特許第6232973号(P6232973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232973紙用グラビア墨インキ組成物およびこれを用いてなる印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232973
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】紙用グラビア墨インキ組成物およびこれを用いてなる印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20171113BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C09D11/037
   B41M1/10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-244694(P2013-244694)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101688(P2015-101688A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】塚脇 博
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−037108(JP,A)
【文献】 特開2013−035982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸油量カーボンブラック(1)、低吸油量カーボンブラック(2)、樹脂および溶剤を含有する紙用グラビア墨インキ組成物であって、樹脂が硝化綿であり、
カーボンブラック(1)のDBP吸油量をA(1)、カーボンブラック(2)のDBP吸油量をA(2)、墨インキ組成物中のカーボンブラック(1)の重量比をW(1)%、カーボンブラック(2)の重量比をW(2)%としたとき、下記(ア)〜(ウ)であることを特徴とする紙用グラビア墨インキ組成物。
(ア)A(1)が100〜140ml/100gであり、A(2)が50〜70m
l/100gである。
(イ)(A(1)×W(1)+A(2)×W(2))/((W(1)+W(2))
が85〜100である。
(ウ) W(1)+W(2)が8〜11.5である。
【請求項2】
更に、二酸化珪素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムから選択される1種類以上の無機フィラーを含有し、墨インキ組成物全量中、前記無機フィラーを0.5〜3.0重量%含有することを特徴とする請求項1記載の紙用グラビア墨インキ組成物。
【請求項3】
ノンコート紙への印刷用である、請求項1または2記載の紙用グラビア墨インキ組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の紙用グラビア墨インキ組成物を、紙基材に印刷してなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用グラビア墨インキ組成物およびこれを用いてなる印刷物に関する。更に詳しくは、インキが浸透しやすいノンコート紙へ印刷した際も良好な黒色感を有すると共に良好な接着性と印刷時に良好な印刷適性を有する溶剤型のグラビア墨インキ組成物およびこれを用いてなる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は出版用途、食品包装などの包装用途などの印刷に使用される。グラビア印刷の大きな特徴の1つには、多様な基材への印刷が可能であることが挙げられる。例としてポリプロピレンなどのポリオレフィン系やポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム基材、紙基材、アルミニウム箔などの金属箔などに印刷が可能であり、印刷物は用途に応じて後加工が施され使用される。
【0003】
中でも紙基材には、意匠性の観点や後加工に応じ、アート紙、コート紙、ノンコート紙などが使用される。特にノンコート紙はコート層の塗工が必要ないため安価であり、出版用途、包装用途などに広く使用されている。
【0004】
グラビア印刷インキは大きく溶剤型のグラビア印刷インキと水性グラビア印刷インキに分類される。水性型グラビア印刷インキと比較し溶剤型グラビア印刷インキは炭化水素、ケトン類、エステル類、アルコール類などの有機溶剤を適宜使用することでさまざまな樹脂を溶解し使用することができる。そのため適切な樹脂を選択することで耐摩擦性、耐熱性などの後加工適性や印刷適性を得ることができるという利点を持つ。
【0005】
