(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記暖房出力決定手段は、前記冷却水温が前記水温目標値に到達するのに要する水温到達予測時間と前記電力残量が前記電力残量目標値に到達するのに要する電池残量到達予測時間との差である予測時間差分に基づいて補正熱量を演算し、前記補正熱量に基づいて前記暖房出力を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記冷却水温および前記電気ヒータの出力の少なくとも一方に基づき、車室内に送風する送風機(40)の出力を決定する送風出力決定手段(S110、S212)を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による車両制御装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による車両制御装置が適用される車両制御システムを
図1に示す。車両制御システム1は、エンジン10、第1モータジェネレータ11、第2モータジェネレータ12、蓄電装置としてのメインバッテリ15、暖房装置20、車両制御装置としてのハイブリッド制御装置50等を備える。以下、モータジェネレータを「MG」という。
【0010】
エンジン10は、複数の気筒を有する内燃機関であって、第1MG11および第2MG12とともに、車両90の駆動源を構成する。本実施形態の車両90は、エンジン10およびMG11、12の駆動力にて走行するハイブリッド車両である。
【0011】
第1MG11および第2MG12は、メインバッテリ15から電力が供給されて回転することによりトルクを発生する電動機としての機能、および、エンジン10による駆動あるいは車両90の制動時に駆動されて発電する発電機としての機能を有する。本実施形態の第1MG11および第2MG12は、いずれも永久磁石式同期型の3相交流電動機である。
第1MG11は、エンジン10により駆動され、主に発電機として用いられる。第1MG11により発電された電力は、図示しないインバータ等を経由し、メインバッテリ15へ供給される。
【0012】
第2MG12は、主に電動機として用いられる。第2MG12は、メインバッテリ15からインバータ14を経由して電力が供給され、力行時には電動機として機能する。また、第2MG12は、回生時には発電機として機能し、回生により発電された電力は、インバータ14を経由してメインバッテリ15へ供給される。
エンジン10および第2MG12の駆動力は、駆動軸92を介して変速機93に伝達され、さらにデファレンシャルギア94を介して駆動輪95に伝達され、駆動輪95を回転させる。本実施形態の変速機93は、無段変速機である。
【0013】
メインバッテリ15は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池により、充放電可能に構成され、電力残量としてのSOC(State of charge)が所定の範囲内となるように制御される。メインバッテリ15は、第1MG11および第2MG12と電力を授受する。具体的には、第1MG11または第2MG12により発電された交流電力が直流電力に変換され、メインバッテリ15に蓄えられる。また、メインバッテリ15の直流電力が交流電力に変換され、主に、第2MG12に供給される。
【0014】
サブバッテリ16は、メインバッテリ15よりも出力電圧が低いバッテリである。サブバッテリ16は、DC−DCコンバータ17を介してメインバッテリ15と接続される。これにより、サブバッテリ16は、メインバッテリ15の電力をDC−DCコンバータ17にて降圧して充電可能である。サブバッテリ16の電力は、低電圧で駆動される装置である各種電気負荷19や、後述の電動ポンプ26等に供給される。
【0015】
暖房装置20は、排熱ヒータ21、電気ヒータとしてのヒートポンプシステム30、および、送風機としてのブロアファン40を備える。
排熱ヒータ21は、ヒータコア22、循環経路25、および、電動ポンプ26から構成される。ヒータコア22は、エンジン10の冷却水から熱を取り出して暖房熱を車室内に供給する。ブロアファン40は、車室内にむけて空気を送風する。
【0016】
エンジン10のシリンダブロックやシリンダヘッドの内部には、ウォータジャケットが形成され、このウォータジャケットに冷却水が循環供給されることでエンジン10の冷却が行われる。ウォータジャケットには、冷却水配管等からなる循環経路25が接続される。循環経路25には、サブバッテリ16から電力が供給されることにより駆動されて冷却水を循環させる電動ポンプ26が設けられる。電動ポンプ26の吐出量を変更することにより、循環経路25を循環する冷却水の流量が調整される。
【0017】
