(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
[管状体]
本実施形態に係る管状体は、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを含有する。前記カーボンブラックは、120℃15分加熱して水分を揮発させた後20℃/分の速度で360℃まで昇温した際の、120℃15分加熱後の質量(120℃質量)と360℃まで昇温した後の質量(360℃質量)から下記式により求められる揮発分率が0.2質量%以上0.45質量%以下である。また、前記カーボンブラックは、平均一次粒径が15nm以上である。
式:(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100
【0025】
従来から、カーボンブラックを添加した熱可塑性樹脂によって管状体を作製する際に、加熱によってガスが発生し、このガスの破裂に伴って表面に荒れが生じることがあった。例えば押出成型法によって管状体を作製する場合であれば、上記の荒れはスジ状の欠陥として発生していた。尚、この表面の荒れは、管状体の作製の際にかけられる温度が高温であるほど顕著となる傾向にある。
また一方で、カーボンブラックは熱可塑性樹脂を含む管状体に対して導電性を付与する目的で添加されるが、この管状体が画像形成装置における中間転写ベルトのような、放電が繰り返して発生する態様に用いられた場合に、放電が繰り返される内に表面抵抗率が低下することがあった。
【0026】
これに対し本実施形態では、カーボンブラックの揮発分率に着目した。但し、揮発分率として、120℃15分加熱して水分を揮発させた後の質量(120℃質量)と、更にその後20℃/分の速度で360℃まで昇温した後の質量(360℃質量)との差から求められる揮発分率(以下単に「360℃揮発分率」と称す)に着目した。つまり、本実施形態で規定される上記の360℃揮発分率は、カーボンブラック中に含まれる水分に由来するものではなく、120℃にて水分を揮発させた後更に高温の状況で発生する揮発分に由来するものである。具体的にはカーボンブラックの表面に存在する官能基(例えばOH基やCOOH基等)の分解に起因する揮発分であると考えられる。
【0027】
上記に規定されるカーボンブラックの360℃揮発分率が上記の範囲であることにより、管状体の表面における荒れが抑制され、且つ管状体における表面抵抗率の低下が抑制される。これは、必ずしも明確ではないものの、以下のごとく推察される。
即ち、360℃揮発分率が上記上限値以下であることにより、管状体を作製する際に加えられる熱によって生じるガスの量が抑制され、管状体の表面における荒れの発生が抑制される。よって、押出成型法により管状体を作製する場合であればスジ状の欠陥の発生が抑制される。
一方、360℃揮発分率が上記下限値以上であることは、カーボンブラックの表面に存在するOH基やCOOH基等の官能基がある程度の量保持されていることを表すものと考えられる。カーボンブラックがその表面に上記の官能基を備えることで、熱可塑性樹脂への馴染み性が得られ、分散性が良好になることによってカーボンブラックの凝集の発生が抑制されるものと思われる。尚、カーボンブラックの凝集が生じている管状体を、画像形成装置における中間転写ベルトのような放電が繰り返して発生する態様に用いた場合、その放電が前記のカーボンブラックが凝集している箇所に集中するものと考えられる。つまり、凝集によって管状体における導電点が低密度になり、管状体表面の受ける放電エネルギーが集中し易くなるものと考えられる。放電の集中によって管状体では劣化が生じ、結果として表面抵抗率が低下するものと思料される。しかし、本実施形態では上記の通りカーボンブラックの凝集が抑制されており、そのため放電の集中も低減され、表面抵抗率の低下の発生が抑制されるものと考えられる。
【0028】
−揮発分率の測定−
まず、熱重量分析器(島津製作所製、DTG−60)を用い、カーボンブラックを窒素雰囲気下で120℃15分加熱して水分を揮発させる。その後、20℃/分の速度で360℃まで昇温し、120℃15分加熱後の質量(120℃質量)と360℃まで昇温した後の質量(360℃質量)を測定し、式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」により、カーボンブラックの揮発分率(質量%)が求められる。
【0029】
尚、測定の際の到達温度を360℃とするのは、OH基やCOOH基等の官能基の分解による揮発分が、360℃を超えた温度ではそれほど増加しないことを根拠としている。
【0030】
次いで、本実施形態に係る管状体を構成する構成材料や、管状体の特性等について説明する。
【0031】
本実施形態に係る管状体は、熱可塑性樹脂と特定のカーボンブラックとを含有し、その他の添加剤を含んでもよい。また、熱可塑性樹脂と特定のカーボンブラックを含有する層を有していればよく、該層とその他の層とを積層した積層体であってもよい。
【0032】
−カーボンブラック−
本実施形態では、カーボンブラックとして、120℃15分加熱して水分を揮発させた後20℃/分の速度で360℃まで昇温した際の、120℃15分加熱後の質量(120℃質量)と360℃まで昇温した後の質量(360℃質量)から下記式により求められる揮発分率(360℃揮発分率)が0.2質量%以上0.45質量%以下であり、且つ平均一次粒径が15nm以上であるものを用いる。
式:(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100
【0033】
尚、上記の360℃揮発分率はカーボンブラックの表面に存在する官能基(例えばOH基やCOOH基等)の分解に起因しているものと考えられる。そのため、特に制限されるものではないが、360℃揮発分率を上記範囲に制御する方法として、カーボンブラックにおける表面の官能基の量を調整する方法が挙げられる。