しかしながら、溶剤型グラビア印刷インキをノンコート紙に使用した場合、基材への浸透性が大きいために著しい濃度低下が生じる。この原因として挙げられるのは、グラビア印刷が印刷時のインキ粘度が低く、さらに有機溶剤は表面張力が低いためノンコート紙へ染み込みやすいことである。そのため、ノンコート紙に印刷した際も十分な濃度を維持するために、インキ中の顔料分を増加させる方法があるが、インキ中の顔料分を増加させると相対的な樹脂分は低下する。この樹脂分の低下により、インキ中で分散されている顔料を包む樹脂分が低下することになり版かぶり性など印刷適性の低下が生じるほか、ノンコート紙に印刷した際には樹脂も基材へ浸透してしまうため顔料を包む樹脂がさらに低下し、チョーキングを発生させることによって基材への接着性が低下するという問題も生じてしまう。
【0006】
以上の問題点から、浸透性の大きいノンコート紙にて高い濃度の印刷物を作成する場合は、表面張力の高い水性型グラビア印刷インキをはじめとした水性インキを使用するか、もしくは高粘度にて印刷が可能なオフセット印刷を使用することが必要であり、溶剤型グラビア印刷インキを使用しノンコート紙に印刷される場合、低濃度にて問題ない用途のみに限定して使用されることが一般的であった。
【0007】
特に墨インキは他の色と比較し、浸透による目視での濃度、黒色感の低下が著しく、オフセット印刷インキにおいても浸透による濃度低下を防止するため顔料のカーボンブラックの選定やインキ製法に関する様々な技術が、例えば特許文献1にて報告されている。しかしながら、これらの特許はオフセット印刷インキについて限定されたものであり、基材への浸透性の高い溶剤型グラビア印刷墨インキにこれらを利用したとしても黒色感ある印刷物を得ることができない。溶剤型グラビア印刷墨インキの浸透防止については特許文献2にて記述があるものの、開示されている内容はオフセット印刷インキに関する記述であり、これを溶剤型グラビア印刷墨インキへ利用したとしても黒色感ある印刷物を得ることはできない。
【0008】
グラビア印刷墨インキに顔料として使用されるカーボンブラックは一次(基本)粒子と呼ばれる球状のカーボン粒子が融着し、ぶどうの房に例えられるような鎖状に枝分かれした複雑な凝集体を形成している。この凝集体をアグリゲートと呼び、このアグリゲートを形成している一次粒子の融着の程度をストラクチャーと呼んでいる。一般的にノンコート紙に対して浸透を防止し印刷濃度を維持するためにはアグリゲート径の大きいカーボンブラック、すなわち一次粒子径が大きい、もしくはストラクチャーが高いカーボンを選択する必要があることが非特許文献1などで知られている。
【0009】
ストラクチャーの程度は、フタル酸ジブチル(本発明において、DBPと略す。)吸油量測定法により評価することができる。ストラクチャーが高いとDBP吸油量は大きくなる。DBP吸油量の大きいカーボンブラックを用いた溶剤型グラビア印刷墨インキで印刷を行った場合、インキの浸透を抑制することで印刷濃度を維持することが可能である。しかしDBP吸油量の大きいカーボンブラックは一般的に着色力が低く、良好な黒色感を得るためにはインキ中の顔料分が多量に必要になる。溶剤型グラビア印刷墨インキにおいてインキ中の顔料分が過剰になると版かぶり性などの印刷適性の悪化やチョーキング現象による接着不良を引き起こす。
【0010】
一方、DBP吸油量の小さいカーボンブラックを用いた溶剤型グラビア印刷墨インキで印刷を行った場合、着色力は向上するものの前述のようにインキの浸透を抑制することでできないため印刷濃度を維持することができず、良好な黒色感を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−225747号公報
【特許文献2】特開2004−269572号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「カーボンブラック便覧」平成7年4月15日、第3版、編集発 行者カーボンブラック協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題はノンコート紙など浸透性の強い基材に印刷した場合も良好な黒色感を有する共に、基材への良好な接着性と印刷適性を有する紙用グラビア墨インキ組成物および印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のDBP吸油量を持つ高吸油量カーボンブラック(1)、低吸油量カーボンブラック(2)を紙用グラビア印刷墨インキ組成物に併用することで上記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、高吸油量カーボンブラック(1)、低吸油量カーボンブラック(2)、樹脂および溶剤を含有する紙用グラビア墨インキ組成物であって、樹脂が硝化綿であり、カーボンブラック(1)のDBP吸油量をA(1)、カーボンブラック(2)のDBP吸油量をA(2)、墨インキ組成物中のカーボンブラック(1)の重量比をW(1)%、カーボンブラック(2)の重量比をW(2)%としたとき、下記(ア)〜(ウ)であることを特徴とする紙用グラビア墨インキ組成物に関する。
(ア)A(1)が100〜140ml/100gであり、A(2)が50〜70m
l/100gである。
(イ)(A(1)×W(1)+A(2)×W(2))/((W(1)+W(2))
