特許第6232928号(P6232928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232928
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電子写真感光体及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/06 20060101AFI20171113BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G03G5/06 312
   G03G5/06 313
   G03G5/05 101
   G03G5/06 342
   G03G5/06 319
   G03G5/06 314A
   G03G5/06 314B
   G03G5/06 315Z
【請求項の数】6
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-225078(P2013-225078)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-87500(P2015-87500A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年7月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 敬司
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−008670(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124713(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/115088(WO,A1)
【文献】 特開2006−152174(JP,A)
【文献】 特開2010−113336(JP,A)
【文献】 特開2011−248251(JP,A)
【文献】 特開2012−008523(JP,A)
【文献】 特開2011−248250(JP,A)
【文献】 特開平07−209883(JP,A)
【文献】 特開2012−048174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00 − 5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有した感光層を有する電子写真感光体であって、
前記正孔輸送剤が化学式(11)又は化学式(12)で表されるアミンスチルベン誘導体を含有し、かつ前記バインダー樹脂が一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂を含有する、電子写真感光体。
【化1】
【化2】
【化3】
(前記一般式(2)中、R23及びR24は水素原子である。R25はメチル基である。また、p+q=100で、p/qが60/40〜65/35である。そして、nはである。)
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、式(22)で表されるポリカ−ボネート樹脂を含有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化4】
【請求項3】
前記電荷発生剤は、式(26)で表されるPY−128を含む、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【化5】
【請求項4】
前記感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含み、
前記電荷発生層が前記電荷発生剤を含有し、
前記電荷輸送層が前記正孔輸送剤と、前記バインダー樹脂と、電子輸送剤とを含有し、
前記電子輸送剤は、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)、又は式(20)で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項5】
前記電子輸送剤の含有量が前記バインダー樹脂100質量部に対して1質量部である、請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電器と、
前記帯電器によって帯電された前記像担持体の表面を露光して前記表面に静電潜像を形成する露光器と、
前記トナー像を前記像担持体として現像する現像器と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体に転写するための転写器と、
を備える画像形成装置であって、
前記像担持体が請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真感光体である、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、及び電子写真感光体を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンターや複合機においては、像担持体として感光体が用いられている。感光体には、有機感光体、セレン感光体、アモルファスシリコン感光体などがある。そのうち、有機感光体は、環境への影響が比較的小さく、成膜が容易、製造が容易であるといったメリットを有しており、現在多くの画像形成装置に用いられている。
【0003】
一般に、有機感光体は、導電性基体と、導電性基体の上に直接もしくは間接に設けられた感光層とを備えている。当該感光層は、電荷輸送材料と、電荷発生材料と、これらの材料を結着させる結着樹脂(バインダー樹脂)とを含有している。有機感光体は、電荷輸送材料と電荷発生材料とが別々の層で形成され電荷発生と電荷輸送の両方の機能が行われる場合、積層型感光体と呼ばれ、電荷輸送材料と電荷発生材料とが同一の層で形成されている場合、単層型感光体と呼ばれる。
【0004】
単層型及び積層型の有機感光体に適用可能な電荷輸送材料であり、正孔を輸送する正孔輸送剤としては、特許文献1に開示されているアミンスチルベン誘導体が挙げられる。当該アミンスチルベン誘導体は、優れた感度特性(電気的特性)を示しており、残留電位(VL)を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−008670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感光体全体として、像担持体に必要な感度特性(電気的特性)や耐久性といった特性を発揮するためには、電荷輸送材料単独の性能のみならず、電荷発生材料や結着樹脂の特性が大きく寄与するほかに、これらの相性(各種成分の組合せにより現れた特性)も重要な因子となっている。特許文献1に開示されているアミンスチルベン誘導体を電荷輸送材料として使用する場合も、優れた感度特性(電気的特性)を維持させつつ、感光体全体の耐摩耗性を向上させることが要求されている。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、感光体全体として優れた感度特性(電気的特性)を維持しつつ、耐摩耗性を付与可能な電子写真感光体及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電子写真感光体は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを含有した感光層を有する。本発明による電子写真感光体において、正孔輸送剤が一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含有し、かつ前記バインダー樹脂が一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂を含有する。
【0009】
【化1】
ここで、一般式(1)中、R1〜R14は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基、あるいは、メチル基にて置換又は非置換のアミノ基であり、繰り返し数a〜dはそれぞれ独立した0〜4の整数である。ただし、A及びB、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、C及びD、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、A、B、C及びDのうちアリール基でないものは、水素原子である。
【0010】
【化2】
ここで、一般式(2)中、 R23〜R25は水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であるが、少なくともR23〜R25の内いずれか一つはアルキル基である。また、p+q=100で、p≧35である。そして、nは2又は3である。
【0011】
本発明による画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電させる帯電器と、前記帯電器によって帯電された前記像担持体の表面を露光して前記表面に静電潜像を形成する露光器と、前記トナー像を前記像担持体として現像する現像器と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体に転写するための転写器とを備えている。本発明による画像形成装置において、前記像担持体は上述した電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子写真感光体において、優れた感度特性(電気的特性)を維持させると共に耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における単層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態における積層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態における電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明における実施形態について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0015】