カーボンブラックにおける表面のOH基やCOOH基等の官能基の量の調整は、例えば特開平11−349849号公報(特に〔0011〜0014〕段落)、特開2002−012792号公報(特に〔0030〕段落、硝酸を用いたカーボンブラック表面の酸化度の変化方法)、特開平11−181324号公報(特に〔0012〜0013〕段落、オゾンを用いた表面酸化方法)等の記載を参考して行われる。
【0034】
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、表面が酸化されたカーボンブラック(表面酸化処理カーボンブラック)、表面が黒鉛化された黒鉛化処理カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、これらの中から1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
尚、表面酸化処理カーボンブラックは、その表面に例えばカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、ヒドロキシル基等を付与して得られる。前記表面処理の方法としては、例えば、高温雰囲気下で空気と接触して反応させる空気酸化法、常温(例えば22℃)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、高温雰囲気下での空気酸化後低温でオゾンを参加する方法等が挙げられる。表面酸化処理カーボンブラックを用いる場合には、処理する官能基の量を調整することも、360℃揮発分率を前述の範囲に制御するための重要な要因となる。
【0035】
カーボンブラックの平均一次粒径は15nm以上である。また、25nm以下が好ましく、更には20nm以下がより好ましい。
平均一次粒径が上記下限値未満であると、カーボンブラックの良好な分散性が得られず、その結果画像形成装置における中間転写ベルトのような放電が繰り返して発生する態様に用いられた場合に、放電の繰り返しによる表面抵抗率の低下が発生する。
また、平均一次粒径が上記上限値以下であることにより、揮発分率の制御がより容易に行える。
【0036】
カーボンブラックの平均一次粒径は、次の方法により測定される。まず、管状体をミクロトームにより切断して100nmの厚さの測定サンプルを採取し、該測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。カーボンブラックの粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径を粒径とし、その平均値を平均一次粒径とする。
【0037】
カーボンブラックの配合量は、例えば熱可塑性樹脂100質量部に対して8質量部以上30質量部以下であることが好ましく、更には10質量部以上25質量部以下がより好ましい。
カーボンブラックの配合量が上記上限値以下であると、カーボンブラックの良好な分散性が得られ、その結果画像形成装置における中間転写ベルトのような放電が繰り返して発生する態様に用いられた場合であっても、放電の繰り返しによる表面抵抗率の低下が抑制される。一方、上記下限値以上であると、目的とする導電性を得られ易くなる。
【0038】
また、本実施形態にかかる管状体には、カーボンブラック以外の導電剤を併用してもよい。但し、含有される導電剤中においてカーボンブラックが占める割合が80質量%以上であることが好ましく、導電剤としてカーボンブラックのみを含有することが更に好ましい。
【0039】
導電剤としては、例えば、アルミニウム、ニッケル等の金属;酸化イットリウム、酸化スズ等の金属酸化物;チタン酸カリウム、塩化カリウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等の導電性高分子等が挙げられる。
尚、導電剤とは、添加することで本実施形態に係る管状体に目的とする導電性を付与し得る物質を指す。
【0040】
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく管状体に用いられる一般的な熱可塑性樹脂を用い得る。例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリサルホン(PSF)、半芳香族ポリアミド樹脂10T(PA10T)、半芳香族ポリアミド11T(PA11T)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、上記のものを1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0041】
尚、管状体を作製する際に発生するガスに起因する表面の荒れは、管状体の作製の際にかけられる温度が高温であるほど顕著となる傾向にある。そのため、熱可塑性樹脂として溶融温度が高い樹脂を用いるほど、管状体の作製の際にかけるべき温度も高くなることから、表面の荒れの発生が顕著となる。
従って、熱可塑性樹脂として溶融温度が高い樹脂を用いるほど、360℃揮発分率が前述の範囲であるカーボンブラックを用いることにより表面荒れの抑制効果も、より顕著となる。
【0042】
上記の観点から、熱可塑性樹脂としては、溶融加工温度が250℃以上のものが好ましく、300℃以上がより好ましい。
但し、加工時の樹脂分解起因の異物不良との観点から熱可塑性樹脂における溶融温度の上限は400℃以下のものが好ましく、380℃以下がより好ましく、350℃以下が更に好ましい。
【0043】
尚、上記溶融加工温度とは、熱可塑性樹脂の粘度が5cm
3/10min以上25cm
3/10min以下になる温度を表し、下記の方法によって測定される。
つまり上記溶融加工温度は、事前に110℃から160℃で乾燥した樹脂を、定められた温度に設定したメルトインデクサ―(東洋精機製、F−F01)のバレル内に詰め完全溶融させた後、5kgの荷重で押したときの樹脂の流動性指標メルトボリュームレート(MVR)を求めることにより測定される。
