(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シフトカムとシフトフォークとによって変速用ドッグを移動させるトランスミッション機構と、エンジン回転を前記トランスミッション機構に対して伝達および遮断するクラッチ機構と、前記クラッチ機構を断続維持させるクラッチアクチュエータと、前記トランスミッション機構を変速操作させるシフトチェンジアクチュエータと、シフトチェンジ制御を行なう制御ロジックを備えたトランスミッションコントロールユニット(TCU)と、からオートマチックマニュアルトランスミッション装置(AMT)を構成し、
前記トランスミッション機構は、カウンタシャフトに設けられる複数のドライブギアと、ドライブシャフトに設けられ、前記複数のドライブギアのそれぞれに常時噛合する複数のドリブンギアとを備え、
車両中心線上を跨って配置したEV走行用モータを備え、
前記複数のドライブギアのうち前記カウンタシャフトに直結して回転する所定のドライブギアに、前記EV走行用モータの回転が伝達される減速機構を直接噛み合せ、モータ駆動力を前記トランスミッション機構に伝達するモータ駆動力伝達機構を備えることを特徴とするハイブリッド二輪車。
前記オートマチックマニュアルトランスミッション装置は、前記クラッチアクチュエータの断続とシフトチェンジアクチュエータの変速とが前記トランスミッションコントロールユニットにより制御され、エンジン駆動によるエンジン走行と、前記EV走行用モータのモータ駆動によるEV走行と、前記EV走行時に前記クラッチ機構の接続によってエンジンの始動を行ない、前記エンジン走行時に前記EV走行用モータのモータ軸の回転によりモータ発電とを行なう請求項1に記載のハイブリッド二輪車。
前記EV走行用モータは車両側面視において、シリンダアッセンブリのシリンダブロック後方でエンジンケースの上方に、かつ車体フレームの左右対をなすメインフレームの上面より上方に突出することなく配設され、
前記EV走行用モータは車両平面視で左右対の前記メインフレームに囲まれた内側に配置された請求項1に記載のハイブリッド二輪車。
前記EV走行用モータは、車両後面視において、前記オートマチックマニュアルトランスミッション装置を制御する前記クラッチアクチュエータおよび前記シフトチェンジアクチュエータと干渉することなくエンジン幅の略中央位置に配置された請求項1または7に記載のハイブリッド二輪車。
前記トランスミッションコントロールユニットは、車速センサと、スロットルポジションセンサと、アクセルポジションセンサと、ギアポジションセンサと、カウンタシャフト回転スピードセンサと、シフトレバー回動角または角度センサと、クラッチアクチュエータポジションセンサと、シフトアクチュエータポジションセンサと、その他燃料噴射システムに必要な各種運転状態検知用センサとからセンサ信号を入力し、
前記トランスミッションコントロールユニットは、シフトチェンジアクチュエータと、クラッチアクチュエータと、エンジンコントロールユニットと、電子制御スロットルコントローラユニットと、EV走行用コントロールユニットとを駆動制御している請求項1に記載のハイブリッド二輪車。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態を示すハイブリッド二輪車の全体的な左側面図、
図2は同じくハイブリッド自動二輪車の全体を一部を省略して示す平面図である。ハイブリッド二輪車は、エンジンを駆動源としたエンジン走行と、モータを駆動源としたEV(モータ)走行が可能な鞍乗型車両である。この鞍乗型車両は、オンロードタイプの自動二輪車、オフロードタイプの自動二輪車、スクータタイプの自動二輪車がある。ハイブリッド二輪車において、前、後、左、右はシートに着座したライダから見た方向に従う。
【0016】
ハイブリッド二輪車は、符号10で示すように、左右対をなすメインフレーム11と同じく左右対のシートフレーム12とから車体フレーム13が構成される。車体フレーム13のメインフレーム11にエンジンユニット14が搭載される。エンジンユニット14はメインフレーム11に懸架されて車体フレーム13の一部を構成している。
【0017】
車体フレーム13の前端部にヘッドパイプ15が設けられ、このヘッドパイプ15に
図3に示すアッパブラケット16およびロアブラケット17を介して左右対のフロントフォーク18が設けられる。アッパブラケット16には左右の操向ハンドル19が固定される一方、フロントフォーク18からのステアリングシャフト20下端に前輪21が軸支される。ハイブリッド二輪車10は操向ハンドル19の回動操作により操縦される。
【0018】