循環経路25は、エンジン10の出口側においてヒータコア22にむけて延び、ヒータコア22を経由して再びエンジン10に戻るように設けられる。ブロアファン40から送風された空気は、ヒータコア22を通過することで、冷却水との熱交換により加熱されて温風となり、温風が吹出口から車室内に供給される。このような構成において、電動ポンプ26の吐出量、および、ブロアファン40の駆動状態が制御されることにより、冷却水からヒータコア22を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
また、循環経路25のエンジン10の出口側には、水温センサ29が設けられる。水温センサ29は、エンジン10の出口側であってヒータコア22の手前におけるエンジン10の冷却水の温度(以下、「冷却水温」という。)を検出する。
【0018】
ヒートポンプシステム30は、電力を用いて暖房熱を車室内に供給するものであって、電動コンプレッサ31と、室内熱交換器32と、膨張弁33と、室外熱交換器34と、アキュムレータ36と、これらを接続する冷媒配管等からなる冷媒循環経路39と、を備える。
電動コンプレッサ31は、冷媒を圧縮して加熱し、加熱された冷媒を室内熱交換器32に向けて送出する。電動コンプレッサ31は、メインバッテリ15から図示しないインバータ等を経由して供給される電力により駆動される。
【0019】
室内熱交換器32は、電動コンプレッサ31により送出された加熱された冷媒と、ブロアファン40から送出され車室内に向かう送風空気とを熱交換する熱交換器である。ブロアファン40から送風された空気は、室内熱交換器32の付近を通過することで、加熱された冷媒との熱交換により加熱されて温風となり、温風が吹出口から車室内に供給される。このとき、冷媒は、空気との熱交換により冷却される。室内熱交換器32通過後の冷媒は、膨張弁33によって減圧され、室外熱交換器34へ送出される。
【0020】
室外熱交換器34は、車室外に配置され、冷媒と外気とを熱交換する熱交換器である。室外熱交換器34には、ラジエータファン35によって外気が送風される。膨張弁33による減圧後の冷媒は、室外熱交換器34において外気との熱交換により加熱される。室外熱交換器34により加熱された冷媒は、アキュムレータ36を経由し、電動コンプレッサ31に送出される。
【0021】
本実施形態の車両制御システム1は、ハイブリッド制御装置50、電源制御装置51、MG制御装置52、エンジン制御装置53、および、エアコン制御装置54を備える。これらの制御装置50〜54は、それぞれCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種制御プログラムを実行することで各種制御を実施する。
【0022】
ハイブリッド制御装置50は、アクセルセンサ61、シフトスイッチ62、ブレーキスイッチ63、車速センサ64、および、水温センサ29等から信号が入力され、取得されたこれらの信号等に基づき、車両90全体を制御する。
電源制御装置51は、メインバッテリ15からSOCを取得し、取得されたSOCが所定の範囲内となるように監視する。
MG制御装置52は、ハイブリッド制御装置50からの指令に基づき、第1MG11および第2MG12の駆動を制御する。
【0023】
エンジン制御装置53は、ハイブリッド制御装置50からの指令に基づき、エンジン10の運転を制御する。具体的には、エンジン制御装置53は、燃料噴射弁による燃料噴射制御、点火装置による点火時期制御、吸気側および排気側のバルブ駆動機構によるバルブタイミング制御、スロットルバルブによる吸気量制御等を実施する。これにより、エンジン10の運転が制御される。
エアコン制御装置54は、ハイブリッド制御装置50からの指令に基づき、ブロアファン40、電動ポンプ26、および、電動コンプレッサ31等を制御する。
【0024】
ハイブリッド車両における暖機運転では、エンジン効率を高めるべく、エンジン出力を高め、充電しながらエンジン冷却水を加熱することにより、燃費を向上させることができる。しかしながら、このような方法では、SOCが上限に達してしまうと、エンジン10の出力を高めることができず、エンジン10を高効率に駆動することができない。
【0025】
そこで本実施形態では、冷却水温に加え、メインバッテリ15のSOCに基づき、暖房装置20を適切に制御することにより、エンジン10を高効率に駆動し、早期に暖機を完了させる。
本実施形態による暖機制御処理を
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。この処理は、イグニッション電源がオンされたときにハイブリッド制御装置50にて実行される処理である。
【0026】
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、水温センサ29から冷却水温を取得する。また、電源制御装置51を介し、メインバッテリ15のSOCを取得する。