[実施形態1]
本実施形態に係る単層型又は積層型電子写真感光体(以下、「感光体」と記する)の感光層には、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とが含有されている。
【0016】
正孔輸送剤は、電荷輸送材料の一種であり、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を使用する。
【0017】
【化3】
ここで、R1〜R14は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基、あるいは、メチル基にて置換又は非置換のアミノ基であり、繰り返し数a〜dはそれぞれ独立した0〜4の整数である。ただし、A及びB、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、C及びD、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、A、B、C及びDのうちアリール基でないものは、水素原子である。
【0018】
また、バインダー樹脂は、一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂を使用する。
【0019】
【化4】
ここで、一般式(2)中、 R23〜R25は水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であるが、少なくともR23〜R25の内いずれか一つはアルキル基である。また、p+q=100で、p≧35である。そして、nは2又は3である。
【0020】
本実施形態に係る感光体は、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体と一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂とを含有するため、感光体は、感度特性(電気的特性)及び耐摩耗性に優れている。これによって、このような感光体を備えた画像形成装置は、耐久性を有し、長期にわたって高画質な画像を形成することができる。
【0021】
感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、正孔輸送剤としての一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体と、バインダー樹脂としての一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂とを感光層に含有していれば、その他は特に限定されない。
【0022】
具体的には、本実施形態に係る感光体は、例えば、図1に示すように、いわゆる単層型感光体であってもよい。単層型感光体は感光層を有し、感光層は、同一層に少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂と呼ばれる結着樹脂を含有する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態における単層型電子写真感光体10(以下「単層型感光体10」と記す。)の構造を示す概略断面図である。
【0024】
単層型感光体10は、図1(a)に示すように、導電性基体11と、導電性基体11上に設けられた感光層12とを備える。感光層12は、同一層に電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。
【0025】
なお、単層型感光体10は、導電性基体11と、感光層12とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図1(a)に示すように、導電性基体11上に感光層12が直接設けられてもよいし、図1(b)に示すように、導電性基体11と感光層12との間に下引き層13が設けられてもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る感光体は、図2に示すように、いわゆる積層型感光体であってもよい。積層型感光体は感光層を有し、感光層は、少なくとも電荷発生剤及びベース樹脂と呼ばれる結着樹脂を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤及び前述の単層感光体に用いる結着樹脂と同様、バインダー樹脂を含有する電荷輸送層とが少なくとも積層している。
【0027】
図2は、本発明の実施形態における積層型電子写真感光体20(以下「積層型感光体20」と記す。)の構造を示す概略断面図である。
【0028】
積層型感光体20は、図2(a)に示すように、導電性基体21と、導電性基体21上に設けられた感光層22とを備えている。さらに、感光層22は、電荷発生層22aと電荷輸送層22bとを含み、電荷発生層22a及び電荷輸送層22bが積層されている。電荷発生層22aは、電荷発生剤及びベース樹脂を含有する。電荷輸送層22bは、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を含有する。
【0029】
また、積層型感光体20は、導電性基体21と、感光層22とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、積層型感光体20は、図2(a)に示すように、導電性基体21上に、電荷発生層22a及び電荷輸送層22bの順で積層したものであってもよい。あるいは、ここで図示していないが、積層型感光体20は、導電性基体21上に、電荷輸送層22b及び電荷発生層22aの順に積層したものであってもよい。また、導電性基体21上に感光層22が直接設けられてもよいし、図2(b)に示すように、導電性基体21と感光層22との間に下引き層23が設けられてもよい。もしくは、ここで図示していないが、積層型感光体20には、電荷輸送層22bと電荷発生層22aとの間に中間層が設けられてもよい。
【0030】
本実施形態に係る感光体においては、単層型感光体であっても積層型感光体であっても、一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂が、前述のバインダー樹脂に含有されている。また、本実施形態における感光体は、感光層の表面側に保護層をさらに備えてもよい。ただし、画像流れの発生を防止するため及び製造コストを抑制するために、本実施形態に係る感光体は感光層を最外層に配置することが好ましい。
【0031】
以下、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る感光体の各構成部分について詳細に説明する。
【0032】
[導電性基体]
本実施形態において、導電性基体11、21は、少なくとも表面部が導電性を有するものであれば、特に限定されない。導電性基体11、21は、例えば、導電性を有する材料から構成されるものであってもよいし、プラスチック材料又はガラスの表面を、導電性を有する材料で被覆や蒸着したものであってもよい。ここで、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮のような金属、又はそれらの合金が挙げられる。これら導電性を有する材料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。例示した導電性基体のうち、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いることが好ましく、この場合、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層12、22から導電性基体11、21への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
【0033】
導電性基体11、21の形状は、特に限定されない。例えば、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよい。
【0034】
また、導電性基体11、21は、使用に際して、十分な機械的強度を有することが望ましい。
【0035】
[感光層]
図1を参照して説明したように、単層型感光体10は、感光層12を備える。感光層12は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを同一層に含有する。また、図2を参照して説明したように、積層型感光体20は感光層22を備える。感光層22は、電荷発生剤を含む電荷発生層22aと、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層22bとを有する。
【0036】
また、単層型感光体10及び積層型感光体20のいずれにおいても、必要に応じて、電子輸送剤、添加剤を感光層に含有させてもよい。
【0037】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンの無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。
