(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマーは、(B)熱可塑性ポリアミドに(A)アクリルゴムを微分散させた、いわゆる海島構造となっている。
【0014】
≪(A)アクリルゴム≫
(A)アクリルゴムは、熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントとして作用し、主として柔軟性、弾力性、シール性、耐熱性、及び耐油性等を付与する成分である。そのうえで、本発明の(A)アクリルゴムは、内部にゲル分を含むコア層と、該コア層を覆う、ゲル分を含まないシェル層とによって構成されたコア−シェル二層構造となっている。
【0015】
<コア層>
コア層は、(a−1)アクリル酸アルキルエステル単量体及びアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位と、(a−2)不飽和ニトリル単量体由来の構成単位と、(a−3)側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体由来の構成単位と、(a−4)側鎖に架橋性基である塩素基、エポキシ基又はカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種を有する単量体由来の構成単位とを含む。
【0016】
(a−1)
アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、優れた柔軟性と耐油性を発揮できるという点で、特に好ましいのはアルキル基の炭素数が2〜4のアクリル酸アルキルエステルである。
【0017】
アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜4のアクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。これらの中でも、優れた耐油性を発揮できるという点で特に好ましいのは、アクリル酸2−メトキシエチルである。
【0018】
アクリル酸アルキルエステル単量体及びアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体は、1種のみを使用することもできるし、2種以上を混用することもできる。
【0019】
コア層中、構成単位(a−1)の含有量は、後述の構成単位(a−2)との合計100質量部に対して70〜100質量部であることが好ましい。構成単位(a−1)の含有量が70質量部未満では、熱可塑性エラストマーの柔軟性等が低下する。一方、構成単位(a−1)の含有量が100質量部を超えると、後述の構成単位(a−4)の含有量が相対的に少なくなり、アクリルゴムの架橋が十分に進行せず、得られる熱可塑性エラストマーの機械的強度等が低下する。
【0020】
(a−2)
不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等を挙げることができる。これらは1種のみを使用することもできるし、2種以上を混用することもできる。
【0021】
コア層中、構成単位(a−2)の含有量は、構成単位(a−1)との合計100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましい。すなわち、構成単位(a−2)は必須成分ではなく、必ずしもコア層中に含有されていなくてもよい。(a−2)不飽和ニトリル単量体由来の構成単位を含有していると、耐油性が向上する。但し、構成単位(a−2)の含有量が30質量部を超えると、結果として得られる熱可塑性エラストマーの柔軟性等が低下する傾向にある。
【0022】
(a−3)
側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、1、3、5−トリビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート等のジアリル化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングルコールジメタアクリレート等の多官能アクリレート、メタクリル酸アリル、アクリル酸ジシクロペンテニル等が挙げられる。これらは1種のみを使用することもできるし、2種以上を混用することもできる。
【0023】
コア層中、構成単位(a−3)の含有量は、構成単位(a−1)と構成単位(a−2)の合計100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましい。構成単位(a−3)の含有量が0.1質量部未満では、ゲル化するための多官能単量体が少なくなり、(A)アクリルゴムのゲル化が十分に進行せず、熱可塑性エラストマー(成形品)において優れた機械的強度が得られない。一方、構成単位(a−3)の含有量が3質量部を超えると、ゲル化するための多官能単量体が多くなり、(A)アクリルゴムが過度にゲル化するため、熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する。
【0024】
(a−4)
構成単位(a−4)は、架橋を行うための官能基として、側鎖に塩素基、エポキシ基、又はカルボキシル基を有している。塩素基含有単量体としては、例えば、2−クロロエチルビニルエーテル等の塩素基含有ビニルエーテル、クロロメチルスチレン等の塩素基含有スチレン誘導体、ビニルクロロアセテート等の塩素基含有ビニルアセテート等が挙げられる。
【0025】
エポキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の双方を意味する。
【0026】
カルボキシル基含有単量体とは、分子内にカルボキシル基を有するビニル系単量体を意味する。当該カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのエステル類、無水マレイン酸およびその誘導体等が挙げられる。これらの各単量体は、1種のみを使用することもできるし、2種以上を混用することもできる。
【0027】
コア層中、構成単位(a−4)の含有量は、構成単位(a−1)と構成単位(a−2)の合計100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましい。構成単位(a−4)の含有量が0.1質量部未満では、(A)アクリルゴムの架橋が十分に進行せずに、熱可塑性エラストマー(成形品)において優れた機械的強度が得られない。一方、構成単位(a−4)の含有量が3質量部を超えると、(A)アクリルゴムが過度に架橋されるため、熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する。
【0028】
<シェル層>
