特許第6232929号(P6232929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232929スイッチトリラクタンスモータの制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232929
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】スイッチトリラクタンスモータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/098 20160101AFI20171113BHJP
【FI】
   H02P25/098
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-225191(P2013-225191)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-220985(P2014-220985A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-82961(P2013-82961)
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 義信
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−243699(JP,A)
【文献】 米国特許第05811954(US,A)
【文献】 特開2000−166292(JP,A)
【文献】 特開2001−268961(JP,A)
【文献】 特開2013−236413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子に巻回されたコイル(22¥:¥=u,v,w)を備えるスイッチトリラクタンスモータに適用され、
前記コイルの指令電流を生成する指令電流生成手段と、
前記コイルと接続された電力変換回路(20)を用いて前記コイルに流れる電流を前記指令電流に制御する電流制御手段と、
を備え、
前記指令電流生成手段は、前記コイルの鎖交磁束の指令値と、前記コイルに流れる電流及び前記コイルの鎖交磁束が関係付けられた前記モータの磁束特性とに基づき、前記指令電流を生成し、
前記電流制御手段は、前記コイルに流れる電流及び前記指令電流を入力とするヒステリシスコンパレータ(30c)を備え、前記ヒステリシスコンパレータの出力信号に基づき、前記コイルに流れる電流を前記指令電流に制御し、
前記鎖交磁束の指令値は、前記モータの電気角の1周期に含まれる期間であってかつ前記コイルに対する通電を指示する通電指示期間において、前記指令値の0を規定する第1の軸線及び該第1の軸線と直交してかつ前記通電指示期間の中央を通る第2の軸線に対して線対称となるように設定され、
前記電流制御手段は、前記指令値の変化速度が0以上となる第1の期間において前記コイルの印加電圧として用いる2つの電圧の組と、前記変化速度が0未満となる第2の期間において前記コイルの印加電圧として用いる2つの電圧の組とを相違させることを特徴とするスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項2】
前記鎖交磁束の指令値は、
前記指令値の変化速度が0から正の値である第1の所定値まで徐々に上昇する場合に前記指令値の描く波形、
前記指令値の変化速度が負の値である第2の所定値から0まで徐々に上昇する場合に前記指令値の描く波形、
前記指令値の変化速度が正の値である第3の所定値から0まで徐々に下降する場合に前記指令値の描く波形、
及び、前記指令値の変化速度が0から負の値である第4の所定値まで徐々に下降する場合に前記指令値の描く波形のうち少なくとも1つを含むように設定されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項3】
前記鎖交磁束の指令値は、前記モータの電気角の1周期において前記指令値の描く波形が連続するように設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項4】
前記鎖交磁束の指令値は、前記電気角の1周期に含まれる期間であってかつ前記コイルに対する通電を指示する通電指示期間において、前記指令値の0を規定する第1の軸線と直交してかつ前記通電指示期間の中央を通る第2の軸線に対して線対称となるように設定されていることを特徴とする請求項3記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項5】
前記鎖交磁束の指令値は、前記通電指示期間において正弦波状の波形又は多角形状の波形となるように設定されていることを特徴とする請求項4記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項6】
前記鎖交磁束の指令値及び前記モータの磁束特性に基づき生成された前記指令電流を記憶する記憶手段(33)を更に備え、
前記指令電流生成手段は、前記記憶手段に記憶された指令電流を前記電流制御手段で用いられる前記指令電流として生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記コイルの印加電圧の指令値から算出された前記鎖交磁束の指令値、及び前記モータの磁束特性に基づき生成された前記指令電流を記憶することを特徴とする請求項6記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項8】
前記鎖交磁束の指令値及び前記モータの磁束特性のそれぞれを記憶する記憶手段(33)を更に備え、
前記指令電流生成手段は、前記記憶手段に記憶された前記指令値及び前記磁束特性に基づき、前記指令電流を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項9】
前記コイルの印加電圧の指令値及び前記モータの磁束特性を記憶する記憶手段(33)と、
前記記憶手段に記憶された前記印加電圧の指令値に基づき、前記鎖交磁束の指令値を算出する磁束算出手段と、
を更に備え、
前記指令電流生成手段は、前記磁束算出手段によって算出された指令値と、前記記憶手段に記憶された前記磁束特性とに基づき、前記指令電流を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項10】
前記電流制御手段は、前記第1の期間における前記コイルの印加電圧として正電圧及びゼロ電圧の組を用い、前記第2の期間における前記コイルの印加電圧として前記ゼロ電圧及び負電圧の組を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項11】
前記電力変換回路は、
前記コイルの一端及び直流電源(10)の正極端子の間に接続された上アームスイッチング素子(S¥p)と、
前記コイルの他端及び前記直流電源の負極端子の間に接続された下アームスイッチング素子(S¥n)と、
前記コイル及び前記下アームスイッチング素子の接続点、並びに前記上アームスイッチング素子の両端のうち前記コイルとの接続点とは反対側を接続するとともに、前記下アームスイッチング素子側から前記上アームスイッチング素子側へと向かう方向の電流の流通を許容し、逆方向の電流の流通を阻止する上アーム整流素子(D¥p)と、
前記コイル及び前記上アームスイッチング素子の接続点、並びに前記下アームスイッチング素子の両端のうち前記コイルとの接続点とは反対側を接続するとともに、前記下アームスイッチング素子側から前記上アームスイッチング素子側へと向かう方向の電流の流通を許容し、逆方向の電流の流通を阻止する下アーム整流素子(D¥n)と、
を備え、
