもよい。架橋剤としては、例えば、アルカリ現像液に可溶な重合体との架橋反応性を有する官能基(以下、「架橋性官能基」ともいう)を1種以上有する化合物等が挙げられる。
 
【0242】
  上記架橋性官能基としては、例えば、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アセトキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ホルミル基、アセチル基、ビニル基、イソプロペニル基、(ジメチルアミノ)メチル基、(ジエチルアミノ)メチル基、(ジメチロールアミノ)メチル基、(ジエチロールアミノ)メチル基、及びモルホリノメチル基等が挙げられる。
 
【0243】
  架橋剤としては、例えば、国際公開第2009/51088号の[0169]〜[0172]段落に記載のもの等が挙げられる。
  架橋剤としては、メトキシメチル基含有化合物が好ましく、ジメトキシメチルウレア、テトラメトキシメチルグリコールウリルが好ましい。
  架橋剤の含有量としては、アルカリ現像液に可溶な重合体100質量部に対して、5〜95質量部が好ましく、15〜85質量部がより好ましく、20〜75質量部がさらに好ましい。
 
【0244】
  (F)添加剤としては、上記以外に、例えば染料、顔料、接着助剤、保存安定化剤、消泡剤等が挙げられる。
 
【0245】
[感放射線性樹脂組成物の調製]
  本発明に係る感放射線性樹脂組成物は、(A)ブロック共重合体、(B)酸発生剤、及び(C)重合体等の必要に応じて加えられる任意成分を、例えば、全固形分濃度が1〜50質量%、好ましくは3〜25質量%となるように(E)溶媒に溶解した後、例えば、孔径0.02μm程度のフィルターでろ過することによって調製することができる。
 
【0246】
  当該感放射線性樹脂組成物は、ハロゲンイオン、金属等の不純物の含有量が少ないほど好ましい。このような不純物の含有量を少なくすることで、当該感放射線性樹脂組成物組成物の感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をさらに向上させることができる。そのため、当該感放射線性樹脂組成物に含有させる上記(A)ブロック共重合体や(C)重合体等の重合体は、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等によって精製することが好ましい。
 
【0247】
[レジストパターン形成方法]
  本発明に係るレジストパターン形成方法は、(1)前述の本発明に係る感放射線性樹脂組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程(以下、「(1)工程」ともいう。)、(2)上記レジスト膜を液浸露光する工程(以下、「(2)工程」ともいう。)、及び(3)上記液浸露光されたレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程(以下、「(3)工程」ともいう。)を含む。
  このレジストパターン形成方法によれば、本発明に係る感放射線性樹脂組成物を用いているため、現像欠陥が少なくかつ良好なレジストパターンを形成することができる。
 
【0248】
  <(1)工程>
  上記(1)工程では、前述の感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する。基板としては、例えば、シリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板等が挙げられる。塗布方法としては、例えば、回転塗布、流延塗布、及びロール塗布等が挙げられる。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10〜1,000nmが好ましく、10〜500nmがより好ましい。
 
【0249】
  感放射線性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じてソフトベーク(SB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。SBの条件は感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜選択できるが、SB温度としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜150℃が好ましい。SB時間としては、通常5〜600秒であり、10〜300秒が好ましい。
 
【0250】
  当該レジストパターン形成方法においては、例えば、特開昭59−93448号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成してもよい。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト膜上に保護膜を設けてもよい。さらに、液浸露光の際、レジスト膜からの酸発生剤等の流出を防止するため、例えば、特開2005−352384号公報等に開示されているように、レジスト膜上に液浸用保護膜を設けることもできる。これらの技術は併用することができる。しかし、当該感放射線性樹脂組成物を用いる場合は、レジスト膜上に上述の保護膜(上層膜)を設けることなく、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜のみにより、容易にレジストパターンを形成することができる。このような上層膜フリーのレジスト膜によりレジストパターンを形成する場合、保護膜(上層膜)の製膜工程を省くことができ、スループットの向上を期待することができる。
 
