特許第6232970号(P6232970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232970締結ボルトの固定構造、電気接続端子台及び電動パワーステアリング装置、並びに締結ボルトの固定構造製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232970
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】締結ボルトの固定構造、電気接続端子台及び電動パワーステアリング装置、並びに締結ボルトの固定構造製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/10 20060101AFI20171113BHJP
   B29C 65/16 20060101ALI20171113BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20171113BHJP
   H01R 9/00 20060101ALI20171113BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F16B39/10 Z
   B29C65/16
   B62D5/04
   F16B39/10 L
   H01R9/00 B
   H01R4/34
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-242622(P2013-242622)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-102143(P2015-102143A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】河原 弘志
(72)【発明者】
【氏名】児玉 徹也
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3113674(JP,U)
【文献】 特開2011−255737(JP,A)
【文献】 特開2010−135176(JP,A)
【文献】 特開2009−113740(JP,A)
【文献】 特開2003−225946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C63/00−65/82
B62D5/00−5/32
F16B23/00−43/02
H01R4/24−4/46
9/00
9/15−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子同士をボルト締めにより電気的に接続する締結ボルトの緩みを防止するための、締結ボルトの固定構造であって、
レーザ溶着用に照射されるレーザ光に対して吸収性のある樹脂からなり、前記締結ボルトの頭部に固定される固定部材と、
前記レーザ光に対して透過性のある樹脂からなり、前記締結ボルトを上方からうように且つ自身裏面と前記固定部材の上面とが密着可能に当該締結ボルトが取り付けられるボルト取付部材に固定されるカバーと、を備え、
前記締結ボルトは、前記固定部材と前記カバーとが相互に密着する境界部分が前記カバー側からレーザ溶着されることにより緩みが防止されていることを特徴とする締結ボルトの固定構造。
【請求項2】
前記固定部材は、前記締結ボルトの頭部が相対回転不可能に嵌合する凹部を有し、嵌合により前記締結ボルトの頭部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の締結ボルトの固定構造。
【請求項3】
前記カバーは、前記固定部材の頭部が嵌合する孔を有し、
前記固定部材と前記カバーとは、前記孔の周縁部内側での前記境界部分がレーザ溶着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の締結ボルトの固定構造。
【請求項4】
1つの前記カバーに複数の前記固定部材がレーザ溶着されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の締結ボルトの固定構造。
【請求項5】
前記請求項1〜の何れか1項に記載の締結ボルトの固定構造を備え、端子同士をボルト締めにより電気的に接続することを特徴とする電気接続端子台。
【請求項6】
ステアリングホイールから伝達される操舵トルクを検出するトルク検出部と、
前記トルク検出部で検出した操舵トルクに応じた操舵補助トルクを発生する電動モータと、
前記電動モータの駆動を制御するコントロール部と、