前記電流制御手段は、前記ヒステリシスコンパレータの出力信号に基づき、前記上アームスイッチング素子及び前記下アームスイッチング素子のうち少なくとも一方をオンオフ操作することで、前記コイルに流れる電流を前記指令電流に制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項12】
前記電流制御手段は、前記第1の期間及び前記第2の期間の双方において、前記出力信号に基づくオンオフ操作対象を前記上アームスイッチング素子及び前記下アームスイッチング素子のうちいずれか一方に固定することを特徴とする請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【請求項13】
前記電流制御手段は、前記上アームスイッチング素子及び前記下アームスイッチング素子のうちいずれか一方を前記第1の期間における前記出力信号に基づくオンオフ操作対象とし、他方を前記第2の期間における前記出力信号に基づくオンオフ操作対象とすることを特徴とする請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチトリラクタンスモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、下記特許文献1に見られるように、スイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータ)の固定子に巻回されたコイルに流れる電流を指令電流に制御するものが知られている。詳しくは、この装置では、指令電流の立ち上がり波形及び立ち下がり波形の変化が緩やかになるように指令電流が生成される。これにより、コイルの励磁動作及び消磁動作のうち一方から他方に切り替えられる場合におけるコイルの鎖交磁束波形の変化を緩やかにし、SRモータの騒音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3268573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に記載された技術では、指令電流の立ち上がり波形及び立ち下がり波形の変化を緩やかにすることでSRモータの騒音の低減を図っているものの、立ち上がり波形及び立ち下がり波形の変化を緩やかにするだけでは、コイルの鎖交磁束波形に含まれる高調波成分を必ずしも十分に低減できない。高調波成分を十分に低減できないと、SRモータの騒音とともに、SRモータの高調波鉄損を十分に低減させることができなくなる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、SRモータの高調波鉄損及び騒音を好適に低減させることのできるSRモータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、発明は、固定子に巻回されたコイル(22¥:¥=u,v,w)を備えるスイッチトリラクタンスモータに適用され、前記コイルの指令電流を生成する指令電流生成手段と、前記コイルと接続された電力変換回路(20)を用いて前記コイルに流れる電流を前記指令電流に制御する電流制御手段と、を備える。こうした構成を前提として、発明は、前記指令電流生成手段は、前記コイルの鎖交磁束の指令値と、前記コイルに流れる電流及び前記コイルの鎖交磁束が関係付けられた前記モータの磁束特性とに基づき、前記指令電流を生成することを特徴とする。
【0007】
コイルの鎖交磁束波形は、SRモータの高調波鉄損及び騒音に影響を及ぼす。このため、SRモータの電流制御が行われる場合におけるコイルの鎖交磁束波形を、高調波鉄損及び騒音を低減可能な波形とすることが要求される。ここで、上記発明では、コイルの鎖交磁束の指令値及びモータの磁束特性に基づき指令電流を生成する。このため、SRモータの電流制御が行われる場合におけるコイルの鎖交磁束波形を、高調波鉄損及び騒音を低減可能な所望の波形とすることができる。これにより、SRモータの高調波鉄損及び騒音を好適に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態にかかるSRモータの制御システムの構成図。
図2】同実施形態にかかる制御装置における各種処理のブロック図。
図3】同実施形態にかかる指令磁束及び指令電流の設定手法を示す図。
図4】同実施形態にかかるSRモータの磁束特性を示す図。
図5】同実施形態にかかる指令電流生成処理の手順を示す流れ図。
図6】同実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す流れ図。
図7】同実施形態にかかる正電圧印加時に形成される閉回路を示す図。
図8】同実施形態にかかる負電圧印加時に形成される閉回路を示す図。
図9】同実施形態にかかる電流制御処理の一例を示す図。
図10】同実施形態にかかる電流制御処理の効果を示す図。
図11】従来技術にかかるコイル電流及び鎖交磁束の推移を示す図。
図12】第1の実施形態にかかる高調波鉄損の低減効果を示す図。
図13】第2の実施形態にかかる指令電流生成処理の手順を示す流れ図。
図14】第3の実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す流れ図。
図15】同実施形態にかかるゼロ電圧印加時に形成される閉回路を示す図。
図16】同実施形態にかかる電流制御処理の一例を示す図。
図17】同実施形態にかかる電流制御処理の効果を示す図。
図18】第4の実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す流れ図。
図19】第5の実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す流れ図。
図20】第6の実施形態にかかるSRモータの磁束特性を示す図。
図21】指令磁束及び磁束変化量の関係を示す図。
図22】第7の実施形態にかかる指令磁束の設定手法を示す図。
図23】第8の実施形態にかかる指令磁束の設定手法を示す図。
図24】第9の実施形態にかかる指令磁束の設定手法を示す図。
図25】第10の実施形態にかかる指令磁束の設定手法を示す図。
図26】第11の実施形態にかかる指令電流の生成手法を示す図。
図27】第12の実施形態にかかる指令電流生成処理の手順を示す流れ図。
図28】その他の実施形態にかかる指令磁束の設定手法を示す図。
図29】その他の実施形態にかかる指令磁束の設定手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置を車載主機としてのスイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータ)に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1に示すように、「直流電源」としての高電圧バッテリ10は、端子電圧が例えば百V以上(288V)となる2次電池である。なお、高電圧バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン2次電池やニッケル水素2次電池を用いることができる。
【0011】
高電圧バッテリ10には、平滑コンデンサ12を介して電力変換回路20が接続されている。電力変換回路20には、車載主機としてのモータジェネレータが接続されている。モータジェネレータは、固定子(ステータ)及び回転子(ロータ)を備えるSRモータである。詳しくは、本実施形態では、SRモータとして、ステータの¥相(¥=u,v,w)に対応する突極(ステータティース)に¥相コイル22¥が巻回された3相SRモータを用いている。
【0012】