シェル層は、(a−5)アクリル酸アルキルエステル単量体及びアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位と、(a−6)不飽和ニトリル単量体由来の構成単位と、(a−7)側鎖にエポキシ基を有する単量体由来の構成単位とを含む。但し、コア層とは異なり、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体由来の構成単位を含まない。したがって、アクリルゴムを重合した際、シェル層にはゲル分が生じない。
【0029】
(a−5・a−6・a−7)
構成単位(a−5)・(a−6)には、それぞれコア層の構成単位(a−1)・(A−2)と同種の単量体を使用すればよい。また、構成単位(a−7)も、コア層の構成単位(a−4)のうち、側鎖にエポキシ基を有する単量体を使用すればよい。
【0030】
シェル層において、各構成単位(a−5)・(a−6)の含有量も、それぞれコア層の構成単位(a−1)・(a−2)と同様の範囲でよい。具体的には、構成単位(a−5)と構成単位(a−6)の合計100質量部に対して、構成単位(a−5)を70〜100質量部、構成単位(a−6)を0〜30質量部含有していることが好ましい。
【0031】
一方、構成単位(a−7)の含有量は、構成単位(a−5)と構成単位(a−6)の合計100質量部に対して0〜3質量部とすることが好ましい。すなわち、構成単位(a−7)は必須成分ではなく、必ずしもシェル層中に含有されていなくてもよい。(a−7)側鎖にエポキシ基を有する単量体由来の構成単位を含有していると、特に機械的強度が向上する。
〔アクリルゴムの重合〕
【0032】
コア−シェル構造のアクリルゴムは、コア層を先に重合し、重合転化率が一定以上になった時点で、シェル層の単量体を続いて添加する方法で得ることができる。具体的には、先ず、構成単位(a−1)、(a−3)、(a−4)、及び必要に応じて構成単位(a−2)を構成する各単量体を含む混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下で共重合させることでコア層を形成する。続いて、当該コア層が分散された状態において、そのまま構成単位(a−5)、及び必要に応じて構成単位(a−6)、(a−7)を構成する各単量体を添加し、再度ラジカル重合開始剤の存在下で共重合させることで、コア層を覆うようにシェル層が形成される。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法が可能であるが、乳化重合が特に好ましい。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物を使用することができる。また、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、及びこれら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒等を用いることもできる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混用することもできる。アクリルゴム(A)の分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン及びγ−テルピネン類等を使用することができる。ラジカル重合開始剤の使用量としては、単量体混合物の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部程度とすればよい。
【0034】
乳化重合する場合、使用する乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。また、フッ素系の界面活性剤を使用することもできる。これらは1種のみを使用することもできるし、2種以上を混用することもできる。通常、アニオン系界面活性剤が多用され、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩、ロジン酸塩等が用いられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸のカリウム塩及びナトリウム塩等が挙げられる。
【0035】
(A)アクリルゴムを共重合する際は、各単量体、乳化剤、及びラジカル重合開始剤等を反応容器に一括投入して重合を開始してもよいし、反応継続時に連続的あるいは間欠的に添加してもよい。重合は、窒素置換等酸素を除去した反応器を用いて0〜100℃、好ましくは0〜80℃で行うことができる。重合方式は連続式でもよいし、回分式であってもよい。重合時間は0.01〜30時間程度、好ましくは1〜10時間程度である。(A)アクリルゴムの重合終了後(コア−シェル構造の重合終了後)、反応生成物(ラテックス)を塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の無機塩の水溶液に投入して凝固させ、水洗、乾燥することによりコア−シェル構造のアクリルゴムが得られる。
【0036】
≪(B)熱可塑性ポリアミド≫
(B)熱可塑性ポリアミドは、熱可塑性エラストマー中のハードセグメントとして作用し、主として熱可塑性エラストマーの成形加工性(流動性)や機械的強度等を向上させる成分である。当該(B)熱可塑性ポリアミドとしては、主鎖中にアミド結合を持つ全ての熱可塑性ポリアミドが含まれる。熱可塑性ポリアミドは、ジアミンと二塩基酸との重縮合、ジホルミル等のジアミン誘導体と二塩基酸との重縮合、ジメチルエステル等の二塩基酸誘導体とジアミンとの重縮合、ジニトリル又はジアミドとホルムアルデヒドとの反応、ジイソシアナートと二塩基酸との重付加、アミノ酸又はその誘導体の自己縮合、ラクタムの開環重合等の公知の方法により得ることができ、ホモポリアミド、コポリアミドのいずれであってもよい。熱可塑性ポリアミドは、1種又は2種以上が適宜組み合わせて使用される。
【0037】
(B)熱可塑性ポリアミドは非結晶性であってもよいが、耐熱性の観点からは結晶性である方が好ましい。また、融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは160〜280℃である。熱可塑性ポリアミドとしては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、7−ナイロン、9−ナイロン及びMXD6−ナイロン等が挙げられる。
【0038】
(B)熱可塑性ポリアミドの含有量は、(A)アクリルゴム100質量部に対して15〜70質量部とする。(B)熱可塑性ポリアミドの含有量が15質量部未満では、熱可塑性エラストマーの成形加工性が低下する傾向にある。一方、70質量部を超えると、熱可塑性エラストマーの柔軟性が低下する傾向にある。
【0039】
