(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一群の太陽電池パネルの直列接続体で構成された太陽電池ストリングが入力端に接続され前記太陽電池ストリングからの出力電圧を所定の電圧値に変換する電圧変換部を複数備え、
前記複数の電圧変換部の出力端は互いに並列接続されており、
前記複数の電圧変換部から出力される直流電力を交流電力に変換する直流電流変換部と、前記電圧変換部の出力電圧の実際の検出値と所定の電圧指令値とが一致するように前記複数の電圧変換部における各々の電圧変換率を個別に制御する制御部と、をさらに備える、太陽電池用パワーコンディショナにおいて、
前記制御部は、
前記検出値と前記電圧指令値との偏差に応じて、前記複数の電圧変換部のうちの一部または全部における電圧変換率の制御方法を変更するとともに、前記検出値と前記電圧指令値との偏差に応じて、該電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の数を、前記複数の電圧変換部のうちの一から全部の間で変更することを特徴とする太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記偏差が大きい程、前記電圧変換率の制御方法を変更する前記電圧変換部の数を増加させることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記偏差が大きい程、前記電圧変換率の制御方法を変更する前記電圧変換部における、電圧変換率の制御速度を速くすることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より大きいときは、前記電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率を減少させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より小さいときは、前記電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率を増加させることを特徴とする請求項1から4の
いずれか一項に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より小さいときは、前記電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率の制御速度を速くすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より大きいときは、前記複数の太陽電池ストリングのうち、最も出力電流が大きい太陽電池ストリングに接続された電圧変換部の電圧変換率の制御方法を最初に変更することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より小さいときは、前記複数の太陽電池ストリングのうち、最も出力電流が小さい太陽電池ストリングに接続された電圧変換部の電圧変換率の制御方法を最初に変更することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の太陽電池用パワーコンディショナ。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、一般に、太陽電池からの直流電力を、パワーコンディショナによって系統に連系した商用周波数の交流電力に変換するとともに、変換後の交流電力を、商用電力系統に接続されている家庭内負荷に供給する一方で、交流電力が家庭内負荷の消費電力を上回る場合には余剰電力を系統側へ逆潮流することが可能なシステムになっている。そして、最近の太陽光発電システムとしては、並列に接続された複数の太陽電池群からエネルギを収集するマルチ入力タイプのものが増加している。
【0003】
図7には、従来のマルチ入力タイプの太陽光発電システムの概要を示す。
図7において、太陽光発電用パワーコンディショナ(以下、単にパワーコンディショナともいう)100には、一群の太陽電池パネルの直列接続体から構成される太陽電池ストリング101〜104が並列に接続されている。パワーコンディショナ100は、太陽電池ストリング101〜104から出力される直流電力を昇圧する昇圧回路111〜114を備えている。そして、パワーコンディショナ100は、昇圧回路111〜114によって昇圧された直流電力をインバータ回路130によって交流電力に変換し、商用電力系統や負荷に供給できるように調整している。
【0004】
パワーコンディショナ100における、太陽電池ストリング101〜104及び昇圧回路111〜114では、太陽電池ストリング101〜104の出力電圧に対するMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御が行われている。
図8は、このMPPT制御について説明するためのグラフである。
図8のグラフの横軸は、個々の太陽電池ストリングの出力電圧を示し、縦軸は出力電力を示す。
図8に示すように、個々の太陽電池ストリングでは、出力電圧の値に応じて出力電力が変化する。出力電力は所定の出力電圧においてピークを有しており、このピークにおける出力電力が供給可能な最大電力である。この出力電力のピークに相当する出力電圧は最適動作電圧という。出力電力は、最適動作電圧よりも低い出力電圧範囲では出力電圧の増加に伴って増加するとともに、最適動作電圧よりも高い出力電圧範囲では出力電圧の増加に伴って減少する。
【0005】
MPPT制御においては、昇圧回路111〜114におけるDutyを調整することで電圧変換率を変更し、昇圧回路111〜114の入力電圧すなわち各太陽電池ストリング101〜104の出力電圧を制御し、各太陽電池ストリング101〜104における最適動作電圧に近づけることで、常に各太陽電池ストリング101〜104における供給可能な最大出力電力を引き出すようにしている。
【0006】
なお、この太陽電池ストリングの出力電圧特性は、日照量等によって変化する。すなわち、供給可能な最大電力の値も最適動作電圧も、日照量等の条件によって変動する可能性がある。従って、様々な日照条件において太陽電池ストリング101−104からの供給電力をそれぞれ最大にするためには、各太陽電池ストリングの出力電圧を個別に制御して、それらの動作電圧をその状況における最適動作電圧近傍に調整する必要がある。