前記電動モータの端子と前記コントロール部の端子とを電気的に接続する前記請求項に記載の電気接続端子台と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記請求項1〜4の何れか1項に記載の締結ボルトの固定構造を製造する方法であって、
前記固定部材を前記締結ボルトの頭部に固定するとともに、前記カバーを自身裏面と前記固定部材の上面とが密着するように且つ前記締結ボルトを上方から覆うように前記ボルト取付部材に固定し、
前記レーザ光を前記カバー側から該カバーを透過して前記固定部材上面に照射し、該固定部材上面を発熱、溶融させるとともに該固定部材側からの熱によって前記カバーの裏面をも溶融させ、これにより、前記固定部材と前記カバーとが相互に密着する境界部分をレーザ溶着して前記締結ボルトの緩みを防止することを特徴とする締結ボルトの固定構造製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み防止機能を有する締結ボルトの固定構造、その締結ボルトの固定構造を備える電気接続端子台、及び電動パワーステアリング装置、並びに締結ボルトの固定構造製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトの固定方法として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、リフレクタとインサートボルトとをハウジングに固定する方法であり、ここでは、リフレクタの裏面に形成した合成樹脂製の結合用突起をハウジングの突起挿通孔に貫通させ、ハウジングの裏面側に形成されたボルト取り付け部の凹部内で高周波加振を施すことで、加締めとボルト頭部との溶着とを実現している。
【0003】
しかしながら、この技術は、リフレクタとインサートボルトとをハウジングに対して同時に(1工程で)固定することを目的としており、ボルトの緩み止めを目的としたものではない。
ボルトの緩み止め機構としては、多くの対策が提案されており、例えば、間座の変形や締結材への食いつきによる緩み止め効果を期待したもの、ねじ山頂部の弾性力で緩み止め効果を期待したもの、ねじ山部に接着剤を塗布したもの、ナットのクサビ効果によるもの、各部の塑性変形によるもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のボルトの緩み止め機構にあっては、緩みに対して一定の効果を得られるものの、以下のような課題を有している。
すなわち、摩擦力を上げる方法では、接触面への油分付着や、微小振動による表面磨耗など、緩み止め効果を保証するには不十分な場合がある。また、塑性変形を伴う対策の場合、ガタなく固定することが困難であると共に、分解や再利用が困難であるという問題がある。さらに、接着剤などの場合、その塗布量のばらつきにより緩み止め効果にばらつきが生じる。また、クサビ効果を期待したナットのような異形状のナットを組み合わせる場合、ナットの組付け方向の間違いや、組付ける順番の間違いなどが発生するおそれがある。
そこで、本発明は、締結ボルトの緩み止めを効果的に実現することができる締結ボルトの固定構造、電気接続端子台及び電動パワーステアリング装置、並びに締結ボルトの固定構造製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る締結ボルトの固定構造の一態様は、端子同士をボルト締めにより電気的に接続する締結ボルトの緩みを防止するための、締結ボルトの固定構造であって、レーザ溶着用に照射されるレーザ光に対して吸収性のある樹脂からなり、前記締結ボルトの頭部に固定される固定部材と、前記レーザ光に対して透過性のある樹脂からなり、前記締結ボルトを上方からうように且つ自身裏面と前記固定部材の上面とが密着可能に当該締結ボルトが取り付けられるボルト取付部材に固定されるカバーと、を備え、前記締結ボルトは、前記固定部材と前記カバーとが相互に密着する境界部分が前記カバー側からレーザ溶着されることにより緩みが防止されている
また、本発明に係る締結ボルトの固定構造製造方法の一態様は、本発明に係る締結ボルトの固定構造を製造する方法であって、前記固定部材を前記締結ボルトの頭部に固定するとともに、前記カバーを自身裏面と前記固定部材の上面とが密着するように且つ前記締結ボルトを上方から覆うように前記ボルト取付部材に固定し、前記レーザ光を前記カバー側から該カバーを透過して前記固定部材上面に照射し、該固定部材上面を発熱、溶融させるとともに該固定部材側からの熱によって前記カバーの裏面をも溶融させ、これにより、前記固定部材と前記カバーとが相互に密着する境界部分をレーザ溶着して前記締結ボルトの緩みを防止する。
【0007】