S102では、SOCが第1所定残量Ba未満、かつ、冷却水温が第1所定水温Waより大きいか否かを判断する。SOCが第1所定残量Ba以上、または、冷却水温が第1所定水温Wa以下である場合(S102:NO)、S104へ移行する。SOCが第1所定残量Ba未満、かつ、冷却水温が第1所定水温Waより大きい場合(S102:YES)、S103へ移行する。
【0027】
S103では、使用する暖房装置20として、排熱ヒータ21を選択し、排熱ヒータ21からの出力を決定する。排熱ヒータ21からの出力は、SOCおよび冷却水温に基づいて決定される。本実施形態では、
図3に示すように、排熱ヒータ21の出力は、SOCおよび冷却水温と関連づけられたマップとして記憶されており、当該マップを参照することにより、SOCおよび冷却水温に基づいて排熱ヒータ21の出力が決定される。
図3では、冷却水温がW1、W2(ただし、W1<W2)である場合のSOCと排熱ヒータ21の出力との関係を例示している。
【0028】
SOCが第1所定残量Ba以上、または、冷却水温が第1所定水温Wa以下であると判断された場合(S102:NO)に移行するS104では、使用する暖房装置20として、ヒートポンプシステム30を選択し、ヒートポンプシステム30の出力を決定する。以下、ヒートポンプシステム30の出力を、適宜「電気ヒータの出力」という。電気ヒータの出力は、SOCおよび冷却水温に基づいて決定される。本実施形態では、
図4に示すように、電気ヒータの出力は、SOCおよび冷却水温と関連づけられたマップとして記憶されており、当該マップを参照することにより、SOCおよび冷却水温に基づいて電気ヒータの出力が決定される。
図4では、B1、B2、B3(ただし、B1<B2<B3)である場合の冷却水温と電気ヒータの出力との関係を例示している。
【0029】
図3に示す排熱ヒータ21の出力、および、
図4に示す電気ヒータの出力は、暖機完了時、すなわち冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するのと同程度のタイミングで、SOCがSOC目標値Bgに到達するように設定される。本実施形態では、暖機完了温度Wgが「水温目標値」に対応し、SOC目標値Bgが「電力残量目標値」に対応する。
【0030】
S103またはS104に続いて移行するS105では、SOCが第2所定残量Bb未満、かつ、冷却水温が第2所定水温Wbより大きいか否かを判断する。SOCが第2所定残量Bb以上、または、冷却水温が第2所定値以下であると判断された場合(S105:NO)、S107へ移行する。SOCが第2所定残量Bb未満、かつ、冷却水温が第2所定水温Wbより大きいと判断された場合(S105:YES)、S106へ移行する。
【0031】
S106では、暖房開始タイミングをSOCで設定する。具体的には、
図5に示すように、暖房を開始する際のSOCである暖房開始SOC閾値Bthが、SOCおよび冷却水温と関連づけられたマップとして記憶されており、当該マップを参照することにより、SOCおよび冷却水温に基づき、暖房開始SOC閾値Bthが決定される。
図5では、
図3と同様、冷却水温がW1、W2(ただし、W1<W2)である場合を例示している。
【0032】
SOCが第2所定残量Bb以上、または、冷却水温が第2所定値以下であると判断された場合(S105:NO)に移行するS107では、暖房開始タイミングを冷却水温で設定する。具体的には、
図6に示すように、冷却水温と暖房開始水温閾値Wthとの関係が、SOCごとに関連づけられたマップとして記憶されており、当該マップを参照することにより、SOCおよび冷却水温に基づき、暖房開始水温閾値Wthが決定される。
図6では、
図4と同様、SOCがB1、B2、B3(ただし、B1<B2<B3)である場合を例示している。
【0033】
図5に示す暖房開始SOC閾値Bth、および、
図6に示す暖房開始水温閾値Wthは、暖機完了時、すなわち冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するのと同程度のタイミングで、SOCがSOC目標値Bgに到達するように設定される。
また、本実施形態では、SOCが暖房開始SOC閾値Bth以上である場合、暖房を開始するので、暖房開始SOC閾値Bthを決定することが、「暖房装置の始動タイミングを決定する」ことに対応する。同様に、冷却水温が暖房開始水温閾値Wth以上である場合、暖房を開始するので、暖房開始水温閾値Wthを決定することが、「暖房装置の始動タイミングを決定する」ことに対応する。
【0034】
S108では、エンジン10の暖機運転を開始する。