【0007】
図7の太陽光発電システムの概要の説明に戻る。昇圧回路111〜114の出力端は互いに並列に接続され同電位となっている。昇圧回路111〜114の出力電圧DDVはキ
ャパシタ120の両端電圧によって検出可能となっている。そして、インバータ回路130は、昇圧回路111〜114の出力端における直流電力を交流電力に変換する。インバータ回路130の出力は、パワーコンディショナ100における、連系運転時用の出力端子100aと、自立運転時用の出力端子100bに接続されている。連系運転時用の出力端子100aは分電盤140に接続されている。そして、分電盤140によって、パワ―コンディショナ100の出力端子100aと、連系運転時の負荷142及び電力系統141との接続状態が制御されるようになっている。また、出力端子100bは、自立運転時に作動する負荷150と接続されている。
【0008】
インバータ回路130は、電力系統141が正常なときは電力系統141と連系する。すなわち、インバータ回路130の供給電力が負荷142の消費電力より大きい場合には、インバータ回路130は交流電力を負荷142に供給するとともに、出力端子130aから、不図示の売電用メータを介して交流電力を電力系統141に逆潮流する。一方、インバータ回路130は、電力系統141が停電等により異常な状態にある場合には、電力系統141から独立して自立運転し、出力端子130bから交流電力を負荷150にのみ供給する。
【0009】
パワーコンディショナ100においては、従来より連系運転時及び自立運転時の両方の場合に対してMPPT制御が行われていた。その場合、連系運転時であれば、パワーコンディショナ100から出力される供給電力が負荷142の消費電力より多い場合には、余剰電力を電力系統141に供給して売電することができる。また、パワーコンディショナ100による供給電力が負荷142の消費電力より少ない場合には電力系統141によって補助的に電力を供給することができる。それに対して自立運転時には、パワーコンディショナ100は電力系統141から独立していることから、パワーコンディショナ100による供給電力を負荷150の消費電力と一致させる必要がある。
【0010】
ここで、自立運転時のMPPT制御において、パワーコンディショナ100からの供給電力が負荷150の消費電力より少なかった場合について考える。その場合は、例えば太陽電池ストリング101の出力電圧を昇圧する昇圧回路111は、供給電力が負荷150の消費電力より少ないことから、出力電力を増加すべきと判断する。通常MPPT制御では、太陽電池ストリングの出力電圧は、最適動作電圧と開放電圧の間の範囲で制御されるため、出力電力を増加する場合には太陽電池ストリングの出力電圧が下げられる。そして、上記の場合においては太陽電池ストリング101の出力電圧が最適動作電圧に近い状態でも、なお負荷150の消費電力より低いため、さらに出力電圧を下げる制御が行われる。そうすると、太陽電池ストリング101の出力電圧が最適動作電圧を超えてさらに低くなってしまう虞がある。
【0011】
その結果、いわゆる正帰還制御によって太陽電池ストリング101の出力電力が低下し、昇圧回路111は、不足電力を補おうとさらに出力電圧を低くする制御を行ってしまい、最終的に太陽電池ストリング101の出力が停止してしまう虞がある。このような場合には、たとえ太陽電池ストリング101〜104の供給電力の最大値の合計が負荷150の消費電力より大きい場合であっても、太陽電池ストリング101の出力停止により、負荷150への供給電力が不足してしまい、他の太陽電池ストリング102〜104にも過剰な負担が生じてしまう虞がある。
【0012】
それに対し、太陽電池ストリングの出力電圧が昇圧回路により所定電圧に変換される際の電圧変換率を、連系運転時には、各々の昇圧回路毎に、当該昇圧回路に接続された太陽電池ストリングの出力特性に応じて個別に制御し、自立運転時には、全ての昇圧回路における電圧変換率を一律に制御する技術が公知である(例えば、特許文献1を参照。)。この技術によれば、連系運転時においては各々の太陽電池ストリングの出力電圧を、その出
力特性に応じて調整でき、最大電力を供給することが可能である。また、自立運転時には、全ての太陽電池ストリングの出力電圧を一律に調整でき、各々の太陽電池ストリングの負担を分散でき、自立運転時の負荷への電力供給の信頼性を向上することが可能となる。
【0013】
しかしながら、上記の公知技術では、特にマルチ入力の太陽光発電システムにおいて各々の太陽電池ストリングの出力特性が異なる場合には、全ての太陽電池ストリングにおいて出力電圧を最適動作電圧にすることが困難であり、全ての太陽電池ストリングにおける最大電力を供給可能とすることが困難なため、システム全体として自立運転時の負荷の消費電力に充分に対応できるとは言えなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の実情を鑑みて発明されたものであり、その目的は連系運転時においても自立運転時においても、太陽電池用パワーコンディショナが、より安定してまたは確実に、負荷の消費電力に対応可能となる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明は、太陽電池ストリングからの出力電圧を昇圧する電圧変換部を複数備えるとともに、この複数の電圧変換部から出力される直流電力を交流電力に変換する直流電流変換部を備えており、
電圧変換部の出力電圧の実際の検出値と所定の電圧指令値との偏差に基づいて、前記複数の電圧変換部のうちの一部または全部の電圧変換部の電圧変換率の制御方法を変更し、さらに、電圧変換部の出力電圧の実際の検出値と所定の電圧指令値との偏差に基づいて、電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の数を変更することを最大の特徴とする。
【0017】
より詳しくは、一群の太陽電池パネルの直列接続体で構成された太陽電池ストリングが入力端に接続され前記太陽電池ストリングからの出力電圧を所定の電圧値に変換する電圧変換部を複数備え、