電力変換回路20は、U相上アームスイッチング素子Sup及びU相下アームダイオードDunの直列接続体、U相上アームダイオードDup及びU相下アームスイッチング素子Sunの直列接続体、V相上アームスイッチング素子Svp及びV相下アームダイオードDvnの直列接続体、V相上アームダイオードDvp及びV相下アームスイッチング素子Svnの直列接続体、W相上アームスイッチング素子Swp及びW相下アームダイオードDwnの直列接続体、並びにW相上アームダイオードDwp及びW相下アームスイッチング素子Swnの直列接続体を備えている。ここで、本実施形態では、U〜W相上アームスイッチング素子Sup,Svp,Swp及びU〜W相下アームスイッチング素子Sun,Svn,Swnとして、IGBTを用いている。なお、本実施形態において、U〜W相上アームダイオードDup,Dvp,Dwpが「上アーム整流素子」に相当し、U〜W相下アームダイオードDun,Dvn,Dwnが「下アーム整流素子」に相当する。
【0013】
詳しくは、U相上アームスイッチング素子Sup及びU相下アームダイオードDunの接続点と、U相上アームダイオードDup及びU相下アームスイッチング素子Sunの接続点とは、U相コイル22uによって接続されている。U相上アームスイッチング素子Supのエミッタ及びU相下アームダイオードDunのカソード同士は接続され、U相上アームスイッチング素子Supのコレクタは、高電圧バッテリ10の正極端子に接続されている。また、U相下アームダイオードDunのアノードは、高電圧バッテリ10の負極端子に接続されている。一方、U相上アームダイオードDupのアノード及びU相下アームスイッチング素子Sunのコレクタ同士は接続され、U相上アームダイオードDupのカソードは、高電圧バッテリ10の正極端子に接続されている。また、U相下アームスイッチング素子Sunのエミッタは、高電圧バッテリ10の負極端子に接続されている。
【0014】
なお、V相及びW相を構成するスイッチング素子Svp,Svn,Swp,Swn及びダイオードDvp,Dvn,Dwp,Dwnの接続態様は、U相と同様である。このため、本実施形態では、V相及びW相についての接続態様の詳細な説明を省略する。
【0015】
制御装置30は、図示しない中央演算装置(CPU)と、メモリ33とを備え、各種プログラムを中央演算装置によって実行することでSRモータの制御量(出力トルク)をその指令値(以下、指令トルクTrq*)に制御する。制御装置30には、U相コイル22uに流れる電流を検出するU相電流センサ32uや、V相コイル22vに流れる電流を検出するV相電流センサ32v、及びW相コイル22wに流れる電流を検出するW相電流センサ32wの検出値が入力される。また、制御装置30には、SRモータのロータの回転角(電気角θe)を検出する回転角センサ34(例えばレゾルバ)の検出値が入力される。制御装置30は、これら各種センサの検出値に基づき、SRモータの出力トルクを指令トルクTrq*に制御すべく、電力変換回路20を構成する上アームスイッチング素子S¥p,下アームスイッチング素子S¥nに対して操作信号g¥p,g¥nを出力することで、これらスイッチング素子S¥p,S¥nを操作する。
【0016】
なお、本実施形態では、メモリ33として、不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)を用いている。また、本実施形態において、メモリ33が「記憶手段」に相当する。
【0017】
図2に、制御装置30における各種処理のブロック図を示す。
【0018】
図示されるように、制御装置30は、電気角速度算出部30a、指令電流生成部30b、ヒステリシスコンパレータ30c、及び駆動回路30dを備えている。電気角速度算出部30aは、回転角センサ34によって検出された電気角θeの時間微分値として電気角速度ωeを算出する。また、指令電流生成部30bは、指令トルクTrq*、電気角θe及び電気角速度ωeに基づき、各相の指令電流i¥*(¥=u,v,w)を生成する。ここで、U〜W相のそれぞれに対する指令電流は、電気角θeで互いに120°ずれた波形として生成される。なお、指令電流生成部30bについては、後に詳述する。
【0019】
ヒステリシスコンパレータ30cは、電流センサ32¥によって検出された電流i¥rと、指令電流生成部30bによって生成された指令電流i¥*とを入力として、基準信号Sig¥を出力する。詳しくは、コイル22¥に流れる電流i¥rが、ヒステリシスコンパレータ30cのヒステリシス幅ΔIの「1/2」を指令電流i¥*から減算した下限値「i¥*−ΔI/2」を起点として上昇し、上記ヒステリシス幅ΔIの「1/2」を指令電流i¥*に加算した上限値「i¥*+ΔI/2」に到達するまでの期間において、ヒステリシスコンパレータ30cは論理「L」の基準信号Sig¥を出力する。一方、コイル22¥に流れる電流i¥rが上限値「i¥*+ΔI/2」から下降して下限値「i¥*−ΔI/2」に到達するまでの期間において、ヒステリシスコンパレータ30cは論理「H」の基準信号Sig¥を出力する。
【0020】
駆動回路30dは、ヒステリシスコンパレータ30cから出力された基準信号Sig¥に基づき、上アームスイッチング素子S¥p,下アームスイッチング素子S¥nを操作するための操作信号g¥p,g¥nを生成する。
【0021】
なお、指令トルクTrq*は、例えば、制御装置30よりも上位の制御装置(例えば、車両の走行制御を統括する制御装置)から制御装置30に入力される。また、SRモータの各相は独立しており、さらに、制御装置30における各相に関する処理のそれぞれは、基本的には同一の処理となる。
【0022】
続いて、図3及び図4を用いて、本実施形態にかかる指令電流i¥*の生成手法について説明する。ここで、図3(a)は、コイル22¥の鎖交磁束ψ¥の指令値(以下、指令磁束ψ¥*)の推移を示し、図3(b)は、指令電流i¥*の推移を示す。また、図4は、SRモータの磁束特性を示す。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、電気角θeの1周期(時刻t1〜t3)に含まれる期間であってかつコイル22¥に対する通電を指示する通電指示期間(時刻t1〜t2)において、指令磁束ψ¥*の波形が指令磁束ψ¥*の「0」を規定する第1の軸線L1と直交してかつ、通電指示期間の中央を通る第2の軸線L2に対して線対称となるように指令電流i¥*を設定する。特に、本実施形態では、指令磁束ψ¥*の描く波形が正弦波形(理想的な正弦波)となるように指令磁束ψ¥*を設定する。こうした設定は、SRモータの高調波鉄損及び騒音を低減させることを目的としてなされる。
【0024】
こうして設定された指令磁束ψ¥*を指令電流i¥*に変換する場合、本実施形態では、図4に示すSRモータの磁束特性を用いる。ここで、図4に示すSRモータの磁束特性は、電気角θe、コイル22¥に流れる電流I及びコイル22¥の鎖交磁束Ψが関係付けられた特性である。詳しくは、この磁束特性は、コイル22¥に流れる電流Iが大きいほど、鎖交磁束Ψが多くなる特性を有する。また、この磁束特性は、ロータ及びステータの位置が、ロータの極(ポール)及びステータの極(ポール)が対向する突極対向位置に近づくほど、鎖交磁束Ψが多くなり、ロータ及びステータの位置が、突極対向位置から電気角θeで180°離れた位置である突極非対向位置に近づくほど、鎖交磁束Ψが少なくなる特性を有する。ここで、本実施形態では、突極対向位置に対応する電気角θeを「0°」とし、突極非対向位置に対応する電気角θeを「180°」としている。なお、SRモータの磁束特性は、例えば、電気角θe及び電流Iを独立変数として従属変数を鎖交磁束Ψとするマップ(又は関数)として表される。この磁束特性は、例えば、シミュレーションによる鎖交磁束の計算結果や実際の鎖交磁束の計測結果に基づき定めればよい。
【0025】
以上説明した磁束特性に、電気角θe及びこれに対応する指令磁束ψ¥*を入力することにより、図3(b)に示す指令電流i¥*を生成することができる。ここで、本実施形態では、上述した手法で生成される指令電流i¥*が、メモリ33に予め記憶されている。具体的には、指令トルクTrq*、電気角速度ωe及び電気角θeと関係付けられて指令電流i¥*の規定されたマップがメモリ33に記憶されている。