≪(C)架橋剤≫
(C)架橋剤は、(A)アクリルゴムを架橋するために添加されるものであって、アクリルゴムの塩素基、エポキシ基又はカルボキシル基と共有結合することによりアクリルゴムを架橋する機能を有する。例えば、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリエポキシド、ポリオール、酸無水物、有機カルボン酸アンモニウム塩、ジチオカルバミン酸塩等を挙げることができる。
【0040】
ポリアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシフェニルジフェニルアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物及びヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩等が挙げられる。
【0041】
ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロペンタントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。酸無水物としては、上記ポリカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
【0042】
(C)架橋剤の使用量は、できるだけ少ないことが好ましい。架橋剤の使用量が多いと、得られる熱可塑性エラストマーの成形加工性、柔軟性等が低下する。具体的には、(A)アクリルゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部とする。
【0043】
(C)架橋剤の使用に際しては、架橋促進剤や架橋助剤等を用いることもできる。架橋促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(2’,4’−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾ−ル、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾ−ル系化合物;ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレ−ト等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物、ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテ−ト系化合物、亜鉛華等の化合物等が挙げられる。
【0044】
架橋助剤としては、例えば、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物として、ポリエチレングリコールジメタクリレ−ト等のメタクリレ−ト系化合物、ジアリルフタレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト等のアリル系化合物、マレイミド系化合物として、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0045】
≪その他の添加剤≫
なお、(A)アクリルゴムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、充填剤、補強剤、金属酸化物、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、又は紫外線吸収剤等のその他の添加剤を添加することもできる。その他の各添加剤は、下記に示す具体的材料のうち1種のみを添加してもよいし、2種以上を混合添加することもできる。
【0046】
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類の他、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。
【0047】
充填剤としては、例えば、シリカ、重質炭酸カルシウム、胡粉、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾーノトナイト、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber)、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。
【0048】
補強剤としては、例えば、SAFカーボンブラック、ISAFカーボンブラック、HAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、GPFカーボンブラック、SRFカーボンブラック、FTカーボンブラック、MTカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
【0049】
金属酸化物としては、例えば、亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華、表面処理酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、極微細水酸化カルシウム、一酸化鉛、鉛丹、鉛白等を挙げることができる。
【0050】
軟化剤としては、例えば、石油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブ等が挙げられる。石油系軟化剤としては、例えば、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系軟化剤等が挙げられる。植物系軟化剤としては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう等が挙げられる。サブとしては、例えば、黒サブ、白サブ、飴サブ等が挙げられる。
【0051】
老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体系、モノ、ビス、トリス、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系、イミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系、リン酸系の老化防止剤等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を混用することができる。
【0052】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0053】