前記複数の電圧変換部の出力端は互いに並列接続されており、
前記複数の電圧変換部から出力される直流電力を交流電力に変換する直流電流変換部と、前記電圧変換部の出力電圧の実際の検出値と所定の電圧指令値とが一致するように前記複数の電圧変換部における各々の電圧変換率を個別に制御する制御部と、をさらに備える、太陽電池用パワーコンディショナにおいて、
前記制御部は、
前記検出値と前記電圧指令値との偏差に応じて、前記複数の電圧変換部のうちの一部または全部における電圧変換率の制御方法を変更するとともに、前記検出値と前記電圧指令値との偏差に応じて、該電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の数を変更することを特徴とする。
【0018】
これによれば、自立運転時においても、複数の電圧変換部の各々の電圧変換率が個別に制御されるので、各々の電圧変換部の最大供給電力を引き出すことが可能になり、より確実に、負荷の消費電力に応じた電力を供給することが可能となる。
【0019】
また、実際の検出値と電圧指令値との偏差は、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力と負荷の消費電力との相違に相当するが、本発明では、まず、この相違の大きさに応じて、前記複数の電圧変換部のうちの一部または全部の電圧変換部の電圧変換率の制
御方法を変更する。従って、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力と負荷の消費電力との相違に応じて、複数の電圧変換部のうちのいくつかについて電圧変換率の目標値を変更することができ、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力と負荷の消費電力との相違がより早急に縮小するようにできる。
【0020】
また、本発明によれば、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力と負荷の消費電力との相違に応じて、電圧変換率の制御方法と、電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の数の両方を変更する。従って、より早期により確実に、負荷の消費電力に応じた電力を供給することが可能となる。
【0021】
より具体的には、本発明においては、前記制御部は、前記偏差が大きい程、前記電圧変換率の制御方法を変更する前記電圧変換部の数を増加させるようにしてもよい。
そうすれば、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力と負荷の消費電力との相違が大きいほど、当該偏差を縮小する方向に制御方法を変更した電圧変換部の数を増加することが可能である。その結果、より早期により確実に、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力に一致させることが可能となる。
【0022】
また、本発明においては、前記制御部は、前記偏差が大きい程、前記電圧変換率の制御方法を変更する前記電圧変換部における、電圧変換率の制御速度を速くするようにしてもよい。そうすれば、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力と負荷の消費電力との相違が大きいほど、電圧変換率の制御速度を速くし、より早期に、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力に一致させることが可能となる。
【0023】
また、本発明においては、前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より大きいときは、前記電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率を減少させるようにしてもよい。
これによれば、電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率を減少させることで、当該電圧変換部に接続された太陽電池ストリングの動作電圧を上昇させることができ、MPPT制御における供給電力を減少させることができる。その結果、より早急に、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力に近づけることが可能となる。
【0024】
また、本発明においては、前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より小さいときは、前記電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率を増加させるようにしてもよい。
これによれば、電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率を増加させることで、当該電圧変換部に接続された太陽電池ストリングの動作電圧を下降させることができ、MPPT制御における供給電力を増加させることができる。その結果、より早急に、前記検出値を前記電圧指令値に近づけることが可能となり、パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力に近づけることが可能となる。
【0025】
また、本発明においては、前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より小さいときは、前記電圧変換率の制御方法を変更する電圧変換部の電圧変換率の制御速度を速くするようにしてもよい。これによれば、電圧変換部の電圧変換率の制御速度を速くすることで、当該電圧変換部に接続された太陽電池ストリングにおける出力電力の増加速度を上昇させることができ、MPPT制御における供給電力の追従性を向上させることができる。その結果、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力により早期に近づけることが可能となり、パワーコンディショナからの供給電力の負荷の消費電力への追従性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明においては、前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より大きいときは、前記複数の太陽電池ストリングのうち、最も出力電流が大きい太陽電池ストリングに接続された電圧変換部の電圧変換率の制御方法を最初に変更するようにしてもよい。