S109では、暖房開始タイミングに未到達か否かを判断する。暖房開始タイミングに未到達であると判断された場合(S109:YES)、S111へ移行する。暖房開始タイミングに到達したと判断された場合(S109:NO)、S110へ移行する。ここでの判断は、S105にて肯定判断された場合、すなわちSOCが第2所定残量Bb未満、かつ、冷却水温が第2所定水温Wbより大きい場合、SOCに基づき、SOCがS106にて決定された暖房開始SOC閾値Bth未満である場合、暖房開始タイミングに未到達であると判断し、SOCが暖房開始SOC閾値Bth以上である場合、暖房開始タイミングに到達したと判断する。また、S105にて否定判断された場合、すなわちSOCが第2所定残量Bb以上、または、冷却水温が第2所定値以下である場合、冷却水温に基づき、冷却水温がS107にて決定された暖房開始水温閾値Wth未満である場合、暖房開始タイミングに未到達であると判断し、冷却水温が暖房開始水温閾値Wth以上である場合、暖房開始タイミングに到達したと判断する。
【0035】
S110では、暖房装置20をオンにする。具体的には、排熱ヒータ21を用いる場合、排熱ヒータ21の出力がS103にて決定された出力となるように、電動ポンプ26の流量を制御する。また、ヒートポンプシステム30を用いる場合、ヒートポンプシステム30をオンにするとともに、電気ヒータの出力がS104にて決定された出力となるよう制御する。また、ブロアファン40をオンにする。
冷却水温が低いときに暖房を開始する場合や、低出力でヒートポンプシステム30を用いる場合、吹出口の温度が低く乗員に冷風が当たるのを避けるため、ブロアファン40の出力を小さくする。ブロアファン40の出力の詳細は、第2実施形態にて説明する。
【0036】
S111では、暖機が完了したか否かを判断する。冷却水温が暖機完了温度Wg以上である場合、暖機完了とする。暖機が完了していないと判断された場合(S111:NO)、すなわち冷却水温が暖機完了温度Wg未満である場合、水温センサ29から冷却水温を再取得すると共に、SOCを再取得し(S112)、S109へ戻る。暖機が完了したと判断された場合(S111:YES)、すなわち冷却水温が暖機完了温度Wg以上である場合、暖機運転を終了する。本実施形態では、暖機完了時にSOCが目標値に到達するように、使用する暖房装置20とその出力、および、始動タイミングを設定しているので、暖機完了時には、メインバッテリ15が十分に充電された状態となっている。そのため、暖機完了後は、エンジン10を用いず、主に第2MG12から出力される駆動力にて走行する「EV走行モード」とする。なお、アクセル開度等、他の情報に応じ、EV走行モード以外の走行モードを選択しても差し支えない。
【0037】
本実施形態では、暖機中であっても、暖房開始タイミングに到達すれば、排熱ヒータ21またはヒートポンプシステム30を始動している。
例えば、上述のように、SOCが小さい場合、エンジン10の出力を高め、エンジン効率の高い領域にてエンジン10を駆動し、メインバッテリ15を充電する。
また、SOCが大きい場合、暖機中であってもヒートポンプシステム30を始動することにより、メインバッテリ15の電力を消費可能であるので、エンジン効率の高い領域にてエンジン10を駆動し、電力を消費しつつメインバッテリ15を充電する。
【0038】
さらにまた、冷却水温が高く、SOCが小さい場合、SOCを目標値まで充電すると、冷却水温が高くなりすぎ、図示しないラジエータから外気へ放熱されてしまう可能性がある。この場合、冷却水温が低く、暖機完了温度Wg未満であっても、排熱ヒータ21による暖房を開始することにより、冷却水の熱が車室内に移動させることができるので、外気への放熱を防ぐことができる。
【0039】
このように、冷却水温およびSOCに応じて、暖房装置20の始動タイミングを変更することにより、エンジン効率の高い領域にてエンジン10を駆動し、効率よくメインバッテリ15を充電しながら冷却水温を高め、早期に暖機を完了させることができる。これにより、燃費を向上させることができる。
また、暖機中にメインバッテリ15に電力を蓄えておくことにより、暖機完了後、暖機中に蓄えた電力によるEV走行が可能であるので、さらなる燃費向上が期待できる。
さらにまた、暖機完了前から暖房を開始することにより、車室温度の目標値への到達が早くなるので、快適性が向上する。
【0040】
以上詳述したように、車両90は、エンジン10と、第1MG11と、第2MG12と、メインバッテリ15と、暖房装置20と、を備える。メインバッテリ15は、第1MG11および第2MG12と電力を授受し、充放電可能に構成される。暖房装置20は、エンジン10の排熱を用いる排熱ヒータ21、および、メインバッテリ15の電力を用いるヒートポンプシステム30を有する。
車両90を制御するハイブリッド制御装置50は、エンジン10の冷却水温、および、メインバッテリ15のSOCを取得し(