が85〜100である。
(ウ)W(1)+W(2)が8〜11.5である。
更に、本発明は、二酸化珪素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムから選択される1種類以上の無機フィラーを含有し、墨インキ組成物全量中、前記無機フィラーを0.5〜3.0重量%含有することを特徴とする紙用グラビア墨インキ組成物に関する。
更に、本発明は、ノンコート紙への印刷用である、前記紙用グラビア墨インキ組成物に関する。
更に、本発明は、前記紙用グラビア墨インキ組成物を、紙基材に印刷してなる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特定のDBP吸油量を持つ高吸油量カーボンブラック(1)、低吸油量カーボンブラック(2)を紙用グラビア印刷墨インキ組成物に併用することでノンコート紙など浸透性の強い基材に印刷した場合も良好な黒色感を有する共に、基材への良好な接着性と印刷適性を有する紙用グラビア墨インキ組成物を得ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物に使用する高吸油量カーボンブラック(1)はDBP吸油量が100〜140ml/100gである必要がある。DBP吸油量が100ml/100gより小さいと原紙への浸透を抑制することができず、黒色感の低下が起こる。DBP吸油量が140ml/100gより大きくなると顔料が樹脂分を過剰に吸着し、分散された顔料を包む樹脂分の低下が起こり、チョーキング現象が発生し接着性が低下する。
【0017】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物に使用する低吸油量カーボンブラック(2)はDBP吸油量が50〜70ml/100gである必要がある。DBP吸油量が50ml/100gより小さいと、版かぶり性などの印刷適性が低下する。これは、一般的にDBP吸油量の小さいカーボンブラックは難分散性を示すためである。DBP吸油量が70ml/100gより大きくなると低吸油量カーボンブラック(2)が与える黒色感が十分でなくなるため印刷物の黒色感が低下する。
【0018】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物に使用する高吸油量カーボンブラック(1)および低吸油量カーボンブラック(2)の吸油量について、(A(1)×W(1)+A(2)×W(2))/((W(1)+W(2))が85〜100であることが必要である。本式は2種類のカーボンブラックの重量比に基付いた平均吸油量を表すもので、その値が85以下だと吸油量が小さいため原紙への浸透を抑制することができず、黒色感の低下が起こる、100以上だと分散された顔料を包む樹脂分の低下が起こり、チョーキング現象が発生し接着性が低下する。
【0019】
また、高吸油量カーボンブラック(1)および低吸油量カーボンブラック(2)の使用量はW(1)+W(2)が8〜11.5であることが必要である。8以下だとインキ塗膜中の顔料分が少なくなり印刷物の黒色感が十分でなくなる。11.5より多いとインキ中の顔料分が過剰であるため、印刷時に版かぶりが発生するなど印刷適性が低下が起こる。
尚、本発明におけるW(1)、W(2)はインキ印刷時の値とする。
【0020】
本発明に使用する高吸油量カーボンブラック(1)および低吸油量カーボンブラック(2)はファーネスブラックと呼ばれる、ファーネス炉にて芳香族炭化水素などの原料を高温ガス中で不完全燃焼させ生成させるカーボンブラックを用いる。ファーネスブラックはゴム用カーボンブラックとカラー用カーボンブラックに大きく分けられる。ゴム用カーボンブラックをグラビア印刷インキへ利用することも可能であるが、版かぶり性などの印刷適性の観点から通常グラビア印刷墨インキにはカラー用カーボンブラックを用いる。本発明に使用する高吸油量カーボンブラック(1)および低吸油量カーボンブラック(2)も同様にカラー用カーボンブラックを使用することが望ましい。また、カラー用カーボンブラックには黒色感とインキ流動性を向上させる目的で表面酸化処理などの表面処理を施したものもあり、本発明に使用する高吸油量カーボンブラック(1)および低吸油量カーボンブラック(2)はこれら表面処理を施したカラー用カーボンブラックを使用することも可能である。
本発明におけるDBP吸油量はASTM D―2414に準拠して測定した。
【0021】
さらに、本発明の紙用グラビア墨インキ組成物には更なる浸透防止を目的として二酸化珪素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれる1種類以上の無機フィラーを使用することが可能である。これらの無機フィラーは浸透防止効果と印刷適性の観点から紙用グラビア墨インキに対して0.5%〜3%添加することが望ましい。これらの無機フィラーは市販品を使用することが可能であり例えば二酸化珪素(サイリシア350 富士シリシア株式会社製)、炭酸マグネシウム(炭酸マグネシウム金星 神島化学工業株式会社製)炭酸カルシウム(白艶華T−DD 白石カルシウム株式会社製)、硫酸バリウム(沈降性硫酸バリウムBM−110 堺化学工業株式会社製)などが挙げられる。好ましくは炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムである。