そうすれば、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力より大きいときに、供給電力が減少する方向の制御方法の変更を、最も出力電流が大きい太陽電池ストリングに接続された電圧変換部対して行うことができる。そうすると、当該太陽電池ストリングの出力電流が優先的に低下することとなり、複数の太陽電池ストリングの出力電流をバランスさせることができる。これにより、一部の太陽電池ストリングに過剰な負担がかかることを抑制でき、より安定して、負荷に電力を供給することが可能となる。
【0027】
また、本発明においては、前記制御部は、前記検出値が前記電圧指令値より小さいときは、前記複数の太陽電池ストリングのうち、最も出力電流が小さい太陽電池ストリングに接続された電圧変換部の電圧変換率の制御方法を最初に変更するようにしてもよい。
そうすれば、太陽電池用パワーコンディショナからの供給電力を負荷の消費電力より小さいときに、供給電力が増加する方向の制御方法の変更を、最も出力電流が小さい太陽電池ストリングに接続された電圧変換部に対して行うことができる。そうすると、当該太陽電池ストリングの出力電流が優先的に増加することとなり、複数の太陽電池ストリングの出力電流をバランスさせることができる。これにより、より安定して、負荷に電力を供給することが可能となる。
【0028】
なお、上記した課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、連系運転時においても自立運転時においても、太陽光発電システムが、より安定してまたは確実に、負荷の消費電力に対応することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。
【0032】
<実施例1>
図1には、本実施例における太陽光発電用パワーコンディショナ10(以下、単にパワーコンディショナ10ともいう)を備えた太陽光発電システム1の概略構成を示す。太陽
光発電システム1は、4組の太陽電池ストリング21〜24と、太陽電池ストリング21〜24が接続されるパワーコンディショナ10と、パワーコンディショナ10と電力系統31及び負荷32との接続状態を変更する分電盤30を備えている。パワーコンディショナ10は、太陽電池ストリング21〜24から出力される電力を、電力系統31及び負荷32への供給に適したものに変換する。電力系統31は商用の電力系統であり、負荷32は家電機器等の電気機器である。
【0033】
パワーコンディショナ10は、太陽電池ストリング21〜24にそれぞれ入力端が接続される電圧変換部としての昇圧回路11〜14を有する。また、パワーコンディショナ10は、昇圧回路11〜14から出力される直流電力を交流電力に変換する直流電流変換部としてのインバータ回路16を有する。
【0034】
昇圧回路11〜14の出力端は互いに並列接続され同電位とされている。また、昇圧回路11〜14は、太陽電池ストリング21〜24からの出力電圧DCV1〜DCV4を所定の電圧に変換してインバータ回路16に入力する。インバータ回路16の出力は、連系運転時に電力を出力する出力端子10aと、自立運転時に電力を出力する出力端子10bに接続されている。出力端子10aは、分電盤30を介して連系運転時の負荷32及び電力系統31と並列接続されている。出力端子10bは、自立運転時の負荷40が接続されている。
【0035】
電力系統31が正常に作動している場合には、パワーコンディショナ10は、電力系統31と連系した連系運転状態になる。そのとき、インバータ回路16は、出力端子10aから電力系統31と負荷32に交流電力を出力する。電力系統31と負荷32とは互いに電気的に並列であることから、インバータ回路16からの出力電力が負荷32の消費電力よりも多いときには、余剰分が電力系統31に自動的に供給される。一方、インバータ回路16からの出力電力が負荷32の消費電力よりも少ないときには、不足分が電力系統31から負荷32に自動的に供給される。
【0036】
電力系統31が停電状態となったときには、パワーコンディショナ10は、電力系統31との連系を解除し、電力系統31から独立した自立運転状態になる。そのとき、インバータ回路16は、交流電力を出力端子10bから負荷40に出力し負荷40に電力供給する。インバータ回路16の入力端の電圧DDVは、電力系統31の定格電圧(実効値)以上である特定の値に設定され略一定に維持されている。インバータ回路16の入力端の電圧は、昇圧回路11〜14の出力端の電圧に等しいことから、昇圧回路11〜14の出力端の電圧も略一定に維持されている。
【0037】
また、パワーコンディショナ10は、昇圧回路11〜14及びインバータ回路16を制御する制御部50と、パワーコンディショナ10を連系運転状態にするか自立運転状態にするかを判定する判定部55とを備えている。判定部55は、例えば、電力系統31の停電等の障害を検知する障害検知センサにより構成されてもよい。制御部50は、昇圧回路11〜14の各々における電圧変換率を制御する回路であり、マイクロプロセッサ等により構成される。制御部50は、昇圧回路11〜14の各々の電圧変換率を適当な値になるように個別に制御する個別制御部51〜54を有する。
【0038】
個別制御部51〜54は、昇圧回路11〜14に接続された太陽電池ストリング21〜24の出力特性に応じて、昇圧回路11〜14における電圧変換率を個別に制御する。より具体的には、判定部55が連系運転状態と判定した場合には、個別制御部51〜54は、昇圧回路11〜14の各々に接続された太陽電池ストリング21〜24の出力電力が最大値となるように、昇圧回路11〜14の各々の電圧変換率を制御する。
【0039】