【0038】
また、電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、上述した各電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、半導体レーザーの光源を使用したレーザービームプリンターやファクシミリのデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)又はY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。
【0039】
また、画像形成装置が350nm以上550nm以下の短波長レーザー光源を備える場合には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、又はペリレン系顔料が好適に用いられる。
【0040】
上述した電荷発生剤のうち、具体的に、一般式(3)〜(6)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−1〜CGM−4)を使用することがより好ましい。
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含む。
【化9】
【0046】
ここで、R1〜R14は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基、あるいは、メチル基にて置換又は非置換のアミノ基であり、繰り返し数a〜dはそれぞれ独立した0〜4の整数である。ただし、A及びB、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、C及びD、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、A、B、C及びDのうちアリール基でないものは、水素原子である。
【0047】
一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体は、分子末端のフェニルアミノ基におけるフェニルのオルト位、メタ位、あるいはパラ位に、所定のエテニル基及び所定の置換基を導入することにより、立体障害が生じるため、結晶化しにくく、バインダー樹脂への相溶性及び溶剤への溶解性を向上させることができる。
【0048】
したがって、このようなアミンスチルベン誘導体を、本実施形態に係る感光体において正孔輸送剤として使用することにより、かかるアミンスチルベン誘導体を感光層中に均一に分散することができ、優れた感度特性及び耐久性を有する感光体を提供することができる。
【0049】
なお、分子末端のフェニルアミノ基におけるフェニルのオルト位及びメタ位に所定のエテニル基を有するアミンスチルベン誘導体であれば、ヨウ化ベンゼン誘導体等との反応を介して、より製造しやすいという利点もある。
【0050】
また、本発明に係る正孔輸送剤、一般式(1’)で表されるアミンスチルベン誘導体を含んでもよい。これによって、感度特性および耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
【0051】
【化10】
ここで、前記一般式(1’)中、A〜D、R1〜R14および繰り返し数a〜dは、前記一般式(1)の内容と同様である。
【0052】
すなわち、一般式(1’)で表されるアミンスチルベン誘導体は、分子末端のフェニルアミノ基におけるフェニルのパラ位に、所定のエテニル基および所定の置換基を導入することにより、立体障害が生じるため、バインダー樹脂への相溶性および溶剤への溶解性を向上させることができる。
【0053】
また、分子末端のフェニルアミノ基におけるフェニルのパラ位に所定のエテニル基を有する化合物であれば、ホルミル化等の反応を介して、より製造しやすいという利点もある。
【0054】
より具体的には、本発明のアミンスチルベン誘導体によれば、一般式(1)及び一般式(1’)中のR2、R6、R9及びR13が炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基であることにより、バインダー樹脂への相溶性、及び溶剤に対する溶解性をさらに向上させることができ、電荷移動度を高めるとともに、バインダー樹脂中での結晶化をより効果的に防ぐことができる。
【0055】
したがって、このような置換基を有するアミンスチルベン誘導体を、電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、さらに優れた感度特性及び耐久性を有する感光体を提供することができる。また、このような置換基であれば、導入が比較的容易であるため、所定のアミンスチルベン誘導体を比較的高い収率で生産することができる。
【0056】
また、本発明のアミンスチルベン誘導体によれば、一般式(1)及び一般式(1’)中のA及びB、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、C及びD、あるいはいずれか一方が、メチル基にて置換又は非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、A、B、C及びDのうちアリール基でないものは、水素原子であることにより、分子内共役が広がり、電荷移動度を高めることができる。
【0057】
したがって、このようなアミンスチルベン誘導体を電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のアミンスチルベン誘導体を比較的高い収率で生産することができる。
【0058】
上述した一般式(1)で示されるアミンスチルベン誘導体のうち、具体的に、一般式(7)〜(12)で示されるHTM−1〜HTM−6を使用することがより好ましい。
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】
【化15】
【0064】
【化16】
【0065】
(電子輸送剤)
電荷輸送剤として、正孔輸送剤のほかに、必要に応じて、感光層に電子輸送剤を含有させてもよい。特に単層型感光体10においては、電子を輸送することでバイポーラーの特性を付与するために用いられる。一方、積層型感光体20の場合、電荷発生層に電子輸送剤を含有させてもよい。
【0066】
電子輸送剤としては、例えば、ナフトキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アゾキノン系化合物、ニトロアントアラキノン系化合物、ジニトロアントラキノン系化合物のキノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。これら電子輸送剤は1種を単独で又は2種以上を組合せて用いられる。
【0067】
上述した電子輸送剤のうち、具体的に、一般式(13)〜(20)で示されるETM−1〜ETM−8を使用することがより好ましい。
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
【化21】
【0073】
【化22】
【0074】
【化23】
【0075】
【化24】
【0076】
(結着樹脂)
感光体に用いる結着樹脂としては、前述のように単層型感光体10の感光層12、又は積層型感光体20の電荷輸送層22bに用いるバインダー樹脂と、積層型感光体20の電荷発生層22aに用いる場合の電荷発生層用ベース樹脂とが挙げられる。
【0077】
バインダー樹脂は、上述したように単層型感光体10の感光層12もしくは積層型感光体20の電荷輸送層22bに用いることができるものであり、一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂を含有している。
【0078】
電荷発生層用ベース樹脂は、上述のように積層型感光体20の電荷発生層22aに用いることができる電荷発生層用の結着樹脂であれば、特に限定されない。
【0079】
電荷発生層用ベース樹脂の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、又はウレタン−アクリレート樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラールが好適に使用される。電荷発生層に用いる電荷発生層用ベース樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂を含む。ポリカーボネート樹脂は、一般式(2−1)で表される繰返し構造単位及び一般式(2−2)で表される繰返し構造単位からなるポリカーボネート共重合体である。
【0081】
【化25】
【0082】
【化26】
【0083】
【化27】
【0084】
バインダー樹脂として、一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂によれば、p+q=100として、p≧35である場合は、感光体の耐摩耗性が向上する。また、感光体の他の特性、例えば、感度特性(電気的特性)及び機械的特性を良好にするためには、pの上限が65以下であることがより好ましい。
【0085】
また、一般式(2−1)及び一般式(2−2)で表される繰り返し単位において、好ましくは、R23〜R25のうちの少なくとも1つは、炭素数1〜4のアルキル基である。より好ましくは、R23〜R25のいずれか1つがメチル基である。
【0086】
その理由としては、R23〜R25がアルキル基で置換されることにより、非ハロゲン系溶剤に対する溶解性、及びアミンスチルベン誘導体に対する相溶性を向上させることができ、良好な感度特性(電気的特性)及び耐摩耗性を実現することに寄与することができる。
【0087】