図2中のS101、S112)、冷却水温およびSOCに基づき、暖房装置20の始動タイミングを決定する(S106、S107)。
【0041】
本実施形態では、冷却水温およびSOCに基づいて暖房装置20の始動タイミングを決定している。暖房装置20の始動タイミングは、冷却水温が暖機完了温度Wgに達するタイミングと、SOCがSOC目標値Bgに達するタイミングと、が一致するように決定される。暖機運転完了時にSOCが十分に高ければ、暖機運転完了後、暖機運転時に充電された電力によりEV走行が可能となるため、燃費が向上する。
【0042】
なお、「冷却水温が暖機完了温度に達し暖機運転が完了するタイミングとSOCが目標値に達するタイミングとが一致する」とは、タイミングのずれが所定時間以内であることを意味し、完全に一致しなくてもよい。また、暖機運転完了時に、EV走行可能な程度にSOCが高ければいいので、暖機運転完了時にSOCが所定値に達することを、「冷却水温が暖機完了温度に達し暖機運転が完了するタイミングとSOCが目標値に達するタイミングとが一致する」とみなしてもよい。
【0043】
また、例えば暖機開始時のSOCが大きい場合、ヒートポンプシステム30による暖房を暖機運転完了よりも先に開始し、メインバッテリ15の電力を消費しつつ充電することにより、SOCによらず、効率のよい動作点にてエンジン10を運転できるので、燃費が向上する。
さらにまた、暖機運転中にも暖房装置20が始動するので、暖機運転完了後に暖房装置20を始動する場合と比較し、目標室内温度に到達するのが早くなり、快適性が向上する。
【0044】
ハイブリッド制御装置50は、冷却水温およびSOCに基づき、暖機運転中における排熱ヒータ21の出力および電気ヒータの出力である暖房出力を決定する(S103、S104)。特に本実施形態では、冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するタイミングと、SOCがSOC目標値Bgに到達するタイミングとが一致するように、暖房出力を決定する。
これにより、冷却水温が目標値に到達するタイミングとSOCが目標値に到達するタイミングとが揃うように暖房装置20が適切に制御される。また、暖機完了時にSOCが目標値に到達しているので、暖機運転後にEV走行が可能であり、燃費が向上する。
【0045】
また、冷却水温および電気ヒータの出力の少なくとも一方に基づき、車室内に送風するブロアファン40の出力を決定する(S110)。例えば、冷却水温が低いとき、或いは、電気ヒータの出力が小さいときに暖房が開始される場合、ブロアファン40の出力を小さくすることにより、車室内に冷風が送られるのを防ぐことができる。
【0046】
本実施形態では、ハイブリッド制御装置50が「水温取得手段」、「電力残量取得手段」、「暖房開始タイミング決定手段」、「暖房出力決定手段」、および、「送風出力決定手段」を構成する。また、
図2中のS101およびS112が「水温取得手段」および「電力残量取得手段」の機能としての処理に相当し、S106およびS107が「暖房開始タイミング決定手段」の機能としての処理に相当し、S103およびS104が「暖房出力決定手段」の機能としての処理に相当し、S110が「送風出力決定手段」の機能としての処理に相当する。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、暖機制御処理が異なっているので、この点を中心に説明する。
本実施形態の暖機制御処理を説明するフローチャートを
図7に示す。
S201では、エンジン高効率領域マップを読み込む。エンジン高効率領域マップは、
図8に示すように、エンジン効率が等しくなるエンジン10の動作点(エンジン回転数およびエンジントルク)を結んだ等効率ラインC1〜C5により構成される。
図8では、等効率ラインC1の効率が最も高く、次いでC2、C3、C4、C5の順である。本実施形態では、例えば等効率ラインC3の内側を「エンジン高効率領域」と定義する。
【0048】
また、エンジン10の単体での効率に替えて、例えば第1MG11、第2MG12、および、メインバッテリ15等の効率も考慮したシステム全体の効率に基づき、システム全体の効率が等しいシステム等効率ラインCaの内側を「エンジン高効率領域」と定義してもよい。
さらにまた、走行負荷や車速に応じ、エンジン高効率マップを複数用意してもよい。
【0049】
図7に戻り、S202では、
図2中のS101と同様、水温センサ29から冷却水温を取得し、電源制御装置51を介し、メインバッテリ15のSOCを取得する。
S203では、目標室内温度、および、室内温度目標値に到達するまでの目標到達時間を、エアコン制御装置54から取得し、エアコン要求出力Pa[kW]を演算する。エアコン要求出力Paは、以下の式(1)により算出される。