【0022】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物に使用する樹脂は硝化綿、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ライムロジン樹脂のうち少なくとも1種類以上を、印刷適性や後加工への適性に応じて適宜選択することが可能である。これらの樹脂は市販品を使用することも可能であり、例えば 硝化綿(KCNC1/16G KOREA CNC社製)、塩素化ポリオレフィン樹脂(スーパークロンHP620 日本製紙ケミカル株式会社製)、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインA 日信化学株式会社製)、ライムロジン樹脂(荒川化学株式会社製)などがある。また、これらの樹脂にポリウレタン樹脂やアクリル樹脂を併用して使用することも可能である。好ましくは硝化綿、塩素化ポリオレフィンである。
【0023】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物に使用する溶剤は、炭化水素系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコ−ル系などを樹脂の溶解性や乾燥性を考慮し適宜選択することが可能である。具体的には、トルエン、メチルシクロへキサン等の炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸nプロピル等のエステル系、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピレングリコール等のグリコールエーテル類、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル等のアルコ−ル系有機溶剤を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物には目的に応じ、さらに顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、架橋剤の添加剤類も必要に応じて使用することができる。
【0025】
本発明の紙用グラビア墨インキ組成物は、浸透性の強いノンコート紙のほか、コート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙基材にグラビア印刷方式にて単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷することができる。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例および比較例により、一層具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。「部」とあるものは特に断りのない限り、すべて「重量部」を意味するものとする。
【0027】
<樹脂ワニスr(a)の調製>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにてKOREA CNC社製硝化綿「KCNC1/16G」40部(イソプロピルアルコール10部含む)、酢酸エチル60部を窒素気流下で攪拌しながら40℃、2時間溶解させて、固形分30%の樹脂ワニスr(a)を得た。
【0028】
<樹脂ワニスr(b)の調製>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにて日本製紙ケミカル株式会社製塩素化ポリオレフィン樹脂「スーパークロンHP620」30部、トルエン70部を窒素気流下で攪拌しながら60℃、2時間溶解させて、固形分30%の樹脂ワニスr(b)を得た。
【0029】
<樹脂ワニスr(c)の調製>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにて日信化学株式会社製塩化ビニル―酢酸ビニル共重合樹脂「ソルバインA」30部、メチルエチルケトン70部を窒素気流下で攪拌しながら60℃、2時間溶解させて、固形分30%の樹脂ワニスr(d)を得た。
【0030】
<樹脂ワニスr(d)の調製>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにて荒川化学株式会社製ライムロジン樹脂30部、トルエン70部を窒素気流下で攪拌しながら60℃、2時間溶解させて、固形分30%の樹脂ワニスr(d)を得た。
表1に樹脂ワニスを記す。
【0031】
<カーボンブラックの選定>
本実施例では以下のカーボンブラックを使用し、紙用グラビア墨インキ組成物を作成した。
