(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232939
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】インストルメントパネル前部の遮音構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20171113BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B60R13/08
B60K37/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-228131(P2013-228131)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-85891(P2015-85891A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平野 純也
(72)【発明者】
【氏名】神谷 康優
【審査官】
山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−154782(JP,A)
【文献】
特開2001−138773(JP,A)
【文献】
特開平08−282401(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0131100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドシールドガラスの下部を支持するカウルトップパネルの上方で前記ウィンドシールドガラスに沿って車幅方向に延在するインストルメントパネル前部の遮音構造であって、
前記インストルメントパネルの前端部下面と前記カウルトップパネルとの間に遮音材を車幅方向に亘って介設し、
前記インストルメントパネルの前端に下方に屈曲したフランジが形成され、
前記遮音材は前記インストルメントパネルの前部下面で前記フランジ後端の屈曲部に沿って車幅方向に延在している、
ことを特徴とするインストルメントパネル前部の遮音構造。
【請求項2】
前記遮音材は、前記インストルメントパネルの前部下面に取り付けられ、前記カウルトップパネルに弾接される、
ことを特徴とする請求項1記載のインストルメントパネル前部の遮音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車室内に伝達される騒音の低減を図ったインストルメントパネル前部の遮音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前部空間などから発生した騒音は、カウルトップパネルを介してインストルメントパネルの内側の空間にこもる。この騒音は、インストルメントパネルの前方を通って車室内に伝達される。
そこで、従来は、インストルメントパネルの前端に車幅方向に延在する遮音材を取り付け、この遮音材によりインストルメントパネルの前端とウィンドシールドガラスとの間を閉塞することで騒音の車室内への伝達を抑制している(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143400号公報
【特許文献2】特開2010−163014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、インストルメントパネルに取り付けられた遮音材が乗員の視界に入るため、見栄えがよいものとはいえない。
特に、遮音材の貼り付け位置が遮音材の長手方向に沿ってばらつくと見栄えが悪く車両の商品価値を損ねるため、遮音材の貼り付け位置の管理を厳しく行なう必要があり、遮音材の貼り付け作業に時間を要し、コストダウンを図る上で改善の余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、車室内に伝達される騒音の低減を図りつつ車両の商品価値を高め、コストダウンを図る上で有利なインストルメントパネル前部の遮音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ウィンドシールドガラスの下部を支持するカウルトップパネルの上方で前記ウィンドシールドガラスに沿って車幅方向に延在するインストルメントパネル前部の遮音構造であって、前記インストルメントパネルの前端部下面と前記カウルトップパネルとの間に遮音材を車幅方向に亘って介設
し、前記インストルメントパネルの前端に下方に屈曲したフランジが形成され、前記遮音材は前記インストルメントパネルの前部下面で前記フランジ後端の屈曲部に沿って車幅方向に延在していることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、
前記遮音材は、前記インストルメントパネルの前部下面に取り付けられ、前記カウルトップパネルに弾接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るインストルメントパネル前部の遮音構造によれば、遮音材によりインストルメントパネルの下方からインストルメントパネルの前方を通って車室内に伝達される騒音を遮音できることは無論のこと、遮音材は、インストルメントパネルによって隠されているため、遮音材が乗員の視界に入ることがなく車両の商品価値を高める上で有利となる。