上記の電圧変換率は、昇圧回路11〜14における出力電圧を入力電圧で除した値である。各昇圧回路11〜14におけるチョッパ動作のデューティ比をDしたときには電圧変換率(DDV/DCV)は1/(1−D)で表され、デューティ比Dを制御することにより電圧変換率が制御される。デューティ比Dを高くすれば電圧変換率は高くなり、デューティ比Dを低くすれば電圧変換率は低くなる。上述のように昇圧回路11〜14においては、出力電圧が略一定であることから、電圧変換率が高くすれば昇圧回路の入力端の電圧は低くなり、電圧変換率を低くなれば昇圧回路の入力端の電圧は高くなる。従って、電圧変換率を制御することで、各昇圧回路11〜14の入力端の電圧、すなわち、各太陽電池ストリング21〜24の出力電圧DCV1〜DCV4を制御することができ、結果として、太陽電池ストリング21〜24における出力電力を制御することができる。
【0040】
図2には、本実施例に係るパワーコンディショナ10の詳細な構成を示す。
図2においては、簡単のため、太陽電池ストリングは21のみ、昇圧回路は11のみ記載されている。他の3つの太陽電池ストリングと昇圧回路のペアは、各々キャパシタ15の両端に、太陽電池ストリング21と昇圧回路11のペアと並列に接続されている。
【0041】
図2において、太陽電池ストリング21の出力に並列に設けられたコンデンサ18は太陽電池ストリング21から出力される直流電流により充電され、太陽電池ストリング21からの出力を平滑化する働きを持つ。コンデンサ18の両端の電圧をDCV1とする。昇圧回路11としてはチョッパ昇圧回路が使われており、インダクタ11a、スイッチング素子11b、逆流防止ダイオード11cから構成されている。昇圧回路11においては、個別制御部51からの指令によりスイッチング素子11bのチョッパ制御におけるDutyを変化させることで、太陽電池ストリング21から出力された直流電圧DCV1の昇圧電圧を制御している。この昇圧回路11の出力電圧DDVは図示しない電圧センサによって検出され、制御部50へ入力される。昇圧回路11の出力DDVはインバータ回路16に入力される。
【0042】
インバータ回路16は昇圧回路11から出力される直流電圧DDVを交流電圧に変換して出力する。本発明のインバータ回路16はスイッチング素子16a、16b、16c、16dからなるフルブリッジインバータとその出力を短絡させるスイッチング素子16e、16fからなる。インバータ回路16の出力電流ILは図示しない電流センサによって検出され、制御部50に入力される。
【0043】
図1では省略されていたが、パワーコンディショナ10におけるインバータ回路16の後段にはフィルタ回路17が設けられている。フィルタ回路17はインダクタ17a、17b,キャパシタ17cからなる。フィルタ回路17はインバータ回路16より出力された出力電流におけるノイズを抑制して、電気系統31へ逆潮流する働きを持つ。なお、パワーコンディショナ10が連系運転状態となるか、自立運転状態となるかは、連系リレー19a、19bと自立リレー20a、20bとを選択的にONさせることで切り換えている。電気系統31の両端電圧である系統電圧Vsは図示しない電圧センサによって検出され、制御部50に入力される。
【0044】
次に、パワーコンディショナ10の連系運転時と自立運転時における各回路の動作を説明する。
(連系運転時)
連系運転時には、個別制御部51〜54が、それぞれ、昇圧回路11〜14の電圧変換率を制御することで太陽電池ストリング21〜24に関して個別にMPPT制御する。その際、個別制御部51〜54は、太陽電池ストリング21〜24の出力電圧DCV1〜DCV4を個別に増減させる。また、個別制御部51〜54は、図示しない電流検出回路により検出された太陽電池ストリング21〜24の出力電流と出力電圧DCV1〜DCV4
との積である出力電力を太陽電池ストリング毎に算出する。そして個別制御部51〜54は、算出された出力電力を参照しつつ、出力電圧DCV1〜DCV4を、出力電力が最大になる最適動作電圧と一致するように制御する。このようにして、太陽電池ストリング21〜24の各々から最大電力が引き出される。この制御は定期的に実行される。
【0045】
(自立運転時)
本実施例においては、自立運転時には、全ての太陽電池ストリング21〜24に同様のMPPT制御をするのではなく、実際のDDVの検出値とDDV指令値の偏差に基づいて、太陽電池ストリング21〜24の一部または全てに対してMPPT制御の制御方法を変更する。これにより、実際のDDVの検出値がDDV指令値に、より早急に一致させるように制御し、パワーコンディショナ10の出力電力を、より安定してより確実に負荷40の消費電力に一致させるようにした。
【0046】
図3は、本実施例における自立運転時の制御の内容を示したブロック図である。本実施例では、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合には、昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyを減少させる。このことにより、対応する太陽電池ストリングの出力電圧が開放電圧に近づき、その回路における出力電力が低下する。そして、本実施例では、DDV検出値とDDV指令値の間の偏差が大きいほど、昇圧回路11〜14のうち、Dutyを減少させる回路数を増加させるとともに、Dutyを減少させる速度も速くする。なお、
図3の左側のブロックにおいて、W、X、Y、Zの文字は、DDV検出値からDDV指令値を差し引いた偏差(正数)を示しており、W<X<Y<Zである。また、A、B、C、D、Eの文字は、Dutyの減少速度(正数)を示しており、A<B<C<D<Eである。
【0047】
具体的には、
図3に示すように、偏差が0〜W(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち一つの回路についてDutyを減少させる。この場合のDutyの減少速度は例えば、A%/secとする。また、偏差がW〜X(V)の場合にも、昇圧回路11〜14のうち一つの回路についてDutyを減少させる。この場合のDutyの減少速度は例えば、B%/secとし、偏差が0〜W(V)の場合より速くする。また、偏差がX〜Y(V)の場合には、昇圧回路11〜14の四つ全部の回路についてDutyを減少させる。この場合のDutyの減少速度は例えば、C%/secとし、偏差がW〜X(V)の場合より速くする。さらに、偏差がY(V)以上の場合にも、昇圧回路11〜14の四つ全部の回路についてDutyを減少させる。この場合のDutyの減少速度は例えば、D%/secとし、偏差がX〜Y(V)の場合よりさらに速くする。