一方、アルキル置換基の鎖長、分岐性及び数量が高まるにつれて、分子同士の絡み合いが低下し、分子のパッキング性が低下する傾向があるため、耐摩耗性に悪影響を及ぼす恐れがある。したがって、アルキル置換基の炭素数が1から4という小さい範囲であることが好ましい。
【0088】
上述したポリカーボネート樹脂において、繰り返し単位の芳香環に適切な数量、且つ適切な鎖長のアルキル基で置換されることにより、優れた感度特性(電気的特性)及び耐摩耗性を感光体に付与することができる。
【0089】
また、一般式(2−2)で示す繰り返し単位における2つのフェニレン基の間には第四級炭素があり、当該第四級炭素は、メチル基及びエチル基にて置換されているため、通常の第二級炭素の場合と比べて、相対的に繰返し構造単位自体として低極性の箇所が部分的に存在する。これにより一般式(1)で表される正孔輸送剤は、一般式(2)で表される繰返し構造単位の近傍に集まりやすくなる。その結果、ポリカーボネート樹脂とアミンスチルベン誘導体の相容性が向上することにより、膜強度が強くなり、耐摩耗性が向上する。また、電荷輸送層中の正孔輸送剤の分散性が高まって、安定した光感度を発現する感光体とすることができる。
【0090】
上述した一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含む正孔輸送剤と、一般式(2)で表されるポリカーボネートを含有させるバインダー樹脂とを組み合わせて使用することにより、両者の優れた特性を夫々維持することができると共に、一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂に対して、アミンスチルベン誘導体が良好な相溶性を示す。それにより、膜強度が向上し、耐摩耗性が向上することができる。また、電荷輸送層22bは、良好的な感度特性(電気特性)を維持する。
【0091】
バインダー樹脂(ポリカーボネート樹脂)の分子量は、粘度平均分子量で30,000以上であることが好ましく、40,000以上60,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の分子量が低すぎると、バインダー樹脂の耐摩耗性を高めるという効果を十分に発揮できず、電荷輸送層が摩耗しやすくなる傾向がある。また、バインダー樹脂の分子量が高すぎると、非ハロゲン系極性及び無極性混合溶剤に溶解しにくくなって、電荷輸送層用塗布液を調製しにくくなる等、好適な電荷輸送層を形成することが困難になる傾向がある。
【0092】
ポリカーボネートの構造は、特に限定されず、例えば、一般式(2−1)で表される繰返し構造単位と一般式(2−2)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合したランダム共重合体、両繰返し構造単位が交互に共重合した交互共重合体、1つ又は複数の一般式(2−1)で表される繰返し構造単位と1つ又は複数の一般式(2−2)で表される繰返し構造単位とが周期的に共重合した周期的共重合体、又は、複数の一般式(2−1)で表される繰返し構造単位からなるブロックと複数の一般式(2−2)で表される繰返し構造単位からなるブロックとが共重合したブロック共重合体であってよい。
【0093】
バインダー樹脂の製造方法は、上述した構造のポリカーボネート樹脂を製造することができれば、特に限定されない。これらの製造方法として、例えば、ポリカーボネート樹脂の繰返し構造単位を構成するためのジオール化合物とホスゲンとを界面縮重合させる方法、いわゆるホスゲン法や、ジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法が挙げられる。より具体的には、例えば、一般式(2−3)で表されるジオール化合物が40mol%以上となるように、一般式(2−3)で表されるジオール化合物及び一般式(2−4)で表されるジオール化合物を混合して得た混合物と、ホスゲンとを界面縮重合させる方法が挙げられる。
【0094】
【化28】
【0095】
【化29】
【0096】
なお、本実施形態におけるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂を単独で用いてもよいが、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で加えてもよい。ポリカーボネート樹脂とブレンドし得るその他の樹脂としては、例えば、具体的には、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂のような熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、又はエポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂のような光硬化性樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
(添加剤)
本実施形態における感光体は、電荷発生層、電荷輸送層、中間層及び保護層のいずれに対しても、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、又はレベリング剤が挙げられる。そして、酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン、及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物、又は有機燐化合物が挙げられる。
【0098】
また、電荷発生層の感度を向上させるために、電荷発生層には、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、又はアセナフチレンの増感剤を含有させてもよい。
【0099】
また、電荷輸送層の耐クラック性を向上させるために、電荷輸送層には、可塑剤として、例えば化学式(BP−1)〜(BP−20)で表されるビフェニル誘導体のうち、1種を単独で又は2種以上を組合せて含有させてもよい。
【0100】
【化30】
【0101】
[下引き層]
図1及び図2を参照して説明したように、本実施形態に係る感光体は、導電性基体と電荷発生層との間に下引き層を有してもよい。導電性基体と電荷発生層との間に下引き層を介在させることにより、リークの発生を抑える程度に絶縁しつつ、感光体を露光した際に円滑に電流を流して抵抗の上昇を抑えることができる。下引き層は、無機粒子及び下引き層用結着樹脂を含有してもよい。
【0102】
無機粒子として、例えば、金属(アルミニウム、鉄、又は銅)、金属酸化物(酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛)、及び非金属酸化物(シリカ)が挙げられる。これらの無機粒子は1種を単独で又は2種以上を組合せて用いられる。
【0103】
下引き層用結着樹脂としては、下引き層を形成する結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。例えば、電荷発生層の説明において例示した電荷発生層用ベース樹脂の中から、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0104】
[感光体の製造方法]
まず、図1を参照して、単層型感光体10の製造方法について説明する。
【0105】
単層型感光体10は、塗布液を導電性基体11上に塗布し、乾燥することによって製造される。この塗布液は、電荷発生剤、電荷輸送剤、バインダー樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
【0106】
単層型感光体10において、電荷発生剤、電荷輸送剤及びバインダー樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。また、電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。また、正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上500質量部以下であることが好ましく、25質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量、すなわち、電荷輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、20質量部以上500質量部以下であることが好ましく、30質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
【0107】
また、単層型感光体10の感光層12の厚さは、感光層12として十分に作用することができれば、特に限定されない。具体的には、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0108】
次に、積層型感光体20の製造方法について説明する。
【0109】
具体的には、例えば、まず、電荷発生層形成用塗布液を調製する。電荷発生層形成用塗布液は、電荷発生剤、ベース樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
【0110】
電荷輸送層形成用塗布液も必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。そして、電荷発生層形成用塗布液及び電荷輸送層形成用塗布液のいずれか一方の塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層22a及び電荷輸送層22bのいずれか一方を形成させる。その後、他方の塗布液を、導電性基体21上に形成された電荷発生層22a又は電荷輸送層22bに塗布し、乾燥した後、他方の層を形成させ、積層型感光体20を製造することができる。