また、車体フレーム13はメインフレーム11の後部から下方向に延びるセンターフレーム部にピボット軸22が設けられ、このピボット軸22廻りにスイングアーム23が回動自在に設けられる。スイングアーム23の後端部には駆動輪である後輪24が軸支される。スイングアーム23とシートフレーム12との間にリアクッションユニット25によりスイングアーム23はピボット軸22廻りに昇降自在に支持される。
【0019】
一方、車体フレーム13のメインフレーム11上に燃料タンク27が跨って設置される。燃料タンク27はその前側下部にエアクリーナ28が設けられる。エアクリーナ28はエンジンユニット14の上方に位置される。エアクリーナ28には車両前方の空気取入口(インレット)29から取り入れられた空気が案内されるようになっている。
【0020】
燃料タンク27の後方にはシート31が設けられる。シート31はシートフレーム12上に設置され、シート31下方にバッテリ32やインバータ33が設けられる。さらに、シート31の下方でかつバッテリ32の後方に、後述する電子制御スロットルコントローラユニット(ETVCU)35やトランスミッションコントロールユニット(TCU)36が設けられる。TCU36は、ハイブリッド二輪車10の車両のシフトチェンジを制御する制御ロジックを備えたコントロールユニットである。これらのETVCU35やTCU36およびインバータ33等は熱に弱い電気部品であるため、熱の影響を受けにくい場所に配置される。なお、符号38は燃料ポンプであり、符号39は未燃ガスや余剰燃料をストックするキャニスタである。インバータ33は、駆動モータ43が交流モータの場合に設けられ、直流モータの場合には、インバータ33の代りにバッテリが設けられる。
【0021】
ところで、車体フレーム13に搭載されるエンジンユニット14は、例えばユニットケース40上面にシリンダブロック41a、シリンダヘッドおよびヘッドカバーからなるシリンダアッセンブリ41が前傾して設置され、並列多気筒エンジン、例えば4気筒エンジンが構成される。エンジンケース40には、オートマチックマニュアルトランスミッション装置44(以下、AMTという。)が組み込まれている。AMT44は、クラッチ操作を必要とせずにマニュアルシフトを可能にし、シフトレバー操作フィーリングを改善し、クラッチ操作の煩わしさを無くしたセミオートマチックトランスミッション装置である。シリンダアッセンブリ41のシリンダヘッド後面に開口する4つの吸気ポートには電子制御スロットル装置45が接続される。シリンダヘッド前面に開口する排気ポートには排気管46が接続される。
【0022】
排気管46はシリンダアッセンブリ41の排気ポートから下方に延びて後方に折曲されて、後方に延びており、途中で集合されて排気チャンバ47が接続される。さらに、排気管は排気チャンバ46の側方から後方に延びてサイレンサ48に接続される。
【0023】
AMT44は、
図4ないし
図9に示すように、エンジン回転、すなわちエンジンケース40の内部に軸支されたクランクシャフト50の回転を変速して後輪24に伝達するトランスミッション機構51と、クランクシャフト50の回転をトランスミッション機構51に対して伝達および遮断するクラッチ機構52と、クラッチ機構52を断続操作するクラッチアクチュエータ53と、トランスミッション機構51を変速操作するシフトチェンジアクチュエータ54とを備えて構成される。クラッチアクチュエータ53とシフトチェンジアクチュエータ54は、AMTアクチュエータを構成し、エンジンケース49に一体的に被装されるカバー、例えばスプロケットカバー56に設けられる。
【0024】
クラッチアクチュエータ53とシフトチェンジアクチュエータ54は、
図6および
図7に示すように、シリンダアッセンブリ41の後方で、かつエンジンケース40の左側面に設置されており、例えばエンジンケース40の左側面に被装されたスプロケットカバー55に固定される。スプロケットカバー55の内側にはエンジン出力をチェーンで後輪に伝えるドライブスプロケット(
図8、
図9参照)が収められている。
【0025】
トランスミッション機構51は、一般のマニュアルトランスミッション装置に使用されているものと同様の構成である。即ち、クランクシャフト50の後方に平行に位置して車幅方向に延びるカウンタシャフト60およびドライブシャフト61と、
図8および
図9に示すように、カウンタシャフト60に軸装されて第1速から第6速に対応する6種類のドライブギア62と、ドライブシャフト61に軸装されて上記ドライブギア62に常時噛合する6種類のドリブンギア63とを備えている。なお、先述のドライブスプロケット56はドライブシャフト61の左端に回転一体に固定されている。
【0026】
また、トランスミッション機構51は、
図10および
図12に示すように、シフトカム65によって動かされる複数のシフトフォーク66を備えている。従来から公知のように、シフトカム65は、段階的に回動することにより、複数のシフトフォーク66を介してドライブギア62およびドリブンギア63のいずれかに設けられた変速用ドッグ67(