また、本発明の熱可塑性エラストマーには、ゴム成分として(A)アクリルゴム以外のゴムを配合することもできる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエン・イソプレン共重合ゴム、ブタジエン・スチレン・イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。
【0054】
〔熱可塑性エラストマーの合成〕
熱可塑性エラストマーは、(A)アクリルゴム100質量部と、(B)熱可塑性ポリアミド15〜70質量部とを含む溶融混合物(エラストマー前駆体)を、(C)架橋剤の存在下において動的架橋させて得られる。動的架橋とは、(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリアミドとを含む混合物を混練しながら架橋を進行させることをいう。
【0055】
(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリアミドとの溶融混練は、(B)熱可塑性ポリアミドの融点より高く、(A)アクリルゴムの分解開始温度より低い温度、具体的には100〜350℃、好ましくは150〜300℃で行えばよい。
【0056】
(A)アクリルゴムと(B)熱可塑性ポリアミドとを含む混合物の混練には、一軸押出機、二軸押出機、二軸ローター型押出機等の連続式押出機や、加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー等の密閉式混練機を使用することができる。通常、こうして動的に架橋された(A)アクリルゴムは、熱可塑性ポリアミドのマトリックス相に微分散される。このような相構造を形成することにより、(A)アクリルゴムが架橋されているにも関わらず、エラストマーは熱可塑性を有する。従って、熱可塑性エラストマーは、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法等、公知の熱可塑性樹脂の成形方法により所定形状に成形加工することができる。
【0057】
本発明の熱可塑性エラストマーは、良好な耐油性や耐熱性を有し、且つ機械的強度及び機械的伸び等に優れる。そのため、当該熱可塑性エラストマーは、オイルクーラーホース、エアーダクトホース、パワーステアリングホース、コントロールホース、インタークーラーホース、トルコンホース、オイルリターンホース、耐熱ホース等の各種ホース材、燃料ホース材、ベアリングシール、バルクステムシール、各種オイルシール、O−リング、パッキン、ガスケット等のシール材、各種ダイヤフラム、ゴム板、ベルト、オイルレベルゲージ、ホースマスキング、配管断熱材等の被覆材、ロール等に好適に利用することができる。中でも、機械的強度及び機械的伸びに優れるため、張力や耐圧性が必要な部品である、各種ホースとして最も適している。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限られることはない。
【0059】
<(A)アクリルゴムの重合>
水200質量部、ラウリル硫酸ナトリウム1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.03質量部、ソジウムスルホキシレート0.05質量部を、窒素置換したステンレス製反応器に仕込み、コア用単量体として表1に示す材料を表1に示す割合で、p−メンタンハイドロパーオキサイド0.1質量部と共に2時間かけて滴下し、反応温度30℃で乳化重合させた。重合転化率が100%に達したところで、シェル単量体として表1に示す材料を表1に示す割合で、p−メンタンハイドロパーオキサイド0.1質量部と共に30分かけて滴下し、反応温度30℃で乳化重合させた。
【0060】
なお、表1に示す数値は質量部であり、表1に示す材料の具体名は、次の通りである
EA:アクリル酸エチル
BA:アクリル酸ブチル
MEA:アクリル酸2−メトキシエチル
AN:アクリロニトリル
AMA:メタクリル酸アリル
DCPA:アクリル酸ジシクロペンテニル
VCAc:モノクロロ酢酸ビニル
GMA:メタクリル酸グリシジル
MBM:マレイン酸モノn−ブチル
【0061】
【表1】
【0062】
重合転化率が100%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5質量部を反応系に添加し、重合反応を停止させた。得られた、反応生成物(ラテックス)を1%塩化カルシウム水溶液に滴下し、アクリルゴムを凝固させた。この凝固物を十分に水洗した後、80℃で24時間乾燥させることにより、(A)アクリルゴムA−1〜A−5(実施例用)及びA’−1〜A’−5(比較例用)を得た。
【0063】
<熱可塑性エラストマーの合成>
(A)アクリルゴム及び(B)熱可塑性ポリアミドとして表2に示す材料を表2に示す量で使用し、温度250℃、ブレード回転数100rpmに設定したバンバリーミキサーに投入し、トルクが一定になるまで混練を行った。次に(C)架橋剤として表2に示す材料を表2に示す量追加投入し、トルクが一定になるまで混練を行い、熱可塑性エラストマー(実施例1〜5、比較例1〜5)を合成した。
【0064】
なお、表2に示す数値は質量部であり、表2に示す材料の具体名は次の通りである。
PA6:6−ナイロン
PA66:6,6−ナイロン
PA12:12−ナイロン
HMDAC:ヘキサメチレンジアミンカルバメート
MXDA:m−キシリレンジアミン
【0065】
得られた各実施例及び比較例の熱可塑性エラストマーをバンバリーミキサーから取り出し、冷却プレスによってパンケーキ状に圧縮した。続いて、250℃に加熱したプレスによって厚さ2mmのシート状に成形し、その機械的物性(引張強度、伸び、硬度)を測定した。その結果も表2に示す。なお、各物性の測定方法は次の通りである。
【0066】
<引張強度・伸び>
JIS K 6251に準拠し、試験速度500mm/minにて引張強度(MPa)、伸び(%)を測定した。
<硬度>
JIS K 6253に準拠し、スプリング硬さ試験機A形によって硬度を測定した。
【0067】
【表2】
【0068】
表2の結果から、実施例1〜5は、ゲル分を含み架橋性基を有するコア層と、ゲル分を含んでいないシェル層から構成されるコア−シェル構造のアクリルゴムを使用したので、機械的強度及び機械的伸びが優れているのみならず、硬度にも優れていた。また、実施例1〜3は、シェル層にエポキシ基含有単量体を使用していることから、特に機械的強度に優れていた。
【0069】
これに対し、比較例1はシェル層を有さずアクリルゴム全体にゲル分を有し、比較例2はコア層と共にシェル層にもゲル分を含んでいるため、それぞれ機械的強度及び機械的伸びが劣っていた。一方、比較例3はコア層にゲル分を有さずシェル層にゲル分を有し、比較例4はシェル層を有さずアクリルゴム全体にもゲル分を有さず、比較例5はコア層とシェル層共にゲル分を有しないため、それぞれ機械的伸びが劣っていた。