cb(a):コロンビヤンカーボン社製「ラーベン1040パウダー」(DBP吸油量 100ml/100g)
cb(b):東海カーボン社製「シーストSVH」(DBP吸油量 140ml/100g)
cb(c):三菱化学社製「ミツビシカーボン#30」(DBP吸油量 113ml/100g)
cb(d):コロンビヤンカーボン社製「ラーベン1060ウルトラパウダー」(DBP吸油量 50ml/100g)
cb(e):コロンビヤンカーボン社製「ラーベン2000パウダー」(DBP吸油量 70ml/100g)
cb(f):コロンビヤンカーボン社製「ラーベン1080ウルトラパウダー」(DBP吸油量 60ml/100g)
cb(g):コロンビヤンカーボン社製「ラーベン510ウルトラパウダー」(DBP吸油量 90ml/100g)
cb(h):東海カーボン社製「シースト116HM」(DBP吸油量 158ml/100g)
cb(i):デグサ社製「プリンテックス35パウダー」(DBP吸油量 42ml/100g)
cb(j):東海カーボン社製「シースト300」(DBP吸油量 75ml/100g)
【0032】
本明細書において、実施例14〜16は参考例である。
[実施例1]
<紙用グラビア墨インキ組成物1の調製>
樹脂ワニスr(a):30部、高吸油量カーボンブラックcb(a):5部、低吸油量カーボンブラックcb(e):5部、溶剤として酢酸エチル:10部を混合し、サンドミルで混練しミルベースを作成した。これに、離合社製のザーンカップNo.3で15秒になるように樹脂ワニスr(a)と溶剤の比率を調整して樹脂ワニスr(a)12部、酢酸エチル38部を加え紙用グラビア墨インキ組成物1を作成し印刷に使用した。
<印刷物の作成方法>
得られた印刷インキ組成物1をイワセ印刷機械株式会社のベビー印刷機を用い、コンベンショナル30μベタ版にてノンコート紙(XJ 斤量64g/m2、紀州製紙株式会社製
)に印刷し、印刷物1Pを得た。
【0033】
[実施例2〜16、比較例1〜10]
実施例2〜16、比較例1〜10はそれぞれ表1、表2に示す配合比にて、実施例1と同様の方法で紙用グラビア墨インキ組成物2〜26を製造した。実施例9〜13では、さらに無機フィラーf(a):二酸化珪素(サイリシア350 富士シリシア株式会社製)、f(b):炭酸マグネシウム(炭酸マグネシウム金星 神島化学工業株式会社製)f(c):炭酸カルシウム(白艶華T−DD 白石カルシウム株式会社製)、f(d):硫酸バリウム(沈降性硫酸バリウムBM−110 堺化学工業株式会社製)をミルベース作成時に混合し、サンドミルにて混練した。
【0034】
実施例1〜16、比較例1〜10で得た印刷物について、黒色感とノンコート紙接着性を、実施例1〜16、比較例1〜10で得た墨インキ組成物について、印刷適性の評価を行った。以下に評価方法と評価基準を示す。結果を表2,3に記す。
【0035】
<黒色感>
印刷物の濃度をX−RITE濃度計にて評価した。実用可能レベルは△以上である。
◎:墨濃度が1.3以上である。
○:墨濃度が1.2以上〜1.3未満である
△:墨濃度が1.1以上1.2未満である。
×:墨濃度が1.1未満である。
【0036】
<ノンコート紙接着性>
印刷物に1.2cm幅ニチバン株式会社製セロハンテープを貼り付け、剥離させ剥離時の界面を観察した。実用可能レベルは△以上である。
○:原紙が剥ける。
△:原紙が剥ける部分、インキ塗膜が取られる部分が同時に発生する。
×:インキ塗膜が取られる。
【0037】
<印刷適性>
NBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴム硬度80Hsの圧胴、刃先の厚みが60μm(母材の厚み40μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレード、東洋プリプレス株式会社製電子彫刻版(スタイラス角度120度、250線/inch)、および印刷インキ組成物を富士機械工業株式会社製グラビア印刷機にセットしドクター圧2kg/cm2、100m/分の回転速度で版を30分間空転した後に、片面コロナ処理OPPフィルム「パイレンP2161(東洋紡績株式会社製)」のコロナ処理面に、印刷速度100m/分で印圧2kg/cm2で印刷、60℃の熱風で乾燥し、印刷物の余白部分(非画像部)に付着したインキの量を以下の基準で目視評価した。実用可能レベルは△以上である。
○:非画像部にインキの転移が全く認められなかった。
△:非画像部の小面積にインキの転移が認められた。
×:非画像部全面にインキの転移が認められた。
【0038】
実施例1〜16にて調製した印刷インキ組成物は良好な黒色感、ノンコート紙接着性、印刷適性を得ることができた。一方比較例1、2、3、5、7、10では良好な黒色感を持つ印刷物を得ることができなかった。また、比較例4、8では印刷物のノンコート紙接着性が悪く、比較例6、9では印刷適性が悪い結果となった。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】