【0026】
図5に、本実施形態にかかる指令電流生成処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える指令電流生成部30bによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、本実施形態において、図5に示す一連の処理が「指令電流生成手段」を構成する。
【0027】
この一連の処理では、まずステップS10において指令トルクTrq*、電気角θe及び電気角速度ωeを取得する。
【0028】
続くステップS12では、取得された指令トルクTrq*、電気角速度ωe及び電気角θeに基づき、指令電流i¥*を生成する。本実施形態では、上述したように、指令トルクTrq*、電気角速度ωe及び電気角θeを入力として上記マップに規定された指令電流を取得し、取得された指令電流を電流制御処理で用いられる指令電流i¥*として生成する。
【0029】
なお、ステップS12の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0030】
続いて、図6に、本実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える駆動回路30dによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、本実施形態において、図6に示す一連の処理が「電流制御手段」を構成する。
【0031】
この一連の処理では、まずステップS30において、ヒステリシスコンパレータ30cから出力された基準信号Sig¥の論理が「L」であるか否かを判断する。
【0032】
ステップS30において肯定判断された場合には、ステップS32に進み、上アームスイッチング素子S¥p及び下アームスイッチング素子S¥nの双方をオン操作する。これにより、図7に示すように、高電圧バッテリ10、上アームスイッチング素子S¥p、コイル22¥、下アームスイッチング素子S¥nを含む閉回路に電流が流れ、コイル22¥に正電圧「Vdc」が印加される。
【0033】
一方、上記ステップS30において否定判断された場合には、ステップS34に進み、上アームスイッチング素子S¥p及び下アームスイッチング素子S¥nの双方をオフ操作する。これにより、図8に示すように、高電圧バッテリ10、下アームダイオードD¥n、コイル22¥、上アームダイオードD¥pを含む閉回路に電流が流れ、コイル22¥に負電圧「−Vdc」が印加される。
【0034】
なお、ステップS32、S34の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0035】
上述した上アームスイッチング素子S¥p及び下アームスイッチング素子S¥nの操作処理によれば、図9に示すように、コイル22¥に流れる電流i¥rを指令電流i¥*に制御することができる。なお、図9(a)は、コイル22¥に流れる電流i¥r及び指令電流i¥*の推移を示し、図9(b)は、コイル22¥の印加電圧V¥rの推移を示す。
【0036】
続いて、図10図12を用いて、指令磁束ψ¥*を正弦波形(理想的な正弦波)として指令電流i¥*を生成した場合の高調波鉄損の低減効果について説明する。
【0037】
まず、図10及び図11に、本実施形態及び従来技術のそれぞれについてのコイル22¥に流れる電流i¥r及び指令磁束ψ¥*の推移を示す。なお、従来技術とは、通電指示期間における指令電流i¥*を一定値(矩形波状の電流)として生成する技術のことである。
【0038】
図10及び図11に示すように、指令磁束ψ¥*を正弦波形とする技術に対して、従来技術では、コイルの鎖交磁束ψ¥rの波形に高調波成分が含まれることとなる。
【0039】
図12に、本実施形態及び従来技術におけるSRモータの損失の内訳を示す。
【0040】
図示されるように、指令磁束ψ¥*を正弦波形とすることにより、従来技術と比較して、SRモータにおける損失のうち、SRモータの鉄損を低減させることができる。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0042】
(1)電気角θe、コイル22¥に流れる電流I及びコイル22¥の鎖交磁束Ψが関係付けられたSRモータの磁束特性に基づき、指令電流i¥*を生成した。詳しくは、通電指示期間において指令磁束ψ¥*が正弦波形となるように指令磁束ψ¥*を設定し、この指令磁束ψ¥*及び上記磁束特性に基づき、指令電流i¥*を生成した。このため、コイル22¥の鎖交磁束ψ¥rの変化を緩やかにすることができ、鎖交磁束ψ¥の高調波成分を低減させることができる。これにより、SRモータの高調波鉄損及び騒音を好適に低減させることができる。
【0043】
特に、本実施形態では、通電指示期間において第2の軸線L2に対して線対称となるように指令磁束ψ¥*を設定したこと、及び指令磁束ψ¥*を正弦波形として設定したことが、コイル22¥の鎖交磁束ψ¥rの変化をより緩やかにし、SRモータの高調波鉄損及び騒音の低減効果を向上させることに大きく寄与している。
【0044】
(2)上述した指令磁束ψ¥*及びSRモータの磁束特性に基づき生成された指令電流をメモリ33に記憶した。そして、メモリ33に記憶された指令電流を電流制御処理で用いた。これにより、指令電流i¥*を適切に生成することができる。
【0045】
(3)ヒステリシスコンパレータ30cから出力される基準信号Sig¥に基づき、コイル22¥に流れる電流i¥rを指令電流i¥*に制御した。このため、SRモータの電流制御を適切に行うことができる。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0047】
本実施形態では、指令電流の生成手法を変更する。
【0048】
図13に、本実施形態にかかる指令電流生成処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える指令電流生成部30bによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図13において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0049】
この一連の処理では、ステップS10の処理の完了後、ステップS14において、取得された指令トルクTrq*及び電気角速度ωeに基づき、指令磁束ψ¥*の振幅ψp、コイル22¥への通電開始を指示する電気角θeであるON位相θon(先の図3の時刻t1)、及びON位相θonからの通電継続期間を指示する電気角θeの幅である通電指示幅θw(先の図3の時刻t1〜t2)を設定する。ここで、電気角θeがON位相θonとなってから、通電指示幅θwが経過するまでの期間が上記通電指示期間である。ここで、本実施形態において、指令磁束ψ¥*の振幅ψp、ON位相θon及び通電指示幅θwは、指令トルクTrq*及び電気角速度ωeと関係付けられて上記振幅ψp、ON位相θon及び通電指示幅θwが規定されたマップを用いて設定される。このマップは、メモリ33に記憶されている。換言すれば、マップに基づき後述するステップS16〜S20において設定される指令磁束ψ¥*は、メモリ33に記憶されている。
【0050】
続くステップS16では、現在の電気角θeが通電指示期間であるか否かを判断する。具体的には、現在の電気角θeからON位相θonを減算した値を分子とし、通電指示幅θwを分母とする値を判定パラメータと定義すると、判定パラメータが「0」以上であってかつ「1」以下であるか否かを判断する。
【0051】
ステップS16において否定判断された場合には、現在の電気角θeが通電指示期間ではないと判断し、ステップS18に進む。ステップS18では、指令磁束ψ¥*を「0」とする。一方、上記ステップS16において肯定判断された場合には、現在の電気角θeが通電指示期間であると判断し、ステップS20に進む。ステップS20では、判定パラメータ及び「360°」の乗算値、並びに「270°」の加算値を独立変数とする正弦関数に「1」を加算し、この加算値に指令磁束ψ¥*の振幅ψpを乗算することで、指令磁束ψ¥*を生成する。