【0044】
前述した熱可塑性樹脂の中でも、上記溶融加工温度の観点からポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、およびポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)から選択される少なくとも1種類を含むことがより好ましく、熱可塑性樹脂としてPPS、PEI、PEEK以外の樹脂を含まないことが更に好ましい。
尚、管状体における熱可塑性樹脂としてPPS、PEIおよびPEEKを用いることは、機械強度の観点および樹脂のガラス転移温度の観点で好ましい。
【0045】
・ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)
ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、例えば、ジクロロベンゼンと硫化ナトリウムとを単量体として重合させる方法、すなわちポリフェニレンスルフィド樹脂の一般的な合成方法であるフィリップス・ぺトローリアム法で得られる下記式(1)で表される繰り返し構造単位を含む重合体が挙げられる。
【0047】
未架橋のポリフェニレンスルフィド樹脂は、架橋されていない一次元の分子鎖を有する樹脂であり、靭性および伸縮性に優れた樹脂である。
また、ポリフェニレンスルフィド樹脂として架橋構造を有する樹脂を用いてもよく、具体的には、同一の分子鎖内または異なる分子鎖間、並びに同一の分子鎖内および異なる分子鎖間に、例えば、単結合、エーテル結合を介して架橋されているポリフェニレンスルフィド樹脂の架橋構造が挙げられる。例えば、エーテル結合で架橋したポリフェニレンスルフィド樹脂の架橋構造(下記式(2)の構造)や、単結合で架橋したポリフェニレンスルフィド樹脂の架橋構造(下記式(3)の構造)を有する物が挙げられる。
【0050】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の市販品としては、例えば、東レ社のT1881−3、DIC社のFZ2100、ポリプラスチック社のフォートロン0220A等が挙げられる。
【0051】
・ポリエーテルイミド樹脂(PEI)
ポリエーテルイミド樹脂は、例えば、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有する樹脂であり、溶融成形性に優れる。
具体例としては、芳香族ビス(エーテルジカルボン)酸と有機ジアミンとを有機溶媒中で加熱温度下に反応させて得られるものが挙げられ、例えば2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンを混合し、フェノール−トルエン混合溶媒に加えて加熱還流させ、反応を通じて生成された水を共沸蒸留によって連続的に除去し、反応生成混合物をメタノール中に注入し、繊維状重合体として得られる重合体が挙げられる。
【0052】
ポリエーテルイミド樹脂の市販品としては、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社のウルテム(ULTEM)1000シリーズ、5000シリーズ、エクステム(EXTEM)VH1003等が挙げられる。
【0053】
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)
ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、ベンゼン環がエーテル結合とケトン結合によってつながった樹脂である。例えば、ヒドロキノンと、フッ素を置換体として両端に結合させたベンゾフェノンを求核置換反応で結合させることで得られる。また、ベンゾフェノンと、両端に求電子剤(塩素等)を結合させたケトン基を持つベンゼン環を、塩化アルミニウムなどを触媒として、フリーデル・クラフツ反応で結合させることでも得られる。
【0054】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の市販品としては、例えば、ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン社のketaspire KT−820、ダイセルエボニック社のVETAKEEP等が挙げられる。
【0055】
−その他添加剤−
その他添加剤としては、例えば、管状体の熱劣化を防止するための酸化防止剤や、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等、特に画像形成装置の無端ベルトに配合される周知の添加剤が挙げられる。
【0056】
−物性−
次に、本実施形態に係る管状体の物性について説明する。
本実施形態に係る管状体は、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で、電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率が7logΩ/□以上13Ω/□以下であることがよく、特に、管状体を中間転写ベルトとして適用する場合には8logΩ/□以上12logΩ/□以下であることがよく、管状体を記録媒体搬送転写ベルトとして適用する場合には9logΩ/□以上13logΩ/□以下であることがよい。
なお、上記表面抵抗率は、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で、電圧100Vを印加して測定したときの測定値である。
【0057】
本実施形態に係る管状体は、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で電圧1000Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、の差が1.0logΩ/□以下であることがよい。