【0111】
積層型感光体20において、電荷発生剤、電荷輸送剤、ベース樹脂及びバインダー樹脂の各含有量は適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、電荷発生剤の含有量は、電荷発生層22aを構成するベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
【0112】
また、電荷輸送剤の含有量は、電荷輸送層22bを構成するバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下であることが好ましく、25質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0113】
また、電荷発生層22a及び電荷輸送層22bの各層の厚さは、それぞれの層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷発生層22aの厚さは、具体的には、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。また、電荷輸送層22bの厚さは、具体的には、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0114】
また、塗布液に含有される溶剤としては、各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンのような脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルのようなエステル類、又はジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、例示した溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。感光体の製造過程における作業者の安全衛生を改善するために、非ハロゲン系溶剤を用いることが好ましい。
【0115】
以上、単層型感光体10及び積層型感光体20の製造方法について説明した。なお、単層型感光体10又は積層型感光体20のいずれにおいても、塗布液は、各成分を混合、分散することにより調製される。例えば、ビーズミル、ロールミル、ボウルミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いて調製する方法が挙げられる。
【0116】
塗布液には、各成分の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために、界面活性剤、レベリング剤等を添加してもよい。
【0117】
塗布方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
【0118】
乾燥方法としては、電荷発生層用塗布液中の溶媒が蒸発して、電荷発生層が形成される方法であれば、特に限定されない。例えば、高温乾燥機、減圧乾燥機を用いて40℃以上150℃以下で3分間以上120分間以下の条件で熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。
【0119】
本実施形態に係る感光体は、電子写真方式の画像形成装置の像担持体として用いることができる。また、この画像形成装置としては、電子写真方式のものであれば、特に限定されない。本実施形態に係る感光体は、具体的には、例えば、後述の画像形成装置の像担持体として用いることができる。
【0120】
[実施形態2]
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、像担持体と、像担持体の表面を帯電させる帯電器と、露光器と、静電潜像をトナー像として現像する現像器と、トナー像を像担持体から被転写体へ転写するための転写器とを備える。露光器は、帯電器によって帯電された像担持体の表面を露光して当該表面に静電潜像を形成する。本実施形態に係る画像形成装置において、像担持体は、上述した感光体である。即ち、本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であって、像担持体を感光体として用いるものであれば、特に限定されない。
【0121】
本実施形態における画像形成装置としては、オゾン等のガスの発生を抑制できる点から、接触帯電方式の帯電器を備えることが好ましい。
【0122】
また、本実施形態の画像形成装置として、複数色のトナーを用いるタンデム型のカラー画像形成装置が用いられる。より具体的には、本実施形態の画像形成装置は、複数の像担持体である感光体と、現像ローラーを備えた複数の現像装置とを備える。感光体は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に併設されている。複数の現像装置は、各感光体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを各感光体の表面にそれぞれ供給する。
【0123】
以下、図3を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明する。
【0124】
図3は、本発明の実施形態に係る感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。図3において、画像形成装置は、タンデム型カラープリンター1である。カラープリンター1は、箱型の機器本体1aを有している。機器本体1a内には、給紙部2と、画像形成部3と、定着部4とが設けられている。給紙部2は、用紙Pを給紙する。画像形成部3は、給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら用紙Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部4は、画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する。さらに、機器本体1aの上面には、排紙部5が設けられている。排紙部5は、定着部4で定着処理された用紙Pを排紙する。
【0125】
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、中間転写ベルト31と、2次転写ローラー32とを備えている。中間転写ベルト31には、画像形成ユニット7によってコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される。2次転写ローラー32は、中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させる。
【0126】
画像形成ユニット7は、上流側から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム37の周囲には、帯電器39、露光装置38、現像装置71、不図示のクリーニング装置、及び除電手段としての除電器が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、感光体ドラム37としては、上述した電子写真感光体を用いる。
【0127】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置では、帯電器39として接触帯電方式の帯電器を用いているが、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させるものであれば、非接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。接触帯電方式の帯電器39としては、例えば、帯電ローラー及び帯電ブラシが感光体ドラム37に接触したまま感光体ドラム37の周面(表面)を帯電させる装置(即ち、接触方式の帯電ローラー及び帯電ブラシを備えた帯電器)が挙げられる。
【0128】
接触方式の帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成され、感光体ドラム37と接触したまま、感光体ドラム37の回転に従属して回転するローラーが挙げられる。より具体的には、例えば、帯電ローラーは、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加手段とを備える。このような帯電ローラーを備えた帯電器は、電圧印加手段によって芯金に電圧を印加し、樹脂層を介して接触する感光体ドラム37の表面を帯電させることができる。
【0129】
このような接触方式の帯電ローラーを備える帯電器は、像担持体として有機感光体を用いた場合、最表層の摩耗量が大きくなる傾向があった。しかし、最表層として電荷輸送層を備える電子写真感光体を像担持体として用いた場合、最表層(積層型の場合、電荷輸送層であり、単層型の場合、感光層である)の摩耗量が少ないといったように耐久性の高いものが得られる。このことから、製造が容易であるとともに、感光層を構成する有機材料の選択肢が多様で構造設計の自由度が高いという有機感光体としての利点を活かしつつ、摩耗量が少ないといったように耐久性の高い感光体が得られる。
【0130】
また、帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、又はシリコーン変性樹脂が挙げられる。この樹脂層は無機充填材を含有してもよい。
【0131】
また、電圧印加手段で印加する電圧は、直流電圧のみであることが好ましい。そうすることによって、最表層として電荷輸送層(積層型の場合)又は感光層(単層型の場合)を備える電子写真感光体を像担持体として用いた場合、最表層の摩耗量をより少なくすることができる。具体的には、交流電圧、又は直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を帯電ローラーに印加した場合よりも、帯電ローラーに直流電圧のみを印加した場合のほうが、最表層である電荷輸送層の摩耗量を少なくすることができる。