このように、締結ボルトの頭部に固定された固定部材と、ボルト取付部材に固定されるカバーとをレーザ溶着により固定するので、適切に締結ボルトの回転を規制し、効果的に締結ボルトの緩み止めを実現することができる。また、レーザ溶着により緩み止め機能を実現するので、例えば超音波溶着のように周辺部品への振動伝播や粉塵の発生、溶着時の騒音といった問題が発生することがない。
【0008】
また、上記において、前記固定部材は、前記締結ボルトの頭部に一体成形されていることが好ましい。これにより、締結ボルトと固定部材との間のガタをなくし、確実に締結ボルトの緩み止め機能を実現することができる。また、締結ボルトと固定部材とを一体成形とすることで、部品点数を増やすことなく緩み止めを行うことができる。
さらに、上記において、前記固定部材は、前記締結ボルトの頭部が相対回転不可能に嵌合する凹部を有し、嵌合により前記締結ボルトの頭部に固定されていることが好ましい。このように、締結ボルトと固定部材とを別部品とすることで、レーザ溶着後のカバー及び固定部材が締結ボルトに対して取り外し可能となり、分解を容易に行うことができる。
【0009】
また、上記において、前記カバーは、前記固定部材の頭部が嵌合する孔を有し、前記固定部材と前記カバーとは、前記孔の縁部がレーザ溶着されていることが好ましい。これにより、カバーをボルト取付部材に取り付けた状態で固定部材の装着状態を目視で確認することができるので、適切な位置にレーザ光を照射することができ、確実にカバーと固定部材とを固定することができる。
【0010】
さらにまた、上記において、1つの前記カバーに複数の前記固定部材がレーザ溶着されていることが好ましい。これにより、各々が各々の回転止めとして機能し、確実に締結ボルトの緩みを防止することができる。
また、本発明に係る電気接続端子台の一態様は、上記の何れかの締結ボルトの固定構造を備え、端子同士をボルト締めにより電気的に接続する。これにより、信頼性の高い緩み止め機能を有するボルト締め構造の電気接続端子台とすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る電動パワーステアリング装置の一態様は、ステアリングホイールから伝達される操舵トルクを検出するトルク検出部と、前記トルク検出部で検出した操舵トルクに応じた操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電動モータの駆動を制御するコントロール部と、前記電動モータの端子と前記コントロール部の端子とを電気的に接続する上記の電気接続端子台と、を備える。
このように、信頼性の高い緩み止め機能を有するボルト締め構造の電気接続端子台を、電動モータとコントローラとの接続部に用いることで、信頼性の高い電動パワーステアリング装置とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の締結ボルトの固定構造では、締結ボルトの頭部に固定された固定部材と、ボルト取付部材に固定されるカバーとをレーザ溶着により固定するので、効果的に締結ボルトの緩み止めを実現することができる。
そのため、その締結ボルトの固定構造を備えることで、信頼性の高い電気接続端子台及び電動パワーステアリング装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の締結ボルトの固定構造を用いた電気接続端子台が適用される電動パワーステアリング装置の基本構造を示す図である。
図2】コントローラの構成を示す図である。
図3】第1の実施形態における電気接続端子台のボルト締め構造を示す分解斜視図である。
図4】第1の実施形態の電気接続端子台の組立状態を示す断面図である。
図5】第1の実施形態のレーザ溶着部を示す部分断面図である。
図6】第2の実施形態における電気接続端子台のボルト締め構造を示す分解斜視図である。
図7】第2の実施形態の固定部材の構成を示す図である。
図8】第2の実施形態の電気接続端子台の組立状態を示す断面図である。
図9】第3の実施形態における電気接続端子台のボルト締め構造を示す分解斜視図である。
図10】第3の実施形態の電気接続端子台の組立状態を示す断面図である。
図11】第3の実施形態のレーザ溶着部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の締結ボルトの固定構造を用いた接続端子台が適用される電動パワーステアリング装置の基本構造を示す図である。
図中、符号1はステアリングホイールであり、運転者からこのステアリングホイール1に作用される操舵力はステアリングシャフト2に伝達される。ステアリングホイール1に伝達された操舵力は、減速ギヤ3、ユニバーサルジョイント4A及び4B、ピニオンラック機構5を介してタイロッド6に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。