本実施形態に係る管状体は、低温低湿(温度10℃、湿度10RH%)環境下で電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、高温高湿(温度30℃、湿度85RH%)環境下で電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、の差が1.0logΩ/□以下であることがよい。
【0058】
ここで、表面抵抗率は、JIS−K−6911(1995年)に準じて、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、測定対象物を絶縁板の上に置き、目的とする環境下で、目的とする電圧を印加し、印加後5sec後の外径から内径に流れる電流値をアドバンテスト製、微小電流計 R8340Aを用いることにより測定し、その電流値より得た表面抵抗値から求められる。
【0059】
−製造方法−
本実施形態に係る管状体は、熱可塑性樹脂と、120℃15分加熱して水分を揮発させた後20℃/分の速度で360℃まで昇温した際の、120℃15分加熱後の質量(120℃質量)と360℃まで昇温した後の質量(360℃質量)から下記式により求められる揮発分率が0.2質量%以上0.45質量%以下であり、平均一次粒径が15nm以上であるカーボンブラックと、を混練する混練工程と、上記混練工程にて得られた混練物を管状に成形する成形工程と、を有する製造方法によって製造される。
式:(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100
【0060】
以下、本実施形態に係る管状体の製造方法について説明する。
まず、熱可塑性樹脂と、前記要件を満たすカーボンブラックと、更に必要に応じて他の添加剤と、をそれぞれ目的とする配合量で混練混合して混練物を得、その後例えば押出成形機を用いて円筒状に押し出し、冷却固化させることで円筒状の成形体が得られる。そして、得られた円筒状の成形体を目的とする幅に切断して管状体を得る。
【0061】
本実施形態に係る管状体は、例えば、画像形成装置用のベルト(具体的には、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト)等に適用され得る。
【0062】
(管状体ユニット)
図1は、本実施形態に係る管状体ユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る管状体ユニット130は、
図1に示すように、上記本実施形態に係る管状体10を備えており、例えば、管状体10は対向して配置された駆動ロール131および従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下「張架」という場合がある)。
ここで、本実施形態に係る管状体ユニット130は、管状体10を中間転写体として適用させる場合、管状体10を張架するロールとして、感光体(像保持体)表面のトナー像を管状体10上に1次転写させるためのロールと、管状体10上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に2次転写させるためのロールが配置されていてもよい。
なお、管状体10を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。このような構成の管状体ユニット130は、装置に組み込まれて使用され、駆動ロール131、従動ロール132の回転に伴って管状体10も張架した状態で回転する。
【0063】
(画像形成装置)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、転写手段が、上記本実施形態に係る管状体を備えるものである。
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が中間転写体と、像保持体に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と、中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、を備え、当該中間転写体として上記本実施形態に係る管状体を備える構成が挙げられる。
【0064】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が記録媒体を搬送するための搬送転写体(搬送転写ベルト)と像保持体に形成されたトナー像を用紙転写体により搬送された記録媒体に転写するための転写手段とを備え、当該記録媒体転写体として上記本実施形態に係る管状体を備える構成が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0066】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。
図2は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0067】
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、例えば、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a〜101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a〜102d、露光装置114a〜114d、現像装置103a〜103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a〜105d、像保持体クリーニング装置104a〜104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a〜101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0068】