【0048】
なお、この際、この時点での出力電流が最も大きい太陽電池ストリングに接続された昇圧回路から優先的にDutyを減少させる。すなわち、偏差が0〜W(V)の場合と偏差がW〜X(V)の場合には、太陽電池ストリング21〜24のうち最も出力電流が大きい太陽電池ストリングに接続された昇圧回路についてDutyを減少させる。
【0049】
一方、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyの制御速度を上昇させる。このことによりMPPT制御の速度が上昇し、DDVのDDV指令値に対する追従性が向上する。そして、本実施例では、DDV検出値とDDV指令値の偏差の大きさが大きいほど、昇圧回路11〜14のうち、MPPT制御を高速化する回路数を増加させるとともに、高速化後のMPPT制御の速度自体も速くする。なお、
図3の右側のブロックにおいて、W、X、Y、Zの文字は、
図3の左側のブロックと同一の意味を有する。また、A、B、C、D、Eの文字は、高速化後のMPPT制御の速度(正数)を示しており、A<B<C<D<Eである。
【0050】
具体的には、
図3に示すように、偏差が0〜−W(V)の場合には、全部の昇圧回路1
1〜14について、通常どおりのMPPT制御を行う。この場合のMPPT制御の制御速度はA%/secである。次に、偏差が−W〜−X(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち一つの回路についてMPPT制御の制御速度をB%/secに上昇させる。また、偏差が−X〜−Y(V)の場合には、MPPT制御の制御速度をB%/secに上昇させた一つの回路についてMPPT制御の制御速度をさらに上昇させる。この場合の高速化後のMPPT制御の制御速度はC%/secとする。また、偏差が−Y〜−Z(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち四つ全部の回路についてMPPT制御の制御速度を上昇させる。この場合の高速化後のMPPT制御の制御速度はD%/secとする。さらに、偏差が−Z(V)よりマイナス側であった場合には、昇圧回路11〜14の全ての回路についてMPPT制御の制御速度をさらに上昇させる。この場合の高速化後のMPPT制御の制御速度はE%/secとする。
【0051】
なお、この際、この時点での出力電流が小さい太陽電池ストリングに接続された昇圧回路から優先的にMPPT制御を高速化する。すなわち、偏差が−W〜−X(V)の場合及び、偏差が−X〜−Y(V)の場合には、太陽電池ストリング21〜24のうち最も出力電流が小さい太陽電池ストリングに接続された昇圧回路についてMPPT制御の制御速度を上昇させる。
【0052】
これによれば、DDV検出値とDDV指令値の偏差に応じて、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合には、昇圧回路11〜14のうちの一部または全てのDutyを減少させ、太陽電池ストリング21〜24のうちの一部または全部における作動電圧を上昇させ、結果的に、太陽電池ストリング21〜24のうちの一部または全部における出力電力を低下させることができる。また、DDV検出値とDDV指令値との偏差が大きい程、Dutyを減少させる回路数を増加させるとともにDutyの減少速度も増加させる。これにより、DDV検出値とDDV指令値との偏差が大きい程、より早急にパワーコンディショナ10としての負荷40に対する供給電力を減少させ、負荷40に近づけることが可能となる。
【0053】
一方、上記の制御によれば、DDV検出値とDDV指令値の偏差に応じて、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、昇圧回路11〜14のうちの一部または全てにおけるMPPT制御の制御速度を上昇させ、太陽電池ストリング21〜24のうちの一部または全部における出力電力の制御速度を上昇させることができる。また、DDV検出値とDDV指令値との偏差がマイナス側に大きい程、MPPT制御を高速化する回路数を増加させるとともに高速化後の制御速度自体も上昇させる。これにより、DDV検出値とDDV指令値との偏差がマイナス側に大きい程、より早急にパワーコンディショナ10としての供給電力を負荷40における消費電力に追従させることが可能となる。
【0054】
また、この際、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合には、出力電流が大きい太陽電池ストリングに接続された昇圧回路のDutyを優先的に減少させ、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、出力電流が小さい太陽電池ストリングに接続された昇圧回路のMPPT制御の制御速度を優先的に上昇させる。従って、太陽電池ストリング21〜24の各々における出力電流をバランスさせることができ、一部の太陽電池ストリング及び昇圧回路に過剰な負担がかかるなどの不都合を抑制することが可能である。
【0055】
図4は、本実施例における太陽電池ストリング21〜24及び昇圧回路11〜14制御の状態を示すチャートである。
図4において、W、X、Y、Z及び、A、B、C、D、Eの文字は、DDV検査値>DDV指令値の場合及び、DDV検査値<DDV指令値の場合の各々の場合について、
図3における同文字と同じ意味を有する。チャートの左端にはDDV検出値からDDV指令値を差し引いた偏差を示す。従って、チャートにおける偏差の符号が正の部分は、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合、偏差の符号が負の部分
は、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合を示す。偏差が0の部分はDDV検出値とDDV指令値とが一致する場合、すなわち、パワーコンディショナ10による供給電力と自立運転時の負荷40の消費電力とが一致した状態を示す。
【0056】