【0052】
ステップS18、S20の処理が完了した場合、ステップS22に進み、電気角θe、上記ステップS18,S20で生成された指令磁束ψ¥*、及び先の図4に示したSRモータの磁束特性に基づき、指令電流i¥*を生成する。ここで、本実施形態では、SRモータの磁束特性がメモリ33に記憶されている。このため、都度の指令磁束ψ¥*及び電気角θeを、記憶された磁束特性に入力することで、指令電流i¥*を生成することができる。
【0053】
なお、ステップS22の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0054】
以上説明した本実施形態によっても、上記第1の実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0056】
本実施形態では、コイル22¥の印加電圧として、正電圧及び負電圧に加えて、ゼロ電圧を用いる。
【0057】
図14に、本実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える駆動回路30dによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図14において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0058】
この一連の処理では、まずステップS36において、指令磁束ψ¥*の変化速度(以下、磁束変化量dψ¥)が「0」以上である(第1の期間である)か否かを判断する。ここで、磁束変化量dψ¥は、例えば、先の図13に示した処理によって生成された指令磁束ψ¥*に基づき算出し、より具体的には、指令磁束ψ¥*の時間変化量として算出すればよい。
【0059】
ステップS36において肯定判断された場合には、ステップS30、S32、S38において、上アームスイッチング素子S¥pをオン操作固定しつつ、ヒステリシスコンパレータ30cから出力される基準信号Sig¥に基づき、下アームスイッチング素子S¥nをオンオフ操作する。
【0060】
詳しくは、ステップS30において否定判断された場合、上アームスイッチング素子S¥pをオン操作してかつ下アームスイッチング素子S¥nをオフ操作する。ここで、上アームスイッチング素子S¥pがオン操作されてかつ下アームスイッチング素子S¥nがオフ操作されると、図15に示すように、コイル22¥、上アームダイオードD¥p及び上アームスイッチング素子S¥pを含む閉回路に電流が流れ、コイル22¥にゼロ電圧が印加される。
【0061】
一方、上記ステップS36において磁束変化量dψ¥が「0」未満である(第2の期間である)と判断された場合には、ステップS34、S38、S40において、下アームスイッチング素子S¥nをオフ操作固定しつつ、基準信号Sig¥に基づき上アームスイッチング素子S¥pをオンオフ操作する。
【0062】
なお、ステップS32、S34、S38の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0063】
図16に、本実施形態にかかる電流制御処理の一例を示す。詳しくは、図16(a)は、指令磁束ψ¥*の推移を示し、図16(b)は、磁束変化量dψ¥の推移を示し、図16(c)は、コイル22¥に流れる電流i¥r及び指令電流i¥*の推移を示し、図16(d)は、コイル22¥の印加電圧V¥rの推移を示す。
【0064】
図示されるように、本実施形態にかかる上アームスイッチング素子S¥p及び下アームスイッチング素子S¥nの操作処理によれば、磁束変化量dψ¥が「0」以上となる場合、コイル22¥の印加電圧V¥rとして正電圧及びゼロ電圧が用いられる。一方、磁束変化量dψ¥が「0」未満となる場合、コイル22¥の印加電圧V¥rとして負電圧及びゼロ電圧が用いられる。すなわち、磁束変化量dψ¥の符号に応じて、コイル22¥の印加電圧として正電圧及びゼロ電圧の組、又は負電圧及びゼロ電圧の組を使い分けることができる。このため、コイル22¥に流れる電流i¥rを指令電流i¥*に高精度に制御することができ、SRモータの高調波鉄損及び騒音をより低減させることができる。
【0065】
図17に、本実施形態及び従来技術のそれぞれの電流制御の一例を示す。詳しくは、図17において、(a)は、コイル22¥に流れる電流i¥r及び指令電流i¥*の推移を示し、(b)は、コイル22¥の印加電圧V¥rの推移を示し、(c)は、指令磁束ψ¥*及び鎖交磁束ψ¥rの推移を示す。なお、図17の従来技術には、ヒステリシスコンパレータのヒステリシス幅ΔIを併記した。
【0066】
図示されるように、本実施形態によれば、鎖交磁束ψ¥rを正弦波形の指令磁束ψ¥*に近づけることができ、SRモータの高調波鉄損及び騒音の低減効果を向上させることができる。これに対し、従来技術では、鎖交磁束ψ¥rに高調波成分が多く含まれることから、SRモータの高調波鉄損等が増大することとなる。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、上記第2の実施形態で得られる効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0068】
(4)磁束変化量dψ¥が0以上となる場合、コイル22¥の印加電圧として正電圧及びゼロ電圧の組を用い、磁束変化量dψ¥が0未満となる場合、コイル22¥の印加電圧としてゼロ電圧及び負電圧の組を用いた。これにより、コイル22¥の鎖交磁束ψ¥rの高調波成分をより低減させることができ、SRモータの高調波鉄損及び騒音をより低減させることができる。
【0069】
さらに、本実施形態によれば、ヒステリシスコンパレータ30cから出力される基準信号Sig¥の論理が反転する時間間隔が短くなることを回避できる。したがって、上アームスイッチング素子S¥pや下アームスイッチング素子S¥nのスイッチング周波数を低くすることができ、ひいてはスイッチング損失を低減させることもできる。
【0070】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
本実施形態では、磁束変化量dψ¥の符号に応じてコイル22¥の印加電圧を変更する構成に代えて、通電指示期間の前半においてコイル22¥の印加電圧として正電圧及びゼロ電圧を用い、通電指示期間の後半において負電圧及びゼロ電圧を用いる構成を採用する。
【0072】
図18に、本実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える駆動回路30dによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図18において、先の図14に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0073】
この一連の処理では、まずステップS42において、上記判定パラメータが「0」以上であってかつ「1」以下であるか否かを判断する。ステップS42において否定判断された場合には、ステップS34に進む。一方、上記ステップS42において肯定判断された場合には、ステップS44に進み、判定パラメータを「1/2」した値が「0」以上であってかつ「1/2」以下であるか否かを判断する。この処理は、現在の電気角θeが通電指示期間の前半(第1の期間)であるか否かを判断するための処理である。
【0074】
ステップS44において肯定判断された場合には、現在の電気角θeが通電指示期間の前半であると判断する。そして、ステップS30、S32、S38において、上アームスイッチング素子S¥pをオン操作固定しつつ、ヒステリシスコンパレータ30cから出力される基準信号Sig¥に基づき、下アームスイッチング素子S¥nをオンオフ操作する。