【0251】
  <(2)工程>
  上記(2)工程では、前述の(1)工程で形成されたレジスト膜を液浸露光する。この液浸露光では、通常、ステッパーと称される縮小投影型露光装置が用いられ、その装置の投影レンズと(1)工程で形成されたレジスト膜との間に液浸露光用液体を配置し、レチクル(フォトマスク)のパターンを投影レンズにより縮小して、ウェハ上を移動しながら投影露光する。
 
【0252】
  上記液浸露光用液体としては、例えば、水、長鎖又は環状の脂肪族化合物等が挙げられる。液浸露光用液体は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましい。
  露光光源がArFエキシマレーザー光である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水、超純水が好ましい。
 
【0253】
  上記液浸露光に用いられる露光光としては、(B)酸発生体の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、及びX線等の電磁波;電子線及びα線等の荷電粒子線等から適宜選定される。これらの中でも、液浸露光に用いられる露光光としては、遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)がより好ましく、ArFエキシマレーザー光がさらに好ましい。また、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。
 
【0254】
  本発明に係るレジストパターン形成方法では、液浸露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。PEBを行うことにより、前述の(A)ブロック共重合体及び(C)重合体に含まれる酸解離性基の解離反応を円滑に進行させることができる。PEBの条件としては、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜調整されるが、PEB温度としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましい。PEB時間としては、通常5〜600秒であり、10〜300秒が好ましい。
 
【0255】
  <(3)工程>
  上記(3)工程では、前述の(2)工程において液浸露光されたレジスト膜を現像して所定のレジストパターンを形成する。
 
【0256】
  (3)工程において使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましい。
 
【0257】
  上記アルカリ性水溶液の濃度としては、露光領域を溶解し、かつ未露光領域を溶解させないようにする観点から、10質量%以下が好ましい。
 
【0258】
  また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、有機溶媒を添加することもできる。
  上記有機溶媒としては、例えば、アセトン、2−ブタノン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、及び2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;  メタノール、エタノール、n−プロプロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、及び1,4−ヘキサンジメタノール等のアルコール類;  テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類;  酢酸エチル、酢酸n−ブチル、及び酢酸i−アミル等のエステル類;  トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;  フェノール、アセトニルアセトン、並びにジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 
【0259】
  上記有機溶媒の含有量は、現像性が低下しないよう、また、露光部の現像残りが多くならないよう、アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下が好ましい。
  また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。現像液としてアルカリ性水溶液を用いる場合、現像後にリンス液を用いて洗浄して乾燥することが好ましい。このリンス液としては、水が好ましく、純水、超純水がより好ましい。
 
【0260】
[ブロック共重合体]
  本発明に係るブロック共重合体は、酸解離性基を有するポリマーブロック(I)と、アルカリ解離性基及び撥水性付与部を有するポリマーブロック(II)とを少なくとも含有する。当該ブロック共重合体については、前述の感放射線性樹脂組成物が含有する「(A)ブロック共重合体」として説明しているため、重複説明を省略する。
 