チャート右側部には、4つの昇圧回路11〜14の制御方法を示している。4つの昇圧回路11〜14のうち、入力電流値の最も大きい昇圧回路がチャート右側部の左端に記載され、右側になるほど、入力電流値が小さい昇圧回路が記載されるようになっている。そして、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合には、先ず、入力電流値が最も大きい回路におけるDutyを優先的に減少させ、偏差がX(V)以上の場合には、全ての昇圧回路においてDutyを減少させる。
【0057】
一方、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、その偏差が−W(V)よりマイナス側になった場合には、先ず、入力電流値が最も小さい回路におけるMPPT制御の制御速度を優先的に上昇させる。そして、偏差が−Y(V)よりマイナス側になった場合には、全ての昇圧回路においてMPPT制御の制御速度を上昇させる。
【0058】
以上のように、本実施例においては、基本的には昇圧回路11〜14の全てにおいてMPPT制御を維持しつつ、パワーコンディショナ10によって負荷40に供給する電力を、供給電力が不足している場合には増加させ、供給電力が過剰な場合は減少させることができる。また、供給電力と消費電力の偏差が大きいほど、Duty制御の速度が大きくなるため、より迅速に供給電力を消費電力に近づけることができる。また、負荷40による消費電力に対して供給電力が過剰になっている場合には、最も入力電流が大きい回路から優先的に供給電力を減少させ、また、電力が不足している場合には、最も入力電力が小さい回路から優先的に供給電力を増加させるので、太陽電池ストリング及び昇圧回路の間の負担のばらつきを抑制することが可能である。
【0059】
さらに、基本的には昇圧回路11〜14の各々においてMPPT制御を維持しているので、全ての昇圧回路11〜14を一括で制御した場合と比較して、各々の太陽光ストリングの供給電力の最大値を引き出すことができ、パワーコンディショナ全体としての供給可能電力を高めることができる。また、供給電力が負荷の消費電力より小さい場合には、入力電流値の小さい回路を優先的に、Duty変化速度を上昇させるので、全ての昇圧回路に均等にMPPT制御を行う場合のように、昇圧回路の作動電圧が最適動作電圧をより低電圧側に通り越し、回路の動作が停止してしまうような事態を抑制できる。
【0060】
なお、本実施例においては、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合には、DDV検出値とDDV指令値との偏差が大きい程、Dutyを減少させる回路数を2段階で増加させた。また、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、DDV検出値とDDV指令値との偏差がマイナス側に大きい程、MPPT制御を高速化する回路数を2段階で増加させた。しかしながら、本実施例では、Dutyを減少させる回路数やMPPT制御を高速化する回路数を3段階や4段階またはそれ以上で増加させてもよいことは当然である。
【0061】
また、本実施例において、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合に昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyを減少させることまたは、Dutyの減少速度を変更することは、検出値と電圧指令値との偏差に応じて、複数の電圧変換部のうちの一部または全部における電圧変換率の制御方法を変更することに相当する。同様に、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合に昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyの制御速度を上昇させることも、検出値と電圧指令値との偏差に応じて、複数の電圧変換部のうちの一部または全部における電圧変換率の制御方法を変更することに相当する。
【0062】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、自立運転時に、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyを増加させる点が実施例1と異なる。このことにより、対応する太陽電池ストリングの出力電圧が最適動作電圧に近づき、その太陽電池ストリングによる供給電力が増加する。そして、本実施例では、DDV検出値とDDV指令値の間の偏差がマイナス側に拡大するほど、昇圧回路11〜14のうち、Dutyを増加させる回路数を増加させるとともに、Dutyの増加速度も速くする。
【0063】
図5には、本実施例における制御のブロック図を示す。
図5の左側のブロックにおいて、W、X、Y、Zの文字は、DDV検出値からDDV指令値を差し引いた偏差(正数)を示しており、W<X<Y<Zである。また、A、B、C、D、Eの文字は、Dutyの減少速度(正数)を示しており、A<B<C<D<Eである。また、
図5の右側のブロックにおいて、W、X、Y、Zの文字は、
図5の左側のブロックと同一の意味を有する。また、B、C、D、Eの文字は、Dutyの増加速度(正数)を示しており、B<C<D<Eである。DDV検出値がDDV指令値より大きい場合の制御内容については、実施例1と同等であるので、ここでは説明を省略する。本実施例では、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合であって、偏差が0〜−W(V)の場合には、全部の昇圧回路11〜14について、通常どおりのMPPT制御を行う。
【0064】
次に、偏差が−W〜−X(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち一つの回路についてDutyを増加させる。この場合のDuty増加速度はB%/secとする。また、偏差が−X〜−Y(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち一つの回路についてDutyを増加させる。この場合のDuty増加速度はC%/secとする。また、偏差が−Y〜−Z(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち四つ全部の回路についてDutyを増加させる。この場合のDuty増加速度はD%/secとする。さらに、偏差が−Z(V)を超える場合には、昇圧回路11〜14の四つ全部の回路についてDutyを増加させる。この場合のDuty増加速度はE%/secとする。