【0132】
また、交流電圧を印加すると、帯電による像担持体の表面(周面)の電位が均一化する傾向があるが、接触帯電方式の帯電器を備えた画像形成装置では、直流電圧のみを印加しても均一に帯電できる。従って、画像形成装置では、帯電ローラーに直流電圧のみを印加することによって、好適な画像を形成することができ、さらに、感光層の摩耗量を低減させることができる。
【0133】
露光装置38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電器39によって均一に帯電された感光体ドラム37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、感光体ドラム37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像装置71は、静電潜像が形成された感光体ドラム37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電器39へ向かい、新たな画像形成のために帯電処理が行われる。
【0134】
中間転写ベルト31は、無端ベルト状の回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。又、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム37と対向配置された1次転写ローラー36によって感光体ドラム37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、ステッピングモーター等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。ローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
【0135】
1次転写ローラー36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。これにより、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ねられて順次転写(1次転写)される。
【0136】
2次転写ローラー32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。その結果、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに転写され、用紙Pにカラーの未定着トナー像が転写される。
【0137】
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を実行する。定着部4は、加熱ローラー41と、加圧ローラー42とを備えている。加熱ローラー41は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー42は、加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される。
【0138】
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱による定着処理によって用紙Pに定着される。そして、定着処理された用紙Pは、排紙部5へ排紙される。又、本実施形態の画像形成装置(カラープリンター1)には、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラー6が配設されている。
【0139】
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部を凹没することによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0140】
本実施形態の画像形成装置(カラープリンター1)は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。本実施形態の画像形成装置では、像担持体として実施形態1において説明した感光体が用いられる。従って、特に、画像形成装置が接触方式の帯電器を備えた場合には、電荷輸送層の摩耗量を顕著に抑制することができ、長期間に亘って像担持体を取替えなくとも好適な画像を形成することができる。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0142】
[積層型感光体の作製]
[実施例1]
(下引き層の形成)
【0143】
始めに、下引き層用塗布液を調製した。具体的には、アルミナとシリカで表面処理後、湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン(テイカ製、試作品SMT−A、数平均一次粒子径10nm)(2質量部)と、6,12,66,610四元共重合ポリアミド樹脂アミラン(東レ製、品番:CM8000)(1質量部)とをメタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)からなる混合溶剤にビーズミルを用いて混合して5時間分散させた。
【0144】
次に、下引き層を形成した。具体的には、得られた下引き層用塗布液を5μmのフィルターにてろ過後、導電性支持体として直径30mm、全長246mmのアルミニウム製のドラム状支持体にディップコート法にて塗布した。130℃で30分間熱処理し、膜厚1μmの下引き層を形成した。
【0145】
(電荷発生層の形成)
次に、電荷発生層の塗布液を調製した。具体的には、CGM−2(1.5質量部)と、バインダー樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業、品番:エスレックBX−5)(1質量部)と、分散媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)と、テトラヒドロフラン(40質量部)とを混合し、ビーズミルにて2時間分散させた。次に、得られた塗布液を3μmのフィルターにてろ過後、上記で作製した下引き層上にディップコート法にて塗布し、50℃で10分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0146】
(電荷輸送層の形成)
次に、電荷輸送層用塗布液を調製した。具体的には、正孔輸送剤として上述のアミンスチルベン化合物HTM−1(45質量部)と、添加剤としてのBHT(0.5質量部)と、メタターフェニル(3質量部)と、電子アクセプター化合物ETM−1(1質量部)と、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(Resin−1、粘度平均分子量50,100)(100質量部)と、溶剤としてのテトラヒドロフラン(420質量部)と、トルエン(210質量部)とを混合溶解した。Resin−1の組成は、一般式(21)により表される。
【0147】
【化31】
【0148】
調製した電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様に電荷発生層上に塗布し、120℃にて40分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型電子写真感光体を作製した。
【0149】
[実施例2]
実施例2における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−2を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0150】
[実施例3]
実施例3における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−3を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0151】
[実施例4]
実施例4における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−4を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0152】
[実施例5]
実施例5における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−5を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0153】
[実施例6]
実施例6における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−6を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0154】
[実施例7]
実施例7における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−2(粘度平均分子量50,300)を用いたこと以外、実施例1と同様である。Resin−2の組成は、一般式(22)により表される。
【0155】
【化32】
【0156】
[実施例8]
実施例8における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりに、Resin−3(粘度平均分子量50,200)を用いたこと以外、実施例1と同様である。Resin−3の組成は、一般式(23)により表される。
【0157】
【化33】