Pa=Ka×(Rg−Rn)/tg ・・・(1)
式中の記号は、以下の通りである。
Ka:空気の比熱係数[kJ/K]
Rg:目標室内温度[℃]
Rn:現在の室内温度[℃]
tg:目標室内温度に到達するまでの目標到達時間[sec]
【0050】
S204では、SOCがSOC目標値Bgに到達するのに要する時間であるSOC到達予測時間ts、および、冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するのに要する時間である水温到達予測時間twを演算し、予測時間差分Δtを演算する。
SOC到達予測時間ts[sec]は、以下の式(2)により算出される。
ts=Ks×(Bg−Bn)/Pg ・・・(2)
【0051】
式中の記号は、以下の通りである。
Ks:SOCを電力に変換するための変換係数[kJ/%]
Bg:SOC目標値[%]
Bn:SOC現在値[%]
Pg:発電パワー[kW]
【0052】
発電パワーPgは、以下の式(3)により算出される。
Pg=Pe−Lr−La ・・・(3)
式中の記号は、以下の通りである。
Pe:エンジン出力[kW]
Lr:走行負荷[kW]
La:その他補機類の負荷(以下、単に「補機負荷」という。)[kW]
【0053】
上記式(2)により演算されるSOC到達予測時間tsは、予め演算され、エンジントルクおよびエンジン回転数と関連づけられ、マップ化されている。
図9は、走行負荷Lrおよび補機負荷Laがゼロであり、エンジン回転数がN1、N2、N3(ただし、N1<N2<N3)である場合のエンジントルクとSOC到達予測時間tsとの関係を例示している。式(2)、(3)から明らかなように、SOC到達予測時間tsは、走行負荷Lrおよび補機負荷Laによって変わるため、走行負荷Lrおよび補機負荷Laごとに複数のマップが用意されている。なお、SOC到達予測時間tsが「電池残量到達予測時間」に対応する。
【0054】
図7中のS204では、走行負荷Lrおよび補機負荷Laに基づいてマップを選択し、前回の処理にて決定されたエンジン動作点(トルク、回転数)に基づき、マップ演算によりSOC到達予測時間tsを演算する。演算に用いるエンジン動作点は、所定回数の移動平均等を用いてもよい。また、マップ演算に替えて、式(2)、(3)によりSOC到達予測時間tsを直接的に演算するようにしてもよい。
【0055】
また、水温到達予測時間tw[sec]は、以下の式(4)により算出される。
tw=Kw×(Wg−Wn)/Ph ・・・(4)
式中の記号は、以下の通りである。
Kw:水温を熱量に変換するための変換係数[kJ/K]
Wg:暖機完了温度[℃]
Wn:水温現在値[℃]
Ph:発熱パワー[kW]
【0056】
図10に示すように、発熱パワーPhは、エンジン高効率領域におけるエンジントルクおよびエンジン回転数と関連づけられた発熱パワーマップとして記憶されており、エンジントルクおよびエンジン回転数に基づいて演算される。
また、上記式(4)により演算される水温到達予測時間twは、予め演算され、エンジントルクおよびエンジン回転数と関連づけられ、マップ化されている(
図11参照)。
図11は、
図9と同様、エンジン回転数がN1、N2、N3(ただし、N1<N2<N3)である場合を例示している。
【0057】
図7中のS204では、前回処理にて決定されたエンジン動作点(トルク、回転数)に基づき、マップ演算により水温到達予測時間twを演算する。演算に用いるエンジン動作点は、所定回数の移動平均等を用いてもよい。また、マップ演算に替えて、式(4)により水温到達予測時間twを直接的に演算するようにしてもよい。なお、水温到達予測時間twは、エンジン負荷が大きくなると、短くなる。
そして、SOC到達予測時間tsおよび水温到達予測時間twに基づき、予測時間差分Δtを演算する(式(5))。
Δt=|tw−ts| ・・・(5)
【0058】
S205では、SOCがSOC目標値Bgに到達するタイミングと冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するタイミングとを一致させるための補正熱量を予測時間差分Δtに基づいて演算する。
まず、水温到達予測時間twがSOC到達予測時間tsより大きい場合(すなわちtw>ts)、SOCがSOC目標値Bgに到達するタイミングと冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するタイミングとを一致させるべく、ヒートポンプシステム30にて出力する補正熱量H1[kW]を演算する(式(6))。
H1=Ks×(Bg−Bn)/Δt ・・・(6)
【0059】