図10、
図11参照)を軸方向に移動させて6種類のドライブギア62およびドリブンギア63の噛み合わせを選択する。
【0027】
クラッチ機構52は、公知の湿式多版クラッチであり、例えば
図8、
図9に示すように、カウンタシャフト60の右端側に設けられている。クラッチ機構52に回転一体に設けられたプライマリドリブンギア70が、クランクシャフト50、例えばエンジンクランクのクランクウェブの1つに設けられたプライマリドライブギア71に常時噛合している。
【0028】
カウンタシャフト60は中空軸であり、その内部に摺動自在に挿入されたプッシュロッド72の左端部をクラッチアクチュエータ53が押圧していくと、クラッチ機構52の結合が徐々に解かれ、半クラッチ状態を経て結合が解除される。プッシュロッド72は、最大ストローク時にクラッチの回転トルクが0になる。クラッチ機構52が結合されるとエンジン回転がトランスミッション機構51のカウンタシャフト60に伝達され、クラッチ機構52が解除されるとエンジン回転がカウンタシャフト60に対して遮断される。
【0029】
クラッチアクチュエータ53は、
図11および
図12に示すように、例えばサーボモータ73と、多段ギアからなる減速機構74と、カム軸状のクラッチレリーズカム75とを備えて構成されており、サーボモータ73の回転が減速機構74により減速されてクラッチレリーズカム75の回動に変換され、クラッチレリーズカム75の回動角が増すに従ってプッシュロッド72の押圧量が増大していく。
【0030】
クラッチアクチュエータ53にはクラッチポジションセンサ76が設けられている。このクラッチポジションセンサ76は、例えば減速機構74のギアの回転角度を検知することによってクラッチ機構52の繋がり具合を判定するセンサであり、そのクラッチポジション信号CPが後述するトランスミッションコントロールユニット36(以下、TCUと略す)に受信される(
図18参照)。
【0031】
シフトチェンジアクチュエータ54は、
図12および
図13に示すように、例えばサーボモータ80と、多段ギアからなる減速機構81とを備えて構成される。サーボモータ80の回転が減速機構81により減速されてシフトチェンジシャフト82を回動させ、シフトチェンジシャフト82の回動がシフトギア83によってシフトカム65に伝達されるようになっている。
【0032】
また、シフトチェンジアクチュエータ54には、
図12に示すように、シフトポジションセンサ84が設けられている。このシフトポジションセンサ84は、例えばシフトチェンジシャフト82の回動角度を検知することによってギアポジションを判定するセンサであり、そのシフトポジション信号SPが後述するTCU36に受信される(
図18参照)。
【0033】
一方、自動二輪車の車体フレーム13には、運転者が足を載せる左右一対のフットレスト85が、エンジンユニット14の後方に位置するように設けられる(
図1、
図12参照)。そして、エンジンユニット14の左側面には、左側のフットレスト85の前下方に位置するようにシフトレバー86が設けられる。運転者は、左側のフットレスト85に載せた左足の爪先でシフトレバー86を上方または下方に繰り返し回動操作してAMT44のシフト操作を行なう。例えば、シフトレバー86を上方に回動させるとAMT44がシフトアップし、下方に回動させるとAMT44がシフトダウンする。
【0034】
図1、
図2、
図12および
図14、特に
図14に示すように示すように、シフトレバー86は、その根元の回動軸(シフトシャフト)87が、エンジンケース40の左下側面に取り付けられたシフトレバーブラケット88に軸支されており、回動軸87にはリターンスプリング(図示せず)が軸装されている。リターンスプリングは、シフトレバー86の非操作時には、シフトレバー86を
図14に示す回動開始位置86Nに保持する。
【0035】
また、シフトレバーブラケット88には、
図1および
図14に示すように、シフトレバー86と共に、シフトレバー回動角センサ(シフトレバー回動検出部)90と、荷重特性付与機構89とが設置される。シフトレバー回動角センサ90は、シフトレバー86の回動角度を検知することにより、シフトレバー86の回動操作が開始されたことを検出してシフト検出信号SU,SDを発信するセンサである。なお、シフトレバー回動角センサ90としては、回動角センサに限らず、例えば荷重センサを用いてもよい。また、荷重特性付与機構89は、後述するようにシフトレバー86の回動に所定の荷重特性を付与する機構である。
【0036】
シフトレバー86は、
図14に示すように、回動開始位置86Nから、上方の回動終点位置86UPと、下方の回動終点位置86DOWNまで回動することができる。また、回動開始位置86Nと、上下の回動終点位置86UP,86DOWNとの間には、それぞれ回動検出位置PUとPDが設定されている。これらの回動検出位置PU,PDは、それぞれ回動終点位置86UP,86DOWNよりも回動開始位置86Nにやや近い位置に設けられている。