【0158】
[実施例9]
実施例9における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりに、Resin−4(粘度平均分子量50,200)を用いたこと以外、実施例1と同様である。Resin−4の組成は、一般式(24)により表される。
【0159】
【化34】
【0160】
[比較例1]
比較例1における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−5(粘度平均分子量50,300)を用いたこと以外、実施例1と同様である。Resin−5の組成は、一般式(25)により表される。
【0161】
【化35】
【0162】
[比較例2]
比較例2における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−2を用いたこと以外、比較例1と同様である。
【0163】
[比較例3]
比較例3における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−3を用いたこと以外、比較例1と同様である。
【0164】
[比較例4]
比較例4における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−4を用いたこと以外、比較例1と同様である。
【0165】
[比較例5]
比較例5における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−5を用いたこと以外、比較例1と同様である。
【0166】
[比較例6]
比較例6における電荷輸送層の形成方法は、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−6を用いたこと以外、比較例1と同様である。
【0167】
[比較例7]
比較例7における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−6を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【化36】
【0168】
[比較例8]
比較例8における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−7を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【化37】
【0169】
[比較例9]
比較例9における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−8を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【化38】
【0170】
[比較例10]
比較例10における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−9を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【化39】
【0171】
[比較例11]
比較例11における電荷輸送層の形成方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−10を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【化40】
【0172】
[単層型感光体の作製]
[実施例10]
実施例10における単層型感光体の作製方法は、正孔輸送剤としてのアミンスチルベン化合物HTM−1(50質量部)と、電子輸送剤としてのETM−2(20質量部)と、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニンCGM−1(3質量部)と、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂共重合体Resin−1(100質量部)とを、溶媒としてのテトラヒドロフラン(800質量部)に対して添加した。次いで、超音波分散機を用いて混合分散して、単層型感光体層用の塗布液を調製した。得られた塗布液を導電性基材(アルミニウム素管)上に塗布し、100℃で、30分間熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型の電子写真感光体を得た。
【0173】
[実施例11]
実施例11における単層型感光体の作製方法は、電荷発生剤として、ETM−1の代わりにETM−2を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0174】
[実施例12]
実施例12における単層型感光体の作製方法は、電荷発生剤として、ETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−2を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0175】
[実施例13]
実施例13における単層型感光体の作製方法は、電荷発生剤として、ETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−3を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0176】
[実施例14]
実施例14における単層型感光体の作製方法は、電荷発生剤として、ETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−4を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0177】
[実施例15]
実施例15における単層型感光体の作製方法は、電荷発生剤として、ETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0178】
[実施例16]
実施例16における単層型感光体の作製方法は、電荷発生剤として、ETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、正孔輸送剤として、HTM−1の代わりにHTM−6を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0179】
[実施例17]
実施例17における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−2を用いたこと、また、電荷発生剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0180】
[実施例18]
実施例18における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−3を用いたこと、また、電荷発生剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0181】
[実施例19]
実施例19における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−4を用いたこと、また、電荷発生剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0182】
[実施例20]
実施例20における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−4を用いたこと、電荷発生剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2及びPY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。PY−128は、一般式(31)により表される。
【0183】
【化41】
【0184】
[実施例21]
実施例21における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと、また、電荷輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−2を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0185】
[実施例22]
実施例22における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと、また、電荷輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−3を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0186】
[実施例23]
実施例23における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと、また、電荷輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−4を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0187】
[実施例24]
実施例24における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと、また、電荷輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0188】
[実施例25]
実施例25における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと、また、電荷輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−6を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0189】