【0065】
なお、この際、本実施例でも、出力電流が小さい太陽電池ストリングから優先的にDutyを増加させる。すなわち、偏差が−W〜−X(V)の場合及び、偏差が−X〜−Y(V)の場合には、昇圧回路11〜14のうち最も出力電流が小さい太陽電池ストリングについてDutyを増加させる。
【0066】
本実施例によっても、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、DDV検出値とDDV指令値の偏差に応じて、昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyを増加させることで、太陽電池ストリング21〜24のうちの一部または全てにおける作動電圧を下降させる。その結果、太陽電池ストリング21〜24のうちの一部または全部における供給電力を上昇させることができる。また、DDV検出値とDDV指令値との偏差が大きい程、Dutyを増加させる回路数を増加させるとともにDutyの増加速度も増加させる。これにより、DDV検出値とDDV指令値との偏差が大きい程、より早急にパワーコンディショナ10として供給電力を増加させ、負荷40の消費電力に近づけることが可能である。
【0067】
また、この際、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、出力電流が小さい昇圧回路のDutyを優先的に増加させる。従って、さらに早急に、パワーコンディショナ10としての供給電力を負荷40における消費電力に近づけることが可能となり、また、太陽電池ストリング21〜24の各々における出力電流をバランスさせることができ、一部の太陽電池ストリングおよび昇圧回路に過剰な負担がかかるなどの不都合を抑制するこ
とが可能である。
【0068】
図6は、本実施例における太陽電池ストリング21〜24及び昇圧回路11〜14の制御の状態を示すチャートである。
図6において、W、X、Y、Z及び、A、B、C、D、Eの文字は、DDV検査値>DDV指令値の場合及び、DDV検査値<DDV指令値の場合の各々の場合について、
図5における同文字と同じ意味を有する。チャートの左端にはDDV検出値からDDV指令値を差し引いた偏差を示す。従って、チャートにおける偏差の符号が正の部分は、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合、偏差の符号が負の部分は、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合を示す。偏差が0の部分はDDV検出値とDDV指令値とが一致する場合、すなわち、パワーコンディショナ10による供給電力と自立運転時の負荷40の消費電力とが一致した状態を示す。
【0069】
当該チャートにおいて、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合には、その偏差がマイナス側に拡大するに従って、入力電流値が最も小さい回路におけるDutyを優先的に増加させ、さらに偏差がマイナス側に拡大するに従って、入力電流値が小さい回路から順次Dutyを増加させる。そして、偏差が−Y(V)よりマイナス側に拡大した場合には、全ての昇圧回路においてDutyを増加させる。
【0070】
以上のように、本実施例においても、基本的には昇圧回路11〜14の全てにおいてMPPT制御を維持しつつ、パワーコンディショナ10によって負荷40に供給する電力を、供給電力が不足している場合には増加させることができる。また、供給電力と消費電力の偏差が大きいほど、Duty増加の速度が大きくなるため、より早急に供給電力を消費電力に近づけることができる。また、負荷40による消費電力に対して供給電力が不足している場合には、最も入力電力が小さい回路から優先的に供給電力を増加させるので、各太陽電池ストリング及び各昇圧回路における負担のばらつきを抑制することが可能である。
【0071】
さらに、基本的には昇圧回路11〜14の各々においてMPPT制御を維持しているので、全ての昇圧回路11〜14を一括で制御した場合と比較して、各々の太陽光ストリングスの供給電力の最大値を引き出すことができ、パワーコンディショナ全体としての供給可能電力を高めることができる。
【0072】
なお、本実施例においては、DDV検出値とDDV指令値の間の偏差がマイナス側に大きい程、昇圧回路11〜14のうち、Dutyを増加させる回路数を2段階で増加させた。しかしながら、Dutyを増加させる回路数を3段階や4段階またはそれ以上で増加させてもよいことは当然である。
【0073】
また、本実施例において、DDV検出値がDDV指令値より大きい場合に昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyを減少させることまたは、Dutyの減少速度を変更することは、検出値と電圧指令値との偏差に応じて、複数の電圧変換部のうちの一部または全部における電圧変換率の制御方法を変更することに相当する。同様に、DDV検出値がDDV指令値より小さい場合に昇圧回路11〜14のうちの一部または全部の回路におけるDutyを増加させることまたは、Dutyの増加速度を変更することも、検出値と電圧指令値との偏差に応じて、複数の電圧変換部のうちの一部または全部における電圧変換率の制御方法を変更することに相当する。
【0074】
なお、本発明は、上記の実施例の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例では、パワーコンディショナ10は、4つの昇圧回路11〜14を有し、各々の昇圧回路に太陽電池ストリング21〜24が接続されている例について説明したが、昇圧回路とそれらに接続される太陽電池ストリングのペア
の数は4つに限られない。3つ若しくは5つまたはそれ以外であってもよいことは当然である。