【0015】
ステアリングシャフト2には、ステアリングホイール1に付与されてステアリングシャフト2に伝達された操舵トルクTsを検出するトルクセンサ7が設けられている。また、減速ギヤ3には、操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータ8が連結されている。ここで、電動モータ8は3相ブラシレスモータである。
コントローラ10には、バッテリー(図示せず)から電力が供給されるとともに、イグニションキー(図示せず)を経てイグニションキー信号が入力される。コントローラ10は、トルクセンサ7で検出した操舵トルクTsと車速センサ9で検出した車速Vとに基づいて操舵補助指令値の演算を行い、演算した操舵補助指令値に基づいて電動モータ8に供給する電流を制御する。
【0016】
コントローラ10は、主としてマイクロコンピュータで構成されるが、その構成を示すと図2に示すようになる。
コントローラ10は、制御回路11と、駆動回路12とを備える。
制御回路11は、操舵トルクTs及び車速Vの他に、図示しない電動モータ8のモータ電流や電動モータ8の回転位置を入力し、これらに基づいて電動モータ8の電流指令値を演算する。そして、制御回路11は、演算した電流指令値等に基づいてゲート駆動信号を形成し、これをFETのブリッジ構成で成る駆動回路12に出力する。これにより、電動モータ8が駆動される。
【0017】
制御回路11及び駆動回路12は基板13上に実装されており、この基板13の一端部には、電動モータ8との接続部として機能する電気接続端子台14が固設されている。電気接続端子台14には、ボルト締め構造による3つの出力端子14a〜14cが形成されており、これら出力端子14a〜14cに、電動モータ8から伸びる3本のバスバー21a〜21cの端子が接続される。
【0018】
図3は、電気接続端子台14のボルト締め構造を示す分解斜視図である。
この図3に示すように、電気接続端子台14の出力端子14a〜14c、及びバスバー21a〜21cの端子TNa〜TNcには長穴が形成されている。そして、その長穴にボルト15を挿通し、ボルト15をボルト取付部材である電気接続端子台に取り付けることで、出力端子14a〜14cと端子TNa〜TNcとが電気的に接続されるようになっている。
【0019】
ボルト15の頭部には、レーザ光に対して吸収性のある樹脂(レーザ光吸収性樹脂)からなる固定部材15aが一体成形されている。ここで、レーザ光吸収性樹脂としては、非結晶性のPS(ポリスチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PAR(ポリアリレート)、PSF(ポリサルフォン)、PES(ポリエーテルサルフォン)、結晶性のPP・PE(ポリプロピレン・ポリエチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、POM(ポリアセタール)、PPS(ポリファニルサルファイド)などの材料に対し、レーザ吸収性の色素を添加したものを用いる。
【0020】
このボルト15を締結した後の電気接続端子台14には、端子台カバー16が取り付けられる。端子台カバー16は、レーザ光に対して透過性のある樹脂(レーザ光透過性樹脂)で成形されている。ここで、レーザ光透過性樹脂としては、上述したレーザ光吸収性樹脂の材料の中から適宜選択したものを用いる。なお、必要に応じて、その材料にレーザ光に対して透過性のある着色材料(染料、顔料を含む)を添加したものを用いる。
【0021】
端子TNa〜TNcの接続手順としては、先ず電気接続端子台14に設けられた出力端子14a〜14cにバスバー21a〜21cの端子TNa〜TNcを重ねて置き、固定部材15aが一体成形されたボルト15を締めて出力端子14a〜14cと端子TNa〜TNとを固定する。そして、ボルト15の上から端子台カバー16を被せ、これを電気接続端子台14に固定する。このとき、図4に示すように、端子台カバー16の裏面と固定部材15aの上端面とが密着するように端子台カバー16の上から圧力をかけ、その状態で端子台カバー16側から固定部材15aの取り付け位置にレーザビームを照射する。
【0022】
これにより、端子台カバー16を透過したレーザビームによって固定部材15aが照射され、固定部材15aにおいてレーザビームが照射された部分、すなわち、固定部材15aにおける端子台カバー16との境界部分が発熱、溶融する。また、固定部材15aからの伝熱によって、端子台カバー16における固定部材15aとの境界部分も発熱、溶融する。このようにして、端子台カバー16と固定部材15aとが溶着される。ここで、レーザ溶着部LWは、図5の部分断面図に示すように直線状とする。