また、SOC到達予測時間tsが水温到達予測時間twより大きい場合(すなわちts>tw)、SOCがSOC目標値Bgに到達するタイミングと冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するタイミングとを一致させるべく、排熱ヒータ21にて出力する補正熱量H2[kW]を演算する(式(7))。
H2=Kw×(Wg−Wn)/Δt ・・・(7)
【0060】
S206では、暖房出力およびエンジン動作点を決定する。
本実施形態では、補正熱量H1またはH2に基づいて暖房出力を決定する。なお、補正熱量H1が、ヒートポンプシステム30にて出力可能な上限値より大きい場合、電気ヒータの出力を出力可能な上限値とする。また、補正熱量H1がヒートポンプシステム30にて出力可能な上限値以下である場合、電気ヒータの出力を補正熱量とする。排熱ヒータ21についても同様である。
また、決定された暖房出力を出力可能なエンジン動作点を決定する。本実施形態では、決定された暖房出力を出力可能なエンジン動作点が複数ある場合、最もエンジン効率がよい動作点を選択する。
【0061】
エンジン動作点の決定方法を、
図12に基づいて説明する。
図12では、ヒートポンプシステム30により補正熱量を出力する場合について説明する。
図12(a)に示すように、電気ヒータの出力は、エンジントルクおよびエンジン回転数と関連づけられ、マップとして記憶されている。ここで、電気ヒータの出力をHaとすると、出力Haとなる動作点として、M1、M2の2点が存在する。ここで、
図12(b)に示すエンジン効率マップを参照すると、動作点M1よりも動作点M2の方がエンジン効率がよい。したがって、本実施形態では、エンジン動作点としてM2を選択する。
【0062】
また、本実施形態では、S203にて演算したエアコン要求出力Paに基づき、エアコン要求出力Paが補正熱量H1またはH2より大きい場合、補正熱量を出力しない方の暖房装置にて不足分を出力する。すなわち、ヒートポンプシステム30にて補正熱量H1を出力する場合、排熱ヒータ21により不足分を出力する。また、排熱ヒータ21により補正熱量H2を出力する場合、ヒートポンプシステム30にて不足分を出力する。
【0063】
S207〜S212の処理は、
図2中のS105〜S110の処理と同様である。なお、S210では、暖機運転中は、暖機運転を継続するとともに、S206にて決定される暖房出力、および、エンジン動作点となるように、運転条件等を変更する。
S213では、S111と同様、暖機が完了したか否かを判断する。暖機が完了していないと判断された場合(S213:NO)、S202に戻る。暖機が完了したと判断された場合(S213:YES)、暖機運転を終了し、EV走行へ移行する。
【0064】
本実施形態では、暖機運転中は、S202〜S212の処理が繰り返されるので、SOC到達予測時間tsと水温到達予測時間twとが一致するように、暖房出力およびエンジン動作点が補正されていく。これにより、暖機運転完了時に、SOCをSOC目標値Bgに適切に到達させることができる。
【0065】
ここで、ブロアファン40の出力について、
図13に基づいて説明する。上述した通り、冷却水温が低いときに暖房を開始する場合や、低出力でヒートポンプシステム30を用いる場合、吹出口の温度が低く乗員に冷風が当たるのを避けるため、ブロアファン40の出力を小さくする。
【0066】
具体的には、
図13(a)に示すように、ブロアファン40の出力は、冷却水温および吸入空気の温度と関連づけられ、マップとして記憶されている。
図13(a)では、吸入空気の温度がI1、I2(ただし、I1<I2)である場合を例示している。使用する暖房装置20として排熱ヒータ21を選択する場合、
図13(a)に示すマップを参照し、冷却水温および吸入空気の温度に基づき、ブロアファン40の出力を決定する。
【0067】
また、
図13(b)に示すように、ブロアファン40の出力は、電気ヒータからの出力および吸入空気の温度と関連づけられ、マップとして記憶されている。
図13(b)では、
図13(a)と同様、吸入空気の温度がI1、I2(ただし、I1<I2)である場合を例示している。使用する暖房装置20としてヒートポンプシステム30を選択する場合、
図13(b)に示すマップを参照し、電気ヒータの出力および吸入空気の温度に基づき、ブロアファン40の出力を決定する。
【0068】
さらにまた、
図13(c)に示すように、ブロアファン40の出力は、冷却水温、電気ヒータの出力からの出力および吸入空気の温度と関連づけられ、マップとして記憶されている。
図13(c)の例では、吸入空気の温度がI1、I2(ただし、I1<I2)であり、電気ヒータの出力がP1、P2(ただし、P1<P2)の場合を例示している。例えばエアコン要求出力Paが大きく、排熱ヒータ21およびヒートポンプシステム30を併用する場合、