【0037】
シフトレバー86が回動検出位置PUを通過する時には、シフトレバー回動角センサ90がシフトアップを伝えるシフト検出信号SUを発信し、シフトレバー86が回動検出位置PDを通過する時には、シフトレバー回動角センサ90がシフトダウンを伝えるシフト検出信号SDを発信する。これらのシフト検出信号SU,SDは、
図18に示すTCU36に受信される。
【0038】
荷重特性付与機構89は、
図14に示すように、シフトレバー86が回動開始位置86Nから回動終点位置86UPに1度回動操作されると、カムプレート(図示せず)を所要角度、例えば60度回動させる。
【0039】
シフトレバー86が回動開始位置86Nから回動終点位置86DOWNに1度回動操作されると、カムプレートを所要角度、例えば60度回動させる。
【0040】
さらに、シフトレバー86を回動開始位置86Nから回動終点位置86UPまたは回動終点位置86DOWNに複数回、連続的に回動させると、その回動回数だけカムプレートが60度ずつ時計方向または反時計方向に節度が付与されて断続的(間欠的)に回動操作される。
【0041】
また、シフトレバー86が回動開始位置86Nから回動終点位置86UPまたは86DOWNに回動するまでの間に、荷重特性付与機構89によってシフトレバー86の反力に山型の荷重特性が
図15に示されるように付与される。
【0042】
そして、この山型の荷重特性の最大荷重点Wmaxの発生位置は、シフトレバー86の回動検出位置PU,PDの位置に略一致するように設定されている。このため、シフトレバー86の反力は、回動開始位置86Nから回動検出位置PU,PDにかけて大きくなり、回動検出位置PU,PDを超えてからは小さくなる。そして、最も反力が高くなった時に、シフトレバー回動角センサ90からシフトアップまたはシフトダウンのシフト検出信号SUまたはSDがTCU36に送信される。
【0043】
[AMTアクチュエータとEV走行用モータとの配置構成]
ハイブリッド二輪車10は、
図1に示すように、車両側面視でエンジンユニット14のシリンダアッセンブリ41の背側に、かつエンジンケース40の上方にEV走行用モータ(駆動モータ)43が設けられる。EV走行用モータ43は電動アシストモータを構成しており、
図2、
図5および
図7に示すように、シリンダアッセンブリ41のシリンダブロック後方でかつエンジンケース40上方の比較的スペースの空いている場所に設けられる。
【0044】
したがって、燃料タンク27の容量減少を無くしたり、最小限に抑えながらEV走行用モータ43で駆動力アシストを行なうことができる。EV走行用モータ43は、AMTアクチュエータであるクラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54を避けるようにAMTアクチュエータ53,54の車両幅方向内側に配置される。EV走行用モータ43は、車両側面視でシリンダアッセンブリ41のシリンダブロック後方でかつエンジンケース40のクランクケース上方、さらに左右対のメインフレーム11,11間の内側に設置される。EV走行用モータ43は、車両側面視でメインフレーム11より上方に突出することなく、また、車両平面視で
図2および
図5に示すように車両中心線CLを跨って配置される。
【0045】
また、EV走行用モータ43は、車両側面視でクラッチ室(クラッチ機構52)側にオフセットして配置され、車両中心線CLを跨いで設けられるため、クラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54をエンジン中心側に近付けてオフセット配置することができ、エンジン幅方向寸法を小さくすることができる。したがって、車両のコンパクト化を図りながらシングルクラッチ式AMT44を構成することができる。クラッチアクチュエータ53は、
図5および
図7に示すように、クラッチレリーズアームシャフト軸53a上に設けられて、エンジンの最大幅を超えないエンジン幅の範囲に設置される。このため、車両転倒時のAMTアクチュエータの破損や走行に伴う空力特性の悪化を防ぐことができる。
【0046】
駆動モータ43のモータ軸43aは、
図9、
図16および
図17に示すように、多段の減速ギア列の減速機構93を介してトランスミッション機構51のカウンタシャフト60上のドライブギア94にギア連結され、モータ駆動力伝達機構
96が構成される。このドライブギア94はカウンタシャフト60に直結されて1速ドライブギアを構成している。1速ドライブギア94はドライブシャフト61に回転自由に設けられた1速ドリブンギア95とギア連結される。なお、減速機構93は2段の減速抑制を備えた例を説明したが、1段の減速ギアであってもよい。駆動モータ43のモータ駆動力は、