【0023】
なお、レーザ溶着部LWは、直線状に限定されるものではなく、円状やジグザグ状などであってもよい。レーザ溶着部LWの強度は、溶着長さ(面積)に比例するため、必要な強度に合わせて溶着形状を適宜選択するものとする。また、レーザビームとしては、端子台カバー16の吸収スペクトルや板厚等を考慮し、端子台カバー16の透過率が所定値以上となるような波長を有するものを適宜選択する。
【0024】
このように、ボルト15の頭部に固定された固定部材15aと、ボルト取付部材である電気接続端子台14に固定される端子台カバー16とをレーザ溶着により固定するので、ボルト15の回転を規制し、ボルト15の緩み止めを実現することができる。
また、固定部材15aをボルト15に一体成形するので、固定部材15aとボルト15との間のガタがなくなり、より確実に緩み止めとしての機能を得ることができる。さらに、固定部材15aをボルト15に一体成形することで、部品点数を増やすことなく緩み止めを行うことができると共に、組付け時における固定部材15aの装着忘れを防止することができる。
【0025】
また、端子台カバー16とボルト15の頭部に固定された固定部材15aの端面とを溶着するため、ボルト15の締結位相に関係なく、任意の位相で固定することができる。
さらに、1つの端子台カバー16に複数(ここでは3つ)の固定部材15aを溶着するので、各々が各々の回転止めとして機能し、確実にボルト15の緩みを防止することができる。
【0026】
また、レーザビームを用いて溶着することで、周辺部品への影響を最小限に抑えることができる。例えば、超音波溶着の場合、周辺部品への振動伝播、粉塵の発生、溶着時の騒音といった課題がある。このように溶着時に振動が発生すると、その振動によりボルトが緩むおそれがある。また、溶着時の騒音が大きいと、組立ラインを別にするなどの対策が必要となり、生産性に影響が出る場合がある。本実施形態では、レーザビームを用いたレーザ溶着を採用するので、上記の問題を回避することができる。
【0027】
さらにまた、本実施形態では、溶着時に、固定部材15aと端子台カバー16との間に接合圧力を付加するので、より強固な接合強度を得ることができる。また、レーザ溶着は、レーザ出力、接合圧力、溶着面積を管理することで、所望の溶着強度を得ることができる。したがって、緩み止めとしての品質確保も比較的容易である。
また、電気接続端子台14に取り付けられるボルト15には、電流が印加されるため、端子間(ボルト15間)は絶縁されている必要がある。本実施形態では、固定部材15aや端子台カバー16に、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のような絶縁性の高い樹脂を用いるので、ボルト15の緩み止めを行うと共に、絶縁性を向上させることができ、安定した動作を実現することができる。
【0028】
さらに、端子には多くの場合タフピッチ銅が使用されるが、タフピッチ銅は鋼材に比べて軟らかく、ボルト締結時の座面陥没やへたりによる初期緩みが発生する場合がある。本構造によれば、締結トルクを上げることなく、ボルト15の緩み止め効果を得ることができるため、上記のような初期緩みの発生を防止することができる。
以上のように、本実施形態は、ボルト15の緩みを効果的に防止することができるボルト15の固定構造を有する。そして、そのボルト15の固定構造を電動パワーステアリング装置の電動モータ8とコントローラ10とを電気的に接続する電気接続部に適用する。電動パワーステアリング装置の電気接続部は十分な信頼性が求められるため、本構造を適用することで、電動パワーステアリング装置の信頼性を向上することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、上述した第1の実施形態において、ボルトの頭部に固定する固定部材をボルトと一体成形しているのに対し、ボルトと固定部材とを別部品とするようにしたものである。
【0030】
図6は、第2の実施形態の電気接続端子台14のボルト締め構造を示す分解斜視図であり、図3における固定部材15aに代えて固定部材15bを用いるようにしたことを除いては、図3に示すボルト締め構造と同様の構成を有する。したがって、ここでは、構成の異なる部分を中心に説明する。
固定部材15bは、ボルト15と別部品で構成されており、図7に示すように、ボルト15の頭部と嵌合可能な嵌合穴(凹部)15cが形成されている。嵌合穴15cの形状は、固定部材15bがボルト15と相対回転不可能に嵌合する形状とし、ここでは六角形の穴とする。
【0031】