また、遮音材の貼り付け位置の管理を緩めることができることから、遮音材の貼り付け作業に要する時間を短縮でき、コストダウンを図る上で有利となる。
さらに、インストルメントパネル前端に形成したフランジにより遮音材を車幅方向に沿って簡単かつ確実に配置でき、作業性の効率化を図る上で有利となる。また、フランジによって遮音材の変形や倒れが抑制され、遮音材とカウルトップパネルとの密着性が高められるので、遮音性を確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係るインストルメントパネル前部の遮音構造を示す断面図である。
【
図2】変形例におけるインストルメントパネル前部の遮音構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
車両10は、車室12の前方に車体の前部空間Sを有している。
車体の前部空間Sには、ガソリン車あるいはディーゼル車の場合には、例えば、エンジンおよびラジエータが配置され、ハイブリッド車の場合には、例えば、エンジンおよびラジエータに加えてモータに電力を供給するコンバータが配置され、電気自動車の場合には、例えば、モータに電力を供給するコンバータが配置される。
【0009】
車体の前部空間Sと車室12はダッシュパネル14で仕切られ、ダッシュパネル14は鋼板で構成されている。
ダッシュパネル14の車室12側に対向する表面全域には、防音部材を構成するインシュレータパッド16が貼り付けられている。
ダッシュパネル14の下端は、車室12の下部を仕切るフロアパネル(不図示)の前端に接続されている。
ダッシュパネル14の上端にはカウルトップパネル18が連結され、カウルトップパネル18は鋼板で構成されている。
カウルトップパネル18は、ウィンドシールドガラス20の下部を支持するものであり、車幅方向に沿って延在している。
符号22は、ウィンドシールドガラス20の内面の下部とカウルトップパネル18の上面1802とに接着された位置決めスペーサである。
【0010】
インストルメントパネル24は、車室12の前部において車幅方向に亘って設けられている。インストルメントパネル24は、その前部がカウルトップパネル18を覆うようにカウルトップパネル18の上方に位置され、ウィンドシールドガラス20の後面に沿って車幅方向に延在している。
インストルメントパネル24の前端には、下方に屈曲したフランジ2402が車幅方向に沿って延在形成されている。
このようなフランジ2402を形成することでインストルメントパネル24の前端の剛性を確保している。
【0011】
カウルトップパネル18とインストルメントパネル24の前部との間には、遮音材26が車幅方向に亘って介設されている。
本実施の形態では、遮音材26はインストルメントパネル24の下面2410の前方の位置でフランジ2402の後端の屈曲部2404に沿って車幅方向に延在している。
遮音材26としては、弾性を有する多孔質材料やゴムなど従来公知の様々な材料が使用可能である。
遮音材26は、断面矩形の細長形状を呈しており、4つの側面のうちの1つの側面2602が接着剤あるいは両面粘着テープによりインストルメントパネル24の下面2410に接着されている。
また、遮音材26は、4つの側面のうちの他の1つの側面2604がカウルトップパネル18の上面1802に弾接している。
したがって、カウルトップパネル18とインストルメントパネル24の前部との間の隙間が遮音材26により閉塞されている。
【0012】
本実施の形態によれば、カウルトップパネル18とインストルメントパネル24の前部との間に介設した遮音材26によりインストルメントパネル24の下方からインストルメントパネル24の前方を通って車室12内に伝達される騒音を遮音する。
また、遮音材26は、インストルメントパネル24によって隠されているため、遮音材26が乗員の視界に入ることがなく車両の商品価値を高める上で有利となる。
また、遮音材26が乗員の視界に入らないため、遮音材26の貼り付け位置の管理を緩めることができ、遮音材26の貼り付け作業に要する時間を短縮でき、コストダウンを図る上で有利となる。
【0013】
また、本実施の形態では、インストルメントパネル24の前端に下方に屈曲したフランジ2402を形成し、フランジ2402後端の屈曲部2404に沿って遮音材26を車幅方向に延在しているため、遮音材26をインストルメントパネル24に取り付ける際に、フランジ2402に沿って簡単かつ確実にばらつきを抑えて車幅方向に配置でき、作業性の効率化を図る上で有利となる。
さらに、遮音材26がインストルメントパネル24とカウルトップパネル18との間で挟まれることによって潰れても、下方に屈曲するフランジ2402により遮音材26の前方側が支持されて遮音材26の変形や前方への倒れこみが抑制される。そのため、遮音材26とカウルトップパネル18との密着性が高められ、遮音性を確保する上でより有利となる。また、フランジ2402により遮音材26が変形してインストルメントパネル24の前端からはみ出して見栄えが悪化することを防止できる。
【0014】
なお、
図2に示すように、カウルトップパネル18の表面に防音部材を構成するパッド材28が貼り付けられていている場合、遮音材26は、パッド材28を介してカウルトップパネル18の表面に弾接する。この場合には、遮音性を向上する上でより有利となる。
【符号の説明】
【0015】
10 車両
12 車室
18 カウルトップパネル
20 ウィンドシールドガラス
24 インストルメントパネル
2402 フランジ
2404 屈曲部
2410 下面
26 遮音材