【実施例】
【0261】
  以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0262】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)測定]
  実施例において、Mw,Mn,及びMw/Mnは、東ソー株式会社製のGPCカラム(G2000HXL  2本、G3000HXL  1本、G4000HXL  1本)を用い、流量:1.0ミリリットル/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準試料とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0263】
[
13C−NMR分析]
  実施例において合成した共重合体の構造単位の含有割合(モル%)は、
13C−NMR分析の結果から求めた。
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子株式会社製)を使用し、測定溶媒として、テトラヒドロフラン−d8を用いて行った。
【0264】
  <重合体の合成>
  [C]酸解離性基含有重合体、[A]ブロック共重合体、[a]ランダム共重合体の合成に用いた各単量体を下記式(化36)に示す。
【0265】
【化36】
【0266】
  (1)[C]酸解離性基含有重合体の合成例
  上記単量体(M−1)11.93g(65.4mmol)、単量体(M−9)39.60g(169mmol)、及び単量体(M−10)48.48g(218mmol)を、2−ブタノン200gに溶解した。さらにアゾビスイソブチロニトリル3.58g(21.8mmol)を加え、単量体溶液を調製した。500mLの三口フラスコに100gの2−ブタノンを投入し、フラスコ内を30分窒素パージした。攪拌しながら内容物を80℃に加熱した後、滴下漏斗を用いて、単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、水冷することにより重合溶液を30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液を2000gのメタノールへ投入し、析出した粉末をろ別した。ろ別された粉末を400gのメタノールで2回洗浄した。洗浄した粉末を60℃にて15時間減圧乾燥し、白色粉末の重合体を得た(74g、収率74%)。
  この重合体はMwが6900、Mw/Mn=1.70、単量体(M−1)、(M−9)、及び(M−10)に由来する各繰り返し単位の含有率が14:37:49(モル%)の共重合体であった。
【0267】
  (2)[A]ブロック共重合体の合成例
  ブロック共重合体(A−1)の合成
  上記単量体(M−1)20g(90mmol)を2−ブタノン20gに溶解し、更に連鎖移動剤(T−1)3.734g(9mmol)を500mLの三口フラスコに投入した。30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱した。アゾビスイソブチロニトリル0.15g(0.9mmol)と2−ブタノン20gの混合溶液を三口フラスコへ6時間かけて滴下した。上記単量体(M−3)85g(360mmol)とアゾビスイソブチロニトリル0.59g(3.6mmol)と2−ブタノン85gの混合溶液を6時間かけて滴下した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、n−ヘキサン1050gへゆっくり投入し、固形分を析出させた。混合液をデカンテーションして液体を除去し、固形分をn−ヘキサンで3回洗浄し、得られた樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、エバポレータにより濃縮する事で固形分濃度20%のブロック共重合体(A−1)溶液325gを得た(収率62%)。このブロック共重合体(A−1)のMwは6,500、Mw/Mn=1.1、単量体(M−1)及び(M−3)に由来する各繰り返し単位(構造単位)の含有割合が18.8:81.2(モル%)の共重合体であった。
【0268】
  ブロック共重合体(A−2)〜(A−5)の合成
  下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外はブロック共重合体(A−1)の合成と同様に操作して、各ブロック共重合体(A−2)〜(A−5)を合成した。
【0269】
  (3)[a]ランダム共重合体の合成例
  ランダム共重合体(a−6)の合成
  単量体(M−1)16.17g(89mmol)、単量体(M−3)83.83g(355mmol)及び2−ブタノン200gを500mLの三口フラスコに投入し、溶解させた。さらにアゾビスイソブチロニトリル3.64g(22mmol)を加えた。フラスコ内を30分窒素パージした後、内容物を攪拌しながら80℃に加熱した。加熱開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をn−ヘキサン1500gへゆっくり投入し、固形分を析出させた。混合液をデカンテーションして液体を除去した。固形分をn−ヘキサンで3回洗浄した。得られた樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させた。これをエバポレータにより濃縮する事で固形分濃度20%の重合体(a−6)溶液335gを得た(収率67%)。この重合体(a−6)のMwは6,600であり、Mw/Mn=1.5、(M−1)及び(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有率が18.2:81.8(モル%)の共重合体であった。