図9に示すように、減速機構93からカウンタシャフト60上のドライブギア94およびトランスミッション機構51を経て後輪24駆動用のチェーン・スプロケット機構92に伝達される。
【0047】
EV走行用モータ43は、
図2および
図5に示すように、車両平面視において、車両中心線CLを跨ぐように車両幅方向を向いて車両中心線側に設置され、対をなすメインフレーム11,11間に囲まれてシリンダブロックの後方でクランクケース上面に設けられる。車両の上面視や後面視において、車両幅方向のエンジン全幅より内側にAMT44および駆動モータ43が入るように配置される。このAMT44と駆動モータ43の配置構成により、エンジン寸法を増大させずにAMT44とEVモータである駆動モータ43との配置を両立させることができる。
【0048】
また、重量物である駆動モータ43を、シリンダアッセンブリ41の後方で車両前後左右中心の重心付近に配置できるため、マスの集中化が図れ、慣性モーメントの増大を抑えて操縦安定性の悪化を抑えることができる。
【0049】
さらに、モータ駆動力伝達機構96は、
図16および
図17に示すように、EV走行用モータ43のモータ軸43a、減速機構93のアイドルギア93aを軸支するアイドル軸93bおよびトランスミッション機構51のカウンタシャフト60軸およびドライブシャフト軸61の各ギアを結ぶ各軸が略直線上でコンパクトに配置される。このため、エンジンの小型・コンパクト化を図ることができ、軽量化に貢献することができる。
【0050】
一方、重量物であるEV走行用モータ43を
図1、
図2および
図5に示すように、車両の前後左右の中心で、重心付近に集中的に配置することができ、車両の重量バランスを左右で安定化させ、慣性モーメントの増大を抑えて操縦安定性を確保し、向上させることができる。
【0051】
[AMTの構成]
図18は、AMT44の全体構成を示すブロック図である。AMT44は、ハイブリッド二輪車10のシフトチェンジ制御を行なう制御ロジックを備えたトランスミッションコントロールユニット(TCU)36を備える。
【0052】
AMT44の制御部であるTCU36には、AMTアクチュエータであるクラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54と、エンジンコントロールユニット97と、電子制御スロットルコントローラ98とEV走行コントロールユニット99とが接続され、それぞれTCU36から発信される作動信号A1〜A5に基づいて作動する。
【0053】
また、TCU36には、クラッチアクチュエータポジションセンサ76と、シフトアクチュエータポジションセンサ84と、シフトレバー回動角センサ90とが接続され、クラッチアクチュエータポジションセンサ76から発信されるクラッチポジション信号CPと、シフトアクチュエータポジションセンサ84から発信されるシフトポジション信号SPと、シフトレバー回動角(または荷重)センサ90から発信されるシフト検出信号SU,SDとが、それぞれTCU36に入力される。
【0054】
さらに、TCU36には、カウンタシャフト60の回転速度信号CSを発信するカウンタシャフトスピードセンサ100と、自動二輪車の車速信号VSを発信する車速センサ101と、自動二輪車の運転者が操作するスロットルグリップの開度信号TPSを発信するスロットルポジションセンサ102と、電子制御スロットルの開度信号APSを発信するアクセルポジションセンサ103と、トランスミッション機構51のギアポジション信号GPSを発信するシフトカムポジションセンサ104と、燃料噴射システムに必要なその他各種の信号ETCを発信するエンジン運転状態検知用センサ類105(冷却水温度センサ、吸気温度センサ、油温センサ、O
2センサ等)と、が接続されている。
【0055】
TCU36は、シフトレバー86(
図14参照)の回動操作に伴いシフトレバー回動角センサ90から送信されるシフト検出信号SUまたはSDを受信すると、各センサ類74,80,90,100〜105から送信される各種の信号CP,SP,CS,VS,TPS,APS,GPS,ETCを参照しながらエンジンユニット14の出力を制御するとともに、クラッチアクチュエータ53とシフトチェンジアクチュエータ54とのAMTアクチュエータを制御して変速を実行する。
【0056】
この時、TCU36は、シフト検出信号SU,SDを受信してから、シフトレバー86が回動終点位置86UP,86DOWNまで回動するまでの間に、クラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54を制御して変速を完了させる。
【0057】
即ち、TCU36は、シフト検出信号SU,SDを受信すると同時に、クラッチアクチュエータ53を作動させてクラッチ機構52の接続を解除し、次にシフトチェンジアクチュエータ54を作動させてトランスミッション機構51のシフトカム65(