中間転写ベルト107が、支持ロール106a〜106d、駆動ロール111および対向ロール108により張力を付与しつつ支持され、管状体ユニット107bを形成している。これらの支持ロール106a〜106d、駆動ロール111および対向ロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a〜101dの表面に接触しながら各像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとを矢印Aの方向に移動し得る。一次転写ロール105a〜105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a〜101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0069】
二次転写装置として、中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の記録媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109とで挟まれる領域を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109と対向ロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112および113が配置されている。
【0070】
この構成の多色画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a〜103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0071】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b〜105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的に多色の多重トナー像が得られる。
【0072】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱および加圧、または加熱若しくは加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0073】
一次転写後の像保持体101a〜101dは、像保持体クリーニング装置104a〜104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112および113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0074】
−像保持体−
像保持体101a〜101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
【0075】
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状またはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0076】
−帯電装置−
帯電装置102a〜102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10
7Ω・cm未満を意味する。)または半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10
7乃至10
13Ωcmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が望ましい。
【0077】
帯電装置102a〜102dは、像保持体101a〜101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0078】
−露光装置−
露光装置114a〜114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a〜101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、または液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0079】
−現像装置−
現像装置103a〜103dとしては、目的に応じて選択され。例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、またはローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0080】
−一次転写ロール−
一次転写ロール105a〜105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0081】
−像保持体クリーニング装置−
像保持体クリーニング装置104a〜104dは、一次転写工程後の像保持体101a〜101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0082】
−二次転写ロール−
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10
7Ωcm以下であることが望ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0083】
−対向ロール−
対向ロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。対向ロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
【0084】