【0075】
一方、上記ステップS44において否定判断された場合には、現在の電気角θeが通電指示期間の後半(第2の期間)であると判断する。そして、ステップS34、S38、S40において、下アームスイッチング素子S¥nをオフ操作固定しつつ、基準信号Sig¥に基づき、上アームスイッチング素子S¥pをオンオフ操作する。
【0076】
なお、ステップS32、S34、S38の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0077】
以上説明した本実施形態によっても、上記第3の実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
本実施形態では、磁束変化量dψ¥が「0」以上となる場合、及び磁束変化量dψ¥が「0」未満となる場合の双方において、ヒステリシスコンパレータ30cから出力される基準信号Sig¥に基づくオンオフ操作対象を上アームスイッチング素子S¥pに固定する。
【0080】
図19に、本実施形態にかかる電流制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える駆動回路30dによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図19において、先の図14に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0081】
この一連の処理では、ステップS36において磁束変化量dψ¥が「0」以上であると判断された場合、ステップS30、S32、S46において、下アームスイッチング素子S¥nをオン操作固定しつ、基準信号Sig¥に基づき上アームスイッチング素子S¥pをオンオフ操作する。
【0082】
ここで、上アームスイッチング素子S¥pがオフ操作されてかつ下アームスイッチング素子S¥nがオン操作されることによっても、コイル22¥、下アームダイオードD¥n及び下アームスイッチング素子S¥nを含む閉回路に電流が流れ、コイル22¥にゼロ電圧が印加される。
【0083】
一方、上記ステップS36において磁束変化量dψ¥が「0」未満であると判断された場合、ステップS34、S38、S40において、下アームスイッチング素子S¥nをオフ操作固定しつつ、基準信号Sig¥に基づき上アームスイッチング素子S¥pをオンオフ操作する。
【0084】
以上説明した本実施形態によっても、上記第3の実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0086】
本実施形態では、指令電流i¥*に生成に用いるSRモータの磁束特性を変更する。詳しくは、図20に示すように、SRモータの磁束特性を、電気角θe、コイル22¥に流れる電流I及びコイル22¥のインダクタンスLが関係付けられた特性、並びに電流I、インダクタンスL及び鎖交磁束Ψが関係付けられた特性とする。この磁束特性は、メモリ33に記憶されている。
【0087】
そして、本実施形態では、以下に説明する手法によって指令電流i¥*を生成する。詳しくは、電流I、インダクタンスL及び鎖交磁束Ψが関係付けられた特性は、下式(eq1)によって表される。
【0088】
I=Ψ/L … (eq1)
また、電気角θe、電流I及びインダクタンスLが関係付けられた特性は、下式(eq2)によって表される。
【0089】
L=f(θe,I) … (eq2)
上式(eq2)において、fは、電気角θe及び電流Iを独立変数とし、インダクタンスLを従属変数とする関数を示す。上式(eq1),(eq2)より、下式(eq3)が導かれる。
【0090】
Ψ=I・f(θe,I) … (eq3)
電気角θe及び指令磁束ψ¥*を都度取得することができるため、これらパラメータθe,ψ¥*を入力として、上式(eq3)を満足する電流Iを指令電流i¥*として生成することができる。なお、こうして生成される指令電流i¥*は、先の図3(b)に示したものと同一である。
【0091】
以上説明した本実施形態によっても、上記第2の実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0093】
上記第1の実施形態では、図21に示すように、磁束変化量dψ¥を正弦波形とするような指令磁束ψ¥*を設定した。詳しくは、磁束変化量dψ¥が0から正の値である第1の変化量dψ1(「第1の所定値」に相当)まで徐々に上昇する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t1〜t2)、磁束変化量dψ¥が第1の変化量(「第3の所定値」に相当)から0まで徐々に下降する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t2〜t3)、磁束変化量dψ¥が0から負の値である第2の磁束量dψ2(「第4の所定値」に相当)まで徐々に下降する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t3〜t4)、及び磁束変化量dψ¥が第2の磁束量dψ2から0まで徐々に上昇する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t4〜t5)が連続するように指令磁束ψ¥*を設定した。ここで、図21(a)は、先の図3(a)に対応しており、図21(b)は、磁束変化量dψ¥の推移を示す。また、本実施形態において、第2の磁束量dψ2の絶対値と第1の磁束量dψ1の絶対値とは同一の値に設定されている。
【0094】
これに対し、本実施形態では、図22に示すように、指令磁束ψ¥*を、電気角θeの1周期である時刻t1〜t5において、磁束変化量dψ¥が0から第3の変化量dψ3(「第1の所定値」に相当)まで徐々に上昇する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t1〜t2)、磁束変化量dψ¥が正の矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t2〜t3)、及び磁束変化量dψ¥が負の矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t3〜t4)が隣接するように設定する。なお、図22(a)及び図22(b)は、先の図21(a)及び図21(b)に対応している。
【0095】
具体的には、時刻t1〜t2において、指令磁束ψ¥*は、0から第1の磁束量ψ1までその上昇速度を高くしながら徐々に上昇する。続く時刻t2〜t3において、指令磁束ψ¥*は、第1の磁束量ψ1から上限値である第2の磁束量ψ2まで上昇速度を一定としながら徐々に上昇する。そして、時刻t3〜t4において、指令磁束ψ¥*は、第2の磁束量ψ2から0まで下降速度を一定としながら徐々に下降する。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、SRモータの高調波鉄損、振動及び騒音の低減効果について、上記第1の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることができる。
【0097】
(第8の実施形態)
以下、第8の実施形態について、先の第7の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