図10参照)を回動させ、変速を行わせた後、再度クラッチアクチュエータ53を作動させてクラッチ機構52を接続する。
【0058】
TCU36は、シフトチェンジアクチュエータ54を作動させて変速を行う際に、各種のセンサの入力信号からエンジンユニット14の運転状況を判断し、例えばシフトアップ時にはエンジンコントロールユニット97の、例えばイグニッションコントローラを制御して点火カット(間引き点火)や点火時期の遅角化等を行い、シフトダウン時には電子制御スロットルコントローラ98を制御してブリッピング(空吹かし)を行う。これらにより、ドライブギア62とドリブンギア63とに設けられた変速用ドッグ67に加わる荷重が抜かれ(
図10参照)、変速がスムーズに行われて変速に要する時間が短縮される。
【0059】
また、TCU36は、変速が完了してクラッチ機構52を接続させる時に、各種のセンサの入力信号に基づいて、クラッチ機構52の接続に伴う変速ショックが大きいか否かを判定し、変速ショックが大きい状況である場合には、クラッチアクチュエータ53を制御してクラッチ機構52の接続をゆっくり行い、半クラッチ状態を長くすることによって変速ショックを低減させる。
【0060】
[エンジン始動、エンジン走行、エンジン駆動による発電およびEV走行]
ハイブリッド二輪車10は、
図9に示すように、EV走行用モータ43のモータ駆動により、モータ軸43aは減速機構93を介してトランスミッション機構51を構成するカウンタシャフト60上に直結された1速ドライブギアに駆動力が伝えられる。EV走行用モータ43から1速ドライブギア94に伝達されるモータ駆動力(トルク)は、ギアポジションがN(ニュートラル)ポジション以外の状態でトランスミッション機構51に伝達される。トランスミッション機構51はシフトドッグ67が備えられており、ドッグを有するミッションギア構造がEV走行用モータ43からクラッチの役割を果す。このため、EV走行用モータ43のモータ作動によるEV走行とエンジン駆動に伴うエンジン走行との切替をトランスミッション機構(T/M)のギアドッグ嵌合およびクラッチ機構52の作動によって切替が可能となる。
【0061】
ハイブリッド二輪車10は、並列多気筒エンジンのエンジン駆動によるエンジン走行(
図8参照)の他に、EV走行用モータ43のモータ駆動によるEV走行(
図9参照)、モータ発電およびエンジン始動が可能となる。
【0062】
[モータ発電する場合]
クラッチ機構52が繋がっている(結合される)状態で並列多気筒エンジン(エンジンユニット14)が駆動されると、
図8に示すように、エンジン駆動力は、クラッチ機構52を介してカウンタシャフト60が回転され、トランスミッション機構51を介して後輪24に伝達され、エンジン走行が行なわれる。その際、カウンタシャフト60上の1速ドライブギア94はカウンタシャフト60と常に同じ回転数で回転される。したがって、エンジン駆動に伴うエンジン回転によりEV走行用モータ43のモータ軸43aは常に回転駆動され、EV走行用モータ43によるモータ発電が常に可能となる。モータ発電によりEV走行用モータ43は発電機の役割を果し、EVアシストモータとして機能する。
【0063】
また、エンジン駆動に伴ってEV走行用モータ43であるEVモータはモータ発電が行なわれるため、副次的効果として、エンジンユニット14のクランクシャフト50上に設けられた発電用マグネット108(
図8参照)は小さくてもよく、また廃止することができる。
【0064】
[EV走行する場合]
EV走行は駆動モータ43のモータ駆動により、基本的には、発電する場合と同様、常に可能である。EV走行用モータである駆動モータ43がモータ駆動すると、モータ駆動力(駆動トルク)は、
図9に示すように、減速機構93を介してアイドルギア93aからカウンタシャフト60上のドライブギア94、例えば1速ドライブギアに伝達され、続いてトランスミッション機構51によりドライブシャフト61上のドリブンギア63に伝えられ、さらに、チェーン・スプロケット機構92を経て伝達され、後輪24を駆動し、EV走行させる。
【0065】
EV走行の場合、エンジン走行の場合と同様、トランスミッション機構51はカウンタシャフト60上の各ドライブギア62とドライブシャフト61上の各ドリブンギア63とは、選択的に組み合されて変速操作される。EV走行の場合もエンジン走行の場合も、トランスミッション機構51やチェーン・スプロケット機構92の動力伝達機構を共通に用いることができ、駆動モータ43の消費電力、効率化を図ることができる。
【0066】
[エンジン始動]
エンジン始動は、ハイブリッド二輪車10の右側操向ハンドル19の基部に設けられたスタータスイッチ110(