対向ロール108と二次転写ロール109のシャフトとには、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。対向ロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、対向ロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0085】
−定着装置−
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0086】
−中間転写ベルトクリーニング装置−
中間転写ベルトクリーニング装置112および113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0088】
[実施例1]
・溶融混練
熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS、T1881−3、東レ社製)100部と、導電剤としてカーボンブラック(Printex alphaj、オリオンエンジニアードカーボン社製、平均一次粒径20nm)15部を準備した。二軸押出溶融混練機(L/D60、パーカーコーポレーション社製)を用い、溶融させたPPS樹脂中にカーボンブラックを上記の量配合して溶融混練し、混練された溶融物を水槽中に入れて冷却固化、定められたサイズにカットし、カーボンブラックの配合された混合樹脂ペレットを得た。
【0089】
・管状体の成形
得られたペレットを一軸溶融押出機(L/D24、溶融押出装置、三葉製作所社製)に投入(加熱温度350℃)し、300℃(押出加工温度)に設定した金型ダイとニップルの間隙から溶融押出しさせながら、溶融樹脂の内周面に円筒状のインナーサイジングダイの外面を接触させて冷却し、その後定められた幅に切断し、平均膜厚100μmの管状体を得た。
【0090】
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.30質量%であった。
【0091】
[実施例2]
実施例1において、導電剤としてカーボンブラック(Printex L6、オリオンエンジニアードカーボン社製、平均一次粒径18nm)を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.41質量%であった。
【0092】
[実施例3]
実施例1において、熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミド樹脂(PEI、Ultem 1000V、SABICイノベーティブプラスチックス社製)を用い、押出加工温度(一軸溶融押出機における金型ダイの温度)を300℃から350℃に変更した以外は同様の手順により管状体を得た。
【0093】
[実施例4]
実施例1において、導電剤としてカーボンブラック(VulcanXC500、キャボットコーポレーション社製、平均一次粒径35nm)を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.44質量%であった。
【0094】
[比較例1]
実施例1において、カーボンブラックに替えて「デンカブラック粒状品、電気化学工業社製、平均一次粒径35nm」を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.00質量%であった。
【0095】
[比較例2]
実施例1において、カーボンブラックに替えて「#4000B、三菱化学社製、平均一次粒径24nm」を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.17質量%であった。
【0096】
[比較例3]
実施例1において、カーボンブラックに替えて「BlackPearls880、キャボット社製、平均一次粒径16nm」を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.47質量%であった。
【0097】
[比較例4]
実施例1において、カーボンブラックに替えて「Ensaco250G、TIMCAL社製、平均一次粒径40nm」を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.19質量%であった。
【0098】
[比較例5]
実施例1において、カーボンブラックに替えて「BlackPearls2000、キャボット社製、平均一次粒径12nm」を用いた以外は同様の手順により管状体を得た。
尚、カーボンブラックの式「(120℃質量−360℃質量)/120℃質量×100」から求められる揮発分率(360℃揮発分率)を、前述の方法により算出したところ、0.76質量%であった。
【0099】
−評価−
(管状体の表面状態観察)
各例で得られた管状体の外観を目視にて観察し、表面におけるスジ状の欠陥の発生度合いを、下記評価基準により評価した。
A:スジ状の欠陥なし
B:スジが発生/5cm角辺り2本以内の割合
C:多数のスジが発生/5cm角辺り3本以上の割合
【0100】
(表面抵抗率維持性)
得られた管状体を中間転写体として富士ゼロックス社製のDocuPrint CP200Wに組み込み、10℃15%RHの低温低湿環境下において、ハーフトーン(マゼンタ濃度30%)の画像をA5縦用紙に連続して3000枚出力した。この際の2次転写電圧は5.6kVとした。
この3000枚の画像出力前後における管状体の表面抵抗率を、JIS−K−6911(1995年)に準じて円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ)を用いて測定し、評価前の表面抵抗率の常用対数値と評価後の表面抵抗率の常用対数値の差を求めた。
この差を表面抵抗率維持性とする。上記表面抵抗維持性としては、0.6以下が求められ、望ましくは0.3以下である。
評価基準は以下の通りである。
A:表面抵抗率の常用対数値の差が0.3未満
B:表面抵抗率の常用対数値の差が0.3以上0.6未満
C:表面抵抗率の常用対数値の差が0.6以上
【0101】
【表1】