[実施例26]
実施例26における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−3を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0190】
[実施例27]
実施例27における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−4を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0191】
[実施例28]
実施例28における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−5を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0192】
[実施例29]
実施例29における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−6を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0193】
[実施例30]
実施例30における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−7を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0194】
[実施例31]
実施例31における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−8を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−2+PY128を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0195】
[実施例32]
実施例32における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−3を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0196】
[実施例33]
実施例33における単層型感光体の作製方法は、電子輸送剤としてETM−1の代わりにETM−2を用いたこと、また、電荷発生剤としてCGM−1の代わりにCGM−4を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0197】
[比較例12]
比較例12における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0198】
[比較例13]
比較例13における単層型感光体の作製方法は、正孔輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−2を用いたこと、また、バインダー樹脂として、Resin−1の代わりにResin−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0199】
[比較例14]
比較例14における単層型感光体の作製方法は、正孔輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−3を用いたこと、また、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0200】
[比較例15]
比較例15における単層型感光体の作製方法は、正孔輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−4を用いたこと、また、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0201】
[比較例16]
比較例16における単層型感光体の作製方法は、正孔輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−5を用いたこと、また、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−5を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0202】
[比較例17]
比較例17における単層型感光体の作製方法は、正孔輸送剤としてHTM−1の代わりにHTM−6を用いたこと、また、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−6を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0203】
[比較例18]
比較例18における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−6を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0204】
[比較例19]
比較例19における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−7を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0205】
[比較例20]
比較例20における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−8を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0206】
[比較例21]
比較例21における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−9を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0207】
[比較例22]
比較例22における単層型感光体の作製方法は、バインダー樹脂としてResin−1の代わりにResin−10を用いたこと以外、実施例10と同様である。
【0208】
[感光体の性能評価]
(感度特性評価(電気的特性評価))
【0209】
作製した積層型感光体及び単層型感光体のそれぞれを、感度特性(電気的特性)試験機にて、以下の条件にて帯電能(表面電位V0)及び感度特性(残留電位VL)を測定した。測定環境の温度は10℃で、湿度は20%であった。
【0210】
(積層型感光体の測定条件)
ドラム感度試験機を用いて、回転数を31rpmとし、−600Vになるように帯電させた状態で電位を測定し、初期表面電位(Vo)とした。次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、露光量:0.26μJ/cm2)を感光体表面に照射した。照射後、50msec経過した後の表面電位を測定し、残留電位(VL)とした。
【0211】
(単層型感光体の測定条件)
ドラム感度試験機を用いて、700Vになるように帯電させた状態で電位を測定し、初期表面電位(Vo)とした。次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.5μJ/cm2)を感光体表面に照射した。照射後、100msec経過した後の表面電位を測定し、残留電位(VL)とした。
【0212】
[耐摩耗性(摩耗減量)]
(単層型感光体及び積層型感光体共通)
調製した電荷輸送層用塗布液、もしくは単層型塗布液をφ78アルミパイプに巻きつけたPPシート(厚さ0.3mm)に塗布し、120℃で40分乾燥し、膜厚30μmの摩耗評価用のシートを作製した。
【0213】
このPPシートからCT層を剥離し、ウイールS−36(テーバー社製)に貼り付け、サンプルを作製した。作製したサンプルをロータリーアブレージョンテスタ((株)東洋精機製作製)を用いて摩耗輪C−10(テーバー社製)、荷重500gf、回転速度60rpmにて1000回転摩耗試験を実施し、摩耗試験前後のサンプルの重量変化である摩耗減量(mg/1000回転)を測定し、耐摩耗性を評価した。
【0214】
表1は、上述した積層型感光体の感度特性評価(電気的特性評価)と摩耗評価試験の結果、及び感光層の各材料を示す。また、表2は、上述した単層型感光体の感度特性評価(電気的特性評価)と摩耗評価試験の結果、及び感光層の各材料を示す。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
表1及び表2により、電荷輸送剤(正孔輸送剤)として一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体と、バインダー樹脂として一般式(2)で表されるポリカーボネート樹脂とを含有する積層型感光体(実施例1〜9)、及び単層型感光体(実施例10〜33)は、感度特性評価(電気的特性評価)において残留電位(VL)が低く、耐摩耗試験において1000回転あたりの摩耗減量が少なかったことがわかった。したがって、本発明に係る積層型感光体及び単層型感光体によれば、優れた感度特性(電気的特性)を維持しつつ、耐摩耗性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明による電子写真感光体は、複合機等の画像形成装置に適用することがきる。
【符号の説明】
【0219】
10 単層型感光体
11 導電性基体
12 感光層
13 下引き層
20 積層型感光体
21 導電性基体
22 感光層
22a 電荷発生層
22b 電荷輸送層
23 下引き層
図1
図2
図3