図19参照)をON操作することにより行なうことができる。スタータスイッチ110をON操作し、クラッチ機構52を継いだ(結合させたON)状態でEV走行用モータ43をモータ駆動させると、カウンタシャフト軸60の回転が、クラッチ機構52を介してクランクシャフト50に伝達され、クランクシャフト50を回転させることができ、エンジンクランクを回転駆動させてエンジンを始動させる。クラッチ機構52を繋いでいる状態であれば、カウンタシャフト軸60を回転させれば、クランクシャフト50を回転させることができ、エンジンを始動させることができるので、全てのギアポジションにてエンジン始動が可能となる。N(ニュートラル)ポジションであれば、車両停止状態でエンジン始動が可能となる。
【0067】
一方、ハイブリッド二輪車10の右側操向ハンドル19の基部には、
図19に示すアクセルグリップセンサ109の他に、スタータスイッチ110、走行モード切替スイッチ111およびキルスイッチ112が設けられる。切替スイッチ111はモータ駆動力によるEV走行とエンジン駆動によるエンジン走行とを切り替えるものである。
【0068】
切替スイッチ111を矢印A方向にON操作させると、駆動モータ43がモータ駆動され、モータ駆動力は、
図9に示すように、減速機構93、トランスミッション機構51、チェーン・スプロケット機構92を経て後輪24に伝達され、後輪24を走行駆動させる(EV走行)。
【0069】
このEV走行時に、クラッチ機構52を繋ぐと、EVモータである駆動モータ43のモータ駆動力はクランクシャフト50にも伝達され、クランクシャフト50を回転させる。クランクシャフト50の回転により、発電用マグネット108(
図8参照)が回転して発電し、発生した電力をバッテリ32に充電している。
【0070】
また、切替スイッチ111を矢印B方向に切り替えると、ハイブリッド二輪車10はEV走行からエンジン走行に切り替わる。エンジン走行では、
図8に示すように並列多気筒エンジン(エンジンユニット14)のエンジン駆動により、エンジン駆動力は、プライマリドライブギア71からプライマリドリブンギア70、クラッチ機構52を経てカウンタシャフト60に伝達され、続いてカウンタシャフト60からトランスミッション機構51、チェーン・スプロケット機構92を経て後輪24に伝えられ、後輪24を駆動させる(エンジン走行)。
【0071】
さらに、エンジン走行時には、トランスミッション機構51のカウンタシャフト60が常に回転しているので、エンジン駆動力が1速ドライブギア94から減速機構93を経てモータ軸43aに伝達され、EV走行用モータ43は常時回転してモータ発電される。EV走行用モータ43が交流モータの場合は発生した交流の電力はインバータ33(
図1参照)で直流に変換されてバッテリ32に充電される。
【0072】
[TCUによるAMTの制御例]
エンジンユニット14が始動した時点でエンジン走行の制御が開始され、まずでシフトレバー回動角センサ(または荷重センサ)90からシフト検出信号SUまたはSDの受信があったか否かが判定される。シフト検出信号SUまたはSUを受信すると、クラッチアクチュエータ53が操作されてクラッチ機構52の接続が遮断される。
【0073】
次に、変速用ドッグ67に加わる荷重が許容値以下であるか否かが判定される。この判定は、カウンタシャフトスピードセンサ100や、車速センサ101、油温センサ(非図示)、変速用ドッグ荷重マップ等のデータを参照して行われる。そして、判定結果が許容値以下であれば、シフトチェンジアクチュエータ54が操作されてシフトチェンジが実行される。
【0074】
次に、クラッチ機構52の接続に際して変速ショックが大きいか否かが判定される。この変速ショックが大きいか否かの判定は、ギアポジション、エンジン回転数、車速等のデータを参照して行われる。この判定結果から、変速ショックが大きいと判断される場合には、半クラッチを使用してクラッチ機構52をゆっくり接続して変速ショックを吸収する。
【0075】
また、変速ショックの判定結果から変速ショックが小さいと判断される場合には、半クラッチを使用せずにクラッチ機構52を素早く接続する。これでシフトチェンジが完了し、制御が元に戻る。
【0076】
一方、変速用ドッグ67(
図10参照)に加わる荷重が許容値を超える場合には、シフトアップかシフトダウンかが判断される。ここでは、シフト検出信号SUが受信されていればシフトアップ、シフト検出信号SDが受信されていればシフトダウンと判定される。
【0077】
変速用ドッグ67に加わる荷重が許容値以上でシフトアップの場合は、エンジントルクを低減させながらシフトアップが行われる。エンジントルクを低減させる方法としては、点火カット(間引き点火)や点火時期の遅角化が行われる。このようにシフトアップ時にエンジントルクを低減させることにより、変速用ドッグ67に加わる荷重を減らし、変速用ドッグ67が噛み合う時間を短縮して素早いシフトアップが可能になる。