本実施形態では、図23に示すように、指令磁束ψ¥*を、電気角θeの1周期である時刻t1〜t5において、磁束変化量dψ¥が正の矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t1〜t2)、磁束変化量dψ¥がその値を第4の変化量dψ4とする矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t2〜t3)、及び磁束変化量dψ¥が第4の変化量dψ4(「第2の所定値」に相当)から0まで徐々に上昇する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t3〜t4)が隣接するように設定する。ここで、第4の変化量dψ4は、負の値である。なお、図23(a)及び図23(b)は、先の図22(a)及び図22(b)に対応している。
【0099】
具体的には、時刻t1〜t2において、指令磁束ψ¥*は、0から上限値である第3の磁束量ψ3まで上昇速度を一定としながら徐々に上昇する。続く時刻t2〜t3において、指令磁束ψ¥*は、第3の磁束量ψ3から第4の磁束量ψ4まで下降速度を一定としながら徐々に下降する。そして、時刻t3〜t4において、指令磁束ψ¥*は、第4の磁束量ψ4から0まで下降速度を低くしながら徐々に下降する。
【0100】
以上説明した本実施形態によれば、SRモータの高調波鉄損、振動及び騒音の低減効果について、上記第1の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることができる。
【0101】
(第9の実施形態)
以下、第9の実施形態について、先の第7の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0102】
本実施形態では、図24に示すように、指令磁束ψ¥*を、電気角θeの1周期である時刻t1〜t5において、磁束変化量dψ¥がその値を第5の変化量dψ5とする矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t1〜t2)、磁束変化量dψ¥が第5の変化量dψ5(「第3の所定値」に相当)から0まで徐々に下降する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t2〜t3)、及び磁束変化量dψ¥が負の矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t3〜t4)が隣接するように設定する。ここで、第5の変化量dψ5は、正の値である。なお、図24(a)及び図24(b)は、先の図22(a)及び図22(b)に対応している。
【0103】
具体的には、時刻t1〜t2において、指令磁束ψ¥*は、0から第5の磁束量ψ5まで上昇速度を一定としながら徐々に上昇する。続く時刻t2〜t3において、指令磁束ψ¥*は、第5の磁束量ψ5から第6の磁束量ψ6まで下降速度を低くしながら徐々に上昇する。そして、時刻t3〜t4において、指令磁束ψ¥*は、第6の磁束量ψ6から0まで下降速度を一定としながら徐々に下降する。
【0104】
以上説明した本実施形態によれば、SRモータの高調波鉄損、振動及び騒音の低減効果について、上記第1の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることができる。
【0105】
(第10の実施形態)
以下、第10の実施形態について、先の第7の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0106】
本実施形態では、図25に示すように、指令磁束ψ¥*を、電気角θeの1周期である時刻t1〜t5において、磁束変化量dψ¥が正の矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t1〜t2)、磁束変化量dψ¥が0から第6の変化量dψ6(「第4の所定値」に相当)まで徐々に下降する場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t2〜t3)、及び磁束変化量dψ¥がその値を第6の変化量dψ6とする矩形波形となる場合に指令磁束ψ¥*の描く波形(時刻t3〜t4)が隣接するように設定する。なお、図25(a)及び図25(b)は、先の図22(a)及び図22(b)に対応している。
【0107】
具体的には、時刻t1〜t2において、指令磁束ψ¥*は、0から上限値である第7の磁束量ψ7まで上昇速度を一定としながら徐々に上昇する。続く時刻t2〜t3において、指令磁束ψ¥*は、第7の磁束量ψ7から第8の磁束量ψ8まで下降速度を高くしながら徐々に下降する。そして、時刻t3〜t4において、指令磁束ψ¥*は、第8の磁束量ψ8から0まで下降速度を一定としながら徐々に下降する。
【0108】
以上説明した本実施形態によれば、SRモータの高調波鉄損、振動及び騒音の低減効果について、上記第1の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることができる。
【0109】
(第11の実施形態)
以下、第11の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0110】
本実施形態では、メモリ33に記憶する指令電流i¥*の生成手法を変更する。
【0111】
図26に、本実施形態にかかる指令電流i¥*の生成手法を示す。
【0112】
まず、図26(a)に示すように、電気角θe1周期におけるコイル22¥の印加電圧の指令値(以下、指令電圧V¥*)を設定する。本実施形態では、指令電圧V¥*として、通電指示幅θwを1周期とする正弦波形を設定した。
【0113】
続いて、図26(b)に示すように、指令電圧V¥*の積分値として、指令磁束ψ¥*を算出する。これは、時間を変数としたコイル22¥の印加電圧の積分値(換言すれば、電気角を変数とした上記印加電圧の積分値)がコイル22¥の鎖交磁束となる関係を利用したものである。
【0114】
続いて、図26(c)に示すSRモータの磁束特性(先の図4に示した磁束特性)を用いて、図26(b)に示した指令磁束ψ¥*を、図26(d)に示す指令電流i¥*に変換する。こうして生成された指令電流i¥*がメモリ33に記憶されることとなる。
【0115】
以上説明した本実施形態によっても、指令電流i¥*を適切に生成することができる。
【0116】
(第12の実施形態)
以下、第12の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0117】
本実施形態では、指令電流i¥*の生成手法を変更する。
【0118】
図27に、本実施形態にかかる指令電流生成処理の手順を示す。この処理は、制御装置30の備える指令電流生成部30bによって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図27において、先の図13に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0119】
この一連の処理では、ステップS10の処理の完了後、ステップS48において、取得された指令トルクTrq*及び電気角速度ωeに基づき、正弦波形の指令電圧V¥*の振幅Vp、ON位相θon及び通電指示幅θwを設定する。ここで、本実施形態において、指令電圧V¥*の振幅Vp、ON位相θon及び通電指示幅θwは、指令トルクTrq*及び電気角速度ωeと関係付けられて上記振幅Vp、ON位相θon及び通電指示幅θwが規定されたマップを用いて設定される。このマップは、メモリ33に記憶されている。換言すれば、マップに基づき後述するステップS16、S50、S52において設定される指令電圧V¥*は、メモリ33に記憶されている。なお、本実施形態において、ステップS16、S50、S52の処理が「磁束算出手段」に相当する。
【0120】
続くステップS16では、現在の電気角θeが通電指示期間であるか否かを判断する。ステップS16において否定判断された場合には、現在の電気角θeが通電指示期間ではないと判断し、ステップS50に進む。ステップS50では、指令電圧V¥*を「0」とする。一方、上記ステップS16において肯定判断された場合には、現在の電気角θeが通電指示期間であると判断し、ステップS52に進む。ステップS52では、判定パラメータ及び「360°」の乗算値を独立変数とする正弦関数に指令電圧V¥*の振幅Vpを乗算することで、指令電圧V¥*を算出する。