端子TNa〜TNcの接続手順としては、先ず電気接続端子台14に設けられた出力端子14a〜14cにバスバー21a〜21cの端子TNa〜TNcを重ねて置き、ボルト15を締めて出力端子14a〜14cと端子TNa〜TNとを固定する。次に、ボルト15の頭部に固定部材15bを取り付け、その上から端子台カバー16を被せ、これを電気接続端子台14に固定する。このとき、図8に示すように、端子台カバー16の裏面と固定部材15bの上端面とが密着するように端子台カバー16の上から圧力をかけ、その状態で端子台カバー16側から固定部材15bの取り付け位置にレーザビームを照射する。
【0032】
これにより、端子台カバー16と固定部材15bとが溶着される。ここで、レーザ溶着部LWは、第1の実施形態(図5)と同様に直線状とする。
なお、レーザ溶着部LWは、直線状に限定されるものではなく、円状やジグザグ状などであってもよい。レーザ溶着部LWの強度は、溶着長さ(面積)に比例するため、必要な強度に合わせて溶着形状を適宜選択するものとする。
このように、本実施形態では、固定部材15bをボルト15とは別部品で構成し、レーザ溶着前に固定部材15bをボルト15に嵌合する構造とする。この場合、レーザ溶着後の端子台カバー16と固定部材15bとが、ボルト15に対して取り外し可能な構造となるので、分解が容易となるという利点がある。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、電気接続端子台に被せるカバーに穴を設け、その穴縁を溶着するようにしたものである。
図9は、第3の実施形態の電気接続端子台14のボルト締め構造を示す分解斜視図である。
【0034】
この図9に示すように、ボルト15の頭部には、ボルト15と別部品である固定部材15dが取付可能となっている。ここで、固定部材15dは、第2の実施形態(図7)と同様に、ボルト15の頭部と嵌合可能な嵌合穴が形成されている。嵌合穴の形状は、固定部材15dがボルト15と相対回転不可能に嵌合する形状とし、ここでは六角形の穴とする。
また、端子台カバー16には、固定部材15dの頭部が嵌合する孔16aが形成されている。固定部材15dには、嵌合穴が形成されている側とは反対側の端部に、その外径よりも小さい径を有す突出部が形成されており、孔16aの形状は、当該突出部の形状と等しくなっている。
【0035】
端子TNa〜TNcの接続手順としては、先ず電気接続端子台14に設けられた出力端子14a〜14cにバスバー21a〜21cの端子TNa〜TNcを重ねて置き、ボルト15を締めて出力端子14a〜14cと端子TNa〜TNとを固定する。次に、ボルト15の頭部に固定部材15dを取り付け、その上から端子台カバー16を被せ、これを電気接続端子台14に固定する。このとき、図10に示すように、固定部材15dの突出部は、端子台カバー16の孔16aに嵌合し、端子台カバー16の上面側から固定部材15dの上端面(突出部の上端面)が視認可能な状態となる。そして、端子台カバー16の裏面と固定部材15dの周縁部とが密着するように端子台カバー16の上から圧力をかけ、その状態で孔16aの縁部にレーザビームを照射する。
【0036】
これにより、端子台カバー16と固定部材15dとが溶着される。ここで、レーザ溶着部LWは、図11に示すように、端子台カバー16に形成された孔16aの縁部となる。
このように、本実施形態では、端子台カバー16に固定部材15dが嵌合する孔16aを設けるので、端子台カバー16を電気接続端子台14に装着した後でも、固定部材15dの装着状態を目視で確認することができ、固定部材15dの装着忘れを防止することができる。また、固定部材15dの装着状態を目視で確認しながらレーザビームを照射することができるので、適切に端子台カバー16と固定部材15とを固定することができる。
【0037】
(変形例)
なお、上記各実施形態では、電動パワーステアリング装置の電動モータ8とコントローラ10とを電気的に接続する電気接続端子台14に本構造を適用する場合について説明したが、ボルト接続端子台であれば他の装置にも本構造を適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…減速ギヤ、4A,4B…ユニバーサルジョイント、5…ピニオンラック機構、6…タイトロッド、7…トルクセンサ、8…電動モータ、9…車速センサ、10…コントローラ、11…制御回路、12…駆動回路、13…基板、14…電気接続端子台、15…ボルト、15a…固定部材、15b…固定部材、15c…嵌合穴、15d…固定部材、16…端子台カバー、16a…孔、21a〜21c…バスバー、LW…レーザ溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11