【0078】
また、シフトダウンの場合は、電子制御スロットルコントローラ98を制御してエンジンユニット14をブリッピングさせてからシフトダウンされる。このようにシフトダウン時にエンジンを空吹かしさせることにより、トランスミッション機構51のドライブギア62とドリブンギア63の回転を合わせて変速用ドッグ67が噛み合うまでの時間を短縮し、素早いシフトダウンが可能になる。
【0079】
シフトアップが行われた後、あるいはシフトダウンが行われた後は、クラッチ機構52の接続に際して変速ショックの大きさにより半クラッチの使用あるいは不使用のルーティンが実行されてシフトチェンジが完了し、制御が元に戻る。
【0080】
以上説明したように、このAMT44は、シフトレバー86の回動操作が開始されたことを検出してシフト検出信号SU,SDを発信するシフトレバー回動角センサ90(シフトレバー回動検出部)を設け、AMT44を制御するTCU36に上記シフト検出信号SU,SDを受信させてクラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54を制御させて変速を行うものである。
【0081】
このため、シフトレバー86の回動操作が開始されるのとほぼ同時にシフトレバー回動角センサ90からシフト検出信号SU,SDが発信され、このシフト検出信号SU,SDを受信したTCU36がクラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54を作動させて変速を行うため、シフトレバー86を操作してから変速が開始されるまでのタイムラグが短縮され、マニュアルトランスミッションと同様なスポーティーな操縦感を得ることができる。
【0082】
また、シフトレバー回動角センサ90がシフト検出信号SU,SDを発信するのは、シフトレバー86が、その回動開始位置Nと回動終点位置86UP,86DOWNとの間に設けられた回動検出位置PU,PDを通過した時とされるとともに、TCU36はシフト検出信号SU,SDを受信してからシフトレバー86が回動終点位置86UP,86DOWNまで回動するまでの間に、クラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54を制御して変速を完了させるようになっている。
【0083】
上記構成によれば、AMT44は、シフトレバー86が回動開始位置Nから回動検出位置PU,PDを経て回動終点位置86UP,86DOWNまで回動するまでの間に変速が完了するため、シフトレバー86の操作開始から変速完了までの時間を大幅に短縮し、マニュアルトランスミッション(MT)に匹敵、もしくはそれを凌ぐシフトレスポンスを得ることができる。
【0084】
本実施形態のハイブリッド二輪車10においては、エンジン回転に伴いエンジンクランク(クランクシャフト50)で駆動されるプライマリドリブンギア70の駆動力をEV走行用モータ43でアシストすることができる。EV走行用モータ43は、車両のクラッチ室(クラッチ機構52)側にオフセットして配置され、プライマリドリブンギア70の駆動力をアシストする電動アシストモータとして機能する。AMTアクチュエータを構成するクラッチアクチュエータ53およびシフトチェンジアクチュエータ54は、ドライブスプロケットカバー55上に配置されており(
図7、
図12、
図13参照)、AMTアクチュエータ53,54は、エンジンケース40上でクラッチ室側にオフセットして配置されたEV走行用モータ(駆動モータ)43と干渉しないように設けられる。
【0085】
したがって、シングルクラッチ式AMT44で変速を行なう際に発生する駆動力低下(例えば、AMT44の変速時にクラッチ機構52を切る際の駆動トルク低下によるスピードダウンや変速時間が長くなるデメリット)を電動アシストモータとしての駆動モータ43でアシストして補うことができ、ハイブリッド二輪車10に減速G(重力)を発生させるのを防ぐことができるメリットがある。
【0086】
また、AMT制御で困難な発進時のトルク制御も、電動アシストモータである駆動モータ43でアシストすることによって半クラッチ制御等が不要となり、発進時のトルク制御が容易になる。
【0087】
さらに、ハイブリッド二輪車10は、
図8および
図9に示すように、プライマリドリブンギア70とEV走行用モータ43との間にアイドルギア93aが介在されているため、EV走行用モータ43の回転方向はクランクシャフト(エンジンクランク)50および駆動輪(後輪24)の回転と反対方向となり、ジャイロ効果を打ち消す効果がある。このため、車両のコーナリング性能の向上を図ることができる。
【0088】
なお、本実施形態の説明については、ハイブリッド二輪車の車両について説明したが、同様なAMT構造を持つ4輪車両に適用することもできる。