【0270】
  ランダム共重合体(a−7)〜(a−8)の合成
  表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外はランダム共重合体(a−6)の合成と同様に操作して、各ランダム共重合体(a−7)〜(a−8)を合成した。
【0271】
【表1】
【0272】
  <液浸露光用レジスト組成物の調製>
  液浸露光用レジスト組成物を構成する[C]酸解離性基含有重合体、[A]ブロック共重合体、[a]ランダム共重合体以外の各成分について以下に示す。
【0273】
  [B]酸発生剤
  下記式(B−1)で表される化合物
【0274】
【化37】
【0275】
  [D]酸拡散制御剤
  下記式(D−1)で表される化合物
【0276】
【化38】
【0277】
  [E]溶媒
  E−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
  E−2:シクロヘキサノン
  E−3:γ−ブチロラクトン
【0278】
  [調製例1]
  [C]酸解離性基含有重合体として(C−1)100質量部、[A]ブロック共重合体として(A−1)3質量部、[B]酸発生剤として(B−1)8.5質量部、[D]酸拡散制御剤として(D−1)2.3質量部、並びに[E]溶剤として(E−1)2240質量部、(E−2)960質量部及び(E−3)30質量部を配合し、液浸露光用レジスト組成物を調製した。
【0279】
  [調製例2〜8]
  配合する各成分の種類及び配合量(質量部)を表2に記載の通りとした以外は、調製例1と同様に操作して、各組成物を調製した。
【0280】
【表2】
【0281】
  <評価>
  後退接触角及び現像欠陥を、それぞれ下記に示す評価方法を用いて評価した。
【0282】
  [後退接触角の測定]
  8インチシリコンウェハ上に液浸露光用レジスト組成物によって膜厚80nmの被膜を形成した。100℃で60秒間ソフトベーク(SB)を行った後、KRUS社のDSA−10を用い、室温23℃、湿度45%、常圧の環境下で、以下の手順で後退接触角を測定した。
【0283】
  DSA−10の針を測定前にアセトンとイソプロピルアルコールで洗浄した後、針に水を注入した。ウェハステージ上にウェハをセットし、ウェハ表面と針の先端の距離が1mm以下になるようステージの高さを調整した。針から水を排出してウェハ上に25μLの水滴を形成した。針によって水滴を10μL/分の速度で180秒間吸引し、その間の接触角を毎秒(計180回)測定した。そして、接触角が安定した時点から計20点の接触角について平均値を算出し、後退接触角(°)とした。
【0284】
  アルカリ現像後の後退接触角は以下の手順で測定した。上記条件で被膜を形成し、SBを行った後、東京エレクトロン株式会社製、クリーントラック「ACT8」の現像装置のGPノズルを用い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により10秒間現像した。純水により15秒間リンスし、2,000rpmで液振り切り乾燥した。その乾燥後の塗膜の後退接触角を、上記と同様に測定した。得られた後退接触角を現像後の後退接触角とした。
【0285】
  [現像欠陥評価]
  下層反射防止膜(日産化学製、ARC66)を形成した12インチシリコンウェハ上に、フォトレジスト組成物によって膜厚75nmの被膜を形成し、120℃で60秒間SBを行うことによりレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜について、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON製、NSR  S610C)を用い、NA=1.3、ratio=0.750、Crosspoleの条件により、ターゲットサイズが幅45nmのラインアンドスペース(1L/1S)のマスクパターンを介して露光した。露光後、100℃で60秒間PEBを行った。その後、東京エレクトロン製、クリーントラック「ACT12」の現像装置のGPノズルを用い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により30秒間現像した。純水により7秒間リンスし、3,000rpmで液振り切り乾燥して、レジストパターンを形成した。このとき、幅45nmの1L/1Sを形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量にてウェハ全面に線幅45nmの1L/1Sを形成し、欠陥検査用ウェハを得た。測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、CC−4000)を用いた。その後、欠陥検査用ウェハ上の欠陥数を、KLA−Tencor製、KLA2810を用いて測定した。さらに、上記KLA2810にて測定された欠陥を、レジスト膜由来と判断されるものと外部由来の異物とに分類した。分類後、レジスト膜由来と判断される欠陥数の合計を現像欠陥評価とした。この欠陥数の合計が1000個/ウェハ未満であった場合、現像欠陥評価は「A」とし、1000個以上であった場合「B」とした。
【0286】
  <結果>
  結果を下記表3に示す。
【表3】
【0287】
  表3に示す通り、[A]成分として[a]ランダム共重合体を用いた比較例1〜3に比べ、[A]ブロック共重合体を用いた実施例1〜5の方が、SB後と現像後の後退接触角差が大きく、現像欠陥が明らかに低減されることが分かった。