【0121】
ステップS50、S52の処理が完了した場合、ステップS54に進み、指令電圧V¥*の時間積分値として、指令磁束ψ¥*を生成する。これは、上記第11の実施形態で説明したように、コイル22¥の印加電圧の時間積分値がコイル22¥の鎖交磁束となる関係を利用したものである。
【0122】
ステップS54の処理が完了した場合、ステップS22に進み、電気角θe、上記ステップS54で生成された指令磁束ψ¥*、及び先の図4に示したSRモータの磁束特性に基づき、指令電流i¥*を生成する。
【0123】
なお、ステップS22の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0124】
以上説明した本実施形態によれば、都度算出される指令磁束ψ¥*と、都度取得される電気角θeとを、記憶された磁束特性に入力することで、指令電流i¥*を生成することができるため、上記第2の実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0125】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0126】
・「指令磁束」の設定手法としては、上記第1の実施形態の図3(a)に例示したものに限らない。例えば、電気角θeの1周期において指令磁束ψ¥*の描く波形が、正弦波状の波形、三角波状の波形、台形波状の波形もしくはN角形状の波形(Nは4以上の整数)を含む波形、又はそれらの組み合わせの波形となるように指令磁束ψ¥*を設定してもよい。ここで、三角波状の波形、台形波状の波形及びN角形状の波形は、「多角形状の波形」に含まれる波形である。以下(A),(B)において、こうした波形のうちいくつかを例示して説明する。
【0127】
(A)図28に示すように、通電指示期間(時刻t1〜t2)において、指令磁束ψ¥*が「多角形状の波形」としての三角波形となるように指令磁束ψ¥*を設定してもよい。この場合であっても、上記第1の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることができる。
【0128】
(B)図29に示すように、通電指示期間(時刻t1〜t2)において、指令磁束ψ¥*が、正弦波形及び直線の組み合わせの波形となるように指令磁束ψ¥*を設定してもよい。この場合であっても、上記第1の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることができる。なお、正弦波形及び直線の組み合わせの波形以外に、例えば、正弦波形及び多角形状の組み合わせの波形となるように指令磁束ψ¥*を設定してもよい。
【0129】
また、「指令磁束」の設定手法としては、さらに以下に説明するものであってもよい。
【0130】
理想的な正弦波である正弦波形や、上記(A),(B)で登場した多角形状の波形に高調波成分が若干含まれる程度の指令磁束に設定するならば、正弦波形が若干歪んだ波形(正弦波状の波形)や、三角波形が若干歪んだ波形(三角波状の波形)、台形波形が若干歪んだ波形(台形波状の波形)であってもよい。この場合であっても、鎖交磁束の変化を緩やかにできることから、SRモータの高調波損失等の低減効果を得ることはできる。
【0131】
また、通電指示期間において、第2の軸線L2に対して線対称となるように指令磁束を設定するものに限らない。例えば、通電指示期間において、第2の軸線L2に対して指令磁束ψ¥*が非対称となるように指令磁束を設定するものであってもよい。この場合であっても、電気角θeの1周期において指令磁束の描く波形が連続であるなら、SRモータの高調波鉄損及び騒音の低減効果を得ることはできる。
【0132】
さらに、電気角θeの1周期において指令磁束が連続となるものに限らない。この場合であっても、SRモータの高調波鉄損等の低減を考慮して指令磁束を設定するなら、高調波鉄損等の低減効果を得ることはできる。
【0133】
・上記第3の実施形態において、磁束変化量dψ¥が「0」以上となる場合にコイル22¥の印加電圧として用いられる2つの電圧のうち低い方(ゼロ電圧)と、磁束変化量dψ¥が「0」未満となる場合にコイル22¥の印加電圧として用いられる2つの電圧のうち高い方(ゼロ電圧)とは共通であることに限らず、異なっていてもよい。この場合であっても、上記第3の実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることはできる。なお、こうした構成は、上記第4の実施形態についても適用できる。
【0134】
・上記第3,第4の実施形態では、第1の期間における基準信号Sig¥に基づくオンオフ操作対象を下アームスイッチング素子S¥nとし、第2の期間における基準信号Sig¥に基づくオンオフ操作対象を上アームスイッチング素子S¥pとしたがこれに限らない。例えば、第1の期間における上記オンオフ操作対象を上アームスイッチング素子S¥pとし、第2の期間における上記オンオフ操作対象を下アームスイッチング素子S¥nとしてもよい。
【0135】
・上記第5の実施形態において、第1の期間及び第2の期間の双方の基準信号Sig¥に基づくオンオフ操作対象を下アームスイッチング素子S¥nに固定してもよい。
【0136】
・上記第4の実施形態において、上記第5の実施形態の図19に示したように、第1の期間及び第2の期間の双方の基準信号Sig¥に基づくオンオフ操作対象を上アームスイッチング素子S¥pに固定してもよい。また、上記第4の実施形態において、第1の期間及び第2の期間の双方の基準信号Sig¥に基づくオンオフ操作対象を下アームスイッチング素子S¥nに固定してもよい。
【0137】
・上記第1,第12の実施形態において、上記第6の実施形態の図20に示したモータの磁束特性に基づき、メモリ33に記憶させる指令電流i¥*を生成してもよい。
【0138】
・指令電圧V¥*の設定手法としては、上記第12の実施形態に例示したものに限らない。例えば、指令トルクTrq*及びω電気角速度ωeと関係付けられた電気角θe1周期分の指令電圧V¥*の波形をメモリ33に予め記憶させ、制御装置30の処理周期毎に都度取得される指令トルクTrq*、電気角速度ωe及び電気角θeを入力として、上記処理周期毎に都度の指令電圧V¥*を設定する手法であってもよい。
【0139】
・「上アーム整流素子」としては、ダイオードに限らない。要は、一対の端子のうち一方から他方への電流の流通を許容してかつ逆方向の電流の流通を規制(より具体的には遮断)する機能を有する素子であれば、他の素子であってもよい。なお、「下アーム整流素子」についても同様である。
【0140】
・「上アームスイッチング素子」及び「下アームスイッチング素子」としては、IGBTに限らない。例えば、MOSFETやバイポーラトランジスタであってもよい。
【0141】
・「電力変換回路」としては、上記第1の実施形態の図1に示した回路に限らず、コイルに流れる電流を制御可能であれば、他の電力変換回路であってもよい。
【0142】
・「直流電源」としてはバッテリに限らない。例えば、交流電源と、交流電源から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する整流回路とで直流電源を構成してもよい。
【0143】
・本発明の適用対象としては、車載主機としてのSRモータに限らず、例えば車載補機としてのSRモータであってもよい。また、本発明の適用対象としては、車載SRモータに限らない。
【符号の説明】
【0144】
20…電力変換回路、22u,22v,22w…U,V,W相コイル。
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