図13(c)に示すマップを参照し、冷却水温、電気ヒータの出力および吸入空気の温度に基づき、ブロアファン40の出力を決定する。
【0069】
本実施形態では、冷却水温が低いときに暖房を開始する場合や、低出力でヒートポンプシステム30を用いる場合、吹出口の温度が低く乗員に冷風が当たるのを避けるべく、冷却水温および電気ヒータの出力の少なくとも一方に応じ、ブロアファン40からの出力を変更している。ブロアファン40の出力が小さくても、吹出口周辺を暖める効果は見込めるため、その後の暖房時に車室温度の目標値への到達を早めることができる。
上記第1実施形態でも同様である。
【0070】
本実施形態では、ハイブリッド制御装置50は、エンジン10の効率が高い高効率作動領域を特定し(
図7中のS201)、高効率作動領域内において、冷却水温およびSOCに基づいて決定された暖房出力を出力可能なエンジン動作点を決定する(S206)。
これにより、エンジン効率の悪い無負荷や低負荷での暖機運転を避け、効率のより動作点にてエンジン10を運転することができるので、燃費が向上する。
また、冷却水温およびSOCに基づいて決定された暖房出力を出力可能な動作点が複数有る場合、最もエンジン効率がよい動作点を選択する。これにより、より効率よくエンジン10を運転可能であるので、より燃費が向上する。
【0071】
本実施形態では、冷却水温が暖機完了温度Wgに到達するのに要する水温到達予測時間twと、SOCがSOC目標値Bgに到達するのに要するSOC到達予測時間tsとの差である予測時間差分Δtに基づいて補正熱量H1、H2を演算し、補正熱量H1、H2に基づいて暖房出力を決定する。
これにより、暖機運転完了タイミングと、SOCがSOC目標値Bgに到達するタイミングとを、より適切に一致させることができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0072】
本実施形態では、ハイブリッド制御装置50が「水温取得手段」、「電力残量取得手段」、「暖房開始タイミング決定手段」、「暖房出力決定手段」、および、「送風出力決定手段」に加え、「高効率作動領域特定手段」および「エンジン動作点決定手段」を構成する。
また、
図7中のS202が「水温取得手段」および「電力残量取得手段」の機能としての処理に相当し、S208およびS209が「暖房開始タイミング決定手段」の機能としての処理に相当し、S206が「暖房出力決定手段」および「エンジン動作点決定手段」の機能としての処理に相当し、S201が「高効率作動領域特定手段」の機能としての処理に相当し、S212が「送風出力決定手段」の機能としての処理に相当する。
【0073】
(他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、電気ヒータがヒートポンプシステムにより構成される。他の実施形態では、電気ヒータは、蓄電装置の電力を用いるものであれば、例えばPTCヒータ等、どのようなものであってもよい。また、上記実施形態の電気ヒータは、車室を暖房するものである。他の実施形態では、電気ヒータは、冷却水を加熱するように構成してもよい。
【0074】
(イ)第2実施形態では、エアコン要求出力を演算し、暖機運転に必要な暖房出力がエアコン要求出力よりも小さい場合、排熱ヒータと電気ヒータとを併用する。他の実施形態では、S203を省略し、暖機運転中にはエアコン要求出力を考慮せずに暖房出力を決定するようにしてもよい。
【0075】
(ウ)上記実施形態では、ハイブリッド制御装置、電源制御装置、MG制御装置、エンジン制御装置、エアコン制御装置が設けられている。他の実施形態では、これらの制御装置を1つの制御装置により構成してもよい。また、上記実施形態では、「水温取得手段」、「電力残量取得手段」、「暖房開始タイミング決定手段」、「暖房出力決定手段」、「送風出力決定手段」、「高効率作動領域特定手段」および「エンジン動作点決定手段」は、ハイブリッド制御装置により構成される。他の実施形態では、例えばエンジン動作点決定手段をエンジン制御装置により構成する等、上記手段の一部または全部を、ハイブリッド制御装置以外の制御装置により構成するようにしてもよい。
【0076】
(エ)上記実施形態では、ハイブリッド車両には2つのモータジェネレータが設けられる。他の実施形態では、モータジェネレータは、2つに限らず、いくつであってもよい。また、上記実施形態のモータジェネレータは、永久磁石式同期型の3相交流電動機であるが、これに限らず、どのようなものを用いてもよい。
また、上記実施形態の蓄電装置は、二次電池であるが、他の実施形態では、モータジェネレータと電力を授受し、充放電可能な装置であれば、例えば電気二重層キャパシタ等、どのようなものであってもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。